JP4030052B2 - 画像形成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、乾式二成分あるいは一成分現像剤を用いた複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真方式は多様な方法が知られており、一般的には像担持体表面を帯電させ、帯電させた像担持体を露光して静電潜像を形成する。次いで、静電潜像にトナーを現像し、像担持体上にトナー像を形成する。さらに、中間転写体を介して、または直接的に像担持体上のトナー像を記録材上に転写し、この転写されたトナー像を加熱、圧力もしくはこれらの併用によって定着することにより、記録材上に画像が形成された記録物が得られる。なお、トナー像転写後の像担持体上に残ったトナーは、ブレード、ブラシ、ローラ等の既知の方法によりクリーニングされる。
【0003】
近年の電子写真技術の動向として、デジタル化及び高画質化が要求されており、例えば解像度は1200dpi以上の高解像のものが検討されており、これを実現するために従来以上に高精細の画像形成方式が望まれている。潜像を可視化するトナー及び現像剤に対しても、高精細画像を形成するためにさらなる小粒径化が検討され実現化されつつある。また、画像のデジタル化に対応するために、画像を形成するドットの再現性が要求されており、ドットを形成するトナーに均一性が求められている。このため、従来主に用いられてきた機械的な粉砕方式によって作製された形状が不均一な粉砕トナーよりも、熱気流、流動造粒法により粉砕トナーに球形処理を施したトナーや、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法などによる重合トナー等の球形トナーの方が有利である。
【0004】
しかし、球形トナーを用いた場合、弾性部材からなるブレードを像担持体に押し当ててトナーを除去するクリーニングブレードを用いたクリーニング方式や、弾性部材からなるローラを像担持体に押し当てて回転することによりトナーを除去するクリーニングローラ方式において、クリーニング不良による画像不良が発生しやすいという問題点がある。クリーニングブレードやクリーニングローラを用いたクリーニング装置は、構成が簡単で、装置の小型化が容易で、コスト面も有利なので、広く実用化されている。
【0005】
また、近年、複写機やプリンタの出力画像におけるカラー画像の占める割合が拡大している。電子写真方式の画像形成装置においてカラー画像を形成するには、像担持体上に形成した各色のトナー像を記録材上に積層するための転写技術が必要であり、転写ドラム方式、中間転写方式、タンデム方式、多重現像方式等の様々な転写方法が検討されている。この内、像担持体上のトナー像を中間転写体上に複数回転写し、中間転写体上に積層されたトナー層を記録材上に一度に転写する中間転写方式は、記録材の搬送が簡単であり、多様な記録材を使用できる利点があるため、様々な複写機やプリンタに採用されている。しかし、この中間転写方式を用いた画像形成装置に球形トナーを用いた場合、像担持体上の転写残トナーに加えて中間転写体上の転写残トナーもクリーニングする必要があり、中間転写体上でのクリーニング不良による画像不良が発生しやすいという問題点がある。
【0006】
中間転写体上でのクリーニング不良を低減する対策としてはクリーニング方法の改良が考えられるが、クリーニングするトナー量が少ないほどクリーニング不良の発生が抑制されるため、中間転写体から記録材への転写効率を向上させる対策が有効である。また、転写効率が向上すると、クリーニングによって回収されたトナーの廃棄量が低減するため、転写効率の向上は環境面に対しても有効である。さらに、リサイクル機構を設けてクリーニングによって回収されたトナーを再利用する場合、様々なストレスによって回収されたトナーの特性が通常のトナーに対して変化している場合が多いので、回収されたトナーによる画像不良が発生しやすく、回収するトナー量が少ないほど画像不良の発生を抑制することができるため、さらなる転写効率の向上が求められている。
【0007】
中間転写体から記録材への転写効率を上げる対策として、中間転写体とトナー間の付着力を低減する手段を設ける技術が開示され、中間転写体上にトナーより小粒径の微粒子を塗布する方法が提案されている(例えば、特許公報1〜6参照)。中間転写体上に付着した微粒子は、中間転写体とトナー間の接触面積を低減し、中間転写体とトナー間の付着力が小さくなり、中間転写体表面に付着したトナーが容易に転写するため転写効率が向上する。
しかしながら、上記のような方法では、中間転写体上への微粒子の均一塗布が困難であり、微粒子の濃度ムラに起因する画像の濃度ムラが生じやすい、中間転写体に塗布された微粒子がクリーニング等のストレスによって中間転写体を傷つけて画像不良を生じやすい、中間転写体から剥離した微粒子がトナーやキャリアに付着して帯電性や流動性が変化して、現像及び転写不良を生じやすい等の問題点がある。
【0008】
【特許文献1】
特開平7−234592号公報(請求項1、第2頁右欄第26行目〜第29行目)
【特許文献2】
特開平9−281813号公報(請求項1、第2頁右欄第33行目〜第40行目)
【特許文献3】
特開平10−319730号公報(請求項1、第3頁右欄第17行目〜第29行目)
【特許文献4】
特開2000−89587号公報(請求項4、第4頁左欄第44行目〜右欄第2行目、第5頁左欄第5行目〜第15行目)
【特許文献5】
特開2000−206801号公報(請求項1、第3頁左欄第46行目〜第50行目)
【特許文献6】
特開2000−221799号公報(請求項1、第3頁右欄第16行目〜第20行目、第6頁左欄第5行目〜第12行目)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、転写効率が高く、画像不良が生じない高画質の画像形成装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すなわち、上記課題は、本発明の(1)「少なくとも、像担持体に静電潜像を形成する手段と、像担持体上にトナー画像を形成する現像手段と、像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写する一次転写手段と、中間転写体上のトナー像を記録材上に転写する2次転写手段を有する画像形成装置であって、前記中間転写体転写手段を転写体が像担持体に当接し、像担持体と転写体間に電界が形成されるように構成し、前記中間転写体とトナー間付着力の常用対数の分布における標準偏差が0.4以下となり、かつ遠心分離法で測定した中間転写体とトナー間付着力の平均値をF(nN)、トナーの体積平均粒径をD(μm)、トナー1粒子当たりの帯電量の平均値をQ(fC)とし、Fが(1)式によって表わされ、
【0011】
【数1】
Figure 0004030052
αが3(nN/μm)以下であり、かつβが90(nN・μm /fC )以下となり、
前記トナーが含フッ素化合物を含有し、
前記中間転写体が少なくとも樹脂層、弾性層及び表面層を有する無端状ベルトであり、前記樹脂層が少なくともフッ素系樹脂及びカーボンブラックからなり、前記弾性層が少なくともウレタンゴム及びカーボンブラックからなり、前記表面層が少なくともポリウレタン樹脂及びポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子からなることを特徴とする前記第(1)項に記載の画像形成装置」、)「トナー1粒子当たりの帯電量の平均値Q(fC)をトナーの体積平均粒径D(μm)の二乗で割った値Q/Dの絶対値が0.01〜0.3(fC/μm)となるトナーを用いたことを特徴とする前記第(1)項に記載の画像形成装置」、()「製造工程あるいは製造後の工程において球形化したトナーを用いたことを特徴とする前記第(1)項または第(2)項に記載の画像形成装置」、()「前記球形化したトナーを重合法により作製したことを特徴とする前記第(1)項乃至第()項の何れかに記載の画像形成装置」、()「前記球形化したトナーの平均円形度が0.95〜1.0となるように作製したことを特徴とする前記第(1)項乃至第()項の何れかに記載の画像形成装置」、()「前記球形化したトナーを、円形度が0.95以下のトナーの割合が15%以下となるように作製したことを特徴とする前記第(1)項乃至第()項の何れかに記載の画像形成装置」、()「前記球形化したトナーの体積平均粒径Dが3〜9μmとなるように調整したことを特徴とする前記第(1)項乃至第()項の何れかに記載の画像形成装置」、()「前記球形化したトナーの体積平均粒径Dと個数平均粒径Dnの比D/Dnが1.3以下となるように調整したことを特徴とする前記第(1)項乃至第()項の何れかに記載の画像形成装置」、()「前記球形化したトナーの表面が、一次粒子径の平均値が5nm〜100nmである微粒子から成る外添剤によって被覆されていることを特徴とする前記第(1)項乃至第()項の何れかに記載の画像形成装置」によって解決される。
【0012】
また、上記課題は、本発明の(10)「前記球形化したトナー1粒子の表面積に対する前記外添剤の被覆面積比率の平均値が10〜100%となるように調整したことを特徴とする前記第(1)項乃至第()項の何れかに記載の画像形成装置」によって解決される。
【0013】
また、上記課題は、本発明の(11)「前記外添剤が、疎水化処理されたシリカ、チタン、アルミナのいずれかを少なくとも1種類以上含有することを特徴とする前記第(1)項乃至第(10)項の何れかに記載の画像形成装置」、(12)「前記中間転写体として中間転写ベルトを用い、該中間転写ベルトの体積抵抗率が10〜1013Ωcmとなるように調整したことを特徴とする前記第(1)項乃至第(11)項の何れかに記載の画像形成装置」によって解決される。
【0014】
【発明の実施形態】
本発明の画像形成装置について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明の画像形成装置は、像担持体上に静電潜像を形成する潜像形成手段、像担持体上の潜像上にトナー像を形成する現像手段、像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写し、中間転写体上のトナー像を記録材上に転写する転写手段、記録材上のトナー像を定着する定着手段、転写されずに像担持体及び中間転写体上に残ったトナーを除去・回収するためのクリーニング手段を有する。
【0015】
図3は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。図3において、静電潜像担持体である感光体ドラム(21)の周囲には、該ドラム表面を帯電するための帯電装置(22)、一様帯電処理面に潜像を形成するための露光装置(23)、ドラム表面の潜像に帯電トナーを付着することでトナー像を形成する4つの現像装置(24M),(24B),(24C),(24Y)、形成されたドラム上のトナー像を中間転写体である中間転写ベルト(27)上へ転写し、中間転写ベルト(27)上のトナー像を記録材上に転写する転写装置(25)、記録紙上のトナーを定着する定着装置(30)、ドラム上の残留トナーを除去・回収するためのクリーニング装置(33)、ドラム上の残留電位を除去するための除電装置(34)が順に配設されている。
【0016】
まず、感光ドラム(21)は、帯電装置である帯電ローラ(22)によって表面を一様に帯電される。図3の例では、帯電ローラを用いて感光ドラム(21)を帯電しているが、コロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電を用いても良い。帯電ローラを用いた帯電は、コロナ帯電を用いた場合よりもオゾン発量が少ない利点がある。
帯電した感光体ドラム(21)に画像情報に応じてレーザー光線(23)が照射され、静電潜像が形成される。感光ドラム(21)上の帯電電位や露光部位を電位センサで検出し、帯電条件や露光条件を制御することもできる。
【0017】
次に、現像装置(24)によって、静電潜像が形成された感光体ドラム(21)上にトナー像が形成される。現像装置(24)は、黒(B)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各トナーに対応した4つの現像装置(24B、24C、24M、24Y)からなり、各現像装置によって感光体ドラム(21)上に形成されたトナー像は、中間転写ベルト(27)上に順次重ね合わされる。
