JP3624856B2 - 連鋳鋼片の歩留り向上方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、連鋳鋼片の歩留り向上方法に係わり、詳しくは、溶鋼の連続鋳造で得た鋼鋳片のうちの従来は切り捨てていた部分を、捨てずに被圧延材として有効利用する技術である。
【0002】
【従来の技術】
溶鋼の連続鋳造は、一般に以下のようにして行なわれる。
【0003】
まず、精錬容器(例えば、転炉、電気炉等)内で所定成分に精錬、溶製した1チャージ分の溶鋼を取鍋に出鋼する。そして、図2に示すように、この取鍋1に保持した溶鋼2は、タンディッシュ3と称する中間容器(鋳型へ注入される前に、溶鋼を均一にしたり、整流の作用をさせる容器)を介し、その底部に設けた浸漬ノズルより、外壁が冷却方式の鋳型4に注入される。鋳型4では、水冷された外壁と接する溶鋼が凝固殻を形成するので、ローラ群7を用いて該凝固殻を下方に設けた冷却帯(水スプレー等)6へと連続的に引き抜き、内部の溶鋼を徐々に冷却し、長尺の完全な凝固体5とする。最終的には、該凝固体5は、所定の長さにガス等で切断され、長方体の所謂スラブ、ブルーム等の鋼鋳片となり、後流の圧延工程に被圧延材として送られ、鋼板、形鋼材等に加工された後、顧客へ出荷される。
【0004】
ところで、かかる連続鋳造では、溶鋼が冷却されて凝固する過程で凝固体の収縮が生じる。特に、図2に示す凝固体の最後端側は(最終に凝固するこの部分は、鋳型4内では最上端になるため、トップという)、その上に溶鋼2が存在しないので、荷重を受けずに自由収縮となるため、収縮量が凝固体の先端側(最先端を、前記基準でトップという)より大きくなる。そのため、トップに位置する部分で得た鋼鋳片(以下、トップ鋼鋳片8という)は、品質上の問題がなくても、例えば図1に示すように、厚み215mm及び幅2000mmを目標としているのに、最大部分と最小部分の差(つまり、偏差9)が生じ、長さが500〜1000mmの台形立方体状になってしまう。なお、この長さは、品質上の問題で切り捨てる所謂クロップ部分10を除いての値である。また、偏差9は、幅で10〜40mm,厚みで10〜30mm程度あり、この台形立方体の重量は約1〜2トン(連鋳での溶鋼歩留りとして、1チャージ分の溶鋼当たり0.3〜0.6%)に相当する。
【0005】
このような幅及び厚みに偏差9を抱えたトップ鋼鋳片8は、その後に一方向にしか圧延できない圧延機で鋼板とする際に、偏差9を解消できない。また、現在の連続鋳造技術では、厚み及び幅にボトム側と偏差のないトップ鋼鋳片8を製造できないのが現状である。そのため、トップ鋼鋳片8は、被圧延材としては、他の部分で得た鋼鋳片と同一に圧延できないので、スクラップとなることが多い。つまり、溶鋼の連鋳鋼鋳片としての歩留り(被圧延材になった鋼鋳片量/連続鋳造した全溶鋼量×100)は、前記したように0.3〜0.6%だけ低下してしまう。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情に鑑み、連続鋳造で製造した所謂トップ鋼鋳片の有効利用を図った連鋳鋼片の歩留り向上方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ね、その成果を本発明に具現化した。
【0008】
すなわち、本発明は、溶鋼の連続鋳造で最終凝固部に生じ、幅及び厚みに長手方向で偏差が生じたトップ鋼鋳片を、分塊圧延で前記偏差を解消し、被圧延材に利用することを特徴とする連鋳鋼片の歩留り向上方法である。
【0009】
この場合、前記分塊圧延を下記式で定める圧下量及び幅殺し量で行うのが好ましい。
【0010】
圧下量≧厚み偏差×2 (1)
幅殺し量≧幅偏差×2 (2)
