JP4030301B2 - 難燃性ポリアミド樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性が極めて高く、燃焼時に腐食性の高いハロゲン化水素ガスの発生がなく、流動性に優れ、特に、電気・電子分野のコネクター等の部品、自動車分野の電装部品等の部品材料に好適に用いられる難燃性ポリアミド樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリアミド樹脂は、機械的強度、耐熱性などに優れることから、自動車部品、機械部品、電気・電子部品などの分野で使用されている。特に近年、電気・電子部品用途において、ますます難燃性に対する要求レベルが高くなり、本来ポリアミド樹脂の有する自己消火性よりもさらに高度な難燃性が要求され、この為、アンダーライターズ・ラボラトリーのUL−94 V−0規格に適合する難燃レベルの高度化検討が数多くなされている。そしてそれらにおいては一般にハロゲン系難燃剤やトリアジン系難燃剤を添加する方法が提案されている。
【0003】
例えば、ポリアミド樹脂への塩素置換多環式化合物の添加(特開昭48‐29846号公報)や臭素系難燃剤、例えば、デカブロモジフェニルエーテルの添加(特開昭47‐7134号公報)、臭素化ポリスチレンの添加(特開昭51-47044号公報、特開平4-175371号公報)、臭素化ポリフェニレンエーテルの添加(特開昭54-116054号公報)、臭素化架橋芳香族重合体の添加(特開昭63-317552号公報)、臭素化スチレンー無水マレイン酸重合体の添加(特開平3-168246号公報)等が知られている。しかしながら、ハロゲン系難燃剤は燃焼時に腐食性のハロゲン化水素及び煙を発生したり、有毒な物質を排出する疑いがもたれ、これら環境問題からハロゲン系難燃剤の配合されたプラスチック製品の使用を規制する動きがある。このことから、ハロゲンフリーのトリアジン系難燃剤が注目され数多く検討がなされている。
【0004】
例えば難燃剤としてメラミンを使用する技術(特公昭47-1714号公報)、シアヌル酸を使用する技術(特開昭50-105744号公報)、シアヌル酸メラミンを使用する技術(特開昭53-31759号公報)が知られている。これらの技術で得られた組成物は成形時の熱安定性にすぐれているが、添加されるこれらの化合物の粒径、混練条件によってバラつき、それらを考慮して多量にこの付加物を添加すると、成形品の外観が損なわれ、同時に物性も低下するなどの問題がある。以上のことから、成形性に優れ薄肉成形品でUL94V−0規格を満足する非ハロゲンベースの難燃性ポリアミド樹脂の出現が強く渇望されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、難燃性が極めて高く、機械物性と流動性に優れる難燃性ポリアミド樹脂組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、ポリアミド樹脂及びシアヌル酸メラミンを組合わせた系に特定の発泡剤を配合した際に、前記本発明目的を達成しうることを見いだし、この知見に基づき本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は次の通りである。
(1)(a)ヘキサメチレンアジパミド単位を主たる構成成分とするポリアミド樹脂100質量部、(b)シアヌル酸メラミン1.5〜20質量部および(c)ポリアミド樹脂の加工温度以上の分解温度を有する発泡剤0.03〜2質量部とからなることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
(2)前記(c)発泡剤がテトラゾール系発泡剤であることを特徴とする前記(1)に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
(3)前記(a)ポリアミド樹脂が、相対粘度2.6〜3.5のポリアミド66樹脂60〜100質量%と相対粘度が1.5〜2.3のポリアミド6樹脂40〜0質量%とからなることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で用いられるポリアミド樹脂(a)は、ヘキサメチレンアジパミド単位を主たる構成成分とするポリアミドである。ここで、「ヘキサメチレンアジパミドを構成成分とする」とは、混合または共重合によってヘキサメチレンアジパミド単位が、ポリアミド樹脂(a)に導入されていることを意味する。ヘキサメチレンアジパミド単位以外の成分としては、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12等の脂肪族ポリアミドやヘキサメチレンテレフタルアミド、テトラメチレンイソフタルアミド、ヘキサメチレンイソフタルアミド、メタキシリレンアジパミドなどのテレフタル酸、イソフタル酸、キシリレンジアミン等の芳香族成分を含む芳香族ポリアミド等を用いることができる。薄肉成形品において高い難燃性と優れた成形性が得られる点から、ポリアミド66とポリアミド6との混合ポリアミドが好ましく、特に相対粘度2.7〜3.5のポリアミド66 60〜100質量%と相対粘度が1.5〜2.3のポリアミド6 40〜0重量%とからなるポリアミドが最も好ましい。
