JP4024965B2 - エピタキシャルウエハおよび発光ダイオード - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は化合物半導体エピタキシャルウエハと発光ダイオード(以下「LED」)に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体結晶を構成材料とするLEDは表示用素子として現在幅広く用いられている。その中でもIII−V族化合物半導体は可視光、赤外光の波長に相当するバンドギャップを有するため、発光素子へ応用する際の利点が大きい。このため、III−V族化合物半導体はLEDのほとんどに材料として利用されており、特にGaAsPはLED用としての需要が極めて大きい。これらの材料には、LEDの特性として最も重要な発光出力を向上させることが要求されている。
【0003】
図2は、GaP単結晶基板上にGaAs1-xPx(0.45≦x<1)のエピタキシャル層を有する一般的なエピタキシャルウエハの構造を示したものである。このエピタキシャルウエハは、n型のGaP単結晶基板20上に、基板と同一組成のホモ層24、基板と最上層の格子定数の差を緩和するために混晶比xを連続的に1.0〜x0まで変化させたGaAs1-xPx組成変化層21、GaAs1-x0Px0一定組成層22、窒素(N)をドープしたGaAs1-x0Px0低キャリア濃度一定組成層23を順次エピタキシャル成長した構造を有する。
【0004】
このエピタキシャルウエハでは、最上層である低キャリア濃度一定組成層23が発光層となる。一定組成層23の組成を変化させるとバンドギャップも変化するため、組成に応じて赤色から緑色に発光するLEDを製造することができる。このため一定組成層23は、通常はLEDの発光波長に対応する混晶率x0の組成を有し、窒素(N)と、n型のドーパントであるテルル(Te)又は硫黄(S)を所定のキャリア濃度になるようにドープしている。例えば赤色発光(波長630nm)用としては、x0は約0.65である。
【0005】
近年、LEDの低消費電力化、すなわちより少ない消費電力で高い光出力が得られるLEDを開発することが求められるようになってきている。これらの要求に応えるために、エピタキシャルウエハ構造を改良することによって品質を向上させることが提案されている(特開平6−196756号公報)。それによると、発光層となるNドープ低キャリア濃度一定組成層のキャリア濃度を3×1015cm-3以下にすれば、光出力の向上と長寿命化を同時に実現できることが明らかにされている。
【0006】
また、発光層の結晶の完全性が破壊されるのを最小限にとどめ、注入されたキャリアの寿命を長くして高光出力のLEDを得るためには、キャリア濃度を3.5〜8.8×1015cm-3にすれば良いことも明らかにされている(特公昭58−1539号公報)。しかしながら、これらの従来技術により達成しうるLEDの性能よりも、さらに一段と優れた性能が求められている。
【0007】
一般に、気相成長により形成された上記のエピタキシャル層はすべてn型であり、その後の加工工程においてエピタキシャル層表面からNを拡散によりドープした一定組成層に4〜10μm程度の深さまで高濃度にZnを拡散することによりp型層を形成している。例えば、特開昭8−335715号公報には、GaAsPエピタキシャル層のp型層を気相成長法で成長してpn接合を形成し、p型層表面の高キャリア濃度領域を拡散で形成させている。
【0008】
