JP4036693B2 - 車両走行制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自車と先行車との車間距離を検出し、その車間距離を所定距離に保つべく自車の走行を制御する車両走行制御技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自車と先行車との現在の車間距離である実車間距離を検出し、その実車間距離を所定の目標車間距離に保ちつつ先行車に追従して走行するシステムは従来から知られている。このシステムでは、一般に、実車間距離と目標車間距離との車間距離偏差および自車と先行車との相対速度の2値を線形加算する演算式に基づき目標加減速度を算出し、その算出した目標加減速度を実現するように自車の車速を制御することが多い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような制御では、車間距離偏差の変化や相対速度の変化に応じて自車の車速が実際に変化するまでにある程度の時間を要するため、発進時には先行車との実車間距離が大きくなるので加速度が大きくなり、高速で先行車に追い付くことから減速度も大きくなってしまう。従って、乗り心地の良好な車両走行制御が得られなかった。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、所定の目標車間距離を保ちつつ先行車に追従走行するシステムにおいて、特に発進時に先行車への追従走行を良好に行い得る車両走行制御装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、先行車に追従走行する車両走行制御装置において、先行車速を検出する先行車速検出手段と、予め設定された変換式を記憶する変換式記憶手段と、検出された前記先行車速を前記変換式を用いて変換することにより得られた値に基づき自車の目標車速を設定する第1目標車速設定手段と、停止状態から発進して先行車に追従走行する際に、前記第1目標車速設定手段により設定された目標車速に基づき自車の走行制御を行う走行制御手段と、予め設定された終了条件を満足するか否かを判定する条件判定手段と、自車と先行車との現在の車間距離と予め設定された目標車間距離との偏差である車間距離偏差および自車と先行車との相対速度を用いて自車の目標車速を設定する第2目標車速設定手段とを備え、前記走行制御手段は、前記条件判定手段により前記終了条件を満足しないと判定されると、前記第1目標車速設定手段により設定される目標車速を自車速の上限値として、前記第2目標車速設定手段により設定される目標車速に基づき自車の走行制御を行い、前記条件判定手段により前記終了条件を満足すると判定されると、前記第2目標車速設定手段により設定される目標車速に基づき自車の走行制御を行うことを特徴としている。
【0006】
この構成によれば、先行車速が検出され、検出された先行車速を変換式を用いて変換することにより得られた値に基づき自車の目標車速が設定され、停止状態から発進して先行車に追従走行する際に、その目標車速に基づき自車の走行制御が行われることにより、先行車速に応じて目標車速が設定されることから、車間距離に応じて走行制御が行われるような場合に、発進が遅れて車間距離が増大することによって生じる急加速や、その急加速により先行車に追い付いて車間距離が急減することによって生じる急減速が未然に防止されることとなり、発進時において乗り心地の良好な先行車への追従走行が可能になる。
【0013】
すなわち、予め設定された終了条件を満足するか否かが判定され、終了条件を満足しないと判定されると、前記第1目標車速設定手段により設定される目標車速を自車速の上限値として、車間距離偏差および相対速度を用いて前記第2目標車速設定手段により設定される目標車速に基づき自車の走行制御が行われる。このとき、車間距離偏差および相対速度に応じて先行車への追従走行が好適に行われるとともに、先行車速を変換式を用いて変換することにより得られる値に基づき設定される目標車速が自車速の上限値とされることにより、急加速や急減速が未然に防止されることとなり、乗り心地の良好な先行車への追従走行が可能になる。これによって発進時における先行車への追従走行が好適に行われる。また、終了条件を満足すると判定されると、前記第2目標車速設定手段により設定される目標車速に基づき自車の走行制御が行われ、これによって通常時における先行車への追従走行が好適に行われる。
【0016】
