JP4036079B2 - 車両のフットレスト構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のフットレスト構造に関し、特に、車両が前面衝突したときに、フットレストを変形させるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、フットレストは、車両のダッシュパネル下部に車両前後方向前上がりに傾斜して配置されるものであるが、車両が前面衝突したときにダッシュパネル面が後方へ変位し、それに伴ってフットレストも後方へ起き上がる場合がある。これにより、乗員の足が後方へ押し曲げられるため、足首の角度が極端に小さくなり、下肢傷害を引き起こす場合がある。
【0003】
従来、上記課題を解決するため、フットレストを、一面が開口した三角柱をその開口面をダッシュパネル面に伏せたように構成し、このフットレストの壁面の角に当たる部分に脆弱部を形成し、前面衝突時におけるダッシュパネル面の後方変位、および前面衝突時に乗員に作用する慣性力によって生じるフットレストと乗員の足との相対的な荷重によって、脆弱部が破断されるように構成することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−305747
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年では、車体構造の工夫等により、前面衝突時のダッシュパネル面の室内側への入り込みを抑制した車両も開発されており、このような車両にあっては、衝突時にはダッシュパネル面の後方変位が小さくてもフットレストを変形させて略平坦となるように構成する一方で、通常の使用状態では変形しないように構成することが要求され、フットレストの変形を制御することは極めて難しいものであった。上記先行技術では、フットレスト壁面の角の部分に脆弱部を形成している点と、前面衝突時の相対的な荷重によって脆弱部を破断するよう構成している点から考えて、足載せ板からの荷重に対する十分な剛性強度を持たせることが難しく、衝突時ではない通常の使用状態においても脆弱部が破断してしまう恐れがあった。
【0006】
また、車両の設計上の都合により、足を載せるのに十分な大きさの足載せ板を有したフットレストを配置できない場合、例えば、車体強度等の要求からフロアトンネルを通常より大きくしなければならず、フロアトンネル側方に配置されるフットレストの足載せ板を小さくする必要がある場合には、上記先行技術に開示された技術思想では下肢傷害を回避できなかった。
【0007】
すなわち、このような場合には、足の踵部分を載せられず、つま先部分を載せて使用するようなフットレスト構造となる。このようなフットレスト構造においては、車両の前面衝突により乗員に強い慣性力が作用し、これに対抗して踏ん張ろうとすると、足の踵部分が足載せ板に載っていないために踵部分のみが前方へ変位し、これによって足首が極度に折れ曲がった状態となる。このため、上記先行技術のように、衝突時のダッシュパネル面の後方変位および乗員に作用する慣性力により生じる相対的な荷重によってフットレストの脆弱部を破断するような構成では、脆弱部を破断することがないまま足首が極度に折れ曲がってしまい、下肢傷害を引き起こしてしまう恐れがあった。
【0008】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであり、足のつま先部分のみを載せて使用するフットレストであっても、車両が衝突したときにはダッシュパネル面の後方変位および乗員に作用する慣性力によって生じる相対的な荷重に頼ることなくフットレストを変形して下肢傷害を抑制し、且つ、通常時には十分な剛性強度が保持されている車両のフットレスト構造を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の第1の構成による車両のフットレスト構造では、車両のダッシュパネル下方に位置し、足載せ板がダッシュパネル面より所定の間隔を空けて配置されるフットレストであって、上記足載せ板の車両中央側がフロアトンネルの縦壁面と隣接するとともに、乗員の足が載置される上記足載せ板の下方部分は、フロアトンネルの縦壁面に沿う形に、且つその面積が上方部分の面積より小さくなるとともに、該乗員の足の踵部分が該足載せ板の上に載らないよう形成され、上記フットレストは、上記足載せ板の車両外側の端部からダッシュパネル面