JP3809505B2 - ドア - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、 震災時に変形が生じた場合にも容易に開けることのできるドアに関する。特に、 本発明のドアは、 既設ドアを改造することで容易に設置可能としたことを特徴とする。
なお、本発明において「ドア」とは、壁面の開口部に付設した枠体と扉等で構成される構造体全体をいうものとする。
【0002】
【従来の技術】
マンション等の集合住宅の住戸玄関ドアは、ほとんどの場合、 ドアを構成する枠体が鉄筋コンクリート造の壁に造り込まれている。また、扉は、鋼製等の金属製とされている。
ドアの代表的な構造例を図4(a)に例示する。また、そのA−A´視断面模式図を図5に示す。
【0003】
図示のように、 ドアの枠体10はコンクリート製の壁5の壁面内部に埋め込まれて固設され、その枠体10に係設した蝶番3で扉1が支持されて開閉自在とされている。なお、2はドア開閉用のノブである。
図6は、 従来の扉を閉じた状態のドアを示す上部(a)と下部(b)の部分断面図である。このように、扉1は、わずかな隙間で枠体10に嵌まり込んだ状態となっており、 枠体10は壁5に直接固定されている。
【0004】
ところで、阪神・淡路大震災のような大きな震災が発生すると、鉄筋コンクリート造の建物といえども大きな影響を受け、 建物が損壊したり、傾いたりする被害を受けることになる。
このような場合、ドアにも影響を受け、 図4(b)に示すような傾きが発生し、枠体10が変形して扉1との間に隙間21ができる一方、両者が接触して当たり部22が発生する。そのため、震災時に居住者が該扉1を開けることができなくなり、外に避難できなくなるという問題が発生する。特に、 扉は鋼製であることがほとんどのため、 人力では扉を開放することができないという事態に至る場合もある。
【0005】
そのため、従来から、各種のドア取り付け方法、免震扉、耐震ドアなどについての提案がされてきている。
例えば、 特開平10-266707 号公報では、 閉じ位置にある開きドア(本願の扉)が出入り口の開口外に位置するように取り付けるドア取付け方法およびその構造が開示されている。
【0006】
また、登録実用新案公報第3051072 号には、新しく取り付けるドアの扉部分の枠を既存枠外側に飛び出る形状にして取り付け、 古い鋼製玄関ドアを新しいドアに取り替える取替用耐震ドアが開示されている。
さらに、特開平9-13827 号公報では、 扉枠に対し枠の面外に扉パネルを取付ける構造とした免震扉が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記に開示のいずれの場合においても、 壁の変形を直接扉に受けることはなくなるものの、それぞれ以下のような問題がある。
すなわち、特開平10-266707 号公報では、開口外に位置するドア取付け枠が建物の変形に応じて変形することになる。そのため、開口内に位置する場合と比較して、枠と扉の当たりの程度は改善されるものの、 やはり、扉が開けにくい、 あるいは、 開けられないという事態が発生する場合がある。
【0008】
また、登録実用新案公報第3051072 号においても同様であり、 既存枠外側に飛び出る形状にして取り付けた扉部分の枠の変形は避けられず、扉が開けにくい、 あるいは、 開けられないという事態が発生する場合がある。
一方、 特開平9-13827 号公報に開示の免震扉では、 扉の周囲に枠を設けないことから、 上記の問題は生じないが、 枠を設けないことから、パッキンの性能劣化が扉の諸性能に与える影響が大きい。例えば、パッキンが直接、炎をあびる可能性があり、 耐火性能が従来の扉よりも劣る可能性が高い。
【0009】
更に、 上記いずれの場合も、 扉そのものは新品を適用しており、 既設の扉をそのままで再利用することが考慮されていない。そのため、既設ドアの改造を行う場合においても、 コストがかかり、安価に改造を実現することができない。
