JP4022232B2 - 室内閉じ込め防止用のドア改造方法 - Google Patents

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本発明は、大地震発生時に室内に閉じ込められるのを防止するためのドア構造に関し、特に、集団住宅などの建造物に使用するのに適したドア改造方法に関する。
高層住宅などを含む建造物の玄関ドアなどには、鋼製ドアが一般に広く用いられている。この様な鋼製ドアにあっては、地震によるドア周囲の壁のゆがみや破壊によって、ドア枠やドア開閉用の蝶番ばかりでなく、ドア本体にも変形が発生してドアの開閉が不可能となり、住人が室内に閉じ込められてしまって救済が困難となるという事態が、現実に発生している。
そこで、このような問題を解決すべく、地震によって建造物の壁などに歪みが生じた場合であってもドアの開閉を容易にする技術が提案されている(特許文献1、2参照)。例えば、ドア本体の外周面とドア枠の内周面とに、互いに対向するようにテーパ面と平坦面とを形成することにより、地震によって壁などの破壊や枠の歪みが生じても、これらテーパ面の作用によってドア本体に開扉方向に力を働かせることが提案された。これによれば、建造物の壁などに歪みによってドア本体に開扉方向に力を作用させるので、ドアが施錠されていなければドア本体は自然に開くし、ドアが施錠されていても解錠すればドア本体を開くことができるので、室内に閉じ込められる危険性は低くなると言われる。
特開平8−333963号公報 特開平9−317340号公報
しかしながら、上述した従来の技術では、ドアの外周面の一部を室内側に狭まる断面のテーパ面とし、当該外周面の残りの部分を平坦面に形成するとともに、ドア枠の内周面に、ドアの外周面のテーパ面及び平坦面に対応するテーパ面及び平坦面を設けている。すなわち、従来技術では、ドアとドア枠との対向する両方の面に平坦面が設けられている。このため、大地震発生時の壁の破壊状態や蝶番の歪み状態によっては、ドアの平坦面がドア枠の平坦面によって上下方向又は左右方向に強く挟み込まれてしまってドアが開けなくなる可能性があるという問題がある。
また、ドアとドア枠とにテーパ面と平坦面とを設けることは、新築の建造物に対しては容易に適用できても、既存の建造物に対して適用しようとすると、ドアの改造又は交換、ドア枠部分の工事など、多大な費用と時間を要する工事を必要とすることになり、既存の建造物に適用することは実際には困難である。しかしながら、既存の建造物の耐震性を高めると共に大地震発生時に室内に閉じ込められるのを防止する手段を確保することは急務であり、既存の建造物のドア構造に、極めて簡単に且つ低コストで、大地震の発生時においても住人が確実に室外へ脱出できる手段を施すことが要求される。
本発明は、上記の種々の課題に鑑みて提案されたものであり、本発明の目的は、既存の建造物におけるドア構造に対しても極めて簡単に且つ低コストで適用することができ、地震発生時に室内に閉じ込められるのを防止するドア改造方法を提供することである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、
上枠及び下枠を有するドア枠と、該ドア枠に回動可能に取り付けられるドア本体とを有するドア構造体を、前記ドア枠の歪みによって前記ドア本体に開扉方向の力を作用させる構造に改造する方法であって、
前記上枠に固着される第1の取り付け片及び第2の取り付け片と、これら取り付け片の間を連結する中間片とを備え、前記中間片が、前記上枠に固着されたときに前記ドア本体の開扉方向において水平方向上向きの傾斜面を有する上枠用取り付け部材を前記ドア枠の前記上枠に取り付ける工程と、
前記ドア本体の上端部を、水平方向に対して傾斜する面を形成するように加工する工程と、
前記ドア本体の前記上端部に固着される第1の取り付け片及び第2の取り付け片と、これら取り付け片の間を連結する中間片とを備え、前記中間片が、前記ドア本体に固着されたときに前記ドア本体の開扉方向において水平方向上向きの傾斜面を有するドア用取り付け部材を前記ドア本体の上端部に取り付ける工程と、
を備えることを特徴とする改造方法、
を提供する。
以下、図面を参照しながら、本発明に係るドア改造方法に関する実施の形態を詳細に説明する。なお、全図を通じて、同一の又は同等の構成要素には同一の参照数を付すこととする。