に向かって延びる側壁と、上記足載せ板の車両前側の端部からダッシュパネル面に向かって延びる前壁と、上記側壁に設けられ車両前後方向に互いに離間した位置でダッシュパネルに当接する少なくとも二つの固定部とを備えると共に、上記側壁と前壁とは、その交差する辺において結合されており、該側壁と前壁との結合された辺の近傍には、車両の前面衝突時のダッシュパネルの変形により上記固定部間の距離が変化することで破断する脆弱部が形成され、上記足載せ板の裏側並びに上記前方側及び後方側の固定部の裏側にはそれぞれリブが設けられており、該前方側の固定部に設けられるリブは、該後方側の固定部に設けられるリブよりもその数が少ないものとされ、上記固定部をダッシュパネルに固定することによって上記フットレストをダッシュパネルに固定するとともに、上記車両の前面衝突時には、上記脆弱部の破断によって、上記側壁と前壁とが切り離されて上記足載せ板とダッシュパネル面との間の距離が縮まるよう構成されている。
【0010】
本発明の第1の構成によれば、車両が前面衝突したとき、ダッシュパネルが変形して固定部間の距離が変化することによって脆弱部が破断されるので、衝突時にダッシュパネルが後方変位しなくとも、脆弱部を破断させることができる。これにより、足載せ板の車両外側端部を固定し、強度を保っていた拘束力が減少するので、足載せ板は自由に移動できるようになり、足載せ板とダッシュパネル面との間の距離を縮めることができる。従って、衝突時に乗員に作用する慣性力によって足の踵部分のみが前方へ変位し、足首が折れ曲がった状態となる前に、足載せ板をダッシュパネル面に近づく方へ押し込んでフットレストを略平坦な形状に変形させることが可能となり、下肢傷害を防ぐことができる。
【0011】
また、例えば側壁を車両上下方向に垂直に形成することにより、足載せ板からかかる荷重を側壁の板厚に直交する方向で受けるので、剛性強度がより一層高められ、通常の使用状態において脆弱部が破断する可能性を低くすることができる。
【0012】
また、フットレストを立体に構成することによってさらに剛性強度を高めることができるとともに、安定度も高めることができる。また、脆弱部を、側壁と前壁とが結合する辺ではなく、辺の近傍に形成したので、通常時の剛性強度を高く保ちながら、且つ、衝突時には、より平坦に近い形へと変形させることができ、乗員の足首の角度が小さくなるのを最小限にとどめることができる。
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の第2の構成による車両のフットレスト構造では、上記足載せ板のリブには、脆弱部が設けられている。
【0014】
本発明の第2の構成によれば、車両前面衝突時に足載せ板のリブを確実に変形させて、請求項1と同様の作用効果をより一層確実に得ることが可能となる。
【0015】
【発明の効果】
以上のように、本発明の車両のフットレスト構造によれば、足のつま先部分のみを載せて使用するフットレストであっても、車両が前面衝突したときにはダッシュパネル面の後方変位および乗員に作用する慣性力によって生じるフットレストと乗員の足との間の相対的な荷重に頼ることなくフットレストを変形して略平坦にし、下肢傷害を抑制することができ、且つ、通常時には十分な剛性強度を保持させることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の車両のフットレスト構造の実施形態について説明する。本実施形態における前面衝突前の車両のフットレスト構造は、本実施形態における車両の右側方から見た客室前方下部の側面図である図1、及び車両の後方から見た客室前方下部の正面図である図2に示すように、車両のダッシュパネル面1の下方部分であって、フロアトンネル2の右側方に隣接する位置にフットレスト3が車両前方側を上向きに傾斜して配置され、フットレスト3は足載せ板4を有している。通常の使用状態において乗員の足は、図1に示す5のように載置されるが、それを後方から見ると、乗員の足は図2に点線で示される6の位置にある。この図から明らかなように、足載せ板4は、フロアトンネルとの干渉を避けるためにフロアトンネル縦壁面に沿う形となるよう、その下方部分が上方部分より小さく形成されており、乗員の足5の踵部分が足載せ板4の上に載らない状態である。
【0017】
