JP3488656B2 - 鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

鋼の連続鋳造方法

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JP3488656B2 JP10060499A JP10060499A JP3488656B2 JP 3488656 B2 JP3488656 B2 JP 3488656B2 JP 10060499 A JP10060499 A JP 10060499A JP 10060499 A JP10060499 A JP 10060499A JP 3488656 B2 JP3488656 B2 JP 3488656B2
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【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、連続鋳造で製造さ
れるスラブ鋳片の中心偏析を、連続鋳造のプロセスで圧
下を行なうことによって、初期から末期までのできるだ
け広い領域に亘って実用上問題のないレベルまで低減す
る為の鋼の連続鋳造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】鋼の連続鋳造方法においてスラブ鋳片厚
み中心部に発生する偏析(中心偏析)は、解決されるべ
き重要課題の一つである。こうした中心偏析を改善する
技術としては、これまで電磁攪拌技術の適用、低温鋳
造、連鋳機内のバルジングを防止する為のロールピッチ
の短縮などの手段が採用されており、これまでにも相当
の成果が上がっている。 【0003】一方、凝固末期の凝固収縮に伴う溶鋼流動
に伴って引き起こされる偏析については、例えば特公昭
59−16862号、特公平3−6855号、同3−8
863号、同3−8864号、同4−20696号、同
4−22664号、同5−30548号等に開示されて
いる様に、凝固末期のロール間隔を制御し、未凝固鋳片
を軽圧下する技術が知られている。これらの技術によれ
ば、連続鋳造のプロセスの適切な時期(例えば、中心固
相率が0.1〜0.3の時点から流動限界固相率までの
間の適切な時期)に、適当な圧下速度(例えば、0.5
〜2.0mm/min)で圧下することが有効であるこ
とが知られている。そして、これらの軽圧下技術によっ
て、目標とする鋳造速度で鋳造された部位については、
実用上問題のないレベルまで中心偏析を低減することが
できるとされている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特許2
593367号、同2593377号、同259338
4〜6号、同2532306号等に開示されているよう
に、上記の様な技術においても凝固が開始してから完了
するまでの間で鋳造速度を変更した部位については、中
心偏析が発生し易いという問題があった。 【0005】そして、上記各特許においては、こうした
課題に対応するべく、鋳造速度の変更によって生じた偏
析悪化鋳片を判定して、こうした偏析悪化鋳片の圧延前
の加熱条件(分塊加熱条件)を高温長時間にして生じた
中心偏析の消失を図る様にしている。 【0006】ところが、鋳片の圧延前の加熱条件を高温
長時間に設定することは、コストアップやスラブ物流の
混乱を引き起こすことになる。また、連続鋳造のプロセ
スにおいては、実際に以下(1)〜(3)に示す様な領
域が存在することによって、不可避的に鋳造速度の変更
を余儀なくされているのも事実である。こうしたことか
ら、鋳造速度の変更があった場合においても、鋳造開始
から鋳造末期までの全ての領域に亘って実用上問題のな
い中心偏析品質を保証することが望まれているのが実状
である。 (1)鋳造初期における鋳造速度を一定速度までの加速
領域 (2)最終鋳造スラブの引け巣を低減する為の鋳造末期
における減速領域 (3)溶鋼温度が高かったり、次回チャージの到達遅れ
などによる減速領域 本発明は上記事情に着目してなされたものであって、そ
の目的は、鋳造速度の変更が生じた場合であっても、実
用上問題のないレベルまで中心偏析の生成を減少して改
善することができる様な鋼の連続鋳造方法を提供するこ
とにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決した本発
明の連続鋳造方法とは、スラブ鋳片を連続鋳造のプロセ
スで圧下を行なう連続鋳造方法において、許容最大鋳造
速度での凝固シェル厚みが70mm以上となる位置か
ら、許容最大鋳造速度で鋳造する時の鋳片中心部が流動
限界固相率に達する位置までの区間内を0.3〜0.7
mm/mの圧下勾配で、当該圧下勾配X(mm/m)と
前記凝固シェル厚みY(mm)が下記(1)式を満足す
る様に圧下する点に要旨を有するものである。 【0008】 Y=50X+45 ……(1) 【0009】 【発明の実施の形態】本発明者らは、鋳造速度が目標の
速度以下となった部位においても実用上問題のないレベ
ルにまで中心偏析を維持することを目的として、特に圧
下を加える時期をストランドのより上流側に延長すると
いう観点から検討を行った。その結果、許容される最大
鋳造速度で鋳造する時の凝固シェル厚みが70mm以上
となる位置から圧下を開始し、目標の最大鋳造速度(本
発明ではこれを「許容最大鋳造速度」と呼ぶ)でスラブ
中心部が流動限界固相率に達する位置まで0.3〜0.
