JP3994848B2 - 鋼の連続鋳造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内部割れが少なく、中心偏析の減少、特に幅方向両端部の中心偏析の発生を低減することができる鋼の連続鋳造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼の連続鋳造方法において、鋳片の中心偏析の発生を低減することは、鋼材の特性を改善する上で重要な課題である。鋳片の中心偏析は、溶鋼の凝固末期における凝固界面でC、Mn、Si、PおよびSなどの成分元素が濃化した溶鋼がバルジングおよび凝固収縮することによるサクション流動によって鋳片の中心部(正確には、鋳片の厚さ方向の中心部であり、以下、本明細書ではこれを「鋳片の中心部」と記載する)に移動して凝固し、正偏析となって発生する。
【0003】
鋳片の中心偏析の発生を低減するには、中心部の組織を等軸晶化することによって濃化した溶鋼を分散させる方法、および凝固収縮体積を外力によって補償する方法がある。
【0004】
等軸晶化する方法には、低温で鋳造する方法、または電磁撹拌を行う方法がある。
【0005】
低温で鋳造する方法では、ノズル詰まりなどが起こり、操業の安定性を欠くことがある。また、電磁撹拌を行う方法では、凝固末期の溶鋼を強制的に流動させることができないこともあり、粗大な等軸晶が生成することがある。粗大な等軸晶では、濃化溶鋼が等軸晶間の空隙に偏在する粒状偏析を悪化させてしまうという問題やブリッジングの発生により著しい正偏析が生じることがある。なお、ブリッジングとは、等軸晶が凝固収縮分の体積補償のための未凝固溶鋼の流れ込みを妨げる現象のことである。
【0006】
凝固収縮体積を外力によって補償する方法については、最近、種々の発明が下記に示すとおり提案されている。
【0007】
(1) 鋳片中心部の固相率が0.2となる位置から0.8〜0.9となる位置に至る領域では、この領域内での全凝固収縮量を保証するように鋳片を圧下し、それ以降凝固が完了するまでの領域では、鋳片の引き抜き方向長さ当たりの鋳片厚みに対する圧下量の割合を示す圧下勾配が、0.08〜1.50(%/m)となるように圧下する方法(特許文献1、参照)。これは、いわゆる「軽圧下連続鋳造方法」である。
【0008】
(2) 鋳型から引き抜かれた鋳片に積極的にバルジングを起こさせ、鋳片内部の溶鋼厚さを増大させた状態から圧下を行う方法(特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7および特許文献8、参照)。これは、いわゆる「バルジング後圧下連続鋳造方法」である。
【特許文献1】
特許第2809186号公報
【特許文献2】
特開昭60−6254号公報
【特許文献3】
特開昭60−21150号公報
【特許文献4】
特開平1−178355号公報
【特許文献5】
特開平9−57410号公報
【特許文献6】
特開平9−206903号公報
【特許文献7】
特開平9−314298号公報
【特許文献8】
特開平10−225752号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記(1) の単なる軽圧下連続鋳造方法は、ブリッジングによる偏析が防止できない。
【0010】
上記(2) のバルジング後圧下連続鋳造方法は、ブリッジングによる偏析を防止するのには有効であるが、幅方向に不均一な中心偏析の改善効果が十分でない。これは、次の理由による。
【0011】
図1は、従来のバルジング後圧下連続鋳造法におけるバルジング時の鋳片1とサポートロール6の接触状態と圧下後の鋳片を示す模式断面図である。図1の(a)に示すように、バルジング時には鋳片1の両端部がサポートロール6と接触しなくなり、鋳片1の両端部に凝固遅れが生じる。従来のバルジング後圧下連続鋳造法は、バルジングさせるのが早すぎるために両端部の凝固遅れが著しい。このため、多量の溶鋼2、2が両端部に存在するようになり、この状態で凝固が進行した鋳片1には、図1の(b)に示すように、両端部の中心部分に未凝固の溶鋼2、2が閉じ込められる。従って、この状態で圧下して得られた鋳片1には、図1の(c)に示すように、両端部に必ず中心偏析9、9が発生する。
【0012】
