JP4027660B2 - ハーフトーン型位相シフトマスクブランク及びマスク - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、位相シフターによる光の干渉作用を利用して転写パターンの解像度を向上できるようにした位相シフトマスク及びその素材としての位相シフトマスクブランク並びにそれらの製造方法等に関し、特にハーフトーン型の位相シフトマスク及びブランク並びにそれらの製造方法等に関する。
【0002】
【従来の技術】
DRAMは、現在256Mbitの量産体制が確立されており、今後Mbit級からGbit級への更なる高集積化がなされようとしている。それに伴い集積回路の設計ルールもますます微細化しており、線幅(ハーフピッチ)0.10μm以下の微細パターンが要求されるのも時間の問題となってきた。
パターンの微細化に対応するための手段の一つとして、これまでに、露光光源の短波長化によるパターンの高解像度化が進められてきた。その結果、現在の光リソグラフィ法における露光光源はKrFエキシマレーザ(248nm)、ArFエキシマレーザ(193nm)が主に使用されている。
しかし、露光波長の短波長化は解像度を改善する反面、同時に焦点深度が減少するため、レンズをはじめとする光学系の設計への負担増大や、プロセスの安定性の低下といった悪影響を与える。
【0003】
そのような問題に対処するため、位相シフト法が用いられるようになった。位相シフト法では、微細パターンを転写するためのマスクとして位相シフトマスクが使用される。
位相シフトマスクは、例えば、マスク上のパターン部分を形成する位相シフター部と、位相シフター部の存在しない非パターン部からなり、両者を透過してくる光の位相を180°ずらすことで、パターン境界部分において光の相互干渉を起こさせることにより、転写像のコントラストを向上させる。位相シフター部を通る光の位相シフト量φ(rad)は位相シフター部の複素屈折率実部nと膜厚dに依存し、下記数式(1)の関係が成り立つことが知られている。
φ=2πd(n−1)/λ …(1)
ここでλは露光光の波長である。したがって、位相を180°ずらすためには、膜厚dを
d= λ/{2(n−1)} …(2)
とすればよい。この位相シフトマスクにより、必要な解像度を得るための焦点深度の増大が達成され、露光波長を変えずに解像度の改善とプロセスの適用性を同時に向上させることが可能となる。
【0004】
位相シフトマスクはマスクパターンを形成する位相シフター部の光透過特性により完全透過型(レベンソン型)位相シフトマスクと、ハーフトーン型位相シフトマスクに実用的には大別することができる。前者は、位相シフター部の光透過率が、非パターン部(光透過部)と同等であり、露光波長に対してほぼ透明なマスクであって、一般的にラインアンドスペースの転写に有効であるといわれている。一方、後者のハーフトーン型では、位相シフター部(光半透過部)の光透過率が非パターン部(光透過部)の数%から数十%程度であって、コンタクトホールや孤立パターンの作成に有効であるといわれている。
【0005】
ハーフトーン型位相シフトマスクのうちには、主に透過率を調整する層と主に位相を調整する層からなる2層型のハーフトーン型位相シフトマスクや、構造が簡単で製造が容易な単層型のハーフトーン型位相シフトマスクがある。2層型ハーフトーン型位相シフトマスクとしては、例えば、特開平4−140635号公報記載の薄いCrと塗布ガラスの2層構造のハーフトーン位相シフター部を有するものがある。また単層型のハーフトーン型位相シフトマスクとしては、例えば特開平7−199447号公報記載のSiOx系やSiOxy系、特開平8−211591号公報記載のSiNx系等がある。
また、特開平7−168343号公報には、検査光波長に対する透過率を低くして検出感度を上げることを目的として、MoSiO又はMoSiONからなる単層膜と、この単層膜との組合せにおいて透過率の波長依存性が小さい透過膜とを含むハーフトーン位相シフター部を有する位相シフトマスクが開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一方、LSIパターンの微細化に伴い、露光光源の波長は現在のKrFエキシマレーザ(248nm)、ArFエキシマレーザ(193nm)から、将来的にはF2エキシマレーザ(157nm)へと短波長化が進むと予想される。また、透過率についても現在主流の6%付近からより高い透過率のものが要求されつつある。このような露光光源の短波長化又は高透過率化に伴い、単層型ハーフトーン位相シフター部の材料は、従前の波長でみた場合に光透過性の高い材料が必要があり、その結果、透明基板(通常、合成石英)と位相シフター膜とが組成的に類似する傾向となり、パターン加工の際に石英基板とのエッチング選択性が小さくなり、透明基板をオーバーエッチングしてしまい、位相差が180°よりも大きくなるため、位相シフトによる解像度の向上が得られないという問題が生じる。
