JP4030626B2 - 塗膜形成方法及び塗装物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は塗膜形成方法及び塗装物、特に塗膜の仕上がり外観が良く、焼付時のオーバーベークに対する耐性を有し、かつコストダウン可能な塗膜形成方法及びこの塗膜形成方法により塗装された塗装物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車の車体外板には、防錆を目的とした下塗り、仕上がり外観向上のための表面調整を目的とした中塗り、及び外観向上と耐久性付与を目的とした上塗りが施される。一般に、下塗塗膜として電着塗膜が形成され、上塗塗膜として光輝性顔料及び/又は着色顔料含有ベースコート、クリヤー塗膜が形成される。また、近年、ベースコート塗装時にアルミフレークやマイカ等の光輝性顔料を含む塗料を用いるメタリック塗装やパール塗装等が注目されている。
【0003】
このような塗装方法として、例えば特開平7−116595号公報の「塗装方法」には、図2に示すように、被塗物11上に電着塗装を行い、この電着塗膜12上に中塗塗膜(ホワイトシーラー層)13を形成して焼付乾燥させた後に、中塗塗膜13上にカラーベース塗膜(カラー中塗塗膜)14を、そのカラーベース塗膜14の上にマイカベース塗膜15を、そしてマイカベース塗膜15の上にクリヤー塗膜16をそれぞれウエットオンウエットで塗布して形成し、その後に焼付乾燥を行う塗装方法が開示されている。ここで、マイカベース塗膜は、光輝性顔料含有ベースコートの1つである。
【0004】
また、特開平8−164358号公報の「複層塗膜形成法」には、図2に示すカラーベース塗膜14が、チタン白顔料及びアルミニウムフレークが含有されマンセルカラーチャートN7〜N9の範囲内に調整されたカラーベース塗膜であり、またマイカベース塗膜15として酸化チタンで被覆されたりん片状雲母粉末を配合してなるホワイトパール調又はシルバーパール調のベースコートが形成される複層塗膜形成法が開示されている。この複層塗膜形成方法も、上記公報の塗装方法と同様に、カラーベース塗膜14、マイカベース塗膜15、クリヤー塗膜16は、それぞれウエットオンウエットで塗布形成された後に、焼付乾燥がなされる。
【0005】
すなわち、上記両公報に記載された塗膜形成方法は、カラーベース塗膜14より上方の塗膜が、図2に示すように、3コート1ベークで形成されている。以下、このように形成された複層塗膜を、3コート1ベーク複層塗膜という。
【0006】
なお、図2に示す実線は、焼付乾燥を行ったことを表し、破線は、ウエットオンウエットで塗布形成されたことを示す。以下、図1、図3及び図4についても同様である。
【0007】
また、図3には、カラーベース塗膜14より上方の塗膜が、3コート2ベークで形成された複層塗膜(以下「3コート2ベーク複層塗膜」という)が示されている。すなわち、被塗物11上に電着塗装を行い、この電着塗膜12上に中塗塗膜13を形成して焼付乾燥させた後に、この中塗塗膜13上にカラーベース塗膜14を形成して焼付乾燥される。その後、このカラーベース塗膜14の上にマイカベース塗膜15を、そしてマイカベース塗膜15の上にクリヤー塗膜16をそれぞれウエットオンウエットで塗布して形成し、その後に焼付乾燥を行い、複層塗膜が形成されている。
【0008】
また、図4には、中塗塗膜13より上方の塗膜が、4コート1ベークで形成された複層塗膜(以下「4コート1ベーク複層塗膜」という)が示されている。すなわち、被塗物11上に電着塗装を行い、この電着塗膜12上に中塗塗膜13を形成し、この中塗塗膜13上にカラーベース塗膜14を形成し、更にこのカラーベース塗膜14の上にマイカベース塗膜15を、そしてマイカベース塗膜15の上にクリヤー塗膜16をそれぞれウエットオンウエットで塗布して形成し、その後に焼付乾燥を行い、複層塗膜が形成されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に開示された3コート1ベーク複層塗膜は、通常ベーク(140℃で20分間焼付)及びオーバーベーク(180℃で20分間)後の2次密着性は良好であり、3層をウエットオンウエットで形成するため低コスト化が図れるものの、垂直面の被塗物で3層塗膜間でタレが生じやすく、仕上がり外観が劣るという問題があった。
【0010】