【0018】
現像装置(24)が、トナーとキャリアから成る二成分現像剤を用いた二成分現像装置である場合の構成例を図4に示す。この例では、現像剤がスクリュー(41)によって攪拌・搬送され、現像スリーブ(42)に供給される。現像スリーブ(42)に供給される現像剤はドクターブレード(43)によって規制され、供給される現像剤量はドクターブレード(43)と現像スリーブ(42)との間隔であるドクターギャップによって制御される。ドクターギャップが小さすぎると、現像剤量が少なすぎて画像濃度不足になり、逆にドクターギャップが大きすぎると、現像剤量が過剰に供給されて感光体ドラム(21)上にキャリア付着が発生するという問題が生じる。現像スリーブ(42)には、周表面に現像剤を穂立ちさせるように磁界を形成する磁石が備えられており、この磁石から発せられる法線方向磁力線に沿うように、現像剤が現像スリーブ(42)上にチェーン状に穂立ちされて磁気ブラシが形成される。現像スリーブ(42)と感光体ドラム(21)は、一定の間隙(現像ギャップ)を挟んで近接するように配置されていて、双方の対向部分に現像領域が形成されている。現像スリーブ(42)は、アルミニウム、真鍮、ステンレス鋼、導電性樹脂などの非磁性体を円筒形に形成したものであり、不図示の回転駆動機構によって回転されるようになっている。磁気ブラシは、現像スリーブ(42)の回転によって現像領域に移送される。現像スリーブ(42)には不図示の現像用電源から現像電圧が印加され、磁気ブラシ上のトナーが現像スリーブ(42)と感光体ドラム(21)間に形成された現像電界によってキャリアから分離し、感光体ドラム(21)上の静電潜像上に現像される。なお、現像電圧には交流を重畳させても良い。
【0019】
なお、現像ギャップは、現像剤粒径の5〜30倍程度、現像剤粒径が50μmであれば0.5mm〜1.5mmに設定することが可能である。これより広くすると、望ましいとされる画像濃度が出にくくなる。また、ドクターギャップは、現像ギャップと同程度かやや大きくする必要がある。感光体ドラム(21)のドラム径やドラム線速、現像スリーブ(42)のスリーブ径やスリーブ線速は、複写速度や装置の大きさ等の制約によって決まる。ドラム線速に対するスリーブ線速の比は、必要な画像濃度を得るために1.1以上にする必要がある。なお、現像後の位置にセンサを設置し、光学的反射率からトナー付着量を検出してプロセス条件を制御することもできる。
【0020】
磁気ブラシを構成するキャリアには、鉄紛、フェライト紛、磁性粒子を分散した樹脂粒子等の磁性を有する粉体、及び電気特性を制御するために樹脂などで表面を被覆した磁性粉体が好ましく使用される。磁気ブラシを構成するキャリアとしては、感光体ドラム(21)表面へのダメージを軽減するために球形の粒子を用いるのが好ましく、平均粒径は150μm以下のものが好ましい。キャリアの平均粒径が大きすぎると最密状態に配置してあっても曲率半径が大きく、感光体ドラム(21)と接触していない面積が増え、トナー像のかけや抜けが発生する。逆に平均粒径があまり小さすぎると、交流電圧を印加する場合には、粒子が動きやすくなって粒子間の磁力を上回り、粒子が飛散してキャリア付着の原因となってしまう。キャリアの平均粒径は、特に30μm以上、100μm以下であることが好ましい。さらに、キャリアの体積抵抗率が低すぎると、現像電圧の印加時にキャリアに電荷が注入され、感光体ドラム(21)へのキャリア付着を起こしたり、感光体の絶縁破壊を起こしたりするため、体積抵抗率が10Ωcm以上のキャリアを使用する必要がある。
【0021】
図3の例では4つの現像装置が感光体ドラムを囲むように設置されているが、本発明はこの構成には限定されず、4つの現像装置が回転等の動きによって交互に感光体ドラムに接するように構成しても良い。また、図4の例では現像装置として二成分現像装置を用いているが、本発明は二成分現像装置に限定されるものではなく、現像スリーブ上に形成したトナー薄層を電界で感光体上に現像する一成分現像装置を用いてもよい。
【0022】
感光ドラム(21)上に形成されたトナー像は、感光ドラム(21)と中間転写ベルト(27)が接触する転写ニップに搬送される。中間転写ベルト(27)に接触するローラ(26b)に不図示の転写用電源によってトナーと逆極性の転写電圧が印加され、中間転写ベルト(27)と感光ドラム(21)間に作用する転写電界によって感光ドラム(21)上に形成されたトナー像が中間転写ベルト(27)上へ転写される。
【0023】
フルカラー画像を形成する場合、1色目のトナー像が中間転写ベルト(27)上へ転写されると、感光ドラム(21)上に残留したトナーはクリーニング装置(28)によって除去され、除電装置(33)によってドラム上の残留電位が除去され、感光ドラム(21)上に2色目のトナー像が作像され、1色目のトナー像が形成されている中間転写ベルト(27)上へ2色目のトナー像が転写され、同様にして、4色のトナー像が中間転写ベルト(27)上へ転写される。なお、中間転写ベルト(27)は、感光ドラム(21)と接離可能で、トナー像の転写が実施されていないときは感光ドラム(21)から隔離している。不図示の給紙トレイから搬送された記録材(29)が転写ニップに進入し、中間転写ベルト(27)上に形成されたトナー像が、ローラ(26b)に印加される転写電圧によって記録材(29)上に一括して転写される。感光ドラム(21)から中間転写ベルト(27)への転写を1次転写、中間転写ベルト(27)から記録材(29)への転写を2次転写とする。2次転写後に中間転写ベルト(27)上に残留したトナーは、中間転写ベルト用のクリーニング装置(28)によって中間転写ベルト(27)上から除去される。なお、クリーニング装置(28)は中間転写ベルト(27)と接離可能で、トナー像の転写が実施されているときは中間転写ベルト(27)から隔離している。
【0024】
未定着のトナー像が載った記録材は、定着ローラ(31)と加圧ローラ(32)によって記録材に一定の熱と圧力を加わり、トナーが記録材上に定着される。なお、定着温度を一定に保つために、定着ローラ(31)には不図示のサーミスタが接触しており、定着ローラ(31)の温度制御を行なっている。定着ローラを用いた定着方式は、熱効率が高く、安全性に優れ、小型化が可能で、低速から高速まで適用範囲が広い。
【0025】
感光体ドラム(21)上及び中間転写ベルト(27)上に残留したトナーは、クリーニング装置(33)及び(28)によって除去されるが、クリーニング装置としてはクリーニングブレード、クリーニングローラ及びクリーニングブラシ等を用いることができ、またそれらを併用しても良い。また、これらのクリーニング部材にトナーと逆極性の電圧を印加して、クリーニングの効率を高めることもできる。
なお、図3の例は一つの感光体ドラムと複数の現像装置を用いたカラー画像形成装置だが、本発明はこの構成には限定されず、複数の感光体ドラムと現像装置を用いたカラー画像形成装置、一つの感光体ドラムと一つの現像装置を用いた白黒画像形成装置にも適用できる。
【0026】
本発明は、上記のような画像形成装置の例において、トナーの転写効率が高く、良好な画像品質が得られることを特徴としている。図3のような画像形成装置において、中間転写体上に形成されたトナー層が記録材に転写する2次転写の転写効率を100%近くまで高くするには、中間転写体に接触しているトナー粒子を充分転写することが必要である。中間転写体に接触しているトナー粒子には、図5に示すように、トナーと中間転写体間の付着力、転写電界によるクーロン力が作用している。また、中間転写体に接触しているトナー粒子には、周辺のトナー粒子との付着力及び静電反発力が作用しているが、トナーと中間転写体間付着力やクーロン力に比べるとこれらの力は小さい。このため、中間転写体に接触しているトナー粒子を転写させるには、クーロン力をトナーと中間転写体間付着力よりも大きくする必要がある。したがって、中間転写体との付着力が小さなトナー粒子は低い転写電界で転写できるが、付着力が大きなトナー粒子を転写するには高い転写電界が必要となる。しかし、転写電界を大きくすると、中間転写体と記録材間で放電が生じやすくなる。放電が生じると、中間転写体と記録材間の実質的な電界が低下してしまうために転写効率は良くならない。
【0027】
トナーは粒径や形状、帯電量等に分布を有しており、また感光体も凹凸等により表面が不均一なため、トナーと中間転写体間付着力には分布が生じる。本発明者らは、様々なトナーと中間転写体について、トナーと中間転写体間の付着力及び転写率の測定を実施し、付着力と転写率の関係を検討した。その結果、付着力分布の幅が狭い方が、また付着力の平均値が小さい方が高転写率となることを見い出した。この理由は、前記のような付着力分布では、放電が生じる転写電界以下で転写しにくい付着力の大きなトナー粒子数の割合が低くなるためと考えられる。
【0028】
本発明者らが実施したトナーと中間転写体間の付着力測定方法として用いた遠心分離法について説明する。トナーの付着力を測定する方法は、トナーの付着している物体からトナーを分離するのに必要な力を見積もる方法が一般的である。
トナーを分離させる方法としては、遠心力、振動、衝撃、空気圧、電界、磁界等を用いた方法が知られている。この内、遠心力を利用した方法は定量化が容易で、かつ測定精度が高い。このため、本発明ではトナーと中間転写体間の付着力を測定する方法として、遠心分離法を用いた。以下、遠心分離によるトナー付着力測定方法について説明するが、IS&T NIP7th p.200(1991)などに記載されている方法が知られている。
【0029】
図1、図2は、本発明に係るトナー付着力測定装置の測定セル、遠心分離装置の一例を示す図である。図1は、トナー付着力測定装置の測定セルの説明図である。図1において、(1)は測定セルであり、測定セル(1)は、トナーを付着させた試料面(2a)を有する試料基板(2)と、試料基板(2)から分離したトナーを付着させる付着面(3a)を有する受け基板(3)と、試料基板(2)の試料面(2a)と受け基板(3)の付着面(3a)の間に設けられたスペーサ(4)から構成される。図2は、遠心分離装置の一部断面図である。図2において、(5)は遠心分離装置であり、遠心分離装置(5)は、測定セル(1)を回転させるロータ(6)と、保持部材(7)を備えている。ロータ(6)は、自身の回転中心軸(9)に対して垂直な断面で穴形状であり保持部材(7)を設置する試料設置部(8)を有している。保持部材(7)は、棒状部(7a)と、棒状部(7a)に設けられ測定セル(1)を保持するセル保持部(7b)、測定セル(1)をセル保持部(7b)から押し出すための穴部(7c)、棒状部(7a)を試料設置部(8)に固定する設置固定部(7d)を備えている。セル保持部(7b)は、測定セル(1)を設置したときに、測定セル(1)の垂直方向がロータの回転中心軸(9)に垂直となるように構成される。
【0030】
上記の装置を用いてトナーと中間転写体間の付着力を測定する方法を説明する。まず、試料基板(2)上に中間転写体の一部を切り出して試料基板(2)上に接着剤で貼り付ける。次に、帯電したトナーまたは未帯電のトナーを、試料基板(2)上の中間転写体(試料面2a)上に付着させる。次に、図1のように、試料基板(2)、受け基板(3)及びスペーサ(4)を用いて測定セル(1)を構成する。測定セル(1)を、保持部材(7)をロータ(6)の試料設置部(8)に設置したときに、試料基板(2)が受け基板(3)とロータ(6)の回転中心軸(9)の間になるように、保持部材(7)のセル保持部(7b)に設置する。保持部材(7)を、測定セル(1)の垂直方向がロータの回転中心軸(9)に垂直となるように、ロータ(6)の試料設置部(8)に設置する。遠心分離装置(5)を稼働してロータ(6)を一定の回転数で回転させる。試料基板(2)に付着したトナーは回転数に応じた遠心力を受け、トナーの受ける遠心力がトナーと試料面(2a)間の付着力よりも大きい場合は、トナーが試料面(2a)から分離し、付着面(3a)に付着する。すなわち、粒径の3乗に比例する質量が、粒径の2乗に比例する付着力を超える点が判る。