例えば、従来の2層タイプのハーフトーン位相シフター部のように、透明基板(通常、合成石英)とのエッチング選択性が小さい塗布ガラス(SiO2)層の下に透明基板及び塗布ガラスとのエッチング選択性が大きいCrを介在させることによって、位相シフター部のパターン加工の際に、Crが塗布ガラス(SiO2)層のエッチングストッパーの役割を果たすので透明基板のオーバーエッチングを防ぐことができるので、このようなエッチングストッパー層を介在させた2層構造とすることにより上記問題点を解決することが考えられる。しかしながら、この場合、塗布ガラスと異なるエッチングガス又は液を用いてCrをエッチングする必要がある(2段階のエッチング工程が必要となる)ため、工程が煩雑になるという問題点があった。
本発明は、上記背景の下になされたものであり、露光光源の短波長化に伴い透明基板と位相シフター膜とが組成的に類似するかあるいは光学特性的に類似する場合におて、透明基板をオーバーエッチングをすることを防止し、かつ比較的単純な工程で製造できかつ加工が容易なハーフトーン型位相シフトマスクブランク及びハーフトーン型位相シフトマスクを提供することを目的とする。
また、140nm〜200nmの露光波長領域、特にF2エキシマレーザの波長である157nm付近、及びArFエキシマレーザの波長である193nm付近における高透過率品(透過率8〜30%)で使用可能なハーフトーン型位相シフトマスク及びその素材となるハーフトーン型位相シフトマスクブランクの提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は以下の構成を有する。
(構成1)透明基板上に、露光光を透過させる光透過部と、露光光の一部を透過させると同時に透過した光の位相を所定量シフトさせる位相シフター部を有し、前記光透過部と位相シフター部の境界部近傍にて各々を透過した光が互いに打ち消し合うように光学特性を設計することで、被露光体表面に転写される露光パターン境界部のコントラストを良好に保持、改善できるようにしたハーフトーン型位相シフトマスクを製造するために用いるハーフトーン型位相シフトマスクブランクであり、透明基板上に前記位相シフター部をエッチング加工によって形成するための位相シフター膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクブランクにおいて、
前記位相シフター膜が、透明基板上に順次形成された第1の層及び第2の層を有し、前記第1の層と第2の層は同じエッチング媒質で連続的にエッチングが可能であり、かつ前記第2の層は透明基板に対するエッチング終点検出が実質的に困難又は不可能な材料であり、前記第1の層は、透明基板に対するエッチング終点検出が実質的に可能な材料であることを特徴とするハーフトーン型位相シフトマスクブランク。
(構成2)前記第2の層と透明基板とのエッチング終点検出光における屈折率差が0.5以下であり、前記第1の層と透明基板とのエッチング終点検出光における屈折率差が前記第2の層と透明基板とのエッチング終点検出光における屈折率差よりも大きいことを特徴とする構成1記載のハーフトーン型位相シフトマスクブランク。
(構成3)前記位相シフター膜が、透明基板上に順次形成された第1の層および第2の層の2層構造であり、前記第1の層は主に透過率を調整する層であり、前記第2の層は主に位相を調整する層であることを特徴とする構成1又は2に記載のハーフトーン型位相シフトマスクブランク。
(構成4)前記第1の層が、Si、MSix(M:Mo,Ta,W,Cr,Zr,Hfの一種又は二種以上)から選ばれる一種の材料からなり、前記第2の層が、SiOx、SiOxy又はこれらにM(M:Mo,Ta,W,Cr,Zr,Hfの一種又は二種以上)を、M/(Si+M)×100が10原子%以下となるような範囲で含有させた材料からなることを特徴とする構成1〜3のいずれかに記載のハーフトーン型位相シフトマスクブランク。
(構成5)構成1〜4のいずれかに記載のハーフトーン型位相シフトマスクブランクにおける位相シフター膜を、所定のパターンが得られるように選択的に除去するパターニング処理を施すことにより得られた、光透過部と位相シフター部とからなるマスクパターンを有することを特徴とするハーフトーン型位相シフトマスク。
(構成6)構成5に記載のハーフトーン型位相シフトマスクを用いてパターン転写を行うことを特徴とするパターン転写方法。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、位相シフター膜が、透明基板上に順次形成された第1の層及び第2の層を有し、前記第1の層と第2の層は同じエッチング媒質で連続的にエッチングが可能であり、かつ前記第2の層は透明基板に対するエッチング終点検出が実質的に不可能な材料であり、前記第1の層は、透明基板に対するエッチング終点検出が実質的に困難又は可能な材料であることを特徴とする。
