従来、電子写真方式による画像形成では、光導電性物質等の像担持体上に静電荷による潜像を形成し、この静電潜像に対して、帯電したトナー粒子を付着させ可視像を形成している。トナーにより形成された可視像は、最終的に紙等の転写媒体に転写後、熱,圧力や溶剤気体等によって転写媒体に定着され、出力画像となる。
これらの画像形成方法は、可視像化のためのトナー粒子を帯電させる方法により、トナー粒子とキャリア粒子の攪拌・混合による摩擦帯電を用いる、いわゆる二成分現像方式と、キャリア粒子を用いずにトナー粒子への電荷付与を行う、いわゆる一成分現像方式とに大別される。また、一成分現像方式では、現像ローラへのトナー粒子の保持に磁気力を使用するか否かにより、磁性一成分現像方式、非磁性一成分現像方式に分類される。
一方、一般に定着には、熱効率面や定着機構の簡便さ,定着部材の製造コスト面等から、定着ローラや定着ベルト等の定着部材を直接未定着画像に圧接して、トナーを熱溶融し紙等の画像担持体に定着を行う方法、すなわち熱圧定着法が好んで採られている。
特に近年、省エネルギーや装置の小型化を目的として、ベルト状の伝熱媒体を用いた定着機構(以下、ベルト定着)が広く使われるようになってきている。
この様なベルト定着では、特に定着時にトナーの表面への接触時間を長くする事ができ、より低温度での定着が可能となる反面、トナーの溶融がより促進されてベルトの表面にトナーが融着する、いわゆるオフセット現象が発生しやすくなる。特にカラートナーにおいては、十分な透明性や高品位感を出すために適度な光沢が必要とされ、結着樹脂の分子量をシャープ化して、シャープメルトの特性が必要となる。これにより、定着時にトナーの溶融が促進されて、オフセット現象が発生しやすくなる。
また、定着のベルトは、耐熱樹脂製の無端もしくは有端のベルトが用いられる事が多く、これにまつわる課題としては、機械的耐久性の向上が挙げられる。
また、トナー外添剤やその他の成分がベルト状伝熱媒体状へ付着し、これに伴ってベルト摩耗や傷が生じ、ホットオフセットの発生、更には、ベルト自体の断裂が発生する場合がある。
上記課題解消のため、定着機構、電子写真用トナーの面から、これまでにも様々な提案がなされてきている。
例えば、ベルト曲率の小さい定着ローラと加熱ローラに張架されて、加熱ローラによって加熱されながら無端移動する定着ベルトを備え、転写材上のトナー像に定着ベルトを圧接させて、転写材上のトナー像を加熱定着している定着装置がある。(例えば、特許文献1参照。)この定着ベルトは、一般的にポリイミド等の耐熱性樹脂や金属の基体、耐熱性を有するゴム、エラストマーからなる弾性層、フッ素樹脂からなる離型層(最外層)の3層構造となっている。上記フッ素樹脂からなる離型層は、押し出し成形によって形成されたフッ素樹脂チューブを上記弾性層に被覆した後、フッ素樹脂を加熱溶融(以下、焼成)して形成している。また、弾性層にフッ素樹脂粒子をスプレーなどで塗布した後、フッ素樹脂を焼成して離型層を形成している。このように、離型層をフッ素樹脂で形成することで、離型性、耐熱性に優れた定着ベルトとする事ができる。しかしながら、上記フッ素樹脂は、屈曲性に乏しいため、ベルト曲率の小さい定着ローラと加熱ローラに張架されて長時間使用すると、離型層にクラックが生じてしまい、十分なベルト耐久性を得る事ができなかった。このような問題を解決する為に種々の提案がされている。例えば、上記離型層を溶融粘度(MFR(メルトフローレート))3以下のフッ素樹脂して、長時間使用してもクラックの発生しない定着ベルトとするものが開示されている。(例えば、特許文献2参照。)
しかしながら、MFRの小さい低溶融度タイプのフッ素樹脂は、溶融時の流動性に乏しいため、焼成時に融けたフッ素樹脂粒子が流れず、表面に凹凸のある平滑性の悪い定着ベルトとなってしまうという不具合があった。このような表面の平滑性の悪い定着ベルトを用いて画像定着を行うと、転写紙上の定着画像に光沢ムラが発生し、画像の劣化を引き起こすという問題がある。なお、この問題は、定着ベルトに限らず、定着ローラにおいても同様な問題を引き起こす。
また、トナーにワックスなどの定着離型材料を添加して、定着でのオフセットを防止する事が知られているが、ワックスの特性やトナー中での分散状態が不適切な場合には、現像ユニット内での長期使用により、トナー表面からワックスが脱離したり、染み出す等の現象が発生し、二成分現像剤においては、キャリア表面への汚染等が発生することで、トナーの帯電特性を悪化させ、また、一成分現像剤においては、現像ローラや、トナーを薄層化させる為にブレードなどに融着して、トナーの均一な現像を阻害する場合が多い。従って現像の方から見ると、できる限りワックスの添加は少量である事が好ましい。
従来から通常の混練粉砕法により得られるトナーは、一般的には、不定形で、その粒径分布はブロードで、流動性が低く、転写性が低く、定着エネルギーが高く、トナー粒子間で帯電量が不均一で、帯電安定性が低いと言う問題点があった。特に定着においては粉砕法で作製された混練粉砕型のトナーは粉砕が離型剤(ワックス)の界面で割れるため表面に多く存在するので離型効果が良好になる一方、キャリアや感光体、さらにブレードへの付着が起こりやすく性能としては不満足のものであった。
近年、これらの粉砕法における問題点を克服するために、懸濁重合法によるトナーの製造方法が提案され、実施されている。静電潜像現像用のトナーを重合法によって製造する技術は公知であり、例えば懸濁重合法によってトナー粒子を得ることが行われている。しかしながら、懸濁重合法で得られるトナーは、ワックスを内包化するため、トナーを実機に使用したときに、トナーの感光体への付着は低減されるものの、トナーの定着性については、ワックスが粒子界面状に存在する粉砕法に比べて、内包化されている分、ワックスがトナー表面に染み出にくく定着効率の悪いトナーとなる。従って、消費電力に対しては不利なトナーとなってしまう。さらに、その定着性向上を図るためワックスを増量したり、ワックスの分散粒径を大きくすると、カラートナーとして用いる場合、そのカラー画像の透明性が悪化する為、OHPによるプレゼンテーション画像形成用トナーとして用いるには不適なものとなる。
また、トナー粒子は球形であり、クリーニング性に劣るという欠点がある。画像面積率の低い現像・転写では転写残トナーが少なく、クリーニング不良が問題となる事はないが、写真画像など画像面積率の高いもの、さらには、給紙不良等で未転写の画像形成したトナーが感光体上に転写残トナーとして発生する事があり、蓄積すると画像の地汚れを発生してしまう。また、感光体を接触帯電させる帯電ローラ等を汚染してしまい、本来の帯電能力を発揮できなくなってしまう。このため、乳化重合法により得られる樹脂微粒子を会合させて不定形のトナー粒子を得る方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、乳化重合法で得られるトナー粒子は、水洗浄工程を経ても、界面活性剤が、表面だけでなく、粒子内部にも多量に残存し、トナーの帯電の環境安定性を損ない、かつ帯電量分布を広げ、得られた画像の地汚れが不良となる。また、残存する界面活性剤により、感光体や帯電ローラ、現像ローラ等を汚染してしまい、本来の帯電能力を発揮できなくなってしまう。
トナーの製造法として溶解懸濁法が知られている。この方法の場合、低温定着が可能なポリエステル樹脂を使用できるメリットはあるが、この方法の場合、低温定着性樹脂や着色剤を溶剤に溶解又は分散する工程において高分子量成分を加えるため、液粘度が上がり生産性上の問題が発生するようになる。さらに、この溶解懸濁法においては、トナーの表面形状に関し、球形で且つ表面を凹凸形状にする事によりトナーのクリーニングの改善を図っている(例えば、特許文献4参照)が、このようなトナーは離型剤としてワックスを組成物に加えた場合、ワックスの均一分散性及び分散状態(表面存在)や顔料の均一分散性が混練粉砕のトナーに比較し低下する事及びバンンダーの高分子設計の自由度が溶剤中で粒子化するため粘度の制約があり難しくなるので離型性の確保が困難である。
トナーの流動性改良、低温定着性改良、ホットオフセット性改良を目的に、トナーバインダーとしてウレタン変性されたポリエステルの伸長反応物からなる実用球形度が0.90乃至1.00の乾式トナーが提案されている。(例えば、特許文献5参照)また、小粒径トナーとした場合の粉体流動性、転写性に優れるとともに、耐熱保存性、低温定着性、耐ホットオフセット性のいずれにも優れた乾式トナーが開示されている。(例えば、特許文献6及び7参照。)これら開示されたトナーの製造方法は、イソシアネート基含有ポリエステルプレポリマーを水系媒体中でアミンと重付加反応させる高分子量化工程を含むものである。
しかしながら、前記のような工法により得られるトナーの場合、顔料やワックスの分散が悪く、顔料はトナー中に不均一に分散しているために、このトナーにより得られた画像は、透明性が低く、彩度(鮮やかさ)に劣るという問題点を有するものであった。特に、オイルレス定着においては離型材であるワックスの分散コントロールがなくオイルレス定着トナーとしての設計ができていないので十分な離型幅がとれない問題を有する。また、前記トナーを用いてOHPシート上にカラー画像を形成した場合、ワックスの分散粒径が大きいのでその画像は暗い画像となる欠点を生じた。
トナー粒子の離型性(以下、「耐オフセット性」という。)を向上させるために、トナー粒子表面に離型剤を存在させることが検討されている。これに対し、樹脂微粒子をトナー粒子中に含有させるだけでなく、当該樹脂微粒子がトナー粒子の表面に偏在していることにより、耐オフセット性を向上する方法が開示されている(例えば、特許文献8及び9参照)。しかし、定着下限温度が上昇し、低温定着性即ち省エネ定着性が十分でない。
しかしながら、乳化重合法によって得られる樹脂微粒子を会合させて不定形のトナー粒子を得る方法では、下記のような問題を生じる。耐オフセット性を向上させるために、離型剤微粒子を会合させる場合において、当該離型剤微粒子がトナー粒子の内部に取り込まれてしまい、この結果、耐オフセット性の向上を十分に図ることができない。樹脂微粒子、離型剤微粒子、着色剤微粒子などがランダムに融着してトナー粒子が構成されるので、得られるトナー粒子間において組成(構成成分の含有割合)および構成樹脂の分子量等にバラツキが発生し、この結果、トナー粒子間で表面特性が異なり、長期にわたり安定した画像を形成することができない。さらに低温定着が求められる低温定着システムにおいては、トナー表面に偏在する樹脂微粒子による定着阻害が発生し、定着温度幅を確保できない。
また、低温定着性と耐熱保存性という相反する性能を満足させるために、トナーを多層構造とし、粒子の内側と外側とで異なる組成の樹脂を用いた形のトナーの製法が提案されている。この製法は、粒子の内側にガラス転移温度が低い樹脂を用いることにより、低温定着性を促進させる一方で、粒子の表面には、粒子の内側よりも、ガラス転移温度が高い樹脂を用いることにより、必要な耐熱保存性を確保しながら、定着性に優れたトナーを提供するものである。
多層構造を有するトナーの製造方法としては、例えば、in situ重合法、界面重合法、コアセルベーション法あるいはスプレー・ドライ法、転相乳化法による製造方法などが提案されている。また、転相乳化法によるトナーの製法において、耐熱保存性を向上させるために、高いガラス転移点をもつ微粒子をトナー表面に固着させた多層構造を有するトナーの製造方法が提案されている(例えば、特許文献10参照)。この技術により、多層構造トナーにおける耐熱保存性を向上させることができるが、これらの製造方法であっても、必ずしも定着温度幅が十分に満足したトナーが得られなかった。特に、定着開始温度を低く保ちながら耐オフセット性を確保することができなかった。
また、トナーを多層構造とする提案の中で、粒子の内側と外側とで異なる分子量の樹脂を用いた形のトナーの製法が提案されている(例えば、特許文献11参照)。この製法では、粒子の内側に分子量の低い樹脂を用い、粒子の表面に、粒子の内側よりも、分子量が高い樹脂を用いることにより、耐久性に優れたトナーを提供するものである。しかし、このトナーでは、耐久性は伸びるものの、表面層を均一な高分子量体が覆うため、定着温度幅が十分に満足したトナーが得られなかった。特に、定着開始温度を低くすることと、耐オフセット性を両立することができなかった。
特開2002−268436号公報
特開2003−167462号公報
特許第2537503号明細書
特開平9−15903号公報
特開平11−133665号公報
特開平11−149180号公報
特開2000−292981号公報
特開2000−292973号公報
特開2000−292978号公報
特開2001−022117号公報
特開平2−287554号公報
したがって、本発明は、上記の様な現状の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、耐屈曲性、耐磨耗性、表面平滑性に優れた定着部材を用い、さらに耐ホットオフセット性、低温定着性等の定着性を満足し、かつ、保存時の熱によってもブロッキングしない耐熱保存性を有したトナーを用いることで、極めて安定した良好な画像品質画像が長期にわたって得られる画像形成方法及び該画像形成方法を用いる画像形成装置を提供することである。