本発明の目的は、バルジング時に未凝固の溶鋼が両端部の中心部分に閉じ込めらることがなく、中心偏析が少なく、かつこれが幅方向に均一に分散した鋳片を製造することができる鋼の連続鋳造法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記の鋼の連続鋳造方法にある。
【0014】
凝固シェルの厚さが70mm以上になるまでの間においては、鋳片の全幅がロールと接触するようにサポートロールの間隔を段階的に減じ、その後、鋳片の中心部に固相線クレータエンドが現れるまでの間においてバルジングさせる一方、バルジング量以下の圧下を加える鋼の連続鋳造方法。
【0015】
上記本発明の鋼の連続鋳造方法においては、段階的なサポートロール間隔の総減少量を鋳型の出口厚みの1%以上、バルジング量を鋳型の出口厚みの2〜5%とすることが望ましい。
【0016】
ここで、鋳型の出口厚みとは、鋳型短辺方向の出口の内壁間寸法、即ち内法(うちのり)寸法のことである。
【0017】
本発明者らは、上記の課題を達成するために次に述べる実験を行い、以下のことを知見し、上記の本発明を完成させた。
【0018】
バルジング後圧下連続鋳造方法に関して、バルジングを行う時期を異ならせることによって、鋳片の中心偏析の均一性を調査した。
すなわち、図2に示すとおり、サポートロールの設定間隔とメニスカスからの距離との関係を表すパターンAとBとで実験を行い、鋳片の中心偏析の発生程度を調査した。
なお、パターンAとBのいずれも、バルジング後の圧下量はバルジング量と同じに設定した。
【0019】
その結果、従来のバルジング後圧下連続鋳造方法、すなわち、バルジングを行う時期を制御することのないパターンAで表されるバルジング後圧下連続鋳造方法では、前述したとおり、鋳片の両端部の凝固遅れが著しく、両端部には必ず中心偏析が発生するため、幅方向に均一な中心偏析が得られないことが確認された。
【0020】
これに対し、バルジングを行う時期を制御してなるパターンBで表されるバルジング後圧下連続鋳造方法では、凝固シェルの厚さが70mm以上になるまでの間においてはバルジングを行わずに鋳片の全幅がロールと接触するようにサポートロールの間隔を段階的に減じ、その後、鋳片の中心部に固相線クレータエンドが現れるまでの間においてバルジングと圧下を行うことによって、幅方向の中心偏析が均一になることを確認した。
【0021】
即ち、パターンBによれば、図3の(a)に示すように、鋳片1の両端部はサポートロール6により十分に冷却されて凝固遅れが生じることがなく、両端部の凝固シェル厚さが十分に厚くなる。その結果、液相線クレータエンド以降でバルジングさせた鋳片1の両端部には、図3の(b)に示すように、過剰な溶鋼2は存在せず、凝固進行後の鋳片1は図3の(c)に示すようになり、これを圧下すると、図3の(d)に示すような鋳片1となり、中心偏析9が幅方向に均一に分散するのである。
【0022】
【発明の実施の形態】
中心偏析が幅方向に均一に分散した鋳片を得るためには、凝固シェルを幅方向に均一に成長させることと、幅方向に均一な圧下を加えることである。
【0023】
(A)凝固シェルの厚さが70mm以上になるまでの間においては鋳片の全幅がロールと接触するようにサポートロールの間隔を段階的に減じ、バルジングを起こさせないことについて
鋳片の連続鋳造においては、鋳型での凝固開始から凝固収縮と降温による熱収縮により厚み方向の収縮が始まり、この収縮と同時に凝固シェルも成長する。
【0024】
凝固シェルの成長挙動は、シェルが薄いときには冷却律速成長であり、シェルが厚くなるとシェルは熱抵抗が高いので内部の熱移動律速成長となる。これらは、サポートロールとシェル間の熱伝達係数をhr(W/m2・℃)、シェルの厚さをd(m)、シェルの熱抵抗をλ(W/m・℃)、シェルと溶鋼の界面温度をTs(℃)、サポートロールの温度をTr(℃)とした場合、下記の(1) 式で求められる熱流束Q(W/m2)として定量的に表すことができる。
【0025】
Q={1/((1/hr)+(d/λ))}×(Ts−Tr)・・・・・(1)
ここで、鋼の連続鋳造における上記の各因子のうち、一般に、λは25W/m・℃、Tsは1500℃、Trは100℃であり、本発明者らの調査によれば、hrは1500W/m2・℃であった。そこで、dを変数にしてこれらの値を上記の(1) 式に代入し、熱流束Qとシェル厚さdとの関係を調べた。
【0026】
