JP4696409B2 - 車両の運転操作支援装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアクセル操作によって車両の加減速度を調整可能な車両の運転支援装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
高速道路などの自動車専用道路を多数の車両が通行している場合、同一レーン上の先行車が減速した場合には、追突を予防するため速やかに自車も減速を行う必要がある。
【0003】
ところで、走行中は通常アクセルペダル操作が行われていることから、減速の際には、運転者はアクセルペダルからブレーキペダルへの踏み替え操作を行う必要があるが、車速に対して車間距離が短い場合等には、この踏み替え操作に時間を要するため、必要な車間距離が保てなくなる虞がある。
【0004】
特開昭50−6021号公報に開示されている技術は、こうした踏み替え操作時に制動力発生のタイムラグを抑制する技術であって、アクセルオフ時に車速に応じて機械的に制動力を付与するものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記技術は先行車との追突を防止するため、速度に応じて所定のブレーキ油圧を付与するので、アクセルをゆるめた場合とオフにした場合とで減速度が不連続に変化することとなり、運転者が速度を微調整することが困難であるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明はアクセル操作によって加減速度を調整することが可能な車両の運転支援装置を提供することを課題とする。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る車両の運転支援装置は、運転者のアクセル操作を検出するアクセル操作量検出手段と、車両に制動力を付与する制動力付与手段と、アクセル操作量検出手段によりアクセル戻し操作を検出した場合に、制動力付与手段により所定の減速プロファイルに基づいて制動力を付与する制御手段と、を備えており、この制御手段は、前記減速プロファイルに基づいて制動力付与開始するアクセル開度をエンジンブレーキが作動する以前のアクセル開度であって、アクセルペダルを戻し始めた時点のアクセル開度とアクセル戻し速度に基づいたアクセル開度に設定することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、所定の減速プロファイルに基づいて制動力を付与することでエンジンブレーキに対してアシスト制動力を付加し、アクセルペダルのみで調整可能な速度範囲を拡張する。そして、付与する減速度を時間的に変更することで過大な減速度を付与することがなく、運転者の意志に応じた速度調整が可能となる。また、さらに減速するために運転者がブレーキペダルへ踏み替える場合にも余裕を持って操作を行うことが可能である。
【0009】
この制御手段は、アクセル操作量検出手段で検出されたアクセル戻し速度が速いほど制動力付与手段により制動力付与を開始するアクセル開度を大きくすることが好ましい。
【0010】
アクセルオフによりエンジンブレーキが有効に作動するまでにはタイムラグがあるため、エンジンブレーキのアシスト制動力を早く付加することで運転者が意図する速度への減速を速やかに行うことができる。さらに、戻し操作中から減速度を付加することで、アクセル操作による加減速の調整範囲を拡張するとともに、加速から減速へのスムースな移行が行える。
【0011】
また、制御手段は、制動力付与制御中にアクセル操作量検出手段によりアクセル開操作が検出された場合には、操作速度が速いほど制動力付与手段により付与していた制動力の低下速度を早めるものでもよい。これにより、運転者の意図に応じてスムースな減速から加速への移行が行える。
【0012】
制御手段は、車両が所定の減速状態に達した後に制動力付与手段により付与する制動力を低下せしめることが好ましい。これにより、過度の制動力を付与して必要以上に減速を行うことがない。
【0013】
先行車両との相対速度および/または自車速度を検出する速度検出手段をさらに備えており、制御手段は、所定の減速状態を速度検出手段で検出された先行車両との相対速度または自車の車速が制動力付与制御開始時点から所定割合低下した時点に設定することが好ましい。これにより先行車との車間距離を保持し、適切なクルーズコントロールを行うことができる。
【0014】
車輪の走行路面上での滑りやすさを判定する判定手段をさらに備えており、制御手段は、判定された滑りやすさに応じて制動力付与手段により付与する制動力を制御することが好ましい。これにより、低μ路において過度の制動力を付与することによるスリップの発生を抑制できる。
