JP4023063B2 - 画像形成方法、画像形成装置、及び該装置に用いられるプロセスカートリッジ - Google Patents

画像形成方法、画像形成装置、及び該装置に用いられるプロセスカートリッジ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像形成方法、画像形成装置、プロセスカートリッジ及び電子写真感光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真感光体は有機光導電性物質を含有する有機感光体が最も広く用いられている。有機感光体は可視光から赤外光まで各種露光光源に対応した材料が開発し易いこと、環境汚染のない材料を選択できること、製造コストが安いこと等が他の感光体に対して有利な点であるが、唯一の欠点は機械的強度が弱く、多数枚の複写やプリント時に感光体表面の劣化や傷の発生がある事である。
【0003】
又、前記有機感光体は残留トナーの除去に用いられるクリーニングブレードとの摩擦抵抗が大きく、前記感光体の表面がクリーニングにより摩耗したり、或いは感光体表面を著しく傷つけてしまう。このような問題を解決する1つの方法として、現像剤中に脂肪酸金属塩を添加し、現像を介して感光体表面に脂肪酸金属塩の薄層を形成し、クリーニングブレードとの摩擦抵抗を下げようとする試みがなされた。しかしながら、この方法では従来の有機感光体の表面はこのような機械的摩耗による膜厚減耗が大きく、脂肪酸金属塩の薄層を形成したことよる摩擦抵抗の低下も一時的な効果でしかなかった。
【0004】
前記機械的摩耗による膜厚減耗を改善する方法として、本研究者等は電荷輸送性ポリシロキサン硬化樹脂層を感光体の表面層として提案してきた(特願平11−70308号)。この表面層を有する感光体は耐摩耗特性、及び耐環境特性(温度や湿度に対する静電特性の変化)は改善されるが、クリーニングブレードとの摩擦抵抗が大きく、特に高温高湿環境(以後HH環境と云う)において、ブレードめくれやクリーニング性能が低下するといった問題が発生することが判明した。
【0005】
一方、感光体とクリーニングブレードとの摩擦抵抗を低下させる方法として、感光体の表面層にミクロン或いはサブミクロンの大きさの凹凸を形成することが提案されている。例えば、感光体の表面層に数ミクロンの大きさの無機或いは有機粒子を添加し、表面を荒らす提案がなされてきた。感光体の膜厚に対し比較的大きいこのような凹凸は確かに感光体とクリーニングブレードとの摩擦抵抗を低下させ、ブレードめくれ(感光体の回転方向に当接されたクリーニングブレードの先端が反転し、めくれる現象)には効果があるが、このような大きな凹凸はHH環境等ではトナーや紙粉がしっかり感光体表面に付着しているので、しばしばクリーニング不良の原因となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は上記問題を解決し、長期に亘ってクリーニング性能を保持し、画像不良がなく、良好な電子写真画像を形成できる画像形成方法、画像形成装置を提供することにあり、また該画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記問題解決のため鋭意努力した結果、本発明の目的は下記の構成のいずれかを用いることにより達成されることを見出した。
【0008】
1.電子写真感光体上の潜像を現像剤により現像し、該現像により顕像化されたトナー像を記録材に転写後、該感光体上に残留するトナーをクリーニングブレードを用いてクリーニングを行う工程を有する画像形成方法において、該電子写真感光体が導電性支持体上に少なくとも感光層及び電荷輸送性を有する構造単位を含むシロキサン系樹脂層中に5nm〜500nmの無機金属酸化物粒子を含有させた保護層を有し、該電子写真感光体の表面が原子間力顕微鏡を用いて測定した5μm四方の平均面粗さ(Ra)が1.5nm以上0.1μm以下であり、該電子写真感光体表面に脂肪酸金属塩を供給しながら画像形成を行うことを特徴とする画像形成方法。
【0009】
2.前記現像剤が脂肪酸金属塩を含有することを特徴とする前記1に記載の画像形成方法。
【0010】
3.電子写真感光体上の潜像を現像剤により現像し、該現像により顕像化されたトナー像を記録材に転写後、該感光体上に残留するトナーをクリーニングブレード及びクリーニング補助部材を用いてクリーニングを行う画像形成方法において、該電子写真感光体が導電性支持体上に少なくとも感光層及び電荷輸送性を有する構造単位を含むシロキサン系樹脂層中に5nm〜500nmの無機金属酸化物粒子を含有させた保護層を有し、該電子写真感光体の表面が原子間力顕微鏡を用いて測定した5μm四方の平均面粗さ(Ra)が1.5nm以上0.1μm以下であり、該クリーニング補助部材を介して該電子写真感光体表面に脂肪酸金属塩を供給しながら画像形成を行うことを特徴とする画像形成方法。
【0011】
4.前記電子写真感光体の保護層が、水酸基或いは加水分解性基を有する有機ケイ素化合物、又は該有機ケイ素化合物の縮合生成物と水酸基を有する電荷輸送性能化合物を反応させて得られる架橋構造を有するシロキサン系樹脂であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0012】
5.前記保護層が酸化防止剤を含有することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0013】
6.前記脂肪酸金属塩がフローテスターの流出速度が5.0×10-4(ml/sec)以上の脂肪酸金属塩であることを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【0014】
7.電子写真感光体上の潜像を現像剤により現像し、該現像により顕像化されたトナー像を記録材に転写後、該感光体上に残留するトナーをクリーニングブレードを用いてクリーニングを行う工程を有する画像形成装置において、該電子写真感光体が導電性支持体上に少なくとも感光層及び電荷輸送性を有する構造単位を含むシロキサン系樹脂層中に5nm〜500nmの無機金属酸化物粒子を含有させた保護層を有し、該電子写真感光体の表面が原子間力顕微鏡を用いて測定した5μm四方の平均面粗さ(Ra)が1.5nm以上0.1μm以下であり、該電子写真感光体表面に脂肪酸金属塩を供給しながら画像形成を行うことを特徴とする画像形成装置。
【0015】
8.前記現像剤が脂肪酸金属塩を含有することを特徴とする前記7に記載の画像形成装置。
【0016】
9.電子写真感光体上の潜像を現像剤により現像し、該現像により顕像化されたトナー像を記録材に転写後、該感光体上に残留するトナーをクリーニングブレード及びクリーニング補助部材を用いてクリーニングを行う画像形成装置において、該電子写真感光体が導電性支持体上に少なくとも感光層及び電荷輸送性を有する構造単位を含むシロキサン系樹脂層中に5nm〜500nmの無機金属酸化物粒子を含有させた保護層を有し、該電子写真感光体の表面が原子間力顕微鏡を用いて測定した5μm四方の平均面粗さ(Ra)が1.5nm以上0.1μm以下であり、該クリーニング補助部材を介して該電子写真感光体表面に脂肪酸金属塩を供給しながら画像形成を行うことを特徴とする画像形成装置。
