JP2004276094A - ビレットの連続鋳造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】低炭素鋼のビレット連続鋳造における鋳型1からの引抜きを円滑に行い、低炭素鋼ビレット連続鋳造の軽圧下帯5における引抜きを円滑に行い、軽圧下による高炭素鋼ビレット連続鋳造の中心偏析を改善するビレットの連続鋳造方法を提供する。
【解決手段】鋳型1下端から300mmの長さの範囲におけるスプレーノズル3による鋳片2次冷却水量密度を適正化し、鋳片バルジング量を制御して目的を達成する。即ち、炭素含有量が0.04質量%以下の低炭素鋼のビレット連続鋳造において上記水量密度を0.04m3/m2/s以上とする。炭素含有量が0.40質量%以上の高炭素鋼の軽圧下ビレット連続鋳造において上記水量密度を0.03m3/m2/s以上とする。また3m/min超の高速で鋳造する際には、電磁攪拌装置を有する鋳型を用いて、その下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.03m3/m2/s以上とする。
【選択図】 図1
【解決手段】鋳型1下端から300mmの長さの範囲におけるスプレーノズル3による鋳片2次冷却水量密度を適正化し、鋳片バルジング量を制御して目的を達成する。即ち、炭素含有量が0.04質量%以下の低炭素鋼のビレット連続鋳造において上記水量密度を0.04m3/m2/s以上とする。炭素含有量が0.40質量%以上の高炭素鋼の軽圧下ビレット連続鋳造において上記水量密度を0.03m3/m2/s以上とする。また3m/min超の高速で鋳造する際には、電磁攪拌装置を有する鋳型を用いて、その下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.03m3/m2/s以上とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼をビレットに鋳造する連続鋳造方法に関し、詳しくは、ビレット連続鋳造における鋳型直下の鋳片2次冷却方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビレットは、1辺の長さが200mm以下の角柱、あるいは直径200mm以下の円柱形状であり、150〜160mmの角柱として製造されることが多い。従来、鋼をビレットに製造するに際しては、大断面のブルームを連続鋳造法で鋳造し、このブルームを分塊圧延してビレットを形成する方法がとられていた。しかし、製造工程の短縮、省エネルギーの推進のため、直接ビレットを連続鋳造する方法が採用され、主に炭素含有量0.05〜0.3質量%の中炭素鋼を中心にビレットの連続鋳造が行われていた。
【0003】
スラブやブルーム等の鋼の連続鋳造においては、鋳型の下方にサポートロールを配置し、鋳片の凝固シェルが溶鋼の静圧で外側に膨れるバルジングの発生を抑える。それに対し、鋼をビレットに連続鋳造する方法においては、鋳片の一辺の長さが短いために、鋳片が鋳型下方に引き抜かれた後も凝固シェルのバルジング量は僅かであり、サポートロールを配置しなくても鋳造を行うことができる。ビレットの湾曲型連続鋳造装置の場合、湾曲鋳型の下の湾曲部においてはサポートロールを有さず、曲げ戻し部においてピンチロールを用いて鋳片の曲げ戻しを行う。更にピンチロールを通過した後の凝固末期の鋳片部位において、軽圧下を行うことによって鋳片の中心偏析を低減することもできる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
炭素含有量が0.04質量%以下の低炭素鋼をビレット連続鋳造すると、鋳型の下部において鋳片が鋳型と接触し、円滑な引抜きができなくなる状況が発生した。このような場合、引抜き速度が不安定となり、鋳型内の液面で湯面変動が発生し、鋳片に二重肌が発生するなどの鋳片表面品質の悪化を招くこととなる。
【0005】
また、軽圧下を行うビレット連続鋳造においては、炭素含有量が0.40質量%以上の高炭素鋼を軽圧下を行いつつビレット連続鋳造する場合において、軽圧下を行うにもかかわらず、鋳片の中心偏析粒径が3mmを超え、この中心偏析が原因して圧延時に破断が発生することがあった。
【0006】
本発明は、低炭素鋼のビレット連続鋳造における鋳型からの引抜きを円滑に行い、軽圧下による高炭素鋼ビレット連続鋳造の中心偏析を改善するビレットの連続鋳造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は第1に、炭素含有量が0.04質量%以下の鋼をビレットに鋳造する連続鋳造方法であって、鋳型下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.04m3/m2/s以上とすることを特徴とするビレットの連続鋳造方法である。