トナーの受ける遠心力Fcは、トナーの重量m、ロータの回転数f(rpm)、ロータの中心軸から試料基板のトナー付着面までの距離rを用いて、式(1)より求められる。
【0031】
【数3】
Fc=m×r×(2πf/60) (1)
トナーの重量mは、トナーの真比重ρ、円相当径dを用いて、式(2)より求められる。
【0032】
【数4】
m=(π/6)×ρ×d (2)
式(2)と式(3)より、トナーの受ける遠心力Fcは、式(3)から求められる。
【0033】
【数5】
Fc=(π/5400)×ρ×d×r×f (3)
遠心分離終了後、保持部材(7)をロータ(6)の試料設置部(8)から取り出し、保持部材(7)のセル保持部(7b)から測定セル(1)を取り出す。受け基板(3)を交換し、測定セル(1)を保持部材(7)に設置し、保持部材(7)をロータ(6)に設置し、ロータ(6)を前回よりも高回転数で回転させる。トナーの受ける遠心力が前回よりも大きくなり、付着力の大きなトナーが、トナーが試料面(2a)から分離して付着面(3a)に付着する。遠心分離装置の設定回転数を低回転数から高回転数へ変えて同様の操作を実施することにより、各回転数で受ける遠心力と付着力の大小関係に応じて、試料面(2a)上のトナーが付着面(3a)に移動する。
【0034】
全ての設定回転数について遠心分離を実施後、各回転数の受け基板(3)の付着面(3a)に付着したトナーの粒径を計測する。トナー粒径の測定は、光学顕微鏡で付着面(3a)上のトナーを観察し、CCDカメラを通して付着面の画像を画像処理装置に入力し、画像処理装置を用いて各トナーの粒径測定を行なうことができる。ある回転数で分離したトナーの付着力は、トナーが分離した回転数における遠心力よりも小さく、分離する前の回転数における遠心力よりも大きいので、(3)式により両者の遠心力を計算し、その平均値を付着力とした。
【0035】
上記の方法によって測定したトナーと中間転写体間付着力(単位:N)の常用対数の分布の一例を図6に示す。図6のように、付着力分布は平均値Fと標準偏差σで特徴づけられる。なお、平均値Fは各トナーの付着力の常用対数について算術平均値Aを算出し、F=10から求めた。
F(nN)とトナー1粒子の帯電量の平均値Q(fC)との関係の一例を図7に示す。なお、トナー1粒子の帯電量の平均値Qは、細川ミクロン製のE−スパートアナライザーによって測定した。図7のように、トナーと中間転写体間付着力は、ファンデルワールス力や液架橋力等のトナー帯電量に依存しない非静電的付着力Fneとトナーの帯電量Qに依存する静電的付着力Feの和となり、FeはQに比例して増加することが判った。また、様々な体積平均粒径D(μm)のトナーについて同様の測定を実施した結果、Fが(4)式のように表わせることが判った。α、βは係数である。
【0036】
【数6】
F=αD+β(Q/D) (4)
トナーと中間転写体間付着力の平均値Fは、トナーの粒径や帯電量に依存して(4)式のように変化する。粒径や帯電量の平均値が同じ場合でも、付着力の平均値Fは係数α、βによって異なり、係数α、βの小さい方が付着力の平均値Fが小さい。
トナーと中間転写体間の付着力分布は粒径分布や帯電量分布に依存し、粒径分布や帯電量分布の幅が狭いほど付着力分布の幅が狭くなる。また、(4)式のように、粒径や帯電量による付着力の変化量が係数α、βに依存しているため、付着力分布は係数α、βに依存し、係数α、βが小さいほど付着力分布の幅が狭くなる。
【0037】
(4)式のように、トナーと中間転写体間付着力Fはトナーの帯電量Qに比例して増加する。一方、トナーに作用するクーロン力はQに比例して増加する。Qが小さすぎると、Fは小さくなるがクーロン力も小さくなるため転写できないトナー粒子が多くなり、転写率が低くなる。逆に、Qが大きすぎるとFが大きくなり、放電が生じる転写電界以下で転写できないトナー粒子が多くなり、転写率が低下する。このため、トナー帯電量Qを適切な大きさになるように調整する必要がある。また、Qはトナー粒径に依存しており、適切なQの範囲はトナー粒径に応じて設定する必要がある。体積平均粒径Dの異なるトナーについて、E−スパートアナライザーを用いてトナー1粒子の帯電量の平均値Qを測定した結果、QはほぼDに比例、つまりトナーの表面積に比例して増加することが判った。したがって、Q/Dの範囲を指定することによって、トナー粒径に応じたQの範囲を設定することができる。
【0038】
本発明者らは、様々なトナーと中間転写体におけるトナーと中間転写体間の付着力測定結果と2次転写の転写率測定及び画像評価の結果について比較検討した結果、標準偏差σ、係数α及びβ、トナー1粒子当たりの帯電量Qが以下に示す範囲となるようなトナーと中間転写体を用いることにより、高転写率で良好な画像が得られることを見い出した。
(1)σ:0.4以下、より好ましくは0.35以下
(2)α:3(nN/μm)以下、より好ましくは2.5以下
(3)β:90(nN・μm/fC)以下、より好ましくは75以下
(4)Q/Dの絶対値:0.01〜0.3(fC/μm)、より好ましくは0.02〜0.25
σ、α、β、Q/Dが(1)〜(4)の範囲に入るようにするには、トナー及び中間転写体を適切に構成する必要があり、以下に述べるような構成にすることにより、達成される。
【0039】
次に、本発明の画像形成装置に用いられるトナーについて説明する。
本発明に用いられるトナーとしては、製造工程あるいは製造後の工程において球形化したトナーが好適に用いられる。製造後の工程において球形化したトナーとは、例えばトナーの構成材料である樹脂や着色剤などを混合攪拌後に溶融混練し、粉砕・分級して作製した粉砕トナーを熱や機械的な力で球形化したトナーで、製造工程において球形化したトナーとは、例えば分散重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の重合法により作製されたトナーである。特に、重合法はトナーの形状及び粒径制御の容易性、生産性等の点で優れており、本発明に用いられるトナーの作製方法としては好適である。
【0040】
まず、本発明の分散重合トナーから説明する。
本発明における樹脂粒子Aは親水性有機液体に、その親水性有機液体に溶解する高分子分散剤を加え、これに前記親水性液体には溶解するが、生成する重合体は前記親水性液体にて膨潤されるか、あるいは殆ど溶解しない一種または二種以上のビニル単量体を加えて重合することにより製造される。
【0041】
前記の種粒子の形成時及び種粒子の成長反応時に用いる単量体の希釈剤としての親水性有機液体としては、メチルアルコール、エチルアルコール、変性エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、s−ブチルアルコール、t−アミルアルコール、3−ペンタノール、オクチルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールなどのアルコール類、メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルアルコール類などが代表的なものとして挙げられる。
【0042】
これらの有機液体は単独で、もしくは二種以上の混合物して用いることができる。なお、アルコール類及びエーテルアルコール類以外の有機液体と、上述のアルコール類及びエーテルアルコール類とを併用することで、有機液体が生成重合体粒子に対して溶解性をもたせない条件下で、有機液体のSP値を種々変化させて重合を行なうことにより、生成される粒子の大きさ、種粒子同士の合一及び新粒子の発生を抑制することが可能である。この場合の併用する有機液体としては、ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、四塩化炭素、トリクロルエチレン、テトラブロムエタンなどのハロゲン化炭化水素類、エチルエーテル、ジメチルグリコール、シリオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、メチラール、ジエチルアセタールなどのアセタール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサンなどのケトン類、ギ酸ブチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル類、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などの酸類、ニトロプロペン、ニトロベンゼン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどの硫黄、窒素含有有機化合物類、その他水も含まれる。
また、重合開始時、重合途中、重合末期とそれぞれ混合溶媒の種類及び組成を変化させ、生成する重合体粒子の平均粒径、粒径分布、乾燥条件などを調整することができる。
【0043】
種粒子製造時、または成長粒子の製造時に使用される高分子分散剤の適当な例としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有するアクリル系単量体、例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、並びにメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類、または前記親水性モノマーとスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどのベンゼン核を有するものまたはその誘導体、またはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体との共重合体、さらに、架橋性モノマー、例えばエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、メタクリル酸アリル、ジビニルベンゼンなどとの共重合体も使用可能である。
【0044】
これらの高分子分散剤は、使用する親水性有機液体、目的とする重合体粒子の種、及び種粒子の製造か成長粒子の製造かにより適宜選択されるが、特に重合体粒子同士の合一を主に立体的に防ぐ意味で、重合体粒子表面への親和性、吸着性が高く、しかも親水性有機液体への親和性、溶解性の高いものが選ばれる。また、立体的に粒子同士の反撥を高めるために、分子鎖がある程度の長さのもの、好ましくは分子量が1万以上のものが選ばれる。しかしあまり分子量が高いと、液粘度の上昇が著しく、操作性、撹拌性が悪くなり、生成重合体の粒子表面への析出確率のばらつきを与えるため注意を要する。また、先に挙げた高分子分散剤の単量体を一部、目的とする重合体粒子を構成する単量体に共存させておくことも安定化には効果がある。
【0045】
さらに、これら高分子分散剤とともにコバルト、鉄、ニッケル、アルミニウム、銅、錫、鉛、マグネシウムなどの金属またはその合金(特に粒径1μm以下のものが好ましい)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化珪素などの酸化物の無機化合物微粉体、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、燐酸エステルなどの陰イオン界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えば、アラニン型「例えばドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン」などのアミノ酸型やベタイン型の両性界面活性剤を併用しても、生成重合体粒子の安定性及び粒径分布の改良をさらに高めることができる。
【0046】
一般に、種粒子製造時の高分子分散剤の使用量は目的とする重合体粒子形成用の重合性単量体の種類によって異なるが、親水性有機液体に対し0.1重量%〜10重量%、好ましくは1〜5重量%である。高分子分散安定剤の濃度が低い場合には、生成する重合体粒子は比較的大粒径のものが得られ、濃度の高い場合には小粒径のものが得られるが、10重量%を越えて用いても小径化への効果は少ない。
【0047】