【0017】
10.前記7〜9のいずれか1項に記載の画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジが、導電性支持体上に少なくとも感光層及び電荷輸送性を有する構造単位を含むシロキサン系樹脂層中に5nm〜500nmの無機金属酸化物粒子を含有させた保護層を有し、且つ少なくとも原子間力顕微鏡を用いて測定した5μm四方の平均面粗さ(Ra)が1.5nm以上0.1μm以下の表面粗さを有する電子写真感光体と脂肪酸金属塩を含有する現像剤を一体として有しており、該画像形成装置に出し入れ可能に設計されたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【0018】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明は電子写真感光体(以下単に感光体とも云う)の表面に感光層の膜厚やトナーの大きさに比し非常に小さい凹凸を設け、この感光体を用いたことを特徴としている。即ち、本発明は電子写真感光体の表面が原子間力顕微鏡を用いて測定した5μm四方の平均面粗さ(Ra)が1.5nm以上0.1μm以下となるような保護層を有する電子写真感光体と脂肪酸金属塩との親和性が特異的に向上し、感光体表面に均一に脂肪酸金属塩の薄膜を効果的に形成し、クリーニング性能の良好な画像形成方法、画像形成装置を見出して達成されたものである。この技術の具体的な実現手段について以下詳細に記述する。
【0019】
本発明の感光体表面粗さは原子間力顕微鏡を用いて測定される。この測定方法を以下に説明する。
【0020】
原子間力顕微鏡(AFM):走査型プローブ顕微鏡SPI3800N、多機能型ユニットSPA400(セイコーインスツルメンツ(株)製)
測定モード:ダイナミックフォースモード(DFMモード)
カンチレバー:SI−DF20(シリコン製バネ定数20N/m,固有周波数135KHz)
測定エリア:5×5μm
前記DFMモードとはある周波数(カンチレバーに固有の周波数)でカンチレバーを振動させ、近づいてくる試料に対し、間欠的に接触し振動振幅の減少によって表面の形状を表示するモード。このDFMモードは感光体表面に非接触で測定するため感光体表面を傷つけることなく、元の形状を保ったまま測定できる。
【0021】
平均面粗さ(Ra):JISB601で定義されている中心線粗さRaを測定面に対し適用できるよう三次元に拡張したもので「基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値」であり下式により表される。
【0022】
【数1】
Figure 0004023063
【0023】
指定面とは全測定面であり、本発明では5μm四方の測定面(XY平面)を表す。
【0024】
全測定面Zは次式で求められる。
Z=F(X,Y)
0は次式で求められる。
【0025】
0=X×Y
基準面:Zデータの平均値をZ0とするとZ=Z0で表される面
(XY平面と平行)
0は次式で求められる。
【0026】
【数2】
Figure 0004023063
【0027】
次に、このような表面形状を有する本発明感光体の保護層構成について記載する。
【0028】
〈保護層〉
本発明の保護層は水酸基或いは加水分解性基を有する有機ケイ素化合物、又は該有機ケイ素化合物の縮合生成物と水酸基を有する電荷輸送性能化合物、及び5nm〜500nmの無機金属酸化物粒子を含有する組成物と塗布、乾燥させて得られる。
【0029】
前記有機ケイ素化合物は代表的には下記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物を原料とした塗布組成物を塗布乾燥することにより形成される。これらの原料は親水性溶媒中では加水分解とその後に生じる縮合反応により、溶媒中で有機ケイ素化合物の縮合物(オリゴマー)を形成する。これら塗布組成物を塗布、乾燥することにより、3次元網目構造を形成したシロキサン系樹脂を含有する樹脂層を形成することができる。
【0030】
一般式(1)
(R)n−Si−(X)4-n
式中、Siはケイ素原子、Rは該ケイ素原子に炭素が直接結合した形の有機基を表し、Xは水酸基又は加水分解性基を表し、nは0〜3の整数を表す。
【0031】
一般式(1)で表される有機ケイ素化合物において、Rで示されるケイ素に炭素が直接結合した形の有機基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基、フェニル、トリル、ナフチル、ビフェニル等のアリール基、γ−グリシドキシプロピル、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル等の含エポキシ基、γ−アクリロキシプロピル、γ−メタアクリロキシプロピルの含(メタ)アクリロイル基、γ−ヒドロキシプロピル、2,3−ジヒドロキシプロピルオキシプロピル等の含水酸基、ビニル、プロペニル等の含ビニル基、γ−メルカプトプロピル等の含メルカプト基、γ−アミノプロピル、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピル等の含アミノ基、γ−クロロプロピル、1,1,1−トリフルオロプロピル、ノナフルオロヘキシル、パーフルオロオクチルエチル等の含ハロゲン基、その他ニトロ、シアノ置換アルキル基を挙げられる。特にはメチル、エチル、プロピル、ブチル等のアルキル基が好ましい。又Xの加水分解性基としてはメトキシ、エトキシ等のアルコキシ基、ハロゲン基、アシルオキシ基が挙げられる。特には炭素数6以下のアルコキシ基が好ましい。
【0032】
前記保護層は更に、下記一般式(2)で示された電荷輸送性化合物と前記有機ケイ素化合物又は該縮合物等との縮合反応により、該保護層を電荷輸送性を有する構造単位を含むシロキサン系樹脂層にする事により、該樹脂層の残留電位上昇を小さく抑えることができる。
【0033】
一般式(2)
B−(R1−ZH)m
式中、Bは電荷輸送性能を有する構造単位を含む1価又は多価の基を表し、R1は単結合又は2価のアルキレン基を表し、Zは酸素原子、硫黄原子又はNHを表し、mは1〜4の整数を表す。
【0034】
一般式(2)のBは電荷輸送性化合物構造を含む1価以上の基である。ここでBが電荷輸送性化合物構造を含むとは、一般式(2)中の(R1−ZH)基を除いた化合物構造が電荷輸送性能を有しているか、又は前記一般式(2)中の(R1−ZH)基を水素原子で置換したBHの化合物が電荷輸送性能を有する事を意味する。
【0035】
尚、前記の電荷輸送性化合物とは電子或いは正孔のドリフト移動度を有する性質を示す化合物であり、又別の定義としてはTime−Of−Flight法などの電荷輸送性能を検知できる公知の方法により電荷輸送に起因する検出電流が得られる化合物として定義できる。
