JP3957057B2 - 車両走行制御装置および方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自車と先行車との車間距離を検出し、その車間距離を所定距離に保つべく自車の走行を制御する車両走行制御技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自車と先行車との現在の車間距離である実車間距離を検出し、その実車間距離を所定の目標車間距離に保ちつつ先行車に追従して走行するシステムは従来から知られている。このシステムでは、一般に、実車間距離と目標車間距離との車間距離偏差および自車と先行車との相対速度の2値を線形加算する演算式に基づき目標加減速度を算出し、その算出した目標加減速度を実現するように自車の車速を制御することが多い。
【0003】
しかし、このような制御では、車間距離偏差の変化や相対速度の変化に応じて自車の車速が実際に変化するまでにある程度の時間を要するため、先行車が強いブレーキ操作によって急減速した場合には、自車の減速制御が遅れて先行車との実車間距離が小さくなり、運転者に不安を与える虞があった。
【0004】
そこで、先行車が急減速した場合に自車を速やかに減速させるために、自車と先行車との相対加速度を算出し、車間距離偏差および相対速度により算出された目標加減速度を上記相対加速度により補正することが提案されている(特開2000−108719号公報)。
【0005】
一般に、自車と先行車との相対加速度は、車間距離を微分することによって求められる自車と先行車との相対速度をさらに微分することによって求める。従って、上記特開2000−108719号公報にも記載されているように、相対加速度はノイズを多く含んだものとならざるを得ない。このため、その相対加速度を用いて算出した目標加減速度も、ノイズを多く含んだものとなってしまい、乗り心地の良好な車両走行が行えない。そこで、上記特開2000−108719号公報に記載の装置では、必要に応じて相対加速度による補正を行うか否かを切り換えるようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の特開2000−108719号公報に記載の装置は、従来と同様の演算によって得られた目標加減速度に対して、単に、相対加速度による補正を行うか否かを切り換えているに過ぎず、先行車の急減速に応じて自車の急減速を必要な時間に亘って確保できるものとは限らない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、所定の目標車間距離を保ちつつ先行車に追従走行するシステムにおいて、特に先行車が急減速したときに、必要な時間に亘って確実に自車の急減速を実現し得る車両走行制御装置およびその方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、自車と先行車との車間距離である実車間距離を検出する距離検出手段と、前記実車間距離と予め設定された目標車間距離との偏差である車間距離偏差および自車と先行車との相対速度を用いて第1目標加減速度を算出する第1目標加減速度演算手段と、自車と先行車との相対加速度を用いて第2目標加減速度を算出する第2目標加減速度演算手段と、予め設定された変更条件を満足するか否かを判定する条件判定手段と、先行車が急減速しているか否かを判定する先行車判定手段と、前記条件判定手段により前記変更条件を満足しないと判定されたときは前記第1目標加減速度に基づき自車の走行制御を行い、前記条件判定手段により前記変更条件を満足すると判定されたときは前記第2目標加減速度に基づき自車の走行制御を行う走行制御手段とを備え、前記条件判定手段は、前記先行車判定手段により先行車が急減速していると判定され、かつ、前記第1目標加減速度より前記第2目標加減速度の方が小さいときに、前記変更条件を満足すると判定することを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、実車間距離と予め設定された目標車間距離との偏差である車間距離偏差および自車と先行車との相対速度を用いて第1目標加減速度が算出され、自車と先行車との相対加速度を用いて第2目標加減速度が算出される。また、先行車が急減速していると判定され、かつ、第1目標加減速度より第2目標加減速度の方が小さいときに、変更条件を満足すると判定される。
