JP4029501B2 - プラズマディスプレイ用基板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマディスプレイ用基板の製造方法に関する。詳しくは、パターン焼成後の基板の収縮量が極めて少ないプラズマディスプレイ用基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、大型ディスプレイとしてプラズマディスプレイが注目されている。プラズマディスプレイは、液晶パネルに比べて高速の表示が可能であり、且つ大型化が容易であることから、OA機器および広報表示装置などの分野に用いられている。また高品位テレビジョンの分野などでの進展が非常に期待されている。このような用途の拡大にともなって、微細で多数の表示セルを有するカラープラズマディスプレイが注目されている。
【0003】
プラズマディスプレイは、前面基板と背面基板を貼り合わせて構成される。前面基板は、ガラス基板の裏面にITOや酸化錫からなる透明電極が形成されている。透明電極は帯状に複数本形成されている。この隣り合う透明電極間に通常10kHz〜数10kHzのパルス状AC電圧を印加し表示用の放電を得るが、透明電極のシート抵抗は数10Ω/cm2 と高いため、電極抵抗が数10kΩ程度になり、印加電圧パルスが十分に立ち上がらずに駆動が困難になる。そこで、透明電極上に通常金属製のバス電極を形成して抵抗値を下げる。これら電極は、透明誘電体層(絶縁層)によって被覆されている。透明誘電体層には、低融点ガラスが用いられる。その上に保護層として、酸化マグネシウムの層を電子ビーム蒸着法により形成する。前面基板に形成される誘電体層は、放電のための電荷を蓄積するコンデンサーとしての役割を有している。
【0004】
一方背面基板は、表示データを書き込むデータ電極を作製し、それを誘電体層(絶縁層)で被覆し、その上に隔壁を形成し、さらに隔壁の間に赤、緑、青の各色に発光する蛍光体ペーストを塗布後、乾燥、焼成を行って蛍光体層を形成したものである。
【0005】
前面基板と背面基板とをマトリクス駆動が可能になるように合わせて、封着した後、排気し、He−Xe、Ne−Xeなどの混合ガスを封入し、駆動回路を実装してプラズマディスプレイを作製する。
【0006】
隣り合う透明電極の間にパルス状の交流電圧を印加するとガス放電が生じ、プラズマが形成される。ここで生じた紫外線が蛍光体を励起して可視光を発光し前面基板を通して表示発光を得る。
【0007】
前記電極、誘電体層、隔壁は、それぞれの形成工程において一度焼成する場合が多く、焼成による基板収縮を防止する目的で、基板をあらかじめ一度熱処理(アニーリング)することが行われる。
【0008】
一般的にアニーリングをした基板は、そのときの均熱温度以上の温度を後の工程でかけても、基板は収縮しないと言われている。しかしながら、アニーリング後の工程(電極、誘電体層、隔壁)における焼成条件によっては、基板が大きく収縮し、前記全面版と貼り合わせる時に位置合わせ不良が生じ、パネルが光らなくなるという問題が生じていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アニーリング後の工程における基板の焼成時収縮を極微量にすることができるプラズマディスプレイ用基板の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、基板のアニーリングの後、少なくとも1回の焼成工程を含むプラズマディスプレイ用基板の製造方法において、該焼成工程における降温速度が、該アニーリング時の降温速度の3倍以上であることを特徴とするプラズマディスプレイ用基板の製造方法によって達成される。
【0011】
【発明の実施の形態】
プラズマディスプレイ用基板は、前述した通り前面板と背面板の2種類があり、本発明の製造方法はどちらにも適用できるが、焼成工程が多く、比較的高温で焼成される背面板の製造方法へ適用すると特に有効である。
【0012】
本発明に用いる基板としては特に限定されるものではないが、ガラス基板が好ましく使用される。特にソーダガラスや高歪み点ガラス(例えば、旭硝子社製のPD−200)などによるガラス基板が最も好ましく用いられる。
【0013】
本発明で用いる基板は、その上に形成されるパターン焼成時の基板収縮を防止する目的で、一度アニーリングを行うことが必要である。好ましいアニーリングの条件は、基板の除冷点、歪み点、後の各工程(電極、誘電体層、隔壁)における焼成温度によっても異なるが、通常は基板の除冷点より5〜10℃低い温度で行われる。
【0014】
アニーリングでは、アニーリング温度まで所定の速度で昇温し、前記温度に達した後にある程度の時間均熱処理(10〜60分)し、所定の速度で降温する。このときの昇温、降温の速度は、前記均熱温度、焼成炉の種類に合わせて調整される。