【0036】
本発明の保護層は前記電荷輸送性を有する構造単位を含むシロキサン系樹脂層中に5nm〜500nmの無機金属酸化物粒子を含有させることにより、原子間力顕微鏡を用いて測定した5μm四方の平均面粗さ(Ra)測定において、1.5nm以上0.1μm以下であるような表面を有する感光体を作製する事ができる。即ち、本発明の保護層は水酸基或いは加水分解性基を有する有機ケイ素化合物、又は該有機ケイ素化合物の縮合生成物と水酸基を有する電荷輸送性能化合物、及び5nm〜500nmの無機金属酸化物粒子を含有する組成物と塗布、乾燥させて得られる電荷輸送性を有する複合化された樹脂層が好ましい。
【0037】
前記5nmから500nmの金属酸化物粒子は通常は液相法によって合成される。金属原子の例としてはSi、Ti、Al、Cr、Zr、Sn、Fe、Mg、Mn、Ni、Cuなどが挙げられる。これらの金属酸化物粒子はコロイド粒子として得ることができる。
【0038】
前記金属酸化物粒子のコロイド粒子は通常次の一般式で表される金属アルコキシド又は金属アリールオキシド等の金属オキシドより合成することができる。
【0039】
M(OR)4
Mは金属原子、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、フェニル基、ベンジル基を表す。
【0040】
該コロイド粒子はゾル−ゲル工程を経て得ることができる。ゾル−ゲル工程において、はじめに、ゾルは触媒の存在下アルコール/水性溶媒中に金属オキシドを懸濁することによって得られる。該溶液中の金属オキシドは加水分解を受けて、ゲル構造に縮合する。ゲルは縮合され、沈殿した金属酸化物粒子のコロイド粒子を形成する。
【0041】
又、前記金属酸化物粒子は該粒子表面に前記有機ケイ素化合物と反応性を有する化合物基を有することが好ましい。該反応性を有する化合物基としては、例えば水酸基、アミノ基等が挙げられる。このような反応性基を有する金属酸化物粒子を用いることにより、本発明の保護層は前記シロキサン系樹脂と該金属酸化物粒子表面が化学結合をした複合化された樹脂層を形成し強度と弾性を増強した樹脂層をなり、該樹脂層を感光体の保護層として用いるとブレードクリーニング等の擦過に対して摩耗しにくい、電子写真特性の良好な膜を形成する。
【0042】
前記水酸基又は加水分解性基を有する有機ケイ素化合物、及び水酸基又は加水分解性基を有する有機ケイ素化合物から形成された縮合物との総量(H)と前記一般式(2)の化合物の量(I)の比としては、質量比で100:3〜50:100であることが好ましく、より好ましくは100:10〜50:100の間である。
【0043】
また前記金属酸化物粒子の添加量(J)は前記総量(H)+化合物の量(I)の総質量100部に対し(J)を1〜30質量部を用いることが好ましい。
【0044】
前記総量(H)成分が前記の範囲内で使用されると、本発明の感光体表面層の硬度が高く且つ弾力性がある。(J)成分の金属酸化物粒子が1質量部より少ないと前記平均面粗さ(Ra)が1.5nmより小さくなりやすく、30質量部より多く用いると前記平均面粗さ(Ra)が0.1μmより大きくなりやすい。一方、前記化合物の量(I)が前記の範囲内で使用されると感度や残留電位特性等の電子写真特性が良好であり、前記感光体表面層の硬度が高い。
【0045】
前記のシロキサン系樹脂層を形成するには縮合反応を促進するために縮合触媒を用いることが好ましい。ここで用いられる縮合触媒とは縮合反応に接触的に作用する触媒、及び縮合反応の反応平衡を生成系に移動させる働きをするものの少なくともいずれか一方の作用をもつものであれば良い。
【0046】
具体的な縮合触媒としては酸、金属酸化物、金属塩、アルキルアミノシラン化合物など従来シリコンハードコート材料に用いられてきた公知の触媒を用いることができる。例えば、有機カルボン酸、亜硝酸、亜硫酸、アルミン酸、炭酸及びチオシアン酸の各アルカリ金属塩、有機アミン塩(水酸化テトラメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウムアセテート)、スズ有機酸塩(スタンナスオクトエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンメルカプチド、ジブチルチンチオカルボキシレート、ジブチルチンマリエート等)等が挙げられる。
【0047】
以下に前記一般式(2)で表される好ましい化合物例を挙げる。
【0048】
【化1】
Figure 0004023063
【0049】
【化2】
Figure 0004023063
【0050】
【化3】
Figure 0004023063
【0051】
一般的には、アルコキシシランを有する組成物又はアルコキシシランと金属酸化物粒子を有する組成物の縮合反応により3次元網目構造を形成することができる。
【0052】
本発明の保護層には酸化防止剤を含有させることが好ましい。該酸化防止剤とは、その代表的なものは電子写真感光体中ないしは感光体表面に存在する自動酸化性物質に対して、光、熱、放電等の条件下で酸素の作用を防止ないし、抑制する性質を有する物質である。詳しくは下記の化合物群が挙げられる。
【0053】
(1)ラジカル連鎖禁止剤
・フェノール系酸化防止剤
ヒンダードフェノール系
・アミン系酸化防止剤
ヒンダードアミン系
ジアリルジアミン系
ジアリルアミン系
・ハイドロキノン系酸化防止剤
(2)過酸化物分解剤
・硫黄系酸化防止剤(チオエーテル類)
・燐酸系酸化防止剤(亜燐酸エステル類)
上記酸化防止剤のうちでは、(1)のラジカル連鎖禁止剤が良く、特にヒンダードフェノール系或いはヒンダードアミン系酸化防止剤が好ましい。又、2種以上のものを併用してもよく、例えば(1)のヒンダードフェノール系酸化防止剤と(2)のチオエーテル類の酸化防止剤との併用も良い。更に、分子中に上記構造単位、例えばヒンダードフェノール構造単位とヒンダードアミン構造単位を含んでいるものでも良い。
【0054】
前記酸化防止剤の中でも特にヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系酸化防止剤が高温高湿時のカブリの発生や画像ボケ防止に特に効果がある。
【0055】
ヒンダードフェノール系或いはヒンダードアミン系酸化防止剤の保護層中の含有量は0.01〜20質量%が好ましい。0.01質量%未満だと高温高湿時のカブリや画像ボケに効果がなく、20質量%より多い含有量では保護層中の電荷輸送能の低下がおこり、残留電位が増加しやすくなり、又膜強度の低下が発生する。
【0056】
又、前記酸化防止剤は下層の電荷発生層或いは電荷輸送層、中間層等にも必要により含有させて良い。これらの層への前記酸化防止剤の添加量は各層に対して0.01〜20質量%が好ましい。
【0057】
ここでヒンダードフェノールとはフェノール化合物の水酸基に対しオルト位置に分岐アルキル基を有する化合物類及びその誘導体を云う(但し、水酸基がアルコキシに変成されていても良い)。