【0010】
そして、変更条件を満足しないと判定されたときは第1目標加減速度に基づき自車の走行制御が行われ、変更条件を満足すると判定されたときは第2目標加減速度に基づき自車の走行制御が行われることにより、先行車が急減速すると、第1目標加減速度より小さい第2目標加減速度に基づき自車が確実に急減速されることとなる。
【0011】
この場合、先行車が急減速していないと判定されたとき、および先行車が急減速していると判定されても、第1目標加減速度が第2目標加減速度以下であるときは、第1目標加減速度に基づき自車の走行制御が行われることから、ノイズを多く含む相対加速度による影響を極力低減することが可能になる。
【0012】
なお、先行車が急減速しているか否かの判定は、自車と先行車との相対速度、自車と先行車との相対加速度、第1目標加減速度などの値の大小に基づき行えばよい。
【0013】
また、自車の車速である自車速を検出する車速検出手段をさらに備え、前記第2目標加減速度演算手段は、前記相対加速度と、前記相対速度を前記自車速で除算した商と、前記車間距離偏差を前記自車速で除算した商との線形加算により前記第2目標加減速度を算出するとしてもよい(請求項2)。
【0014】
この構成によれば、相対加速度と、相対速度を自車速で除算した商と、車間距離偏差を自車速で除算した商との線形加算により第2目標加減速度が算出されることにより、先行車の急減速に対して、自車の急減速を確実に行うことが可能になる。この場合において、上記線形加算における各項の係数は、予め行った実験データやシミュレーションデータなどに基づき設定し、記憶手段に格納しておけばよい。これによって、運転者による実際の減速動作に類似する減速動作を実現することが可能になる。
【0015】
また、前記走行制御手段は、前記走行制御に用いる目標加減速度が加速方向に変化したときは、その変化量を低減した緩和目標加減速度に基づき自車の走行制御を行うとしてもよい(請求項3)。
【0016】
この構成によれば、走行制御に用いる目標加減速度が加速方向に変化したときは、その変化量を低減した緩和目標加減速度に基づき自車の走行制御が行われることにより、急激な加減速度の変化により車両にショックが生じるような事態が未然に防止されることとなる。
【0017】
また、前記走行制御手段は、前記走行制御に用いる目標加減速度の変化量を低減した緩和目標加減速度に基づき自車の走行制御を行うもので、当該目標加減速度が減速方向に変化したときの変化量の低減率は、加速方向に変化したときの変化量の低減率より小さく設定されているとしてもよい(請求項4)。
【0018】
先行車に追従走行する場合において、加速が遅れても支障を来さないが、減速が遅れると車間距離が低下して運転者に不安を与えることになる。しかし、上記構成によれば、目標加減速度が減速方向に変化したときの変化量の低減率は、加速方向に変化したときの変化量の低減率より小さく設定されていることから、減速が遅れるような事態が避けられる。
【0019】
また、前記走行制御手段は、前記走行制御に用いる目標加減速度が前記第2目標加減速度から前記第1目標加減速度に切り換わるときは、予め設定された時間が経過するまでは、当該切換時点からの経過時間に応じた比率で前記第1目標加減速度および前記第2目標加減速度を加算した値に基づき、前記走行制御を行うとしてもよい(請求項5)。
【0020】
この構成によれば、自車の走行制御に用いる目標加減速度が第2目標加減速度から第1目標加減速度に切り換わるときは、予め設定された時間が経過するまでは、当該切換時点からの経過時間に応じた比率で第1目標加減速度および第2目標加減速度を加算した値に基づき、走行制御が行われることにより、目標加減速度が滑らかに変化することとなり、これによって、急激な加減速度の変化により車両にショックが生じるような事態が未然に防止されることとなる。
【0021】