透明基板上に位相シフター膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクブランクを考えた場合において、透明基板と位相シフター膜とが、組成的に類似するかあるいは光学特性的に類似する場合、位相シフター膜をエッチング加工していくときに透明基板に対するエッチング終点検出が実質的に不可能となり、透明基板が過剰にオーバーエッチングされてしまう恐れがある。本発明ではこのような場合に、透明基板に対するエッチング終点検出が実質的に不可能な位相シフター膜と透明基板との間に、透明基板に対するエッチング終点検出が実質的に可能な層を介在させるものである。このように、本発明では、第1の層は透明基板とのエッチング終点検出が可能であるため、位相シフター膜のパターン加工においても、透明基板のオーバーエッチングを低減することができる。また本発明では、第1の層と第2の層を同じエッチング媒質で連続的にエッチングすることができる(1段階のエッチング工程でよい)ため、2層であっても単層と同様の加工容易性を維持することができ、比較的単純な工程で製造できる。
本発明において、第2層の材料としては、特に、140nm〜200nmの露光波長領域、とりわけF2エキシマレーザの波長である157nm付近で、所望の透過率ならびに位相シフト量を与えるような材料として、SiOx、SiOxy又はこれらにM(M:Mo,Ta,W,Cr,Zr,Hfの一種又は二種以上)を、M/(Si+M)×100が10原子%以下となるような範囲で含有させた材料が挙げられる。これらの材料膜をエッチングする場合は、例えばCHF3やCF4、SF6、C26等のフッ素系ガス及びその混合ガスによるドライエッチング(RIE(Reactive Ion Etching))にて行うことができるが、その場合、上記の材料膜を直接透明基板に形成してパターン加工しようとした場合、透明基板(合成石英基板)に対するエッチング終点検出が実質的に不可能である。具体的には、前記第2の層と透明基板とのエッチング終点検出光(例えば波長680nm)における屈折率差が、0.5以下、さらには0.3未満となってしまうため、エッチング終点検出光に対する反射率の差が極めて小さく、エッチング終点検出が実質的に困難又は不可能である。ここで、前記屈折率差が0.5以下である場合エッチング終点検出が困難であり、前記屈折率差が0.3以下である場合エッチング終点検出が実質的に不可能である。つまり、本発明は、前記第2の層と透明基板とのエッチング終点検出光における屈折率差が0.5以下、さらには0.3以下である場合に特に有効である。
【0009】
本発明において、第1の層は、透明基板と第2の層との間に介在され、上記第2の層と同じエッチング媒質でエッチングした場合に、透明基板に対するエッチング終点検出が実質的に可能である。具体的には、前記第1の層と透明基板とのエッチング終点検出光における屈折率差が、前記第2の層と透明基板とのエッチング終点検出光における屈折率差よりも大きく好ましくは0.5以上であるため、エッチング終点検出光に対する反射率の差を検出することができるために、エッチングの終点検出が実質的に可能である。この屈折率差が0.8以上である場合、エッチング終点検出がより容易かつ確実となる。エッチング終点検出が容易であるとエッチング加工が容易となる。
上記屈折率差の要件に加え、第1の層は、第2の層と同じエッチング媒質で連続してエッチングできることが必要である。これらの要件を満たす材料として、Si、MoSix、TaSix、WSix、CrSix、ZrSix、又はHfSixが挙げられる。ここで、本発明においては、第1の層の透明基板に対するエッチング選択比が大きい方が、エッチング終点検出をさらに容易に行うことができるので好ましい。その理由は、透明基板に対するエッチング選択比が小さいと、第1の層のエッチングに時間がかかることでエッチング終点検出光の反射光強度の変化がなだらかとなるが、透明基板に対するエッチング選択比が大きいと、第1の層のエッチング時間が短いために急峻な反射光強度の変化が見られるためである。透明基板に対するエッチング選択比は、5倍以上が好ましく、さらには8倍以上であることが好ましい。透明基板とのエッチング選択比が大きいという観点から、第1の層はSiが最も好ましい。
【0010】
本発明において、第1の層は第2の層よりも屈折率を高くすることにより、上記のような、第2の層と透明基板とのエッチング終点検出光における屈折率差が0.5以下であり、第1の層と透明基板とのエッチング終点検出光における屈折率差が、第2の層と透明基板とのエッチング終点検出光における屈折率差よりも大きいという関係を満足するような膜構造が可能となるので好ましい。即ち、第1の層は第2の層よりも透過率が高く、主に透過率を調整する機能を有し、第2の層は第1の層よりも位相シフト量が大きく、主に位相シフト量を調整する機能を有することが好ましい。
本発明においては、位相シフター膜を第1の層と第2の層との2層構造、あるいは、第2の層の上にさらに1層又は複数層を積層した多層膜としてもよい。
尚、本発明における第1の層と第2の層との2層構造の位相シフター膜の位相シフト量及び透過率は、第1の層及び第2の層を含む全層の合計によって調整されるものである。
本発明において、透明基板は、一般的には合成石英基板が用いられる。他の透明基板材料としてはCaF2等が挙げられる。