【0058】
ヒンダードアミン系とはN原子近傍にかさ高い有機基を有する化合物である。かさ高い有機基としては分岐状アルキル基があり、例えばt−ブチル基が好ましい。例えば下記構造式で示される有機基を有する化合物類が好ましい。
【0059】
【化4】
Figure 0004023063
【0060】
式中のR13は水素原子又は1価の有機基、R14、R15、R16、R17はアルキル基、R18は水素原子、水酸基又は1価の有機基を示す。
【0061】
ヒンダードフェノール部分構造を持つ酸化防止剤としては、例えば特開平1−118137号(P7〜P14)記載の化合物が挙げられるが本発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
ヒンダードアミン部分構造を持つ酸化防止剤としては、例えば特開平1−118138号(P7〜P9)記載の化合物も挙げられるが本発明はこれに限定されるものではない。
【0063】
有機リン化合物としては、例えば、一般式RO−P(OR)−ORで表される化合物で代表的なものとして下記のものがある。尚、ここにおいてRは水素原子、各々置換もしくは未置換のアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表す。
【0064】
有機硫黄系化合物としては、例えば、一般式R−S−Rで表される化合物で代表的なものとして下記のものがある。尚、ここにおいてRは水素原子、各々置換もしくは未置換のアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表す。
【0065】
以下に代表的な酸化防止剤の化合物例を挙げる。
【0066】
【化5】
Figure 0004023063
【0067】
【化6】
Figure 0004023063
【0068】
【化7】
Figure 0004023063
【0069】
【化8】
Figure 0004023063
【0070】
次に、前記保護層以外の本発明の感光体構成について記載する。本発明の電子写真感光体の層構成は、特に限定はないが、電荷発生層、電荷輸送層、或いは電荷発生・電荷輸送層(電荷発生と電荷輸送の機能を同一層に有する層)等の感光層とその上に保護層を塗設した構成をとるのが好ましい。
【0071】
以下に本発明に用いられる感光体の構成について記載する。
導電性支持体
本発明の感光体に用いられる導電性支持体としてはシート状、円筒状のどちらを用いても良いが、画像形成装置をコンパクトに設計するためには円筒状導電性支持体の方が好ましい。
【0072】
本発明の円筒状導電性支持体とは回転することによりエンドレスに画像を形成できるに必要な円筒状の支持体を意味し、真直度で0.1mm以下、振れ0.1mm以下の範囲にある導電性の支持体が好ましい。この真直度及び振れの範囲を超えると、良好な画像形成が困難になる。
【0073】
導電性の材料としてはアルミニウム、ニッケルなどの金属ドラム、又はアルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム、又は導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムを使用することができる。導電性支持体としては常温で比抵抗103Ωcm以下が好ましい。
【0074】
本発明で用いられる導電性支持体は、その表面に封孔処理されたアルマイト膜が形成されたものを用いても良い。アルマイト処理は、通常例えばクロム酸、硫酸、シュウ酸、リン酸、硼酸、スルファミン酸等の酸性浴中で行われるが、硫酸中での陽極酸化処理が最も好ましい結果を与える。硫酸中での陽極酸化処理の場合、硫酸濃度は100〜200g/l、アルミニウムイオン濃度は1〜10g/l、液温は20℃前後、印加電圧は約20Vで行うのが好ましいが、これに限定されるものではない。又、陽極酸化被膜の平均膜厚は、通常20μm以下、特に10μm以下が好ましい。
【0075】
中間層
本発明においては導電性支持体と感光層の間に、バリヤー機能を備えた中間層を設けることもできる。
【0076】
本発明においては導電性支持体と前記感光層のとの接着性改良、或いは該支持体からの電荷注入を防止するために、該支持体と前記感光層の間に中間層(下引層も含む)を設けることもできる。該中間層の材料としては、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂が挙げられる。これら下引き樹脂の中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さくできる樹脂としてはポリアミド樹脂が好ましい。又、これら樹脂を用いた中間層の膜厚は0.01〜0.5μmが好ましい。
【0077】
又本発明に最も好ましく用いられる中間層はシランカップリング剤、チタンカップリング剤等の有機金属化合物を熱硬化させた硬化性金属樹脂を用いた中間層が挙げられる。硬化性金属樹脂を用いた中間層の膜厚は、0.1〜2μmが好ましい。
【0078】
感光層
本発明の感光体の感光層構成は前記中間層上に電荷発生機能と電荷輸送機能を1つの層に持たせた単層構造の感光層構成でも良いが、より好ましくは感光層の機能を電荷発生層(CGL)と電荷輸送層(CTL)に分離した構成をとるのがよい。機能を分離した構成を取ることにより繰り返し使用に伴う残留電位増加を小さく制御でき、その他の電子写真特性を目的に合わせて制御しやすい。負帯電用の感光体では中間層の上に電荷発生層(CGL)、その上に電荷輸送層(CTL)の構成を取ることが好ましい。正帯電用の感光体では前記層構成の順が負帯電用感光体の場合の逆となる。本発明の最も好ましい感光層構成は前記機能分離構造を有する負帯電感光体構成である。
【0079】
以下に機能分離負帯電感光体の感光層構成について説明する。
電荷発生層
電荷発生層:電荷発生層には電荷発生物質(CGM)を含有する。その他の物質としては必要によりバインダー樹脂、その他添加剤を含有しても良い。
【0080】
電荷発生物質(CGM)としては公知の電荷発生物質(CGM)を用いることができる。例えばフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などを用いることができる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCGMは複数の分子間で安定な凝集構造をとりうる立体、電位構造を有するものであり、具体的には特定の結晶構造を有するフタロシアニン顔料、ペリレン顔料のCGMが挙げられる。例えばCu−Kα線に対するブラッグ角2θが27.2°に最大ピークを有するチタニルフタロシアニン、同2θが12.4に最大ピークを有するベンズイミダゾールペリレン等のCGMは繰り返し使用に伴う劣化がほとんどなく、残留電位増加小さくすることができる。
【0081】