【0008】
シアヌル酸メラミン(b)の配合割合はヘキサメチレンアジパミド単位を主たる構成成分とするポリアミド樹脂(a)100質量部あたり1.5〜20質量部である。シアヌル酸メラミンの配合割合が、1.5質量部未満では、得られる組成物の難燃性が不十分なものとなる。一方、20質量部を超えると、得られる組成物の機械物性が低下する。
【0009】
シアヌル酸メラミンは、シアヌル酸とメラミンとの等モル反応物であり、たとえばシアヌル酸の水溶液とメラミンの水溶液とを混合し、70〜100℃程度の温度で撹拌させながら反応させ、得られる沈澱物を濾過させることによって得ることができる。成形品の機械物性、外観の点からは、シアヌル酸メラミンの粒径は100μm以下が好ましく、さらに好ましくは50μm以下であり、このような粒径に粉砕して粉末を用いるのが良い。0.5〜20μmの粉末を用いると高い難燃性を発現するばかりでなく成形品の強度が著しく高くなるので特に好ましい。
【0010】
本発明においては、ポリアミド樹脂の加工温度以上の分解温度を有する発泡剤(c)を配合する必要がある。(c)成分の配合割合は、ヘキサメチレンアジパミド単位を主たる構成成分とするポリアミド樹脂(a)100質量部に対して、0.03〜2質量部である。発泡剤の配合割合が、0.03質量部未満では、得られる組成物の難燃性が不十分なものとなる。一方、2質量部を超えても、得られる組成物の難燃性が悪化する。
【0011】
本発明で用いられる発泡剤は、ポリアミド樹脂の加工温度以上の分解温度を有することが必要である。本発明では、ヘキサメチレンアジパミド単位を主体とするポリアミドを用いるので、発泡剤の分解温度は、通常280℃以上、好ましくは290℃以上、より好ましくは300℃以上であればよい。このような条件を満たす発泡剤として、テトラゾール系発泡剤が使用できる。テトラゾール系発泡剤とは、窒素4原子及び炭素1原子で構成されている5員環を有する化合物であり、燃焼時に発生するダイオキシンなどの環境汚染がなく、加熱分解させた場合に、窒素、炭酸ガス、水蒸気などのガスしか発生しない。テトラゾール系化合物の中で好ましいのは、高度な難燃性が得られるという点で、該化合物が熱分解した時の該化合物1g当たりのガス発生量が多い化合物である。そのようなテトラゾール系化合物としては、1H−テトラゾールの金属塩、アミン塩などの1H−テトラゾール誘導体、もしくは5,5’−ビス−1H−テトラゾールの金属塩、アミン塩などの5,5’−ビス−1H−テトラゾール誘導体、もしくは5−メチル−1H−テトラゾールの金属塩、アミン塩などの5−メチル−1H−テトラゾール誘導体、もしくは5−フェニル−1H−テトラゾールの金属塩、アミン塩などの5−フェニル−1H−テトラゾール誘導体、もしくは5−アミノ−1H−テトラゾールの金属塩、アミン塩などの5−アミノ−1H−テトラゾール誘導体、もしくは1H−テトラゾール−5−カルボキシレートの金属塩、アミン塩などの1H−テトラゾール−5−カルボキシレート誘導体などが挙げられ、1H−テトラゾール−5−イル−グアニジンが最も好ましい。テトラゾール系化合物には1H−テトラゾール誘導体の互変異性体である2H−テトラゾール誘導体があるが、本発明では2H−テトラゾール誘導体であっても良い。本発明におけるテトラゾール系発泡剤は単独で添加しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0012】
本発明では、更に無機系の難燃助剤を機械的物性や成形加工性に悪影響を与えない範囲において添加することもできる。好ましい難燃助剤としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化鉄、酸化硼素、硼酸亜鉛等が挙げられる。
【0013】
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物の製造方法は、発泡剤の分解温度がポリアミドの加工温度以上であれば、特に限定はなく、ポリアミド樹脂、シアヌル酸メラミン、発泡剤を常用の単軸または2軸の押出機やニーダー等の混練機を用いて、溶融混練する方法等を用いることができる。溶融混練の際には、シアヌル酸メラミン、発泡剤をサイドフィードする方法が好ましい。
【0014】
本発明の難燃性ポリアミド樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、他の成分、例えば顔料、染料等の着色剤や、ポリアミド樹脂の一般的な熱安定剤である銅系熱安定剤(例えばヨウ化銅、酢酸銅等とヨウ化カリウム、臭化カルウムとの併用)、ヒンダードフェノール系酸化劣化防止剤に代表される有機系耐熱剤、耐候性改良剤、核剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤等の添加剤、充填材、他の樹脂ポリマー等を添加することが出来る。
【0015】