本発明は、 上記の課題を解決し、 震災発生時にも確実に開けることのできるドアを提供するものである。また、本発明は、 既設ドアの改造に好適であり、 最小のコストで震災に対応したドア改造を可能とすることができる。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、 壁面の開口部に設けてなるドアであって、前記開口部の両側端部に設けられ、かつ、前記壁面から突出した部分を有する1対の縦枠材と、該縦枠材のいずれか一方に設けてなる蝶番と、該蝶番で係設してなる扉と、 前記1対の縦枠材の壁面から突出した部分の上端部に、壁面から突出した上枠がフレキシブル接合金物によって上下に自在に可動な状態で連結されてなることを特徴とするドアによって上記課題を解決した。
【0011】
また、本発明は、 前記ドアが壁面の開口部に設けた既設ドアを改造してなるドアであって、 前記1対の縦枠材が、既設の縦枠部と、該縦枠部に壁面から突出して係設される付設枠部とからなることを好適とし、さらに、前記扉が、既設の扉を取り外して再利用された扉であることを好適とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のドアの詳細を、 図1に基づき説明する。なお、以下では、 既設ドアの改造を行う場合を例示して説明するが、 本発明のドアが、新規に築造する場合にも適用できるものであることは明らかである。
図1(a)は、本発明のドアの扉1が閉じた状態を示し、 図1(b)は、扉1が開いた状態を示す。また、図1(c)は、扉1が開いた状態を示す図1(b)のB−B´視断面図である。
【0013】
図1(c)に示すように、 壁5には、既設ドアの枠体10がそのまま固設されている。その枠体10の縦枠部11a に、図示しないボルト等で1対の付設枠部11b を固設する。これにより、既設の縦枠部11a と付設枠部11b とからなり壁面から突出する縦枠材11を形成することができる。この例は既設ドアの改造を行う場合の例示であるが、 新規に築造する場合には、 ドアの枠体10の縦枠部11a が壁面から突出した形のものとし、縦枠部11a と付設枠部11b とが一体となった形状のものとして枠体を製作してもよい。
【0014】
ところで、既設の枠体10が利用できないときは、 壁5の開口部に新たに枠体を設けてもよいが、その分、コストアップとなる。
次に、 縦枠材11のいずれか一方の側に、蝶番3を介して扉1を取り付ける。ここでは、この扉1を、既設の扉を取り外して再利用してなる扉とするが、コストアップを許容することを前提として新規の扉としてもよい。
【0015】
そして、縦枠材11の壁面から突出した部分の上端部には、 後述するフレキシブル接合金物13を介して可動上枠材12を係設する。この可動上枠材12は、通常時には縦枠材11に連結された状態となっているが、 震災時に変形が生じると、 扉1に押し上げられて自在に上下動できる構造とする。そのため、従来のように枠体に扉が当たって拘束されることがなく、震災直後でも自在に扉を開け放つことが可能となる。そのため、居住者の避難を妨げることがない。
【0016】
次に、 図2、図3に基づき、 フレキシブル接合金物13の詳細について説明する。
図2は部分断面図、 図3は部分正面図であり、それぞれ、(a)は通常時の状態を示し、 (b)は震災発生による変形の発生で、 扉1が可動上枠材12を押し上げた状態を示している。
【0017】
縦枠材11の壁面から突出した部分(図2、図3にあっては、付設枠部11b )と可動上枠材12とは、フレキシブル接合金物13で連結されているが、 (a)に示す通常時においては、ばね13a の作用で両者が押し付けられて一体化している。一方、 震災発生で変形が生じると、 扉1によって可動上枠材12が押し上げられ、 フレキシブル接合金物13に付設のばね13a も圧縮されて、縦枠材11と可動上枠材12に隙間が生じる。そのため、扉と枠体間に当たりが生じても、扉が可動上枠を押し上げて、 扉が開かなくなるという事態を解消できるのである。ここで、18は既設の枠体10に付設させた小枠であり、 シール用のガスケット18a で隙間風等を防止し、 遮音性能を高め、 また、耐火構造とするものである。