電荷発生層にCGMの分散媒としてバインダーを用いる場合、バインダーとしては公知の樹脂を用いることができるが、最も好ましい樹脂としてはホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコン樹脂、シリコン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。バインダー樹脂と電荷発生物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し20〜600質量部が好ましい。これらの樹脂を用いることにより、繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできる。電荷発生層の膜厚は0.01μm〜2μmが好ましい。
【0082】
電荷輸送層
電荷輸送層:電荷輸送層には電荷輸送物質(CTM)及びCTMを分散し製膜するバインダー樹脂を含有する。その他の物質としては必要により酸化防止剤等の添加剤を含有しても良い。
【0083】
電荷輸送物質(CTM)としては公知の電荷輸送物質(CTM)を用いることができる。例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることができる。これら電荷輸送物質は通常、適当なバインダー樹脂中に溶解して層形成が行われる。これらの中で繰り返し使用に伴う残留電位増加を最も小さくできるCTMは高移動度で、且つ組み合わされるCGMとのイオン化ポテンシャル差が0.5(eV)以下の特性を有するものであり、好ましくは0.25(eV)以下である。
【0084】
CGM、CTMのイオン化ポテンシャルは表面分析装置AC−1(理研計器社製)で測定される。
【0085】
電荷輸送層(CTL)に用いられる樹脂としては、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコン樹脂、メラミン樹脂並びに、これらの樹脂の繰り返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂。又これらの絶縁性樹脂の他、ポリ−N−ビニルカルバゾール等の高分子有機半導体が挙げられる。
【0086】
これらCTLのバインダーとして最も好ましいものはポリカーボネート樹脂である。ポリカーボネート樹脂はCTMの分散性、電子写真特性を良好にすることにおいて、最も好ましい。バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100質量部に対し10〜200質量部が好ましい。又、電荷輸送層の膜厚は10〜40μmが好ましい。
【0087】
保護層
感光体の保護層として、前記シロキサン系樹脂層を設けることにより、本発明の最も好ましい層構成を有する感光体を得ることができる。
【0088】
本発明の中間層、感光層、保護層等の層形成に用いられる溶媒又は分散媒としては、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではないが、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトン等が好ましく用いられる。また、これらの溶媒は単独或いは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0089】
次に本発明の電子写真感光体を製造するための塗布加工方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、円形量規制型塗布等の塗布加工法が用いられるが、感光層の上層側の塗布加工は下層の膜を極力溶解させないため、又、均一塗布加工を達成するためスプレー塗布又は円形量規制型(円形スライドホッパ型がその代表例)塗布等の塗布加工方法を用いるのが好ましい。なお本発明の保護層は前記円形量規制型塗布加工方法を用いるのが最も好ましい。前記円形量規制型塗布については例えば特開昭58−189061号公報に詳細に記載されている。
【0090】
本発明は電子写真感光体の表面が原子間力顕微鏡を用いて測定した5μm四方の平均面粗さ(Ra)において、1.5nm以上0.1μm以下になるような保護層を有する電子写真感光体と脂肪酸金属塩との親和性が特異的に向上し、感光体表面に均一に脂肪酸金属塩の薄膜を効果的に形成できることを見出して達成されたものである。この感光体表面に均一に脂肪酸金属塩の薄膜を効果的に形成する技術の具体的な実現手段として次に記載する。
【0091】
即ち、
▲1▼現像剤中に脂肪酸金属塩を含有させる
▲2▼感光体表面層に脂肪酸金属塩を含有させる
▲3▼クリーニング補助部材を介して脂肪酸金属塩を感光体表面に供給する
前記脂肪酸金属塩は一般に炭素数10以上の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩が好ましい。たとえばステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸インジウム、ステアリン酸ガリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、パルチミン酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム等が挙げられ、より好ましくはステアリン酸金属塩である。
【0092】
本発明では脂肪酸金属塩の中でも特にフローテスターの流出速度が高い脂肪酸金属塩は劈開性が高く、本発明の前記感光体表面でより効果的に脂肪酸金属塩の層を形成することができる。流出速度の範囲としては1×10-7以上1×10-1以下が好ましく、5×10-4以上1×10-2以下であると最も好ましい。フローテスターの流出速度の測定は島津フローテスター「CFT−500」(島津製作所(株)製)を用いて測定した。
【0093】
次に脂肪酸金属塩の各供給手段について記載する。
現像剤中に脂肪酸金属塩を含有させる場合は、トナーの後処理工程でトナー中に脂肪酸金属塩を混合攪拌して分散させるのが好ましい。添加量はトナーの粒径等にも依存するが、一般的なトナーの粒径2〜15μm(体積平均粒径)では0.01〜1質量%が好ましい。脂肪酸金属塩が0.01質量%未満だとトナー表面から感光体表面への移行が不十分となり感光体表面に薄膜を形成することが難しい。また1質量%より多いと感光体表面に形成された脂肪酸金属塩薄膜への紙粉の付着が増大し、画像ボケが発生しやすくなる。
【0094】
又、トナーへの流動性付与の観点から、無機微粒子、有機微粒子をトナーに添加し混合攪拌処理を繰り返すことが好ましい。この場合、特に無機微粒子の使用が好ましく、シリカ、チタニア、アルミナ等の無機酸化物粒子の使用が好ましく、更に、これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤等によって疎水化処理されていることが好ましい。
【0095】