つぎに、自車速と先行車速との偏差である車速偏差を予め設定されたサンプリング周期で求める車速偏差演算手段と、前記車速偏差演算手段により求められた前記車速偏差の絶対値を所定回数だけ積算する積算手段とをさらに備え、前記条件判定手段は、前記車速偏差演算手段により求められた前記車速偏差の絶対値が予め設定された第1値以下になり、かつ、前記積算手段により得られる積算値が予め設定された第2値以下になると、前記終了条件を満足すると判定するとしてもよい(請求項2)。
【0017】
この構成によれば、自車速と先行車速との偏差である車速偏差が予め設定されたサンプリング周期で求められ、求められた車速偏差の絶対値が所定回数だけ積算される。そして、車速偏差の絶対値が予め設定された第1値以下になり、かつ、車速偏差の積算値が予め設定された第2値以下になると、終了条件を満足すると判定されることにより、車速偏差の絶対値および積算値が十分に小さいということは先行車に安定して追従していることを表わしていることから、終了条件を満足すると判定して車間距離偏差および相対速度に基づく走行制御に移行しても、急加速や急減速が生じて乗り心地が低下することなく、良好な追従走行を継続することができる。
【0018】
また、前記条件判定手段は、自車速が予め設定された第3値以上になると、前記終了条件を満足すると判定するとしてもよい(請求項3)。この構成によれば、自車速が予め設定された第3値以上になると、終了条件を満足すると判定されることにより、自車速が十分に大きいということは発進時の加速がほぼ終了したことを表わしていることから、終了条件を満足すると判定して車間距離偏差および相対速度に基づく走行制御に移行しても、急加速や急減速が生じて乗り心地が低下することなく、良好な追従走行を継続することができる。
【0019】
また、前記条件判定手段は、先行車の加減速度が予め設定された第4値以上になると、前記終了条件を満足すると判定するとしてもよい(請求項4)。この構成によれば、先行車の加減速度が予め設定された第4値以上になると、終了条件を満足すると判定されることにより、先行車の加減速度が十分に大きいということは、先行車が急加速または急減速を行ったことを表わしていることから、終了条件を満足すると判定して車間距離偏差および相対速度に基づく走行制御に移行することにより、必要な急加速または急減速が可能になり、先行車への好適な追従走行が継続して行えることとなる。
【0020】
また、前記条件判定手段は、自車と先行車との車間距離が予め設定された第5値以下になると、前記終了条件を満足すると判定するとしてもよい(請求項5)。この構成によれば、自車と先行車との車間距離が予め設定された第5値以下になると、終了条件を満足すると判定されることにより、車間距離が十分に小さいということは急減速が必要であることを表わしていることから、終了条件を満足すると判定して車間距離偏差および相対速度に基づく走行制御に移行することにより、必要な急減速が行えることとなる。
【0023】
【発明の実施の形態】
まず、図1、図2を参照して、本発明に係る車両走行制御装置の一実施形態の構成について説明する。図1は同実施形態の制御構成を示すブロック図、図2は記憶部に格納されている予め設定された値を示す図で、目標車間距離の一例を示している。
【0024】
この車両走行制御装置は、自車の走行レーン前方を走行する先行車の動きに応じた追従走行等の車両走行の自動化に対応可能であって、運転者によるブレーキ操作に関係なく、自車と先行車との車間距離である実車間距離に応じて自動的にブレーキ液圧を発生させることにより車輪に制動圧を与えて減速したり、スロットルの開度あるいは燃料供給量などを制御して加減速することにより、実車間距離を所定の目標車間距離に保持するように構成されている。そして、通常は実車間距離と目標車間距離との偏差である車間距離偏差および自車と先行車との相対速度を用いて求められる目標車速に基づき自車の走行制御を行い、発進時には先行車速を用いて求められる目標車速に基づき自車の走行制御を行うようにしている。
【0025】
この車両走行制御装置は、図1に示すように、自動走行スイッチ11、車間設定スイッチ12、車輪速センサ13、車間距離センサ14、発進スイッチ15、エンジン電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)16、ブレーキECU17、記憶部18と、これらに電気的に接続されたメインECU19とを備えるとともに、エンジンECU16に電気的に接続されたエンジン駆動部20と、ブレーキECU17に電気的に接続されたアクチュエータ部21とを備えている。
【0026】