まず、図1〜図6により、大地震発生時に室内に閉じ込められるのを防止することができるドア構造体について詳述する。図1〜図4において、ドア本体1は建造物のドア枠10に蝶番20を介して開閉自在に軸支されており、ドア本体1とドア枠10とによりドア構造体が形成される。なお、ドア本体1はノブ2を回すことによって室外方向に、すなわち、Xで示す開扉方向に開くことができる。
図2は、図1に示すドア構造体の線A−Aに沿う断面におけるドア構造体の上側部分を示している。図2に示すように、ドア本体1とドア枠10のドア上枠11との対向する部分には、互いにほぼ平行な傾斜面が形成される。すなわち、ドア本体1の内面4よりも外面5の方が垂直方向において高くなるよう、ドア本体1の上壁3は、水平方向上向きに所定の角度αをなして内面4と外面5とを連結する傾斜した平面をなすように形成される。これに対応して、ドア本体1の上壁3に対向するドア上枠11は、ドア本体1を閉めたときにドア本体1の傾斜した上壁3と実質的に平行となる傾斜面12を有する形状に構成される。
図3は、図1に示すドア構造体の線A−Aに沿う断面図におけるドア構造体の下側部分を示している。通常、建造物のドア下枠13には、室内側から室外側へ向かって低くなる傾斜面14が予め設けられている。そこで、図3に示すように、ドア本体1の下壁6に、ドア本体1の開扉を容易にするために傾斜面14上を転がる回転自在な回転部材、例えばローラ30を取付ける。なお、図4に示すように、ローラ30は、ドア本体1の蝶番20のある側辺よりもノブ2の設けられた側辺に近い位置に取り付けられるのがよい。しかし、これに限定されるものではなく、例えばドア本体1の下側辺5に沿って適宜の2個所にローラ30を設けるようにしてもよい。
このように、ドア構造体は上記のように構成されているので、地震によってドア枠10に歪みが生じたときに、ドア枠10に形成した傾斜面12はドア上壁3に対してドア本体1を開く方向に押す力を作用させる。つまり、ドア本体1に開扉方向Xの力を印加する。しかも、ローラ30が室外に向かって低くなる傾斜面14に載っているので、ノブ2を手で又は補助具を用いて回すことによりドア本体1を開くことができ、これによって、大地震発生時に住人が室内に閉じ込められるのが防止される。
なお、ドア本体1の下壁6に取り付ける回転部材としては、ローラ30に代えて、図5及び図6に示すように、任意の方向に回転可能なボールキャスタ31を用いても、ローラ30と同様の又はそれ以上の効果が得られる。なお、ローラ30やボールキャスタ31は例であり、傾斜面14上を転がることができる任意の回転部材を用いることができる。
以上、図1〜図6を用いて説明したドア構造体を新築の建造物に設置することは容易である。しかし、既存の建造物を上記のドア構造体を備えるように改造するには、ドア上枠に傾斜面を設けるとともに、既存のドア本体の上壁をテーパ面に加工する、又はテーパ面の付いたドア本体と取り替えることが必要となる。したがって、工期やコストに鑑みて、本発明を既存の建造物に適用することは実際には困難である。
そこで、本発明は、既存の建造物におけるドア構造体に容易に適用することができ、地震発生時に室内からの脱出を容易にするためのドア改造部材セットを提案する。このドア改造部材セットは上枠用取り付け部材とドア用取り付け部材とを備え、必要に応じて傾斜部材を含む。以下、既存のドア構造体に適用可能な、本発明に係るドア改造部材セットについて説明する。
図7は、既存の建造物に設置されている一般的なドア構造体を示す正面図であり、図1に示す要素と同じ構成要素には同一の参照数字が付されている。そこで、この既存のドア構造体を改造して地震発生時の住人閉じ込めを防止するために、図8(A)に示す上枠用取り付け部材40と図8の(B)に示すドア用取り付け部材50とを設置する。これらの部材に加えて、図12に示す傾斜部材90をも設置すると、ドア本体の開扉が極めて容易になることが分かっている。