しかしながら、このような拡散法ではキャリア濃度の制御が困難であるため、キャリア濃度が1×1019cm-3以上と高くなってしまう。キャリア濃度が高いことと、拡散による結晶の欠陥増加により、p型層の光吸収量が大きくなって、光出力の向上に限界が生じるという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決することを課題とした。すなわち本発明は、高光出力のLEDを実現しうる、構成元素として少なくともGaを含みp型層を有するエピタキシャルウエハを提供することを解決すべき課題とした。また本発明は、該エピタキシャルウエハを使用した高光出力のLEDを提供することも解決すべき課題とした。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、かかる課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、p型層内のキャリア濃度プロファイルを最適化することによって所期の効果を有する優れたエピタキシャルウエハを製造しうることを見出し、本発明を提供するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、構成元素として少なくともGaを含みp型層を有する化合物半導体エピタキシャルウエハにおいて、該p型層が、基板側端部のキャリア濃度が5.2〜20×10 18 cm-3であって、基板から遠ざかるにつれてキャリア濃度が減少するキャリア濃度プロファイルを有するキャリア濃度減少領域を含むことを特徴とするエピタキシャルウエハを提供する。本発明のエピタキシャルウエハは、pn接合を有しており、かつ該pn接合を形成するp型層のキャリア濃度が前記キャリア濃度減少領域の基板側端部のキャリア濃度よりも低いことが好ましい。本発明は、上記エピタキシャルウエハを用いて製造したLEDも提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明のエピタキシャルウエハ及びLEDの具体的な実施態様を、図1に基づいて詳細に説明する。本発明のエピタキシャルウエハは、構成元素として少なくともGaを含みp型層を有する化合物半導体エピタキシャルウエハである。その特徴は、該p型層が、基板側端部のキャリア濃度が5.2〜20×10 18 cm-3であって、基板から遠ざかるにつれてキャリア濃度が減少するキャリア濃度プロファイルを有するキャリア濃度減少領域を含む点にある。図1は、本発明のエピタキシャルウエハの代表的な実施態様を示す断面図である。図1のエピタキシャルウエハは、単結晶基板10の上にホモ層14、組成変化層11、一定組成層12、p型層30をこの順にエピタキシャル成長させたものである。
【0013】
単結晶基板10の種類は特に制限されるものではないが、通常はGaP又はGaAsの何れかが選択される。pn接合を形成するn型層13が間接遷移型のバンドギャップをもつGaAs1-xPx(0.45≦x<1)からなる場合は、LEDの発光色に対して透明であり、かつLEDとして高い光出力を得るために、単結晶基板10はGaPであることが好ましい。
単結晶基板の厚さは好ましくは200〜700μmであり、GaP単結晶基板の場合は220〜350μmが好ましい。
【0014】
単結晶基板10の上に形成するホモ層14は、単結晶基板10と同じ結晶からなる。ホモ層14は特に形成しなくてもよいが、ミスフィット転位の発生を抑制して安定な高輝度を得るためには、ホモ層14を0.1〜100μm、好ましくは0.5〜15μm形成するのがよい。
【0015】
その上に形成するエピタキシャル層は、単結晶基板とは異なる組成を有し、少なくとも構成元素としてGaを含む。その組成として例えば、GaAsP、AlGaAs、InGaP、InGaAs等の3元混晶や、GaPなどの2元混晶を例示することができる。中でもGaAsPとGaPは需要が大きく、GaAsPは特にLEDを製造した際の効果が大きいため好ましい。特に、pn接合がGaAs1-xPx(0.45≦x<1)である態様は好ましい。
エピタキシャル層を、組成の観点から見た場合、少なくとも組成変化層11及び一定組成層12を有する図1の態様が一般的である。基板とエピタキシャル層の格子定数の差が大きいため、組成変化層を用いることでより結晶欠陥の少ない一定組成層を得ることができる。
【0016】