本発明においては、上述したような、透明基板と位相シフター膜とが、光学特性的に類似し反射光によるエッチングの終点検出が困難な場合に、反射光によるエッチングの終点検出が可能な層を透明基板と位相シフター膜との間に介在させるケースの他に、透明基板と位相シフター膜とが、組成的に類似しプラズマ発光などを利用した元素分析によるエッチングの終点検出が困難な場合に、元素分析によるエッチングの終点検出が可能な層を透明基板と位相シフター膜との間に介在させるケースが含まれる。
【0011】
以下、上記第2の層がSiOxy系膜である場合について説明する。
第2の層の材料が、SiOxy系膜である場合、140nm〜200nmの露光波長領域、とりわけF2エキシマレーザの波長である157nm付近で、所望の透過率ならびに位相シフト量を与えるようなSiOxy系膜は、従来得られているSiOxy系膜とは基本的に組成範囲が異なる膜であり、しかも従来得られているSiOxy系膜とは膜質(例えばkなどの物性)の異なる膜である。このような組成範囲と膜質との組合せによって、F2エキシマレーザの波長である157nm付近で3〜40%の透過率及び1.7以上の屈折率(位相を所定の角度シフトさせる膜厚に関係する)を有し、しかも露光光照射耐性、耐薬品性が良好である位相シフター膜を実現できる。
2エキシマレーザの波長である157nmを含む波長140nm〜200nmの真空紫外域の露光光に対して、180°の位相シフト量を与えるような膜厚を有するSiOxy系膜の複素屈折率実部nについてはn≧1.7の範囲に、そして複素屈折率虚部kについてはk≦0.450の範囲に調整、制御する。そうすることで、真空紫外露光に対応するハーフトーン型位相シフトマスクとしての光学特性を満たすことになる。なお、F2エキシマレーザ用では、k≦0.40の範囲が好ましく、0.07≦k≦0.35の範囲がさらに好ましい。ArFエキシマレーザ用では、0.10≦k≦0.45の範囲が好ましい。また、F2エキシマレーザ用では、n≧2.0の範囲が好ましく、n≧2.2の範囲がさらに好ましい。ArFエキシマレーザ用では、n≧2.0の範囲が好ましく、n≧2.5の範囲がさらに好ましい。
上記光学特性を得るため、前記SiOxy系膜の組成範囲を、珪素については35〜45原子%、酸素については1〜60原子%、窒素については5〜60原子%とする。すなわち、珪素が45%より多い、あるいは窒素が60%より多いと、膜の光透過率が不十分となり、逆に窒素が5%未満、あるいは酸素が60%を超えると、膜の光透過率が高すぎるため、ハーフトーン型位相シフター膜としての機能が失われる。また珪素が35%未満、あるいは窒素が60%を上回ると膜の構造が物理的、化学的に非常に不安定となる。
なお、上記と同様の観点から、F2エキシマレーザ用では、前記SiOxy系膜の組成範囲を、珪素については35〜40原子%、酸素については25〜60原子%、窒素については5〜35原子%とすることが好ましい。同様にArFエキシマレーザ用では、前記SiOxy系膜の組成範囲を、珪素については38〜45原子%、酸素については1〜40原子%、窒素については30〜60原子%とすることが好ましい。
【0012】
エッチング終点検出層である第1の層は、SiOxy膜中の酸素が40原子%以上の場合に設けると特に有効である。つまり、基板に合成石英を用い、かつ位相シフター膜を構成するSiOxy膜の酸素量が多い場合には、該SiOxy膜と合成石英基板との間にエッチング終点検出層である第1の層を設けることが好ましい。この場合は、位相シフター膜はSiOxy膜と第1の層の2層構造となり、所定の位相角および透過率は、この2層構造とした上で調整される。
ここで、第1の層は、エッチングの終点検出を容易にする機能を有する材料からなる膜である。エッチングの終点検出を容易にする機能を有する第1の層に関しては、その材料が、透明基板(例えば合成石英基板)と第1の層のエッチング終点検出光(例えば680nm)に対する反射率の差が、透明基板とSiOxy膜との差よりも大きくなるような膜であり、好ましくは、SiOxy膜及び透明基板よりも屈折率(複素屈折率実部)が高い材料であり、具体的にはSiOxy膜とエッチング終点検出光の波長における屈折率差が0.5以上、望ましくは1以上となる材料からなる膜が好ましく、透明基板との屈折率差が0.5以上、望ましくは0.8以上、さらには1以上となる材料からなる膜が好ましい。
第1の層の膜厚は10〜200オングストロームであることが好ましい。すなわち、10オングストロームより小さいと有意な反射率変化が検出できなくなる可能性が生じる。一方、等方的なエッチングの進行によるパターンの拡大は、エッチングプロセスにもよるが、最大で膜厚の2倍程度まで進行する。従って、0.1μm=1000オングストローム以下のパターン線幅を加工する際に、膜厚が200オングストロームを超えるということは、40%以上もの寸法誤差を生じることになり、マスクの品質に深刻な悪影響を与える。