また、請求項6に記載の発明は、自車と先行車との車間距離である実車間距離を検出する距離検出工程と、前記実車間距離と予め設定された目標車間距離との偏差である車間距離偏差および自車と先行車との相対速度を用いて第1目標加減速度を算出する第1目標加減速度演算工程と、自車と先行車との相対加速度を用いて第2目標加減速度を算出する第2目標加減速度演算工程と、予め設定された変更条件を満足するか否かを判定する条件判定工程と、先行車が急減速しているか否かを判定する先行車判定工程と、前記条件判定工程において前記変更条件を満足しないと判定されたときは前記第1目標加減速度に基づき自車の走行制御を行い、前記条件判定工程において前記変更条件を満足すると判定されたときは前記第2目標加減速度に基づき自車の走行制御を行う走行制御工程とを備え、前記条件判定工程では、前記先行車判定工程において先行車が急減速していると判定され、かつ、前記第1目標加減速度より前記第2目標加減速度の方が小さいときに、前記変更条件を満足すると判定されることを特徴としている。
【0022】
この構成によれば、実車間距離と予め設定された目標車間距離との偏差である車間距離偏差および自車と先行車との相対速度を用いて第1目標加減速度が算出され、自車と先行車との相対加速度を用いて第2目標加減速度が算出される。また、先行車が急減速していると判定され、かつ、第1目標加減速度より第2目標加減速度の方が小さいときに、変更条件を満足すると判定される。
【0023】
そして、変更条件を満足しないと判定されたときは第1目標加減速度に基づき自車の走行制御が行われ、変更条件を満足すると判定されたときは第2目標加減速度に基づき自車の走行制御が行われることにより、先行車が急減速すると、第1目標加減速度より小さい第2目標加減速度に基づき自車が確実に急減速されることとなる。
【0024】
この場合、先行車が急減速していないと判定されたとき、および先行車が急減速していると判定されても第1目標加減速度が第2目標加減速度以下であるときは、第1目標加減速度に基づき自車の走行制御が行われることから、ノイズを多く含む相対加速度による影響を極力低減することが可能になる。
【0025】
なお、先行車が急減速しているか否かの判定は、自車と先行車との相対速度、自車と先行車との相対加速度、第1目標加減速度などの値の大小に基づき行えばよい。
【0026】
【発明の実施の形態】
まず、図1を参照して、本発明に係る車両走行制御装置の一実施形態の構成について説明する。図1は同実施形態の制御構成を示すブロック図、図2は記憶部に格納されている目標車間距離の一例を示す図である。
【0027】
この車両走行制御装置は、自車の走行レーン前方を走行する先行車の動きに応じた追従走行等の車両走行の自動化に対応可能であって、運転者によるブレーキ操作に関係なく、自車と先行車との実車間距離に応じて自動的にブレーキ液圧を発生させることにより車輪に制動圧を与えて減速したり、電子スロットルの開度あるいは燃料供給量などを制御して加減速することにより、実車間距離を所定の目標車間距離に保持するように構成されている。そして、通常は車間距離偏差および自車と先行車との相対速度を用いた目標加減速度に基づき自車の走行を制御し、先行車が急減速したときは、自車と先行車との相対加速度を用いた目標加減速度に基づき自車の走行を制御するようにしている。
【0028】
この車両走行制御装置は、図1に示すように、自動走行スイッチ11、車間設定スイッチ12、車輪速センサ13、車間距離センサ14、記憶部15、エンジン電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)16、ブレーキECU17と、これらに電気的に接続されたメインECU18とを備えるとともに、エンジンECU16に電気的に接続されたエンジン駆動部19と、ブレーキECU17に電気的に接続されたアクチュエータ部20とを備えている。
【0029】
自動走行スイッチ11は、先行車に追従する自動走行を指示するためのスイッチで、運転者によりオンにされると、自動走行が行われる。車間設定スイッチ12は、運転者により好みの目標車間距離を選択するためのスイッチである。記憶部15には、例えば図2に示すように、自車速Vに応じて設定された目標車間距離曲線Drfが複数種類(図2では3種類)格納されており、車間設定スイッチ12によって選択された目標車間距離曲線が、自車の目標車間距離として設定される。