【0008】
従来、鋼のビレット連続鋳造の2次冷却は、鋳型下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.02〜0.03m3/m2/sとしていた。鋼の炭素含有量によらず、同じ冷却水量密度が採用されていた。特開昭57−130748号公報に開示されているように、鋳型直下の2次冷却水量密度は極力低く抑えることにより、鋳片の表面品質を良好に保つことができると考えられていたためである。
【0009】
本発明者らは、低炭素鋼のビレット連続鋳造における鋳型1からの引抜きが円滑に行われないのは、鋳型直下において鋳片のバルジングが発生し、そのために膨らんだ鋳片表面が鋳型下端付近において鋳型表面と接触し、それによって引抜き抵抗が増大していることが原因であることを突き止めた。同じ凝固シェル温度においては、低炭素鋼は高炭素鋼に比較して高温強度が低下することに起因する。そして、鋳型下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.04m3/m2/s以上とすることによって鋳型直下の鋳片表面温度を1100℃以下まで低下させると、凝固シェルの高温強度の増大によってバルジング発生が抑えられ、鋳片の鋳型からの引き抜き性が改善できることを明らかにし、本発明に到ったものである。
【0010】
鋳片の鋳型からの引き抜き性が改善された結果、引抜き速度の変動が減少し、鋳片表面の二重肌等の発生を防止することができ、ビレット表面品質を向上することができた。
【0011】
本発明の要旨は第2に、炭素含有量が0.40質量%以上の鋼をビレットに鋳造し、鋳造中に軽圧下を行う連続鋳造方法であって、鋳型下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.03m3/m2/s以上とすることを特徴とするビレットの連続鋳造方法である。
【0012】
炭素含有量が0.40質量%以上の高炭素鋼においては、鋳型直下の2次冷却水量密度が従来から用いられている0.02〜0.03m3/m2/s程度であっても、鋳型の下端部に鋳片が接触するようなバルジングは発生しない。高炭素鋼であるため、凝固シェルの高温強度が低炭素鋼よりも高いからである。ところが、高炭素鋼といえども従来の2次冷却水量ではバルジングを完全に防止することはできず、図2に示すように鋳片の表面は面の中央が膨れた形状を有している。本発明者らは、このような鋳片形状で軽圧下を行うと、軽圧下の効果を十分に発揮することができず、凝固後の鋳片中心部に偏析粒径が3mmを超える偏析が発生し、その結果圧延時の線材破断等の原因となることを明らかにした。偏析による品質の劣化は、炭素含有量が0.40質量%以上の高炭素鋼において特に顕著である。
【0013】
本発明者らは更に、鋳型下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.03m3/m2/s以上とすることにより、鋳型直下の鋳片表面温度を1100℃以下に低減し、その結果、炭素含有量が0.40質量%以上の高炭素鋼のバルジング量を0.5mm以下に抑制することができることを明らかにした。そして、バルジング量が0.5mm以下であれば、軽圧下を行うことによる中心偏析改善効果を十分に発揮することができ、ビレット中心部の偏析粒径を3mm以下として良好な品質のビレットを製造できる本発明に到ったものである。
【0014】
本発明の要旨は第3に、ビレットを鋳造速度3m/min超の高速で連続鋳造する方法において、電磁攪拌装置を有する鋳型を用いて、その下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.03m3/m2/s以上とすることを特徴とするビレットの連続鋳造方法である。
ビレットを3m/min以下の低い鋳造速度で鋳造する場合には、上述の方法で改善できるが、鋳造速度が3m/min超になると鋳型内での凝固シェル厚の形成が遅れ、バルジングがより顕著となることから、上述の対策のみでは不十分となり、低炭素鋼の場合、膨らんだ鋳片と鋳型下端付近の鋳型表面との接触圧が過大となり、ピンチロールでの引抜きが出来ずに鋳造を中断せざるを得ない状況となることがあった。また、高炭素鋼の場合、バルジングがより顕著に発生するため軽圧下時の偏析抑止が十分に達成できず、重大な品質の劣化が発生していた。