さらに、第1の層は、透過率を調整する機能を有することが好ましい。第1の層自体の露光波長(波長140〜200nm、又は157nm付近、又は193nm付近)に対する透過率は、3〜40%とすることにより位相シフター部における透過率を保持しつつ、位相シフター部の下部に形成された第1の層によって(異なる材料の積層によって)、露光波長よりも長い検査波長の透過率を低減することが可能となる。即ち、製造プロセスにおけるマスクの検査は、現行では露光波長よりも長波長の光を用い、その透過光強度を測定する方式をとっており、現行の検査波長200〜300nmの範囲で、光半透過部(位相シフタ一部)の光透過率が40%以下となることが望ましいとされる。すなわち40%以上だと、光透過部とのコントラストが取れず、検査精度が悪くなる。第1の層を遮光機能が高い材料とする場合、材料としては、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ランタン、タンタル、タングステン、シリコン、ハフニウムから選ばれる一種又は二種以上の材料からなる膜あるいはこれらの窒化物なとが挙げられる。本発明では、第1の層として、第1の層及び第2の層を同じエッチング媒質で連続してエッチングできるようにするため、これらの材料の中から、シリコン、又はシリコンと金属M(M:モリブデン、タンタル、タングステン、クロム、ジルコニウム、ジルコニア、ハフニウム)からなる材料を選択している。第1の層の膜厚は、第2の層よりも十分薄い膜厚で導入することが望ましく、200オングストローム以下の膜厚が適当である。すなわち、200オングストロームを上回ると、露光波長での光透過率が3%を下回る可能性が高い。この場合は、SiOxy膜と第1の層の2層で位相角及び透過率を調整することとなる。具体的には、第1の層自体の露光波長(波長140〜200nm、又は157nm付近、又は193nm付近)に対する透過率は、3〜40%とし、SiOxy膜と積層したときの透過率が3〜40%となるように調整することが好ましい。第1の層を設ける場合、光透過部に相当する部分の表面に露出した第1の層は除去可能である必要がある。これは、第1の層が光透過部を覆ってしまうと、光透過部の透過率の減少が起こるからである。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0014】
(実施例1〜2)
実施例1〜2は、F2エキシマレーザ露光に対応したハーフトーン型位相シフトマスクの具体的態様であり、いずれも基板に合成石英基板を使用し、基板と第2の層であるSiOxy層の間にエッチング終点検出層である第1の層を設けている。
(成膜)
まず、合成石英基板上に、エッチング終点検出層である第1の層、およびSiOxyからなる第2の層を順に積層する。本実施例ではスパッタリング法により作製した。2層膜を構成する第1の層A、第2の層Bの基本組成および、ターゲットやスパッタガスの種類等の条件、そして各層の膜厚は、各実施例ごと、表1に示す通りである。また、第2の層Bの膜組成等を表2に示す。なお、層A、Bそれそぞの膜厚は、各層の位相シフト量の総和が波長157nmにおいて180°となるよう、上述した数式(1)を利用して調整している。
(光学特性)
作製した2層膜の透過率を、真空紫外分光光度計を用いて測定したところ、F2エキシマレーザの波長157nmにおける透過率は表3のようになり、エッチング終点検出層である第1の層を設けた場合でも、ハーフトーン位相シフトマスクとして必要十分な3〜40%の範囲の光透過率が得られた。
また、F2エキシマレーザ露光用ハーフトーン型位相シフトマスクの検査波長は250nm前後とされているが、該範囲における透過率がいずれも40%以下となっていることから、十分な検査精度が得られることが期待できる。
【0015】
【表1】
Figure 0004027660
【表2】
Figure 0004027660
【表3】
Figure 0004027660
【0016】
(加工)
実施例1,2では、作製した2層膜上にレジストを塗布し、露光・現像工程を経てレジストパターンを形成する。その後、そのレジストパターンをマスクとし、CF4ガスによって2層膜の上層の第2の層B(SiOxy)ならびに下層の第1の層Aをエッチングする。その際の、エッチング時間と、波長678nmの光に対する被エッチング部分の反射光強度との関係をプロットしたところ、それぞれ図1のようになり、ある時間で、反射光強度が急激に減少することが確認された。その時点でエッチングを停止したところ、第1の層A,第2の層Bともレジストパターンに基づいた、良好なパターン形状が得られた。すなわち、実施例1における第1の層Aが、透明基板に対するエッチング終点検出が実質的に可能な材料であり、しかも第1の層と第2の層は同じエッチング媒質で連続的にエッチングが可能であることが確認できる。なお、波長678mmにおける屈折率(複素屈折率実部)はそれぞれ、QZの屈折率(678nm)=1.456、SiONの屈折率(678nm)=1.65、MoSixの屈折率(678nm)=4.8、Siの屈折率(678nm)=4.7であった。このように、第1の層A(Si)の屈折率が合成石英基板、第2の層B(SiOxy)と比べて1以上大きく、かつ実施例1の第1の層A(Si)の透明基板に対するエッチング選択比が約10倍、実施例2の第1の層A(MoSi)の透明基板に対するエッチング選択比が約5倍と大きいため、実施例1の第1の層A(Si)又は実施例2の第1の層A(MoSi)のエッチング開始〜終了で、図1のような反射光強度の急激な変化が得られることから、終点検出が容易になる。