【0030】
車輪速センサ13は、車輪の回転速度を検出するもので、例えばパルスエンコーダなどで構成される。車間距離センサ14は、自車と先行車との現在の車間距離である実車間距離Drを検出するもので、例えばレーザ発光部および受光部などで構成される。記憶部15は、ROMやRAMなどからなり、予め設定された値や上記目標車間距離曲線を含むメインECU18の制御プログラムを記憶するとともに、種々の演算データ等を一時的に記憶するものである。
【0031】
エンジン駆動部19は、電子スロットルやトランスミッションなどを駆動するもので、特にエンジンECU16からの制御信号に基づき電子スロットルの開度が制御され、車両が加減速される。アクチュエータ部20は、自動走行のときはブレーキECU17からの制御信号に基づきブレーキ液圧を発生するもので、この発生したブレーキ液圧がホイルシリンダ(図示省略)に伝達され、この伝達されたブレーキ液圧に応じた制動力が車輪に印加されて車両が減速される。
【0032】
メインECU18は、CPUなどで構成され、車輪速センサ13、車間距離センサ14により検出される検出結果に基づき、記憶部15に格納されている制御プログラムに従って、エンジンECU16およびブレーキECU17に制御信号を送出して車両の走行を制御するもので、以下の機能▲1▼〜▲8▼を有する。
【0033】
▲1▼自動走行スイッチ11がオンにされると、先行車に追従する自動走行を開始するとともに、車間設定スイッチ12により選択された目標車間距離曲線を自動走行における目標車間距離として設定する機能;
▲2▼車輪速センサ13により検出される車輪の回転速度に基づき自車速Vを算出する機能;
▲3▼車間距離センサ14により検出される実車間距離Drの変化に基づき、自車と先行車との相対速度Vrおよび自車と先行車との相対加速度Arを算出する機能。
【0034】
▲4▼車間設定スイッチ12によって選択された目標車間距離Drfにおいて、自車速Vに対応する目標車間距離Dvを抽出し、この抽出した目標車間距離Dv、検出された実車間距離Dr、算出された相対速度Vrを用いて、下記式(1)により第1目標加減速度G1を算出する機能。
G1=K1・ΔD+K2・Vr…(1)
但し、K1,K2は予め設定された係数で、記憶部15に格納されている。また、ΔDは車間距離偏差で、ΔD=(Dv−Dr)である。
【0035】
▲5▼相対加速度Ar、相対速度Vr、自車速V、車間距離偏差ΔDを用いて、下記式(2)により第2目標加減速度G2を算出する機能。
G2=K3・Ar+K4・Vr/V+K5・ΔT…(2)
但し、K3〜K5は予め設定された係数で、記憶部15に格納されている。また、ΔTは車間時間偏差で、ΔT=ΔD/Vである。
【0036】
▲6▼先行車が急減速しているか否かを判定する機能。本実施形態では、以下の条件(i)〜(iv)が全て満たされると、先行車が急減速していると判定する。
(i)Vr<V1
(ii)Ar<A1
(iii)ΔT<T1
(iv)G1<α1
但し、V1,A1,T1,α1は、それぞれ予め設定された値で、記憶部15に格納されている。これらの値については後述する。
【0037】
▲7▼先行車が急減速していると判定し、かつ、G2<G1のときに、予め設定された変更条件を満足すると判定する機能。そして、上記変更条件を満足しないと判定すると、第1目標加減速度G1に基づき自車の走行制御を行い、上記変更条件を満足すると判定すると、第2目標加減速度G2に基づき自車の走行制御を行う。
【0038】
▲8▼所定のサンプリング周期で算出される目標加減速度(第1目標加減速度G1または第2目標加減速度G2)の変化量を低減した緩和目標加減速度Gotを算出する機能。この緩和目標加減速度Gotの算出は、車両の加減速度が急変して車両にショックなどが生じないようにするために行われるもので、走行制御には、この緩和目標加減速度Gotが用いられる。
【0039】
ここで、算出された目標加減速度が正方向(加速方向)に変化するときは、強めのフィルタを掛けて(例えば変化量を40%に圧縮して)、変化量を大きく低減する。一方、算出された目標加減速度が正方向に変化しない(減速方向または等速)ときは、弱めのフィルタを掛けて(例えば変化量を80%に圧縮して)、変化量を小さく低減する。すなわち、加速方向への変化は緩やかにし、減速方向への変化はほぼそのままにしておく。
