JP3063533B2 - 広幅薄鋳片の連続鋳造方法 - Google Patents

広幅薄鋳片の連続鋳造方法

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JP3063533B2
JP3063533B2 JP6191581A JP19158194A JP3063533B2 JP 3063533 B2 JP3063533 B2 JP 3063533B2 JP 6191581 A JP6191581 A JP 6191581A JP 19158194 A JP19158194 A JP 19158194A JP 3063533 B2 JP3063533 B2 JP 3063533B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、広幅薄鋳片の高速鋳造
時の鋳片中心偏析低減を図った広幅薄鋳片連続鋳造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、精錬技術や鋳造技術の著しい進歩
により品質性状の良好な鋳片の製造が容易に行われるよ
うになってきたことや、省力・省エネルギー思想の高ま
り等を背景にして熱間圧延工程の大幅な省略を行うべ
く、あるいは熱間圧延を施すことなく溶湯から直接的か
つ連続的に薄板材を製造しようとの試みが、アルミニウ
ム、銅などの比較的融点の低い非鉄金属ばかりでなく鉄
系金属にまで行われるようになってきた。
【0003】この薄鋳片を連続的に鋳造する手段とし
て、これまで以下のような方法が提案されている。 (1) ベルト式壁面移動モールドを使用した連続鋳造法
(ベルト式連続鋳造法)。 (2) 異形断面モールドを使用した連続鋳造方法 (SMS 方
式、異形断面モールド鋳造法)。 (3) 双ロール式連続鋳造法。
【0004】しかし、(1) ベルト式連続鋳造法は、ベル
ト冷却の困難さによりメンテナンス費用やランニングコ
ストが高いという問題のほか、この種のモールドでは配
設に大きな困難性を伴いがちな浸漬ノズルによる断気鋳
造を行わないと表面品質を維持することが非常に難しい
という問題点があること、また、(2) 異形断面モールド
による連続鋳造法には、漸次ではあるが鋳型内の断面積
を減少させるために鋳型内面と鋳片表面との間に大きな
摩擦力が生じ、この摩擦抵抗による鋳型内面の摩耗が激
しく鋳型寿命が短くなるという問題点が指摘されている
こと、また、(3) 双ロール式連続鋳造法は、未凝固部で
のロール圧下時に溶湯の流動が激しく介在物の浮上分離
が困難なことや、偏析が生じ易いという問題点が存在す
る。
【0005】このように、従来の薄鋳片連続鋳造法は、
何れも充分に満足できる品質の薄鋳片を作業性がよく、
安定して製造するという観点からは未解決な問題が多
く、特に鉄系金属薄板材の工業的製造において熱間圧延
を伴う従来法に代替し得るほどの域に達していないのが
現状であった。
【0006】そこで、従来にあっても、以上の方法に代
わる方法として、鋳型厚みは従来と同等として鋳造した
鋳片を凝固段階にある連続鋳造装置内で圧下し、薄鋳片
を製造する方法が提案されている。いわゆる未凝固圧下
法あるいは未凝固圧下鋳造法である。
【0007】すなわち、この方法は、鋳片内に未凝固層
が残存する段階で圧下を加える技術である。そのように
圧下することによって、中心部の濃化溶鋼を鋳造方向の
上流方向、つまり鋳型方向に排出し、薄肉化を達成する
とともに完全凝固させるために鋳片の中心偏析の改善が
できる。
【0008】こうした目的を達成する技術としてすでに
いくつか提案されており、例えば、それらを目的別に整
理すると、次の通りである。 (1) 中心偏析低減 (特開昭59−202145号公報、同60−16
2563号公報、同60−162564号公報、特開平1−202350号
公報、同3−124352号公報) 。 (2) 内部割れ低減 (特開昭51−128666号公報、同61−99
54号公報) 。 (3) 圧下制御方法 (特開平1−202350号公報、同2−52
159 号公報) 。 (4) 圧下ロール (特開平2−295658号公報、同3−1243
52号公報) 。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】未凝固圧下法の操作概