【0015】
本発明者らは、このような問題に対処するため、電磁攪拌装置を有した鋳型を用いて鋳型内での凝固シェル厚を均一化することで、局部的なバルジングの発生を抑えつつ、更に鋳型下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.03m3/m2/s以上とすることにより、低炭素鋼〜高炭素鋼の広い範囲においてもバルジング量を抑制し、鋳片表面の二重肌問題を改善し、まだ軽圧下不良によるビレット中心部の偏析粒径も3mm以下となり、良好な品質のビレットを製造できる本発明に到ったものである。
【0016】
なお、上記した第1〜第3の発明において、鋳型直下の2次冷却水量密度を従来より増大したが、冷却強化に伴う鋳片表面品質の変化は見られず、従来と同様の良好な表面品質を維持することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1に示すような湾曲型ビレット連続鋳造装置を例にとって本発明の実施の形態を説明する。
鋳片2は、湾曲型の鋳型1を抜け出た後はサポートロールを有しない湾曲部7を経て、ピンチロール4によって曲げ戻しを受け、更に中心偏析改善のため必要に応じて軽圧下帯5において軽圧下を行う。
【0018】
湾曲部7においてはスプレーノズル3からの冷却水により鋳片を冷却する2次冷却帯を設け、鋳片の冷却を行う。四周のノズルは同一半径上に配し、水量等は同一にする。水量については上流から下流にいくに従い減らしていくのが一般的である。
【0019】
本発明においては鋳型直下の2次冷却水量密度を従来に比較して増大するが、当該鋳型直下の冷却水スプレーノズル3については、必要水量に応じて通常使用するノズルから最適なノズルを選択することができる。ノズルは鋳片より約100〜150mmの高さに配置し、スプレー水は鋳片の幅及び引抜き方向に均一に噴霧される。
【0020】
鋳片凝固末期に軽圧下帯5で軽圧下を行う場合、軽圧下装置としては従来から用いられているロールによる軽圧下装置を用いることができる。通常、軽圧下は3対〜8対のロールによって鋳片を圧下する。圧下量はトータルで5〜15%が好適であり、鋳片を圧下する位置は、鋳片の中心固相率が10〜70%の部位とすることにより、鋳片の中心偏析を低減して良好な品質を得ることができる。
【0021】
【実施例】
鋳片サイズ122mm角の湾曲型ビレット連続鋳造装置において本発明を適用した。鋳型1は長さ800mmの水冷銅鋳型を用い、湾曲半径5mの湾曲部7を経てピンチロール4で曲げ戻し矯正を行う。湾曲部7にはサポートロールは存在せず、スプレー冷却を行っている。曲げ戻しの後にロール対7対を用いた軽圧下帯5で軽圧下を行う例も実施した。軽圧下においては、ロール対毎の圧下量を1.4mmとした。
【0022】
鋳造条件及び鋳造結果を表1に示す。尚、鋳造速度は2.5m/minである。表1において、水量密度は、鋳型下端から300mmの間の鋳片4面の平均水量密度を表示している。バルジング量は、軽圧下を行わない場合の鋳造後鋳片バルジング量(図2のh)を計測した結果である。引抜き状況は引抜き速度の変動の度合い及びオーバーフロー等のトラブルの有無によって評価した。鋳片表面品質は鋳片表面の二重肌等の発生状況によって評価した。中心偏析品質は炭素含有量0.4%以上の例についてのみ評価結果を示す。中心偏析品質は、鋳片中心部の偏析粒径が3mmを超える偏析の発生有無によって評価した。
【0023】
【表1】
【0024】
炭素含有量0.04%以下については、本発明例1に示すように、水量を増やすことで引抜きが安定し、オーバーフロー等のトラブルが回避でき、また湯面も安定するため良好な表面品位を得ることが可能になる。炭素含有量0.4%以上については、本発明例2に示すように、水量の増加により偏析を改善することができる。
【0025】
これに対し、比較例4は炭素含有量0.04%以下で水量が不十分なため、引抜き状況、鋳片表面品質ともに不良であった。また、比較例5は炭素含有量0.4%以上で水量が不十分なため、中心偏析品質が不良であった。比較例6は、炭素含有量が0.04%〜0.4%の範囲にあるため、水量は従来並みであるが引抜き状況、鋳片表面品質ともに問題は発生していない。
次に、鋳造速度3.5m/minでの例を示す。鋳造条件及び鋳造結果は表2に示す通りであり、何れも電磁攪拌装置を有する鋳型を使用している。表2の見方は表1と同じである。
【0026】
【表2】
【0027】