7mm/mの圧下勾配で、更に当該圧下勾配と前記凝固
シェル厚みが所定の関係を満足する様に圧下してやれ
ば、鋳造全長に亘る広い範囲で実用上問題とならないレ
ベルまで中心偏析が改善され、内部割れ等の他の欠陥も
防止できることが判明した。 【0010】凝固末期の鋳片を圧下することによって中
心偏析を改善する為には、凝固鋳片の中心固相率が0.
1〜0.3の位置から、中心部が流動限界固相率になる
までの領域の適切な時期において、凝固収縮による溶鋼
流動を防止する程度に圧下することが有効であることが
知られている。 【0011】こうしたことから、従来の連続鋳造のプロ
セスにおいては、目標の鋳造速度を定め、その鋳造速度
で中心固相率が上記の範囲となる領域に相当する部位の
ロール間隔を調整し、目標鋳造速度で鋳造されたときに
所定の圧下量が上記領域に施される様にしている。こう
した状況を、図面を用いて説明する。 【0012】図1は、従来の連続鋳造のプロセスにおけ
る軽圧下の時期を説明する為の図である。即ち、この図
1では、上記目標鋳造速度(許容最大鋳造速度)を1.
2m/minとし、この鋳造速度で中心固相率が0.1
〜0.3(図中fs=0.3で示す)のときから、中心
固相率が0.8(fs=0.8)となる流動限界までの
範囲となる領域に相当する部位のロール間隔を調整し
て、この部位に圧下勾配が0.6mm/mの軽圧下を施
すものである。 【0013】しかしながら、この様な軽圧下を施す様に
操業条件を設定すると、当該部位が凝固中において、鋳
造速度が例えば1.2m/minから0.5m/min
に減速した場合には、中心固相率が0.1〜0.3(f
s=0.3)のときから、中心固相率が0.8(fs=
0.8)となる流動限界固相率までの領域が、図1に示
す様に鋳造の上流側に移動し、中心固相率が低い側から
適切な圧下領域が順次外れてしまい、中心偏析レベルが
改善されないことになる。 【0014】そこで本発明者らは、上記の問題を解消す
る為に、図2に示す様に鋳片圧下開始時期をより上流側
に設定して鋳造速度が減少したときでも中心固相率が
0.1〜0.3に相当する位置から圧下を開始し、且つ
鋳造速度が最大のときに中心部が流動限界固相率に達す
る位置までの区間内を圧下することが有効であると考え
た。しかしながら、この様に操業条件を設定すると、次
に示す様な若干の問題が発生した。 【0015】(1)目標鋳造速度(許容最大鋳造速度)
で鋳造したときよりも凝固シェルの薄い領域から圧下さ
れることのになるので、圧下によって凝固界面に歪が働
き、内部割れが発生し易くなる。この為に、凝固シェル
厚みが薄い時期に圧下を開始したり、圧下勾配(圧下
量)が大きくなった場合には内部割れが発生し、良質の
鋳片を得ることができない。 【0016】(2)鋳造速度が減速した場合には、鋳片
中心部が流動限界固相率を超えてから圧下されることに
なるので、この領域の鋳片を、大きい圧下勾配で強く圧
下すると凝固の小さな不均一に起因して、鋳片厚み中心
部に濃化溶鋼が残留する閉じ込めが発生し、却って局所
的な中心偏析が悪化することになる。 【0017】本発明者らは、こうした不都合が発生しな
い様な最適な圧下条件について様々な角度から検討した
結果、上記の様な構成を採用して軽圧下すれば、上記目
的が見事に達成されることを見出し、本発明を完成し
た。 【0018】以下、本発明の作用・効果について実施例
によってより具体的に示すが、下記実施例は本発明を限
定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設
計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれ
るものである。 【0019】 【実施例】C濃度が0.5〜0.6%の普通鋼を用い、
鋳片断面サイズが280mm×2100mmのスラブ連
鋳を実施した。このとき、直径:280mmのロールを
用いて初期のロール間隔を350mmとして凝固末期圧
下鋳造を行なった。 【0020】前記図1に示したロール間隔(圧下勾配:
0.6mm/m)で鋳造したときに、平均鋳造速度の変
化に応じて中心偏析レベルが如何に変化するかを調査し
た。このとき、直径:5mmのドリルによって鋳片の中
心偏析部位を幅方向に30mmピッチでドリリングし、
切粉を採取してC濃度の分析を行ない、幅方向の最大の
C濃度をCmaxとし、この値をバルクのC濃度C0で
割った値(Cmax/C0)で中心偏析の評価を行なっ
た。尚、上記平均鋳造速度とは、メニスカスから凝固位
置に到達するまでの平均鋳造速度を意味する。 【0021】その結果を図3に示すが、鋳造速度が目標
値である1.2mm/mよりも減少するにつれて、中心
偏析レベルが悪化していることが分かる。 【0022】次に、前記図2で示したロール間隔(圧下
勾配:0.6mm/m)で圧下した場合の中心偏析の鋳