本発明の組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形など公知の方法によってコネクター、コイルボビン、ブレーカー、電磁開閉器、ホルダー、プラグ、スイッチ等の電気、電子、自動車用途の各種成形品に成形される。
【0016】
【実施例】
以下に実施例および比較例をあげ、本発明を具体的に説明する。
1.原料
1)ポリアミド66樹脂(以下、PA66とする。)
・デュポン社製101NC(相対粘度2.7)。
2)ポリアミド6樹脂(以下、PA6とする。)
・ユニチカ社製A1015(相対粘度2.05)。
3)シアヌル酸メラミン
・日産化学社製MC-440(以下、MCとする。)
4)テトラゾール系発泡剤
・東洋化成工業社製BHT-GAT(1H−テトラゾール−5−イル−グアニジン)、分解温度312℃(以下、GATとする。)
・東洋化成工業社製BHT(1H−テトラゾール)、分解温度263℃
・東洋化成工業社製P5T(5−フェニル−1H−テトラゾール)、分解温度217℃
2.評価方法
1)相対粘度
JIS K6810に従って98%硫酸での相対粘度を測定した。
2)発泡剤の分解温度
TGAで測定を行い、温度−重量減少の曲線に基づいて決定した。この曲線の変曲点に引いた接線とベースライン(曲線において、重量減少がゼロである実質的に直線の部分)との交点の温度を分解温度と定義した。
3)引張強度および引張伸度
ASTM D638に準じて測定した。
4)曲げ強度および曲げ弾性率
ASTM D790に準じて測定した。
5)アイゾッド衝撃値
ASTM D256に準じて測定した。
6)難燃性
UL94(米国Under Writers Laboratories Inc.で定められた規格)の方法に従って測定した。なお試験片の厚みは1/32インチ(約0.8mm)とした。
7)流動性
東芝機械社製IS100E-i3A射出成形機に幅20mm、厚み1mmのバーフロー金型を取り付け、樹脂温度260℃としたときの樹脂組成物の流動性をバーフロー流動長(単位:mm)で評価した。値が大きいほど流動性に優れることを示す。
【0017】
実施例1
100質量部のPA66(相対粘度2.7)を0.03質量部のCuI及び0.1質量部のKIとともにクボタ社製連続定流供給装置を用いて、サイドフィーダー付同方向2軸押出機(東芝機械社製TEM‐37BS)の主供給口に供給した。また、サイドフィーダーより10質量部のMCおよび0.1質量部のGATを供給した。樹脂温度280℃、吐出量14kg/時で溶融混練を行い、ノズルからストランド状に引取った樹脂組成物を水浴にくぐらせて冷却固化し、ペレタイザーでカッティングした後、100℃で12時間熱風乾燥することによって樹脂組成物のペレットを得た。
次いで、得られた樹脂組成物ペレットを、射出成形機(東芝機械社製IS100E-i3A)を用いて樹脂温度260℃で成形し、各種試験片を作製した。これらについて機械的物性、難燃性を評価した。その結果を表1に示す。
【0018】
実施例1〜7、比較例1〜5
MC及び発泡剤の配合割合を表1に示す割合にした以外は実施例1と同様にしてペレットを得て、諸特性を調べた。ただし、比較例3〜5については樹脂組成物の混練時に発泡が生じたため、ストランド切れが頻発し、評価に必要なペレットが得られなかった。また、実施例6、7、比較例5については、PA6を配合した。
これらの結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
Figure 0004030301
【0020】
実施例1〜7では、機械物性、難燃性ともに優れたポリアミド樹脂組成物が得られた。
比較例1はMCを配合しなかったため、難燃性が低かった。
比較例2では、発泡剤を配合しなかったため、難燃性を満足するものではなかった。
比較例3〜5はポリアミド樹脂の成形温度未満の分解温度を有する発泡剤を使用したため、コンパウンド時の操業性が悪く、各種評価に必要なペレットを得ることができなかった。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば、難燃性が極めて高く、機械物性と流動性に優れたポリアミド樹脂組成物が得られ、特に、電気・電子分野のコネクター等の部品、自動車分野の電装部品等の部品材料に好適に用いることができる。

Claims (2)

  1. (a)ヘキサメチレンアジパミド単位を主たる構成成分とするポリアミド樹脂100質量部、(b)シアヌル酸メラミン1.5〜20質量部および(c)ポリアミド樹脂の加工温度280 以上の分解温度を有する発泡剤0.03〜2質量部とからなる難燃性ポリアミド樹脂組成物であって、前記(c)発泡剤がテトラゾール系発泡剤であることを特徴とする難燃性ポリアミド樹脂組成物。
  2. 前記(a)ポリアミド樹脂が、相対粘度2.6〜3.5のポリアミド66樹脂60〜100質量%と相対粘度が1.5〜2.3のポリアミド6樹脂40〜0質量%とからなることを特徴とする請求項1または2に記載の難燃性ポリアミド樹脂組成物。
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