本発明例3に示すように、鋳造速度が大きい場合にも水量の増加により引抜きが安定し、鋳造の中断が回避でき、良好な表面品位を達成しながら生産性の大幅な向上が可能となった。また、高炭素鋼の高速鋳造時においても中心偏析品質が改善できた。
これに対し、比較例7は水量が不十分なため、電磁攪拌装置による鋳型内での凝固シェル厚均一化効果のみでは引抜き状況や鋳片表面品質は共に不良であった。また、高炭素鋼の中心偏析品質も不良となった。比較例8は、炭素含有量が0.04%〜0.4%の範囲にあるため、水量が従来並みであるも電磁攪拌装置の効果のみで高速鋳造が達成できている。
【0028】
本発明は、炭素含有量が0.04質量%以下の鋼をビレットに鋳造する連続鋳造に際し、鋳型下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.04m3/m2/s以上とすることによってバルジング発生が抑えられ、鋳片の鋳型からの引き抜き性が改善され、引抜き速度の変動が減少し、鋳片表面の二重肌等の発生を防止することができ、ビレット表面品質を向上することができた。
【0029】
本発明はまた、炭素含有量が0.40質量%以上の鋼をビレットに鋳造し、鋳造中に軽圧下を行う連続鋳造において、鋳型下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.03m3/m2/s以上とすることにより、バルジング量を0.5mm以下に抑制した。これにより、軽圧下による中心偏析改善効果を十分に発揮することができ、ビレット中心部の偏析粒径を3mm以下として良好な品質のビレットを製造することができた。
さらに本発明は、ビレットを鋳造速度3m/min超の高速で連続鋳造する際に、電磁攪拌装置を有する鋳型を用いて、その下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.03m3/m2/s以上とすることにより、低炭素鋼でのバルジング発生が抑えられ、高速鋳造下での鋳片の鋳型からの引抜き性が改善され、ビレット表面の品質が向上し、生産性も大幅に改善することができた。また、高炭素鋼の高速鋳造時においても、軽圧下による中心偏析が改善され、良好な品質のビレットを効率よく製造することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】ビレット連続鋳造装置を示す概略図である。
【図2】バルジングを説明するビレット断面図である。
【図3】高速鋳造時のビレット連続鋳造装置の概略図である。
【符号の説明】
1 鋳型
2 鋳片
3 スプレーノズル
4 ピンチロール
5 軽圧下帯
6 湯面
7 二次冷却帯
8 電磁攪拌装置
h バルジング量
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼をビレットに鋳造する連続鋳造方法に関し、詳しくは、ビレット連続鋳造における鋳型直下の鋳片2次冷却方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビレットは、1辺の長さが200mm以下の角柱、あるいは直径200mm以下の円柱形状であり、150〜160mmの角柱として製造されることが多い。従来、鋼をビレットに製造するに際しては、大断面のブルームを連続鋳造法で鋳造し、このブルームを分塊圧延してビレットを形成する方法がとられていた。しかし、製造工程の短縮、省エネルギーの推進のため、直接ビレットを連続鋳造する方法が採用され、主に炭素含有量0.05〜0.3質量%の中炭素鋼を中心にビレットの連続鋳造が行われていた。
【0003】
スラブやブルーム等の鋼の連続鋳造においては、鋳型の下方にサポートロールを配置し、鋳片の凝固シェルが溶鋼の静圧で外側に膨れるバルジングの発生を抑える。それに対し、鋼をビレットに連続鋳造する方法においては、鋳片の一辺の長さが短いために、鋳片が鋳型下方に引き抜かれた後も凝固シェルのバルジング量は僅かであり、サポートロールを配置しなくても鋳造を行うことができる。ビレットの湾曲型連続鋳造装置の場合、湾曲鋳型の下の湾曲部においてはサポートロールを有さず、曲げ戻し部においてピンチロールを用いて鋳片の曲げ戻しを行う。更にピンチロールを通過した後の凝固末期の鋳片部位において、軽圧下を行うことによって鋳片の中心偏析を低減することもできる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