図4は、その調査結果を示す図で、図からわかるように、シェルの成長はシェル厚さが70mm未満の領域では冷却律速成長であり、サポートロールによる冷却の影響を大きく受けることが判明した。そして、この領域において鋳片の両端部がサポートロールに接触していない場合には、両端部の凝固遅れが著しく、その後にバルジングさせて圧下しても幅方向の中心偏析が解消されないることがわかった。
【0027】
このため、本発明では、シェル厚さが70mm以上になるまでの間においては鋳片の全幅にロールが接触するようにサポートロールの間隔を段階的に減じることとした。
【0028】
一方、上記の収縮量は、例えば、凝固体積収縮率αを3.8×10−2、降温線収縮率βを2.0×10−5(1/℃)とし、凝固シェルの温度を仮定することで見積もることができる。即ち、凝固収縮による厚み方向の収縮量は、近似的に「鋳型厚み×(α/3)」で求めることができ、鋳型厚みの約1.3%の収縮が凝固開始とともに発生する。また、降温による厚み方向の熱収縮量は、「鋳型厚み×β×△T」で求めることができ、1500℃から1000℃まで△T=500℃の温度低下がある場合、鋳型厚みの1%の収縮が温度の低下とともに発生する。
【0029】
図5は、その一例を示す図で、鋳型厚みが254mmの場合における炭素鋼からなる鋳片厚さ、具体的には幅方向の両端における短辺の鋳片厚さと凝固シェルの温度の経時的な変化を示している。
【0030】
図5からわかるように、収縮量(凝固収縮量+熱収縮量)は約5mmで、メニスカスからおよそ2mの位置までの間に生じ、その後はほとんど変化しない。そして、この収縮量により鋳片の両端部がサポートロールと非接触となって両端部に凝固遅れが生じることに注目し、両端部に凝固遅れを生じさせることがないサポートロール間隔の減少量と好ましい減少位置に関する調査を、下記の鋲打ち法によりおこなった。
【0031】
即ち、鋲打ち法とは、表面をNiでコーティングした鋲を鋳片の幅方向の複数箇所に打ち込み、幅方向の凝固の均一性を調べる方法であり、Niの融点約1450℃は鋼の固相線温度に近いため、鋲を打ち込んだ位置での凝固完了後の鋳片厚さ方向のNi含有量から凝固シェルの厚さを知ることができる。
【0032】
その結果、凝固が最も遅れるのは、鋳片の幅の大小にかかわらず、幅方向の端面、言い換えれば短辺の端面からの距離が150〜200mmの位置である。また、この凝固が最も遅れる部分の凝固シェル厚さをD2、幅方向の中央位置における凝固シェル厚さをD1とした場合、D2とD1の差、即ち凝固遅れ量δ(=D1−D2)が2mm以下であれば、幅方向の両端部に凝固遅れがより一層生じにくいことが判明した。
【0033】
そこで、短辺の端面からの距離が200mmの位置における凝固シェル厚さD2と幅方向の中央位置における凝固シェル厚さD1を測定し、2mm以下の凝固遅れ量δが確保できるサポートロール間隔の減少量とメニスカスからの距離との関係を調べた。
【0034】
図6は、鋳造速度Vを1.2m/分としたときの上記の調査結果を示す図である。なお、縦軸のロール間隔減少率は鋳型の出口厚みに対する割合である。また、図中の液相線クレータエンドと固相線クレータエンドは、前記鋲打ち法から、一次元熱伝導解析により推定した位置である。
【0035】
図6からわかるように、幅方向の両端部における凝固遅れをなくすためには、メニスカスから5mまでの範囲、言い換えれば凝固シェルの厚さが70mmになるまでの間において、サポートロールの間隔の総減少率が鋳型の出口厚みの1%以上となるように絞り込むのが好ましいことがわかる。これは、サポートロールの接触による冷却改善効果は、凝固シェルが薄いほど小さな絞り込みで大きな効果が得られるということであり、これは図4の調査結果と一致する。
【0036】
なお、幅方向の両端部における凝固遅れは、図6からわかるように、鋳型の出口厚みに対するロール間隔の総減少率を大きくすれば、液相線クレータエンド以降でも防止できる。従って、鋳片の全幅がロールに接触するようにサポートロールの間隔を狭める区間は、凝固シェルの厚さが70mmを超える位置にまで延長してもよい。しかし、あまり下流側にまで延長しすぎると、シェルの厚さが厚くなってバルジングしにくくなるだけでなく、少ないバルジング量でも両端部の凝固シェル内面に作用する曲げモーメントが大きくなって内部割れを発生させる恐れがある。このため、その下流側の限界位置は鋳片の中心部に液相線クレータエンドが現れる位置の近傍までとするのがよい。
