JP4028279B2 - 重荷重用ラジアルタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、航空機用タイヤとして用いて好適な重荷重用ラジアルタイヤに関し、とくに、耐偏摩耗性能を向上させてタイヤの耐久性を高める技術を提案するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の航空機では、航空機用ラジアルタイヤのセンターリブが完全に摩滅した時点でタイヤ交換を行うことが広く一般に行われており、この場合には、センターリブの幅をできるだけ広くして、それの耐摩耗性を高めることが、交換に至るまでの着陸回数を増やす上で有利である。しかるにこのときは、他のリブの幅が必然的に狭くなり、とくにショルダーリブに関しては、その幅が狭くなりすぎると、リブ剛性が不足することになって、航空機のタキシング走行によるショルダーリブの引摺り等に起因する肩落ち摩耗を生じるおそれが高かった。
【0003】
従って、近年の特定の機体メーカによる新たなタイヤ交換基準におけるように、いずれかのリブが完全に摩耗した時点でタイヤ交換を行うことを要求される場合には、上述のように、ショルダーリブの犠牲の下にセンターリブの耐摩耗性を向上させてなお、タイヤの交換までの着陸回数を増やすことは実質的に不可能であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、ショルダーリブの幅を広げることで、肩落ち摩耗を抑制することが提案されているも、ショルダーリブ幅だけを単純に拡幅した場合には、ショルダーリブとセンターリブとの間の中間リブの幅が狭くなることに起因する剛性低下によってその中間リブがもげ落ちるおそれが高いという他の問題があった。
この発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、中間リブのもげ落ち等を生じさせることなく、とくにはショルダーリブの耐偏摩耗性能を有効に向上させて、タイヤの交換に至るまでの着陸回数を増やすことができる重荷重用ラジアルタイヤを提供するにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る重荷重用ラジアルタイヤは、一層以上のカーカスプライからなるラジアルカーカスと、このラジアルカーカスのクラウン域の外周側に配設した、ほぼ円周方向に延びる、たとえば螺旋巻回コードからなるエンドレスベルト層を含むことのあるベルトと、ベルトの外周側に配設したトレッドとを具え、トレッド踏面に、直線状に延びる、四本もしくは六本の周方向溝を設けるとともに、タイヤ赤道線上に、円周方向に連続するセンターリブを区画してなるものであって、
センターリブの幅w0と、トレッド側部域のショルダーリブの幅w1と、これらのリブ間の、一本以上の中間リブの各幅w2との比w0:w1:w2を、四本の周方向溝を設けた場合には、
1:0.35〜0.55:0.45〜0.55
とし、
また、六本の周方向溝を設けた場合には、その比w0:w1:w2を、
1:0.65〜0.75:0.35〜0.45
してなるものである。
【0006】
タイヤのトレッド踏面は、その横断面内で曲率を有しており、これがため、タイヤ径の小さい部分、とくにはショルダーリブ部分はタイヤの負荷転動時の引摺りに起因する摩耗を生じ易い。しかるに、ショルダーリブ内にあって、最も小径となる踏面側縁およびその近傍の、引摺り摩耗のとくには発生し易い部分の滑りは、そのショルダーリブの、滑り量の少ない、踏面中央部寄り部分の拘束を受けることになるので、ショルダーリブの幅が広いほど滑り量が少なくなって、引摺り摩耗が抑制されることになる。
【0007】
ところで、ショルダーリブの幅を拡幅すると、他のリブの幅は必然的に狭くなるも、かかる状況下にあってなお、着陸回数に直接影響するセンターリブの幅はできるだけ広くし、しかも、センターリブとショルダーリブとの間に存在する一本もしくは複数本の中間リブに、航空機の離着陸に際するもげ落ちを防ぐに十分な剛性を付与することが必要になる。
【0008】
そこでこのタイヤでは、それぞれのリム幅の相対関係についての各種の実験結果に基づいて、センターリブの幅w0と、トレッド側部域のショルダーリブの幅w1と、これらのリブ間の、一本以上の中間リブの各種w2との比 w0:w1:w2を、