自動走行スイッチ11は、先行車に追従する自動走行を指示するためのスイッチで、運転者によりオンにされると、自動走行が行われる。車間設定スイッチ12は、予め設定された複数の目標車間距離曲線(後述)のうちから運転者により好みの目標車間距離曲線を選択するためのスイッチである。車輪速センサ13は、各車輪に対応して設けられ、それぞれ対応する車輪の回転速度を検出するもので、例えばパルスエンコーダなどで構成される。車間距離センサ14は、実車間距離Drを検出するもので、例えばレーザ発光部および受光部などで構成される。発進スイッチ15は、自車の発進を指示する発進指示手段としての機能を有するもので、自車の停止状態で運転者によりオンにされると自動的に発進する。
【0027】
エンジン駆動部20は、スロットルやトランスミッションなどを駆動するもので、特にエンジンECU16からの制御信号に基づきスロットルの開度が制御され、車両が加減速される。アクチュエータ部21は、自動走行のときはブレーキECU17からの制御信号に基づきブレーキ液圧を発生するもので、この発生したブレーキ液圧がホイルシリンダ(図示省略)に伝達され、この伝達されたブレーキ液圧に応じた制動力が車輪に印加されて車両が減速される。
【0028】
記憶部18は、ROMやRAMなどからなり、種々の予め設定された値を含むメインECU19の制御プログラムを記憶するとともに、演算データ等を一時的に記憶するものである。この記憶部18には予め設定された値として、図2に示すように、自車速Vnに応じて設定された目標車間距離曲線Drfが複数種類(図2では3種類)格納されており、上述したように車間設定スイッチ12によって選択された目標車間距離曲線が自車の目標車間距離として設定される。また、記憶部18には予め設定された値として、下記式(1)の伝達関数Gp(s)、
Gp(s)=ω2/(s2+2・ζ・ω・s+ω2)…(1)
が格納されている。なお、式(1)において、sはラプラス演算子であり、式(1)はローパスフィルタの場合を表わす。
【0029】
メインECU19は、CPUなどで構成され、車輪速センサ13、車間距離センサ14により検出される結果に基づき、記憶部18に格納されている制御プログラムに従って、エンジンECU16およびブレーキECU17に制御信号を送出して車両の走行を制御するもので、以下の機能▲1▼〜▲7▼を有する;
▲1▼自動走行スイッチ11がオンにされると、先行車に追従する自動走行を開始する機能;車間設定スイッチ12により選択された目標車間距離曲線を自動走行における目標車間距離として設定する機能;車間距離センサ14の検出信号に基づき先行車の有無を判別する機能;
▲2▼車輪速センサ13により検出される各車輪の回転速度に基づき自車速Vnを算出する機能;自車速Vnに基づき自車が停止状態か否かを判定する機能;先行車が存在するときは車間距離センサ14の検出信号に基づき実車間距離Drを求める機能;実車間距離Drの変化に基づき自車と先行車との相対速度Vrを算出する機能;相対速度Vrに基づき相対加速度Arを算出する機能;実車間距離Drの変化および自車速Vnに基づき先行車速Vpを算出する機能。
【0030】
▲3▼先行車速Vpを用いて、上記式(1)の伝達関数Gp(s)により第1目標車速Vt1を算出する機能。このとき、上記式(1)における減衰率ζおよび応答周波数ωは、発進時の実車間距離Drおよび相対速度Vrに応じて決定され、この決定された値を用いて第1目標車速Vt1=Gp(s)×Vpの算出が行われる。この場合、上記式(1)における減衰率ζおよび応答周波数ωと実車間距離Drとの関係は、Drが大きくなればωは大きくなる一方、ζは小さくなり、相対速度Vrとの関係においても、Vrが大きくなればωは大きくなり、ζは小さくなる。したがって、予め実車間距離Drおよび相対速度Vrに対する減衰率ζおよび応答周波数ωの対応関係をシミュレーションにより求め、記憶部18に格納しておくのが望ましい。なお、発進時には自車速Vn=0であるので、相対速度Vrは先行車速Vpに等しくなる。
【0031】
▲4▼車間設定スイッチ12によって選択された目標車間距離Drfにおいて、自車速Vnに対応する目標車間距離Dvを抽出し、この抽出した目標車間距離Dvと実車間距離Drとの差である車間距離偏差ΔD=(Dr−Dv)を求め、車間距離偏差ΔDと相対速度Vrとを用いて第2目標車速Vt2を算出する機能。
【0032】
▲5▼自車が停止状態で発進スイッチ15がオンにされ、かつ先行車が存在するときには、予め設定された終了条件を満足するか否かを判定し、終了条件を満足しないと判定すると第1目標車速Vt1に基づく走行制御を行い、終了条件を満足すると判定すると第2目標車速Vt2に基づく走行制御を行う機能。また、第1目標車速Vt1に基づく走行制御を行っているときに終了条件を満足すると判定した場合には第2目標車速Vt2に基づく走行制御に切り換える機能。