【0015】
本発明で製造されるプラズマディスプレイ用基板は、前記アニーリングされた基板上に、電極、誘電体層、隔壁、蛍光体層などが形成される。前記各層の形成工程では、少なくとも1回の焼成が必要となる。本発明においては、この焼成時の降温速度と、前記アニーリング時の降温速度の関係を調整することで、基板の焼成時の収縮を抑制あるいは抑止することができる。具体的には、前記焼成時の降温速度を、前記アニーリング時の降温速度の3倍以上、好ましくは4倍以上とすることで、基板1m当たりの収縮を60μm以下、さらには40μm以下、さらには30μm以下とすることが可能となる。
【0016】
以下、プラズマディスプレイの背面板の製造方法について具体的に説明する。プラズマディスプレイの背面板の製造においては、基板上に電極、誘電体層、隔壁が順次形成される場合が多い。
【0017】
本発明の方法で電極を形成する場合は、アニーリングした基板上に導電性無機成分と有機成分からなる電極パターンを形成した後、焼成することにより電極を形成する。
【0018】
前記導電性無機成分としては、銀、金、パラジウム、ニッケル、プラチナ等が挙げられる。本発明の場合銀を80重量%以上、好ましくは95重量%以上含む材料を用いることが抵抗値、基板との密着性の点から好ましい。また電極中に1〜5重量%のガラスフリット成分を含有させることにより、基板との密着性に優れた電極を得ることができる。
【0019】
本発明において電極パターンの形成方法は特に限定されるものではなく、スクリーン印刷法、フォトリソグラフィー法等種々の方法の中から適宜選択して適用されるが、導電性無機成分と感光性有機成分からなる導電性ペーストを基板上に塗布し、所望のパターンを有するフォトマスクを介して露光する方法、すなわちフォトリソグラフィー法が、高精細化が可能であり、かつ高解像度であるため好ましく適用される。
【0020】
前記方法により形成された電極パターンは、ガラス基板を熱変形させない温度領域で焼成される。本発明の場合、この温度は500〜630℃、さらには530〜600℃であることが、用いる基板の変形防止、電極となる金属成分の焼結性などの点から好ましい。
【0021】
本発明の電極の焼成後厚みは、特に限定されるものではないが1〜30μm、さらには1〜20μmであることが、電極の導通性、均一性などの点から好ましい。
【0022】
本発明の方法で誘電体層を形成する場合は、無機成分と有機成分からなる誘電体ペーストを電極上に所望の厚みで塗布し、焼成することで形成される。ここでいう無機成分とは特に限定されるものではないが、本発明の場合、ガラスを主成分とする無機成分が好ましく用いられる。ここでいう主成分とは、全無機成分中の60重量%以上、好ましくは70重量%以上のものをいう。
【0023】
前記ガラスのほかに、誘電体層に白色性あるいは黒色性を付与する目的で、各種顔料、例えば酸化チタン、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ルテニウム、ニッケルなどの顔料が添加されることがある。該顔料の添加量は全無機成分の40%以下、さらには30%以下であることが、誘電体層としての特性を損ねることなく、十分な白色性あるいは黒色性を付与することができる点で好ましい。
【0024】
該誘電体ペーストを塗布する方法としては、例えばスクリーン印刷法、オフセット印刷法、種々のロールコーター法、スリットダイコート法、ドクターブレード法などが挙げられる。
【0025】
該誘電体ペーストを塗布後、電極の場合と同様に焼成し、誘電体層を形成する。該焼成温度は用いる無機成分の熱特性(軟化点、ガラス転移点)により異なるが、通常用いる無機成分の主成分であるガラスの軟化点以上、好ましくは軟化点の30℃以上で焼成される。
【0026】
本発明で前記誘電体層上には、所望の高さ、線幅、ピッチを有する隔壁パターンが形成される。隔壁パターンは前記誘電体層と同様に、無機成分と有機成分からなる隔壁ペーストにより形成される。ここでいう無機材料も誘電体層同様特に限定されるものではないが、本発明の場合、ガラスが好ましく用いられる。前記隔壁ペーストを用いて隔壁パターンと形成する方法としては、例えばスクリーン印刷法、サンドブラスト法、金型転写法、感光性ペースト法等が挙げられる。
【0027】
前記隔壁パターンは、前記電極層、誘電体層同様焼成して隔壁層が形成される。焼成温度は誘電体層同様、用いる無機成分の熱特性(軟化点、ガラス転移点)により異なるが、通常は用いる無機成分の主成分であるガラスの軟化点以上、好ましくは軟化点の20℃以上で焼成される。
【0028】
本発明における焼成工程で用いる炉は特に限定されるものではなく、種々のバッチ炉、連続炉を使用できるが、昇温速度・降温速度の調整が容易であるという点から連続炉が好ましく使用される。