組成変化層11は、基板からの距離に応じて組成が変化する層である。例えば、単結晶基板10がGaPであるときは、組成変化層11をGaAs1-xPxとして基板から遠ざかるにつれて混晶率xが1から低下するように構成することができる。混晶率xは0≦x<1の間で変化させることができるが、好ましくは0.45≦x<1の間で変化させる。また、単結晶基板10がGaAsであるときは、組成変化層11をGaAs1-mPmとして基板から遠ざかるにつれて混晶率mが0から増加するように構成することができる。このときの混晶率mは0<m≦1の間で変化させることができるが、好ましくは0<m≦0.45の間で変化させる。
【0017】
組成変化層11の組成変化は、連続的であっても段階的であってもよい。また、組成変化層11の組成変化は、逆の組成変化部分を有しない単調増加であることが好ましい。いずれの態様を採用しても、エピタキシャル層の比抵抗は主にキャリア濃度で決定されるため効果は同じである。
組成変化層11のキャリア濃度は、0.5〜30×1017cm-3であることが好ましい。特に1×1017cm-3以上あることと、30×1017cm-3以下であることが好ましい。中でも、平均で1〜10×1017cm-3であることがLED化した時の順方向電圧を下げ、良好な結晶性が得られる点で特に好ましい。キャリア濃度が30×1017cm-3を越えると、結晶性が悪化してエピタキシャル層表面に結晶欠陥が発生したり、LEDの光出力の低下を生じる等の問題が生じやすくなる傾向がある。
組成変化層11の層厚は、好ましくは2〜100μm、より好ましくは10〜80μmである。
【0018】
組成変化層11の上には、組成一定層12が形成されており、該組成一定層12の表面がpn接合を形成していることが好ましい。pn接合を形成するn型層側が間接遷移型のバンドギャップをもつGaAs1-xPx(0.45<x<1)からなる場合は、pn接合のn層側は低キャリア濃度領域となる。
低キャリア濃度領域13は、平均キャリア濃度が20×1015cm-3以下が好ましく、9×1015cm-3以下がより好ましい。0.1×1015cm-3以下になるとキャリア濃度の制御が困難となったり、比抵抗が高くなってLEDの順方向電圧の増加を招くことがある。高光出力を得ることができ、しかも電気特性を安定化するためには、好ましい平均キャリア濃度は0.5〜9×1015cm-3である。低キャリア濃度領域13の厚さは通常は1〜100μmであり、好ましくは1〜50μm、さらに好ましくは1〜25μmである。100μmを越えると低キャリア濃度領域による抵抗の増大で順方向電圧の増加を招く傾向がある。
【0019】
低キャリア濃度領域13以外の一定組成層12は、組成変化層11と同じキャリア濃度範囲内に設定することが好ましい。また、低キャリア濃度領域13以外の一定組成層12の厚さは、3〜50μmにするのが好ましく、成長時間が長くなることによるコスト上昇を避けるためには5〜20μmとすることがより好ましい。
【0020】
pn接合17には少なくともNがドープされていると光出力が向上するので好ましい。
Nのドープは、pn接合17を形成するp型層とn型層の両側またはいずれか一方、および低キャリア濃度領域に限定されるものではない。これら以外のエピタキシャル層のいずれかの部分にドープされていても、発光はpn接合で生じるため問題は生じない。
一定組成層12中の組成はミスフィット転位等の結晶欠陥をできるだけ抑制するため、できる限り一定であることが望ましい。一定組成層12の組成の変動は±0.05以内、好ましくは±0.02以内である。
【0021】
本発明のエピタキシャルウエハは、p型層の構成に特徴を有する。すなわちp型層は、基板側端部のキャリア濃度が5.2〜20×10 18 cm-3であって、基板から遠ざかるにつれてキャリア濃度が減少するキャリア濃度減少領域を含むことを特徴とする。換言すれば、キャリア濃度が基板側端部で5.2〜20×10 18 cm-3であって、エピタキシャル層表面側端部に向かって減少するプロファイルを有するキャリア濃度減少領域をp型層が含むことを特徴とする。基板側端部からエピタキシャル層表面側端部へ向かって減少する形態は、連続的であっても段階的であってもよい。また、連続的に減少する部分と段階的に減少する部分が混在していてもよい。連続的に減少する場合は、キャリア濃度減少領域全体にわたって一定の割合で減少してもよいし、減少率が変化していてもよい。キャリア濃度減少領域は、キャリア濃度が連続的になめらかに減少していることが好ましい。