造速度依存性を調査した。その結果を、前記図3の結果
(図中○印で示す)と共に図4に示すが、鋳造速度が
1.2m/minにおいて、前記図1で示したロール間
隔パターンで実施したときと比べて中心偏析レベルはば
らつきが大きく悪くなっているが、鋳造速度の変化に対
して中心偏析の変化が小さくなっており、実用上の中心
偏析レベル(Cmax/C0で1.3以下)にほぼ収ま
っていることが分かる。 【0023】図5は、鋳造速度:1.2m/minでの
圧下勾配と圧下開始時の凝固シェルの厚みの変化が鋳片
内部割れ発生程度に及ぼす影響を示すグラフである。ま
た、図6は圧下勾配と中心偏析レベルの関係を示したグ
ラフである。これらの結果から、実用上の中心偏析レベ
ルの達成に必要な圧下勾配:0.3mm/m以上の圧下
(図6)での限界の圧下開始時期は凝固シェル厚みが7
0mm(図5)であることが分かる。 【0024】一方、図7は、圧下勾配をパラメータとし
てとして平均鋳造速度(該当部位がメニスカスから凝固
位置に到達するまでの平均鋳造速度)の減速を行なった
場合の中心偏析レベルの変化を示したグラフである。こ
の結果から、明らかな様に圧下勾配が0.7mm/mを
超えると、減速時間の中心偏析のバランスが悪くなり鋳
片品質が悪化していることがわかる。 【0025】以上の結果から、本発明では圧下開始時期
は凝固シェル厚みが70mmのときとし、また圧下勾配
を0.3〜0.7mm/mと規定したのであるが、内部
割れを防止する為には、凝固シェル厚みと圧下勾配の関
係も適切に規定する必要がある。即ち、前記図5から明
らかな様に、凝固シェル厚みが圧下勾配に比べて薄過ぎ
ると内部割れが発生する危険性があるので、本発明では
図5の結果に基づき、凝固シェル厚みと圧下勾配の関係
を前記(1)式を満足する様に規定したのである。 【0026】図8に、本発明の適用前(従来技術)と適
用後で実用上問題となる中心偏析レベルが達成された部
位(中心偏析良好部位)の比率を比較して示した。これ
らの結果は、(チャージ/鋳造回数)が3の条件で行な
ったものであるが、適用前では中心偏析良好部位が65
%程度であったものが、適用後では90%まで向上して
いることが分かる。 【0027】 【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、鋳
造時の鋳造速度の変更や鋳造初期・末期の非定常部によ
る鋳片の中心偏析悪化を最小限に止めることができる連
続鋳造方法が実現できた。
【図面の簡単な説明】 【図1】従来の連続鋳造のプロセスにおける軽圧下の時
期を説明する為の図である。 【図2】本発明の連続鋳造のプロセスにおける軽圧下の
時期を説明する為の図である。 【図3】図1に示したロール間隔(圧下勾配:0.6m
m/m)で鋳造したときに、平均鋳造速度の変化に応じ
て中心偏析レベルが如何に変化するかを示したグラフで
ある。 【図4】図2で示したロール間隔(圧下勾配:0.6m
m/m)で圧下した場合の中心偏析の鋳造速度依存性を
示すグラフである。 【図5】鋳造速度1.2m/minでの圧下勾配と、圧
下開始時の凝固シェルの厚みの変化が鋳片の内部割れ発
生程度に及ぼす影響を示すグラフである。 【図6】圧下勾配と中心偏析レベルの関係を示したグラ
フである。 【図7】圧下勾配をパラメータとしてとして平均鋳造速
度の減速を行なった場合の中心偏析レベルの変化を示し
たグラフである。 【図8】本発明の適用前(従来技術)と適用後で実用上
問題となる中心偏析レベルが達成された部位(中心偏析
良好部位)の比率を比較して示したグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平11−77269(JP,A) 特開 平6−262320(JP,A) 特開 平5−220558(JP,A) 特開 平4−309446(JP,A) 特開 平9−285856(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22D 11/128 350 B22D 11/20

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 スラブ鋳片を連続鋳造のプロセスで圧下
    を行なう連続鋳造方法において、許容最大鋳造速度での
    凝固シェル厚みが70mm以上となる位置から、許容最
    大鋳造速度で鋳造する時の鋳片中心部が流動限界固相率
    に達する位置までの区間内を0.3〜0.7mm/mの
    圧下勾配で、当該圧下勾配X(mm/m)と前記凝固シ
    ェル厚みY(mm)が下記(1)式を満足する様に圧下
    することを特徴とする鋼の連続鋳造方法。 Y=50X+45 ……(1)
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