本実施形態のフットレストの拡大図である図3、及び図4について説明する。図3は本実施形態において、車両が衝突して変形する前のフットレストを斜め上方から見た斜視図であり、図4はそれを裏から見た図である。図3に示すように、本実施形態におけるフットレスト3は足載せ板4と、足載せ板の車両外側(右側)の縁からダッシュパネル面に向かって延びる側壁10と、足載せ板の車両前側(上側)の縁からダッシュパネル面に向かって延びる前壁11とから構成される一面が開口した略三角錐の形状に形成されている。また、側壁10のダッシュパネル面側の縁には、固定部12a、12bが前後方向に互いに離間して備えられ、フットレストをダッシュパネル面に固定している。側壁10はダッシュパネル面に対して略垂直な位置にある。
【0018】
図4に示すように、足載せ板4の裏側には足載せ板を支持する支持部13、13が設けられ、足載せ板の安定度と剛性強度を高めている。側壁10と前壁11とが交差する辺の部分14近傍の側壁には、脆弱部として浅い溝が線状に形成されている(図4の黒い部分15)。この脆弱部は、辺の部分14の近傍であれば前壁に形成されていても良い(図4の点線部分16)。また、足載せ板を支持している支持部13、13の根元部分には、脆弱部としてリブ17、17、・・・(図中の斜線部分)に切欠き18、18、・・・が設けられている。リブは固定部12a、12bの裏側にも形成されているが、前方側に位置する固定部12aの方は後方側12bよりもリブの数を少なくし、強度を弱くすることで前方側を後方側よりも変形しやすく形成してある。
【0019】
次に、車両が前面衝突して変形した後のフットレストの様子を示した図5について説明する。図5(a)に示すように、前面衝突するとダッシュパネルが変形して、前方側固定部12aと後方側固定部12bの相対位置が変化する。これによって、脆弱部15が破断し、側壁10と前壁11とのつながりが切れ、足載せ板からの荷重に対する強度が低下する。そして、図5(b)に示すように、足載せ板から少しでも荷重がかかると、前壁11がフットレストの内側又は外側に折れ曲がり、足載せ板4と側壁10とが互いに離れる方へ展開し、支持部13、13も折れ曲がって、平坦に近い形状へ変形させることができる。すなわち、足載せ板、特に乗員の足のつま先部分が載置される足載せ板上方(前方)部分をダッシュパネル面へ近づけることができる。
【0020】
続いて、本発明の参考例1について説明する。本参考例1における車両のフットレスト構造について、車両が前面衝突して変形する前のフットレストの斜め上方から見た斜視図を図6に示す。車体への取り付け状態は、上記実施形態における図1に示されたものと同等である。フロアトンネルの縦壁に沿った形に形成したため下方部分の面積が上方部分の面積より小さい足載せ板20を有し、その車両外側(右側)の縁からダッシュパネル面に向かって延びる脚部21a、21bが互いに前後方向に離間して設けられ、脚部にはダッシュパネル面に固定される固定部22a、22bが備えられている。前方側の脚部21aの固定部付近には、脆弱部23(図6の点線部分)が形成されており、車両の衝突時にダッシュパネル面の変形によって前後の固定部22a、22bの相対位置が変化することで脆弱部23が破断する。これにより、足載せ板20の前方部分の強度を保持するものが無くなるため、乗員の足のつま先部分が載置される足載せ板の上方(前方)部分をダッシュパネル面に近づく方へ移動させることが可能となる。
【0021】
最後に、本発明の参考例2について説明する。本参考例2における車両のフットレスト構造について、車両が前面衝突して変形する前のフットレストの斜め上方から見た斜視図を図7に示す。車体への取り付け状態は、上記実施形態における図1に示されたものと同等である。本参考例2におけるフットレストは、フロアトンネルの縦壁に沿った形に形成したため下方部分の面積が上方部分の面積より小さい足載せ板25と、その車両外側(右側方)の縁からダッシュパネル面に向かって延びる側壁26とから構成される略L字型に形成されており、側壁26のダッシュパネル面側の縁には、ダッシュパネル面に固定される固定部27a、27bが前後方向に離間して設けられている。前方側固定部27aの根元付近の側壁26には、根元部分を取り囲むように脆弱部28(図7の点線部分)が形成されている。
【0022】
車両が前面衝突すると、ダッシュパネルの変形によって前後の固定部27a、27bの相対位置が変化し、脆弱部28が破断される。これによって、足載せ板の上方(前方)部分の強度が低下し、足載せ板からの荷重に対して弱くなるため、足載せ板25と側壁26とが互いに離れるように展開することが容易となる。すなわち、足載せ板と側壁を一枚の板状へと略平坦に変形させることができ、足載せ板、特に乗員の足のつま先部分が載置される足載せ板の上方(前方)部分をダッシュパネル面に近づく方へ移動させることができる。