四本の周方向溝を設けた場合には、
1:0.35〜0.55:0.45〜0.55とし、
また、六本の周方向溝を設けた場合には、
1:0.65〜0.75:0.35〜0.45とする。
【0009】
これによれば、主にはセンターリブの作用下での十分な着陸回数の確保を前提に、ショルダーリブに所要の幅を付与してそこへの肩落ち摩耗の発生を有効に抑制するととともに、中間リブの剛性不足を防止してそれのもげ落ちのおそれを有効に除去し、それぞれのリブに所要の機能を十分に発揮させることができる。
【0010】
すなわち、ショルダーリブの幅w1が0.35未満では、リブ幅が狭くなりすぎて、そこへの肩落ち摩耗の発生のおそれが高く、一方、その幅w1が0.75を越えると、中間リブに所要の幅、ひいては剛性を付与することが難しく、また、中間リブの各幅w2が0.35未満では、中間リブの剛性が不足する傾向にあり、それが0.55を越えると、ショルダーリブの所要幅の確保が困難になる。
【0011】
なおここで、ショルダーリブ幅w1の占める割合が、四本溝に比して六本溝で大きくなるのは、六本溝では、センターリブの幅w0が、四本溝のタイヤのそれに対して0.5〜0.8倍になることによるものである。なお、六本溝のタイヤでこのような割合とするのは、それが0.5倍未満では、四本溝のタイヤと同等の離着陸回数を確保することが難しくなり、一方0.8倍を越えると、センターリブ以外のリブの幅を確保することが困難になることによる。
【0012】
ここにおいて好ましくは、センターリブの幅を、トレッド接地幅の10〜35%の範囲とする。
これによれば、センターリブの作用下で所要の着陸回数をより有利に確保することができる。センターリブ幅が接地幅の10%未満では、所要の着陸回数の担保が難しく、それが35%を越えると必要本数の周方向溝の配設が難しくなる。
【0013】
また好ましくは、トレッド接地面内の、周方向溝の溝比率を、接地面輪郭面積の10〜25%の範囲とする。
なお、ここにおける接地条件は、タイヤを、TRA(The Tire and Rim Associaion Inc.)で規格が定められたリムに取り付けるとともに、タイヤ内へTRAに規定される正規内圧(Unloaded Pressure)を充填し、そこへ、TRAに規定される正規荷重(Rated Load)を負荷した状態にある。また、ここでいう接地面輪郭面積とは、トレッド接地面内で、それぞれのリブの踏込縁の相互および蹴出縁の相互を滑らかにつなぐそれぞれの線分と、それぞれのショルダーリブの接地側縁とで囲まれる領域全体の面積をいい、周方向溝の溝比率とは、その接地面内の、領域全体の面積に対する溝部トータル面積の比率をいう。
【0014】
これによれば、必要な接地面積を確保しつつすぐれた排水性能を実現することができる。すなわち、溝比率が10%未満では、排水性能が不足するおそれが高く、逆に25%を越えると、接地面積が不足するおそれが高くなる。
【0015】
また、センターリブを区画するセンター溝の深さは、その溝位置でのトレッド厚みの80〜95%の範囲とすることが好ましく、これによれば、十分な排水性能を、トレッド厚みの余剰増加なしに実現することができる。いいかえれば、溝深さを80%未満としてなお高い排水性能を確保する場合には、トレッド厚みが厚くなってタイヤの重量増加が余儀なくされ、一方、95%を越える溝深さとするときは、トレッドの内周側のクッションゴムその他のゴム質が露出するおそれが高くなる。
【0016】
そして、ショルダーリブを区画するショルダー溝の深さはセンター溝のそれの65〜95%の範囲とすることが好ましい。
この数値限定は、ショルダーリブに顕著な肩落ち摩耗が発生しなくても、ショルダーリブはそもそも、センターリブより早期に完全摩耗する傾向にあるので、この点からは溝深さは深いほど好適であるも、それが深くなりすぎると、ショルダーリブの剛性が小さくなりすぎることに根拠をおくものである。
【0017】
さらには、ショルダーリブの接地長さは、センターリブのそれの85〜95%の範囲とすることが好ましい。これをいいかえれば、トレッドの、先に述べたと同様の接地条件の下で、ショルダーリブの接地長さが85%未満では、ショルダーリブに、それの広幅化によっては補い得ない偏摩耗、すなわち、肩落ち摩耗が生じるうれいがあり、一方、95%を越えると引摺り摩耗がほとんど発