【0015】
運転者のブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量検出手段をさらに備えており、制御手段は、検出されたブレーキ操作量が所定以上に達した時点で制動力付与手段による制動力付与を停止する、検出されたブレーキ操作量に応じて制動力付与手段による制動力付与を漸減する、あるいは制動力付与手段による制動力付与に加えて検出されたブレーキ操作量に応じた制動力を付与することが好ましい。これにより、運転者が意図した通りの制動力付与へとスムースに移行することができる。
【0016】
所定範囲内の先行車の位置を検出する先行車検出手段をさらに備えており、制御手段は先行車検出手段で先行車が検出されない場合には、制動力付与制御を禁止または制限することが好ましい。これにより、車間距離が所定範囲内である場合には、余裕を持った減速操作が可能となる一方、車間距離が充分にある場合には、不必要な減速を避けることができ、車速コントロール性や燃費の悪化を抑制できる。
【0017】
制御手段は、車速が所定値を超える場合には制動力付与制御を停止することが好ましい。これにより、高速走行中の不必要な減速を避けることができ、車速コントロール性や燃費の悪化を抑制できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の参照番号を附し、重複する説明は省略する。
【0019】
図1は本発明に係る車両の運転支援装置の概略構成を示すブロック図である。本装置の制御手段は、エンジンECU10、ブレーキECU20、車間距離ECU30から構成されている。そして、エンジンECU10は、ブレーキECU20、車間距離ECU30のそれぞれと相互に情報を交信する機能を有している。
【0020】
エンジンECU10には、運転者のアクセル操作量を検出するアクセルセンサ11、車速を検出する車速センサ12、シフト設定状態を検出するシフトセンサ13、雨滴を検知するレインセンサ18の各検出出力が入力されるとともに、運転者がクルーズコントロールの設定を行うためのクルーズコントロールスイッチ14と車間距離設定スイッチ17の出力が入力されている。そして、図示していないスロットルに取り付けられ、その開度を調整するスロットルコントロールモータ15と、自動シフト設定を行うシフトコントローラ16を制御するとともに、表示系40に対して所定の出力信号を出力するものである。
【0021】
ブレーキECU20には、運転者のハンドル操作量を検出する操舵角センサ21と、車体のヨーレートを検出するヨーレートセンサ22と、運転者のブレーキ操作量を検出するブレーキセンサ23の各検出出力が入力されており、各車輪に取り付けられた油圧ブレーキへ付与する制動力を制御するブレーキアクチュエータ24の作動と、ストップランプ25の点灯を制御するものである。
【0022】
車間距離ECU30には、車体前方へパルスレーザを照射して、反射光受光までの時間により先行車の有無、相対速度を検出するためのレーザレーダセンサ31が接続されている。
【0023】
図2は、この運転支援装置によるクルーズコントロールを説明する図である。このクルーズコントロールは、自車の車速を設定速度に維持する定速走行制御と先行車との車間距離を安全な間隔に維持する車間制御から構成されている。ここでは、設定車速をVa、設定車間距離を車速Vに比例したV×ta(以下、時間taを単に設定車間という)として制御する場合を例に説明する。このクルーズコントロールは、アクセルセンサ11で検出されたアクセル操作量が所定範囲にある状態で行われるものであり、設定速度の設定はクルーズコントロールスイッチ14により、車間距離(時間)の設定は車間距離設定スイッチ17により行われる。なお、レインセンサ18により雨滴が検出された場合には、レーザレーダセンサ31による先行車の正確な検出が期待できないため、クルーズコントロールは解除される。
【0024】
まず、図2(a)に示されるように、自車1の前の所定範囲内に先行車がレーザレーダセンサ31によって検出されていないと車間距離ECU30が判定した場合には、エンジンECU10は、シフトコントローラ16、スロットルコントロールモータ15を制御することで、自車1の車速をVaに維持する。
【0025】
次に、図2(b)に示されるように、車間距離ECU30が先行車2が存在していると判定した場合であっても、その速度Vbが自車の車速Vaより速く、その車間距離Laが設定距離より離れつつあるか、または遅い場合であっても安全な車間距離が確保されている場合には、エンジンECU10は、自車1の車速をそのままの状態で維持する。
