JP4034622B2 - 放熱板および放熱板の敷設方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、放熱板および放熱板の敷設方法に関する。さらに詳しくは、建造物の室内の床、壁面、天井面のほか、建造物の屋根などにも簡単に敷設できる放熱板、およびこの放熱板の敷設方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、多様な暖房技術が提案され、実用化されている。この暖房技術の一例として、発泡合成樹脂製成形体や木製板状体などを基体とし、その一方の面に溝を刻設し、この溝に熱媒用チューブを埋設し、これらの表面を、アルミニウム箔などの可撓性薄板で被覆した構造の放熱板(暖房パネル)が挙げられる。
【0003】
上記した放熱板の基体は、その表面に刻設された溝にあらかじめ熱媒用チューブが埋設されており、しかも、断熱材や緩衝材としても機能させるために、通常、厚手とされているので、梱包、輸送、保管、開梱、敷設などの際に重く、嵩張って取扱い難いという欠点があった。そこで、上記した欠点を解決したものとして、特開平10−170007号公報に記載された巻回可能な床暖房パネルや、特開平11−281070号公報に記載された折畳み可能な床暖房パネルなどが提案されている。
【0004】
しかし、上記した巻回・折畳み可能な放熱板は、その基体の表面に刻設された溝にあらかじめ熱媒用チューブが埋設されているため、巻回して折り畳んでも体積を小さくするには限度があり、依然として嵩張って取扱い難いという欠点があった。また、この種放熱板は、放熱板の構成単位が繋がれて一体化されているため、重量が大となり、取扱い難いという欠点があった。さらに、この種放熱板は、その溝に埋設された熱媒用チューブによって巻回・折畳みの際に制約を受け、かつ、この熱媒用チューブが損傷・挫屈し易いという欠点があった。
【0005】
さらにまた、上記した床暖房用放熱板と同様の構造とされたものを、建造物の室内の壁面や天井面に配置して暖房可能な壁面や暖房可能な天井面を構築しようとしたり、この種放熱板を配置した融雪屋根を構築しようとすると、この種放熱板を壁面に配置したり、天井や屋根に運び上げて施工する作業が困難であるという問題があった。特にこの基体が木製板状体である場合には、放熱板が重くなり、上記のような作業は困難を極めた。
【0006】
本発明者らは、上記のような欠点を排除した熱媒用チューブの支持具および放熱器として、特開2002−174431号公報に記載のものを提案した。その後検討の結果、先に提案した熱媒用チューブの支持具および放熱器では、これらを敷設する際に、敷設面が床である場合は、まず床面に放熱器を固定し、さらに表装材を固定するという二度にわたる固定作業が必要であり、敷設作業が繁雑であることが分かった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記した状況に鑑み、従来の放熱板にみられた梱包、輸送、保管、開梱の際の取扱い難さや、従来の放熱板を用いて暖房可能な床、壁面、天井面や融雪可能な屋根などを構築する際の敷設作業の困難さを解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至ったものである。本発明の目的は、次のとおりである。
1.建造物の室内の床、壁面、天井面のみでなく、建造物の屋根などにも簡単に敷設することができ、梱包、輸送、保管、開梱、敷設の際に、極めて取扱い易い放熱板を提供すること。