炭素含有量が0.04質量%以下の低炭素鋼をビレット連続鋳造すると、鋳型の下部において鋳片が鋳型と接触し、円滑な引抜きができなくなる状況が発生した。このような場合、引抜き速度が不安定となり、鋳型内の液面で湯面変動が発生し、鋳片に二重肌が発生するなどの鋳片表面品質の悪化を招くこととなる。
【0005】
また、軽圧下を行うビレット連続鋳造においては、炭素含有量が0.40質量%以上の高炭素鋼を軽圧下を行いつつビレット連続鋳造する場合において、軽圧下を行うにもかかわらず、鋳片の中心偏析粒径が3mmを超え、この中心偏析が原因して圧延時に破断が発生することがあった。
【0006】
本発明は、低炭素鋼のビレット連続鋳造における鋳型からの引抜きを円滑に行い、軽圧下による高炭素鋼ビレット連続鋳造の中心偏析を改善するビレットの連続鋳造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は第1に、炭素含有量が0.04質量%以下の鋼をビレットに鋳造する連続鋳造方法であって、鋳型下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.04m3/m2/s以上とすることを特徴とするビレットの連続鋳造方法である。
【0008】
従来、鋼のビレット連続鋳造の2次冷却は、鋳型下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.02〜0.03m3/m2/sとしていた。鋼の炭素含有量によらず、同じ冷却水量密度が採用されていた。特開昭57−130748号公報に開示されているように、鋳型直下の2次冷却水量密度は極力低く抑えることにより、鋳片の表面品質を良好に保つことができると考えられていたためである。
【0009】
本発明者らは、低炭素鋼のビレット連続鋳造における鋳型1からの引抜きが円滑に行われないのは、鋳型直下において鋳片のバルジングが発生し、そのために膨らんだ鋳片表面が鋳型下端付近において鋳型表面と接触し、それによって引抜き抵抗が増大していることが原因であることを突き止めた。同じ凝固シェル温度においては、低炭素鋼は高炭素鋼に比較して高温強度が低下することに起因する。そして、鋳型下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.04m3/m2/s以上とすることによって鋳型直下の鋳片表面温度を1100℃以下まで低下させると、凝固シェルの高温強度の増大によってバルジング発生が抑えられ、鋳片の鋳型からの引き抜き性が改善できることを明らかにし、本発明に到ったものである。
【0010】
鋳片の鋳型からの引き抜き性が改善された結果、引抜き速度の変動が減少し、鋳片表面の二重肌等の発生を防止することができ、ビレット表面品質を向上することができた。
【0011】
本発明の要旨は第2に、炭素含有量が0.40質量%以上の鋼をビレットに鋳造し、鋳造中に軽圧下を行う連続鋳造方法であって、鋳型下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.03m3/m2/s以上とすることを特徴とするビレットの連続鋳造方法である。
【0012】
炭素含有量が0.40質量%以上の高炭素鋼においては、鋳型直下の2次冷却水量密度が従来から用いられている0.02〜0.03m3/m2/s程度であっても、鋳型の下端部に鋳片が接触するようなバルジングは発生しない。高炭素鋼であるため、凝固シェルの高温強度が低炭素鋼よりも高いからである。ところが、高炭素鋼といえども従来の2次冷却水量ではバルジングを完全に防止することはできず、図2に示すように鋳片の表面は面の中央が膨れた形状を有している。本発明者らは、このような鋳片形状で軽圧下を行うと、軽圧下の効果を十分に発揮することができず、凝固後の鋳片中心部に偏析粒径が3mmを超える偏析が発生し、その結果圧延時の線材破断等の原因となることを明らかにした。偏析による品質の劣化は、炭素含有量が0.40質量%以上の高炭素鋼において特に顕著である。
【0013】
本発明者らは更に、鋳型下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.03m3/m2/s以上とすることにより、鋳型直下の鋳片表面温度を1100℃以下に低減し、その結果、炭素含有量が0.40質量%以上の高炭素鋼のバルジング量を0.5mm以下に抑制することができることを明らかにした。そして、バルジング量が0.5mm以下であれば、軽圧下を行うことによる中心偏析改善効果を十分に発揮することができ、ビレット中心部の偏析粒径を3mm以下として良好な品質のビレットを製造できる本発明に到ったものである。
【0014】