次に本感光体保護層に脂肪酸金属塩を含有させる場合は以下に記すような本発明の保護層の塗布溶液中に分散或いは溶解させて塗布、乾燥させればよい。該感光体表面層中の脂肪酸金属塩の存在量は0.1質量%〜10質量%が好ましい。脂肪酸金属塩が0.01質量%未満だと十分な効果が得られない。また10質量%より多いと感光体表面への紙粉の付着が増大し、画像ボケが発生しやすくなる。
【0096】
次に、クリーニング補助部材を介して脂肪酸金属塩を感光体表面に供給する場合を説明する。
【0097】
図1に脂肪酸金属塩の固形部材をブラシローラーのフリッカーとして用いた例の断面図を示した。
【0098】
図1に於いてクリーニングブレード6とその下流側(感光体回転方向に対して)にブラシローラー4を感光体に当接する。このブラシのトナーをはたき落とす為のフリッカー3に脂肪酸金属塩の固形素材を用い、このフリッカーからブラシローラーを介して感光体表面に前記脂肪酸金属塩を供給することができる。尚、図中1は感光体、2は円筒状ブラシ支持体、5はブラシローラー位置決め部材、7はクリーニングブレード位置決め部材を示している。又、これ以外の方法としては脂肪酸金属塩を織布の編み目中にしみこませ、図1の前記ブラシローラーの代わりにウェブローラーとして感光体表面に当接しても良い。
【0099】
尚、クリーニングブレードはウレタンゴムで作られたものが最も好ましいがその中でも反発弾性が20〜60(20℃、50±5%RHの条件下)のポリウレタンゴムが好ましい。反発弾性が20未満だとクリーニング性が十分でなく、60を越えるとブレードメクレが発生しやすい(ウレタンゴム物性値はJIS−K6301に準じる)。
【0100】
図2は本発明の画像形成装置の1例としての電子写真画像形成装置の断面図である。
【0101】
図2に於いて50は像担持体である感光体ドラム(感光体)で、有機感光層をドラム上に塗布し、その上に本発明の樹脂層を塗設した感光体で、接地されて時計方向に駆動回転される。52はスコロトロンの帯電器で、感光体ドラム50周面に対し一様な帯電をコロナ放電によって与えられる。この帯電器52による帯電に先だって、前画像形成での感光体の履歴をなくすために発光ダイオード等を用いた露光部51による露光を行って感光体周面の除電をしてもよい。
【0102】
感光体への一様帯電ののち像露光器53により画像信号に基づいた像露光が行われる。この図の像露光器53は図示しないレーザーダイオードを露光光源とする。回転するポリゴンミラー531、fθレンズ等を経て反射ミラー542により光路を曲げられた光により感光体ドラム上の走査がなされ、静電潜像が形成される。
【0103】
その静電潜像は次いで現像器54で現像される。感光体ドラム50周縁にはトナーとキャリアとから成る現像剤を内蔵した現像器54が設けられていて、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ541によって現像が行われる。現像剤は、例えば前述のフェライトをコアとしてそのまわりに絶縁性樹脂をコーティングしたキャリアと、前述のスチレンアクリル系樹脂を主材料としてカーボンブラック等の着色剤と荷電制御剤と本発明の低分子量ポリオレフィンからなる着色粒子に、シリカ、酸化チタン等を外添したトナーとからなるもので、現像剤は層形成手段によって現像スリーブ541上に100〜600μmの層厚に規制されて現像域へと搬送され、現像が行われる。この時通常は感光体ドラム50と現像スリーブ541の間に直流バイアス、必要に応じて交流バイアス電圧をかけて現像が行われる。また、現像剤は感光体に対して接触あるいは非接触の状態で現像される。
【0104】
記録紙Pは画像形成後、転写のタイミングの整った時点で給紙ローラー57の回転作動により転写域へと給紙される。
【0105】
転写域においては転写のタイミングに同期して感光体ドラム50の周面に転写ローラー(転写器)58が圧接され、給紙された記録紙Pを挟着して転写される。
【0106】
次いで記録紙Pは転写ローラーとほぼ同時に圧接状態とされた分離ブラシ(分離器)59によって除電がなされ、感光体ドラム50の周面により分離して定着装置60に搬送され、熱ローラー601と圧着ローラー602の加熱、加圧によってトナーを溶着したのち排紙ローラー61を介して装置外部に排出される。なお前記の転写ローラー58及び分離ブラシ59は記録紙Pの通過後感光体ドラム50の周面より退避離間して次なるトナー像の形成に備える。
【0107】
一方記録紙Pを分離した後の感光体ドラム50は、クリーニング器62のブレード621の圧接により残留トナーを除去・清掃し、再び露光部51による除電と帯電器52による帯電を受けて次なる画像形成のプロセスに入る。
【0108】
尚、70は感光体、帯電器、転写器、分離器及びクリーニング器が一体化されている着脱可能なプロセスカートリッジである。
【0109】
電子写真画像形成装置としては、上述の感光体と、現像器、クリーニング器等の構成要素をプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このユニットを装置本体に対して着脱自在に構成しても良い。又、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に支持してプロセスカートリッジを形成し、装置本体に着脱自在の単一ユニットとし、装置本体のレールなどの案内手段を用いて着脱自在の構成としても良い。
【0110】
プロセスカートリッジには、一般には以下に示す一体型カートリッジ及び分離型カートリッジがある。一体型カートリッジとは、帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器の少なくとも1つを感光体とともに一体に構成し、装置本体に着脱可能な構成であり、分離型カートリッジとは感光体とは別体に構成されている帯電器、像露光器、現像器、転写又は分離器、及びクリーニング器であるが、装置本体に着脱可能な構成であり、装置本体に組み込まれた時には感光体と一体化される。本発明におけるプロセスカートリッジは上記双方のタイプのカートリッジを含む。
【0111】
次に、転写紙は代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に限定されず、OHP用のPETベース等も無論含まれる。
【0112】
像露光は、電子写真画像形成装置を複写機やプリンターとして使用する場合には、原稿からの反射光や透過光を感光体に照射すること、或いはセンサーで原稿を読み取り信号化し、この信号に従ってレーザービームの走査、LEDアレイの駆動、又は液晶シャッターアレイの駆動を行い感光体に光を照射することなどにより行われる。
【0113】
尚、ファクシミリのプリンターとして使用する場合には、像露光器53は受信データをプリントするための露光を行うことになる。
【0114】
本発明の電子写真感光体は、複写機、レーザープリンター、LEDプリンター、液晶シャッター式プリンター等の電子写真装置一般に適用し得るものであるが、更には電子写真技術を応用したディスプレイ、記録、軽印刷、製版、ファクシミリ等の装置にも広く適用し得るものである。
