JP4032797B2 - 車両ステアリング用伸縮軸 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両ステアリング用伸縮軸に関し、特にガタ付きを防止しながら、高剛性の状態で操舵トルクを伝達できる一方、比較的低い安定した摺動荷重により軸方向に摺動(伸縮)できる車両ステアリング用伸縮軸に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用ステアリング装置においては、ステアリングシャフトは、運転者の操舵トルクを確実にステアリングギヤに伝達するように、ステアリングシャフトのガタ付きを防止しながら、高剛性の状態で操舵トルクを伝達できる一方、車両の走行時に生起する軸方向の変位を吸収し、テレスコピック調整を可能にし、また、組立時にステアリングシャフトが伸縮できるように、比較的低い安定した摺動荷重により軸方向に摺動(伸縮)できるようになっている。
【0003】
特開2001−50293号公報又はドイツ特許公開DE3730393A1号公報においては、ステアリングシャフトは、回転不能且つ摺動自在に嵌合した雄軸と雌軸とからなり、雄軸の外周面と雌軸の内周面とに夫々形成した複数対の軸方向溝の間に、複数の球状転動体を介装し、しかも、弾性体により球状転動体を径方向に予圧していることが開示されている。
【0004】
これにより、雄軸と雌軸からなる伸縮軸は、ガタ付きを防止しながら、高剛性の状態で操舵トルクを伝達する一方、比較的低い安定した雄軸と雌軸との摺動荷重により軸方向に摺動(伸縮)しようとしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、操舵トルクの伝達時、球状転動体は、点接触で荷重を受けるため、高負荷に耐えられず、必ずしも高剛性の状態でトルクを伝達できないといったことがある。なお、高剛性にするため、弾性体(板バネ)による付勢力(予圧力)を大きくすると、雄軸と雌軸の夫々の複数対の軸方向溝の間に、複数の球状転動体を組み入れる作業が著しく煩雑となる。
【0006】
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであって、ステアリングシャフトのガタ付きを防止しながら、高剛性の状態で操舵トルクを伝達できる一方、比較的低い安定した雄軸と雌軸の摺動荷重により軸方向に摺動(伸縮)できる車両ステアリング用伸縮軸を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明に係る車両ステアリング用伸縮軸は、車両のステアリングシャフトに組込み、雄軸と雌軸を回転不能且つ摺動自在に構成した車両ステアリング用伸縮軸において、雄軸の外周面と雌軸の内周面とに夫々形成した少なくとも一対の軸方向溝の間に介装し、弾性体により径方向に予圧した少なくとも1個の球状転動体と、雄軸の外周面と雌軸の内周面との間に介装した少なくとも1個のコロ状転動体と、を具備し、前記球状転動体、前記弾性体および前記雄軸の外周面が前記雌軸の内周面に接触する前に前記コロ状転動体が前記雄軸の外周面と前記雌軸の内周面とに接触させるよう構成することにより、所定値よりも低い操舵トルクの伝達時には、前記弾性体を介して前記球状転動体が前記操舵トルクを伝達し、所定値以上の高い操舵トルクの伝達時には、前記球状転動体に加え、前記コロ状転動体も前記操舵トルクを伝達することを特徴とする。
【0008】
このように、本発明によれば、雄軸の外周面と雌軸の内周面とに夫々形成した少なくとも一対の軸方向溝の間に介装し、弾性体により径方向に予圧した少なくとも1個の球状転動体に加えて、雄軸の外周面と雌軸の内周面との間に介装した少なくとも1個のコロ状転動体を具備している。そのため、低い操舵トルクの伝達時には、球状転動体が操舵トルクの伝達を分担するが、高い操舵トルクの伝達時には、コロ状転動体も操舵トルクの伝達を担当する。コロ状転動体は、線接触により負荷を受けることから、点接触時に比べ高負荷に耐えることができる。従って、球状転動体の負担をも軽減することができ、ステアリングシャフトのガタ付きを防止しながら、高剛性の状態で操舵トルクを伝達できる。
【0010】
さらに、好適には、前記球状転動体と、前記コロ状転動体とは、その周方向の合計個数が偶数であり、周方向に交互に配置してあることを特徴とする。
【0011】
また、好適には、前記球状転動体と、前記コロ状転動体とは、その周方向の合計個数が奇数であり、そのうちの少なくとも2個は前記球状転動体と前記コロ状転動体が隣同士に配置してあることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸を図面を参照しつつ説明する。