本発明の要旨は第3に、ビレットを鋳造速度3m/min超の高速で連続鋳造する方法において、電磁攪拌装置を有する鋳型を用いて、その下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.03m3/m2/s以上とすることを特徴とするビレットの連続鋳造方法である。
ビレットを3m/min以下の低い鋳造速度で鋳造する場合には、上述の方法で改善できるが、鋳造速度が3m/min超になると鋳型内での凝固シェル厚の形成が遅れ、バルジングがより顕著となることから、上述の対策のみでは不十分となり、低炭素鋼の場合、膨らんだ鋳片と鋳型下端付近の鋳型表面との接触圧が過大となり、ピンチロールでの引抜きが出来ずに鋳造を中断せざるを得ない状況となることがあった。また、高炭素鋼の場合、バルジングがより顕著に発生するため軽圧下時の偏析抑止が十分に達成できず、重大な品質の劣化が発生していた。
【0015】
本発明者らは、このような問題に対処するため、電磁攪拌装置を有した鋳型を用いて鋳型内での凝固シェル厚を均一化することで、局部的なバルジングの発生を抑えつつ、更に鋳型下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.03m3/m2/s以上とすることにより、低炭素鋼〜高炭素鋼の広い範囲においてもバルジング量を抑制し、鋳片表面の二重肌問題を改善し、まだ軽圧下不良によるビレット中心部の偏析粒径も3mm以下となり、良好な品質のビレットを製造できる本発明に到ったものである。
【0016】
なお、上記した第1〜第3の発明において、鋳型直下の2次冷却水量密度を従来より増大したが、冷却強化に伴う鋳片表面品質の変化は見られず、従来と同様の良好な表面品質を維持することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1に示すような湾曲型ビレット連続鋳造装置を例にとって本発明の実施の形態を説明する。
鋳片2は、湾曲型の鋳型1を抜け出た後はサポートロールを有しない湾曲部7を経て、ピンチロール4によって曲げ戻しを受け、更に中心偏析改善のため必要に応じて軽圧下帯5において軽圧下を行う。
【0018】
湾曲部7においてはスプレーノズル3からの冷却水により鋳片を冷却する2次冷却帯を設け、鋳片の冷却を行う。四周のノズルは同一半径上に配し、水量等は同一にする。水量については上流から下流にいくに従い減らしていくのが一般的である。
【0019】
本発明においては鋳型直下の2次冷却水量密度を従来に比較して増大するが、当該鋳型直下の冷却水スプレーノズル3については、必要水量に応じて通常使用するノズルから最適なノズルを選択することができる。ノズルは鋳片より約100〜150mmの高さに配置し、スプレー水は鋳片の幅及び引抜き方向に均一に噴霧される。
【0020】
鋳片凝固末期に軽圧下帯5で軽圧下を行う場合、軽圧下装置としては従来から用いられているロールによる軽圧下装置を用いることができる。通常、軽圧下は3対〜8対のロールによって鋳片を圧下する。圧下量はトータルで5〜15%が好適であり、鋳片を圧下する位置は、鋳片の中心固相率が10〜70%の部位とすることにより、鋳片の中心偏析を低減して良好な品質を得ることができる。
【0021】
【実施例】
鋳片サイズ122mm角の湾曲型ビレット連続鋳造装置において本発明を適用した。鋳型1は長さ800mmの水冷銅鋳型を用い、湾曲半径5mの湾曲部7を経てピンチロール4で曲げ戻し矯正を行う。湾曲部7にはサポートロールは存在せず、スプレー冷却を行っている。曲げ戻しの後にロール対7対を用いた軽圧下帯5で軽圧下を行う例も実施した。軽圧下においては、ロール対毎の圧下量を1.4mmとした。
【0022】
鋳造条件及び鋳造結果を表1に示す。尚、鋳造速度は2.5m/minである。表1において、水量密度は、鋳型下端から300mmの間の鋳片4面の平均水量密度を表示している。バルジング量は、軽圧下を行わない場合の鋳造後鋳片バルジング量(図2のh)を計測した結果である。引抜き状況は引抜き速度の変動の度合い及びオーバーフロー等のトラブルの有無によって評価した。鋳片表面品質は鋳片表面の二重肌等の発生状況によって評価した。中心偏析品質は炭素含有量0.4%以上の例についてのみ評価結果を示す。中心偏析品質は、鋳片中心部の偏析粒径が3mmを超える偏析の発生有無によって評価した。
【0023】
【表1】
【0024】
炭素含有量0.04%以下については、本発明例1に示すように、水量を増やすことで引抜きが安定し、オーバーフロー等のトラブルが回避でき、また湯面も安定するため良好な表面品位を得ることが可能になる。炭素含有量0.4%以上については、本発明例2に示すように、水量の増加により偏析を改善することができる。