略を図1に示す。図中、連続鋳造鋳型10に鋳込まれた溶
鋼12は、表面から順次凝固しながら、最初、圧下ゾーン
14において軽圧下をうけながら降下して行き、次いで静
定ゾーン16に入り、最終圧下を受けるのである。これに
より、例えば当初厚さ100mm であた鋳片が厚さ50mm程度
にまで薄鋳片化されるのである。なお、図中、黒く塗り
つぶして示すのは駆動ロールであり、半分だけ塗りつぶ
したのはピンチロールを示す。
【0010】図示連続鋳造装置によって、例えば、120
mm厚の鋳片を連続鋳造装置内で30mm圧下し90mmの薄鋳片
を製造する未凝固圧下を実施したところ、鋳片幅方向の
中心偏析は非常に良好な部分と非常にシャープな偏析線
が認められる部分とに二分されることが判明した。図2
は、このとき得られる薄鋳片の横断面を示す模式図であ
って、ちょうど中心線に沿って一部にシャープな偏析線
が見られるのが判る。これは、圧下しない鋳造ままの鋳
片の広範囲な中心偏析に比べて生起する範囲は小さい
が、線上に連続した偏析線を呈し感応検査では偏析程度
は良くないと評価された。
【0011】このように、従来から実施されている最終
凝固位置での軽圧下法は種々改良がなされているが、中
心偏析を皆無にするまでには至っていない。これは、鋳
片厚が厚いため中心部の等軸晶帯の範囲が広く、等軸晶
は未凝固層内に浮遊した状態であるため圧下の浸透が困
難なこと、等軸晶自身が大きいのでブリッジング (等軸
晶の固相がつながること)が発生し易いことなどにより
固相間の濃化溶鋼で中心偏析が皆無にならないと考えら
れる。
【0012】同様に中心部に等軸晶帯を生成させる方法
として低ΔT鋳造、電磁攪拌などがあるが、いずれも広
い範囲での等軸晶帯生成が起こり上記のようなスポット
状偏析発生のため偏析状態は良くならない。
【0013】一方、鋳片厚が50mm程度の薄スラブを直接
製造するプロセスにおいては、鋳片中心部まで柱状晶が
発達した組織形態を呈し、非常に中心偏析の軽微な部分
があるかわりにわずかな不均一がある場合は非常にシャ
ープな厳しい中心偏析線を呈するというように偏析状態
が安定しないという欠点がある。
【0014】また、従来法のように、厚みが100 〜150
mmの鋳片を通常スプレー冷却しただけでも、鋳片内部の
凝固組織は柱状晶が主体の組織となるが、中心部約10mm
程度は等軸晶となることがある。このような最終凝固部
の等軸晶化は、中心偏析の分散には効果があるが、スポ
ット状偏析が悪影響を及ぼし偏析を皆無にするまでには
至らず昨今の厳しくなってきている製品品質要求に応え
ることができない。
【0015】このような中心偏析の低減に、鋳片の中心
部分の等軸晶化、および、等軸晶下での圧下が効果のあ
ることはよく知られているが、単なる冷却法では実現で
きず、さらに上述のような未凝固圧下法によっても圧下
の仕方によってはV偏析・逆V偏析などの発生があり、
中心偏析を完全に解消するには至っていないのが現状で
ある。
【0016】かくして、本発明の目的は、未凝固圧下法
において、V偏析・逆V偏析などの発生をもたらすこと
なく、中心部分の等軸晶化を実現し、また、等軸晶下で
の圧下を行うことで中心偏析を完全に解消する方法を開
発することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】まず、本発明者らが、従
来の薄鋳片鋳造法で得られた薄鋳片の凝固組織を調査し
たところ中心部まで柱状晶が発達しており、通常厚みの
鋳片のように中心部に等軸晶が認められないという特徴
があることが判明した。これは、薄鋳片では鋳片厚みが
従来材に比べて薄いため通常冷却方法によっても凝固シ
ェル界面の温度勾配が充分大きく、等軸晶化しにくいた
めと考えられる。
【0018】このような組織を有する鋳片を薄肉化する
ため未凝固圧下すると、最終圧下部分の凝固シェル厚が
幅方向で均一であれば中心偏析は低減するが、不均一で
最終圧下されない部分が存在するとその部分に濃化溶鋼
の集積が発生し、かえって非常にシャープな線状偏析線
が現れる。この偏析線は通常材の中心偏析よりも発生範
囲は小さいが、偏析強度は大きく偏析指数は悪化するこ
とが判明した。
【0019】そこで、本発明者らは、種々検討の結果、