また、前記のビニル単量体とは、親水性有機液体に溶解可能なものであり、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルエチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレンなどのスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどのα−メチル脂肪酸モノカルボン酸エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸、もしくはメタクリル酸誘導体、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類などからなる単独または相互の混合物及びこれらを50重量%以上含有し、これらと共重合し得る単量体との相互の混合物を意味する。
【0048】
また、本発明における前記の重合体は、耐オフセット性を高めるために、重合性の二重結合を二個以上有するいわゆる架橋剤の存在下に重合させたものであっても良い。好ましく用いられる架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン及びそれらの誘導体である芳香族ジビニル化合物、その他エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルメタクリレート、tert−ブチルアミノエチルメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレートなどのジエチレン性カルボン酸エステル、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンなど全てのジビニル化合物、及び三個以上のビニル基を持つ化合物が挙げられ、これらは単独または混合物などで用いられる。
【0049】
このように架橋された種粒子を用いて成長重合反応を引き続いて行なった場合には、成長する重合体粒子の内部が架橋されたものとなる。また一方で、成長反応に用いるビニル単量体溶液に上記の架橋剤を含有させた場合には、粒子表面が硬化された重合体が得られる。
また、平均分子量を調節する目的として、連鎖移動定数の大きな化合物を共存させて重合を行なわせるものに、例えば、メルカプト基をもつ低分子化合物や四塩化炭素、四臭化炭素が挙げられる。
【0050】
また、前記単量体の重合開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系重合開始剤、ラウリルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオクトエートなどの過酸化物系重合開始剤、過硫酸カリウムなどの過硫酸化物系重合開始剤、これにチオ硫酸ナトリウム、アミンなどを併用した系などが用いられる。重合開始剤濃度は、ビニル単量体100重量部に対して0.1〜10重量部が望ましい。
【0051】
種粒子を得るための重合条件は、重合体粒子の目標平均粒径、目標粒径分布に合わせて、親水性有機液体中の高分子分散剤、ビニル単量体の濃度、及び配合比が決定される。一般に、粒子の平均粒径を小さくしようとするならば、高分子分散剤の濃度を高く、また平均粒径を大きくしようとするならば、高分子分散剤の濃度が低く設定される。一方、粒子径分布を非常に鋭くしようとするならば、ビニル単量体濃度を低く、また、比較的広い分布でもよい場合は、ビニル単量体濃度は高く設定される。
【0052】
粒子の製造は親水性有機液体に、高分子分散安定剤を完全に溶解した後、一種または二種以上のビニル単量体、重合開始剤、その他必要ならば無機微粉末、界面活性剤、染料、顔料などを添加し、30〜300rpmの通常の撹拌にて、好ましくはなるべく低速で、しかもパドル型よりもタービン型の撹拌翼を用いて、槽内の流れが均一になるような速度で撹拌しながら、用いた重合開始剤の重合速度に対応した温度にて加熱し重合が行なわれる。なお、重合初期の温度が生成する粒子種に大きな影響を与えるため、単量体を添加した後に温度を重合温度まで上げ、重合開始剤を小量の溶媒に溶解して投入した方が望ましい。重合の際には窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性気体にて反応容器内の空気中の酸素を充分に追い出す必要がある。この酸素パージが不充分であると微粒子が発生し易い。
【0053】
重合を高重合率域で行なうには5〜40時間の重合時間が必要であるが、所望の粒子径、粒子径分布の状態で重合を停止させたり、また重合開始剤を順次添加したり、高圧下で反応を行なうことにより重合速度を速めることができる。
重合終了後は、そのまま染着工程に用いてもよいし、沈降分離、遠心分離、デカンテーションなどの操作により不必要な微粒子、残存モノマー、高分子分散安定剤などを除いた後に、重合体スラリーとして回収して染着を行なってもよいが、分散安定剤を除去しない方が染着の安定性は高く、不要な凝集が抑制される。
【0054】
本発明における染着は次のようなものである。すなわち、樹脂粒子Aを溶解せしめない有機溶媒中に樹脂粒子Aを分散し、この前または後に前記溶媒中に染料を溶解させ、前記染料を樹脂粒子A中に浸透させ着色せしめた後、前記有機溶媒を除去して染着トナーを製造する方法において、前記染料の前記有機溶媒に対する液解度(S1)及び前記樹脂粒子Aの樹脂に対する前記染料の溶解度(S2)の関係が、(S1)/(S2)≦0.5となる染料を選択使用する。これにより、樹脂粒子Aの深部まで染料が浸透(拡散)したトナーを効率よく製造することができる。本発明における溶解度は25℃の温度で測定されたものと定義される。なお、染料の樹脂中への溶解度とは、染料の溶媒中への溶解度と全く同じ定義であり、樹脂中に染料が相溶状態で含有させることができる最大量を意味する。この溶解状態あるいは染料の析出状態の観察は顕微鏡を用いることにより容易に行なうことができる。樹脂に対する染料の溶解性を知るには、上記した直接観察による方法の代わりに間接的な観察方法によってもよい。この方法は樹脂と溶解度係数が近似する液体、すなわち、樹脂をよく溶解する溶媒を用い、この溶媒に対する染料の溶解度を樹脂に対する溶解度として定めてもよい。
【0055】
着色に使用する染料としては、前述のように使用する有機溶媒への該染料の溶解度(S1)より樹脂粒子を構成する樹脂への該染料の比(S1)/(S2)が0.5以下である必要がある。さらに(S1)/(S2)が0.2以下とすることが好ましい。染料としては、上記の溶解特性を満たせば特に制限はないが、カチオン染料、アニオン染料などの水溶性染料は環境変動が大きいおそれがあり、またトナーの電気抵抗が低くなり、転写率が低下するおそれがあるので、バット染料、分散染料、油溶性染料の使用が好ましく、特に油溶性染料が好ましい。また、所望の色調に応じて数種の染料が併用することもできる。染着される染料と樹脂粒子との比率(重量)は、着色度に応じて任意に選択されるが、通常は樹脂粒子1重量部に対して、染料1〜50重量部の割合で用いるのが好ましい。例えば、染着溶媒にSP値の高いメタノール、エタノールなどのアルコール類を使用し、樹脂粒子としてSP値が9程度のスチレン−アクリル系樹脂を使用した場合、使用し得る染料としては、例えば、以下のような染料が挙げられる。
【0056】
C.I. SOLVENT YELLOW(6,9,17,31,35,1,102,103,105)
C.I. SOLVENT ORANGE(2,7,13,14,66)
C.I. SOLVENT RED(5,16,17,18,19,22,23,143,145,146,149,150,151,157,158)
C.I. SOLVENT VIOLET(31,32,33,37)
C.I. SOLVENT BLUE(22,63,78,83〜86,91,94,95,104)
C.I. SOLVENT GREEN(24,25)
C.I. SOLVENT BROWN(3,9)など。
【0057】
市販染料では、例えば、保土谷化学工業社製の愛染SOT染料Yellow−1,3,4、Orange−1,2,3、Scarlet−1、Red−1,2,3、Brown−2、Blue−1,2、Violet−1、Green−1,2,3、Black−1,4,6,8やBASF社製のsudan染料、Yellow−140,150、Orange−220、Red−290,380,460、Blue−670や三菱化成社製のダイアレジン、Yellow−3G,F,H2G,HG,HC,HL、Orange−HS,G、Red−GG,S,HS,A,K,H5B、Violet−D、Blue−J,G,N,K,P,H3G,4G、Green−C、Brown−Aやオリエント化学社製のオイルカラー、Yellow−3G,GG−S,#105、Orange−PS,PR,#201、Scarlet−#308、Red−5B、Brown−GR,#416、Green−BG,#502、Blue−BOS,HN、Black−HBB,#803,EE,EX、住友化学工業社製のスミプラスト、ブルーGP,OR、レッドFB,3B、イエローFL7G,GC、日本化薬社製のカヤロン、ポリエステルブラックEX−SH3、カヤセットRed−BのブルーA−2Rなどを使用することができる。もちろん染料は樹脂粒子と染着時に使用する溶媒の組み合わせで適宜選択されるため、上記例に限られるものではない。
【0058】
染料を樹脂粒子に染着させるために用いる有機溶媒としては、使用する樹脂粒子が溶解しないもの、あるいは若干の膨潤をきたすもの、具体的には溶解性パラメーター(SP値)の差が1.0以上、好ましくは2.0以上のものが使用される。例えば、スチレン−アクリル系樹脂粒子に対しては、SP値が高いメタノール、エタノール、n−プロパノールなどのアルコール系、あるいはSP値が低いn−ヘキサン、n−ヘプタンなどを使用する。SP値の差があまりに大きすぎると、樹脂粒子に対する濡れが悪くなり、樹脂粒子の良好な分散が得られないため、最適なSP値の差は2〜5が好ましい。
【0059】
染料を溶解した有機溶媒中に樹脂粒子を分散させた後、液温度を樹脂粒子のガラス転移温度以下に保ち、撹拌することが好ましい。これにより、樹脂粒子の凝集を防ぎながら染着することが可能となる。撹拌の方法は市販されている撹拌機、例えばホモミキサー、マグネチックスタラーなどを用いて撹拌すればよい。また、分散重合などで重合終了時得られるスラリー、つまり有機溶媒中に重合樹脂粒子が分散している状態の分散液に、染料を直接添加して前記の条件にて加熱撹拌してもよい。加熱温度がガラス転移温度超過の場合は樹脂粒子同士の融着が生じてしまう。染着後のスラリーを乾燥する方法としては、特に限定はされないが、濾過した後に減圧乾燥あるいは濾別しないで直接減圧乾燥すればよい。本発明において濾別した後に風乾または減圧乾燥して得られた着色粒子は、凝集は殆どなく、投入した樹脂粒子の粒度分布を殆ど損なわないで再現する。
【0060】
次に、本発明の懸濁重合トナーについて説明する。
懸濁重合に使用される重合性単量体はビニル基を有するモノマーであり、具体的には以下のようなモノマーが挙げられる。すなわち、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ブチルスチレン、オクチルスチレンなどのスチレン及びその誘導体が挙げられ、なかでもスチレン単量体が最も好ましい。他のビニル系単量体として、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのエチレン系不飽和モノオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸−2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどのα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸もしくはメタクリル酸誘導体、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物類、ビニルナフタレンなどを挙げることができ、これらの単量体を単独あるいは混合して用いることができる。
【0061】