【0026】
一方、図2(c)に示されるように、車間距離ECU30が先行車との車間距離Lbが設定距離に近づいているかそれより短い場合には、エンジンECU10は、シフトコントローラ16、スロットルコントロールモータ15を制御することで、自車の車速をVbへと減速することで、車間距離を安全な距離に維持する。変速やスロットル調整のみでは減速が不十分な場合には、ブレーキECU20に減速を指示し、ブレーキECU20は、ブレーキアクチュエータ24を作動させることで、制動力を付与して減速を行うとともに、ストップランプ25を点灯させて制動中であることを後続車に知らしめる。
【0027】
また、図2(d)に示されるように、減速制御中に先行車2が他のレーンに移動したり、加速することによって安全な距離が確保できる場合には、エンジンECU10は、シフトコントローラ16、スロットルコントロールモータ15を制御することで、自車1の車速を再度設定速度のVaへと加速する。
【0028】
なお、クルーズコントロール中は、いずれの状態においても現在の制御状態に関する情報を表示系40により表示することで運転者に注意を促すことが好ましい。
【0029】
本実施形態では、さらに以下に述べるようにアクセルオフ時に制動力を付与する減速制御を行うことを特徴とする。
【0030】
図3は、この減速制御の処理を表わすフローチャートである。この制御は、エンジンECU10とブレーキECU20が協調して行うものであって、システムがオンにされてから所定のタイミングで繰り返し実行される。
【0031】
まず、ステップS1では、アクセルオフによる減速処理モードであるか否かを判定する。具体的には、後述する減速制御フラグがオンに設定されているか否かにより判定を行う。
【0032】
減速制御フラグがオンでない場合には、ステップS2へと移行し、アクセルセンサ11で検出したアクセル操作量を基にしてアクセル開度θが閾値θTH以下に変更されたか否かを判定する。この閾値θTHは一定値ではなく、例えば次式により設定される可変値とすることが好ましい。
【0033】
【数1】
Figure 0004696409
【0034】
ここで、θaはアクセルを戻し始めたときのアクセル開度であり、kは定数である。これによれば、閾値θTHはアクセルを戻し始めたときのアクセル開度が大きいほど、また、その戻し速度が速いほど、大きく設定されることになる。
【0035】
ステップS2でアクセル開度θが前回まで閾値θTHを超えていたのに、今回閾値θTH以下に変更されたと判定された場合には、ステップS3で減速制御フラグをオンにすることで減速処理モードへと移行し、ステップS4へと進む。閾値θTHを上式のように設定した場合、運転者がアクセルを素早く戻したときほど減速処理モードへの移行を早く行うことができるので、運転者の意図に則した減速操作を行うことができる。
【0036】
一方、ステップS2でアクセル開度θが新たに閾値θTH以下に変更されたわけではないと判定された場合には、減速処理モードへは移行せず、その後の処理をスキップして、処理を終了する。このとき、クルーズコントロールが設定されていれば、それによる定速制御、車間制御が行われることになる。また、アクセル、ブレーキが操作されている場合にはそれに応じた加速、減速処理が行われる。
【0037】
ステップS4では、この減速処理モード中の減速プロファイルを設定する。例えば、減速処理モードに突入した際の車速、先行車との相対速度、車間距離に基づいて必要とされる最大減速度Gaを算出し、これを基にして減速度プロファイルを設定する。
【0038】
図4、図5はここで設定される減速プロファイルのいくつかの例を示したグラフである。まず、図4(b)、(c)は、アクセルが図4(a)に示されるようにオフ操作された場合に設定される減速プロファイルを示している。
【0039】
いずれの場合でも、減速モードに移行する時刻t1から減速度を増加せしめ、時刻t3で最大減速度Gaに到達させる点は同一である。ただし、図4(b)に示される場合には、時刻t3の後は、時刻t5までの間に付与減速度を漸減させるのに対して、図4(c)に示される場合は一定時間(時刻t4までの間)付与減速度を最大値Gaで保持して、その後時刻t6までの間に減速度を漸減させる点が相違する。
【0040】
図5(c)に示される減速プロファイルの設定例においては、アクセル開度(図5(a)参照)の変化とともに車速センサ12で検出された車速変化(図5(b)を参照して、減速度が所定の減速度G0に達してから、車速が目標値Vthに達した時点t7から時点t8にかけて減速度を低下させるものである。
【0041】