未凝固圧下の最終部分でロールによる圧下を解放し強制
的に上流側の圧下解放部分に未凝固層を吸引することに
より急速に残溶鋼の溶鋼過熱度を下げて等軸晶化すれ
ば、その後の圧下により中心偏析が皆無に近い状況が得
られることを見出した。この場合は、柱状晶部分が不均
一であってもその影響は最小限に押さえることが可能で
ある。
【0020】さらに、鋳片中心部分の未凝固層が鋳片厚
の50%以上の状態から順次圧下することにより内部割れ
の発生を抑制できること、および、中心部分の未凝固層
が鋳片厚の3〜5%の状態でロールによる圧下を解放す
れば急速に等軸晶化することを見出し、本発明を完成し
た。
【0021】ここに、本発明の要旨とするところは、広
幅薄鋳片の連続鋳造方法において、鋳造中の未凝固層を
有する鋳片をローラエプロン帯で圧下することにより薄
鋳片を製造する未凝固圧下鋳造法において、鋳片厚の50
%以上の未凝固層が存在する時点から下流方向に向かっ
て順次ロールによる圧下を行い、未凝固層が鋳片厚の3
〜5%になった時点でロールによる圧下を中断、もしく
は、中断後一旦ロールによる圧下を解放し、その後最終
凝固まで圧下を継続、完了することを特徴とする、中心
偏析のない広幅薄鋳片の連続鋳造方法である。
【0022】このように本発明にしたがって薄鋳片中心
部分を等軸晶化すると、等軸晶帯の範囲が小さく、V偏
析や逆V偏析などの副次的な欠陥の発生もなく最終部ま
で圧下が可能で、しかも中心偏析をほとんど皆無の状態
にすることができる。
【0023】なお、前述の従来技術は、最終凝固域の軽
圧下の方法を述べたものが主体で、鋳造中の鋳片の圧下
を中段もしくは一旦解放することによる中心偏析への効
果を記述したものはない。
【0024】
【作用】ここで、例を挙げて本発明をさらに説明すると
次の通りである。まず、目標の薄スラブ厚を一例として
50mmとすると、連続鋳造装置のピンチロール出側でのス
ラブ厚が50mmとなるように連続鋳造装置内で未凝固圧下
することが必要である。この際、鋳型厚みを従来の浸漬
ノズルが挿入できる厚み、例えば、100 〜150 mm幅方向
一定とすると、鋳片厚さの50%以上の未凝固層が存在す
る時点から圧下を開始すると、鋳片中央部には十分な未
凝固層が存在するので、最終的に50mm厚以下に圧下可能
である。
【0025】凝固シェル厚が25mm以内の状態からの順次
圧下で最終鋳片厚を50mmとすれば、本発明者らが開発し
た歪積算理論から内部割れの発生は抑制可能である。本
発明において、100 〜150 mm厚の鋳片を50%以上の未凝
固層が存在する時点で未凝固圧下して薄スラブを製造す
ると、凝固シェルの組織が柱状晶の状態からの圧下とな
り圧下効率が良いこと、圧下により未凝固層が上流側に
押し出され熱容量が急速に奪われるため容易に等軸晶化
すること、なおかつ強制的に発生した等軸晶は細かく分
散し大きく成長する充分な時間のないことなどの効果に
より中心偏析が顕著に低減することができる。
【0026】さらに柱状晶帯からの順次圧下に加えて中
心部の未凝固層が鋳片厚の3〜5%の段階でロールによ
圧下を中断および一旦解放することにより中心偏析が
ほとんど皆無の状態に安定して制御することが可能であ
る。
【0027】中心部の未凝固層が3〜5%としたのは、
5%超では再度の圧下による残溶鋼の流動が存在し逆V
偏析が発生すること、3%未満ではもはや等軸晶化せず
柱状晶が直接中心部まで接するような圧下状態となるの
で、50mm厚の薄スラブ鋳造のように中心偏析を安定して
低減することができなくなることによる。もちろん、鋳
片の冷却強度などにより中心部に残存させる未凝固層の
鋳片厚に対する割合は微妙に異なるが、外部からの冷却
では殆ど変化せず圧下を解放する時期として中心部の未
凝固層が鋳片厚の3〜5%であれば充分目的を達成する
ことが可能である。
【0028】圧下を解放する量については特に定めるも
のではないが、ロール幅を2〜5mm程度開放することで
充分である。このように、本発明方法によれば、鋳片中
心部の非常に狭い範囲に細かい等軸晶を生成させること
が可能となりスポット状偏析の発生を抑制すると共に、
その後の圧下によりV偏析や逆V偏析などの副次的な偏
析を発生することなく中心偏析を殆ど皆無にした状態で
目標厚みに圧下することが可能となる。次に、実施例に