単量体組成物中には、架橋重合体を生成させるために、次のような架橋剤を存在させて懸濁重合させてもよい。架橋剤としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2′−ビス(4−メタクリルロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2′−ビス(4−アクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールメタンテトラアクリレート、ジブロムネオペンチルグリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリルなどが挙げられる。架橋剤の使用量が多過ぎると、トナーが熱で溶融しにくくなり、熱定着性、熱圧定着性が劣ることになる。
また、架橋剤の使用量が少な過ぎると、トナーとして必要な耐ブロッキング性、耐久性などの性質が低下し、熱ロール定着において、トナーの一部が紙に完全に固着しないでロール表面に付着し、次の紙に転写するという、コールドオフセットが発生してしまう。したがって、用いる架橋剤量は、重合性単量体100重量部に対して0.001〜15重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0062】
また、得られるトナーのオフセット防止のために、重合組成物に離型剤を含有させることができる。離型剤としては低分子量のポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンが好ましい。この低分子量オレフィン重合体は、着色剤と共に重合性単量体中に分散させておくのが好ましい。なお、離型剤は重合性単量体100重量部に対して1〜15重量部使用することが好ましい。離型剤の使用量が1重量部未満では、得られたトナーが充分な離型効果をもたず、ローラ上にオフセットしやすくなる。逆に使用量が15重量部を超過すると、トナーから離型剤が摩擦帯電付与部材にスペントするようになるし、また、トナーの流動性が極めて悪くなる。
【0063】
単量体に含有される着色剤としては、従来知られている染料及びカーボンブラック、カーボンブラックの表面を樹脂で被覆してなるグラフト化カーボンブラックのような顔料が使用可能である。その他の着色剤としては、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6G、レーキ、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系染料、ジスアゾ系染料などの染顔料がある。なお、これらの着色剤は、重合性単量体100重量部に対して0.1〜30重量部使用できる。
【0064】
また、必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。帯電制御剤としては公知のものが使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
【0065】
分散安定剤としては次のものが使用可能である。すなわち、ポリビニルアルコール、でん粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、タルク、粘土、珪藻土、金属酸化物粉末などが用いられる。これらは水に対して0.1〜10重量%の範囲で用いるのが好ましい。
【0066】
本発明において、重合開始剤は造粒後の単量体組成物を含む分散液中に添加してもよいが、個々の単量体組成物粒子に均一に重合開始剤を付与する点からは、造粒前の単量体組成物に含有させておくことが望ましい。このような重合開始剤としては、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メチキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスブチロニトリルなどのアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、イソプロピルパーオキサイド、2,4−ジクロリルベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイドなどの過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
【0067】
次に、本発明の乳化重合トナーについて説明する。
本乳化重合法では、無機分散剤または微粒子ポリマーの存在下で、水系媒体中にイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーをはじめとするトナー組成物を分散せしめ、アミン類により伸長反応あるいは架橋反応によりトナー粒子を形成させる。
【0068】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)としては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルをさらにポリイソシアネート(3)と反応させたものなどが挙げられる。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
【0069】
ポリオール(1)としては、ジオール(1−1)および3価以上のポリオール(1−2)が挙げられ、(1−1)単独、または(1−1)と少量の(1−2)の混合物が好ましい。ジオール(1−1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上のポリオール(1−2)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0070】
ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)および3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられ、(2−1)単独、および(2−1)と少量の(2−2)の混合物が好ましい。ジカルボン酸(2−1)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
【0071】
ポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。ポリイソシアネート(3)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を越えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のポリイソシアネート(3)構成成分の含有量は、通常0.5〜40重量%、好ましくは1〜30重量%、さらに好ましくは2〜20重量%である。0.5重量%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40重量%を越えると低温定着性が悪化する。イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0072】
アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。
【0073】
これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。さらに、必要により伸長停止剤を用いてウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。伸長停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2〜2/1、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2を越え、1/2未満では、ウレア変性ポリエステル(i)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。本発明においては、ウレア結合で変性されたポリエステル(i)中に、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0074】
本発明のウレア変性ポリエステル(i)は、ワンショット法などにより製造される。ウレア変性ポリエステル(i)の重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。1万未満では耐ホットオフセット性が悪化する。ウレア変性ポリエステルの数平均分子量は、後述の変性されていないポリエステル(ii)を用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。(i)単独の場合は、数平均分子量は、通常2000〜15000、好ましくは2000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。15000を越えると低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
【0075】
本発明においては、前記ウレア結合で変性されたポリエステル(i)単独使用だけでなく、この(i)と共に、変性されていないポリエステル(ii)をトナーバインダー成分として含有させることもできる。(ii)を併用することで、低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上し、単独使用より好ましい。(ii)としては、前記(i)のポリエステル成分と同様なポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられ、好ましいものも(i)と同様である。また、(ii)は無変性のポリエステルだけでなく、ウレア結合以外の化学結合で変性されているものでもよく、例えばウレタン結合で変性されていてもよい。(i)と(ii)は少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。したがって、(i)のポリエステル成分と(ii)は類似の組成が好ましい。(ii)を含有させる場合の(i)と(ii)の重量比は、通常5/95〜80/20、好ましくは5/95〜30/70、さらに好ましくは5/95〜25/75、特に好ましくは7/93〜20/80である。(i)の重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。(ii)の水酸基価は5以上であることが好ましく、(ii)の酸価は通常1〜30、好ましくは5〜20である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすい傾向がある。
【0076】
トナー粒子は、水系媒体中でイソシアネート基を有するプレポリマー(A)からなる分散体を、アミン類(B)と反応させて形成しても良いし、あらかじめ製造したウレア変性ポリエステル(i)を用いても良い。水系媒体中でウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体を安定して形成させる方法としては、水系媒体中にウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなるトナー原料の組成物を加えて、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。プレポリマー(A)と他のトナー組成物である(以下トナー原料と呼ぶ)着色剤、着色剤マスターバッチ、離型剤、荷電制御剤、未変性ポリエステル樹脂などは、水系媒体中で分散体を形成させる際に混合してもよいが、あらかじめトナー原料を混合した後、水系媒体中にその混合物を加えて分散させたほうがより好ましい。
【0077】
また、本発明においては、着色剤、離型剤、荷電制御剤などの他のトナー原料は、必ずしも、水系媒体中で粒子を形成させるときに混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後、添加してもよい。たとえば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。高温なほうが、ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)からなる分散体の粘度が低く、分散が容易な点で好ましい。
【0078】