ここで、2次密着性とは、塗装物を例えば40℃で240時間温水浸漬して塗装物を痛めつけた後の塗膜の密着性をいう。
【0011】
また、3コート2ベーク複層塗膜は、カラーベース塗膜を形成後に焼付乾燥させた後、マイカベース塗膜、クリヤー塗膜がウエットオンウエットで塗布形成されその後焼付乾燥されているため、塗膜間のタレはほとんどなく、仕上がり外観が良好である。しかしながら、3コート2ベークの場合、中塗塗膜は3回焼付けられるため、中塗塗膜とカラーベース塗膜とのオーバーベーク時の2次密着性が劣化するという問題があった。また、焼付回数が多いことからコスト高でもあった。
【0012】
また、4コート1ベーク複層塗膜は、中塗塗膜、カラーベース塗膜、マイカベース塗膜、クリヤー塗膜がそれぞれウエットオンウエットで形成されているため、それぞれの塗膜の通常ベーク及びオーバーベーク後の2次密着性は極めて良好であり、4層をウエットオンウエットで塗装していくため極めて低コストで複層塗膜を形成できる。しかしながら、垂直面の被塗物で4層塗膜間で大幅にタレが生じやすく、仕上がり外観が劣化するという問題があった。
【0013】
本発明は上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、塗膜の仕上がり外観が良く、焼付時のオーバーベークに対する耐性のある塗膜を形成すると共に、塗装のコストダウンを可能にする塗膜形成方法及びこの塗膜形成方法によって得られる塗装物を提供する。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、本発明の塗膜形成方法は、(a)被塗物に電着塗装後、焼付けする工程と、(b)中塗塗料を塗装する工程と、(c)カラー中塗塗料を塗装する工程と、(d)上記(b),(c)工程の塗装を焼付けする工程と、(e)光輝性顔料及び/又は着色顔料含有ベースコートを塗装する工程と、(f)クリヤー塗料を塗装する工程と、(g)上記(e),(f)工程の塗膜を焼付けする工程と、上記の(a)〜(g)の工程を順次経る塗膜形成方法であって、前記中塗塗料及びカラー中塗塗料のビヒクルがポリエステル樹脂/メラミン樹脂系であり、中塗塗料のポリエステル樹脂の酸価がカラー中塗塗料のポリエステル樹脂の酸価より高いことを特徴とする。
【0015】
すなわち、本発明の塗膜形成方法は、中塗塗膜上にカラー中塗塗料をウエットオンウエットで塗布し、その後焼付け、更にカラー中塗塗膜(以下「カラーベース塗膜」という)の上に光輝性顔料及び/又は着色顔料含有ベースコート塗装し、ウエットオンウエットでクリヤー塗料を塗装した後に焼付を行う、4コート2ベーク(2層毎に焼付硬化させる)なので、垂直被塗物でも層間のタレがなく、またオーバーベーク時にも、中塗塗膜は2回焼付られるのみであるため、中塗塗膜とカラーベース塗膜との密着性も良好である。
【0017】
また、中塗塗料の酸価をカラー中塗塗膜の酸価より高くすることにより、中塗塗料の硬化反応が、カラー中塗塗料の硬化反応より早く開始するため、中塗塗膜とカラー中塗塗料とを焼付ける際に、例えばタレが生じることがなく、またシワが発生することもなく、安定的に塗膜を形成することができる。
【0018】
また、本発明の塗膜形成方法は、剛体振子型粘弾性測定機によって測定された塗膜の対数減衰率から求められる塗膜を形成する塗料の硬化反応開始時間において、前記中塗塗料の硬化反応開始時間は、前記カラー中塗塗料の硬化反応開始時間より短いことを特徴とする。
【0019】
従って、中塗塗料の硬化反応開始時間を、カラー中塗塗料の硬化反応開始時間より短くすることによって、中塗塗料の硬化反応が、カラー中塗塗料の硬化反応より早く開始するため、中塗塗膜とカラー中塗塗膜とを焼付けする際に、例えばタレが生じることがなく、またシワが発生することもなく、安定的に塗膜を形成することができる。
【0020】
更に、本発明の塗膜形成方法において、前記クリヤー塗料のビヒクルが、カルボキシル基含有ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーを含有することを特徴とする。
【0021】
上記のようなビヒクルを用いることによって、耐酸性のクリヤー塗膜を形成することができる。
【0022】
また、本発明の塗装物は、上記塗膜形成方法によって塗装されたことを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の塗膜形成方法について、図1を用いて以下に詳説する。
