JP4026792B2 - ビレットの連続鋳造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、連続鋳造でビレットを鋳造する際に生じる粒状偏析を改善する技術である。
【0002】
【従来の技術】
近年、鉄鋼業においては、省エネルギーを目的になるべく製品に近いサイズで素材を製造するいわゆるニアネットシェイプ鋳造が盛んに行われており、線材を製造する際にも従来の例えば一辺が400 mm程度あるブルームを鋳造してその後分塊圧延を行なってビレットを製造する工程から、分塊工程を省略した、小断面のビレットを直接鋳造してその後、線材を製造する圧延工程に直接ビレットを持っていく工程が開発されている。
【0003】
その際に問題になるのは、従来の分塊工程の圧延でサイズを小さくしていた粒状偏析のサイズを鋳造段階で軽減する技術である。
【0004】
この粒状偏析が大きいまま鋳片に残存すると線材に伸線する際に、部位によって硬さが違うことにより破断が生じる。
【0005】
この対策として、連続鋳造設備の二次冷却後の引き抜き矯正ロールで軽圧下を加えて粒状偏析やセンターポロシティーを軽減する方法が特にブルームでは数多く提案されている。
【0006】
ビレットの鋳造においては、特願平 8-63910号公報では内部割れの無い圧延方法として圧下量やロール径を規定、特開平2-160151号公報では捻れをなくす為の軽圧下ロールと引き続くカリバーロールでの矯正法が、特開平6−63715号公報では内部割れ防止の為の軽圧下前のガイドロールの設置、特開平9-253798号公報では丸ビレット製造の際にノズル詰まりの防止の為に溶鋼を加熱した後に鋳造してモールド内で電磁撹拌した後にクレーターエンドで軽圧下する方法が示されている。
【0007】
また、ブルーム鋳造においては、例えば鋳型内の電磁撹拌装置を用いて鋳片の中心部を等軸晶化した後に軽圧下して粒状偏析粒径のサイズを減少させるものも報告されている。報告では、中心部が等軸晶化すると偏析成分の濃化した溶鋼が分散しやすく、いわゆるV偏析にはなるが、軽圧下を加えることによりV偏析が生じる部分の等軸晶化した半凝固状態の溶鋼流動を抑制出来、粒状偏析のサイズを軽減できるとしている。また、溶鋼流動が生じる鋳片の中心固相率は0.05ないし0.1 と言われている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来例から見られるように、ビレット鋳造ではそのサイズが小さい為に、ノズル詰まりの問題、鋳片の捻れの問題が生じている。
【0009】
また、ビレットを製造する連鋳機の設備的特徴として、鋳片のサイズが小さい為に凝固する長さ(クレーターエンドまでの長さ)が短い。そのために、従来より、連鋳鋳片の中心部の偏析を極力防止するためには、スラブやブルームで広く用いられてきた”軽圧下”方法を、ビレットに用いる為には以下の点で困難な点が有った。
【0010】
1.ビレット連鋳機は鋳片を支えるロールの本数が少ない。特にロコップ型と言われる連鋳機は単純な構造の連鋳機で設備費、操業面でメリットも有るが、軽圧下をする際には湾曲部に軽圧下帯を設置するのは構造上困難であり、また、鋳片サイズが小さいことから凝固完了長さが従来のスラブ、ブルーム連鋳機より短い為に軽圧下するロールを設置する場所が十分に確保出来ない。
【0011】
2.一般に等軸晶の幅が大きいと中心偏析は軽減されると言われているが、ビレットはブルームに比べて鋳片サイズが小さいため、等軸晶帯の幅が小さい。即ち、ブルームでは鋳片の一辺が400mm程度あるので、中心固相率が軽圧下に影響するといわれる0.05に近くなるまでに溶鋼は十分に冷却されて過熱度を失っており、等軸晶が生成しやすいが、ビレットの例として例えば一辺が130mmの角型ビレットで0.6%程度の炭素を含む鋼を鋳造した場合は二次冷却ゾーン内の鋳片の凝固殻厚みが40mm程度に達した時点で中心固相率が0.05になり、まだ、50mm程度の液相が残っている。この位置は鋳造開始してから90秒程度しか時間も経過してない位置である。したがって、溶鋼が十分に冷やされない内に鋳片の中心部の温度が液相線以下になり、等軸晶が十分に生成されないまま軽圧下されることになる。