【0033】
▲6▼以下の終了条件(i)〜(vi)のいずれかが満たされると、終了条件を満足すると判定する機能;
(i)Dr<D1
D1(第5値)は予め設定された値(本実施形態では例えば5〜10m)で、実車間距離Drが設定値D1未満になると、先行車に十分に近づいたとして終了条件を満足すると判定され、第2目標車速Vt2に基づく走行制御に切り換わる;
(ii)Vn≧V1
V1(第3値)は予め設定された値(本実施形態では例えば30〜40km/h)で、自車速Vnが設定値V1以上になると、自車速Vnが十分に大きくなったとして終了条件を満足すると判定され、第2目標車速Vt2に基づく走行制御に切り換わる。
【0034】
(iii)Vr≦V2
相対速度Vrは、自車と先行車との実車間距離Drを時間微分した値、すなわちVr=dDr/dtである。従って、Vr>0は実車間距離Drが増大していることを表わし、Vr=0は実車間距離Drが変化しないことを表わし、Vr<0は実車間距離Drが減少していることを表わす。先行車が急減速すると実車間距離Drは減少する。そこで、V2は負の値に設定されており、相対速度Vrが負の設定値V2以下になると、先行車の減速度が大きいとして終了条件を満足すると判定され、第2目標車速Vt2に基づく走行制御に切り換わる。V2は第4値に相当する;
(iv)|Vr|≧V3
V3は正の値に設定されており、相対速度の絶対値|Vr|が正の設定値V3以上になると、先行車の加速度が大きいか又は減速度が大きいとして終了条件を満足すると判定され、第2目標車速Vt2に基づく走行制御に切り換わる。V3は第4値に相当する。
【0035】
(v)Ar≦A1
相対加速度Arは、相対速度Vrを時間微分した値、すなわちAr=dVr/dtである。従って、Ar>0は相対速度Vrが増大していることを表わし、Ar=0は相対速度Vrに変化がないことを表わし、Ar<0は相対速度Vrが減少していることを表わす。さらにAr<0において、Ar≒0は相対速度Vrが緩やかに減少していることを表わし、Ar≪0は相対速度Vrが急激に減少していることを表わす。先行車が急減速すると相対速度Vrは減少する。そこで、A1は負の値に設定されており、相対加速度Arが負の設定値A1以下になると、先行車の減速度が大きいとして終了条件を満足すると判定され、第2目標車速Vt2に基づく走行制御に切り換わる。A1は第4値に相当する。
【0036】
(vi)ΔV≦V4、かつ、Σ(ΔV)≦V5
ΔV=|Vp−Vn|は自車速Vnと先行車速Vpとの偏差である車速偏差の絶対値であり、所定のサンプリング周期で算出される。Σ(ΔV)は車速偏差ΔVを予め設定された回数だけ積算した積算値である。また、V4(第1値),V5(第2値)は正の値に設定されている。車速偏差の絶対値ΔVが小さく、かつ、その積算値Σ(ΔV)が小さいときは、先行車に安定して追従した状態であるとして終了条件を満足すると判定され、第2目標車速Vt2に基づく走行制御に切り換わる。
【0037】
▲7▼実際に走行制御に用いる目標車速として実目標車速Votを算出する機能。この実目標車速Votの算出は、自車速Vnが急変して車両にショックなどが生じないようにするために、所定のサンプリング周期ごとに算出される値の変化量を低減するように行われる。サンプリング周期ごとの算出値を仮目標車速Vtとすると、例えば仮目標車速Vtが前回(1サンプリング周期前)の実目標車速Votより所定量以上変化するときは、フィルタを掛ける(例えば変化量を80%に圧縮する)ことで、変化量を低減する。
【0038】
記憶部18は変換式記憶手段、第1係数記憶手段、第2係数記憶手段に相当し、メインECU19は第1目標車速設定手段、走行制御手段、第1係数設定手段、第2係数設定手段、条件判定手段、第2目標車速設定手段、車速偏差演算手段、積算手段に相当する。また、車輪速センサ13、車間距離センサ14およびメインECU19は先行車速検出手段を構成する。
【0039】
次に、図3〜図5のフローチャートに従って、メインECU19による走行制御手順について説明する。図3〜図5は走行制御手順の一例を示すフローチャートである。同図に示されるルーチンは、所定のサンプリング周期(例えば10msec)で実行される。
【0040】