本発明によれば、トップ鋼鋳片に生じた幅及び厚みの偏差が解消され、従来はスクラップにしていた該トップ鋼鋳片を鋼板製造用の被圧延材に利用できるようになる。その結果、連鋳綱片の歩留りが従来より0.3〜0.6%向上し、鋼板製造コストが低減する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、発明をなすに至った経緯に沿い、本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
まず、発明者は、トップ鋼鋳片の上記偏差を解消する手段を検討し、分塊圧延機の利用を着想した。分塊圧延機は、元々長手方向にテーパを有する鋼塊をスラブやシートバー(薄板製造用材料)にするためのものであり、長方転倒機が付帯され、被圧延材の圧延姿勢を自由に変更できるからである。また、鋼鋳片の圧延能力(圧下量や幅殺し量)が他の圧延機より大きいからでもある。
【0013】
そして、既存の分塊圧延機を用いて、多種の偏差値を有するトップ鋼鋳片で、実際に偏差を解消して長方体状にできるかどうかの確認を行った。その結果、ほとんどの場合(最大の幅偏差40mm、最大の厚み偏差30mm)で偏差が解消できたので、分塊圧延することを要件に本発明を完成した。
【0014】
また、発明者は、分塊圧延での必要な圧下量や幅殺し量についても検討を行い、それを上記(1)式及び(2)式に整理した。その理由は、偏差の2倍以下の圧下量や幅殺し量では、未圧延部残存のため偏差の解消が不十分だからである。
【0015】
【実施例】
厚み215mmの厚鋼板製造用のスラブ(鋼種:40Kクラス)を連続鋳造で製造した。該鋼種の溶鋼を容量280トンの上底吹き転炉で溶製し、図2に示すように連続鋳造した。得られたスラブは、1本当たりの寸法が幅:2000mm,厚み:215mm,長さ:3000mmのもの28本である。その際、最終に凝固する部分が、クロップを切断後の長さで300mm生じ、しかもその幅及び厚みに長手方向でそれぞれ40mm及び30mmの偏差が生じていた。これは、従来だと圧延工場の指令でスクラップとして、廃棄されていたものに相当する。
【0016】
そこで、このトップ鋼鋳片に本発明を適用し、分塊圧延を施した。
【0017】
使用した分塊圧延機は、上記と同じである。その結果、幅:1920mm,厚み:155mm,長さ:4300mmのまったく偏差のない長方体状の鋼鋳片となった。この鋼鋳片は、後に圧延工程に送られ、偏差のなかった鋼鋳片と同様に圧延したところ、ほぼそれらで得た厚鋼板と遜色のない形状のものが製造できた。
【0018】
この結果に基づき、鋼種や厚みの異なる厚鋼板を製造する際に、本発明を適用し、図3に示す結果を得た。図3より、本発明によれば、連鋳片の歩留りが、従来よりも少なくとも0.3%は向上することが明らかである。
【0019】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により、連続鋳造で得たトップ鋼鋳片に生じた幅及び厚みの偏差が解消され、従来はスクラップにしていた該トップ鋼鋳片を鋼板製造用の被圧延材に利用できるようになる。その結果、連鋳綱片の歩留りが従来より0.3〜0.6%向上し、鋼板製造コストが低減する。
【図面の簡単な説明】
【図1】連続鋳造でのトップ鋼鋳片で、幅及び厚みに生じる寸法偏差を説明する図であり、(a)は平面、(b)は側面である。
【図2】一般的な溶鋼の連続鋳造を説明する図である。
【図3】本発明を実施した結果を歩留まりで示す図である。
【符号の説明】
1 取鍋
2 溶鋼
3 タンディッシュ
4 鋳型
5 凝固体
6 冷却帯
7 ローラ群
8 トップ鋼鋳片
9 偏差
10 クロップ部分

Claims (2)

  1. 溶鋼の連続鋳造で最終凝固部に生じ、幅及び厚みに長手方向で偏差が生じたトップ鋼鋳片を、分塊圧延で前記偏差を解消し、被圧延材に利用することを特徴とする連鋳鋼片の歩留り向上方法。
  2. 前記分塊圧延を下記式で定める圧下量及び幅殺し量で行うことを特徴とする請求項1記載の連鋳鋼片の歩留り向上方法。
    圧下量≧厚み偏差×2 (1)
    幅殺し量≧幅偏差×2 (2)
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