この目標値Vthは、例えば減速制御モード開始時の車速V1から所定割合β低下した車速、つまりVth=(1−β)×V1として設定すればよい。これにより支援範囲が明確になる。あるいは、相対速度が所定割合低下した時点から所定時間経過した後に減速度を低下させる減速度プロファイルを採用してもよい。
【0042】
設定される減速度プロファイルは、自車の車速および/または先行車との相対速度の時間変化が下に凸となるように付加することが好ましい。これにより、制御モード突入から早期に大きな減速度を付加し、その後速度変化を小さくしていくことで運転者に安心感を与えることができる。
【0043】
なお、操舵角センサ21、ヨーレートセンサ22により操舵中あるいは走行状態が不安定であることが検出された場合には、その走行状態に応じて減速度の付与プロファイルを変更することが好ましい。これにより走行状態に応じた適切な減速度を付与することができ、運転者の意図に応じた減速が可能となる。
【0044】
ステップS5では、設定された減速度プロファイルに応じて付与すべき制動力を演算し、ブレーキアクチュエータ24による制動油圧を設定する。この付与制動力は目標減速度に対してシフトダウン、エンジンブレーキによる減速度では不足する減速度を補うものである。
【0045】
ステップS6では、設定油圧が正であるか否かを判定する。設定油圧が正である場合には、設定油圧に応じた制動制御を行う必要があるからステップS7へと移行して、設定油圧が実現されるようブレーキアクチュエータ24を制御して処理を終了する。この際に、必要があれば、スロットルコントロールモータ15、シフトコントローラ16を制御することで、スロットルの閉操作、シフトダウン操作を平行して行うが、これらによる減速度発生には遅れがあるため、ブレーキ制動力を付与することで目標減速度を確実に発生させることができ、運転者の意図通りの車速調整が実施しやすい。
【0046】
一方、ステップS6で設定油圧が0と判定された場合、すなわち、シフトダウン、エンジンブレーキによる減速で充分と判定された場合には、ステップS8へと移行して減速制御フラグをオフにして、減速処理モードを解除したうえで、制動処理を行わずに、処理を終了する。この後、必要であればクルーズコントロールによる処理が行われる。
【0047】
ステップS1で、既に減速処理モードに設定されていると判定された場合には、ステップS11へと移行し、アクセル開度θと閾値θth’とを比較し、再度アクセル操作が行われていないかを判定する。このときの閾値θth’はアクセル操作速度に応じて設定することが好ましい。
【0048】
ステップS11でアクセル開度θが閾値θth’以下であると判定された場合には、アクセルオフ操作が続行されており、減速処理モードを継続する必要があると判断して、ステップS12へと移行する。一方、ステップS11でアクセル開度θが閾値θth’を超えていると判定された場合(図7(a)参照)には、運転者はアクセル操作により減速の停止若しくは加速への切替を望んでいるものと推定されるから、減速処理モードを解除する必要があると判断して、ステップS21へと移行する。
【0049】
ステップS12においては、ブレーキ操作が行われているか否かを判定する。ブレーキ操作が行われていない場合には、ステップS13へと移行して現在が停止中か否かを判定する。車両が未だ停止していない場合には、ステップS5へと移行して、減速処理を継続する。一方、車両が設定した減速プロファイルに基づいて停止した場合には、運転者がアクセル操作を行わない限り、車両が停止状態で維持されることを望んでいるものと推定し、ステップS14へと移行して、車両の停止状態を維持するのに必要な制動油圧を演算する。そして、ステップS7へと移行してブレーキアクチュエータ24を制御して停止処理を継続する。この場合、クルーズコントロールは解除された状態になる。
【0050】
一方、ステップS12でブレーキ操作が行われたと判定された場合には、運転者はさらに制動力を付与して大きな減速度を付加することを要求しているものと推定し、ステップS15へと移行して、運転者の操作したブレーキ操作量に基づいて、事前に設定された減速プロファイルによる減速度から得られる付与制動力より大きな制動力を印加するブレーキ油圧を設定する。
【0051】
図6は、この制御の一例を示すグラフであり、図6(a)がブレーキ開度操作の時間変化を図6(b)はそのときのブレーキ油圧の時間変化を示している。図6(b)において、実線は実際の制御ブレーキ油圧Ptを、点線は減速プロファイルに基づいて設定されるべきブレーキ油圧Pdを、一点鎖線はブレーキ操作量にのみ基づいて設定されるべきブレーキ油圧Pbを示している。図6に示されるように、ブレーキ操作が開始された時点taから例えば、Pt=Pd+α×Pbとなるよう設定する。そして、PtがPb以上となった時点tb以後はPt=Pbと制御することで運転者が違和感を持たない減速操作を実現できる。