2.上記放熱板の敷設方法を提供すること。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、第一発明では、薄手の板状基体と構成要素とした放熱板において、この板状基体に熱媒用チューブを埋設可能な埋設溝が刻設され、この埋設溝に熱媒用チューブが埋設され、この埋設面が可撓性薄板によって被覆されてなり、上記板状基体がポリオレフィン系樹脂であり、放熱板の熱媒用チューブ埋設溝が刻設されていない部分に、多数の貫通穴が一定の間隔で直線を形成して穿設されてなり、かつ、貫通穴の面積総和が、上記板状基体の面積に対して1〜30%の割合にされてなることを特徴とする放熱板を提供する。
【0009】
また、第二発明では、敷設面に、薄手の板状基体を構成要素とし、この板状基体に熱媒用チューブ埋設溝が刻設され、この埋設溝に熱媒用チューブが埋設されてなる放熱板、および、表装材を順次重ねて放熱板を敷設する方法において、上記板状基体がポリオレフィン系樹脂であり、放熱板の上記板状基体の熱媒用チューブ埋設用溝が刻設されていない部分に、多数の貫通穴が一定の間隔で直線を形成して穿設されてなり、かつ、貫通穴の面積総和が、上記板状基体の面積に対して1〜30%の割合にされてなり、敷設面に塗布した接着剤を上記板状基体の貫通穴を通して薄手の上記板状基体表面に溢出させ、この上に表装材を重ねて一体に接着することを特徴とする、放熱板の敷設方法を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の第一発明に係る放熱板の構成要素としての薄手の板状基体は、これに刻設された埋設溝に熱媒用チューブを埋設し、熱媒用チューブを支持するという機能を果たす。板状基体は、この機能を果たすことができるように、剛性が比較的高く、かつ、耐熱性を有する材料で調製するものとする。材料の例としては、合成樹脂、金属、紙またはこれらの複合材料などを挙げることができる。これらの中では、合成樹脂が好適である。
【0011】
合成樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミドイミドなどのポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどを挙げることができる。また、これら合成樹脂から調製した発泡板状体や樹脂繊維製板状体を板状基体とすることもできる。上記した発泡板状体の発泡倍率は、1.5〜10倍程度の低倍率とするのが好ましい。
【0012】
金属としては、鉄、鋳鉄、軟鋼、ステンレス鋼、ニッケル合金、銅合金、チタン合金、アルミニウム合金などを挙げられ、これらの中では、加工し易さやコストの観点からアルミニウム合金が好ましい。なお、金属製の薄板には、金属製の織布や不織布も含まれる。紙としては、厚紙、板紙、段ボール紙、樹脂加工紙などを挙げることができる。樹脂加工紙としては、樹脂繊維をパルプに混合させて板状に成形したもの、板状に成形した後に樹脂フィルムを積層して調製したもの、板状に成形した後に樹脂を含浸させたものなどが挙げられる。
【0013】
板状基体の広さや平面形状は特に限定されるものではないが、取扱いの容易性を重視して選ぶのが好ましい。素材の比重が小さい場合は、広さは、梱包、輸送などの際に嵩張らないように比較的小さくするのが好ましく、平面形状は、施工の際に複数枚組合せ易い形状にするのが好ましい。例えば、平面形状を正方形、長方形などの矩形とし、正方形の場合には一辺の長さを約60cm、約90cm、約180cmなどとすることができ、長方形の場合には縦90cm×横180cmなどとすることができる。板状基体の厚さは、板状基体の材料の比重や剛性を勘案して適宜決めるものとするが、厚すぎると、梱包、輸送などの際に嵩張り、重くなるので、熱媒チューブを支持できる程度に可及的薄くするのが好ましい。例えば、板状基体がポリプロピレン製の薄い板状体である場合には、厚さを0.1mm〜5mm程度とするのが好ましい。素材の比重が大きい金属製の薄板の場合は、正方形の場合には、一辺の長さを約30cm、約60cmなどとすることができ、長方形の場合には、縦30cm×横60cmなどとすることができる。