【0024】
(a)被塗物に電着塗装後、焼付けする工程;
本発明の実施に際しては、(めっき)鋼板、アルミニウム板などの被塗物11を、常法に従って脱脂、洗浄した後、リン酸亜鉛処理などの塗装下地処理を施し、エポキシ系樹脂などの電着塗料を使用して、カチオン型電着塗装を行い、150〜190℃で10分〜60分間焼付け硬化させて15〜40μm厚さの下地塗膜を形成する(図1の電着塗膜12の形成)。
【0025】
(b)中塗塗料を塗装する工程;
電着塗膜12の上に、中塗塗料を、好ましくは(静電)霧化式塗装機、例えばエアスプレー塗装機、エアレススプレー塗装機、エアー霧化式もしくは回転式回転塗装機などの手段で塗装する。その後、5〜30℃で30秒〜8分間加熱放置し、中塗塗膜13中に存在する溶剤を揮発させる。以下、焼付温度より低温で塗装後の塗料を一時放置し、塗料中の溶剤を揮発させることを「フラッシュ・オフさせる」という。
【0026】
(c)カラー中塗塗料を塗装する工程;
中塗塗装後、その上に前述の塗装機を用いてウエットオンウエット方式又はプレヒート方式でカラー中塗塗料を塗布する。ウエットオンウエット(W/W)方式とは、塗布した塗膜をフラッシュオフさせた後、未硬化状態又は硬化しない状態の内に、次の塗料を塗装する方法をいう。
【0027】
(d)上記(b),(c)工程の塗膜を焼付けする工程;
中塗塗膜13とカラー中塗塗膜14を同時に120〜160℃で10分〜60分間焼付け硬化させ、5〜40μm厚さのカラー中塗塗膜(すなわち、カラーベース塗膜14)と、5〜40μm厚さの中塗塗膜13とを形成する。
【0028】
(e)光輝性顔料及び/又は着色顔料含有ベースコートを塗装する工程;
カラー中塗塗装後、前述の塗装機を用いて光輝性顔料を0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜15重量%含有する光輝性顔料含有ベースコート(メタリック塗料またはマイカ塗料)を塗装し、5〜30℃で30秒〜8分間フラッシュ・オフさせ、ベースコート塗膜を形成させる。なお、本実施形態では、光輝性顔料としてマイカ類を用いたため、図1において、ベースコート塗膜をマイカベース塗膜15として表示した。
【0029】
一方、カラー中塗塗装後、その上に着色顔料を0.5〜20重量%、好ましくは2〜15重量%含有する着色顔料含有ベースコート(ソリッド系エナメル塗料)を塗装し、5〜30℃で30秒〜8分間フラッシュ・オフさせ、ベースコート塗膜を形成させてもよい。また、上記光輝性顔料及び着色顔料を含むベースコートを用いることができる。
【0030】
(f)クリヤー塗料を塗装する工程;
次いで、上記いずれかのベースコート塗装後、その上に更にクリヤー塗料をウエットオンウエットで塗装する。
【0031】
(g)上記(e),(f)工程の塗膜を焼付けする工程;
ベースコート塗膜(図1のマイカベース塗膜15又は着色顔料含有ベースコート塗膜)とクリヤー塗膜16とを同時に120〜160℃で10分〜60分間焼付け硬化させ、5〜20μm厚さのベースコート塗膜と、15〜40μm厚さのクリヤー塗膜16とを形成させる。
【0032】
クリヤー塗料を複数回塗装する場合には、最終のクリヤー塗装の後で硬化させればよく、下層のクリヤー塗膜の形成段階ではウエットオンウエット、プレヒート又は半硬化の状態でよい。
【0033】
上述の膜厚は、全て乾燥膜厚である。
【0034】
次に、本発明で用いた各塗料及び塗膜について説明する。
【0035】
<電着塗装>
本発明において、上述したように、まず被塗物の表面に電着塗装によって下塗塗膜を形成する。下塗塗膜は、被塗物に防食機能を付与することを主目的として形成されるものであり、電着塗料としては、カチオン型電着塗料、アニオン型電着塗料のいずれも使用することができるが、防食性の点でカチオン型電着塗料が好ましく、カチオン電着塗料としては、エポキシ系の樹脂塗料を適用することが好ましい。
【0036】
<中塗塗装、カラー中塗塗装>
電着塗膜上に中塗塗料を塗布する。中塗塗膜は、上塗塗膜を平坦にし、外観の良好な塗膜とするための下地として機能し、電着塗膜と上塗塗膜とを密着させ、上塗塗膜を通じて到達する紫外線や水による塗膜の劣化に対する抵抗性が要求される。中塗塗料は、上塗塗料との組み合わせで意匠性を発揮するために、着色顔料を含むカラー中塗塗料を適用でき、その明度は二酸化チタンやカーボンブラックで調整する。中塗塗装としては、グレー系の中塗塗料を塗装した後、カラー中塗塗料を重ねて塗装する。