【0022】
キャリア濃度減少領域の基板側端部のキャリア濃度は5.2〜20×10 18 cm-3である。キャリア濃度減少領域のエピタキシャル表面側端部のキャリア濃度は、キャリア濃度減少領域の厚さにも依存するが、通常は基板側端部の95%〜1%とし、好ましくは94〜10%とし、さらに好ましくは92〜30%とする。なお、キャリア濃度減少領域がエピタキシャル層表面に隣接する場合は、エピタキシャル層表面から数μm、通常は1μm以下の部分はキャリア濃度が粗れや酸化等で変動してしまうのが一般的である。本明細書でいうキャリア濃度減少領域は、このような粗れや酸化等による変動を受けた部分を含まないものとする。
【0023】
キャリア濃度減少領域の厚さは0.5μm以上有ればよいが、好ましくは1〜200μm、p型層による光吸収を少なくするためには1〜30μmであると高光出力が得られるので特に好ましい。
p型層内にキャリア濃度減少領域を存在させることによって、p型層内に高キャリア濃度領域が配置されることになるためLED化したときの電流拡がりが良くなる。また、エピタキシャル層表面のキャリア濃度を下げることができるために、p型層による必要以上の光の吸収を抑制することができ、高光出力が得られる。
【0024】
キャリア濃度減少領域は、p型層内に複数存在していてもよい。p型層内におけるキャリア濃度減少領域の個数は3つ以内であることが好ましく、2つ以内であることがより好ましく、1つであることがもっとも好ましい。キャリア濃度減少領域は、p型層内のどの部分に含まれていてもよいが、好ましいのはpn接合を形成するp型層よりもエピタキシャル層表面側に含まれている場合である。特に、基板側端部のキャリア濃度が5.2〜20×10 18 cm-3であるキャリア濃度減少領域がp型領域のエピタキシャル層表面側に形成されていることが好ましい。図1は好ましいp型層の態様を具体化したものである。p型層30は、pn接合に接する第1p型層31と、電流が拡がりかつ良好なオーミック電極を得るために高キャリア濃度にした第2p型層32から構成されている。図1の態様では、第2p型層32がキャリア濃度減少領域として構成されている。
【0025】
pn接合に接する第1p型層31のキャリア濃度は、pn接合における発光出力を最大にするように決定することが好ましい。このため、キャリア濃度減少領域の最大キャリア濃度よりも低いことが好ましい。すなわち、第2p型層32の基板側端部のキャリア濃度よりも低いことが好ましい。具体的には、第1p型層31のpn接合に接する部分の平均キャリア濃度は0.05〜5×1018cm-3であり、好ましくは0.3〜2×1018cm-3であり、さらに好ましくは0.5〜1.5×1018cm-3である。第1p型層31のpn接合に接する部分のキャリア濃度プロファイルは、一定であっても勾配をもっていても良い。上記平均キャリア濃度は空乏層領域を除くpn接合面から0.5〜1μmの範囲の平均キャリア濃度とみなすことができる。
本発明のエピタキシャルウエハでは、p型層30の全層厚は1〜300μmであることが好ましく、2〜100μmであることがより好ましく、3〜50μmであることがLEDの光出力が最も高くなることから特に好ましい。
【0026】
エピタキシャル層内のキャリア濃度プロファイルは、エピタキシャル層を斜めに研磨した後、ショットキーバリアダイオードをその表面に作製して、C−V法によって測定することができる。特にp型層のキャリア濃度プロファイルの測定には、日本バイオ・ラッド・ラボラトリー社のセミコンダクタ・プロファイル・プロッタPN4300の様に、直接エピタキシャル層を電解液でエッチングしながら測定する方法が有効である。