【0025】
これに対し、比較例4は炭素含有量0.04%以下で水量が不十分なため、引抜き状況、鋳片表面品質ともに不良であった。また、比較例5は炭素含有量0.4%以上で水量が不十分なため、中心偏析品質が不良であった。比較例6は、炭素含有量が0.04%〜0.4%の範囲にあるため、水量は従来並みであるが引抜き状況、鋳片表面品質ともに問題は発生していない。
次に、鋳造速度3.5m/minでの例を示す。鋳造条件及び鋳造結果は表2に示す通りであり、何れも電磁攪拌装置を有する鋳型を使用している。表2の見方は表1と同じである。
【0026】
【表2】
【0027】
本発明例3に示すように、鋳造速度が大きい場合にも水量の増加により引抜きが安定し、鋳造の中断が回避でき、良好な表面品位を達成しながら生産性の大幅な向上が可能となった。また、高炭素鋼の高速鋳造時においても中心偏析品質が改善できた。
これに対し、比較例7は水量が不十分なため、電磁攪拌装置による鋳型内での凝固シェル厚均一化効果のみでは引抜き状況や鋳片表面品質は共に不良であった。また、高炭素鋼の中心偏析品質も不良となった。比較例8は、炭素含有量が0.04%〜0.4%の範囲にあるため、水量が従来並みであるも電磁攪拌装置の効果のみで高速鋳造が達成できている。
【0028】
本発明は、炭素含有量が0.04質量%以下の鋼をビレットに鋳造する連続鋳造に際し、鋳型下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.04m3/m2/s以上とすることによってバルジング発生が抑えられ、鋳片の鋳型からの引き抜き性が改善され、引抜き速度の変動が減少し、鋳片表面の二重肌等の発生を防止することができ、ビレット表面品質を向上することができた。
【0029】
本発明はまた、炭素含有量が0.40質量%以上の鋼をビレットに鋳造し、鋳造中に軽圧下を行う連続鋳造において、鋳型下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.03m3/m2/s以上とすることにより、バルジング量を0.5mm以下に抑制した。これにより、軽圧下による中心偏析改善効果を十分に発揮することができ、ビレット中心部の偏析粒径を3mm以下として良好な品質のビレットを製造することができた。
さらに本発明は、ビレットを鋳造速度3m/min超の高速で連続鋳造する際に、電磁攪拌装置を有する鋳型を用いて、その下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.03m3/m2/s以上とすることにより、低炭素鋼でのバルジング発生が抑えられ、高速鋳造下での鋳片の鋳型からの引抜き性が改善され、ビレット表面の品質が向上し、生産性も大幅に改善することができた。また、高炭素鋼の高速鋳造時においても、軽圧下による中心偏析が改善され、良好な品質のビレットを効率よく製造することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】ビレット連続鋳造装置を示す概略図である。
【図2】バルジングを説明するビレット断面図である。
【図3】高速鋳造時のビレット連続鋳造装置の概略図である。
【符号の説明】
1 鋳型
2 鋳片
3 スプレーノズル
4 ピンチロール
5 軽圧下帯
6 湯面
7 二次冷却帯
8 電磁攪拌装置
h バルジング量
Claims (3)
- 炭素含有量が0.04質量%以下の鋼をビレットに鋳造する連続鋳造方法であって、鋳型下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.04m3/m2/s以上とすることを特徴とするビレットの連続鋳造方法。
- 炭素含有量が0.40質量%以上の鋼をビレットに鋳造し、鋳造中に軽圧下を行う連続鋳造方法であって、鋳型下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.03m3/m2/s以上とすることを特徴とするビレットの連続鋳造方法。
- ビレットを鋳造速度3m/min超の高速で連続鋳造する方法において、電磁攪拌装置を有する鋳型を用いて、その下端から300mmの長さの範囲における鋳片2次冷却水量密度を0.03m3/m2/s以上とすることを特徴とするビレットの連続鋳造方法。
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