【0037】
なお、上記の総減少率の上限は規定しない。これは、総減少率が大きいほど、鋳片の全幅をより確実にサポートロールに接触させることができ、両端部の凝固遅れ防止効果がより確実になるからである。しかし、あまり大きくしすぎると、内部割れを発生させる恐れがあるので、その上限は3%程度とするのがよい。
【0038】
(B)凝固シェルの厚さが70mm以上になる位置から固相線クレータエンドが現れる位置までの間においてバルジングを起こさせ、バルジング量以下の圧下を加えることについて
前述したように、凝固シェルの厚さが70mm以上になるまでの間においてはバルジングを起こさせることなくサポートロール間隔を鋳片の全幅がロールと接触するように段階的に減じれば、鋳片の両端部に凝固遅れが生じなくなって幅方向の凝固シェル厚さがほぼ均一になる。その結果、この後にバルジングさせても、鋳片の両端部は短辺の凝固シェルに拘束されてバルジングが抑制されるため、バルジング状態の鋳片の両端部の中心部に存在する未凝固の溶鋼量が従来のバルジング後圧下連続鋳造法に比べて大きく減少し、その後に圧下を加えても、鋳片の両端部の中心部に未凝固の溶鋼が取り残されることはない。
【0039】
しかし、バルジング後に加える圧下は、バルジング量以下の圧下量で圧下する必要がある。これは、図5にみるごとく、鋳片の短辺長さの収縮量は約5mmで、メニスカスからおよそ2mの位置までの間に生じ、その後はほとんど変化しないので、バルジング量を超える圧下量で圧下しても短辺の凝固シェルに拘束されて端部が塑性変形しないために圧下が端部の凝固界面には十分に伝わらず、中心偏析の改善効果がないからである。
【0040】
バルジング量は鋳型の出口厚みの2〜5%とするのがよい。これは、バルジング量が鋳型の出口厚みの2%未満では、短辺の凝固シェルを塑性変形させない圧下範囲における幅方向の中心偏析の均一化効果が不十分であり、逆に5%を超えると内部割れが発生しやすくなるからである。このことは、後述する実施例の結果からも明らかである。
【0041】
以下、本発明の効果を実施例に基づいて説明する。
【0042】
【実施例】
使用した連続鋳造設備は、鋳型が短辺方向の出口の内壁間寸法(厚さ)が254mm、長辺方向の内壁間寸法(幅)が2000mm、長さが900mm、テーパが1/450のテーパ鋳型であり、垂直部の長さが3m、機長が30mの垂直曲げ型である。
【0043】
図7は、上記の連続鋳造設備を模式的に示した図である。この図は、鋳片1の内部の凝固の状況を説明するため、垂直型連続鋳造装置とした。
【0044】
溶鋼2は、タンデイッシュ3から浸漬ノズル4を介して鋳型5内に注入される。鋳型5は、内部が水冷されており、注入された溶鋼2は鋳型5の内面に接して凝固が開始し、凝固シェルが生成する。凝固シェルが厚くなり引き抜きが可能となった鋳片1は、サポートロール6で支持されつつ、それらのロール間に設けた冷却水ノズル7によって冷却されながら、ピンチロール8によってほぼ一定の引き抜き速度V(鋳造速度ともいう)で連続的に引き抜かれる。サポートロール6は、垂直部には左右一対、湾曲部のほぼ水平部では上下一対に配置され、それぞれのロール間隔(鋳片の厚さ方向の距離)を任意に変えられるような移動装置6−1(図には液相線クレータエンド以降のサポートロールについてのみ示してある)が設けられている。
【0045】
図に示すように、本発明においては、凝固シェルの厚さが70mm以上になるまでの間にはバルジングを生じさせない。このため、凝固シェルの厚さが70mm未満の間のサポートロール6の間隔は、鋳片の全幅がロールと接触するように段階的に狭められている。
【0046】
一方、凝固シェルの厚さが70mm以上になる位置から固相線クレータエンドが現れる位置までの間においてバルジングを生じさせ、次いで圧下を加える。このため、凝固シェルの厚さが70mm以上になる位置以降のサポートロール6のうち、上流側のサポートロール6の間隔は所定量のバルジングを生じさせのに必要なロール間隔に設定され、下流側のサポートロール6の間隔は、所定量の圧下を加えるに必要なロール間隔に設定されている。
【0047】
得られた鋳片は、横断面を研磨した後、硝酸濃度が25体積%の硝酸水溶液を用いてエッチングし、正偏析の残存長さ率を求めて評価した。具体的には、図8に示すように、幅方向の正偏析の残存長さW1、W2、…を測定し、下記の(1) 式により残存長さ率を求めた。なお、正偏析の判定は、鋳片厚みの中心部に周囲よりも黒色濃く腐食された部分で、その厚みが0.5mm以上ある部分とした。