【0040】
車間距離センサ14は距離検出手段に相当し、メインECU18は第1目標加減速度演算手段、第2目標加減速度演算手段、条件判定手段、先行車判定手段、走行制御手段に相当する。また、メインECU18および車輪速センサ13は車速検出手段を構成する。
【0041】
次に、相対速度Vr、相対加速度Ar、目標加減速度G1,G2の各値における正負の符号について説明するとともに、上記設定値V1,A1,T1,α1について説明する。
【0042】
相対速度Vrは、自車と先行車との実車間距離Drを時間微分した値、すなわちVr=dDr/dtである。従って、Vr>0は実車間距離Drが増大していることを表わし、Vr=0は実車間距離Drが変化しないことを表わし、Vr<0は実車間距離Drが減少していることを表わす。先行車が急減速すると、実車間距離Drは減少する。そこで、設定値V1はV1<0の適当な値に設定されている。
【0043】
相対加速度Arは、相対速度Vrを時間微分した値、すなわちAr=dVr/dtである。従って、Ar>0は相対速度Vrが増大していることを表わし、Ar=0は相対速度Vrに変化がないことを表わし、Ar<0は相対速度Vrが減少していることを表わす。さらにAr<0において、Ar≒0は相対速度Vrが緩やかに減少していることを表わし、Ar≪0は相対速度Vrが急激に減少していることを表わす。先行車が急減速すると、相対速度Vrは減少する。そこで、設定値A1はA1<0の適当な値に設定されている。
【0044】
目標加減速度G1において、G1>0は加速が必要なことを表わし、G1<0は減速が必要なことを表わし、G1≒0は加速も減速も不要なことを表わす。先行車が急減速して、G1が絶対値の大きい負の値になった後では制御に遅れが生じるので、設定値α1はα1≒0の適当な値に設定されている。
【0045】
また、目標加減速度G1,G2において、G1>G2>0は、G1の方が急激な加速を目標としていることを表わし、G2<G1<0は、G2の方が急激な減速を目標としていることを表わす。
【0046】
なお、上記各設定値V1,A1,T1,α1は、固定された一定値であってもよく、自車速Vに対応して設定される値であってもよい。
【0047】
次に、図3、図4のフローチャートに従って、メインECU18による走行制御手順について説明する。図3は走行制御手順の一例を示すフローチャートである。同図に示されるルーチンは、所定のサンプリング周期(例えば10msec)で実行される。
【0048】
まず、上記式(1)により第1目標加減速度G1が算出される(ステップ#10)。次いで、ステップ#12,#14,#16,#18において、相対速度Vr、相対加速度Ar、車間時間偏差ΔT、第1目標加減速度G1について、それぞれVr<V1、Ar<A1、ΔT<T1、G1<α1であるか否かが判別される。そして、Vr<V1、Ar<A1、ΔT<T1、かつG1<α1、すなわちステップ#12,#14,#16,#18が全てYESであれば、ステップ#20に進む。一方、Vr≧V1、またはAr≧A1、またはΔT≧T1、またはG1≧α1、すなわちステップ#12,#14,#16,#18のいずれかがNOであれば、ステップ#24に進む。
【0049】
ステップ#20において、上記式(2)により第2目標加減速度G2が算出され、次いで、第1、第2目標加減速度G1,G2の大小が比較され(ステップ#22)、G2≧G1であれば(ステップ#22でNO)、ステップ#24に進み、G2<G1であれば(ステップ#22でYES)、ステップ#26に進む。
【0050】
そして、ステップ#24では仮目標加減速度Gt=G1とされ、ステップ#26では仮目標加減速度Gt=G2とされる。次いで、この仮目標加減速度Gtを用いて緩和目標加減速度Gotが算出される(ステップ#28)。
【0051】
図4は図3のステップ#28の緩和目標加減速度Got算出サブルーチンを示すフローチャートである。まず、図3のステップ#24またはステップ#26で得られた仮目標加減速度Gtが、前回の緩和目標加減速度Gotから正方向、すなわち加速方向に変化したか否かが判別される(ステップ#30)。