請求項1記載の発明は、像担持体上に形成された静電潜像を現像手段によりトナー像に可視像化し、該トナー像を転写材上に転写し、定着部材を圧接させることにより、該転写材上のトナー画像を加圧及び加熱定着する画像形成方法において、
前記定着部材の最外層が、MFRが互いに異なるフッ素系樹脂からなる定着部材と、
少なくとも2種類以上の樹脂微粒子が、トナー表面に付着しており、樹脂微粒子のうちテトラヒドロフラン可溶分の分子量分布における最も重量平均分子量の大きい樹脂微粒子Aの重量平均分子量(Mwa)が100,000乃至6,000,000、最も重量平均分子量の小さい樹脂微粒子Bの重量平均分子量(Mwb)が8,000乃至800,000であり、樹脂微粒子Aの重量平均分子量(Mwa)>樹脂微粒子Bの重量平均分子量(Mwb)である関係を満たすトナーを用いることを特徴とする画像形成方法によって達成される。
請求項1に記載の発明によれば、耐屈曲性、耐磨耗性、表面平滑性に優れた定着部材を用い、さらに耐ホットオフセット性、低温定着性等の定着性を満足し、かつ、保存時の熱によってもブロッキングしない耐熱保存性に優れたトナーを用いることで、極めて安定した良好な画像品質画像が長期にわたって得られる画像形成方法を提供できる。
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の発明において、前記定着部材のフッ素樹脂は、372℃,5kgf荷重におけるMFRが7[g/10min]以上のフッ素樹脂と、372℃,5kgf荷重におけるMFRが3[g/10min]以下のフッ素樹脂とからなることを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、372℃,5kgf荷重における特定条件において、MFRが7[g/10min]以上と、3[g/10min]以下の特定の数値範囲の異なるMFR値のフッ素樹脂を使用することで、これによって耐久性、平滑性のバランスのとれた定着ベルトを使用することができ、さらに、耐ホットオフセット性、低温定着性等の定着性を満足し、かつ、保存時の熱によってもブロッキングしない耐熱保存性に優れたトナーを用いることで、極めて安定した良好な画像品質が、長期に渡って得られる画像形成方法を提供できる。
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記定着部材の最外層は、粒径の互いに異なる複数種類のフッ素樹脂を塗布した後に焼成して成り、前記フッ素樹脂のうちMFRの小さい方のフッ素樹脂の粒径>前記フッ素樹脂のうちMFRの大きい方のフッ素樹脂の粒径の関係を満たすことを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、MFRが小さく粒径の大きなフッ素樹脂粒子と、MFRが大きく粒径の小さなフッ素樹脂粒子が混合した溶液を塗布・焼成で形成することによって、溶媒中にフッ素樹脂粒子を分散させることができ、塗布ムラをなくすことができ、さらに、塗布後の乾燥工程では、凝集力の高い粒径の大きなフッ素樹脂粒子によってクラックの発生を抑制することができ、これにより、クラックの発生が抑制された耐久性に優れた離型層とすることができ、これによって耐久性、平滑性のバランスのとれた定着ベルトを使用することができ、さらに、耐ホットオフセット性、低温定着性等の定着性を満足し、かつ、保存時の熱によってもブロッキングしない耐熱保存性に優れたトナーを用いることで、極めて安定した良好な画像品質が、長期に渡って得られる画像形成方法を提供できる。
請求項4にかかる発明は、請求項1乃至3のいずれか一項記載の発明において、前記フッ素樹脂のうち、MFRの大きい方のフッ素樹脂を35乃至60重量%配合し、前記フッ素樹脂のうちMFRの大きい方のフッ素樹脂と、前記フッ素樹脂のうちMFRの小さい方のフッ素樹脂との混合比を1:1とした定着部材を使用することを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、MFRの大きい方のフッ素樹脂を35乃至60重量%配合し、前記フッ素樹脂のうちMFRの大きい方のフッ素樹脂と、前記フッ素樹脂のうちMFRの小さい方のフッ素樹脂との混合割合をほぼ同程度とすることによって、耐久性、平滑性のバランスのとれた定着ベルトを使用することができ、さらに、耐ホットオフセット性、低温定着性等の定着性を満足し、かつ、保存時の熱によってもブロッキングしない耐熱保存性に優れたトナーを用いることで、極めて安定した良好な画像品質が、長期に渡って得られる画像形成方法を提供できる。
請求項5にかかる発明は、請求項1乃至4のいずれか一項記載の発明において、前記フッ素樹脂が、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)である定着部材を使用することを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、トナー及び転写材に対して熱と圧力を均一に与え、弾性を有し、断熱性を有するテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)などの材料を使用することにより、安定した定着性能を備える定着部材を使用することができ、さらに、耐ホットオフセット性、低温定着性等の定着性を満足し、かつ、保存時の熱によってもブロッキングしない耐熱保存性に優れたトナーを用いることで、極めて安定した良好な画像品質が、長期に渡って得られる画像形成方法を提供できる。
請求項6にかかる発明は、請求項5に記載の発明において、前記テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)は、分子鎖中の酸素原子数/炭素原子数の比率が1/60以上である定着部材を使用することを特徴とする。
請求項6に記載の発明によれば、分子鎖中の酸素原子数/炭素原子数の比率を1/60以上にすることにより、結晶化が抑制され、耐屈曲性(曲げ寿命)が向上して、耐久性に優れた定着ベルトを使用することができ、さらに、耐ホットオフセット性、低温定着性等の定着性を満足し、かつ、保存時の熱によってもブロッキングしない耐熱保存性に優れたトナーを用いることで、極めて安定した良好な画像品質が、長期に渡って得られる画像形成方法を提供できる。
請求項7にかかる発明は、請求項1乃至6のいずれか一項記載の発明において、前記最外層の厚みが20μm以上の定着部材を使用することを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、層厚を20μm以上とすることで、弾性層に塗布され付着したフッ素樹脂粒子の層は、MFRの大きなフッ素樹脂粒子と、MFRの小さなフッ素樹脂粒子とが分散した層となり、耐屈曲性、表面平滑性の優れた定着ベルトを使用することができ、さらに、耐ホットオフセット性、低温定着性等の定着性を満足し、かつ、保存時の熱によってもブロッキングしない耐熱保存性に優れたトナーを用いることで、極めて安定した良好な画像品質が、長期に渡って得られる画像形成方法を提供できる。
請求項8にかかる発明は、請求項1乃至7のいずれか一項記載の発明において、前記樹脂微粒子のうち樹脂微粒子Aと樹脂微粒子Bとの重量比が10:90乃至50:50であるトナーを用いることを特徴とする。
請求項8に記載の発明によれば、樹脂微粒子Aと樹脂微粒子Bとを上記の配合重合比で配合することによって、トナー表面の耐オフセット性を保持できる適切な量の微粒子をトナー表面上に残すことができ、さらに低温定着性、耐熱保存性に優れた静電荷像現像用トナーを使用することができ、さらに、耐屈曲性・表面平滑性に優れた定着部材を用いることで、極めて安定した良好な画像品質が、長期に渡って得られる画像形成方法を提供できる。
請求項9にかかる発明は、請求項1乃至8のいずれか一項記載の発明において、前記樹脂微粒子の体積平均粒径が20nm乃至400nmであるトナーを用いることを特徴とする。
請求項9に記載の発明によれば、体積平均粒径が20nm乃至400nmである樹脂微粒子を使用することによって、トナー内部の樹脂成分と定着紙との適切な接着性を保持し、定着下限温度の上昇を抑制することができ、樹脂微粒子がワックス成分のしみ出しを適切にして、離型性効果を得ることができ、さらにオフセットの発生を抑制することができ、さらに、耐屈曲性・表面平滑性に優れた定着部材を用いることで、極めて安定した良好な画像品質が、長期に渡って得られる画像形成方法を提供できる。
請求項10にかかる発明は、請求項1乃至9のいずれか一項記載の発明において、前記樹脂微粒子のガラス転移点が25℃乃至150℃であるトナーを用いることを特徴とする。
請求項10に記載の発明によれば、ガラス転移点が25℃乃至150℃である樹脂微粒子を使用することによって、それぞれの樹脂微粒子特有の効果が発現されて、耐オフセット性、低温定着性、耐熱保存性に優れたトナーを使用することができ、さらに、耐屈曲性・表面平滑性に優れた定着部材を用いることで、極めて安定した良好な画像品質が、長期に渡って得られる画像形成方法を提供できる。
請求項11にかかる発明は、請求項1乃至10のいずれか一項記載の発明において、前記トナー表面上に付着している樹脂微粒子の被覆率が75%乃至100%であるトナーを用いることを特徴とする。
請求項11に記載の発明によれば、樹脂微粒子の被覆率を75%乃至100%とすることによって、トナーの保存性を適切に保持し、保管時乃至使用時のブロッキングの発生を抑制することができ、さらに、耐屈曲性・表面平滑性に優れた定着部材を用いることで、極めて安定した良好な画像品質が、長期に渡って得られる画像形成方法を提供できる。
請求項12にかかる発明は、請求項1乃至11のいずれか一項記載の発明において、前記トナー表面上に付着する樹脂微粒子のトナーに対する残存率が、静電荷像現像用トナーに対して0.5乃至8.0質量%であるトナーを用いることを特徴とする。
請求項12に記載の発明によれば、前記トナー表面上に付着する樹脂微粒子のトナーに対して上記の残存率とすることによって、トナーの保存性を適切に保持し、保管時乃至使用時のブロッキング発生を抑制することができ、樹脂微粒子がワックスのしみ出しを適切に保持し、ワックスの離型性効果に優れ、かつ、オフセットの発生を抑制することができ、さらに、耐屈曲性・表面平滑性に優れた定着部材を用いることで、極めて安定した良好な画像品質が、長期に渡って得られる画像形成方法を提供できる。
請求項13にかかる発明は、請求項1乃至12のいずれか一項記載の発明において、前記トナーのBET比表面積が0.5乃至8.0m2/gであるトナーを用いることを特徴とする。
請求項13に記載の発明によれば、前記トナーのBET比表面積が0.5乃至8.0m2/gであるトナーを用いることによって、トナー内部の樹脂成分と定着紙との適切な接着性を保持して定着下限温度の上昇を抑制し、樹脂微粒子がワックスのしみ出しを適切に保持し、離型性効果を得ることができ、かつ、オフセットの発生を抑制することができ、さらに、耐屈曲性・表面平滑性に優れた定着部材を用いることで、極めて安定した良好な画像品質が、長期に渡って得られる画像形成方法を提供できる。
請求項14にかかる発明は、請求項1乃至13のいずれか一項記載の発明において、前記トナーの体積平均粒径が3乃至8μmであるトナーを用いることを特徴とする。
請求項14に記載の発明によれば、体積平均粒径が3乃至8μmであるトナーを用いることによって、二成分現像剤でのキャリアの帯電能力を保持し、一成分現像剤ではブレード等へのトナーの融着の発生を抑制し、高解像度で高画質の画像を得ることができ、さらに、耐屈曲性・表面平滑性に優れた定着部材を用いることで、極めて安定した良好な画像品質が、長期に渡って得られる画像形成方法を提供できる。
請求項15にかかる発明は、請求項1乃至14のいずれか一項記載の発明において、前記トナーの体積平均粒径/個数平均粒径が、1.00乃至1.25であるトナーを用いることを特徴とする。
請求項15に記載の発明によれば、トナーの体積平均粒径/個数平均粒径が、1.00乃至1.25であるトナーを用いることによって、二成分現像剤でのキャリアの帯電能力を保持し、一成分現像剤ではブレード等へのトナーの融着の発生を抑制し、高解像度で高画質の画像を得ることができ、さらに、耐屈曲性・表面平滑性に優れた定着部材を用いることで、極めて安定した良好な画像品質が、長期に渡って得られる画像形成方法を提供できる。
請求項16にかかる発明は、請求項1乃至15のいずれか一項記載の発明において、前記トナーの平均円形度が1.00乃至0.90であるトナーを用いることを特徴とする。
請求項16に記載の発明によれば、トナーの平均円形度が0.90乃至1.00であるトナーを用いることによって、満足できる転写性やチリのない高画質画像を得ることができ、さらに、耐屈曲性・表面平滑性に優れた定着部材を用いることで、極めて安定した良好な画像品質が、長期に渡って得られる画像形成方法を提供できる。