【0014】
板状基体には、熱媒用チューブを埋設可能な埋設溝が刻設されてなる。この埋設溝の幅や深さは、埋設溝に埋設させる熱媒用チューブが容易に外れないように、熱媒用チューブの外径とほぼ同一寸法とするのが好ましい。刻設する埋設溝の態様は、これに埋設させる熱媒用チューブの配置態様に応じて、適宜決めるものとする。例えば、熱媒用チューブを直線状に延在させて配置する場所に配置・敷設する基体には、直線状に刻設し、熱媒用チューブを部分的に湾曲させて配置する場所に配置・敷設する板状基体には、直線部と円弧部とを組合せて配置して刻設する(後記、図1参照)ことができる。
【0015】
板状基体が発泡樹脂製板状体や樹脂繊維製板状体である場合には、埋設溝の刻設は熱成形法によって行い、溝刻設と同時にまたは埋設溝を刻設した後に、多数の貫通穴(後記する)を穿設する。板状基体が金属製の場合は、板状基体にプレス加工法によって埋設溝の刻設と同時に、または埋設溝を刻設した後に、多数の貫通穴を穿設する。板状基体が紙製の場合は、上記金属製の板状基体におけると同様に、プレス加工法によって埋設溝の刻設と同時に、または埋設溝を刻設した後に多数の貫通穴を穿設する。
【0016】
埋設溝の断面形状は、熱媒用チューブの外径に沿うように、この埋設溝の長さ方向に直角に切断した際の断面がU字型を呈するようにするのが好ましいが、開口部を若干絞ったひ型、Ω型とすることもできる。この埋設溝の断面形状の「U字型」の開口部と深さは、この埋設溝に埋設させる熱媒用チューブの外径寸法とほぼ同一にするほか、若干小さくしたり、若干大きくしたりすることもできる。なお、この埋設溝は、板状基体の熱媒用チューブを埋設させる側と反対側の面(裏側面)から目視観察した場合に、凸条として視認される(以下、これを「裏側凸条」という)ように形成してもよく、また、板状基体の熱媒用チューブを埋設させる側と反対側の面(表側面)から目視観察した場合に、凸条として視認される(以下、これを「表側凸条」という)ように形成してもよい。
【0017】
熱媒用チューブの埋設溝に埋設される熱媒用チューブは、その内側空間に熱媒を流通させて外部に放熱するように機能するものであり、可撓性、機械的強度、耐熱性、耐薬品性などに優れている必要がある。このような特性を発揮する熱媒用チューブとしては、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管、ポリプロピレン管、管の壁面に金属線を埋設した樹脂管などを挙げることができる。これらの中でも好ましいのは、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管である。熱媒用チューブの直径は、放熱板の用途によって変えるが、一般的には、外径が5〜30mm、内径が3〜20mmの範囲とされる。この熱媒用チューブの内部を流通させる熱媒としては、温水、水蒸気、オイルなどを挙げることができる。
【0018】
可撓性薄板は、板状基体の埋設溝に埋設した熱媒用チューブが埋設溝から飛び出すのを防ぐとともに、熱媒からの熱を放熱板全体に均等に行き渡らせるという機能を果たす。可撓性薄板は、熱伝導性に優れた材料で調製された可撓性の薄板であればよく、例えば、アルミニウム箔、錫箔、銅箔、ステンレス鋼箔などの金属箔、織布や不織布、樹脂製フィルムまたはシート、およびこれらを組合せた積層体などを挙げることができる。織布や不織布は、鉄、軟鋼、ステンレス鋼、ニッケル合金、銅合金、チタン合金、アルミニウム合金などの、熱伝導性に優れた金属から調製されたものが好ましい。上記した可撓性薄板の中でも、製造の容易さやコストなどを勘案すると、アルミニウム箔が最も好ましい。
【0019】