【0037】
本発明の中性塗料に用いる塗膜形成樹脂(以下「ビヒクル」という)として、特にビヒクルが、ポリエステル樹脂/メラミン樹脂系が好ましく、中塗塗料のポリエステル樹脂の酸価がカラー中塗塗料のポリエステル樹脂の酸価より高いことが好ましい。更に、中塗塗料のポリエステル樹脂の酸価が、カラー中塗塗料のポリエステル樹脂の酸価より5〜10高いことがより好ましい。
【0038】
上記中塗塗料とカラー中塗塗料の両ポリエステル樹脂の酸価の差が5未満の場合には、塗膜表面にシワなどが発生し、平滑な塗膜表面は得られず、一方上記両ポリエステル樹脂の酸価の差が10を超える場合には、塗膜間にタレや流れが発生し、結果として仕上がり外観が劣化する。
【0039】
また、剛体振子型粘弾性測定機によって測定された塗膜の対数減衰率から求められる塗膜を形成する塗料の硬化反応開始時間において、中塗塗料の硬化反応開始時間が、カラー中塗塗料の硬化反応開始時間より短いことが好ましい。更に、中塗塗料の硬化反応開始時間が、カラー中塗塗料の硬化反応開始時間より30秒〜2分短いことがより好ましい。
【0040】
両塗料の硬化反応開始時間に差がないか、中塗塗料の硬化反応開始時間がカラー中塗塗料の硬化反応開始時間より長い場合には、塗膜表面にシワなどが発生し、平滑な塗膜表面は得られず、一方両塗料の硬化反応開始時間が2分を超える場合には、塗膜間にタレや流れが発生することがあったり、結果として仕上がり外観が劣化することもある。
【0041】
塗膜の硬化反応開始時間は、剛体振子型粘弾性測定機(「粘弾性測定機DDV−OPA」オリエンテック社製)によって測定された塗膜の対数減衰率曲線の変化し始めた時間をいう。
【0042】
中塗塗料に含まれる顔料は、着色顔料及び体質顔料が好ましい。着色顔料としては、二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化鉄、酸価クロムなどの無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、インダスロン、イソインドリノン、ベリレン、アンスラピリミジンなどの有機顔料が使用され、体質顔料としては、硫酸バリウム、アルミニウムシリケートなどが用いられる。
【0043】
<ベースコート塗装>
上塗塗装のための光輝性顔料含有ベースコート(メタリック塗料又はマイカ塗料)、ソリッド型エナメル塗料におけるビヒクルは、例えばフェノール樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。このうち、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ系アルキド樹脂、フッ素樹脂などが好適に使用される。これらの樹脂塗料は、有機溶剤型、水系型、粉体型のいずれでもよく、必要に応じてメラミン樹脂などのアミノ樹脂や(ブロック)ポリイソシアネート化合物などの架橋剤を用いることができる。なお、環境面の観点から有機溶媒の使用が規制されているので、水系とするのが好ましく、水系の場合には、適量の親水性有機溶媒を含有させても良い。水系型としては、水溶液型、水分散型等の形態で使用される。なお、有機溶媒としては、トルエン、キシレン等の炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブ等のエステル類、アルコール類等が挙げられる。また、上記フッ素樹脂としては、フッ素樹脂変性の水酸基含有アクリル樹脂、フルオロオレフィン変性アクリル樹脂(特開平2−24506号公報)が好適に用いられる。
【0044】
ベースコートに含有される光輝性顔料としては、リーフィング型アルミニウムフレーク、ノンリーフィング型アルミニウムフレーク、着色アルミフレーク、金属チタンフレーク、ステンレススティールフレーク、板状酸化鉄、フタロシアニンフレーク、グラファイト、二酸化チタン被覆マイカ、着色マイカ、金属めっきマイカ、金属めっきガラスフレーク、二酸化チタン被覆アルミニウムフレーク、二酸化チタン被覆酸化珪素フレーク等が使用される。なお、ベースコート塗料中に着色顔料を用いることができる。ベースコート塗料中に含まれる着色顔料としては、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、酸価クロムなどの無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、インダスロン、イソインドリノン、ベリレン、アンスラピリミジンなどの有機顔料が使用される。