【0029】
前記のようにして形成された隔壁の側面および隔壁間の底部に蛍光体層を形成することによりプラズマディスプレイ用基板を得ることができる。該蛍光体層形成時にも焼成を行うが、このときの降温速度も基板アニーリング時の降温速度の3倍以上とすることで、基板の収縮を極力抑えることができる。
【0030】
本発明の方法で作製されたプラズマディスプレイ用基板は、別途作成された前面ガラス基板と封着した後、放電ガスを封入し配線の実装を行うことで輝度の高く、クロストークなどの欠陥のないプラズマディスプレイを得ることができる。
【0031】
【実施例】
以下に本発明を実施例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の濃度は断りのない場合は重量%である。
【0032】
実施例1〜3、比較例1、2
<基板アニーリング>
A3版サイズの旭ガラス社製高歪み点ガラス(PD200)を表1に示す条件でアニーリングした。
【0033】
【表1】
【0034】
<電極作製>
市販の感光性銀ペーストを、前記アニーリングした基板上にスクリーン印刷により厚み6μmで全面印刷した。次いでピッチ360μm/線幅120μmのフォトマスクを介して露光・現像することで電極パターンを形成した。
【0035】
焼成前の該電極パターン全長を測長後、表2に示す条件で焼成し、電極を形成した。焼成後の電極の全長を測長し、(焼成前の全長)−(焼成後の全長)を基板1m当たりの収縮量に換算した値を表2に記載した。
【0036】
【表2】
【0037】
本発明の実施例により焼成した基板は、焼成時の降温速度がアニーリング時の降温速度の3倍以上であり、収縮量が極めて小さいのに対し、比較例においては焼成時の降温速度はアニーリング時の3倍未満であり、基板の収縮量が大きいことがわかる。
【0038】
実施例4、5、比較例3、4
<誘電体層の形成>
市販のプラズマディスプレイ白色誘電体ペーストを、スクリーン印刷により厚み15μmで、実施例1により作成した電極上に印刷した。ついで表3に示す条件で焼成し、電極同様基板の収縮量を測定し記載した。
【0039】
【表3】
【0040】
本発明の実施例の条件にて誘電体層を焼成した場合、降温速度がアニーリング時の降温速度の3倍以上であることから低い収縮量であるのに対し、本発明の比較例は、その焼成時の降温速度がアニーリング時の3倍未満であり、収縮が大きいものであった。
【0041】
実施例6、7、比較例5、6
<隔壁の形成>
市販のプラズマディスプレイ隔壁用ペーストを用いて、スクリーン印刷法によりピッチ360μm、線幅50μmの隔壁パターンを実施例4により作成した電極/誘電体層上に形成した。ついで表4に示す条件で焼成し、電極、誘電体層同様、基板の収縮量を測定し記載した。
【0042】
【表4】
【0043】
本発明の実施例の条件にて隔壁パターンを焼成した場合、降温速度がアニーリング時の降温速度の3倍以上であることから低い収縮量であるのに対し、本発明の比較例は、その焼成時の降温速度がアニーリング時の3倍未満であり、収縮が大きいものであった。
【0044】
【発明の効果】
電極、誘電体層、隔壁、それぞれの焼成時の降温速度を、基板のアニーリング時の降温速度の3倍以上とすることで、各工程における焼成時の基板収縮を抑制することができた。
【0045】
かくして得られたプラズマディスプレイ用基板は、別途作製された前面板との位置合わせが容易となり、表示品位の高いプラズマディスプレイを得ることができる。
Claims (5)
- 基板のアニーリングの後、少なくとも1回の焼成工程を含むプラズマディスプレイ用基板の製造方法において、該焼成工程における降温速度が、該アニーリング時の降温速度の3倍以上であることを特徴とするプラズマディスプレイ用基板の製造方法。
- 前記焼成工程が、基板上に電極を形成する工程であることを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイ用基板の製造方法。
- 前記焼成工程が、基板上に誘電体層を形成する工程であることを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイ用基板の製造方法。
- 前記焼成工程が、基板上に隔壁を形成する工程であることを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイ用基板の製造方法。
- 前記基板がガラス基板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用基板の製造方法。
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