【0013】
(第1実施の形態)
図1(a)は、本発明の第1実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の側面図であり、図1(b)は、伸縮軸の雄軸と雌軸を分離した状態の斜視図である。図2は、図1(a)のA−A線に沿った横断面図である。図3(a)は、板バネの平面図であり、図3(b)は、他の例に係る板バネの平面図であり、図3(c)は、図1に示した伸縮軸の分解斜視図である。
【0014】
図1に示すように、車両ステアリング用伸縮軸(以後、伸縮軸と記す)は、相互に回転不能に且つ摺動自在に嵌合した雄軸1と雌軸2とからなる。雄軸1と雌軸2は、夫々、六角形状に形成してある。
【0015】
図2に示すように、雄軸1の外周面には、六角形のうち交互の三面に、周方向に120度間隔で等配した3個の軸方向溝3が延在して形成してある。
【0016】
雌軸2の内周面にも、六角形のうち交互の三面に、周方向に120度間隔で等配した3個の軸方向溝4が延在して形成してある。
【0017】
雄軸1の軸方向溝3と、雌軸2の軸方向溝4との間に、それぞれ、3組のボール5(転がり用球状転動体)が転動自在に嵌合してある。ボール5は、トルク伝達時のキーの役割を果たすと共に、雄軸1と雌軸2の摺動時に転がり接触の役割を果たすようになっている。
【0018】
雌軸2の軸方向溝4は、溝の中心部を境にボール5の半径より大きい円弧を互いに向き合わせる形状に形成してある。また、雄軸1の軸方向溝3とボール5との間には、波形形状であって中央に窪みを有する板バネ6が介装してある。この板バネ6は、その両端部で雄軸1の軸方向溝3の両側の段部10に係止してあり、これにより、トルク伝達時、周方向に板バネ6全体が移動しないようになっている。この板バネ6の中央の窪みの曲率半径は、ボール5の曲率半径より小さくしてあるため、板バネ6とボール5は図2の2点(X)で接触するようになっている。よってボール5は、軸方向溝4と図2中の点Xとがそれぞれ2点で接触するようになる。また、板バネ6は雄軸1の軸方向溝3の両縁部に、図2中の2点(Y)で接触するようになっている。このような点X、点Yでそれぞれが2点接触する結果、板バネ6とボール5との間には微小間隔Zxが存在し、板バネ6と軸方向溝3との間には微小間隔Zyが存在する。この板バネ6は、トルク非伝達時には、ボール5を雌軸2に対してガタ付きのない程度に予圧する一方、トルク伝達時には、弾性変形してボール5を雄軸1と雌軸2の間で周方向に拘束する働きをするようになっている。
【0019】
また、本実施の形態では、トルクが0から雌軸2内径、球状転動体5、板バネ6および雄軸1外径とが接触するまでトルクを入力したときの球状転動体5の隙間変化量をΔ1、トルクが0から雌軸2内径、コロ状転動体7および雄軸1外径とが接触するまでトルクを入力したときのコロ状転動体7の隙間変化量をΔ2とするとき、Δ1>Δ2に設定している。このように設定することによって、球状転動体5、板バネ6および雄軸1外径とが接触する前にコロ状転動体7が雄軸1および雌軸2と接触するため、トルクが0から所定のトルクに達するまで、球状転動体5は、コロ状転動体7より転がり抵抗が大きく、一方トルクが所定のトルク以上になると、球状転動体5は、コロ状転動体7より転がり抵抗が小さくなる。
【0020】
なお、トルク非伝達時、ボール5は雄軸1の軸方向溝3の中央に位置し、板バネ6と軸方向溝3との間には微小間隔Zyが存在している。また、トルク伝達時には、板バネ6とボール5の間における微小間隔Zxと板バネ6と軸方向溝3の間における微小間隔Zyとは小さくなっていくと共にコロ状転動体7の隙間も小さくなっていき、コロ状転動体が主に雄軸1、雌軸2の間で接触して高剛性の状態となる。
【0021】
雄軸1と雌軸2の間であって、六角形のうち交互の三面に、3組のニードルローラー7(転がり用コロ状転動体)が転動自在に介装してある。これらニードルローラー7は、トルク伝達時のキーの役割を果たすと共に、雄軸1と雌軸2の摺動時に転がり接触の役割を果たすようになっている。各組のニードルローラー7は、夫々、保持器7aにより保持してある。
【0022】
なお、図3(a)に示すように、板バネ6の軸方向の両端部には、突起6aが形成してあり、又、他の例として、図3(b)に示すように、板バネ6の軸方向の中央端部には、突起6bが形成してある。雄軸1には、2個の周方向溝8が形成してある。これにより、周方向溝8に、2個の止め輪9を嵌め合わせて、板バネ6の突起6a(又は6b)を係止して板バネ6を軸方向に固定して、ボール5を軸方向に固定している。
【0023】