ウレア変性ポリエステル(i)やプレポリマー(A)を含むトナー組成物100部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。2000重量部を越えると経済的でない。また、必要に応じて、分散剤を用いることもできる。分散剤を用いたほうが、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。
【0079】
トナー組成物が分散された油性相を水が含まれる液体に乳化、分散するための分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性荊、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0080】
また微粒子ポリマーも無機分散剤と同様な効果が確認された。例えばMMAポリマー微粒子1、及び3μm、スチレン微粒子0.5及び2μm、スチレン−アクリロニトリル微粒子ポリマー1μm、PB−200H(花王製)、SGP(総研)、テクノポリマーSB(積水化成品工業)、SGP−3G(総研)ミクロパール(積水ファインケミカル)、また上記の無機分散剤、微粒子ポリマーと併用して使用可能な分散剤としては、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ピニル、プロピオン酸ピニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ピニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
【0081】
得られた乳化分散体から有機溶媒を除去するためには系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に短時間で蒸発除去する方法を採用することができる。
なお、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
分散剤を使用した場合には、該分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、伸長および/または架橋反応後、洗浄除去するほうがトナーの帯電面から好ましい。
【0082】
さらに、トナー組成物の粘度を低くするために、ウレア変性ポリエステル(i)や(A)が可溶の溶剤を使用することもできる。溶剤を用いたほうが粒度分布がシャープになる点で好ましい。該溶剤は沸点が100℃未満の揮発性であることが除去が容易である点から好ましい。該溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。プレポリマー(A)100部に対する溶剤の使用量は、通常0〜300部、好ましくは0〜100部、さらに好ましくは25〜70部である。溶剤を使用した場合は、伸長および/または架橋反応後、常圧または減圧下にて加温し除去する。
【0083】
伸長および/または架橋反応時間は、プレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)の組み合わせによる反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
【0084】
本発明に用いられるトナーは、平均円形度の高いものが好ましい。円形度は、(5)式により求められる値で、円形度が1に近いほど球形な粒子であることを示している。平均円形度は、各トナー粒子の円形度を平均した値である。
【0085】
【数7】
円形度=トナー粒子と同面積の円の周囲長/トナー粒子の周囲長 (5)
【0086】
図8はトナー粒子が中間転写体に付着している状態を示している。図8(a)、(b)のように、円形度が低いトナー粒子の場合は、トナー粒子と中間転写体の接触面積がトナー粒子の向きによって異なる。一方、図8(c)のように、円形度が高いトナー粒子の場合は、トナー粒子の向きによってトナー粒子と中間転写体の接触面積が変わらない。トナー粒子と中間転写体間付着力は、トナー粒子と中間転写体の接触面積に依存するため、円形度の低いトナー粒子は中間転写体に付着する向きによって付着力が異なる。円形度の低いトナー粒子の割合が高く、平均円形度が低いトナーは付着力分布の幅が広くなる。このため、本発明に用いられるトナーは、平均円形度が0.95以上のものが好ましい。また、円形度の低いトナーの割合が低いほど良く、円形度が0.95以下のトナー粒子の割合が15%以下のものが好ましい。特に、平均円形度が0.97以上で、円形度が0.95以下のトナー粒子の割合が10%以下のものが好ましい。なお、トナーの円形度は、市販の画像解析装置を用いて光学顕微鏡または電子顕微鏡で観察したトナー画像を解析する方法や、フロー式粒子像分析装置FPIA−1000(東亜医用電子社製)によって測定することができる。
【0087】
また、本発明に用いられるトナーの粒径は、体積平均粒径が3μm〜9μmであるものが望ましい。トナーの体積平均粒径が3μm以下では、画像不良を発生しやすい粒径1μm以下の微粉トナーの割合が大きくなってしまい、体積平均粒径が9μm以上では電子写真画像の高画質化の要求に対応するのが困難である。また、本発明では粒径分布の狭いトナーが好ましく用いられる。粒径分布の広さを示す指標として体積平均粒径Dと個数平均粒径Dnの比D/Dnが用いられる。D/Dnが小さいと粒径分布が狭く、本発明に用いられるトナーとしてはD/Dnが1.3以下のトナーが望ましい。D/Dnが大きいと粒径分布が広い。トナーの粒径分布が広いと、トナーの帯電量分布やトナーと感光体間の付着力分布が広くなり、転写できずに感光体上に残留するトナーが多くなり高転写率を実現することができない。本発明者らは、D/Dnの異なるトナーを用いて転写特性を検討した結果、D/Dnが1.3以上では充分な転写効率が得られないことが明らかになった。
【0088】
本発明で用いられるトナーとしては、体積平均粒径Dが4〜7μmで、D/Dnが1.2以下となるように調整したものが特に好ましい。
本発明では、表面が外添剤によって被覆されているトナーが好ましく用いられる。本発明者らは、外添剤で表面を被覆した様々なトナーについて付着力及び帯電量を測定した結果から、トナーと中間転写体間の付着力及びトナーの帯電量が外添剤の材料、粒径及び外添剤被覆率に依存して変化することを見い出した。このため、トナーと中間転写体間の付着力及びトナー帯電量が前記の高転写率で良好な画像が得られる条件を満たすためには、外添剤の材料、粒径及び外添剤被覆率を適切に選択及び調整する必要がある。なお、外添剤被覆率はトナー1粒子の表面積に対する外添剤の被覆面積比率で、トナー表面の電子顕微鏡画像を画像解析することによって計測することができる。
【0089】
本発明に用いられる外添剤としては、公知の有機微粒子及び無機微粒子を使用することができるが、無機微粒子、特にシリカ、チタン、アルミナのいずれかを少なくとも1種類以上使用することが好適である。これらの微粒子の場合は、環境安定性を考慮すると、疎水化処理を施したものが好適に用いられる。前記疎水化処理は、疎水化処理剤と前記微粉末とを高温度下で反応させて行なうことができる。疎水化処理剤としては特に制限はなく、例えばシラン系カップリング剤、シリコーンオイル等を用いることができる。
【0090】
外添剤の粒径としては、一次粒子径の平均値が5nm〜100nmのが好ましく用いられる。外添剤の一次粒子径の平均値が5nm未満では、画像形成装置内の様々なストレスによって、外添剤がトナー中に埋没してしまうために外添剤の効果がなくなってしまう。また、外添剤の一次粒子径の平均値が100nmを越えると、外添剤がトナーから分離しやすくなり、分離した外添剤によって画像形成装置の構成部材が損傷しやすい。
トナーと中間転写体間の付着力は外添剤被覆率の増加と共に小さくなり飽和する傾向にあり、外添剤被覆率依存性や飽和値は外添剤の材料や粒径等に依存する。このため、外添剤被覆率の適切な範囲も外添剤の材料や粒径等によって異なるが、外添剤被覆率を少なくとも10%以上で100%未満に調整する必要がある。外添剤被覆率が10%未満では、トナーと中間転写体間の付着力を適切な大きさにするのが困難である。また、外添剤被覆率が100%を越えると、外添剤がトナーから分離しやすくなり、画像形成装置の構成部材が損傷しやすい。本発明で用いられるトナーとしては、外添剤の一次粒子径の平均値が10nm〜80nmで、被覆面積比率の平均値が15〜90%となるように調整したものが特に好ましい。
【0091】
また、本発明に用いられる外添剤の外添方法は、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノフージョン等の各種混合装置を用いた公知の外添方法を用いることができる。
また、本発明に用いられるトナーは、単独で磁性1成分トナーとして使用される磁性トナーとして使用されたり、単独で非磁性1成分現像剤として使用されたりすることもできる。
本発明に用いられる中間転写体としては、図3の例で示した転写ベルトや転写ローラを用いることができるが、転写ベルトは転写ローラに比べて転写ニップを広くとれる、また、設計上の自由度が高いために装置の小型化が可能になる等の利点があり、本発明に好適に用いられる。
【0092】
本発明に用いられる中間転写ベルトは、単層構成でもよいが、2層以上の多層構成であることが好ましく、特に、弾性を有する素材から成る弾性層を設けることが好ましい。転写ニップにおいてトナー画像の一部に応力が集中すると、画像の一部が転写しない中抜け画像が発生するが、中間転写ベルトに弾性層があると、ベルトが変形することにより応力が分散するため中抜け画像が改善される。しかし、中間転写ベルトが弾性層だけで構成されると、転写ベルトを駆動するときにベルトが伸縮してしまうので、転写画像が色毎にずれてしまう色ずれ現象が発生しやすくなる。このため、転写ベルトの伸縮を抑制する層が必要になり、伸縮の少ない樹脂層や繊維を用いた芯体層等を設けることが好ましい。また、2次転写後に中間転写ベルト上に残留したトナーはクリーニングされるが、ベルト表面の離型性が高く、摩擦係数が低いほどクリーニング性能が良好で、トナーフィルミング等の問題が発生しにくい。このため、中間転写ベルトの表面に高離型性の表面層を設けることが好ましい。
【0093】
弾性層に使用される材料としては、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDM、NBR、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、シンジオタクチック1、2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、リコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、水素化ニトリルゴム、熱可塑性エラストマー(例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系)等があるが、上記材料に限定されるものではない。
【0094】
樹脂層に使用される材料は、ポリカーボネート、フッ素系樹脂(ETFE、PVDF)、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−ジメチルスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体及びスチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等があるが、上記材料に限定されるものではない。
【0095】
芯体層に使用される繊維としては、綿、絹、麻などの天然繊維、キチン繊維、アルギン酸繊維等の再生繊維、アセテート繊維等の半合成繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維、ポリアセタール繊維、アラミド繊維等の合成繊維、炭素繊維、ガラス繊維などの無機繊維等を用いることができるが、上記材料に限定されるものではない。
【0096】