まず、自車が停止しているか否かが判定される(ステップ#10)。自車の停止は、例えば自車速Vn=0が所定時間(例えば数秒)だけ継続するか否かにより判定され、停止していると判定されると(ステップ#10でYES)、発進スイッチ15がオンにされたか否かが判別され(ステップ#12)、オンにされると(ステップ#12でYES)、先行車が存在するか否かが判別される(ステップ#14)。そして、自車が停止していないと判別されるか(ステップ#10でNO)、または発進スイッチ15がオンにされていないと判別されると(ステップ#12でNO)、このルーチンを終了する。
【0041】
ステップ#14において、先行車が存在しないと判別されると(ステップ#14でNO)、予め設定された目標車速まで加速して当該目標車速での定速走行制御が行われ(ステップ#16)、このルーチンを終了する。一方、先行車が存在すると判別されると(ステップ#14でYES)、ステップ#18に進む。また、ステップ#14においてNOのときには、何もせずにルーチンを終了するようにしてもよい。
【0042】
次いで、ステップ#18,#20,#22,#24,#26において、実車間距離Dr、自車速Vn、相対速度Vr、相対加速度Arについて、それぞれDr<D1、Vn≧V1、Vr≦V2、|Vr|≧V3、Ar≦A1であるか否かが判別され、ステップ#28において、先行車に安定して追従しているか否かが判別される。そして、Dr≧D1、Vn<V1、Vr>V2、|Vr|<V3、Ar>A1、かつ安定追従でない、すなわちステップ#18,#20,#22,#24,#26,#28が全てNOであれば、ステップ#30に進む。一方、Dr<D1、Vn≧V1、Vr≦V2、|Vr|≧V3、Ar≦A1、または安定追従である、すなわちステップ#18,#20,#22,#24,#26,#28のいずれかがYESであれば、ステップ#32に進む。
【0043】
ステップ#30では後述する手順により第1目標車速Vt1が算出され、次いで、この第1目標車速Vt1が仮目標車速Vtとされて(ステップ#34)、ステップ#38に進む。また、ステップ#32では車間距離偏差ΔDおよび相対車速Vrに基づき第2目標車速Vt2が算出され、次いで、この第2目標車速Vt2が仮目標車速Vtとされて(ステップ#36)、ステップ#38に進む。ステップ#38において、仮目標車速Vtと前回の実目標車速Votとの変化量が低減されて今回の実目標車速Votが決定され、このルーチンを終了する。
【0044】
図6は図5のステップ#30の第1目標車速Vt1算出サブルーチンを示すフローチャートである。まず、上記式(1)の伝達関数Gp(s)の係数、すなわち減衰率ζ、応答周波数ωの値が設定済みであるか否かが判別され(ステップ#40)、既に設定されていれば(ステップ#40でYES)、ステップ#46に進み、未だ設定されていなければ(ステップ#40でNO)、実車間距離Drおよび相対速度Vrが検出され(ステップ#42)、これらの値に基づき減衰率ζ、応答周波数ωの値が設定される(ステップ#44)。次いで、先行車速Vpが算出され(ステップ#46)、上記式(1)の伝達関数Gp(s)および先行車速Vpを用いて、第1目標車速Vt1が算出される(ステップ#48)。
【0045】
次に、図7を参照して、本実施形態における自車速Vnの推移について説明する。図7は先行車速Vp、第1目標車速Vt1、運転者による追従車速Vdの推移を示すタイミングチャートである。同図において、先行車速Vpは先行車が停止状態から25km/hまで加速したときの実際のデータで、運転者による追従車速Vdは上記先行車に対して追従する実際のデータを収集したものである。また、第1目標車速Vt1は上記先行車速Vpを上記式(1)の伝達関数Gp(s)により変換したときのシミュレーション結果である。図7に示すように、時刻t=0の先行車の加速開始から、第1目標車速Vt1は運転者による追従車速Vdの実際のデータに対して良好に追従していることが分かる。
【0046】
このように、本実施形態によれば、停止状態から発進して先行車に追従するときに、先行車速Vpを伝達関数Gp(s)を用いて変換することにより得られる第1目標車速Vt1に基づき自車の走行制御を行うようにしているので、運転者による実際の加速とほぼ同様に自車を加速させることができ、これによって違和感の生じない、乗り心地の良好な走行制御を実現することができる。