可撓性薄板の平面形状および大きさは、放熱板を構成する板状基体と同一の平面形状および同一の大きさとするのが好ましいが、放熱板の平面形状の面積よりも小さくすることもできる。小さくする場合は、少なくとも熱媒用チューブが埋設されている部分を被覆する大きさとする。可撓性薄板の厚さは、材料によって異なるが、薄すぎると強度が不十分で破損し易くなり、厚すぎると製品の重量が大きくなりかつコストが高くなるので、10μm〜3mmの範囲で選ぶのが好ましい。
【0020】
上記板状基体の熱媒用チューブ埋設溝が刻設されていない部分に、ほぼ一定の間隔で多数の貫通穴を直線を形成させて穿設する。この多数の貫通穴は、放熱板を敷設面やクッション材に接着剤によって固定する際に、敷設面などに塗布した接着剤を貫通穴を通して溢出させ、貫通穴から溢出した接着剤を表装材の固定用に活用できるように機能する。すなわち、接着剤を敷設面に一回塗布することによって、板状基体を敷設面に接着固定し、同時に、表装材を板状基体の上に接着固定することができる。従来は、まず、敷設面上に接着剤を塗布して板状基体を固定し、ついで、板状基体上に接着剤を塗布して表装材(仕上材)を固定していたが、本発明に係る放熱板を敷設する際には、接着剤の塗布は一回でよい。
【0021】
板状基体に穿設する多数の貫通穴を埋設溝の部分に穿設すると、接着剤がこの埋設溝に溜まり、板状基体の表面側には溢出し難く、接着剤の使用量が多くなるので、熱媒用チューブ埋設溝が刻設されていない部分に、後記した図1に示したように、一定間隔で直線を形成させて穿設するものとする。貫通穴の形状は、特に制限はなく、円形、楕円形、四角形、長方形、三角形、これらを変形したもの、およびこれらを組合せたものであってよく、貫通穴が穿設し易い形状とするのが好ましい。貫通穴の寸法は、隣接する埋設溝間の間隔にもよるが、敷設面に塗布した接着剤が、表面張力に抗して貫通穴から溢出できる大きさとし、熱媒用チューブ埋設溝の間に縦長として配置すると、放熱板としたときの温度斑が生じ難いので好ましい。
【0022】
後記した図1では、熱媒用チューブ埋設溝の間に、埋設溝に沿って、両端が直径10mmの円弧状を呈し、長さが70mmとされた縦長の貫通穴を複数個、一定間隔で直線状に配置し、隣接する貫通穴の列は、一定間隔として相互に平行に配置した例を示した。図1に例示したように、貫通穴を複数個、一定間隔で直線状に配置し、かつ、隣接する貫通穴の列を一定間隔で相互に平行に配置することにより、板状基体を敷設面に接着固定する際、接着剤を塗布する敷設面の位置が明確になり、接着剤の塗布(使用)量を少なくすることができる。
【0023】
板状基体に穿設する多数の貫通穴は、その面積総和が、板状基体の面積に対して1〜30%、の割合とするのが好ましい。板状基体の面積に対する割合が1%未満であると、板状基体または放熱板の表面側に溢出する接着剤量が少なすぎ、板状基体の表面側に表装材を強固に固定することができないので、好ましくない。他方、30%を超えると、接着剤の塗布(使用)量が増えるばかりでなく、板状基体の強度が低下することがあるので、好ましくない。上記範囲の中では、2〜10%が特に好ましい。
【0024】
板状基体が発泡樹脂、紙などの比重が小さいものであるときは、比較的大面積の板状基体に埋設溝を刻設し、放熱板の敷設場所とは異なる場所で、板状基体の埋設溝に熱媒用チューブを埋設し、埋設面に可撓性薄板を貼着し、板状基体と可撓性薄板とに貫通穴を穿設して放熱板とするのが好ましい。比重が小さい素材よりなる板状基体であっても、上の敷設方法に限られるものではなく、敷設場所ので、埋設溝を刻設した面積の小さくい板状基体を複数枚組合せ、埋設溝に熱媒用チューブを埋設し、埋設面に板状基体の貫通穴に対応した穴が設けられた可撓性薄板を、板状基体に穿設された多数の貫通穴に対応させて配置・貼着して、放熱板とすることもできる。