【0052】
具体的には、続く、ステップS16では、PtとPbとを比較して、Pt>Pbの場合には、減圧処理フラグをオンにしたままステップS7へと移行して減速処理モードの処理を継続する。一方、PtがPbに一致した時点で、減速制御フラグをオフにして減速処理モードを解除して(ステップS17)処理を終了する。そのご、通常の制動操作に移行することで、連続性をもたせて制動力を制御することが可能である。
【0053】
もちろん、ブレーキ操作が行われた場合には、運転者のブレーキ操作はさらに制動力を付与する意図であると推定して、ブレーキ操作の制動力を減速プロファイルに基づく減速度に単純に追加して付与してもよい。
【0054】
また、ステップS21からはアクセル操作に基づく制動処理モードの解除操作に移行する。具体的には、ステップS21では、現在制動処理中であるか、具体的には、前回のタイムステップでブレーキ油圧が正に設定されているか否かを判定する。そして、制動が既に行われていないと判定された場合には、ステップS17へと移行して、減速制御フラグをオフにして、減速処理モードを解除して処理を終了する。その後、通常のアクセル操作によるスロットル、シフト状態制御、若しくは、クルーズコントロール処理へと移行する。
【0055】
一方、前回のタイムステップでブレーキ油圧が正に設定されている場合には、ステップS22へと移行し、ブレーキ油圧を漸減させる処理を行う。図7はこのブレーキ油圧漸減処理を説明する図であり、(a)がアクセル開度の時間変化、(b)がブレーキ油圧の時間変化を示している。
【0056】
減速プロファイルに基づいてブレーキ油圧を図7(b)に点線で示されるように変化するよう設定している場合に、アクセル操作がなされた場合、アクセル開度が閾値θth’を超えた時点でその時点のアクセル操作速度dθ/dtに比例する勾配でブレーキ油圧を実線で示すように削減することで、制動力を低下させて減速度を低下させることで加速への移行をスムースに行うことができる。
【0057】
本制御によれば、アクセルをオフにすることで、通常のエンジンブレーキより素早くかつ当初においては大きな減速度を付加することができるので、アクセル操作のみで調整可能な速度範囲が広がり、車速のコントロール性が向上する。また、余裕を持ってアクセルからブレーキへの踏み替え操作が行える。さらに、アクセルオフにしてから制動力による減速度を付与し続けることがないので、減速しすぎることがなく、運転者の意図以上の減速が行われることがない。
【0058】
さらに、以前の制動状態等から走行中の路面における車輪の滑りやすさを判定し、その判定結果に応じて減速プロファイル、制動油圧を制御することで、スリップの発生を抑制することが好ましい。
【0059】
また、先行車との車間距離が充分に開いている場合や、車速が充分に速い場合には、減速処理モードに移行しないように設定してもよい。先行車との車間距離が充分にある場合には、大きな減速度を付与する必要性に乏しいし、特にクルーズコントロール実施中は、運転者はアクセルオフでも定速走行が継続されることを望んでいると推定されるからである。高速走行中においても同様のことがいえ、過剰な減速度付与はかえって運転者の意図に反する可能性がある。このような場合には、減速度付与を禁止あるいは制限することにより、燃費の悪化を防止する効果もある。
【0060】
一方、渋滞等の車速が低く、車間が狭い状況下では、従来の技術によれば、頻繁なアクセル、ブレーキ操作が必要とされるが、本発明によれば、アクセル操作のみで減速、加速を広い範囲でコントロールすることが可能であるため、ドライバビリティーが向上する。
【0061】
以上の説明では、クルーズコントロールを行う車両に搭載する例を説明してきたが、本発明は定速走行や車間制御走行機能を有しない車両についても同様に適用可能である。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、アクセル操作による車速コントロール性能が向上し、余裕を持ってアクセル操作からブレーキ操作への移行を行うことができる。また、減速プロファイルを制御するので、運転者の意図に反する減速が行われることがなく、ドライバビリティーが悪化することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車両の運転支援装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の装置で行うクルーズコントロールを説明する図である。