特に、車間距離に応じて走行制御が行われるような場合には、発進が遅れて車間距離が増大することによって急加速が生じたり、その急加速により先行車に追い付いて車間距離が急減することによって急減速が生じたりするが、本実施形態によれば、そのような事態を未然に防止することができ、発進時において、乗り心地の良好な先行車への追従走行を行うことができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、例えば運転者による発進スイッチ15のオンが遅れることにより、発進時には既に実車間距離Drや相対速度Vrが大きくなっている場合には、それらに応じて伝達関数Gp(s)の減衰率ζを低くし、応答周波数ωを高くするようにしているので、先行車に対する遅れを素早く低減することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、予め設定された終了条件を満足すると判定されると、車間距離偏差ΔDおよび相対速度Vrを用いて算出される第2目標車速Vt2に基づく走行制御に切り換えるようにしているので、先行車への追従走行を良好に行うことができる。
【0049】
この場合において、実車間距離Drの低下や先行車の急激な加減速などの特殊な追従走行状態になったときや、発進時の加速が終了して安定した追従走行状態になったときに、終了条件を満足すると判定するようにしているので、種々の追従状態に応じて良好な走行制御を実現することができる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能であり、例えば以下に示す変形形態(1)〜(7)を採用することができる。
【0051】
(1)実目標車速Votの算出は、上記図3〜図5に示す手順に限られない。図8〜図10は異なる手順例を示すフローチャートである。この形態では、メインECU19は、第2目標車速Vt2に基づく走行制御を基本とし、第1目標車速Vt1が第2目標車速Vt2より小さいときに、第2目標車速Vt2に代えて第1目標車速Vt1を採用することで、第1目標車速Vt1を実目標車速Votの上限値として走行制御を行っている。
【0052】
図8において、ステップ#50〜#56は、図3のステップ#10〜#16と同一であるので説明を省略する。ステップ#54において、先行車が存在すると判別されると(ステップ#54でYES)、車間距離偏差ΔDおよび相対車速Vrに基づき第2目標車速Vt2が算出され(ステップ#57)、ステップ#58に進む。
【0053】
図9のステップ#58〜#68は、図4のステップ#18〜#28と同一であるので説明を省略する。そして、ステップ#58,#60,#62,#64,#66,#68が全てNOであればステップ#70に進む。一方、ステップ#58,#60,#62,#64,#66,#68のいずれかがYESであればステップ#76に進む。
【0054】
図10のステップ#70は、図5のステップ#30と同一であるので説明を省略する。ステップ#70に続いて、第1目標車速Vt1と第2目標車速Vt2との大小が比較され(ステップ#72)、第2目標車速Vt2が、Vt1<Vt2に大きくなれば(ステップ#72でYES)、ステップ#74に進んで仮目標車速Vt=Vt1とし、第2目標車速Vt2が、Vt1≧Vt2の間は(ステップ#72でNO)、ステップ#76に進んで仮目標車速Vt=Vt2とする。ステップ#74,#76,#78は、図5のステップ#34,#36,#38と同一であるので説明を省略する。
【0055】
この形態によれば、第2目標車速Vt2が第1目標車速Vt1以下の間は仮目標車速Vt=Vt2とし、第2目標車速Vt2が第1目標車速Vt1より大きくなると仮目標車速Vt=Vt1とし、第1目標車速Vt1を上限値としているので、発進時において自車が過剰に加速して自車速Vnが先行車速Vpを大きく超えるような事態を避けることができることから、自車が先行車に追い付いたときに急激な減速が行われるのを未然に防止することができる。これによって、上記実施形態と同様に、発進時において乗り心地の良好な車両走行を実現することができる。
【0056】
(2)上記実施形態では、先行車速Vpを変換する変換式として上記式(1)の2次振動要素の伝達関数Gp(s)を用いているが、これに限られず、他の伝達関数や、伝達関数以外の他の変換式を用いるようにしてもよい;
(3)実車間距離Drおよび相対速度Vrのいずれか一方に応じて、応答周波数ωおよび減衰率ζの値を決定するようにしてもよい;
(4)上記実施形態では、条件(i)〜(vi)のいずれかが満たされると終了条件を満足すると判定するようにしているが、これに限られず、条件(i)〜(vi)のうち一部のみを終了条件として採用するようにしてもよい。
【0057】
(5)走行制御に用いる目標車速が第1目標車速Vt1から第2目標車速Vt2に切り換えられたときに、その切換時点から予め設定された時間τが経過するまでは、下記式(2)により、双方の目標車速Vt1,Vt2を補間して実目標車速Votを算出するようにしてもよい。