図8の(A)に示す上枠用取り付け部材40は、図9の(C)に示すように、既存のドア枠10のドア上枠11を挟むように固定される第1の取り付け片41及び第2の取り付け片42を備え、これら第1の取り付け片41と第2の取り付け片42とは中間片43によって連結される。中間片43は、第2の取り付け片42に連結された平らな第1の平面44と、この第1の平面44に対して所定の角度βをなす第2の平面45とを有する。そこで、上枠用取り付け部材40の第1の取り付け片41及び第2の取り付け片42を、図9の(C)に示すように、ドア上枠11を挟むようにドア枠11にネジ61、62などの固着手段によって固定する。これにより上枠11に、図2の傾斜面12と同等の作用を奏する第2の平面45が設けられる。
一方、図8の(B)に示すドア用取り付け部材50は、図9の(B)に示すように、ドア本体1の上端部を挟むようにドア本体1の前後の面にリベットなどの適宜の固着手段によって固定される第1の取り付け片51及び第2の取り付け片52を備え、これら第1の取り付け片51と第2の取り付け片52との間は、水平方向に対して角度βをなす平面として形成された中間片53によって連結される。そこで、図9の(A)に示すようにドア本体1の上端部を斜めに切り落としておき、ドア用取り付け部材50を図9の(B)に示すようにドア本体1の上端部に取り付けると、図2の上壁3に相当する傾斜面がドア本体1の上端部に設けられることになる。
図10の(A)は、ドア上枠11に上枠用取り付け部材40をネジ61、62によって固定し、ドア本体1の上端部にドア用取り付け部材50をリベット71、72によって固定したときの、ドア本体1を閉めた状態における部材40、50の相互位置関係を示している。一方、ドア本体1の下端部には、ローラ30又はボールキャスタ31を取り付ける。これにより、既存のドア構造体を、図1〜図6を用いて説明したドア構造体と同等の効果を奏する構造に改造することができる。
なお、防犯のために、ドア用取り付け部材50の中間片53の一端に、ドア本体1を閉じたときに部材40と部材50との間の隙間を覆いかくすための突出片54を設けることが望ましい。図11は、ドア用取り付け部材50が固定されたドア本体1を閉めたときの正面図である。
図10の(A)に示すように、ドア上枠11に上枠用取り付け部材40を取り付け、ドア本体1の上端部にドア用取り付け部材50を取り付けた場合、突出片54を設けたとしても、これら取り付け部材40、50の間に僅かでも隙間ができると、その隙間を通って雨水や湿気が外部から室内へ入ってくる可能性がある。これを防止するためにシール手段を講じることが望ましい。図10の(B)はこうしたシール手段80の一例を示している。シール手段80はシール用の弾性ゴム81と受け部材82とを備え、受け部材82は、受け部材82と平面44との間に弾性ゴム81が配置されるように、中間片43の第1の平面44に固定される。これにより、ドア本体1の閉扉時に、弾性ゴム81が受け部材82と取り付け片52と平面44との間に挟まれて上枠用取り付け部材40とドア用取り付け部材50との間の隙間をシールする。
なお、弾性ゴム81の代わりに任意のシール部材を用いることができる。また、図10の(B)には略L字状の受け部材82が示されているが、弾性ゴムなどのシール部材を配置することができる任意の形状のものが使用可能である。
更に、既存の建造物においては、ドア下枠13が水平又は水平に近い場合がある。このような場合には、地震発生時にドア本体1の開扉を容易にするために、上枠用取り付け部材40及びドア用取り付け部材50を取り付け、さらに、水平なドア下枠13とローラ30やボールキャスタ31等の回転部材との間に、回転部材が転がってドア本体1を開扉方向へ導くための傾斜面を有する傾斜部材90を設置することが望ましい。
図12の(A)及び(B)はこうした傾斜部材90の一例を示している。傾斜部材90は、適宜の幅Dと長さLを有する平坦面91と、平坦面91の一端に固定された脚92とを備えている。平坦面91はボールキャスタ31などの回転部材が取り付けられたドア本体1を開扉方向へ移動させるのを助けることができればよいので、その幅Dはドア本体1の幅よりも小さくてよい。また、平坦面91の長さLは、下枠13から傾斜部材90がはみ出さない程度であることが好ましい。脚92の長さは、平坦面91が下枠13に対して所望の斜度が得られるよう任意に設定することができる。