【0115】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。なお、本実施例に於いて「部」とは「質量部」を表す。
【0116】
(1)感光体の作製
感光体1の作製
塗布液調製として、メチルトリメトキシシラン30部、ジメチルジメトキシシラン16部に2.5%酢酸水溶液17部、tert.−ブタノール150部を加え、室温にて16時間加水分解反応させた。その後、酸化防止剤(例示化合物2−1)1部、電荷輸送性構造単位含有化合物(HCT−3)20部、コロイダルシリカ(数平均粒径15nm、メタノール分散品、固形分30質量%)40部、硬化触媒としてアルミニウムアセチルアセトナート1部を加えて溶解し保護層塗布液を作製した。
【0117】
次に感光体作製として、円筒形アルミドラム上に、チタンキレート化合物「TC−750」(松本製薬社製)20部、シランカップリング剤「KBM−503」(信越化学社製)13部をイソプロパノール:水=100:3の混合溶媒100部に溶解した中間層液を浸漬塗布し、150℃;30分加熱硬化して乾燥膜厚1.0μmの中間層を設けた。
【0118】
その上に、電荷発生物質としてX線回折におけるブラッグ角2θが9.5度、24.1度、27.2度を有するチタニルフタロシアニン6部、シリコン樹脂「KR−5240」(信越化学社製)7部、酢酸t−ブチル200部をサンドグラインダーを用いて分散した塗布液を浸漬塗布して、乾燥膜厚0.3μmの電荷発生層を形成した。
【0119】
次いで電荷輸送物質として(CT−1)200部、酸化防止剤(例示化合物2−1)5部、ビスフェノールZ型ポリカーボネート「パンライトTS−2050」(帝人化成(株)製)300部を1,2−ジクロロエタン2000部に溶解した塗布液を、電荷発生層上に円形スライドホッパーにて塗布して、乾燥膜厚20μmの電荷輸送層を形成した。
【0120】
次いで先の保護層塗布液を円形スライドホッパーにて塗布して、110℃;90分加熱硬化し、乾燥膜厚2.0μmの保護層を形成して感光体1を作製した。
【0121】
【化9】
Figure 0004023063
【0122】
感光体2の作製
KP−854(コロイダルシリカ含有、信越化学社製)100部、tert.−ブタノール80部を加えた後、酸化防止剤(例示化合物2−1)0.5部、電荷輸送性構造単位含有化合物(HCT−3)10部、硬化触媒としてアルミニウムアセチルアセトナート0.5部を加えて溶解し保護層塗布液を感光体1の保護層塗布液に代えて用いた他は、感光体1と同様にして感光体2を作製した。
【0123】
感光体3の作製
感光体1における保護層塗布液中のメチルトリメトキシシラン/ジメチルジメトキシシラン=30部/16部に代えてメチルトリメトキシシラン/ジメチルジメトキシシラン/フェニルトリメトキシシラン=15部/16部/11.4部を用いた他は、感光体1と同様にして感光体3を作製した。
【0124】
感光体4の作製
感光体1における保護層塗布液中のコロイダルシリカの代わりにコロイダルアンチモン(数平均粒径15nm、メタノール分散品、固形分30質量%)を用いた他は、感光体1と同様にして感光体4を作製した。
【0125】
感光体5の作製
感光体1における保護層塗布液中のコロイダルシリカの代わりにジルコニアゾル(数平均粒径62nm、水分散品、固形分30質量%)を用いた他は、感光体1と同様にして感光体5を作製した。
【0126】
感光体6の作製
感光体1における保護層塗布液中のコロイダルシリカの代わりにアルミナゾル(数平均粒径100nm、水分散品、固形分10質量%)を用いた他は、感光体1と同様にして感光体6を作製した。
【0127】
感光体7の作製(比較例)
感光体1における保護層塗布液中のコロイダルシリカを用いない他は、感光体1と同様にして感光体7を作製した。
【0128】
感光体8の作製(比較例)
感光体1における保護層塗布液中のコロイダルシリカの代わりに微粉末焼結シリカ(数平均粒径0.18μm)を用いた他は、感光体1と同様にして感光体8を作製した。
【0129】
前記感光体1〜8の作製に用いられたコロイダルシリカ等の数平均粒子径は透過型電子顕微鏡観察によって10000倍に拡大し、ランダムに100個の粒子を一次粒子として観察し、画像解析によってフェレ方向平均径としての測定値である。
【0130】
(2)現像剤の作製
下記トナー(A〜D)とキャリアよりなる現像剤(A〜D)を調製した。
【0131】
〈トナー〉
スチレン−アクリル共重合樹脂 100g
カーボンブラック 10g
ワックス 4g
シリカ微粉体 1g
脂肪酸金属塩 (表1に種類と量を記載)
上記スチレン−アクリル共重合樹脂、カーボンブラック、ワックスとを溶融、混練、粉砕して体積平均粒径8.5μmの着色粒子を得た。この着色粒子にシリカ微粉体、脂肪酸金属塩を添加して混合しトナー(A〜D)粒子を得た。
【0132】
〈キャリア〉
粒子径70μmのアクリレート樹脂被覆フェライトキャリアを用いた。
【0133】
〈現像剤〉
上記トナー(A〜D)とキャリアをトナー濃度が5質量%となるように混合し前記トナー(A〜D)に対応した現像剤(A〜D)を得た。
【0134】
【表1】
Figure 0004023063
【0135】
(3)画像形成装置
上記のようにして作製された感光体及び現像剤(トナー)を用いて表2に示したように組み合わせ、実施例1〜6及び比較例1及び2を作製し、デジタル複写機「konica7050」の改造機に組み込み評価を行った。
【0136】
該デジタル複写機のクリーニングのためにゴム硬度JISA70°、反発弾性25、厚さ2mm、自由長9mmのポリウレタン製弾性ゴムブレードを当接角20°で感光体の回転に対してカウンター方向に、重り荷重方式で押圧力20g/cmで当接した。
【0137】
更に単繊維太さ15デニール、繊維密度9.3×102f/cm2のアクリル性導電性ブラシを直径6mmのSUS製の芯金に外径15mmになるように作製したローラーを前記ブレードの下部に食い込み量1mmになるように設置し、感光体に対し順方向に回転数500rpmで感光体と同期して動作するように設定した。また、このときブラシに対して食い込み量1mmになるように、トナーをはたき落とすためのSUS製のフリッカーを設けた。
【0138】
評価1
30℃、80%RH(高温高湿)の厳しい条件で1万コピーの複写テストを行い、複写画像の品質(濃度、カブリの評価、画像ボケ等の目視評価)、感光体駆動トルク、ブレードめくれの評価を行った。
【0139】
上記の状態で設定した画像形成装置に感光体1〜8を搭載して1万コピーの実写テストを行い、複写画像の品質とドラムトルクを評価した。
【0140】
評価2:平均表面粗さ(Ra)の測定
前記感光体1〜8の各一部の試料を用いて前記に記載した方法で平均表面粗さ(Ra)の測定を行った。
【0141】
評価3:トルクの測定