図1ではp型層30が第1p型層31と第2p型層32の2層からなる構造を示しているが、第1p型層31と第2p型層32の間には任意のキャリア濃度プロファイルのp型層が形成されていても構わない。第1p型層31と第2p型層32の間のキャリア濃度の変化は急峻で有っても階段状であってもよいが、好ましいのは連続的でなめらかな場合である。また、本発明のエピタキシャルウエハでは、第1p型層31とは反対側の第2p型層32に隣接して他の層が設けられていてもよい。なお、p型層30はpn接合と同じ組成をもつ一定組成層であることが一般的であるが、pn接合部以外の領域では違う組成になっていても構わない。
【0027】
本発明のエピタキシャルウエハを製造する方法は特に制限されない。エピタキシャル成長法としては結晶欠陥が少ない良質な結晶が得られることからハロゲン輸送法や有機金属気相成長法(MOCVD)などの気相成長法を用いることが好ましい。中でも、ハロゲン化合物原料を有する気相成長法を用いることが好ましい。ハロゲン化合物原料としては、例えば塩酸ガス(HCl)、三塩化砒素(AsCl3)等のハロゲン元素を含む任意の化合物を用いることができる。また、ハイドライド気相成長法により本発明のエピタキシャルウエハを製造するときには、V族原料としてV族元素の水素化合物原料を用い、III族原料として金属GaとHClを用い、金属GaはHClと反応させてGaClとして反応容器内に供給する。一方、クロライド気相成長法ではIII族原料の金属GaとV族原料の塩化物を原料として、例えばGaAs成長の場合には、金属GaとAsCl3を反応させてGaClとAs4として反応容器内に供給する。その他、原料の組み合わせに関わらず、ハロゲン化合物が原料に含まれていれば同様に処理することができる。量産性があり、高純度の結晶が得られることから、ハイドライド気相成長法を使用することが最も有利である。
【0028】
ハロゲン化合物がエピタキシャル成長の反応に含まれると、p型ドーパントがエピタキシャル層中に高濃度にドープされにくい。p型ドーパントとしてはZn、Mg、Cd、Be等があるが、ZnおよびMgが比較的低毒性であるため好ましい。ドーピングガスとしては高純度の原料が得られることからZnとしてはジエチル亜鉛(C2H5)2Zn、Mgとしてはシクロペンタジエニルマグネシウム(C5H5)Mgまたは(C5H5)2Mgなどの有機金属化合物として使用される。
【0029】
従来はキャリア濃度が5×1018cm-3以上にZnをドープすることは困難とされてきたが、LEDで高光出力が得られ、有害性も少ないことからZnを選択することが特に好ましい。ドーピングガスの供給量を非常に大きくすることで5〜30×1018cm-3にドープすることが可能であることが、研究の結果明らかになっている。本発明のエピタキシャルウエハを製造する際には、低キャリア濃度層の成長、pn接合の形成、p型層の成長工程は同じ成長工程で連続的に行うことが、本発明をさらに効果的にするために好ましい。
【0030】
本発明のエピタキシャルウエハを用いてLEDを製造することができる。本発明のLEDの構成や製造方法は特に制限されるものではなく、エピタキシャルウエハからLEDを製造する際に用いられる通常の方法を利用して製造することができる。
本発明のLEDの好ましい一実施態様として、図3に断面図を示すLEDを挙げることができる。図3に示すLEDは、本発明のエピタキシャルウエハのエピタキシャル層側と基板側にそれぞれ電極18を設けることにより製造される。従来のエピタキシャルウエハを用いて同型のLEDを製造すると、p型層のキャリア濃度が低いために電流がpn接合17全体に拡がらず、電極18の下で主に発光してしまうために光出力が向上しない。第2p型層32を有する本発明のエピタキシャルウエハを用いればこのような問題を解消することができ、高出力のLEDを製造することができる。
【0031】
【実施例】
以下に実施例を記載して本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。なお、以下の説明では、ガス流量単位として標準状態に換算したSCCMを用いた。