生しないので、特別の対策を講じることまでもなく、ショルダーリブの偏摩耗を十分に防止することができる。しかるに、95%を越えると、タイヤの高速回転時における、トレッドショルダー部分の膨出変形量が多くなりすぎて、タイヤの高速耐久性が大きく低下することになる。
従って、ベルトに含まれることのあるエンドレスベルト層は、ショルダーリブが上記の接地長さの範囲内にあるタイヤに、必要な高速耐久性を付与するためにとくに有効に機能することになる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明の実施の形態を図面に示すところに基づいて説明する。
図1は、この発明の実施の形態を示すトレッド踏面の横断面図である。そして図2は、そのトレッド踏面によってもたらされるフットプリントを示す。
ここで、このフットプリントは、前述した接地条件と同一の条件、すなわち、タイヤを、TRAで規格が定められたリムに取り付けるとともに、そのタイヤ内に、TRAに規定される正規内圧を充填し、そして、そこへTRAに規定される正規荷重を負荷した状態でのものである。
【0019】
なお図示はしないが、このタイヤは、従来の一般的な航空機用ラジアルタイヤと同様に、一層以上のカーカスプライからなるラジアルカーカスと、ラジアルカーカスのクラウン域の外周側に配設した、ほぼ円周方向に延びる、たとえば螺旋巻回コードからなるエンドレスベルト層を含むことのあるベルトとを具え、また、このベルトの外周側に配設した、図示のようなトレッドを具える。
【0020】
ここでは、トレッド踏面2に、トレッド円周方向に直線状に延びる、四本もしくは六本、図では六本の周方向溝3、4、5を所定の間隔をおいて形成して、対をなすセンター溝3によって区画したセンターリブ6を、タイヤ赤道線Xに対して対称に延在させる。
【0021】
またここでは、センターリブ6の幅woと、トレッド側部域のショルダー溝5をもって区画したショルダーリブ7の幅w1とこれらの両リブ間に区画された、図では二本の中間リブ8、9の各幅w2との比w0:w1:w2を、
1.:0.65〜0.75:0.35〜0.45
とする。なお、図示しない四本周溝の場合は、その比を、
1:0.35〜0.55:0.45〜0.55
とする。
【0022】
このようなタイヤによれば、前述したように、主にはセンターリブ6によって十分な着陸回数を担保することができ、また、ショルダーリブ7の肩落ち摩耗を有効に抑制しつつ、中間リブ8、9に、それのもげ落ちを防ぐに十分な剛性を付与することができる。
【0023】
ところで、図に示すとこころでは、センターリブ6の幅w0はトレッド接地幅Wの10〜35%の範囲とすることが、高い排水性能を確保しつつ、十分な着陸回数を確保する上で好ましく、また、センター溝3の深さh0は、その溝位置でのトレッド厚みの80〜95%の範囲とすることが、トレッド厚みの余剰増加なしにすぐれた排水性能を実現する上で、そして、ショルダー溝5の深さh1は、センター溝3の深さh0の65〜95%の範囲とすることが、ショルダーリブの剛性不足なしに、それの完全摩耗時点をセンターリブのそれに近づける上で好ましい。
【0024】
そしてまた、タイヤトレッドを先に延べた接地条件で、接地させたトレッド接地面内での、周方向溝3、4、5の溝比率は、接地面輪郭面積、すなわち、図2のフットプリントに傾斜を施して示すように、接地面輪郭線で囲まれる領域Aに対して10〜25%とすることが、排水性能を確保しつつ、十分な接地面積を確保する上で好ましく、この場合の、ショルダーリブ7の接地長さ、すなわち、ショルダーリブ7のフットプリントにおける、それの最も長い接地長さlは、センターリブ6の同様の接地長さLの85〜95%の範囲とすることが好ましい。
【0025】
【実施例】
サイズが50×20.0 R22の航空機用ラジアルタイヤであって、トレッド踏面に、図1、2に示すように六本の周方向溝を有するものにおいて、センターリブの幅をトレッド接地幅の22%、センター溝の深さをトレッド厚みの88%、ショルダー溝の深さをセンター溝深さの70%とするとともに、トレッド接地面内の溝比率を16%、ショルダーリブの接地長さをセンターリブの90%とし、それぞれのリブの幅比W0:W1:W2を表1に示すように変化させた実施例タイヤ、比較例タイヤおよび従来タイヤにつき、耐偏摩耗性能および耐ピールオフ性能を測定したところ表1に示す通りとなった。