請求項17にかかる発明は、請求項1乃至16のいずれか一項記載の発明において、前記トナーが、少なくとも、有機溶媒中に、活性水素基を有する化合物と反応可能な部位を有する重合体、着色剤、離型剤を溶解または分散させ、溶液または分散液を樹脂微粒子含有水系媒体中で分散させ、活性水素基を有する化合物と反応可能な部位を有する重合体を反応させた後、もしくは反応させながら、有機溶媒を除去し、洗浄、乾燥したトナーであることを特徴とする。
請求項17に記載の発明によれば、耐ホットオフセット性、低温定着性等の定着性を満足し、かつ、保存時の熱によってもブロッキングしない耐熱保存性に優れたトナーを用い、さらに、耐屈曲性・表面平滑性に優れた定着部材を用いることで、極めて安定した良好な画像品質が、長期に渡って得られる画像形成方法を提供できる。
請求項18にかかる発明は、少なくとも、像担持体と、該像担持体上にトナー画像を形成するトナー画像形成手段と、該像担持体上のトナー画像を転写材に転写する転写手段と、該転写材上のトナー画像を定着する定着手段とを備えた画像形成装置であって、請求項1乃至17のいずれか一項記載の画像形成方法を使用する画像形成装置によって達成できる。
請求項18に記載の発明によれば、耐屈曲性・表面平滑性に優れた定着部材を用い、耐ホットオフセット性、低温定着性等の定着性を満足し、かつ、保存時の熱によってもブロッキングしない耐熱保存性に優れたトナーを用いることで、極めて安定した良好な画像品質が、長期に渡って得られる画像形成方法を用いる画像形成装置を提供できる。
本発明によれば、定着部材の最外層のフッ素樹脂は、MFRの異なる複数種類のフッ素樹脂からなり、MFRの大きいフッ素樹脂とMFRの小さいフッ素樹脂とが混在したものとなっている。最外層のフッ素樹脂のうち、MFRの大きい方のフッ素樹脂は、焼成時に流れて定着部材の表面の平滑性を向上させる。最外層のフッ素樹脂のうち、MFRの小さい方のフッ素樹脂は、定着部材の耐屈曲性を向上させる。このように定着部材の最外層のフッ素樹脂が、MFRの異なる複数種類のフッ素樹脂からなることで、耐屈曲性及び表面平滑性に優れた定着部材を使用することができる。特に、定着部材のフッ素樹脂は、372℃,5kgf荷重におけるMFRが7[g/10min]以上のフッ素樹脂と、372℃,5kgf荷重におけるMFRが3[g/10min]以下のフッ素樹脂とからなることで、耐屈曲性及び表面平滑性に優れた定着部材を効果的に活用することができる。
また、少なくとも、有機溶媒中に、活性水素基を有する化合物と反応可能な部位を有する重合体、着色剤、離型剤を溶解または分散させ、溶液または分散液を樹脂微粒子含有水系媒体中で分散させ、活性水素基を有する化合物と反応可能な部位を有する重合体を反応させた後、もしくは反応させながら、有機溶媒を除去し、洗浄、乾燥したトナーにおいて、少なくとも2種類以上の樹脂微粒子が、トナー表面に付着しており、樹脂微粒子のうちテトラヒドロフラン可溶分の分子量分布における最も重量平均分子量の大きい樹脂微粒子Aの重量平均分子量(Mwa)が100,000乃至6,000,000、最も重量平均分子量の小さい樹脂微粒子Bの重量平均分子量(Mwb)が8,000乃至800,000であり、樹脂微粒子Aの重量平均分子量(Mwa)>樹脂微粒子Bの重量平均分子量(Mwb)の関係を満たし、耐ホットオフセット性、低温定着性等の定着性を満足し、かつ、保存時の熱によってもブロッキングしない耐熱保存性に優れた静電荷像現像用トナーを使用することができる。
したがって、本発明は、耐屈曲性、耐磨耗性、表面平滑性に優れた定着部材と、耐ホットオフセット性、低温定着性等の定着性を満足し、かつ、保存時の熱によってもブロッキングしない耐熱保存性に優れたトナーとを用いることで、極めて安定かつ高精彩で良好な画像品質が、長期に渡って得られる画像形成方法を提供でき、さらに該画像形成方法を採用する画像形成装置を提供できる。
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものであり、以下の説明はこの発明の最良の形態の例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
図1には、この発明の実施例に係る画像形成装置として、4連タンデム方式のフルカラープリンタの構成を概略で示した。
このプリンタは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像をそれぞれ対応した感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bk(像担持体)の表面上に形成するための電子写真方式の4組の画像形成部10Y、10M、10C、10Bk(像形成手段)を備えている。
これら画像形成部10Y、10M、10C、10Bkの下方には、各画像形成部を通して用紙(記録材)を搬送するための搬送ベルト20が張架されている。
各画像形成部10Y、10M、10C、10Bkの感光体ドラム1Y、1M、1C、1Bkは、搬送ベルト20にそれぞれ転接配置され,用紙(記録材)は搬送ベルト20の表面に静電的に吸着される。
4組の画像形成部10Y、10M、10C、10Bkは、略同じ構造を有する。よって、ここでは用紙の搬送方向最上流側に配設されたイエロー用の画像形成部10Yについて代表して説明し、他の色用の画像形成部10M、10C、10Bkについては同一符号を付して詳細な説明を省略する。
画像形成部10Yは、その略中央位置に搬送ベルト20に転接された感光体ドラム1Yを有する。感光体ドラム1Yの周囲には、感光体ドラム1Yの表面を所定の電位に帯電させる帯電装置2Y、帯電されたドラム表面を色分解された画像信号に基づいて露光し、ドラム表面上に静電潜像を形成する露光装置3Y、ドラム表面上に形成された静電潜像にイエロートナーを供給して現像する現像装置4Y、現像したトナー像を搬送ベルト20を介して搬送される用紙上に転写する転写ローラ5Y(転写装置)、転写されずにドラム表面に残留した残留トナーを除去するクリーナ6Y、および図示しないドラム表面に残留した電荷を除去する除電ランプが、感光体ドラム1Yの回転方向に沿って順に配設されている。
搬送ベルト20の図中右下方には、用紙を搬送ベルト20上に給紙するための給紙機構30が配設されている。
搬送ベルト20の図中左側には、後に詳述する本発明の実施の形態に係る定着装置40が配設されている。搬送ベルト20によって搬送された用紙は、搬送ベルト20から連続して定着装置40を通って延びた搬送路を搬送され、定着装置40を通過する。
定着装置40は、搬送された用紙、すなわちその表面上に各色のトナー像が転写された状態の用紙を加熱および加圧する。そして、各色のトナー像を溶融して用紙に浸透させて定着させる。また、定着装置40の搬送経路下流側に排紙ローラを介して排紙する。
次に、上述した本発明の実施例に係る定着装置40について、図2を参照して詳細に説明する。
定着装置40は、用紙搬送経路を上下に挟む位置関係で配設された定着ローラ41,および加圧ローラ42を有する。定着ローラ41は、金属製の芯金の外周に耐熱性のスポンジゴム層を形成してなる。用紙は、トナー像が転写された表面を上にした姿勢で搬送路を一定速度で搬送される。用紙は、その表面が定着ローラ41に対向し、裏面が加圧ローラに対向する姿勢で搬送される。本実施の形態では、加圧ローラ42をバネ43によって図中上方に加圧、加圧ローラ42を定着ローラ41に向けて押圧するようにしたが、両者の間に押圧力を生じるため、定着ローラ41を加圧ローラ42に向けて押圧するようにしても良い。
加圧ローラ42には図示しないギヤを介して回転駆動力が伝達されるようになっており、定着ローラ41は従動回転する。定着ローラ41を回転駆動するようにしてもよい。また、加圧ローラ42と定着ローラ41をギヤで噛み合わせ、加圧ローラ42と定着ローラ41双方を回転駆動するようにしてもよい。
定着装置40は、定着ローラ41と金属製の芯金の内部にハロゲンランプ(ヒータ)46を内蔵する加熱ローラ44に張架された無端状の定着ベルト45を有する。定着ベルト45の構造については後に詳述する。
このようにして定着ローラ41と加熱ローラ44に張架された定着ベルト45は、搬送路を搬送される用紙の表面にその外周面を接触した状態で無端走行される。加圧ローラ42の外周面は、搬送される用紙Pの裏面に接触する。つまり、搬送される用紙は、定着ベルト45の外周面と加圧ローラ42の外周面との間のニップを通過されて加圧される。
定着ベルト45の,加圧42ローラとのニップからベルト走行方向上流側の外周面には、テンションローラ47が接触配置され,バネ48によって図中左方向に加圧される。このベルト外周面への加圧によってベルトにテンションが付与される。
サーミスタ49は、その検知端が定着ベルト45の外周面に接触するように配設されている。加熱ローラ44に巻き掛けられた部分で定着ベルト45の外周面にサーミスタ49を接触させることで、両者の間の接触状態を安定させ、温度検知のばらつきを防止するようにした。
次に定着ベルト45の構成を図3を参照して説明する。
ポリイミド等耐熱性の樹脂からなる円筒上のエンドレスフィルム基体451の外周に,プライマーを介してシリコーンゴムからなる弾性層452、さらにその外周にプライマーを介してフッ素樹脂からなる離型層453を積層した構成となっている。
基体451には、耐熱性と機械的強度が要求される。基体フィルム451として、例えば、NiやSUS等の金属を採用しても良い。
弾性層452は、トナーおよび用紙に対して熱と圧力を均一に与えることができ、安定した定着性能を発揮でき,且つ断熱性に優れた材料によって形成されれば良く、シリコーンゴムに限らない。フッ素樹脂からなる離型層453はPTFE、PFA、FEP等の公知のフッ素樹脂あるいはそれらのブレンド材料を弾性層452上にプライマーを介して塗布・焼成することで得られるが、耐久性のよい定着ベルトを得るためには、耐屈曲性、非粘着性、耐摩耗性に優れるPFAを用いるのが望ましい。
上記離型層のフッ素樹脂は、MFRの異なる種類のフッ素樹脂からなっている。MFRの大きいフッ素樹脂は、溶融したときの流動性に優れている。このため、弾性層に付着したMFRの大きいフッ素樹脂は、焼成により定着ベルト表面に均一な膜を形成することができ、表面平滑性の高い定着ベルトとすることができる。しかし、MFRの大きいフッ素樹脂は、耐屈曲性に乏しいため、上記定着ローラ41と加熱ローラ44との張架やテンションローラ47の加圧等によって、使用中にクラックが発生しやすい。一方、MFRの小さいフッ素樹脂は、耐屈曲性に優れているため、長期間使用してもクラックが発生しにくい。しかし、MFRの小さいフッ素樹脂は、溶融したときの流動性が悪いため、塗布されて弾性層に付着したフッ素樹脂は、焼成時に流動しないため、定着ベルト表面に均一な膜を形成することができない。このため、表面に凹凸のある平滑性の悪い定着ベルトとなってしまう。上記のように離型層のフッ素樹脂をMFRの異なる種類のフッ素樹脂にすることで、離型層のフッ素樹脂のうちMFRが大きい方のフッ素樹脂は、定着ベルト表面を平滑にし、離型層のフッ素樹脂のうちMFRが小さい方のフッ素樹脂は、耐屈曲性の良好にする。これにより、耐久性、平滑性のバランスのとれた定着ベルトとすることができる。
また、上記フッ素樹脂のうち、MFRの大きい方のフッ素樹脂を35乃至60重量%配合するのが好ましく、フッ素樹脂のうちMFRの大きい方のフッ素樹脂とMFRの小さい方のフッ素樹脂の混合比を1:1にするのがより好ましい。このように、離型層のフッ素樹脂のMFRの大きい方のフッ素樹脂とMFRの小さい方のフッ素樹脂との割合をほぼ同程度とすることで、耐久性、平滑性のバランスのとれた定着ベルトとすることができる。また、離型層の厚みは、20μm以上とするのが好ましい。離型層の厚みが20μm以下の場合、弾性層に塗布され付着したフッ素樹脂粒子の層が、MFRの小さいフッ素樹脂粒子とMFRの大きいフッ素樹脂粒子とが分散した層が形成されにくくなる。よって、図4(a)に示すように、MFRの大きなフッ素樹脂粒子のみで形成された層や、MFRの小さなフッ素樹脂粒子のみで形成された層が存在するようになる。このような層が形成されたフッ素樹脂粒子を焼成して作成された定着ベルトは、MFRの大きなフッ素樹脂のみで形成された層の部分で耐屈曲性が悪くクラックが発生しやすくなり、MFRの小さなフッ素樹脂のみで形成された層の部分が突出して表面平滑性を損なってしまう。しかし、上記のように層厚を20μm以上とすることで、図4(b)に示すように弾性層に塗布され付着したフッ素樹脂粒子の層は、MFRの大きなフッ素樹脂粒子と、MFRの小さなフッ素樹脂粒子とが分散した層となる。これにより、耐屈曲性、表面平滑性の良好な定着ベルトとすることができる。
また、フッ素樹脂粒子を塗布・焼成することで離型層を形成する場合は、粒径の大きなフッ素樹脂と粒径の小さなフッ素樹脂とを混合した少なくとも2種類のフッ素樹脂を用いるのが好ましい。粒径の小さなフッ素樹脂粒子は、凝集性が低いため、水等の溶媒に均一に分散することができる。しかし、溶媒と粒径の小さなフッ素樹脂粒子のみとからなる溶液を弾性層に塗布した場合、溶媒を除去するための乾燥工程でクラックが発生しやすい。一方、粒径の大きなフッ素樹脂粒子は、凝集力が強いため、塗布後の乾燥工程でクラックが発生しにくい。しかし、粒径の大きなフッ素樹脂粒子は水等の溶媒中に十分分散することができないため、水等の溶媒と粒径の大きなフッ素樹脂粒子のみとの溶液を塗布した場合、フッ素樹脂粒子が弾性層に均一に付着せず、いわゆる塗布ムラを引き起こす場合がある。このため、上記のように、粒径の大きなフッ素樹脂粒子と小さなフッ素樹脂粒子が混合した溶液を塗布・焼成することで、溶媒中にフッ素樹脂粒子を分散させることができ、塗布ムラをなくすことができる。また、塗布後の乾燥工程では、凝集力の高い粒径の大きなフッ素樹脂粒子によってクラックの発生を抑制することができる。これにより、クラックの発生が抑制された耐久性に優れた離型層とすることができる。