【0012】
この等軸晶を生成させる方法としては、鋳型に注入する溶鋼の温度を出来るだけ下げて鋳造する方法が提案されているが、ノズル詰まりを生じやすく操業に注意が必要になる。また、鋳型内電磁撹拌によって等軸晶を生成する方法も一般的であるが、この方法のみでは溶鋼過熱度が高い場合には生成した等軸晶粒が凝固するまでに大きくなり、結果的に等軸晶粒の間に生じる粒状偏析のサイズが大きくなる。
【0013】
本発明の目的は注入する溶鋼の過熱度を保ちながら、有効にサイズの小さい等軸晶を生成させて軽圧下により粒状偏析のサイズを小さくする連続鋳造方法である。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明が要旨とするところは、
(1)一辺が140mm以下の角形または直径が140mm以下の丸形の断面を持つCが0.4〜0.8%の鋼成分のビレットを連続鋳造する際に、溶鋼に最初に接する部分の銅もしくは銅合金で製作された鋳型の厚みを5mm超10mm以下として、溶鋼過熱度に応じて鋳型内の冷却水量を少なくとも(1) 式で求められる量以上として溶鋼を凝固させた後に、中心固相率が0.3から0.6の範囲でロールにより鋳片を多くても10mm以内で圧下することを特徴とするビレットの連続鋳造方法。
鋳型冷却水量(l/min)=100 ×溶鋼過熱度(℃) −1300 (1)
ここで、「溶鋼過熱度」は「タンディッシュでの溶鋼温度−液相線温度」である。
また、中心固相率=(液相線温度−鋳片中心部の温度)/(液相線温度−固相線温度)であり、該鋳片中心部の温度は、鋳型内およびその後の鋳片へのスプレー冷却による抜熱量により計算され、鋳片の表面温度の測定値で確認される。である。
【0015】
ビレットはブルームに比べて鋳造するときのサイズが小さい。ブルームのサイズは一辺が400mm〜500mmであるが、ビレットは140mm以下である。ビレットはそのサイズが小さいことから、ブルームに比べて表面積と体積の比が大きい。たとえば、400mmx500mmのブルームに比べて140mmのビレットでは表面積と体積の比は0.009と0.028とおよそ3倍になる。
したがって、鋳型の中で溶鋼が冷却される際に特に、ビレットにおいては、凝固の極めて初期の凝固殻が薄い時期に鋳型から抜熱することが、溶鋼温度を低下させる効果として顕著であることを本発明者らは見いだした。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1に鋳型冷却水流量と等軸晶率の関係を示す。ブルームではその効果が明確でないが、ビレットでは鋳型内冷却水量が増加すると等軸晶率は増加しており、タンデッシュでの溶鋼の過熱度が25℃の場合には1200l/min 以上の場合に粒状偏析軽減に有効とされる等軸晶率が30%を達成した。また、30℃の場合は1700l/min 以上で等軸晶が30%以上生成した。40℃の場合は2700l/min 以上で30%程度の等軸晶が生成したが、鋳型からの抜熱が過剰になり、現状の鋳型では凝固殻の収縮が大きくなり、鋳型との隙間が大きくなることで不均一凝固が発生した結果割れが生じた。
【0017】
また、30%以上の等軸晶率を達成する鋳型内冷却水量とタンディシュでの溶鋼過熱度の関係を式に表すと下の式1の様になることがわかった。
【0018】
式1: 鋳型冷却水量(l/min)=100 ×溶鋼過熱度( ℃)-1300
また、鋳型内で電磁攪拌した場合には、上記の攪拌しない場合に比べて等軸晶率は5%程度増加したが、粒状偏析のサイズでを小さくする観点からは式1の関係を保ちながら鋳造することが良いと判った。