また、基板のオーバーエッチングによる位相シフト量の変化の影響十分に小さいこと確認した。
【0017】
なお、実施例1において、第1の層であるSi膜と第2の層であるSiON膜はともにSiターゲットを用いているため、同一ターゲットによる連続成膜も可能であるが、プロセス上はそれぞれの層に対し別のSiターゲットを用いることが望ましい。同一のSiターゲットを用いて連続成膜した場合、第2の層であるSiONを成膜した後に、ターゲット表面に酸化層ないし窒化層が生じるため、次に2層膜を成膜する際に、第1の層であるSi膜中に酸素や窒素が含まれることになり、その結果、光学特性等に悪影響を及ぼすことになる。また同様の理由から、第1の層であるSiの成膜と、第2の層であるSiONの成膜は、別々のチヤンバーで行うことが望ましい。すなわち、本発明には以下の構成が含まれる。
(構成8)透明基板上に第1の層及び第2の層を順次形成して少なくとも第1の層及び第2の層を含む位相シフター膜を形成する際に、前記第1の層と第2の層は同じエッチング媒質で連続的にエッチングが可能であり、かつ前記第2の層は透明基板に対するエッチング終点検出が実質的に困難又は不可能な材料であり、前記第1の層は、透明基板に対するエッチング終点検出が実質的に可能な材料を選択する工程と、
前記第1の層と第2の層を別々のターゲットを用いて成膜することを特徴とするハーフトーン型位相シフトマスクブランクの製造方法。
(構成9) 前記第1の層と第2の層の成膜を別々のチャンバーで行うことを特徴とする構成8記載のハーフトーン型位相シフトマスクブランクの製造方法。
(構成10)透明基板上に第1の層及び第2の層を順次形成して少なくとも第1の層及び第2の層を含む位相シフター膜を形成する際に、前記第1の層と第2の層は同じエッチング媒質で連続的にエッチングが可能であり、かつ前記第2の層は透明基板に対するエッチング終点検出が実質的に困難又は不可能な材料であり、前記第1の層は、透明基板に対するエッチング終点検出が実質的に可能な材料を選択する工程と、
前記第1の層と第2の層を同じエッチング媒質で連続的にエッチングする工程と、
前記第1の層の透明基板に対するエッチング終点検出後、エッチングを終了する工程と、を有することを特徴とするハーフトーン型位相シフトマスクブランクの製造方法。
【0018】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、露光光源の短波長化に伴い透明基板と位相シフター膜とが組成的に類似するかあるいは光学特性的に類似する場合におて、透明基板をオーバーエッチングをすることを防止し、かつ比較的単純な工程で製造できかつ加工が容易なハーフトーン型位相シフトマスクブランク及びハーフトーン型位相シフトマスクを提供できる。
また、140nm〜200nmの露光波長領域、特にF2エキシマレーザの波長である157nm付近、及びArFエキシマレーザの波長である193nm付近における高透過率品(透過率8〜30%)で使用可能なハーフトーン型位相シフトマスク及びその素材となるハーフトーン型位相シフトマスクブランクを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で作製した試料のエッチング時間と反射光強度との関係を示す図である。

Claims (24)

  1. 透明基板上に、露光光を透過させる光透過部と、露光光の一部を透過させると同時に透過した光の位相を所定量シフトさせる位相シフター部を有し、前記光透過部と位相シフター部の境界部近傍にて各々を透過した光が互いに打ち消し合うように光学特性を設計することで、被露光体表面に転写される露光パターン境界部のコントラストを良好にしたハーフトーン型位相シフトマスクを製造するために用いるハーフトーン型位相シフトマスクブランクであり、
    透明基板上に前記位相シフター部をエッチング加工によって形成するための位相シフター膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクブランクにおいて、
    前記位相シフター膜が、透明基板上に順次形成された第1の層及び第2の層を有し、前記第1の層と第2の層は同じエッチング媒質で連続的にエッチングが可能であり、かつ
    前記第1の層が、Si、MSix(M:Mo,Ta,W,Cr,Zr,Hfの一種又は二種以上)から選ばれる一種の材料からなり、
    前記第2の層が、SiO x y 又はこれにM(M:Mo,Ta,W,Cr,Zr,Hfの一種又は二種以上)を、M/(Si+M)×100が10原子%以下となるような範囲で含有させた材料からなるものであり、