【0025】
板状基体が金属などの比重が大きいものであるときは、板状基体の面積を比較的小さくし、放熱板の敷設場所とは異なる場所で、埋設溝の刻設と貫通穴の穿設とを行い、敷設場所で、放熱板の複数枚組合せ、埋設溝に熱媒用チューブを埋設し、埋設面に板状基体の貫通穴に対応した穴が設けられた可撓性薄板を配置・貼着して、放熱板とするのが好ましい。
【0026】
本発明の第一発明に係る放熱板を、木造建造物の室内の床に敷設・施工する場合、上記放熱板が予め工場・製作所などで調製された裏側凸条構造のものであるときは、(1)下地の表面に放熱板の裏側凸条を嵌め込むための凹部を設け、この凹部に放熱板の裏側凸条を埋設する(後記、図3参照)。この際、下地の表面であって、放熱板に穿設された多数の貫通穴に対応する部分に、予め接着剤を塗布しておく。下地の表面に塗布された接着剤は、下地と放熱板とを接着・固定し、余分な接着剤が貫通穴から放熱板の表面側に溢出するので、溢出した接着剤が、放熱板の表面に配置する表装材の接着・固定用に活用される。下地は、床板や合板、発泡合成樹脂、不織布、ゴムなどから調製された板状体であってよい。
【0027】
上記放熱板が予め工場・製作所などで調製された表側凸条構造のものであるときは、(2)床板、下地または上記した板状体の表面に、放熱板の表側凸条を上側にして配置し、この表側凸条を嵌め込むための凹部を設けた表装材をこの上に敷設する(後記、図4参照)。この際も、下地の表面であって、板状基体に穿設された多数の貫通穴に対応する部分に、予め接着剤を塗布しておく。下地の表面に塗布された接着剤は、下地と放熱板とを接着・固定し、余分な接着剤が貫通穴から放熱板の表面側に溢出するので、放熱板の表面に配置する表装材の接着・固定用に活用される。放熱板をコンクリート建造物の室内の床に敷設・施工する場合には、(3)スラブ面に下地合板を配置し、上記(1)、(2)と同様の方法で放熱板を敷設する方法を挙げることができる。
【0028】
接着剤としては、床板、下地などの表面に、この種の放熱板を敷設する際に使用される多数の接着剤が、制限なく使用できる。表装材(仕上げ材)としては、化粧板、畳、カーペットなどが挙げられる。化粧板は、木、発泡合成樹脂、不織布、ゴムなどで調製された板状体のものが好適である。
【0029】
放熱板を建造物の室内の壁面に敷設するには、(4)下地、プラスターボードなどの壁板表面の所定位置に接着剤を塗布し、壁板表面に凹部を設け、この凹部に放熱板の裏側凸条を埋設しながらこの放熱板を接着剤によって固定し、この放熱板の表面側に溢出した接着剤を、壁紙、羽目板、化粧表面材などの仕上げ材の接着・固定用に活用できる。この(4)の方法とほぼ同様の手法で、放熱板を建造物の室内の天井面に施工することができる。
【0030】
放熱板を建造物の屋根に施工するには、上記の床、壁面、天井面に施工する手順とほぼ同様の手順で施工することができる。すなわち、木造建造物の場合には、屋根の垂木ところび止め(または合板受け)の上に固定される合板の表面に刻設した溝に、放熱器の裏側凸条を埋設しながらこの放熱板を上記合板の表面に接着・固定する方法などによることができる。配置した放熱板の表面は、スレート、金属板、瓦などの屋根材で被覆すればよい。
【0031】
なお、敷設・施工した放熱板に装備される熱媒用チューブに流通させる熱媒は、熱媒循環装置によって温度調整して流通(循環)させるが、この熱媒循環装置は、屋外や屋内の適所に設置される。
【0032】
以上詳細に説明したとおり、本発明の第一発明に係る放熱板は、建造物の室内の床面、壁面、天井面などに敷設できるほか、建造物の屋根などに配置・敷設することができる。この結果、暖房可能な床面、壁面、天井面の構築や、融雪可能な屋根などを構築する際の作業が大幅に簡素化される。
【0033】
【実施例】