【0045】
また各種マイカ顔料を用いることができるが、りん片状マイカの表面に二酸化チタンの薄膜をコーティングした干渉マイカ顔料に有彩色又は黒色の着色顔料を担持させた干渉マイカを用いてもよい(特開平7−16534号公報)。これにより、底色の白ぼけがなく、シェード部での深み感を与え、かつ幅広い色域が可能となる。干渉マイカ顔料に着色顔料を担持させるには、雲母粒子を母粒子とし、着色顔料を子粒子として母粒子上に子粒子を正殿的に吸着させ、機械的な衝撃力を与えながら吸着させた顔料粒子を雲母粒子の表面に固定化させる方法を採ることが好ましい。着色顔料の担持量は、干渉マイカ顔料100重量部当たり1〜10重量部、好ましくは2〜5重量部の範囲である。この担持量が1重量部未満であると着色効果が減退し、10重量部を超えると光輝感が減退する上、吸着不良の顔料が脱離して色安定性が損なわれる。
【0046】
その他の添加剤として、ベースコート塗料にドデシルベンゼンスルホン酸等の硬化触媒、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、タレ止め剤、増粘剤、架橋性重合体粒子(ミクロゲル)等を適宜添加することができる。これらの添加剤を通常ビヒクル100重量部に対して5重量部以下の割合で配合することにより、塗料や塗膜の性能を改善することができる。
【0047】
また、ベースコート塗料中の塗装時における全固形分に対する上記光輝性顔料及び/又は着色顔料の割合(濃度)は、1〜25重量%であることが好ましい。
【0048】
顔料の含有割合が1重量%未満の場合には、光輝感が不足したり、隠蔽性が不足するという不具合があり、一方顔料の含有割合が25重量%を超える場合には、塗膜の平滑性を損なうという不具合がある。
【0049】
<クリヤー塗装>
ベースコート塗膜上にクリヤー塗膜を少なくとも1層形成する。ベースコート塗料中に光輝性顔料が多い場合に、クリヤー塗料を2層以上塗装すると、表面の光輝感が向上する。
【0050】
クリヤー塗料の組成としては、(i)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂及びこれらの変性樹脂等から選ばれた少なくとも1種の熱硬化性樹脂と上記架橋剤を混合したもの、又は(ii)カルボシキル基含有ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーからなるビヒクルを用いることができるが、耐酸性雨対策及びベースコート塗料との溶解性の差を大きくするという観点から(ii)カルボシキル基含有ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーからなるビヒクルを含有する組成(特公平8−19315号公報参照)が好ましい。
【0051】
クリヤー塗膜の好ましい組成としては、透明樹脂にその透明性を損なわない範囲で、上述の着色顔料及び/又は体質顔料、又は改質剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤等の添加剤が配合されたものが挙げられる。
【0052】
(A)カルボシキル基含有ポリマー;
上記カルボシキル基含有ポリマーとしては、酸無水物基を含有するラジカル重合性モノマーと他の共重合性モノマーとの共重合体であって、酸無水物基が開環しハーフエステル化されたものが好ましい。酸無水物基を含有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、無水トリメット酸、無水ピロメリット酸、無水コハク酸等が挙げられ、これらを2種以上組み合わせて用いることができる。
【0053】
その他の共重合モノマーとしては、スチレン類(スチレン、α−メチルスチレン等)、アクリル酸エステル類((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−ドデシル等)、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。
【0054】