よって本発明の作用効果をさらに具体的に説明する。
【0029】
【実施例】本例では、湾曲型連続鋳造機を使用して、表
1に示す成分の中炭素アルミキルド鋼を鋳造速度5.0 m
/min で鋳造した。目標スラブサイズは、50mm厚×1500
mm幅スラブであるが、鋳型サイズは100 mm厚×1500mm幅
を適用し、連続鋳造装置内で鋳造中に未凝固部を有する
スラブを圧下して50mm厚に鋳造した。
【0030】鋳造装置内の圧下ゾーンは、ローラエプロ
ン帯の1seg から5seg の3m長さの間とした。圧下パ
ターンとしては、各セグメント当たり10mmの均等圧下と
した。
【0031】2ストランド方式の連続鋳造装置の第一ス
トランド側で本発明法を適用し、未凝固層の厚さが60%
の時点で圧下を開始し、順次圧下を続け、最終圧下部分
で鋳片厚が55mmに達した時点で圧下を中断、さらに2.5
mmロール間隔を広げた後、再度50mmまで圧下を完了し
た。比較例として第二ストランド側では、100 mmから順
次圧下で50mmまでの圧下を完了した。
【0032】
【表1】
【0033】鋳造後のスラブの中心偏析を調査した結果
を、従来の圧下なしの鋳片の結果と対比させて図3に示
す。圧下なしの従来材スラブに対して、図示しないが、
従来の未凝固圧下法で得られた圧下材は5グレード程度
偏析コードの向上が認められる。また、本発明法を適用
した圧下制御材はさらに偏析グレードの向上が確認でき
た。なお、本例における偏析グレードは、横断面におけ
る (偏析線の合計長さ)/ (中心線長さ) の比に10を掛け
て得た数値によって評価した。
【0034】次に、本発明にかかる方法を実施する第一
ストランド側で鋳造速度が5.0 m/min 一定の鋳造条件
下で、最終圧下部分の鋳片厚が、ケース60mm、ケース
52.5mm、ケース51mmにそれぞれ達した時点で圧下を
中断、2.5 mmの解放を経てその後、最終厚みの50mmまで
圧下を継続、完了した。それぞれ未凝固層の割合は16.7
%、4.8 %、1.9 %に相当するものであった。それぞれ
の場合に得られた鋳片の中心偏析結果を図4に示す。
【0035】ケースでは、未凝固層が多く残存してい
るため最終圧下により逆V偏析が発生した。ケースで
は、解放期にもはや溶鋼流動が起こらず中心部の等軸晶
化が起こらず中心偏析低減効果が認められなかった。な
お、この場合も偏析グレードは第3図の場合を同様にし
て求めた。
【0036】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明は、未
凝固圧下を伴う広幅薄鋳片連続鋳造法において、中心偏
析低減方法を提供するもので、圧延材の内部品質向上に
大きく寄与する結果をもたらした。
【図面の簡単な説明】
【図1】未凝固圧下法の操作概略を示す説明図である。
【図2】通常圧下材の鋳片横断面の中心偏析状況を示す
模式説明図である。
【図3】本発明にかかる方法の圧下パターンの効果を示
すグラフである。
【図4】圧下パターン変更による中心偏析低減効果を比
較したグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−37457(JP,A) 特開 平5−293618(JP,A) 特開 平6−262325(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22D 11/128 B22D 11/20

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 広幅薄鋳片の連続鋳造方法において、鋳
    造中の未凝固層を有する鋳片をローラエプロン帯で圧下
    することにより薄鋳片を製造する未凝固圧下鋳造法にお
    いて、鋳片厚の50%以上の未凝固層が存在する時点から
    下流方向に向かって順次ロールによる圧下を行い、未凝
    固層が鋳片厚の3〜5%になった時点でロールによる圧
    下を中断、もしくは、中断後一旦ロールによる圧下を解
    放し、その後最終凝固まで圧下を継続、完了することを
    特徴とする、中心偏析のない広幅薄鋳片の連続鋳造方
    法。
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