離型層453には、耐屈曲性、非粘着性、耐磨耗性に優れたテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体であるPFAを用いることで、耐久性のよい定着ベルトとすることができる。さらに、パーフルオロアルキルビニルエーテル成分を増やし、分子鎖中の酸素原子数/炭素原子数の比率が1/60以上のPFAを用いることが好ましい。図5は、分子鎖中の酸素原子数/炭素原子数の比率が1/60以上のPFAと、分子鎖中の酸素原子数/炭素原子数の比率が1/100以下のPFAの耐屈曲性について調べたグラフである。図中の実線は、分子鎖中の酸素原子数/炭素原子数の比率が1/60以上のPFAであり、図中の点線は、分子鎖中の酸素原子数/炭素原子数の比率が1/100以下のPFAである。図5からわかるように、MFRの値に関わらず、分子鎖中の酸素原子数/炭素原子数の比率が1/60以上のPFAは、分子鎖中の酸素原子数/炭素原子数の比率が1/100以下のPFAに比べ耐屈曲性が向上していることがわかる。これは、分子鎖中の酸素原子数/炭素原子数の比率が1/60以上のPFAは、結晶化が抑制され、耐屈曲性(曲げ寿命)が向上したと考えられる。
上述では、離型層は弾性層452上にプライマーを介して塗布・焼成することで得ているが、これに限らず例えば、フッ素樹脂を押し出し成形してフッ素樹脂のチューブを作成し、このチューブを、プライマーを介して弾性層に被覆し焼成することで離型層を作成することもできる。しかし、定着ベルト45の耐久性、平滑性を考慮した場合、離型層の厚みは、20μm以上が好ましく、20μm以上の厚みを持つ離型層を作成する場合は、上述のプライマーを介して塗布・焼成する方法が最も適している。また、上述の定着ベルト45は、フィルム基体451と弾性層452と離型層453の3層構造であるが、フィルム基体451と離型層453の2層構造であっても良い。
以下、本発明に関わるトナーについて詳述する。
本発明に用いるトナーは、少なくとも2種類以上の樹脂微粒子が、トナー表面に付着している。樹脂微粒子としては、水系媒体中で水性分散体を形成しうる樹脂であれば特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができ、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂でもよく、例えば、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂、などが挙げられる。
これらは、2種以上を併用するが、1種単独であっても分子量分布が異なる樹脂微粒子であれば使用してもよい。これらの中でも、微細な球状の樹脂粒子の水性分散体が得られ易い点で、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂から選択される少なくとも一種で形成されているのが好ましい。なお、ビニル樹脂は、ビニルモノマーを単独重合又は共重合したポリマーであり、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。
本発明における樹脂微粒子におけるテトラヒドロフラン可溶分の分子量分布における最も重量平均分子量の大きい樹脂微粒子Aは、テトラヒドロフラン可溶成分の分子量分布におけるその重量平均分子量は通常100,000乃至6,000,000、好ましくは300,000乃至3,000,000、さらに好ましくは500,000乃至1,000,000である。分子量6,000,000以上の成分が増えると、耐ホットオフセット性が低下傾向になる。一方、最も重量平均分子量の小さい樹脂微粒子Bのテトラヒドロフラン可溶成分の分子量分布におけるその重量平均分子量は、通常8,000乃至800,000、好ましくは50,000乃至600,000、さらに好ましくは100,000乃至400,000である。分子量8000未満の成分の量が増えると耐熱保存性が悪化する傾向となるが、バランスコントロールでその悪化を極力押さえることも可能である。しかし、例えば、分子量が8,000乃至6,000,000の広い分子量分布を有する樹脂微粒子を製造するのは困難である。また、広い分子量分布を有する樹脂微粒子単独では、いわゆるブロッキングを生じない耐熱保存性と、かつ、充分な定着温度範囲を確保する定着性とを両方満足することは困難である。むしろ、耐熱保存性は分子量の小さいものが少なくとも他の分子まで巻き付いてブロッキングし、定着性に関しては、同様に、分子量の大きい分子が短時間に定着可能な温度になるのが困難で、分子量の小さい分子だけでは記録部材の定着が難しい。したがって、本発明のように分子量分布の異なる樹脂微粒子を2種類以上にすることで、耐熱保存性と定着性の両方を満足させることができる。
本発明における樹脂微粒子成分の分子量分布は、例えば、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)により以下のようにして測定される。40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させ、この温度におけるカラム溶媒としてテトラヒドロフランを毎分1mlの流速で流し、試料濃度として0.05乃至0.6質量%に調整した樹脂のテトラヒドロフラン試料溶液を50乃至200μl注入して測定操作を行う。
試料の分子量測定に当たっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、Pressure Chemical Co.あるいは東洋ソーダ工業社製の分子量が6×102、2.1×102、4×102、1.75×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いる。また、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。
本発明においては、樹脂微粒子Aと樹脂微粒子Bの重量比(A:B)は、10:90乃至50:50であることが好ましく、より好ましくは、20:80乃至40:60である。樹脂微粒子Aの重量比が上記範囲より大きい場合には、低温定着性、および定着面の平滑性が低下する傾向があり、一方、樹脂微粒子Aの配合重量比が上記範囲より小さい場合には、耐オフセット性が悪化する傾向がある。
また、樹脂微粒子Aと樹脂微粒子Bを上記のような配合重量比にて配合する事により、トナー表面の耐オフセット性を保持できる適切な量の微粒子をトナー表面上に残すことができ、さらに低温定着性、耐熱保存性に優れた静電像現像用トナーが得られる。
本発明トナーにおける樹脂微粒子は、後述するトナー形状(円形度、粒度分布など)を制御するために、製造工程で添加されるが、樹脂微粒子の体積平均粒径が20乃至400nmであることが好ましく、30乃至350nmがより好ましい。樹脂微粒子の体積平均粒径が20nm未満であると、トナー表面上に残存する樹脂微粒子が皮膜化またはトナー表面全体を密に覆ってしまうことがあり、樹脂微粒子がトナー内部の樹脂成分と定着紙との接着性を阻害し、定着下限温度が上昇してしまうことがあり、400nmを超えると、樹脂微粒子がワックス成分のしみ出しを阻害し、離型性効果が十分得られず、オフセットが発生することがある。樹脂微粒子の体積平均粒径は、例えば、レーザー光散乱法を用いた粒径分布測定装置(「LA−920」;堀場製作所社製)などを用いて測定することができる。
本発明における樹脂微粒子のガラス転移点は25℃乃至150℃であるのが好ましく、より好ましくは30乃至120℃である。ガラス転移点の温度がこの範囲外の場合には、樹脂微粒子のそれぞれの優れた特性の発現が抑制され、その結果、耐オフセット性、低温定着性、耐熱保存性の何れかの特性が不十分となる場合がある。本発明におけるガラス転移点は島津製作所製示差走査熱量計DSC−60を用いて、10℃/分で室温から200℃まで昇温した後、降温速度10℃/分で室温まで冷却した後、昇温速度10℃/分で測定した際に、ガラス転移点以下のベースラインとガラス転移点以上のベースラインの高さhが1/2に相当する曲線をガラス転移点とした。
樹脂微粒子のトナーにおける残存量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5乃至8.0質量%が好ましく、0.6乃至7.0質量%がより好ましい。残存量が0.5質量%未満であると、トナーの保存性が悪化してしまい、保管時乃至使用時にブロッキングの発生が見られることがあり、残存量が8.0質量%を超えると、樹脂微粒子がワックスのしみ出しを阻害し、ワックスの離型性効果が得られず、オフセット発生することがある。樹脂微粒子のトナーにおける残存量は、各種方法により測定することができ、樹脂微粒子にのみ起因する物質乃至官能基等を、例えば、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計などを用いて分析することにより、そのピーク面積から算出することができる。検出器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、質量分析計が好適である。
樹脂微粒子のトナー被覆率としては、75%乃至100%が好ましく、80乃至100%がより好ましい。トナー被覆率が、75%未満であると、トナーの保存性が悪化してしまい、保管時乃至使用時にブロッキングを発生してしまうことがある。トナー被覆率は、例えば、トナー表面の電子顕微鏡写真を画像解析装置により測定し、トナー表面に対する樹脂微粒子の被覆率として測定することができる。
これらの樹脂微粒子の製造方法について説明する。樹脂微粒子は、目的に応じて適宜選択した公知の方法に従って重合させることにより得ることができるが、樹脂微粒子の水性分散体として得るのが好ましい。
樹脂微粒子の水性分散体の調製方法としては、例えば、(1)ビニル樹脂の場合、ビニルモノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法及び分散重合法から選択されるいずれかの重合反応により、直接、樹脂微粒子の水性分散液を製造する方法、(2)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加乃至縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液を適当な分散剤存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱、又は硬化剤を添加して硬化させて、樹脂微粒子の水性分散体を製造する方法、(3)ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の重付加乃至縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー、オリゴマー等)又はその溶剤溶液(液体であることが好ましい。加熱により液状化しても良い)中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法、(4)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を機械回転式又はジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで、分級することによって樹脂微粒子を得た後、適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法、(5)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であっても良い)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を霧状に噴霧することにより樹脂微粒子を得た後、樹脂微粒子を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法、(6)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であっても良い)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に貧溶剤を添加するか、又は予め溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂微粒子を析出させ、次に溶剤を除去して樹脂微粒子を得た後、樹脂微粒子を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法、(7)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であっても良い)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱又は減圧等によって溶剤を除去する方法、(8)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であっても良い)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法、などが好適に挙げられる。