Vot=Vt1・(1−t/τ)+Vt2・t/τ…(2)
但し、tは目標車速の切換時点からの経過時間である。
【0058】
(6)上記実施形態では、目標車速Vt1,Vt2に基づき自車の走行制御を行っているが、この場合、目標車速Vt1,Vt2からそれぞれ目標加減速度を算出し、その目標加減速度を実現する走行制御を行うようにしてもよい。例えば、第1目標車速Vt1と自車速Vnとの車速偏差に基づき第1目標加減速度を算出し、この第1目標加減速度を実現する走行制御を行い、第2目標車速Vt2と自車速Vnとの車速偏差に基づき第2目標加減速度を算出し、この第2目標加減速度を実現する走行制御を行うようにしてもよい。また、第2目標車速Vt2に代えて、車間距離偏差ΔDと相対速度Vrとを用いて第2目標加減速度を算出し、この第2目標加減速度を実現する走行制御を行うようにしてもよい。
【0059】
(7)上記実施形態では、実目標車速Votの変化量を低減するようにしているが、これに限られず、変化量の低減量を0とし、算出された目標車速Vt1,Vt2をそのまま実目標車速Votとしてもよい。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、先行車速を検出し、検出された先行車速を予め設定された変換式を用いて変換することにより得られた値に基づき自車の目標車速を設定し、停止状態から発進して先行車に追従走行する際に、設定された目標車速に基づき自車の走行制御を行うようにしており、先行車速に応じて目標車速を設定するようにしているので、車間距離に応じて走行制御が行われるような場合に、発進が遅れて車間距離が増大することによって生じる急加速や、その急加速により先行車に追い付いて車間距離が急減することによって生じる急減速を未然に防止することができ、発進時において乗り心地の良好な先行車への追従走行を行うことができる。
【0064】
すなわち、予め設定された終了条件を満足するか否かを判定し、終了条件を満足しないと判定されると、前記第1目標車速設定手段により設定される目標車速を自車速の上限値として、車間距離偏差および相対速度を用いて前記第2目標車速設定手段により設定される目標車速に基づき自車の走行制御が行われる。このとき、車間距離偏差および相対速度を用いて設定される目標車速に基づき自車の走行制御を行うようにしているので、車間距離偏差および相対速度に応じて先行車への追従走行を好適に行うことができるとともに、先行車速を変換式を用いて変換することにより得られる値に基づき設定される目標車速を自車速の上限値としているので、急加速や急減速を未然に防止することができ、乗り心地の良好な先行車への追従走行を行うことができる。これによって発進時における先行車への追従走行を好適に行うことができる。また、終了条件を満足すると判定されると、車間距離偏差および相対速度を用いて設定される目標車速に基づき自車の走行制御を行うようにしているので、通常時における先行車への追従走行を好適に行うことができる。
【0066】
また、請求項2の発明によれば、自車速と先行車速との偏差である車速偏差を予め設定されたサンプリング周期で求め、求められた車速偏差の絶対値を所定回数だけ積算し、求められた車速偏差の絶対値が予め設定された第1値以下になり、かつ、得られる積算値が予め設定された第2値以下になると、終了条件を満足すると判定するようにしているので、車速偏差の絶対値および積算値が十分に小さいということは先行車に安定して追従していることを表わしていることから、終了条件を満足すると判定して車間距離偏差および相対速度に基づく走行制御に移行しても、急加速や急減速が生じて乗り心地が低下することなく、良好な追従走行を継続することができる。
【0067】
また、請求項3の発明によれば、自車速が予め設定された第3値以上になると、前記終了条件を満足すると判定するようにしているので、自車速が十分に大きいということは発進時の加速がほぼ終了したことを表わしていることから、終了条件を満足すると判定して車間距離偏差および相対速度に基づく走行制御に移行しても、急加速や急減速が生じて乗り心地が低下することなく、良好な追従走行を継続することができる。
【0068】
また、請求項4の発明によれば、先行車の加減速度が予め設定された第4値以上になると、終了条件を満足すると判定するようにしているので、先行車の加減速度が十分に大きいということは、先行車が急加速または急減速を行ったことを表わしていることから、終了条件を満足すると判定して車間距離偏差および相対速度に基づく走行制御に移行することにより、必要な急加速または急減速が可能になり、先行車への好適な追従走行を継続して行うことができる。