    前記第2の層と透明基板とのエッチング終点検出光における屈折率差が0.5以下であり、前記第1の層と透明基板とのエッチング終点検出光における屈折率差が前記第2の層と透明基板とのエッチング終点検出光における屈折率差よりも大きいことを特徴とするハーフトーン型位相シフトマスクブランク。
  2. 前記位相シフター膜が、透明基板上に順次形成された第1の層および第2の層の2層構造であり、前記第1の層は主に透過率を調整する層であり、前記第2の層は主に位相を調整する層であることを特徴とする請求項に記載のハーフトーン型位相シフトマスクブランク。
  3. 前記エッチング終点検出光は、波長680nmの光であることを特徴とする請求項1又は2に記載のハーフトーン型位相シフトマスクブランク。
  4. 前記第1の層と前記透明基板とのエッチング終点検出光における屈折率差が0.8以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のハーフトーン型位相シフトマスクブランク。
  5. 前記第1の層の膜厚は、10〜200オングストロームであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のハーフトーン型位相シフトマスクブランク。
  6. 前記第1の層の、140〜200nmの露光波長に対する透過率は、3〜40%であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のハーフトーン型位相シフトマスクブランク。
  7. 前記位相シフター膜は、140〜200nmの露光波長に対する透過率が3〜40%であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のハーフトーン型位相シフトマスクブランク。
  8. 前記位相シフター膜は、140〜200nmの露光波長に対する透過率が8〜40%であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のハーフトーン型位相シフトマスクブランク。
  9. 前記第1の層及び前記第2の層は、エッチング媒質としてフッ素系ガスによってドライ エッチングされる材料であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のハーフトーン型位相シフトマスクブランク。
  10. 前記第1の層は、Si、MoSix、TaSix、WSix、CrSix、ZrSix、又はHfSixからなることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のハーフトーン型位相シフトマスクブランク。
  11. 前記第1の層は、Siからなることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のハーフトーン型位相シフトマスクブランク。
  12. 前記第2の層がSiOxNyからなり、酸素が40原子%以上であることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のハーフトーン型位相シフトマスクブランク。
  13. 前記第2の層は、前記第1の層より露光光に対する位相シフト量が大きいことを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載のハーフトーン型位相シフトマスクブランク。
  14. 請求項1〜13のいずれかに記載のハーフトーン型位相シフトマスクブランクにおける位相シフター膜を、所定のパターンが得られるように選択的に除去するパターニング処理を施すことにより得られた、光透過部と位相シフター部とからなるマスクパターンを有することを特徴とするハーフトーン型位相シフトマスク。
  15. 請求項14に記載のハーフトーン型位相シフトマスクを用いてパターン転写を行うことを特徴とするパターン転写方法。
  16. 透明基板上に、露光光を透過させる光透過部と、露光光の一部を透過させると同時に透過した光の位相を所定量シフトさせる位相シフター部を有し、前記光透過部と位相シフター部の境界部近傍にて各々を透過した光が互いに打ち消し合うように光学特性を設計することで、被露光体表面に転写される露光パターン境界部のコントラストを良好にしたハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法において、
    透明基板上に、前記位相シフター部をエッチング加工によって形成するための位相シフター膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクブランクであって、
    前記シフター膜は、透明基板上に順次形成され、同じエッチング媒質で連続的にエッチングが可能な第1の層及び第2の層を有し、
    前記第2の層と透明基板とのエッチング終点検出光における屈折率差が0.5以下であり、かつ