表面層に使用される材料としては、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂等の1種類以上を使用し、フッ素樹脂、フッ素化合物、フッ化炭素、2酸化チタン、シリコンカーバイト等の粉体粒子を1種類以上分散させたものや、フッ素系ゴム材料のように熱処理を行なうことで表面にフッ素リッチな層を形成させたものを使用することもできるが、上記材料に限定されるものではない。
【0097】
中間転写ベルトの抵抗値は導電性フィラーの添加条件によって調整しているが、本発明に用いられる中間転写ベルトの体積抵抗率は10〜1013Ωcmの範囲に調整されることが好ましい。中間転写ベルトの体積抵抗率が10未満になると、電荷のリークが発生し充分な転写効率が得られなくなり、体積抵抗率が1013Ωcmを超えると、転写後に残留電荷が発生するため除電装置が必要になる。導電性フィラーとしては、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化錫、酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物、導電性金属酸化物は、硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の絶縁性微粒子を被覆したもの、4級アンモニウム塩含有ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルアニリン、ポリビニルピロール、ポリジアセチレン、ポリエチレンイミン、含硼素高分子化合物及びポリピロール等が使用できるが、上記材料に限定されるものではない。
【0098】
中間転写ベルトの製造方法としては、回転する円筒形の型に材料を流し込んでベルトを形成する遠心成型法、表層の薄い膜を形成させるスプレイ塗工法、円筒形の型を材料の溶液の中に浸けて引き上げるディッピング法、内型と外型との中に注入する注型法、円筒形の型にコンパウンドを巻き付けて加硫研磨を行なう方法などがあるが、これに限定されるものではなく、複数の製法を組み合わせてベルトを製造することができる。
【0099】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
(実施例1)
まず、本実施例に使用した球形トナーについて説明する。
スチレンモノマー40重量部にカーボンブラックMA100(三菱化成社製)20重量部と重合開始剤として2,2′−アゾビスイソブチロニトリルを0.5重量部加え、スリーワンモータ駆動撹拌翼、冷却器、ガス導入管、温度計を取り付けた500ml四つ口セパラブルフラスコに入れ、窒素気流下、室温で30分間撹拌し、フラスコ内の酸素を窒素で置換した。その後、70℃の湯浴中で6時間60rpmにて撹拌し、グラフトカーボンブラックを得た。次いで、
スチレンモノマー 50重量部
n−ブチルメタクリレート 14.5重量部
1,3−ブタンジオールジメタアクリレート 0.5重量部
t−ブチルアクリルアミドスルフォン酸 3重量部
低分子量ポリエチレン 2重量部
(三井石油化学社製、三井ハイワックス210P)
上記グラフトカーボンブラック 30重量部
【0100】
上記の混合物をボールミルで10時間分散した。この分散液に2,2′−アゾビスイソブチロニトリルおよび亜硝酸ナトリウムをそれぞれ1重量部ずつ溶解させた後、ポリビニルアルコールの2%水溶液250重量部に加え、特殊機化社製TKホモミキサー4200rpm、10分間にて撹拌して懸濁液を得た。上記懸濁液をスリーワンモータ駆動撹拌翼、冷却器、ガス導入管、温度計を取り付けた500mlの四つ口セパラブルフラスコに入れ、窒素気流下、室温で撹拌し、フラスコ内の酸素を窒素で置換した。その後、70℃の湯浴中で5〜8時間、約100rpmにて撹拌して重合を完了させ懸濁重合粒子を作成した。この粒子100重量部を水/メタノール=1/1(重量比)の混合液に固形分30%になるよう再分散し、荷電制御剤としてHN(CHCH=C(Cを3重量部添加し、撹拌後濾過乾燥して、平均円形度が0.985、円形度が0.95以下のトナーの割合が8.2%、体積平均粒径Dが6.8μm、D/Dnが1.19の重合粒子Aを得た。なお、平均円形度の測定はフロー式粒子像分析装置FPIA−1000(東亜医用電子社製)、体積平均粒径D及び個数平均粒径Dnの測定はコールター社製粒径測定装置TA−II型を用いて実施した。
【0101】
上記重合粒子Aに、疎水化処理したシリカA(キャボット製TS−720、一次粒子径平均値14nm)をトナー量の0.6重量%、疎水化処理した酸化チタンA(テイカ製MT150A、一次粒子径平均値15nm)をトナー量の0.7重量%となるように配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理して実施例1のトナーを作製した。
【0102】
作製した実施例1のトナーについて、以下に述べる方法で外添剤被覆率を測定した。電子顕微鏡用観察基板にトナーを付着させ、トナーの付着した観察基板を金でコーティングし、トナーの表面を電子顕微鏡(日立製作所製走査電子顕微鏡S−4500)で観察した。トナー表面を3万倍に拡大した画像をパーソナルコンピュータに取り込み、画像処理ソフト(Media Cybernetics製Image−Pro Plus)を用いて外添剤の面積を計測し、トナー表面画像の面積に対する外添剤面積の比を計算して外添剤被覆率を求めた。5個以上のトナーについて外添剤被覆率を測定し、その平均値を求めた結果、トナーの外添剤被覆率の平均値は47.0%となった。
【0103】
次に、本実施例に使用した中間転写ベルトについて説明する。
円筒形の型をフッ素系樹脂(PVDF)にカーボンブラックを均一に分散させた分散液に浸け、静かに引き上げて室温にて乾燥させた。この工程を繰り返して、円筒形型の表面に厚みが150μmの樹脂層を形成した。次に、上記の樹脂層が形成されている円筒形型を、ウレタンゴムにカーボンブラックを均一に分散させた分散液に浸け、静かに引き上げて自然乾燥させた。この工程を繰り返して、樹脂層の表面に厚みが300μmの弾性層を形成した。さらに、上記の樹脂層及び弾性層が形成されている円筒形型を、ポリウレタンにPTFE樹脂粒子を均一に分散させた分散液に浸け、静かに引き上げて自然乾燥させた。この工程を繰り返して、弾性層の表面に厚みが5μmの表面層を形成後、加熱硬化処理をおこなった。最後に、樹脂層(150μm)、弾性層(300μm)、表面層(10μm)の3層構成からなる無端状ベルトを円筒形型から脱型させ、本実施例の中間転写ベルトを得た。樹脂層及び弾性層に分散させたカーボンブラックの添加量は、中間転写ベルトの体積抵抗率が1011〜1012Ωcmとなるように調整した。
【0104】
Imagio Color 4000で使用しているキャリアと実施例1のトナーを、トナー濃度が5重量%となるように混合して二成分現像剤を作製した。この二成分現像剤を充分混ぜ合わせた後、トナー帯電量を細川ミクロン製のE−スパートアナライザーによって測定した。本実施例のトナー帯電量の平均値QをDで割った値の絶対値Q/Dを表1に示す。
【0105】
Imagio Color 4000を改造し、外部信号によって任意のタイミングで作像プロセスを止められるようにした。転写率は、感光体ドラム上に一定面積のベタ画像の潜像を書き込み、2次転写の途中で作像プロセスを止め、転写ベルトユニットを複写機から取り出し、転写ベルト上に転写された単位面積当たりのトナー重量(M/A)T1と2次転写後に転写ベルト上に残ったトナー重量(M/A)T2を測定し、以下の(5)式から求めた。なお、感光体及び転写ベルト上のトナー重量は、感光体及び転写ベルト上のトナーを粘着テープに付着させ、トナー付着前後の粘着テープの重量変化から求めた。
【0106】
【数8】
転写率=100×(M/A)T2/(M/A)T1 (5)
また、画像評価は、文字や写真の混在した単色の画像を用いて、画像の一部が欠ける中抜け画像、画像周辺にトナーが付着するチリ画像、非画像部にトナーが付着する地肌汚れ等の画像不良の発生状況と、ドットの再現性を評価した。なお、ドット再現性の評価は、600dpiの孤立1ドットについて実施した。各評価項目に対する4段階の評価見本を用意し、画像を目視及びCCD顕微鏡カメラ(キーエンス社ハイパーマイクロスコープ)によって観察し、評価見本と比較することによって以下に示す4段階に評価した。
【0107】
(画像不良)
4:問題がない、3:ほぼ問題がない、2:やや問題がある、1:問題がある
(ドット再現性)
4:良好、3:ほぼ良好、2:やや悪い、1:悪い
本実施例の現像剤及び中間転写ベルトを用いた場合の転写率測定及び画像評価の結果を表1に示す。なお、様々な転写電圧について転写率測定及び画像評価を実施し、適切な転写電圧を設定した。
【0108】
遠心分離法を用いて、本実施例のトナーと中間転写ベルト間の付着力を測定した。本実施例の中間転写ベルトを直径7.8mmの円板状に切り出し、遠心分離に使用する試料基板上にプラスチック用接着剤を用いて貼り付けた。圧縮空気によって本実施例の二成分現像剤からトナーを分離して感光体上に付着させ、遠心分離法を用いて帯電したトナーと中間転写ベルト間の付着力を測定し、付着力分布の標準偏差σ及び平均値Fの値を求めた。同様に、未帯電トナーを感光体上に付着させて、トナーと中間転写ベルト間の非静電的付着力の平均値Fneを測定した。F、Fne、Q、Dから求めた(4)式の係数α、βを表1に示す。なお、付着力測定に使用した装置及び測定条件は以下のとおりである。
【0109】
遠心分離装置:日立工機製CP100α(最高回転数:100,000rpm、最大加速度:800,000g)
ロータ:日立工機製アングルロータP100AT
画像処理装置:インタークエスト製Hyper700
試料基板と受け基板:直径8mm、厚み1.5mmの円板で、材料はアルミニウム。
スペーサ:外径8mm、内径5.2mm、厚み1mmでのリングで、材料はアルミニウム。
保持部材:直径13mm、長さ59mmの円筒で、材料はアルミニウム。
ロータの中心軸から試料基板のトナー付着面までの距離:64.5mm
設定回転数f:1000、1600、2200、2700、3200、5000、7100、8700、10000、15800、22400、31600、50000、70700、86600、100000(rpm)
【0110】
(実施例2)
重合粒子Aに、シリカAを0.14重量%、酸化チタンAを0.16重量%配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理して実施例2のトナーを作製した。実施例1と同様にして外添剤被覆率を測定した結果、トナーの外添剤被覆率の平均値は14.8%となった。
【0111】
(実施例3)
重合粒子Aに、シリカAを0.3重量%、酸化チタンAを0.35重量%配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理して実施例3のトナーを作製した。実施例1と同様にして外添剤被覆率を測定した結果、トナーの外添剤被覆率の平均値は27.2%となった。
【0112】
(実施例4)
重合粒子Aに、シリカAを0.9重量%、酸化チタンAを1.05重量%配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理して実施例4のトナーを作製した。実施例1と同様にして外添剤被覆率を測定した結果、トナーの外添剤被覆率の平均値は64.8%となった。
【0113】
(比較例1)
重合粒子Aに、シリカAを0.045重量%、酸化チタンAを0.055重量%配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理して比較例1のトナーを作製した。実施例1と同様にして外添剤被覆率を測定した結果、トナーEの外添剤被覆率の平均値は6.2%となった。
【0114】
(実施例5)
実施例1における重合工程において、特殊機化社製TKホモミキサーの回転数を8400rpmとし、平均円形度が0.987、円形度が0.95以下のトナーの割合が6.8%、体積平均粒径が5.0μm、D/Dnが1.17の重合粒子Bを得た。重合粒子Bに、シリカAを0.8重量%、酸化チタンAを0.95重量%配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理して実施例5のトナーを作製した。実施例1と同様にして外添剤被覆率を測定した結果、トナーの外添剤被覆率の平均値は43.7%となった。
【0115】