【0026】
【表1】
【0027】
なお、耐偏摩耗性能は、ドラムにサンドペーパーを取り付ける一方、タイヤに若干のスリップアングルを付与してタイヤを強制的に摩耗させ、センターもしくはショルダーリブが完全摩耗するまでの走行距離を測定することにより求めた。
また、耐ピールオフ性能は、公的ドラムTS0−C62dのテイクオフを繰り返し行うことにより求めた(50回完走。途中でリブがもげ落ちたらストップ)。
表1に示すところによれば、ショルダーリブ幅の狭い比較例タイヤ2および従来タイヤでは、ショルダーリブの早期の完全摩耗が生じ、中間リブ幅がとくに狭い比較例タイヤ1では、セカンドリブの早期のもげ落ちが生じるため、これらのいずれのタイヤにあっても、早期の交換が余儀なくされるのに対し、実施例タイヤ1、2ではセカンドリブがもげ落ちることなくセンターリブの完全摩耗となるので、早期交換の必要がなくなることが解る。
【0028】
【発明の効果】
上記実施例からも明らかなように、この発明によれば、重荷重用タイヤの、ショルダーリブの偏磨耗を有効に防止するとともに、中間リブのもげ落ちを防止して、主にはセンターリブの作用の下に、タイヤの交換に至るまでの着陸回数を大きく増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態を示すトレッド踏面の横断面図である。
【図2】 図1のトレッド踏面によってもたらされたフットプリントを示す図である。
【符号の説明】
1 トレッド
2 トレッド踏面
3 センター溝(周方向溝)
4 周方向溝
5 ショルダー溝(周方向溝)
6 センターリブ
7 ショルダーリブ
8,9 中間リブ
w1 センターリブ幅
w2 ショルダーリブ幅
w0 中間リブ幅
W トレッド接地幅
h0 センター溝深さ
h1 ショルダー溝深さ
Claims (7)
- 一層以上のカーカスプライからなるラジアルカーカスと、このラジアルカーカスのクラウン域の外周側に配設した、ほぼ円周方向に延びるコードからなるエンドレスベルト層を含むことのあるベルトと、ベルトの外周側に配設したトレッドとを具え、トレッド踏面に、直線状に延びる四本の周方向溝を設けるとともに、タイヤ赤道線上に、円周方向に連続するセンターリブを区画してなる重荷重用ラジアルタイヤであって、
センターリブの幅w0と、トレッド側部域のショルダーリブの幅w1と、これらのリブ間の、一本の中間リブの各幅w2との比 w0:w1:w2を、
1:0.35〜0.55:0.45〜0.55
としてなる重荷重用ラジアルタイヤ。 - 一層以上のカーカスプライからなるラジアルカーカスと、このラジアルカーカスのクラウン域の外周側に配設した、ほぼ円周方向に延びるコードからなるエンドレスベルト層を含むことのあるベルトと、ベルトの外周側に配設したトレッドとを具え、トレッド踏面に、直線状に延びる六本の周方向溝を設けるとともに、タイヤ赤道線上に、円周方向に連続するセンターリブを区画してなる重荷重用ラジアルタイヤであって、
センターリブの幅w0と、トレッド側部域のショルダーリブの幅w1と、これらのリブ間の、二本の中間リブの各幅w2との比 w0:w1:w2を、
1:0.65〜0.75:0.35〜0.45
としてなる重荷重用ラジアルタイヤ。 - センターリブの幅を、トレッド接地幅の10〜35%の範囲としてなる請求項1もしくは2に記載の重荷重用ラジアルタイヤ。
- トレッド接地面内の、周方向溝の溝比率を、接地面輪郭面積の10〜25%の範囲としてなる請求項1〜3のいずれかに記載の重荷重用ラジアルタイヤ。
- センターリブを区画するセンター溝の深さを、トレッド厚みの80〜95%の範囲としてなる請求項1〜4のいずれかに記載の重荷重用ラジアルタイヤ。
- ショルダーリブを区画するショルダー溝の深さを、センター溝のそれの65〜95%の範囲としてなる請求項1〜5のいずれかに記載の重荷重用ラジアルタイヤ。
- ショルダーリブの接地長さを、センターリブのそれの85〜95%の範囲としてなる請求項1〜6のいずれかに記載の重荷重用ラジアルタイヤ。
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