    前記第1の層と透明基板とのエッチング終点検出光における屈折率差が前記第2の層と透明基板とのエッチング終点検出光における屈折率差よりも大きい、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクを用意し、
    前記第1の層、及び前記第2の層からなる2層膜上にレジストを塗布し、露光及び現像工程によってレジストパターンを形成し、
    前記レジストパターンをマスクとし、前記2層膜の上層である前記第2の層、及び下層である前記第1の層を、同じ媒質で連続的にエッチングし、
    前記エッチングの際、被エッチング部分のエッチング終点検出光に対する反射光強度の変化によって、エッチング終点を検出し、それによってエッチングを停止することを特徴とするハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法。
  17. 透明基板上に、露光光を透過させる光透過部と、露光光の一部を透過させると同時に透過した光の位相を所定量シフトさせる位相シフター部を有し、前記光透過部と位相シフター部の境界部近傍にて各々を透過した光が互いに打ち消し合うように光学特性を設計することで、被露光体表面に転写される露光パターン境界部のコントラストを良好にしたハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法において、
    透明基板上に、前記位相シフター部をエッチング加工によって形成するための位相シフター膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクブランクであって、
    前記シフター膜は、透明基板上に順次形成され、同じエッチング媒質で連続的にエッチングが可能な第1の層及び第2の層を有し、
    前記第1の層が、Si、MSix(M:Mo,Ta,W,Cr,Zr,Hfの一種又は二種以上)から選ばれる一種の材料からなり、
    前記第2の層が、SiOx、SiOxNy又はこれらにM(M:Mo,Ta,W,Cr,Zr,Hfの一種又は二種以上)を、M/(Si+M)×100が10原子%以下となるような範囲で含有させた材料からなるものである、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクを用意し、
    前記第1の層、及び前記第2の層からなる2層膜上にレジストを塗布し、露光及び現像工程によってレジストパターンを形成し、
    前記レジストパターンをマスクとし、前記2層膜の上層である前記第2の層、及び下層である前記第1の層を、同じ媒質で連続的にエッチングし、
    前記エッチングの際、被エッチング部分のエッチング終点検出光に対する反射光強度の変化によって、エッチング終点を検出し、それによってエッチングを停止することを特徴とするハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法。
  18. 前記第1の層と前記透明基板との、前記エッチング終点検出の際に用いるエッチング終点検出光における屈折率差が0.8以上であることを特徴とする請求項16又は17に記載のハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法。
  19. 前記第1の層及び前記第2の層をエッチングするエッチング媒質として、フッ素を含むガスを用いることを特徴とする請求項16から18のいずれかに記載のハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法。
  20. 前記エッチング媒質は、CHF 、CF 、SF 、C 、又はその混合ガスであることを特徴とする請求項19に記載のハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法。
  21. 前記第1の層は、前記第2の層より露光光に対する透過率が高く、前記第2の層は、前記第1の層より位相シフト量が大きいことを特徴とする請求項16から20のいずれかに記載のハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法。
  22. 前記位相シフター膜は、140〜200nmの露光波長に対する透過率が3〜40%であることを特徴とする請求項16から21のいずれかに記載のハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法。
  23. 前記位相シフター膜は、140〜200nmの露光波長に対する透過率が8〜40%であることを特徴とする請求項16から22のいずれかに記載のハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法。
  24. 前記ハーフトーン位相シフトマスクの検査波長を250nmとしたとき、前記位相シフター膜の透過率が40%以下であることを特徴とする請求項16から23のいずれかに記載のハーフトーン型位相シフトマスクの製造方法。
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