以上、本発明に係るドア改造方法の実施の形態について詳述したが、本発明はこうした実施の形態に限定されるものではない。例えば、本発明は高層住宅の入口のドア構造体以外にも種々の建造物のドア構造体に適用可能であり、例えば、建造物内の部屋のドア構造体にも適用することができる。また、ドア構造体は外開きのドア構造だけでなく内開きのドア構造にも適用できる。
なお、ドア構造体に錠が設けられていて、その施錠時に地震が発生ししてドア枠が歪んだとしても、ドア枠の歪みによってドア本体には開扉方向の力が作用しているので、手で又は補助具を用いて解錠することにより、ドア本体を開けることができる。
〔発明の効果〕
本発明に係るドア改造方法は、ドア枠やドア本体の構成に合わせて、簡単な構成で低コストに製造することができ、既存の建造物のドア本体及びドア枠に簡単に取り付けることができるドア改造部材を用いるので、既存のドア構造体を、地震に際しても住人が室内から脱出することのできる構造に低コストで簡単に改修することができるという効果を奏する。
しかも、本発明に係るドア改造方法を適用することにより、ドア本体の上壁は、開扉方向においてドア本体の内面から外面まで直線的に傾斜する形状とされ、それに対応して、ドア上枠にもドア本体の上壁と一様に接する面が設けられるので、ドア枠が歪んだときにも、その歪みがドア本体の上壁を開扉方向に押すよう力を加えることになり、ドア本体の開扉が容易になって、ドア本体がドア枠に挟み込まれてしまってドア本体が開かなくなるという危険は解消される。
ドア構造体の一例の正面図である。 図1の線A−Aに沿う断面における上側部分の主要な構成要素の断面図である。 図1の線A−Aに沿う断面における下側部分の主要な構成要素の断面図である。 図3に示す下側部分の主要な構成要素の正面図である。 図3に示す下側部分の主要な構成要素の他の構成例を示す断面図である。 図5に示す他の構成例の正面図である。 既存のドア構造体の一例の正面図である。 (A)は本発明に係る上枠用取り付け部材の断面図であり、(B)は本発明に係るドア用取り付け部材の断面図である。 (A)は、既存のドア本体の上端部を加工した状態を示す断面図であり、(B)は、図8の(B)に示すドア用取り付け部材を加工済みの既存のドア本体に取り付けた状態を示す断面図であり、(C)は、図8の(A)に示す上枠用取り付け部材をドア上枠に取り付けた状態を示す断面図である。 (A)は、上枠用取り付け部材とドア用取り付け部材とを既存のドア構造体に取り付けた状態を示す断面図であり、(B)は、上枠用取り付け部材にシール手段を設けた場合の断面図である。 上枠用取り付け部材とドア用取り付け部材とを既存のドア構造体に取り付けた状態を示す正面図である。 (A)は、水平な下枠に傾斜部材を載置したときの断面図であり、(B)は傾斜部材の斜視図である。
符号の説明
D:ドア構造体、 1:ドア本体、 2:ノブ、 3:ドアの上壁、 4:内面、 5:外面、 6:ドアの下壁、 10:ドア枠、 11:ドア上枠、 12:傾斜面、13:ドア下枠、14:傾斜面、 20:蝶番、30:ローラ、 31:ボールキャスタ、X:開扉方向、 40:上枠用取り付け部材、 50:ドア用取り付け部材、 80:シール手段、 90:傾斜部材

Claims (1)

  1. 上枠及び下枠を有するドア枠と、該ドア枠に回動可能に取り付けられるドア本体とを有するドア構造体を、前記ドア枠の歪みによって前記ドア本体に開扉方向の力を作用させる構造に改造する方法であって、
    前記上枠に固着される第1の取り付け片及び第2の取り付け片と、これら取り付け片の間を連結する中間片とを備え、前記中間片が、前記上枠に固着されたときに前記ドア本体の開扉方向において水平方向上向きの傾斜面を有する上枠用取り付け部材を前記ドア枠の前記上枠に取り付ける工程と、
    前記ドア本体の上端部を、水平方向に対して傾斜する面を形成するように加工する工程と、
    前記ドア本体の前記上端部に固着される第1の取り付け片及び第2の取り付け片と、これら取り付け片の間を連結する中間片とを備え、前記中間片が、前記ドア本体に固着されたときに前記ドア本体の開扉方向において水平方向上向きの傾斜面を有するドア用取り付け部材を前記ドア本体の上端部に取り付ける工程と、
    を備えることを特徴とする改造方法。
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