【0052】
そして、正方向に変化していれば(ステップ#30でYES)、その変化量を大きく低減して今回の緩和目標加減速度Gotが算出され(ステップ#32)、一方、正方向に変化していなければ、すなわち減速方向に変化していれば(ステップ#30でNO)、その変化量を小さく低減して今回の緩和目標加減速度Gotが算出される(ステップ#34)。
【0053】
次に、図5を用いて、目標加減速度G1,G2の推移について説明する。図5は第1目標加減速度G1および第2目標加減速度G2の推移と、運転者による減速度G3の推移とを示すタイミングチャートである。同図において、目標加減速度G1,G2は、先行車の車速および自車速Vがいずれも50(km/h)で、時刻t=0に先行車が0.3(g)で減速したと仮定してシミュレーションしたものである。但し、gは重力加速度である。また、運転者による減速度G3は、実際のデータを収集したものである。
【0054】
図5に示すように、時刻t=0の減速開始から、第1目標加減速度G1に比べて第2目標加減速度G2の方が、運転者による減速度G3に対して良好に追従していることが分かる。また、時刻t≒5においてG2<G1からG2>G1に逆転しており、この時点で第2目標加減速度G2から第1目標加減速度G1に切り換えることにより、自車をより素早く減速できることが分かる。
【0055】
次に、図6を用いて、最大到達減速度について説明する。図6は運転者がブレーキ操作を行ったときの最大到達減速度を示す図である。同図では、説明の便宜上、最大到達減速度を正の値としている。
【0056】
図6において、◆、■、▲マークは、それぞれ先行車速および自車速を20、50、80km/hとして自車の運転者が実際にブレーキ操作を行ったときの第2目標加減速度G2の値と、そのときに得られる最大到達減速度との関係を示している。また、同図の直線は、各◆、■、▲マークのデータを用いて、最小自乗法により、G2≒最大到達減速度となるように上記式(2)の係数K3〜K5を決定した結果を示している。
【0057】
図6は相対加速度が減速側に大きいときの運転者の反応を評価したデータに基づくもので、このようなときに運転者は必要な最大減速度を想定して強めにブレーキ操作を行うと思われることから、本実施形態のメインECU18も運転者と同様に、想定した最大減速度を出力しており、これによって、より早い減速が可能となっている。
【0058】
このように、本実施形態によれば、先行車が急減速するなどの所定の変更条件を満足すると判定されると、相対加速度を用いて算出した第2目標加減速度G2に基づき自車の走行制御を行うようにしているので、自車を急減速させることができ、先行車との車間距離が小さくなって運転者に不安を与えるような事態を未然に防止することができる。
【0059】
この場合において、走行制御に相対加速度を常時採用していると、ノイズの影響が大きくなるが、本実施形態によれば、先行車が急減速するなどの所定の変更条件を満足すると判定されたときにのみ相対加速度を採用しているので、ノイズによる悪影響は可能な限り小さくすることができる。
【0060】
また、従来と同様に算出された第1目標加減速度G1と、相対加速度を用いた第2目標加減速度G2とを比較し、より大きな減速度が得られる方を走行制御に用いるようにしているので、自車の急減速を確実に実現することができる。
【0061】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能であり、例えば以下に示す変形形態(1)〜(3)を採用することができる。
【0062】
(1)上記実施形態では条件(i)〜(iv)の全てが満たされたときに先行車が急減速していると判定するようにしているが、これに限られず、条件(i)〜(iv)の一部のみが満たされたときに先行車が急減速していると判定するようにしてもよい。
【0063】
(2)上記図4のステップ#34では、減速方向に変化しているときにも変化量を低減するようにしているが、これに限られず、変化量の低減量を0とし、仮目標加減速度Gtをそのまま緩和目標加減速度Gotとしてもよい。
【0064】