以下、本発明に係る放熱板などを図面に基づいて詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、以下の記載例に限定されるものではない。
【0034】
図1は、本発明の第一発明に係る放熱板の一例の平面図である。図2は、図1に示した放熱板のII−II部分の拡大断面図である。図3は、裏側凸条型の放熱板を、敷設面に敷設した状態の一例の一部拡大断面図であり、図4は、表側凸条型の放熱板を、敷設面に敷設した状態の一例の一部拡大断面図である。
【0035】
図1に示した放熱板10は、厚さ0.3mmのポリプロピレンシート製の板状基体11から、差圧成形法で埋設溝12が刻設されたものであり、その平面形状は、縦879mm×横1978mmの長方形状とされている。この板状基体11に刻設される埋設溝12は、熱媒用チューブ14を埋設可能とされ、直線状部と湾曲部とを連接させた形態とされており、隣接する埋設溝12同士の間隔は75.75mmとされている。板状基体11の埋設溝が刻設されていない部分には、両端が直径10mmの円弧状を呈し、長さが70mmとされた貫通穴13を複数個、一定間隔で直線状に配置し、埋設溝12に沿って直線を形成して、穿設されている。
【0036】
図2は、図1に示した放熱板のII−II部分の拡大断面図であり、図2から明らかなように、板状基体11の埋設溝12を、延在する方向に直角に切断した際の断面形状は、U字型とされている。図2に示した放熱板10は、板状基体11の埋設溝12に熱媒用チューブ14を埋設し、その上面(埋設面)をアルミニウム箔15で被覆したものである。図2から明らかなように、溝11の幅および深さは、熱媒用チューブ14の外径の寸法(7.2mm)と同一寸法とされている。また、板状基体11に穿設した貫通穴13と、アルミニウム箔15の穴16とは、対応させている。
【0037】
図3ないし図4は、放熱板を敷設面に敷設した例を示している。図3は、下地合板30の表面に、溝を刻設したゴム製の板状体31を配置し、この板状体31の凹部に放熱板10の裏側凸条12aを埋設させ、この放熱板10を板状体31の表面に敷設し、その上に表装材32を配置した例を示している。この例では、板状基体の貫通穴13とアルミニウム箔の穴16で形成させる穴部分に配置した接着剤17によって、板状体31に放熱板を接着・固定し、放熱板の上に表装材32を接着・固定している。
【0038】
また、図4は、床板40の表面に、放熱板10の裏側凸条12bを上側にして敷設し、この表側凸条12bを嵌め込むための凹部42に放熱板10の表側凸条12bを埋設させ、この放熱板10の上に板状体41を配置した例を示している。この例では、板状基体の貫通穴13とアルミニウム箔の穴16で形成させる穴部分に配置した接着剤17によって、放熱板10を床板40と板状体41に固定している。
【0039】
【発明の効果】
本発明は、以上詳細に説明したとおりであり、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.本発明の第一発明に係る放熱板は、薄手の板状体を基体としているので、放熱板を敷設場所とは異なる場所で調製しても、折り畳むことができ、梱包、輸送、保管、開梱、敷設の際に嵩張らず、極めて取扱い易い。
2.本発明の第一発明に係る放熱板は、薄手の板状体を基体としているので、敷設場所で放熱板を調製する場合でも、敷設場所に配置・敷設されるまで、埋設溝に熱媒用チューブを埋設させず体積を小さいまま取り扱うことができ、梱包、輸送、保管、開梱、敷設の際に嵩張らず、極めて取扱い易い。