【0069】
また、請求項5の発明によれば、自車と先行車との車間距離が予め設定された第5値以下になると、終了条件を満足すると判定するようにしているので、車間距離が十分に小さいということは急減速が必要であることを表わしていることから、終了条件を満足すると判定して車間距離偏差および相対速度に基づく走行制御に移行することにより、必要な急減速を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る車両走行制御装置の一実施形態の制御構成を示すブロック図である。
【図2】 自車速に応じて設定された目標車間距離の一例を示す図である。
【図3】 走行制御手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】 走行制御手順の一例を示すフローチャートである。
【図5】 走行制御手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】 図5のステップ#30のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図7】 先行車速、第1目標車速、運転者による追従車速の推移を示すタイミングチャートである。
【図8】 走行制御手順の異なる例を示すフローチャートである。
【図9】 走行制御手順の異なる例を示すフローチャートである。
【図10】 走行制御手順の異なる例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
13 車輪速センサ(先行車速検出手段)
14 車間距離センサ(先行車速検出手段)
18 記憶部(変換式記憶手段、第1係数記憶手段、第2係数記憶手段)
19 メインECU(第1目標車速設定手段、走行制御手段、第1係数設定手段、第2係数設定手段、条件判定手段、第2目標車速設定手段、車速偏差演算手段、積算手段、先行車速検出手段)
Claims (5)
- 先行車に追従走行する車両走行制御装置において、
先行車速を検出する先行車速検出手段と、
予め設定された変換式を記憶する変換式記憶手段と、
検出された前記先行車速を前記変換式を用いて変換することにより得られた値に基づき自車の目標車速を設定する第1目標車速設定手段と、
停止状態から発進して先行車に追従走行する際に、前記第1目標車速設定手段により設定された目標車速に基づき自車の走行制御を行う走行制御手段と、
予め設定された終了条件を満足するか否かを判定する条件判定手段と、
自車と先行車との現在の車間距離と予め設定された目標車間距離との偏差である車間距離偏差および自車と先行車との相対速度を用いて自車の目標車速を設定する第2目標車速設定手段とを備え、
前記走行制御手段は、前記条件判定手段により前記終了条件を満足しないと判定されると、前記第1目標車速設定手段により設定される目標車速を自車速の上限値として、前記第2目標車速設定手段により設定される目標車速に基づき自車の走行制御を行い、前記条件判定手段により前記終了条件を満足すると判定されると、前記第2目標車速設定手段により設定される目標車速に基づき自車の走行制御を行うことを特徴とする車両走行制御装置。 - 自車速と先行車速との偏差である車速偏差を予め設定されたサンプリング周期で求める車速偏差演算手段と、
前記車速偏差演算手段により求められた前記車速偏差の絶対値を所定回数だけ積算する積算手段とをさらに備え、
前記条件判定手段は、前記車速偏差演算手段により求められた前記車速偏差の絶対値が予め設定された第1値以下になり、かつ、前記積算手段により得られる積算値が予め設定された第2値以下になると、前記終了条件を満足すると判定することを特徴とする請求項1に記載の車両走行制御装置。 - 前記条件判定手段は、自車速が予め設定された第3値以上になると、前記終了条件を満足すると判定することを特徴とする請求項1または2に記載の車両走行制御装置。
- 前記条件判定手段は、先行車の加減速度が予め設定された第4値以上になると、前記終了条件を満足すると判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両走行制御装置。
- 前記条件判定手段は、自車と先行車との車間距離が予め設定された第5値以下になると、前記終了条件を満足すると判定することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両走行制御装置。
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