(3)緩和目標加減速度Gotの算出は、上記図4に示す手順に限られない。図7は図3のステップ#28の異なる手順例を示すフローチャートである。この形態では、メインECU18は、第2目標加減速度G2に基づく走行制御により急減速を開始した後にG2>G1となって、走行制御に用いる目標加減速度が第2目標加減速度G2から第1目標加減速度G1に切り換えられたときに、その切換時点から予め設定された時間τが経過するまでは、下記式(3)により、双方の目標加減速度G1,G2を補間して緩和目標加減速度Gotを算出する。
Got=G2・(1−t/τ)+G1・t/τ…(3)
但し、tは目標加減速度の切換時点からの経過時間である。
【0065】
図7において、まず、走行制御に用いる目標加減速度が第2目標加減速度G2から第1目標加減速度G1に切り換えられたか否かが判別され(ステップ#40)、切り換えられていなければ(ステップ#40でNO)、仮目標加減速度Gtをそのまま緩和目標加減速度Gotとする(ステップ#42)。一方、切り換えられていれば(ステップ#40でYES)、上記式(3)により、双方の目標加減速度G1,G2を補間することで緩和目標加減速度Gotが算出される(ステップ#44)。
【0066】
この形態によれば、目標加減速度の変化を滑らかにすることができ、これによって、確実に、車両の加減速度が急変して車両にショックなどが生じるような事態を未然に防止することができる。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1,6の発明によれば、変更条件を満足しないと判定されたときは車間距離偏差および相対速度を用いて算出された第1目標加減速度に基づき自車の走行制御を行い、変更条件を満足すると判定されたときは相対加速度を用いて算出された第2目標加減速度に基づき自車の走行制御を行うようにしており、先行車が急減速していると判定され、かつ、第1目標加減速度より第2目標加減速度の方が小さいときに、変更条件を満足すると判定するようにしているので、先行車が急減速すると、第1目標加減速度より小さい第2目標加減速度に基づき自車を確実に急減速することができる。この場合、必要なとき以外は第1目標加減速度に基づき自車の走行制御を行うことにより、ノイズを多く含む相対加速度による影響を極力低減することができる。
【0068】
また、請求項2の発明によれば、相対加速度と、相対速度を自車速で除算した商と、車間距離偏差を自車速で除算した商との線形加算により第2目標加減速度を算出するようにしているので、先行車の急減速に対して、自車の急減速を確実に行うことができる。
【0069】
また、請求項3の発明によれば、走行制御に用いる目標加減速度が加速方向に変化したときは、その変化量を低減した緩和目標加減速度に基づき自車の走行制御を行うようにしているので、急激な加減速度の変化により車両にショックが生じるような事態を未然に防止することができる。
【0070】
また、請求項4の発明によれば、目標加減速度が減速方向に変化したときの変化量の低減率を加速方向に変化したときの変化量の低減率より小さく設定するようにしているので、減速が遅れるような事態を避けることができる。
【0071】
また、請求項5の発明によれば、自車の走行制御に用いる目標加減速度が第2目標加減速度から第1目標加減速度に切り換わるときは、予め設定された時間が経過するまでは、当該切換時点からの経過時間に応じた比率で第1目標加減速度および第2目標加減速度を加算した値に基づき、走行制御を行うようにしているので、目標加減速度を滑らかに変化させることができ、これによって、急激な加減速度の変化により車両にショックが生じるような事態を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る車両走行制御装置の一実施形態の制御構成を示すブロック図である。
【図2】 記憶部に格納されている目標車間距離の一例を示す図である。
【図3】 走行制御手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】 図3のステップ#28の緩和目標加減速度算出サブルーチンを示すフローチャートである。
【図5】 第1目標加減速度および第2目標加減速度の推移と、運転者による減速度の推移とを示すタイミングチャートである。