以上のように構成した伸縮軸では、低い操舵トルクの伝達時には、ボール5が操舵トルクの伝達を分担するが、高い操舵トルクの伝達時には、ニードルローラー7も操舵トルクの伝達を担当する。ニードルローラー7は、線接触により負荷を受けることから、点接触時のみと比べて高負荷に耐えることができる。従って、ボール5の負担をも軽減することができ、ステアリングシャフトのガタ付きを防止しながら、高剛性の状態で操舵トルクを伝達できる。
【0024】
さらに、本実施の形態のように、ボール5とニードルローラー7を交互に配列した場合には、剛性を上げるために、ボール5のみの場合ほど予圧を上げる必要はない。これは、トルク入力時の負荷の大半は、ニードルローラー7で受け止めるためである。
【0025】
また、操舵トルクが0から所定のトルクに達するまで、ボール5は、ニードルローラー7より転がり抵抗が大きく、操舵トルクが所定のトルク以上になると、ボール5は、ニードルローラー7より転がり抵抗が小さく設定してある。そのため、ボール5のみの場合より雄軸1の雌軸2への組み入れが容易である。
【0026】
(第2実施の形態)
図4は、本発明の第2実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の断面図である。
【0027】
本実施の形態では、ボール5のための保持器5aが設けてある。その他の構成・作用は、上述した第1実施の形態と同様であり、同じ構成には同一符号を付し説明を省略する。
【0028】
なお、保持器5aは、分割してあるが、一体(環状)になったものであってもよい。
【0029】
(第3実施の形態)
図5は、本発明の第3実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の断面図である。
【0030】
本実施の形態では、雄軸1と雌軸2には、夫々、ニードルローラー17のための軸方向溝17b,17cが形成してある。その他の構成・作用は、上述した第1実施の形態と同様であり、同じ構成には同一符号を付し説明を省略する。
【0031】
従って、低い操舵トルクの伝達時には、ボール5が操舵トルクの伝達を分担するが、高い操舵トルクの伝達時には、ニードルローラー17も操舵トルクの伝達を担当し、ニードルローラー17は、線接触により負荷を受けることから、点接触時のみと比べて高負荷に耐えることができる。従って、ボール5の負担をも軽減することができ、ステアリングシャフトのガタ付きを防止しながら、高剛性の状態で操舵トルクを伝達できる。
【0032】
(第4実施の形態)
図6は、本発明の第4実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の断面図である。
【0033】
本実施の形態では、雄軸11と雌軸12とは、夫々、四角形に形成してある。その他の構成・作用は、上述した第1〜第3実施の形態と同様であり、同じ構成には同一符号を付し説明を省略する。
【0034】
従って、低い操舵トルクの伝達時には、ボール5が操舵トルクの伝達を分担するが、高い操舵トルクの伝達時には、ニードルローラー7も操舵トルクの伝達を担当し、ニードルローラー7は、線接触により負荷を受けることから、点接触時のみと比べて高負荷に耐えることができる。従って、ボール5の負担をも軽減することができ、ステアリングシャフトのガタ付きを防止しながら、高剛性の状態で操舵トルクを伝達できる。
【0035】
(第5実施の形態)
図7は、本発明の第5実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の断面図である。
【0036】
本実施の形態では、雄軸21と雌軸22とは、夫々、三角形に形成してあり、1組のボール5と、2組のニードルローラー7とを備えている。その他の構成・作用は、上述した第1〜第4実施の形態と同様であり、同じ構成には同一符号を付し説明を省略する。
【0037】
従って、低い操舵トルクの伝達時には、ボール5が操舵トルクの伝達を分担するが、高い操舵トルクの伝達時には、ニードルローラー7も操舵トルクの伝達を担当し、ニードルローラー7は、線接触により負荷を受けることから、点接触時のみと比べて高負荷に耐えることができる。従って、ボール5の負担をも軽減することができ、ステアリングシャフトのガタ付きを防止しながら、高剛性の状態で操舵トルクを伝達できる。
【0038】
(第6実施の形態)
図8は、本発明の第6実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の断面図である。
【0039】
本実施の形態では、雄軸21と雌軸22とは、夫々、三角形に形成してあり、2組のボール5と、1組のニードルローラー7とを備えている。その他の構成・作用は、上述した第5実施の形態と同様であり、同じ構成には同一符号を付し説明を省略する。