カルボキシル基含有ポリマー中の上記モノマーの含有量としては、酸無水物基を含有するラジカル重合性モノマーを10〜40重量%とし、他の共重合性モノマーを90〜60重量%とすることが好ましい、より好ましくは、ラジカル重合性モノマーが15〜30重量%であり、他の共重合性モノマーが85〜70重量%である。
【0055】
酸無水物基を含有するラジカル重合性モノマーと他の共重合性モノマーとの共重合は、公知の方法、例えばラジカル重合法等により行うことができる。カルボキシル基含有ポリマーの数平均分子量は500〜40,000であり、特に1,000〜20,000であることが好ましい。
【0056】
ハーフエステル化は、共重合の後で行う。ハーフエステル化剤は、低分子量のアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)である。ハーフエステル化反応は、室温から120℃の温度で触媒(トリエチルアミン、トリブチルアミン等の3級アミン類)の存在下で行う。
【0057】
(B)エポキシ基含有ポリマー;
エポキシ基含有ポリマーとしては、エポキシ基を有するラジカル重合性モノマー30〜70重量%と、水酸基を有するラジカル重合性モノマー10〜50重量%と、その他のラジカル重合性モノマー残量との共重合体であって、エポキシ当量が100〜800、好ましくは200〜600で、ヒドロキシ当量が200〜1,200、好ましくは400〜1,000のものが好ましい。エポキシ基含有ポリマーは、分子中にエポキシ基を2〜10個、好ましくは3〜8個有し、水酸基を2〜12個、好ましくは4〜10個有する。
【0058】
エポキシ基を有するラジカル重合性モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、3,4−エポキシシクロヘキサニルメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0059】
水酸基を有するラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、N−メチロールアクリルアミン等のヒドロキシル基を有するラジカル重合性モノマーが挙げられる。
【0060】
その他のラジカル重合性モノマーは、上記カルボキシル基含有ポリマーに使用したものと同じものを用いることができる。
【0061】
(A)カルボキシル基含有ポリマーと(B)エポキシ基含有ポリマーの配合比は、(A)100重量部に対して(B)を50〜250重量部とすることが好ましい。上記(A)及び(B)各ポリマーは、希釈剤を用いて必要な粘度にして用いる。
【0062】
<被塗物>
本発明の塗膜形成方法が施される被塗物としては、主として自動車であって、その素材は、(めっき)鋼板、アルミニウム、銅又はこれらの合金等の金属類である。
【0063】
被塗物に塗装するが、予め化成処理、等を施しておくことが好ましい。
【0064】
次に、本発明の好ましい他の実施態様を以下に示す。
【0065】
1.(a)被塗物に電着塗装後、焼付けする工程において、被塗物を、脱脂、洗浄した後、リン酸亜鉛処理などの塗装下地処理を施し、エポキシ系塗料などの電着塗料を使用して、カチオン型電着塗装を行い、150〜190℃で10分〜60分間焼付け硬化させて15〜40μm厚さの下地塗膜を形成する。
【0066】
2.(b)中塗塗料を塗装する工程において、中塗塗装後、5〜30℃で30秒〜8分間フラッシュ・オフし、5〜40μm厚さの中塗塗膜を形成する。
【0067】
3.(c)カラー中塗塗料を塗装する工程において、中塗塗装後、その上にウエットオンウエット方式又はプレヒート方式でカラー中塗塗料を塗布しする。
【0068】
4.(d)上記(b),(c)工程の塗膜を焼付けする工程において、中塗塗膜とカラー中塗塗膜を同時に120〜160℃で10分〜60分間焼付け硬化させ、5〜40μm厚さカラー中塗塗膜を形成する。
【0069】
5.(e)光輝性顔料及び/又は着色顔料含有ベースコートを塗装する工程において、カラー中塗塗装後、その上に光輝性顔料含有ベースコート(メタリック塗料又はマイカ塗料)を塗装し、5〜30℃で30秒〜8分間フラッシュ・オフさせ、5〜20μm厚さのベースコート塗膜を形成させる。
【0070】
6.(e)光輝性顔料又は光輝性顔料と着色顔料含有ベースコートを塗装する工程において、光輝性顔料含有ベースコートは、光輝性顔料を0.5〜20重量%含有する。