【図3】図1の装置における減速制御の処理を表わすフローチャートである。
【図4】図3の処理における減速度プロファイルの各種の例を示す図である。
【図5】図3の処理における減速度プロファイルの別の例を示す図である。
【図6】図3の処理において運転者によるブレーキ操作が行われたときのブレーキ油圧制御の一例を示す図である。
【図7】図3の処理中において運転者によるアクセル操作が行われたときのブレーキ油圧制御の一例を示す図である。
【符号の説明】
1…自車、2…先行車、10…エンジンECU、11…アクセルセンサ、12…車速センサ、13…シフトセンサ、14…クルーズコントロールスイッチ、15…スロットルコントロールモータ、16…シフトコントローラ、17…車間距離設定スイッチ、18…レインセンサ、20…ブレーキECU、21…操舵角センサ、22…ヨーレートセンサ、23…ブレーキセンサ、24…ブレーキアクチュエータ、25…ストップランプ、30…車間距離ECU、31…レーザレーダセンサ、40…表示系。

Claims (11)

  1. 運転者のアクセル操作を検出するアクセル操作量検出手段と、
    車両に制動力を付与する制動力付与手段と、
    前記アクセル操作量検出手段によりアクセル戻し操作を検出した場合に、前記制動力付与手段により所定の減速プロファイルに基づいて制動力を付与する制御手段と、を備えており、前記制御手段は、前記減速プロファイルに基づいて制動力付与開始するアクセル開度をエンジンブレーキが作動する以前のアクセル開度であって、アクセルペダルを戻し始めた時点のアクセル開度とアクセル戻し速度に基づいたアクセル開度に設定することを特徴とする車両の運転支援装置。
  2. 前記制御手段は、前記アクセル操作量検出手段で検出されたアクセル戻し速度が速いほど前記制動力付与手段により制動力付与を開始するアクセル開度を大きくすることを特徴とする請求項1記載の車両の運転支援装置。
  3. 前記制御手段は、制動力付与制御中に前記アクセル操作量検出手段によりアクセル開操作が検出された場合には、操作速度が速いほど前記制動力付与手段により付与していた制動力の低下速度を早めることを特徴とする請求項1記載の車両の運転支援装置。
  4. 前記制御手段は、車両が所定の減速状態に達した後に前記制動力付与手段により付与する制動力を低下せしめることを特徴とする請求項1記載の車両の運転支援装置。
  5. 先行車両との相対速度および/または自車速度を検出する速度検出手段をさらに備えており、前記制御手段は、前記所定の減速状態を前記速度検出手段で検出された先行車両との相対速度または自車の車速が前記制動力付与制御開始時点から所定割合低下した時点に設定することを特徴とする請求項4記載の車両の運転支援装置。
  6. 車輪の走行路面上での滑りやすさを判定する判定手段をさらに備えており、前記制御手段は、判定された滑りやすさに応じて前記制動力付与手段により付与する制動力を制御することを特徴とする請求項1記載の車両の運転支援装置。
  7. 運転者のブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量検出手段をさらに備えており、前記制御手段は、検出されたブレーキ操作量が所定以上に達した時点で前記制動力付与手段による制動力付与を停止することを特徴とする請求項1記載の車両の運転支援装置。
  8. 運転者のブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量検出手段をさらに備えており、前記制御手段は、検出されたブレーキ操作量に応じて前記制動力付与手段による制動力付与を漸減することを特徴とする請求項1記載の車両の運転支援装置。
  9. 運転者のブレーキ操作量を検出するブレーキ操作量検出手段をさらに備えており、前記制御手段は、前記制動力付与手段による制動力付与に加えて検出されたブレーキ操作量に応じた制動力を付与することを特徴とする請求項1記載の車両の運転支援装置。
  10. 所定範囲内の先行車の位置を検出する先行車検出手段をさらに備えており、前記制御手段は前記先行車検出手段で先行車が検出されない場合には、制動力付与制御を禁止または制限することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の車両の運転支援装置。
  11. 前記制御手段は、車速が所定値を超える場合には前記制動力付与制御を停止することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の車両の運転支援装置。
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