【0018】
このフレキシブル接合金物13は、縦枠材11と可動上枠材12とを遊接するものであれば特に限定するものではない。また、ばね13a を設けずに遊接し、可動上枠材12の自重で縦枠材11に載設された状態とすることもできる。
さらに、縦枠材11と可動上枠材12との接合は、 図2、3のような縦枠材の上に可動枠材が載る形式のほかに、 図7に示すような縦枠材11の上端に可動上枠材12が挟まれる形状や、 図8、9に示すような縦枠材11と可動上枠材12が互いに傾斜部で接するような形状としてもよい。いずれも、通常使用時は、 フレキシブル接合金物により枠形状を保持し、 枠が横方向へ変形したときに、縦枠材11と可動上枠材12との位置がルーズとなることを補償するため、 扉の開閉時に扉と可動上枠材が当たる場合でも扉の開閉を可能とすることができる。
【0019】
ところで、本発明は、 蝶番で開閉するドアに適用するとして説明したが、 ヒンジタイプのドアであっても、 可動上枠材12に接続するヒンジ部を上下動可能とすれば、本発明を適用することができる。
なお、本発明のドアでは、 その変形が発生したときに、 施錠用のラチェットが、縦枠材に設けたラチェットの受け穴部と干渉して開錠できなくなる場合があることにも注意を要する。そのため、本発明のドアでは、該受け穴部を上下方向に広げておき、余裕を持たせることを好適とする。
【0020】
さらに、本発明のドアは、 金属製、木製等の扉や枠体等とすることを好適し、より好適には鋼製とする。
【0021】
【発明の効果】
本発明のドアによって、 震災発生時にも確実にドアを開放することが可能となった。特に、 本発明では、 既存のドアを再利用し、安価に震災対応のドアに改造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のドアの平面図(a:閉じた状態、b:開いた状態)とそのB−B´断面図(c)である。
【図2】可動上枠材と縦枠材の接合状態を説明する部分断面図である。
【図3】可動上枠材と縦枠材の接合状態を説明する部分正面図である。
【図4】従来のドア(a)と被災時に変形したドア(b)の説明図である。
【図5】図4(a)のA−A´視断面図である。
【図6】従来のドアの上部(a)と下部(b)の部分断面図である。
【図7】可動上枠材と縦枠材の接合状態の他の実施例を説明する部分正面図である。
【図8】可動上枠材と縦枠材の接合状態の他の実施例を説明する部分正面図である。
【図9】可動上枠材と縦枠材の接合状態の他の実施例を説明する部分正面図である。
【符号の説明】
1 扉
2 ノブ
3 蝶番
5 壁
10 枠体
11 縦枠材
11a 縦枠部
11b 付設枠部
12 (新設の)可動上枠材
13 フレキシブル金物
13a ばね
18 (新設の)小枠
18a 耐火ガスケット
21 隙間部
22 当たり部(接触部)

Claims (3)

  1. 壁面の開口部に設けてなるドアであって、
    前記開口部の両側端部に設けられ、かつ、前記壁面から突出した部分を有する1対の縦枠材と、
    該縦枠材のいずれか一方に設けてなる蝶番と、
    該蝶番で係設してなる扉と、
    前記1対の縦枠材の壁面から突出した部分の上端部に、壁面から突出した上枠がフレキシブル接合金物によって上下に自在に可動な状態で連結されてなることを特徴とするドア。
  2. 前記ドアが壁面の開口部に設けた既設ドアを改造してなるドアであって、
    前記1対の縦枠材が、既設の縦枠部と、該縦枠部に壁面から突出して係設される付設枠部とからなることを特徴とする請求項1に記載のドア。
  3. 前記扉が、既設の扉を取り外して再利用された扉であることを特徴とする請求項2に記載のドア。
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