本発明のトナーは、BET比表面積としては0.5乃至8.0m2/gが好ましく、0.5乃至7.5m2/gがより好ましい。
BET比表面積が0.5m2/g未満であると、トナー表面上に残存する樹脂微粒子が皮膜化又はトナー表面全体を密に覆う状態となり、樹脂微粒子がトナー内部の樹脂成分と定着紙との接着性を阻害し、定着下限温度の上昇が見られることがある一方、7.5m2/gを超えると、樹脂微粒子がワックスのしみ出しを阻害し、離型性効果が十分得られず、オフセットの発生が見られることがある。
トナーの比表面積は、BET法に従って測定することができ、例えば、比表面積測定装置トライスター3000(島津製作所製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて測定することができる。
また、本発明のトナーは、体積平均粒径としては、3乃至8μmが好ましい。体積平均粒径が、3μm未満であると、二成分現像剤では現像装置における長期の攪拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させることがあり、また一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するため、ブレード等への部材へのトナーの融着が発生し易くなることがあり、8μmを超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。
また、トナーにおける体積平均粒径と個数平均粒径との比(体積平均粒径/個数平均粒径)としては、1.00乃至1.25が好ましく、1.10乃至1.25がより好ましい。体積平均粒径と個数平均粒径との比(体積平均粒径/個数平均粒径)が1.00未満であると、二成分現像剤では現像装置における長期の攪拌においてキャリアの表面にトナーが融着し、キャリアの帯電能力を低下させることがあり、また、一成分現像剤では、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するため、ブレード等への部材へのトナーの融着が発生し易くなることがあり、1.25を超えると、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなり、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒子径の変動が大きくなることがある。体積平均粒径及び体積平均粒径と個数平均粒径との比(体積平均粒径/個数平均粒径)は、例えば、粒度測定器マルチサイザ−II(ベックマン・コールター社製)を用いて測定することができる。
また、平均円形度は、トナーの形状と投影面積の等しい相当円の周囲長を実在粒子の周囲長で除した値であり、例えば、0.90乃至1.00が好ましく、0.910乃至0.995がより好ましい。なお、平均円形度が0.90未満の粒子が30%以下であることが好ましい。平均円形度が、0.90未満であると、満足できる転写性やチリのない高画質画像が得られないことがあり、0.995を超えると、ブレードクリーニングなどを採用している画像形成システムでは、感光体上及び転写ベルトなどのクリーニング不良が発生し、画像上の汚れ、例えば、写真画像等の画像面積率の高い画像形成の場合において、給紙不良等で未転写の画像を形成したトナーが感光体上に転写残トナーとなって蓄積した画像の地汚れが発生してしまうことがあり、あるいは、感光体を接触帯電させる帯電ローラ等を汚染してしまい、本来の帯電能力を発揮できなくなってしまうことがある。平均円形度は、例えば、トナー粒子を含む懸濁液を平板上の画像部検知帯に通過させ、CCDカメラで光学的に粒子画像を検知し、解析する光学的検知帯の手法などにより計測することができ、例えば、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100(シスメックス社製)等を用いて計測することができる。
ここで、トナーの製造方法について説明する。本発明に用いる水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノールなど)、テトラヒドロフラン、低級ケトン類(アセトンなど)、エステル系溶剤(酢酸エチルなど)などが挙げられる。
トナー組成物である(以下トナー原料と呼ぶ)着色剤、着色剤マスターバッチ、荷電制御剤、結着樹脂などは、水系媒体中で分散体を形成させる際に混合してもよいが、あらかじめトナー原料を混合した後、水系媒体中にその混合物を加えて分散させたほうがより好ましい。また、本発明においては、着色剤、荷電制御剤などの他のトナー原料は、必ずしも、水系媒体中で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後、添加してもよい。たとえば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。分散体の粒径を2乃至20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000乃至30000rpm、好ましくは5000乃至20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1乃至300分である。分散時の温度としては、通常、0乃至150℃(加圧下)、好ましくは40乃至98℃である。
トナー組成物100部に対する水系媒体の使用量は、通常50乃至2000重量部、好ましくは100乃至1000重量部である。50重量部未満ではトナー組成物の分散状態が悪く、所定の粒径のトナーが得られない。20000重量部を超えると経済的でない。また、樹脂微粒子の他に、必要に応じて、分散剤を用いることもできる。分散剤を用いたほうが、粒度分布がシャープになるとともに分散が安定である点で好ましい。
トナー組成物が分散された油相を水系媒体中に乳化、分散するための分散剤として、樹脂微粒子と共にアルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどの陰イオン界面活性荊、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの四級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
またフルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果を挙げることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2乃至10のフルオロアルキルカルボン酸及ぴその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[オメガーフルオロアルキル(C6乃至C11)オキシ]−1−アルキル(C3乃至C4)スルホン酸ナトリウム、3−[オメガーフルオロアルカノイル(C6乃至C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11乃至C20)カルボン酸及ぴ金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7乃至C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4乃至C12)スルホン酸及ぴその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6乃至C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6乃至C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6乃至C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。
商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC―98、FC−l29(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−l02、(ダイキン工業社製)、メガファックF−ll0、F−l20、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、l03、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
また、カチオン界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級、二級もしくは二級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6乃至C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−l21(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキンエ業社製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−l32(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。また、水に難溶の無機化合物分散剤としてリン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトなども用いることができる。
また、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β一ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエ一テル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ピニル、プロピオン酸ピニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ピニルビリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
なお、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
さらに、トナー組成物を含む油相の粘度を低くするために、トナー組成物が可溶、または分散可能な溶剤を使用することもできる。溶剤を用いた場合、粒度分布がシャープになる点で好ましい。溶剤は沸点が100℃未満の揮発性であることで除去が容易である点から好ましい。溶剤としては、例えば、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフランなどを単独あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。特に、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトンが好ましい。
得られた乳化分散体から未反応の重合性単量体、及び有機溶媒を除去するためには、常圧下、または減圧下にて系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法が好ましいが、乳化分散体を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の非水溶性有機溶媒を完全に除去してトナー微粒子を形成し、合せて水系分散剤を蒸発除去することも可能である。乳化分散体が噴霧される乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等を加熱した気体、特に使用される最高沸点溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレイドライアー、ベルトドライアー、ロータリーキルンなどの短時間の処理で十分に目的とする品質が得られる。
得られた乾燥後のトナーの粉体と離型剤微粒子、帯電制御性微粒子、流動化剤微粒子、着色剤微粒子などの異種粒子とともに混合したり、混合粉体に機械的衝撃力を与えることによって表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの異種粒子の脱離を防止することができる。
具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢などがあげられる。
また、本発明のトナーの製造に用いられる材料について、さらに詳細に説明する。
有機溶媒としてトナー組成物を溶解、及び/又は分散可能な溶媒で有れば特に限定するものではない。好ましいものとしては、溶剤の沸点が150℃未満の揮発性であることで除去が容易である点から好ましい。溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフランなどを単独あるいは2種以上組み合せて用いることができる。トナー組成物100部に対する溶剤の使用量は、通常40乃至300部、好ましくは60乃至140部、さらに好ましくは80乃至120部である。
また、本発明において、結着樹脂として、活性水素と反応可能な変性ポリエステル系樹脂としてイソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーを用いることが出来る。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)としては、ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の重縮合物でかつ活性水素基を有するポリエステルをさらにポリイソシアネート(3)と反応させた物などが挙げられる。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基およびフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
ポリオール(1)としては、ジオール(1−1)および3価以上のポリオール(1−2)が挙げられ、(1−1)単独、または(1−1)と少量の(1−2)の混合物が好ましい。ジオール(1−1)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2乃至12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2乃至12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上のポリオール(1−2)としては、3乃至8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
ポリカルボン酸(2)としては、ジカルボン酸(2−1)および3価以上のポリカルボン酸(2−2)が挙げられ、(2−1)単独、および(2−1)と少量の(2−2)の混合物が好ましい。ジカルボン酸(2−1)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4乃至20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8乃至20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上のポリカルボン酸(2−2)としては、炭素数9乃至20の芳香族ポリカルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、ポリカルボン酸(2)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてポリオール(1)と反応させてもよい。ポリオール(1)とポリカルボン酸(2)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1乃至1/1、好ましくは1.5/1乃至1/1、さらに好ましくは1.3/1乃至1.02/1である。
ポリイソシアネート(3)としては、脂肪族ポリイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアヌレート類;ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
ポリイソシアネート(3)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1乃至1/1、好ましくは4/1乃至1.2/1、さらに好ましくは2.5/1乃至1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、変性ポリエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のポリイソシアネート(3)構成成分の含有量は、通常0.5乃至40質量%、好ましくは1乃至30質量%、さらに好ましくは2乃至20質量%である。0.5質量%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40質量%を超えると低温定着性が悪化する。
イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有するイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5乃至3個、さらに好ましくは、平均1.8乃至2.5個である。1分子当たり1個未満では、架橋及び/又は伸長後の変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
また、本発明において、架橋剤及び/又は伸長剤として、アミン類を用いることができる。アミン類(B)としては、ジアミン(B1)、3価以上のポリアミン(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1乃至B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。ジアミン(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上のポリアミン(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1乃至B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、B1乃至B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
さらに、必要により架橋及び/又伸長は停止剤を用いて反応終了後の変性ポリエステルの分子量を調整することができる。停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]として、通常1/2乃至2/1、好ましくは1.5/1乃至1/1.5、さらに好ましくは1.2/1乃至1/1.2である。[NCO]/[NHx]が2より大きい又は1/2未満では、ウレア変性ポリエステル(i)の分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
また、本発明においては、変性されたポリエステル(A)単独使用だけでなく、この(A)と共に、変性されていないポリエステル(C)をトナーバインダー成分として含有させることが重要である。(C)を併用することで、低温定着性およびフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上する。(C)としては、(A)のポリエステル成分と同様なポリオール(1)とポリカルボン酸(2)との重縮合物などが挙げられ、好ましいものも(C)と同様である。また、(C)は無変性のポリエステルだけでなく、ウレア結合以外の化学結合で変性されているものでもよく、例えばウレタン結合で変性されていてもよい。(A)と(C)は少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、(A)のポリエステル成分と(C)は類似の組成が好ましい。(A)を含有させる場合の(A)と(C)の重量比は、通常5/95乃至75/25、好ましくは10/90乃至25/75、さらに好ましくは12/88乃至25/75、特に好ましくは12/88乃至22/78である。(A)の重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
(C)のガラス転移点は通常30乃至50℃、好ましくは35乃至45℃である。30℃未満ではトナーの耐熱保存性が悪化し、50℃を超えると低温定着性が不十分となる。ピーク分子量は、通常1000乃至30000、好ましくは1500乃至10000、さらに好ましくは2000乃至8000である。1000未満では耐熱保存性が悪化し、10000を超えると低温定着性が悪化する。(C)の水酸基価は5以上であることが好ましく、さらに好ましくは10乃至120、特に好ましくは20乃至80である。5未満では耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。(C)の酸価は通常0乃至40、好ましくは0乃至30である。酸価を持たせることで負帯電性となりやすい傾向がある。また、酸価及び水酸基価がそれぞれこの範囲を越えるものは高温高湿度下、低温低湿度下の環境下において、環境の影響を受けやすく、画像の劣化を招きやすい。
また、本発明の着色剤としては、特に制限はなく、公知の染料及び顔料の中から目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。着色剤のトナーにおける含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1乃至15質量%が好ましく、3乃至10質量%がより好ましい。含有量が、1質量%未満、又は15質量%を超えると、画像濃度が不足又は過剰となり、良好な画質が得られないことがある。
また、着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、スチレン及びその置換体の重合体、スチレン系共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族叉は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。スチレン又はその置換体の重合体としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン、などが挙げられる。スチレン共重合体としては、例えば、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体、などが挙げられる。マスターバッチは、マスターバッチ用樹脂と、着色剤とを高せん断力をかけて混合又は混練させて製造することができる。この際、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を添加することができる。また、いわゆるフラッシング法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができ、乾燥する必要がない点で好適である。このフラッシング法は、着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合又は混練し、着色剤を樹脂側に移行させて、水分及び有機溶剤成分を除去する方法である。混合又は混練には、例えば、三本ロールミル等の高せん断分散装置が好適に用いられる。
また、本発明においてトナーに使用される離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、ワックス類、などが好適に挙げられる。ワックス類としては、例えば、カルボニル基含有ワックス、ポリオレフィンワックス、長鎖炭化水素、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、カルボニル基含有ワックスが好ましい。カルボニル基含有ワックスとしては、例えば、ポリアルカン酸エステル、ポリアルカノールエステル、ポリアルカン酸アミド、ポリアルキルアミド、ジアルキルケトン、などが挙げられる。ポリアルカン酸エステルとしては、例えば、カルナウバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート等が挙げられる。ポリアルカノールエステルとしては、例えば、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエート等が挙げられる。ポリアルカン酸アミドとしては、例えば、トリメリット酸トリステアリルアミド等が挙げられる。ジアルキルケトンとしては、例えば、ジステアリルケトン等が挙げられる。これらカルボニル基含有ワックスの中でも、ポリアルカン酸エステルが特に好ましい。ポリオレフィンワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等が挙げられる。長鎖炭化水素としては、例えば、パラフィンワックス、サゾ−ルワックス等が挙げられる。離型剤のトナーにおける含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0乃至40質量%が好ましく、3乃至30質量%がより好ましい。含有量が、40質量%を超えると、トナーの流動性が悪化することがある。
本発明のトナーは、必要に応じて帯電制御剤、流動性改良剤などを配合することも可能である。