【0023】
なお、上記本発明の参考例1、及び参考例2において、上記実施形態と同様に、足載せ板の裏側に支持部を設け、その根元に脆弱部を形成すれば、通常の使用状態における剛性強度が高められ、且つ安定度も高められるとともに、衝突時には支持部は折れ曲がり、足載せ板の移動に支障を来たすことも無いのでより良い効果を奏する。
【0024】
また、本発明の実施形態において、足載せ板と側壁とが交差する辺の部分(図3の9、図6の24、24、及び図7の29の薄黒い部分)に脆弱部を形成し、車両が前面衝突して固定部付近の脆弱部が破断した後、足載せ板がより移動しやすいよう構成しても良い。
【0025】
また、本発明の実施形態において、上記脆弱部は、浅い溝を線状に形成しても良いし、厚さを薄くしたり、孔を複数設けたり、スリットを入れても良い。さらに、それらと組み合わせて端部に切欠きを設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態、並びに参考例1及び2のフットレスト構造を具備する車両における、車両衝突前の客室前方下部の右側面図。
【図2】本発明の実施形態、並びに参考例1及び2のフットレスト構造を具備する車両における、車両衝突前の客室前方下部の、後方からの正面図。
【図3】本発明の実施形態における、変形前のフットレスト構造の斜視図。
【図4】本発明の実施形態における、変形前のフットレスト構造を裏側から見た斜視図
【図5】本発明の実施形態における、車両衝突後の変形したフットレストの斜視図。
【図6】本発明の参考例1における、変形前のフットレスト構造の斜視図。
【図7】本発明の参考例2における、変形前のフットレスト構造の斜視図。
【符号の説明】
1・・・ダッシュパネル面
2・・・フロアトンネル
3・・・フットレスト
4、20、25・・・足載せ板
5・・・乗員の足
6・・・乗員の足が載置される位置
9、24、29・・・足載せ板と脚部又は側壁とが交差する辺
10、26・・・側壁
11・・・前壁
12a、22a、27a・・・前方側の固定部
12b、22b、27b・・・後方側の固定部
13・・・支持部
14・・・前壁と側壁とが交差する辺
15、16、23、28・・・脆弱部
17・・・リブ
18・・・切欠き
21a・・・前方側脚部
21b・・・後方側脚部
Claims (2)
- 車両のダッシュパネル下方に位置し、足載せ板がダッシュパネル面より所定の間隔を空けて配置されるフットレストであって、
上記足載せ板の車両中央側がフロアトンネルの縦壁面と隣接するとともに、乗員の足が載置される上記足載せ板の下方部分は、フロアトンネルの縦壁面に沿う形に、且つその面積が上方部分の面積より小さくなるとともに、該乗員の足の踵部分が該足載せ板の上に載らないよう形成され、
上記フットレストは、上記足載せ板の車両外側の端部からダッシュパネル面に向かって延びる側壁と、上記足載せ板の車両前側の端部からダッシュパネル面に向かって延びる前壁と、上記側壁に設けられ車両前後方向に互いに離間した位置でダッシュパネルに当接する少なくとも二つの固定部とを備えると共に、
上記側壁と前壁とは、その交差する辺において結合されており、該側壁と前壁との結合された辺の近傍には、車両の前面衝突時のダッシュパネルの変形により上記固定部間の距離が変化することで破断する脆弱部が形成され、
上記足載せ板の裏側並びに上記前方側及び後方側の固定部の裏側にはそれぞれリブが設けられており、該前方側の固定部に設けられるリブは、該後方側の固定部に設けられるリブよりもその数が少ないものとされ、
上記固定部をダッシュパネルに固定することによって上記フットレストをダッシュパネルに固定するとともに、
上記車両の前面衝突時には、上記脆弱部の破断によって、上記側壁と前壁とを切り離すと共に上記足載せ板とダッシュパネル面との間の距離が縮まるよう構成されていることを特徴とする車両のフットレスト構造。 - 上記足載せ板のリブには、脆弱部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両のフットレスト構造。
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