トルクの測定はkonica7075のドラムカートリッジにドラム軸を通して感光体を固定し、前記条件のクリーニングブレードを当接した。ブレードのエッジ部に画像評価に対応した現像剤を塗布し、カウンター方向に回転させる際の起動トルクを測定した。環境条件は30℃、80%RH、トルク計は(株)東日製作所TG型を用い、ドラム軸に設置した。結果を表2に示す。
【0142】
【表2】
Figure 0004023063
【0143】
本発明の感光体、即ち平均表面粗さ(Ra)が1.5nm以上感光体1〜6は平均表面粗さ(Ra)が0.53nmの感光体7に比し、感光体駆動トルクが低く、ブレードめくれも発生せず良好が画像が得られている。感光体8は平均表面粗さ(Ra)が0.1μmを越えており、ブレードめくれは発生しないものの表面が荒れすぎていて、紙粉フィルミングの発生が起っている。
【0144】
実施例7
実施例1の現像剤にトナー1からステアリン酸を除いたトナーを用い、前記画像形成装置のブラシローラーのSUS製フリッカーの代わりに同一径のステアリン酸亜鉛棒を用いた以外は実施例1と同様にして1万コピーの複写評価を行い、複写画像の品質を評価した。
【0145】
評価結果はブレードめくれの発生もなく、画質は良好であった。
【0146】
【発明の効果】
以上の実施例より明らかなように、本発明の微細な平均面粗さを有する電子写真感光体と現像剤、或いはクリーニング補助部材(ブラシローラー)から脂肪酸金属塩を供給することにより、高温高湿環境のような厳しい環境条件の下でも良好な電子写真画像を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】脂肪酸金属塩の固形部材をブラシローラーのフリッカーとして用いた例の断面図。
【図2】本発明の画像形成装置の1例としての電子写真画像形成装置の断面図。
【符号の説明】
1 感光体
2 円筒状ブラシ支持体
3 フリッカー
4 ブラシローラー
5 ブラシローラー位置決め部材
6 クリーニングブレード
7 クリーニングブレード位置決め部材
50 感光体ドラム(又は感光体)
51 露光部
52 帯電器
53 像露光器
54 現像器
57 給紙ローラー
58 転写ローラー(転写器)
59 分離ブラシ(分離器)
60 定着装置
61 排紙ローラー
62 クリーニング器
70 プロセスカートリッジ

Claims (10)

  1. 電子写真感光体上の潜像を現像剤により現像し、該現像により顕像化されたトナー像を記録材に転写後、該感光体上に残留するトナーをクリーニングブレードを用いてクリーニングを行う工程を有する画像形成方法において、該電子写真感光体が導電性支持体上に少なくとも感光層及び電荷輸送性を有する構造単位を含むシロキサン系樹脂層中に5nm〜500nmの無機金属酸化物粒子を含有させた保護層を有し、該電子写真感光体の表面が原子間力顕微鏡を用いて測定した5μm四方の平均面粗さ(Ra)が1.5nm以上0.1μm以下であり、該電子写真感光体表面に脂肪酸金属塩を供給しながら画像形成を行うことを特徴とする画像形成方法。
  2. 前記現像剤が脂肪酸金属塩を含有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
  3. 電子写真感光体上の潜像を現像剤により現像し、該現像により顕像化されたトナー像を記録材に転写後、該感光体上に残留するトナーをクリーニングブレード及びクリーニング補助部材を用いてクリーニングを行う画像形成方法において、該電子写真感光体が導電性支持体上に少なくとも感光層及び電荷輸送性を有する構造単位を含むシロキサン系樹脂層中に5nm〜500nmの無機金属酸化物粒子を含有させた保護層を有し、該電子写真感光体の表面が原子間力顕微鏡を用いて測定した5μm四方の平均面粗さ(Ra)が1.5nm以上0.1μm以下であり、該クリーニング補助部材を介して該電子写真感光体表面に脂肪酸金属塩を供給しながら画像形成を行うことを特徴とする画像形成方法。
  4. 前記電子写真感光体の保護層が、水酸基或いは加水分解性基を有する有機ケイ素化合物、又は該有機ケイ素化合物の縮合生成物と水酸基を有する電荷輸送性能化合物を反応させて得られる架橋構造を有するシロキサン系樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
  5. 前記保護層が酸化防止剤を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
  6. 前記脂肪酸金属塩がフローテスターの流出速度が5.0×10-4(ml/sec)以上の脂肪酸金属塩であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像形成方法。
  7. 電子写真感光体上の潜像を現像剤により現像し、該現像により顕像化されたトナー像を記録材に転写後、該感光体上に残留するトナーをクリーニングブレードを用いてクリーニングを行う工程を有する画像形成装置において、該電子写真感光体が導電性支持体上に少なくとも感光層及び電荷輸送性を有する構造単位を含むシロキサン系樹脂層中に5nm〜500nmの無機金属酸化物粒子を含有させた保護層を有し、該電子写真感光体の表面が原子間力顕微鏡を用いて測定した5μm四方の平均面粗さ(Ra)が1.5nm以上0.1μm以下であり、該電子写真感光体表面に脂肪酸金属塩を供給しながら画像形成を行うことを特徴とする画像形成装置。
  8. 前記現像剤が脂肪酸金属塩を含有することを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
  9. 電子写真感光体上の潜像を現像剤により現像し、該現像により顕像化されたトナー像を記録材に転写後、該感光体上に残留するトナーをクリーニングブレード及びクリーニング補助部材を用いてクリーニングを行う画像形成装置において、該電子写真感光体が導電性支持体上に少なくとも感光層及び電荷輸送性を有する構造単位を含むシロキサン系樹脂層中に5nm〜500nmの無機金属酸化物粒子を含有させた保護層を有し、該電子写真感光体の表面が原子間力顕微鏡を用いて測定した5μm四方の平均面粗さ(Ra)が1.5nm以上0.1μm以下であり、該クリーニング補助部材を介して該電子写真感光体表面に脂肪酸金属塩を供給しながら画像形成を行うことを特徴とする画像形成装置。
  10. 請求項7〜9のいずれか1項に記載の画像形成装置に用いられるプロセスカートリッジが、導電性支持体上に少なくとも感光層及び電荷輸送性を有する構造 単位を含むシロキサン系樹脂層中に5nm〜500nmの無機金属酸化物粒子を含有させた保護層を有し、且つ少なくとも原子間力顕微鏡を用いて測定した5μm四方の平均面粗さ(Ra)が1.5nm以上0.1μm以下の表面粗さを有する電子写真感光体と脂肪酸金属塩を含有する現像剤を一体として有しており、該画像形成装置に出し入れ可能に設計されたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
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