帯電制御剤としては公知のものが全て使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カ一リット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。本発明において荷電制御剤の使用量は、特に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1乃至10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2乃至5重量部の範囲がよい。10重量部を越える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。これらの帯電制御剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させる事もできるし、もちろん有機溶剤に直接溶解、分散する際に加えても良いし、トナー表面にトナー作成後固定化させてもよい。
また、トナー粒子の製造に用いられるわけではないが、製造されたトナー粒子に対して、流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。この無機微粒子の一次粒子径は、5nm乃至2000nmであることが好ましく、特に5nm乃至500nmであることが好ましい。また、BET法による比表面積は、20乃至500m2/gであることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01乃至5質量%であることが好ましく、特に0.01乃至2.0質量%であることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01乃至5質量%であることが好ましく、特に0.01乃至2.0質量%であることが好ましい.無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。この他、高分子系微粒子たとえばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
このような外添剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
また、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
また、本発明のトナーを2成分系現像剤に用いる場合には、磁性キャリアと混合して用いれば良く、現像剤中のキャリアとトナーの含有比は、キャリア100重量部に対してトナー1乃至10重量部が好ましい。磁性キャリアとしては、粒子径20乃至200μm程度の鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉、磁性樹脂キャリアなど従来から公知のものが使用できる。また、被覆材料としては、アミノ系樹脂、例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等があげられる。またポリビニルおよびポリビニリデン系樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂およびスチレンアクリル共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ弗化ビニル樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、弗化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと弗化ビニリデンと非弗化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、およびシリコーン樹脂等が使用できる。また必要に応じて、導電粉等を被覆樹脂中に含有させてもよい。導電粉としては、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等が使用できる。これらの導電粉は、平均粒径1μm以下のものが好ましい。平均粒径が1μmよりも大きくなると、電気抵抗の制御が困難になる。また、本発明のトナーはキャリアを使用しない1成分系の磁性トナー或いは、非磁性トナーとしても用いることができる。
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
有機微粒子エマルションの合成
(製造例1)
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)11部、スチレン79部、メタクリル酸79部、アクリル酸ブチル105部、ジビニルベンゼン13部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌し、白色の乳濁液を得た。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液1]を得た。[微粒子分散液1]をLA−920で測定した体積平均粒径は、105nmであった。[微粒子分散液1]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。樹脂分のガラス転移点(Tg)は95℃、数平均分子量140000、重量平均分子量980000であった。
(製造例2)
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)11部、スチレン83部、メタクリル酸83部、アクリル酸ブチル110部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌し、白色の乳濁液を得た。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液2]を得た。[微粒子分散液2]をLA−920で測定した体積平均粒径は、100nmであった。[微粒子分散液2]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。樹脂分のTgは80℃、数平均分子量17000、重量平均分子量100000であった。
低分子ポリエステルの合成
(製造例3)
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物220部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物561部、テレフタル酸218部、アジピン酸48部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧230℃で8時間反応し、さらに10乃至15mmHgの減圧で5時聞反応した後、反応容器に無水トリメリット酸45部を入れ、180℃、常圧で2時間反応し、[低分子ポリエステル1]を得た。[低分子ポリエステル1]は、数平均分子量2500、重量平均分子量6700、Tg43℃、酸価25であった。
プレポリマーの合成
(製造例4)
冷却管、撹拌機および窒索導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧230℃で8時間反応し、さらに10乃至15mmHgの減圧で5時間反応した[中間体ポリエステル1]を得た。[中間体ポリエステル1]は、数平均分子量2100、重量平均分子量9500、Tg55℃、酸価0.5、水酸基価49であった。次に、冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル1]411部、イソホロンジイソシアネート89部、酢酸エチル500部を入れ100℃で5時間反応し、[プレポリマー1]を得た。[プレポリマー1]の遊離イソシアネート質量%は、1.53%であった。
ケチミンの合成
(製造例5)
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、イソホロンジアミン170部とメチルエチルケトン75部を仕込み、50℃で5時間反応を行い、[ケチミン化合物1]を得た。[ケチミン化合物1]のアミン価は418であった。
マスターバッチの合成
(製造例6)
カーボンブラック(キャボット社製 リーガル400R):40部、結着樹脂:ポリエステル樹脂(三洋化成RS−801 酸価10、重量平均分子量20000、Tg64℃):60部、水:30部をヘンシェルミキサーにて混合し、顔料凝集体中に水が染み込んだ混合物を得た。これをロ−ル表面温度130℃に設定した2本ロールにより45分間混練を行い、パルペライザー(ホソカワミクロン社製)で1mmφの大きさに粉砕し、[マスターバッチ1]を得た。
油相の作成
(製造例7)
撹拌棒および温度計をセットした容器に、[低分子ポリエステル1]378部、カルナウバワックス110部、CCA(サリチル酸金属錯体E−84:オリエント化学工業)22部、酢酸エチル947部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次いで容器に[マスターバッチ1]500部、酢酸エチル500部を仕込み、1時間混合し[原料溶解液1]を得た。[原料溶解液1]1324部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、カーボンブラック、ワックスの分散を行った。次いで、[低分子ポリエステル1]の65%酢酸エチル溶液1324部加え、上記条件のビーズミルで1パスし、[顔料・ワックス分散液1]を得た。[顔料・ワックス分散液1]の固形分濃度(130℃、30分)は50%であった。
油相混合液の作成
(製造例8)
[顔料・ワックス分散液1]648部、[プレポリマー1]を154部、[ケチミン化合物1]6.6部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化製)で5000rpmで1分間混合し[油相混合液1]を得た。
乳化から脱溶剤
(製造例9)
水990部、[微粒子分散液1]8部、[微粒子分散液2]72部、ドデシルジフェニルェーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5%水溶液(エレミノールMON−7):三洋化成工業製)40部、酢酸エチル90部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化製)において3000rpmで1分間混合した後、容器に[油相混合液1]809部を加え、TKホモミキサーで、回転数13000rpmで20分間混合し[乳化スラリー1]を得た。撹拌機および温度計をセットした容器に、[乳化スラリー1]を投入し、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で4時間熟成を行い、[分散スラリー1]を得た。
洗浄から乾燥
(製造例10)
[乳化スラリー1]100部を減圧濾過した後、(1)濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12000rpmで10分間)した後濾過する操作を3回行い[濾過ケーキ1]を得た。(2)[濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、体積平均粒径Dv5.30μm、個数平均粒径Dn4.65μm、Dv/Dn1.14(マルチサイザーIIで測定)、樹脂微粒子残存率3.8質量%の[トナー1]を得た。
有機微粒子エマルションの合成
(製造例11)
製造例1でのジビニルベンゼンを1,6−ヘキサンジオールジアクリレート10部にした以外は製造例1と同様にして水性分散液[微粒子分散液3]を得た。[微粒子分散液3]をLA−920で測定した体積平均粒径は、100nmであった。[微粒子分散液3]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。樹脂分のTgは100℃、数平均分子量1670000、重量平均分子量1000000であった。
(製造例12)
製造例10での[微粒子分散液1]を[微粒子分散液3]にした以外は製造例10と同様にして体積平均粒径Dv5.03μm、個数平均粒径Dn4.52μm、Dv/Dn1.11、樹脂微粒子残存率4.3質量%の[トナー2]を得た。
(製造例13)
製造例10での[微粒子分散液1]の部数を40部、[微粒子分散液2]の部数を40部にした以外は製造例10と同様にして体積平均粒径Dv5.07μm、個数平均粒径Dn4.50μm、Dv/Dn1.13、樹脂微粒子残存率4.1質量%の[トナー3]を得た。
有機微粒子エマルションの合成
(製造例14)
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)8部、スチレン79部、メタクリル酸79部、アクリル酸ブチル105部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート13部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌し、白色の乳濁液を得た。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液34部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液4]を得た。[微粒子分散液4]をLA−920で測定した体積平均粒径は、200nmであった。[微粒子分散液4]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。樹脂分のTgは107℃、数平均分子量220000、重量平均分子量1100000であった。