【0048】
残存長さ率(%)={(W1+W2+…)/W}×100・・・・(1)
表1に、具体的な鋳造条件および鋳片の性能(幅方向の中心偏析の均一程度と内部割れの有無)を示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示すように、本発明の方法(試験番号1〜5)によった場合は、偏析残存長さ率は5%以下であり、良好な中心偏析レベルが達成された。ただし、試験番号4は、バルジング量が6%と大きすぎるためにバルジングによる内部割れが発生した。
【0051】
これに対し、何らの対策も講じない、即ち、通常の方法によった場合(試験番号6)は、幅の80%以上に偏析が残存した。また、凝固シェルの厚さが70mm以上になるまでの間のサポートロールの間隔を通常の方法による熱収縮量のみを補償する間隔に設定し、その後にバルジングと圧下のみをおこなった場合(試験番号7)は、両端部に長い正偏析が生じ、幅の20%に偏析が残存した。これは、鋳片の全幅がロールに接触する、即ち、熱収縮量と凝固収縮量の合計収縮量を補償するように最初にサポートロール間隔を段階的に減じないことで、端部に凝固遅れが発生したためである。これとは逆に、鋳片の全幅がロールに接触するように最初にサポートロール間隔を段階的に減じても、その後にバルジングと圧下をおこなわない場合(試験番号8)は、幅の50%に偏析が残存した。
【0052】
一方、本発明例の試験番号3に対して、圧下量をバルジング量よりも大きくした場合(試験番号9)は、試験番号7と同様に幅の20%に偏析が残存した。これは、短辺の凝固シェルを塑性変形させる圧下で、端部が均一に圧下されなかったためである。
【0053】
【発明の効果】
本発明の鋼の連続鋳造方法によれば、凝固シェルの厚さが70mm以上になるまでは鋳片の全幅をサポートロールに接触させて両端部の凝固遅れを防ぎ、その後固相線クレータエンドに至るまでの間にバルジングさせ、バルジング量以下の圧下を加えるので、内部に割れが少なく、中心部の偏析が改善された鋳片を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のバルジング後圧下連続鋳造方法の問題点を説明するための図である。
【図2】従来のバルジング後圧下連続鋳造方法における処理パターンと本発明のバルジング後圧下連続鋳造方法における処理パターンを示す図である。
【図3】本発明のバルジング後圧下連続鋳造方法を説明するための図である。
【図4】凝固シェルの厚さと熱流束との関係を示す図である。
【図5】実験結果を示す図で、サポートロールの設定間隔、鋳型厚み、鋳片の収縮量、鋳片の短辺厚さおよび凝固シェルの温度とメニスカスからの距離との関係を示す線図である。
【図6】実験結果を示す図で、サポートロールの鋳型厚みに対するロール間隔減少率と鋳片の幅方向の中央部と端部の凝固シェルの厚さ差δとの関係を示す図である。
【図7】実施例で使用した垂直曲げ型連続鋳造設備の模式図である。
【図8】実施例における中心偏析の残存長さ率の求め方を説明するための図である。
【符号の説明】
1:鋳片、
2:溶鋼、
3:タンディシュ、
4:浸漬のズル、
5:鋳型、
6:サポートロール、
6−1:移動装置、
7:冷却水ノズル、
8:ピンチロール、
9:中心偏析。
Claims (2)
- 凝固シェルの厚さが70mm以上になるまでの間においては、鋳片の全幅がロールと接触するようにサポートロールの間隔を段階的に減じ、その後、鋳片の中心部に固相線クレータエンドが現れるまでの間においてバルジングさせる一方、バルジング量以下の圧下を加えることを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
- 段階的なサポートロール間隔の総減少量を鋳型の出口厚みの1%以上、バルジング量を鋳型の出口厚みの2〜5%とすることを特徴とする請求項1に記載の鋼の連続鋳造方法。
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JP2000218350A (ja) | 連続鋳造方法 |
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