【0071】
7.(e)光輝性顔料又は光輝性顔料と着色顔料含有ベースコートを塗装する工程において、光輝性顔料含有ベースコートは、光輝性顔料を2〜15重量%含有する。
【0072】
8.(g)上記(e),(f)工程の塗膜を焼付けする工程において、ベースコート塗膜とクリヤー塗膜とを同時に120〜160℃で10分〜60分間焼付け硬化させ、15〜40μm厚さのクリヤー塗膜を形成させる。
【0073】
9.中塗塗料のビヒクルは、ポリエステル樹脂/メラミン樹脂系であり、中塗塗料のポリエステル樹脂の酸価が、カラー中塗塗料のポリエステル樹脂の酸価より5〜10高い。
【0074】
10.剛体振子型粘弾性測定機によって測定された塗膜の対数減衰率から求められる塗膜を形成する塗料の硬化反応開始時間において、中塗塗料の硬化反応開始時間が、カラー中塗塗料の硬化反応開始時間より30秒〜2分短い。
【0075】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。
【0076】
実施例1〜6、比較例1〜2
(1)被塗物の調整;
ダル鋼板(長さ300mm、幅100mm及び厚さ0.8mm)をリン酸亜鉛処理剤(「サーフダインSD2000」日本ペイント(株)製)を使用して常法により化成処理した後、エポキシ・ウレタン系カチオン電着塗料(「パワートップU−30」日本ペイント(株)製)を乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装した。次いで、160℃で30分間焼付けた後、ポリエステル・メラミン樹脂系中塗塗料(「オルガP−2グレー」日本ペイント(株)製)*1)を乾燥膜厚が35μmとなるようにエアスプレー塗装し、ウエットオンウエット又は表1に示す焼付条件で、表1に示したポリエステル・メラミン樹脂系カラー中塗塗料を乾燥膜厚が35μmとなるようにエアスプレー塗装し、表1に示す条件で焼き付けた。
註)*1):ポリエステル・メラミン系樹脂中のポリエステル樹脂の酸価=15、図5に示すように、塗料の硬化反応開始時間=7分50秒(粘弾性測定により)。
【0077】
但し、実施例6の場合のみ、上記ポリエステル樹脂の酸価=7、塗料の硬化反応開始時間=8分40秒。
【0078】
<硬化反応開始時間の求め方>
剛体振子型粘弾性測定機(「粘弾性測定機DDV−OPA」オリエンテック社製)において、重量22g、慣性モーメント859g・cm2の振子を用いて図5の温度条件で測定したときに、対数減衰率が下降を始めるまでの時間(硬化反応開始時間)として求めた。図5に、硬化反応開始時間の求め方を示した。
【0079】
上記の方法で形成されたカラー中塗塗膜上に、アクリル樹脂(スチレン/メチルメタアクリレート/エチルアクリレート/ヒドロキシエチルメタアクリレート/メタアクリル酸の共重合体、数平均分子量約20000、水酸基価45、酸価15、固形分50%)80固形重量部とメラミン樹脂(「ユーバン20SE」三井東圧化学(株)製、固形分60%)20固形重量部、マイカ顔料として「Iriodin 130 W II」(メルク社製)を、塗膜中、全固形分の10重量%となるように配合し、更に着色顔料としてフタロシアニンブルー顔料「シャニンブルーG−314」(山陽色素社製)を、塗膜中、全固形分の3重量%となるように配合し、シンナー(成分系;酢酸エチル(50重量部)/トルエン(25重量部)/ソルベッソ−150(25重量部))で希釈(塗装粘度 秒/No.4フォードカップ;20℃)し、エアスプレー塗装を行い、光輝性顔料を含むベースコート塗膜を形成した。このベースコート塗膜表面に表1に示すクリヤー塗料をウエットオンウエットで塗装し、乾燥膜厚が35μmとなるように、表1に示す条件で焼付けた。
【0080】
なお、比較例1は3コート2ベークの例であり、比較例2は3コート1ベークの例である。
【0081】
(2)評価方法;
(i)2次密着性:
得られた塗装物の密着強度を調べるために、各試験板を40℃で240時間温水浸漬後、JIS K 5400 8.5に準拠して、2mm×2mmのゴバン目密着テストを行い、下記の基準により評価した。結果を表1に示す。
【0082】
◎ :(残マス目数)/(全マス目数)=100/100
○ :(残マス目数)/(全マス目数)=99/100〜30/100
× :(残マス目数)/(全マス目数)=29/100〜0/100