(実施例)
GaP基板および高純度ガリウム(Ga)を、Ga溜め用石英ボ−ト付きのエピタキシャル・リアクタ−内の所定の場所に、それぞれ設置した。GaP基板として、硫黄(S)が3〜10×1017原子個/cm3添加され、直径50mmの円形で、(100)面から[001]方向に10゜偏位した面をもつGaP基板を用いた。これらを、同時にホルダー上に配置した。ホルダーは毎分3回転させた。
【0032】
窒素(N2)ガスを該リアクタ−内に15分間導入し空気を充分に置換除去した後、キャリヤガスとして高純度水素(H2)を9600SCCM導入し、N2の流れを止めて昇温工程に入った。
上記Ga入り石英ボ−ト設置部分及びGaP単結晶基板設置部分の温度が、それぞれ800℃及び930℃の一定温度に保持されていることをリアクタ外側に配置した熱電対の測定により確認した後、尖頭発光波長630±5nmのGaAs1-xPxエピタキシャル膜の気相成長を開始した。最初、濃度50ppmに水素ガスで希釈したn型不純物であるジエチルテルル((C2H5)2Te)を15SCCM導入し、周期律表第III族元素成分原料としてのGaClを、369SCCM生成させるため高純度塩化水素ガス(HCl)を上記石英ボ−ト中のGa溜に毎分369cc吹き込み、Ga溜上表面より吹き出させた。また、周期律表第V族元素成分として、H2で濃度10%に希釈したりん化水素(PH3)を毎分737SCCM導入しつつ、20分間にわたり、第1層であるGaP層をGaP単結晶基板上に成長させた。
【0033】
次に、(C2H5)2Te、HCl、PH3の各ガスの導入量を変えること無く、H2で濃度10%に希釈したひ化水素(AsH3)の導入量を、0SCCMから492SCCMまで徐々に増加させ、同時にGaP基板の温度を930℃から870℃まで徐々に降温させ、90分間にわたり、第2層であるGaAs1-xPxエピタキシャル層を第1層上に成長させた。
次の30分間は、(C2H5)2Te、HCl、PH3、AsH3の導入量を、それぞれ15SCCM,369SCCM,858SCCM,492SCCMで一定に保持しつつ、第3層であるGaAs1-xPxエピタキシャル層を第2層上に成長させた。
【0034】
次の20分間は(C2H5)2Te、HCl、PH3、AsH3の導入量を変えることなく導入しながらこれにNアイソ・エレクトロニック・トラップ添加用として214SCCMの高純度アンモニア・ガス(NH3)を添加して第4層であるGaAs1-xPxエピタキシャル層を第3層上に成長させた。
次の10分間は(C2H5)2Te、HCl、PH3、AsH3、NH3の導入量を変えることなく、p型ドーパンントを供給するために25℃に一定に保温された(C2H5)2Zn入りのボンベにH2ガスを15SCCM導入して(C2H5)2Zn蒸気を含ませて、そのH2ガスを導入して、第5層であるp型のGaAs1-xPxエピタキシャル層を第4層上に成長させた。
【0035】
次の40分間は(C2H5)2Te、HCl、PH3の導入量を変えることなく、(C2H5)2Znを120SCCMまで最初に一気に増加させた後に徐々に60SCCMまで減少し、第6層であるp型のGaAs1-xPxエピタキシャル層を第5層上に成長させて、気相成長を終了した。
第1〜6層の膜厚はそれぞれ4μm、39μm、13μm、9μm、5μm、15μmであった。
【0036】
第1〜4層のキャリア濃度を、エピタキシャル層を約1゜斜めに研磨してその表面にショットキーバリアダイオードを作製して測定した。第1〜3層のキャリア濃度は2〜3×1017cm-3であった。第4層はn型であり、そのキャリア濃度は3×1015cm-3であった。なお、第4層のキャリア濃度はLED化した後に直接pn接合に逆方向電圧を印可してCV測定をしても、ほぼ同じキャリア濃度が得られた。
【0037】