3.本発明の第一発明に係る放熱板は、板状基体の熱媒用チューブ埋設溝が刻設されていない部分に、ほぼ一定の間隔で多数の貫通穴を直線を形成させて穿設されているので、敷設面に敷設する際、敷設面に塗布した接着剤を、貫通穴から板状基体表面に溢出させることができ、この上に表装材を重ねて一体に接着することができる。従来は、接着剤を二回塗布する必要があったが、第一発明に係る放熱板を敷設する際には、一回の塗布で十分であるので、敷設作業工程が簡素化される。
4.本発明の第一発明に係る放熱板は、梱包、輸送、保管、開梱、施工の際に極めて取扱い易いので、建造物の室内の床のみでなく壁面や天井面にも簡単に配置・敷設することができる。
5.本発明の第二発明に係る敷設方法によれば、第一発明に係る放熱板を使用するので、梱包、輸送、保管、開梱、施工などの際に極めて取扱い易く、建造物の室内の床のみでなく壁面や天井面に簡単に配置・敷設して暖房可能な床、壁面、天井面を容易に構築することができ、かつ、建造物の屋根などにも簡単に配置・敷設して、融雪可能な屋根を容易に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第一発明に係る放熱板一例の平面図である。
【図2】 図1に示した放熱板のII−II部分の拡大断面図である。
【図3】 裏側凸条型の放熱板を、敷設面に敷設した状態の一例の一部拡大断面図である。
【図4】 表側凸条型の放熱板を、敷設面に敷設した状態の一例の一部拡大断面図である。
【符号の説明】
10:放熱板
11:板状基体
12:埋設溝
12a:裏側凸条
12b:表側凸条
13:貫通穴
14:熱媒用チューブ
15:アルミニウム箔
16:アルミニウム箔の穴
17:接着剤
30:下地合板
31:板状体
32:表装材
42:凹部
40:床板
41:板状体
Claims (7)
- 薄手の板状基体と構成要素とした放熱板において、この板状基体に熱媒用チューブを埋設可能な埋設溝が刻設され、この埋設溝に熱媒用チューブが埋設され、この埋設面が可撓性薄板によって被覆されてなり、上記板状基体がポリオレフィン系樹脂であり、放熱板の熱媒用チューブ埋設溝が刻設されていない部分に、多数の貫通穴が一定の間隔で直線を形成して穿設されてなり、かつ、貫通穴の面積総和が、上記板状基体の面積に対して1〜30%の割合にされてなることを特徴とする放熱板。
- 可撓性薄板が、金属箔、織布、不織布、樹脂シートおよびこれらを組合せた積層体からなる群から選ばれたいずれか一つである、請求項1に記載の放熱板。
- 溝が、その長さ方向に直角に切断した際の断面がU字型とされたものである、請求項1または請求項2に記載の放熱板。
- 敷設面に、薄手の板状基体を構成要素とし、この板状基体に熱媒用チューブ埋設溝が刻設され、この埋設溝に熱媒用チューブが埋設されてなる放熱板、および、表装材を順次重ねて放熱板を敷設する方法において、上記板状基体がポリオレフィン系樹脂であり、放熱板の上記板状基体の熱媒用チューブ埋設用溝が刻設されていない部分に、多数の貫通穴が一定の間隔で直線を形成して穿設されてなり、かつ、貫通穴の面積総和が、上記板状基体の面積に対して1〜30%の割合にされてなり、敷設面に塗布した接着剤を上記板状基体の貫通穴を通して薄手の上記板状基体表面に溢出させ、この上に表装材を重ねて一体に接着することを特徴とする、放熱板の敷設方法。
- 薄手の板状基体と表装材との間、または、床面と薄手の板状基体との間に、薄手の板状基体に穿設された多数の貫通穴に対応した穴が設けられた可撓性薄板を配置されてなる、請求項4に記載の放熱板の敷設方法。
- 可撓性薄板が、金属箔、織布、不織布、樹脂シートおよびこれらを組合せた積層体からなる群から選ばれたいずれか一つである、請求項5に記載の放熱板の敷設方法。
- 溝が、その長さ方向に直角に切断した際の断面がU字型とされたものである、請求項4ないし請求項6のいずれか一項に記載の放熱板の敷設方法。
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