(実施例6)
実施例1における重合工程において、特殊機化社製TKホモミキサーの回転数を2200rpmとし、平均円形度が0.982、円形度が0.95以下のトナーの割合が9.5%、体積平均粒径が8.3μm、D/Dnが1.21の重合粒子Cを得た。重合粒子Cに、シリカAを0.4重量%、酸化チタンAを0.45重量%配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理して実施例6のトナーを作製した。実施例1と同様にして外添剤被覆率を測定した結果、トナーの外添剤被覆率の平均値は41.0%となった。
【0116】
(比較例2)
ポリエステル樹脂(重量平均分子量25万) 80重量部
スチレン−メチルメタアクリレート共重合体 20重量部
酸価ライスワックス(酸価15) 5重量部
カーボンブラック(三菱化成工業社製、#44) 8重量部
含金属モノアゾ染料 3重量部
上記組成の混合物をヘンシェルミキサー中で充分撹拌混合した後、ロールミルで130〜140℃の温度で約30分間加熱溶融し、室温まで冷却後、ハンマーミルを用いて得られた混練物を約1mm〜2mmに粗粉砕し、ジェットミルで微粉砕して不定形の粒子Dを得た。この不定形粒子Dを、奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステムにより回転数12000rpmで5分間処理して球形化し、平均円形度が0.961、円形度が0.95以下のトナーの割合が17.2%、体積平均粒径が6.1μm、D/Dnが1.47の球形粒子Eを得た。球形粒子Eに、シリカAを0.65重量%、酸化チタンAを0.75重量%配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理して比較例2のトナーを作製した。実施例1と同様にして外添剤被覆率を測定した結果、トナーの外添剤被覆率の平均値は41.5%となった。
【0117】
(実施例7)
風力式分級機を用いて球形粒子Eを分級し、平均円形度が0.968、円形度が0.95以下のトナーの割合が12.3%、体積平均粒径が6.9μm、D/Dnが1.23の球形粒子Fを得た。球形粒子Fに、シリカAを0.6重量%、酸化チタンAを0.7重量%配合し、ヘンシェルミキサーによって攪拌混合処理して実施例7のトナーを作製した。実施例1と同様にして外添剤被覆率を測定した結果、トナーの外添剤被覆率の平均値は45.8%となった。
【0119】
実施例2〜7及び比較例1〜のトナーについて、実施例1と同様にしてトナー帯電量及び実施例1の中間転写ベルトとの付着力を測定し、その結果得られたσ、α、β、Q/Dの値を表1に示す。また、実施例1と同様にして、実施例2〜7及び比較例1〜の現像剤及び実施例1の感光体を使用して転写率及び画像評価を実施した結果を表1に示す。
【0120】
【表1】
Figure 0004030052
【0121】
表1に示すように、実施例1〜7は、いずれもσ、α、β、Q/Dの値が本発明の請求項に記載した範囲内にあり、転写効率が高く、画像不良が生じず、ドット再現性も良好である。これに対して、比較例1は、σ、α、βの値が本発明の請求項に記載した範囲外にあり、転写効率が不充分で、画像不良が発生しやすく、ドット再現性も悪い。また、比較例2は、α、β、Q/Dの値は本発明の請求項に記載した範囲内にあるが、D/Dnが大きく、σの値が本発明の請求項に記載した範囲外であり、転写効率が不充分である。
【0122】
【発明の効果】
以上、詳細且つ具体的な説明により明らかなように、本発明によれば、中間転写体とトナー間付着力の常用対数の分布における標準偏差が0.4以下となるような中間転写体とトナーを用いることにより、転写効率が高く、画像不良が生じない高画質の画像形成装置を提供することができる。
また、中間転写体とトナー間付着力の平均値とトナーの粒径及び帯電量との関係式における係数が適切な範囲にある中間転写体とトナーを用いることにより、前記標準偏差が0.4以下となり、転写効率が高く、画像不良が生じない高画質の画像形成装置を提供することができる。
【0123】
また、トナー1粒子当たりの帯電量の平均値Q(fC)をトナーの体積平均粒径D(μm)の二乗で割った値Q/Dの絶対値が0.01〜0.3(fC/μm)となるトナーを用いることで、Qの範囲がトナー粒径に応じた適切な値となり、転写効率の低下を抑制することができる。
また、製造工程あるいは製造後の工程において球形化したトナーを用いることにより、高い転写効率が得られる。
また、重合法により球形トナーを作製するので、トナー形状及び粒径制御が容易であり、また、トナー生産性も向上させることができる。
また、平均円形度が0.95〜1.0となる球形トナーを用いることにより、トナー形状の均一性が高く、中間転写体とトナー間付着力の分布が狭くなるため、高い転写効率が得られる。
【0124】
また、円形度が0.95以下のトナーの割合が15%以下となる球形トナーを用いることにより、トナー形状の均一性が高く、中間転写体とトナー間付着力の分布が狭くなるため、高い転写効率が得られる。
また、球形トナーの体積平均粒径が3〜9μmとなるように調整されているので、微紛トナーによる画像不良の発生を防ぐと共に、高画質化に対応することができる。
【0125】
また、球形トナーの体積平均粒径Dと個数平均粒径Dnの比D/Dnが1.3以下となるように調整されているので、トナーの粒径分布が狭く、中間転写体とトナー間付着力の分布が狭くなるため、高い転写効率が得られる。
また、球形トナーの表面が、一次粒子径の平均値が5nm〜100nmである微粒子から成る外添剤によって被覆されているので、外添剤がトナー中に埋没することなく、高転写性を維持することができる。また、外添剤のトナーからの分離を抑制し、画像形成装置の構成部材の損傷を抑制することができる。
また、球形トナー1粒子の表面積に対する外添剤の被覆面積比率の平均値が10〜100%となるように調整されているので、トナーと中間転写体間の付着力の平均値及び付着力分布の標準偏差を適切な範囲に調整することができるため、高い転写効率が得られる。
【0126】
また、外添剤が疎水化処理されたシリカ、チタン、アルミナのいずれかを少なくとも1種類以上含有するので、良好な転写特性が得られる。
また、中間転写体として中間転写ベルトを用い、中間転写ベルトの体積抵抗率が10〜1013Ωcmとなるように調整することにより、電荷リークによる転写率の低下及び残留電荷による画像不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る粉体付着力測定装置における測定セルの説明図である。
【図2】本発明に係る粉体付着力測定装置の遠心分離装置の一部断面側面図である。
【図3】本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】本発明の現像装置の一例を示す概略構成図である。
【図5】転写過程においてトナーに作用する力を説明するモデル図である。
【図6】トナーと中間転写体間付着力の常用対数の分布を示す図である。
【図7】トナーと中間転写体間付着力の平均値Fとトナー帯電量の平均値Qの関係を示す図である。
【図8】中間転写体上のトナー付着状態を示すモデル図である。
【符号の説明】
1 測定セル
2 試料基板
2a 試料面
3 受け基板
3a 付着面
4 スペーサ
5 遠心分離装置
6 ロータ
7 保持部材
7a 棒状部
7b セル保持部
7c 穴部
7d 設置固定部
8 試料設置部
9 回転中心軸
21 感光体ドラム
22 帯電ローラ
23 露光
24B、24C、24M、24Y 現像装置
26a〜26f 転写ベルト用ローラ
25 転写装置
27 転写ベルト
28 転写ベルト用クリーナ
29 記録材
30 定着装置
31 定着ローラ
32 加圧ローラ
33 クリーニング装置
34 除電装置
41 スクリュー
42 現像スリーブ
43 ドクターブレード

Claims (12)

  1. 少なくとも、像担持体に静電潜像を形成する手段と、像担持体上にトナー画像を形成する現像手段と、像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体に転写する一次転写手段と、中間転写体上のトナー像を記録材上に転写する2次転写手段を有する画像形成装置であって、前記中間転写体転写手段を転写体が像担持体に当接し、像担持体と転写体間に電界が形成されるように構成し、前記中間転写体とトナーとの付着力の常用対数の分布における標準偏差が0.4以下となり、かつ遠心分離法で測定した中間転写体とトナーとの付着力の平均値をF(nN)、トナーの体積平均粒径をD(μm)、トナー1粒子当たりの帯電量の平均値をQ(fC)とし、Fが(1)式によって表わされ、
    Figure 0004030052
    αが3(nN/μm)以下であり、かつβが90(nN・μm /fC )以下となり、
    前記トナーが含フッ素化合物を含有し、
    前記中間転写体が少なくとも樹脂層、弾性層及び表面層を有する無端状ベルトであり、前記樹脂層が少なくともフッ素系樹脂及びカーボンブラックからなり、前記弾性層が少なくともウレタンゴム及びカーボンブラックからなり、前記表面層が少なくともポリウレタン樹脂及びポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子からなることを特徴とする画像形成装置。
  2. トナー1粒子当たりの帯電量の平均値Q(fC)をトナーの体積平均粒径D(μm)の二乗で割った値Q/D の絶対値が0.01〜0.3(fC/μm )となるトナーを用いたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置
  3. 製造工程あるいは製造後の工程において球形化したトナーを用いたことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置
  4. 前記球形化したトナーを重合法により作製したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の画像形成装置
  5. 前記球形化したトナーの平均円形度が0.95〜1.0となるように作製したことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の画像形成装置
  6. 前記球形化したトナーを、円形度が0.95以下のトナーの割合が15%以下となるように作製したことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の画像形成装置
  7. 前記球形化したトナーの体積平均粒径Dが3〜9μmとなるように調整したことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の画像形成装置
  8. 前記球形化したトナーの体積平均粒径Dと個数平均粒径Dnの比D/Dnが1.3以下となるように調整したことを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の画像形成装置
  9. 前記球形化したトナーの表面が、一次粒子径の平均値が5nm〜100nmである微粒子から成る外添剤によって被覆されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の画像形成装置
  10. 前記球形化したトナー1粒子の表面積に対する前記外添剤の被覆面積比率の平均値が10〜100%となるように調整したことを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の画像形成装置
  11. 前記外添剤が、疎水化処理されたシリカ、チタン、アルミナのいずれかを少なくとも1種類以上含有することを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の画像形成装置
  12. 前記中間転写体として中間転写ベルトを用い、該中間転写ベルトの体積抵抗率が10 〜10 13 Ωcmとなるように調整したことを特徴とする請求項1乃 至11の何れかに記載の画像形成装置
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