【0019】
また、鋳型の銅または銅合金の厚みも等軸晶生成に与えることがわかった。10mmの厚みよりも8 mmにすると同じ溶鋼過熱度(25℃)でも生成した等軸晶率は同じ冷却水量(1700l/min) でも等軸晶率で3%程度向上した。しかし、5mm以下の厚みの鋳型は変形、磨耗の点から操業上好ましくなかった。
【0020】
ビレットの軽圧下の場合は、先に述べたようにブルームの軽圧下のように軽圧下するロールを設置する場所は十分には確保できないが、実験の結果、中心固相率0.3から0.6の範囲を多くても10mm以内の圧下を加えれば、凝固時に鋳造方向に溶鋼が吸引されて発生するといわれているV偏析は防止でき、粒状偏析は微細な等軸晶の間に分散した。この結果、湾曲部を過ぎた部分、すなわち直線部分での軽圧下が可能になった。
【0021】
この発明において、鋳片サイズの小さいビレットにおいて本効果は顕著である。特に140mm以下の鋳片サイズでは効率的に凝固開始点直後に溶鋼の冷却が行われる。このことにより、タンデッシュでの溶鋼の過熱度を操業が難しくなるまで極端に下げることなく、注入後の鋳型内での溶鋼温度を低下出来、かつ生成した等軸晶粒径も成長増加させずに偏析分散に寄与させることが出来た。溶鋼過熱度が低いと出来た等軸晶粒径が成長しない理由は等軸晶か生成する核の数が多くなるため等軸晶粒径が小さいまま保たれると考えられる。
【0022】
【実施例】
表1に実施例を比較例と対比して示す。
鋳片サイズはすべて130mm角であり、溶鋼成分は炭素濃度がおよそ0.4%から0.8%の高炭素鋼であり、実施例の等軸晶率は平均値をしめす。
【0023】
本発明の条件では粒状偏析粒径は減少して試験伸線の結果も良好と評価されるレベルであった。
【0024】
一方、鋳型内冷却水量が本願発明で規定する量よりも少ない場合には等軸晶率は低く、軽圧下を実施したにもかかわらず粒状偏析粒径も大きかった。また、上記条件に鋳型内電磁撹拌を追加した場合には等軸晶率は増加したが等軸晶粒径が大きくなりそれにより粒状偏析粒径が大きくなった。
【0025】
また、溶鋼過熱度が低く、鋳型内冷却水量が少ない場合には等軸晶率は満足して、軽圧下を実施した後の粒状偏析粒径も満足するものであったがノズル詰まりが発生して取鍋内の溶鋼をすべて鋳造することが困難であった。
【0026】
【表1】
【0027】
【発明の効果】
以上述べたとおり、この発明方法によれば、ビレットの連続鋳造機で偏析が良好な鋳片を製造することが出来、分塊圧延を省略出来ることから省エネルギーおよび炭酸ガスの発生を抑制出来、産業界に多いに貢献する。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶鋼過熱度と等軸晶率との関係を示す図
Claims (1)
- 一辺が140mm以下の角形または直径が140mm以下の丸形の断面を持つCが0.4〜0.8%の鋼成分のビレットを連続鋳造する際に、
溶鋼に最初に接する部分の銅もしくは銅合金で製作された鋳型の厚みを5mm超10mm以下として、
溶鋼過熱度に応じて鋳型内の冷却水量を少なくとも(1) 式で求められる量以上として溶鋼を凝固させた後に、
中心固相率が0.3から0.6の範囲でロールにより鋳片を多くても10mm以内で圧下することを特徴とするビレットの連続鋳造方法。
鋳型冷却水量(l/min)=100 ×溶鋼過熱度(℃) −1300 (1)
ここで、「溶鋼過熱度」は「タンディッシュでの溶鋼温度−液相線温度」である。
また、中心固相率=(液相線温度−鋳片中心部の温度)/(液相線温度−固相線温度)であり、該鋳片中心部の温度は、鋳型内およびその後の鋳片へのスプレー冷却による抜熱量により計算され、鋳片の表面温度の測定値で確認される。
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