第5〜6層のp型層のキャリア濃度は、日本バイオ・ラッド・ラボラトリー社のセミコンダクタ・プロファイル・プロッタPN4300によって測定した。第5層のキャリア濃度は、pn接合面に隣接する1μmを含めて0.7×1018cm-3であった。第6層のキャリア濃度は、第5層と接する基板側端部が6×1018cm-3で、エピタキシャル層表面側端部が3×1018cm-3であった。第6層のキャリア濃度プロファイルは、基板側端部からエピタキシャル層表面側端部までなめらかに減少するものであった(基板側端部の50%に減少)。
続いて、真空蒸着による電極形成等を行って500μm×500μm×280μm(厚さ)の角柱型LEDを形成した。エポキシコートなしで測定したところ、5チップで光出力は98で、ピーク波長は630±1nmであった。
【0038】
(比較例1)
第6層を成長するにあたり(C2H5)2Znの導入量を60SCCMに固定したこと以外は、実施例と同一条件で気相成長を行ってエピタキシャルウエハを得た。
第1〜6層の膜厚は、それぞれ5μm、39μm、14μm、8μm、5μm、15μmであった。第1〜4層のキャリア濃度を実施例と同様に測定したところ、実施例と同じ値が得られた。第5層のp型層のキャリア濃度は、pn接合面に隣接する1μmを含めて0.7×1018cm-3であった。第6層のp型層のキャリア濃度は、層全体にわたり3×1018cm-3で一定であった。
実施例と同様にLEDを形成し、エポキシキコートなしで測定したところ、5チップで光出力は62で、ピーク波長は630±1nmであった。
【0039】
(比較例2)
第4層を70分間成長し、第5層と第6層を成長しないこと以外は、実施例と同一条件で気相成長を行ってエピタキシャルウエハを得た。
第1〜4層の膜厚は、それぞれ5μm、38μm、12μm、28μmであった。第1〜4層のキャリア濃度を実施例と同様に測定したところ、実施例と同じ値が得られた。成長したエピタキシャルウエハに対してZnAs2を拡散源として760°Cの温度で表面から4μmの深さまでZnを拡散して、p型層を形成した。拡散で形成したp型層キャリア濃度は、表面で3.5×1019cm-3であった。
実施例と同様にLEDを形成し、エポキシキコートなしで測定したところ、5チップで光出力は48で、ピーク波長は631±1であった。
【0040】
【発明の効果】
本発明のエピタキシャルウエハを用いて製造したLEDは、特に高い光出力を示す。このため、本発明はさまざまな分野に広範に応用することが可能であり、特にLEDの需要増大に貢献しうるものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のエピタキシャルウェハの層構成例を示す断面説明図である。
【図2】 従来のエピタキシャルウェハの一般的層構成を示す断面説明図である。
【図3】 本発明のLEDの構成例を示す断面説明図である。
【符号の説明】
10 単結晶基板
11 組成変化層
12 一定組成層
13 低キャリア濃度領域
14 ホモ層
15 高キャリア濃度領域
16 エピタキシャル層
17 pn接合
18 電極
20 GaP単結晶基板
21 GaAs1-xPx組成変化層
22 GaAs1-x0Px0一定組成層
23 NドープGaAs1-x0Px0低キャリア濃度一定組成層
24 GaPホモ層
30 p型層
31 第1p型層
32 第2p型層(キャリア濃度減少領域)
Claims (3)
- GaP基板、pn接合、および気相成長法により形成されたGaAs1-xPx(0.45≦x<1)からなるp型層を順に有する化合物半導体エピタキシャルウエハにおいて、該p型層が、基板側端部のキャリア濃度が5.2〜20×10 18 cm-3であって、該基板から遠ざかるにつれてキャリア濃度が減少するキャリア濃度プロファイルを有するキャリア濃度減少領域を含むことを特徴とするエピタキシャルウエハ。
- 前記pn接合を形成するp型層のキャリア濃度が前記キャリア濃度減少領域の基板側端部のキャリア濃度よりも低いことを特徴とする請求項1のエピタキシャルウエハ。
- 請求項1または2のエピタキシャルウエハを用いて製造した発光ダイオード。
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