【0040】
従って、低い操舵トルクの伝達時には、ボール5が操舵トルクの伝達を分担するが、高い操舵トルクの伝達時には、ニードルローラー7も操舵トルクの伝達を担当し、ニードルローラー7は、線接触により負荷を受けることから、点接触時のみと比べて高負荷に耐えることができる。従って、ボール5の負担をも軽減することができ、ステアリングシャフトのガタ付きを防止しながら、高剛性の状態で操舵トルクを伝達できる。
【0041】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されず、種々変形可能である。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、雄軸の外周面と雌軸の内周面とに夫々形成した少なくとも一対の軸方向溝の間に介装し、弾性体により径方向に予圧した少なくとも1個の球状転動体に加えて、雄軸の外周面と雌軸の内周面との間に介装した少なくとも1個のコロ状転動体を具備している。そのため、低い操舵トルクの伝達時には、球状転動体が操舵トルクの伝達を分担するが、高い操舵トルクの伝達時には、コロ状転動体も操舵トルクの伝達を担当し、コロ状転動体は、線接触により負荷を受けることから、点接触時のみと比べて高負荷に耐えることができる。従って、球状転動体の負担をも軽減することができ、ステアリングシャフトのガタ付きを防止しながら、高剛性の状態で操舵トルクを伝達できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明の第1実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の側面図であり、(b)は、その斜視図である。
【図2】図1(a)のA−A線に沿った横断面図である。
【図3】(a)は、板バネの平面図であり、(b)は、他の例に係る板バネの平面図であり、(c)は、図1に示した伸縮軸の分解斜視図である。
【図4】本発明の第2実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の断面図である。
【図5】本発明の第3実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の断面図である。
【図6】本発明の第4実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の断面図である。
【図7】本発明の第5実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の断面図である。
【図8】本発明の第6実施の形態に係る車両ステアリング用伸縮軸の断面図である。
【符号の説明】
1、11、21 雄軸
2、12、22 雌軸
3,4 軸方向溝
5 ボール(軸方向摺動時に転がる球状転動体)
6 板バネ(弾性体)
7 ニードルローラー(軸方向摺動時に転がるコロ状転動体)
7a 保持機
8 周方向溝
9 止め輪
10 段部
17 ニードルローラー(軸方向摺動時に転がるコロ状転動体)
17b、17c 軸方向溝
Claims (3)
- 車両のステアリングシャフトに組込み、雄軸と雌軸を回転不能且つ摺動自在に構成した車両ステアリング用伸縮軸において、
雄軸の外周面と雌軸の内周面とに夫々形成した少なくとも一対の軸方向溝の間に介装し、弾性体により径方向に予圧した少なくとも1個の球状転動体と、雄軸の外周面と雌軸の内周面との間に介装した少なくとも1個のコロ状転動体と、を具備し、前記球状転動体、前記弾性体および前記雄軸の外周面が前記雌軸の内周面に接触する前に前記コロ状転動体が前記雄軸の外周面と前記雌軸の内周面とに接触させるよう構成することにより、所定値よりも低い操舵トルクの伝達時には、前記弾性体を介して前記球状転動体が前記操舵トルクを伝達し、所定値以上の高い操舵トルクの伝達時には、前記球状転動体に加え、前記コロ状転動体も前記操舵トルクを伝達することを特徴とする車両ステアリング用伸縮軸。 - 前記球状転動体と、前記コロ状転動体とは、その周方向の合計個数が偶数であり、周方向に交互に配置してあることを特徴とする請求項1に記載の車両ステアリング用伸縮軸。
- 前記球状転動体と、前記コロ状転動体とは、その周方向の合計個数が奇数であり、そのうちの少なくとも2個は前記球状転動体と前記コロ状転動体が隣同士に配置してあることを特徴とする請求項1に記載の車両ステアリング用伸縮軸。
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