(製造例15)
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)8部、スチレン82部、メタクリル酸82部、アクリル酸ブチル109部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌し、白色の乳濁液を得た。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液36部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液5]を得た。[微粒子分散液5]をLA−920で測定した体積平均粒径は、350nmであった。[微粒子分散液5]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。樹脂分のTgは78℃、数平均分子量15700、重量平均分子量110000であった。
(製造例16)
製造例10での[微粒子分散液1]の代わりに[微粒子分散液4]を32部、[微粒子分散液2]の代わりに[微粒子分散液5]を48部使用した以外は製造例10と同様にして体積平均粒径Dv4.80μm、個数平均粒径Dn4.17μm、Dv/Dn1.15、樹脂微粒子残存率4.5質量%の[トナー4]を得た。
有機微粒子エマルションの合成
(製造例17)
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)3部、スチレン71部、メタクリル酸71部、アクリル酸ブチル98部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート20部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌し、白色の乳濁液を得た。加熱して、系内温度75℃まで昇温し5時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液60部加え、75℃で5時間熟成してビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液6]を得た。[微粒子分散液6]をLA−920で測定した重量平均粒径は、600nmであった。[微粒子分散液6]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。樹脂分のTgは155℃、数平均分子量900000、重量平均分子量7200000であった。
(製造例18)
製造例10での[微粒子分散液1]の代わりに[微粒子分散液6]を56部、[微粒子分散液2]の代わりに[微粒子分散液5]を24部使用した以外は製造例10と同様にして重量平均粒径Dv8.40μm、個数平均粒径Dn6.40μm、Dv/Dn1.31、樹脂微粒子残存率0.3質量%の[トナー5]を得た。
使用した微粒子分散液を表1に示す。
本発明における定着ベルトは以下のようにして作製した。
ポリイミドからなる厚さ90μmの円筒状のエンドレスフィルム基体の外周に,プライマー(東レ・ダウコーニングシリコーン社製DY39−067)をスプレーコートにて厚さ4μmで成膜し,室温乾燥した。その後,2液付加型液状シリコーンゴム(東レ・ダウコーニングシリコーン社製DY35−2083)を2液混合後に,トルエンにて適量希釈し、スプレーコートにて厚さ200μmで塗布、120℃10分硬化後、さらに200℃4時間2次硬化して弾性層を形成した。
ついでプライマー(三井・デュポンフロロケミカル社製PR−990CL)を4μm厚でスプレーコートした後、150℃30分乾燥した。
その後、表1の内容で,一般のPFAよりもパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合比の高いPFA(表中、PFA分子鎖中の酸素:炭素原子数で示し、酸素の比率が高いほどパーフルオロアルキルビニルエーテル比が高い)と一般の汎用PFA、またMFRの異なる(MFRが小さいほど流動性は悪い)PFAでディスパージョンを調合した。
一般に、PFA粒子を水などの液体媒体中に分散した塗料(ディスパージョン)は、平均粒子径が1μm以下のPFA粒子を使用しているため粒子間の凝集力が弱く、1回の成膜で20μm以上の膜厚をコーティングするとクラックを生じる不具合があり、また静電塗装で用いられるような平均粒子径5μm以上の大粒子径のものでは沈降・凝集が早く、生産性に問題があることから、小粒子径のものと大粒子径を組み合わせて(混合して)用いる方法が公知である。
本発明では表1の組み合わせでディスパージョンを調合しPFAディスパージョンを30μm厚でスプレーコートし、その後340℃で30分間焼成することで、[ベルト1]乃至[ベルト7]の定着ベルトを得た。
用いたPFAは以下のとおり。
A:三井・デュポンフロロケミカル社製 950HP Plus
B:三井・デュポンフロロケミカル社製 945HP Plus
C:三井・デュポンフロロケミカル社製 940HP Plus
D:三井・デュポンフロロケミカル社製 350−J
E:三井・デュポンフロロケミカル社製 340−J
MFRはJIS-K7210 372℃,5kgf荷重での測定値
<実施例1>
製造例10により得られた[トナー1]100部、疎水性シリカ0.9部、疎水化酸化チタン0.5部をヘンシェルミキサーにて混合、外添処理を行った。外添処理したトナー5重量%とシリコーン樹脂を被覆した平均粒子径が50μmの銅−亜鉛フェライトキャリア95重量%からなる現像剤を調製した。[ベルト1]を定着装置に組み込み、A4サイズの用紙を連続印刷して、下記の基準で評価し、表4に示した。
(評価項目)
(a)粒径
トナーの粒径は、ベックマン・コールター社製の粒度測定器「マルチサイザーII」を用い、アパーチャー径100μmで測定した。体積平均粒径および個数平均粒径は上記粒度測定器により求めた。
(b)円形度
フロー式粒子像分析装置FPIA−2100(シスメックス社製)により平均円形度として計測できる。具体的な測定方法としては、容器中の予め不純固形物を除去した水100乃至150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスフォン酸塩を0.1乃至0.5ml加え、さらに測定試料を0.1乃至0.5g程度加える。試料を分散した懸濁液は超音波分散器(本多電子社製)で約1乃至3分間分散処理を行い、分散液濃度を3000乃至1万個/μlとして装置によりトナーの形状及び分布を測定することによって得た。
(c)脂微粒子被覆率の測定方法
まず、5万倍の倍率のトナー表面の電子顕微鏡写真を数視野撮る。その中から、なるべく傾きや亀裂のない表面を選び、ルーゼックスIII画像解析装置(ニレコ社製)で、トナー表面に対する樹脂微粒子の被覆率を測定した。
(d)樹脂微粒子残存率の測定方法
トナー中のスチレンアクリル樹脂微粒子の熱分解生成物であるスチレンモノマーを指紋成分として、下記条件で、トナーへスチレンアクリル樹脂微粒子を0.01質量%、0.10質量%、1.00質量%、3.00質量%、10.0質量%添加する標準添加法を用いて、トナー表面に偏在する樹脂微粒子をスチレンモノマーのピーク面積で算出し測定した。
分析機器:熱分解ガスクロマトグラフ(質量分析)計
装置:島津製作所 QR−5000
日本分析工業JHP−3S
熱分解温度:590℃×12秒
カラム:DB−1 L=30m I.D=0.25mm Film=0.25μm
カラム温度:40℃(保持2分)乃至(10℃/分昇温)300℃
気化室温度:300℃
(e)BET比表面積の測定方法
BET法に従い、比表面積測定装置トライスター3000(島津製作所製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて測定した。
(f)定着下限温度の測定
上記ベルト定着器を備えた装置を用い、画像はリコー製カラー複写機プリテール550を用い、これにリコー製のタイプ6200紙をセットし複写テストを行った。定着画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ロール温度をもって定着下限温度とした。
(g)オフセット未発生温度範囲の測定
リコー製カラー複写機プリテール550を用いて、転写紙(リコー製タイプ6000−70W)に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの単色及び中間色として、レッド、ブルー、グリーンから成るベタ画像を単色で、1.0±0.1mg/cm2のトナーが現像される様に調整を行い、図1に示したベルト定着装置(記載条件のもの)にて、定着ベルトの温度が可変となる様に調整を行なって、オフセットの発生しない温度を測定した。
(h)耐屈曲性
300,000枚の出力後に離型層のクラックのないものを○、異常画像にならないレベルの軽微なクラックのあるものを△、異常画像になるレベルのクラックが出たものを×で評価した。
(i)耐磨耗性
300,000枚の出力後にサーミスタの接触部分に異常画像のないものを○、異常画像になるレベルで摩耗したものを×で評価した。
(j)表面平滑性
出力した定着画像において、光沢ムラのないものを○、軽微な光沢ムラの出ているものを△、光沢ムラが顕著なものを×で評価した。
<実施例2>
実施例1での[トナー1]の代わりに[トナー2]を用いた以外は実施例1と同様にして評価を行った。
<実施例3>
実施例1での[トナー1]の代わりに[トナー2]を、[ベルト1]の代わりに[ベルト2]を用いた以外は実施例1と同様にして評価を行った。
<実施例4>
実施例1での[トナー1]の代わりに[トナー2]を、[ベルト1]の代わりに[ベルト3]を用いた以外は実施例1と同様にして評価を行った。
<実施例5>
実施例1での[トナー1]の代わりに[トナー3]を、[ベルト1]の代わりに[ベルト4]を用いた以外は実施例1と同様にして評価を行った。
<実施例6>
実施例1での[トナー1]の代わりに[トナー4]を、[ベルト1]の代わりに[ベルト5]を用いた以外は実施例1と同様にして評価を行った。
<比較例1>
実施例1での[トナー1]の代わりに[トナー5]を、[ベルト1]の代わりに[ベルト6]を用いた以外は実施例1と同様にして評価を行った。
<比較例2>
実施例1での[トナー1]の代わりに[トナー5]を、[ベルト1]の代わりに[ベルト7]を用いた以外は実施例1と同様にして評価を行った。
評価結果を表4に示す。
表4から明らかなように、実施例1から6で用いたトナーは、いずれも定着下限が低く、かつ、オフセット発生温度が高く、定着性が良く定着温度幅の広いトナーが得られた。また、比較例1及び比較例2で用いたトナーは、定着下限温度が実施例1から6で用いたトナーより高く低温定着性に優れず、また定着温度幅の狭いトナーであった。
また、定着ベルトにおいて、PFA分子鎖中の酸素原子数(O)が炭素原子(C)の比で多い,つまりパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合比が高いPFAで良好な耐屈曲性と耐摩耗性が得られた。これは,パーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合比が大きいほうが,PFAの結晶化が抑制されることによるものである。
同様にパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合比が大きいほうが良好な表面の平滑性が得られているのも、同様にPFAの結晶化が抑制されることにより、結晶サイズの影響が表面の平滑性に影響しにくいためである。
また結果から、MFRが小さい,つまり分子量が大きいPFAを用いることで耐屈曲性、耐摩耗性が向上することがわかる。しかし焼成時の流動性に乏しいため,表面の平滑性が得られずに光沢ムラが発生する。
本発明の実施例においては,耐屈曲性、耐摩耗性に寄与するMFRの小さいPFAと、表面の平滑性に寄与する流動性が大きい、つまりMFRの大きいPFAとを混合することで、耐久性と表面の平滑性を両立させることができる。
また焼成時には、ディスパージョンの粒子径が小さいものが表面のレベリングへの寄与が大きく、MFRの小さいPFAの粒子径>MFRの大きいPFAの粒子径とすることでより平滑な表面を得ることができる。
以上のように、実施例に示す画像形成方法により、極めて安定した良好な画像品質画像を長期にわたって得ることができる。
以上、本発明の実施例を具体的に説明してきたが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、これら本発明の実施例を、本発明の主旨及び範囲を逸脱することなく、変更又は変形することができる。