(ii)塗膜仕上がり外観:
目視により評価した。
【0083】
○ : 平滑な塗膜表面でありかつ艶がある
△ : 少しシワのある塗膜表面であり艶がある
× : シワのある塗膜表面でありかつ艶もない
(iii)耐酸性雨性:
得られた塗装物の塗膜表面に、pH3に調整した硫酸溶液0.2mlを滴下した。これらを70℃に30分保持した後、塗膜表面のエッチング深さ(d)(μm)を測定し、耐酸性雨性を下記の基準により評価した。結果を表1に示す。
【0084】
◎ : 0≦d<0.5
○ : 0.5≦d<1
× : 1≦d
【表1】
Figure 0004030626
註)
*1);アルミペースト:「アルペースト7130NS」(東洋アルミニウム(株)製)。
*2);Ac/ME:アクリル樹脂/メラミン樹脂系ビヒクルを含むクリヤー塗料「スーパーラックM−180」(日本ペイント(株)製)。
C/E:カルボシキル基含有ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーからなるビヒクルを含むクリヤー塗料「マックフロー550」(日本ペイント(株)製)。
【0085】
*3):W/W:ウエットオンウエット
これらの結果から、本発明の塗膜形成方法によれば、通常の焼付及びオーバーベーク時でも塗膜の密着性が良く、また塗膜の仕上がりが良好で、かつ耐酸性雨性も良好であることが判明した。
【0086】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る塗膜形成方法によれば、塗膜の仕上がり外観が良く、焼付時のオーバーベークに対する塗膜の密着性も良好となり、更にコストダウンが可能な光輝性塗膜を提供することができる。
【0087】
また、本発明の塗膜形成方法によって塗装された塗装物は、従来に比べ低コストで、耐性があり、かつ塗膜表面が平滑で艶のある仕上がり外観を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の塗膜形成方法により形成された複層塗膜の構成の一例を示す図である。
【図2】 カラーベース塗膜より上方の塗膜が3コート1ベークで形成された複層塗膜の構成図である(比較例)。
【図3】 カラーベース塗膜より上方の塗膜が3コート2ベークで形成された複層塗膜の構成図である(比較例)。
【図4】 中塗塗膜より上方の塗膜が4コート1ベークで形成された複層塗膜の構成図である(比較例)。
【図5】 剛体振子型粘弾性測定機で測定した対数減衰率の経時変化を示す曲線図で、塗膜の塗料の硬化反応開始時間を求めるための図である。
【符号の説明】
11 被塗物、12 電着塗膜、13 中塗塗膜、14 カラーベース塗膜、15 マイカベース塗膜、16 クリヤー塗膜。

Claims (4)

  1. (a)被塗物に電着塗装後、焼付けする工程と、
    (b)中塗塗料を塗装する工程と、
    (c)カラー中塗塗料を塗装する工程と、
    (d)上記(b),(c)工程の塗装を焼付けする工程と、
    (e)光輝性顔料及び/又は着色顔料含有ベースコートを塗装する工程と、
    (f)クリヤー塗料を塗装する工程と、
    (g)上記(e),(f)工程の塗膜を焼付けする工程と、
    上記の(a)〜(g)の工程を順次経る塗膜形成方法であって、
    前記中塗塗料及びカラー中塗塗料のビヒクルがポリエステル樹脂/メラミン樹脂系であり、中塗塗料のポリエステル樹脂の酸価がカラー中塗塗料のポリエステル樹脂の酸価より高いことを特徴とする塗膜形成方法。
  2. 請求項1に記載の塗膜形成方法において、
    剛体振子型粘弾性測定機によって測定された塗膜の対数減衰率から求められる塗膜を形成する塗料の硬化反応開始時間において、前記中塗塗料の硬化反応開始時間は、前記カラー中塗塗料の硬化反応開始時間より短いことを特徴とする塗膜形成方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の塗膜形成方法において、
    前記クリヤー塗料のビヒクルが、カルボキシル基含有ポリマー及びエポキシ基含有ポリマーを含有することを特徴とする塗膜形成方法。
  4. 請求項1から請求項に記載の塗膜形成方法によって塗装されたことを特徴とする塗装物。
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