【図6】 第2目標加減速度により走行制御を行ったときの最大到達減速度を示す図である。
【図7】 図3のステップ#28の異なる手順例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
13 車輪速センサ(車速検出手段)
14 車間距離センサ(距離検出手段)
15 記憶部(第1記憶手段、第2記憶手段、速度記憶手段)
18 メインECU(第1目標加減速度演算手段、第2目標加減速度演算手段、条件判定手段、先行車判定手段、走行制御手段、車速検出手段)
Claims (6)
- 自車と先行車との車間距離である実車間距離を検出する距離検出手段と、
前記実車間距離と予め設定された目標車間距離との偏差である車間距離偏差および自車と先行車との相対速度を用いて第1目標加減速度を算出する第1目標加減速度演算手段と、
自車と先行車との相対加速度を用いて第2目標加減速度を算出する第2目標加減速度演算手段と、
予め設定された変更条件を満足するか否かを判定する条件判定手段と、
先行車が急減速しているか否かを判定する先行車判定手段と、
前記条件判定手段により前記変更条件を満足しないと判定されたときは前記第1目標加減速度に基づき自車の走行制御を行い、前記条件判定手段により前記変更条件を満足すると判定されたときは前記第2目標加減速度に基づき自車の走行制御を行う走行制御手段とを備え、
前記条件判定手段は、前記先行車判定手段により先行車が急減速していると判定され、かつ、前記第1目標加減速度より前記第2目標加減速度の方が小さいときに、前記変更条件を満足すると判定することを特徴とする車両走行制御装置。 - 自車の車速である自車速を検出する車速検出手段をさらに備え、
前記第2目標加減速度演算手段は、前記相対加速度と、前記相対速度を前記自車速で除算した商と、前記車間距離偏差を前記自車速で除算した商との線形加算により前記第2目標加減速度を算出することを特徴とする請求項1に記載の車両走行制御装置。 - 前記走行制御手段は、前記走行制御に用いる目標加減速度が加速方向に変化したときは、その変化量を低減した緩和目標加減速度に基づき自車の走行制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の車両走行制御装置。
- 前記走行制御手段は、前記走行制御に用いる目標加減速度の変化量を低減した緩和目標加減速度に基づき自車の走行制御を行うもので、当該目標加減速度が減速方向に変化したときの変化量の低減率は、加速方向に変化したときの変化量の低減率より小さく設定されていることを特徴とする請求項3に記載の車両走行制御装置。
- 前記走行制御手段は、前記走行制御に用いる目標加減速度が前記第2目標加減速度から前記第1目標加減速度に切り換わるときは、予め設定された時間が経過するまでは、当該切換時点からの経過時間に応じた比率で前記第1目標加減速度および前記第2目標加減速度を加算した値に基づき、前記走行制御を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の車両走行制御装置。
- 自車と先行車との車間距離である実車間距離を検出する距離検出工程と、
前記実車間距離と予め設定された目標車間距離との偏差である車間距離偏差および自車と先行車との相対速度を用いて第1目標加減速度を算出する第1目標加減速度演算工程と、
自車と先行車との相対加速度を用いて第2目標加減速度を算出する第2目標加減速度演算工程と、
予め設定された変更条件を満足するか否かを判定する条件判定工程と、
先行車が急減速しているか否かを判定する先行車判定工程と、
前記条件判定工程において前記変更条件を満足しないと判定されたときは前記第1目標加減速度に基づき自車の走行制御を行い、前記条件判定工程において前記変更条件を満足すると判定されたときは前記第2目標加減速度に基づき自車の走行制御を行う走行制御工程とを備え、
前記条件判定工程では、前記先行車判定工程において先行車が急減速していると判定され、かつ、前記第1目標加減速度より前記第2目標加減速度の方が小さいときに、前記変更条件を満足すると判定されることを特徴とする車両走行制御方法。
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