JP4021741B2 - ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族ポリカーボネートにポリエチレン等を配合した、卓越した耐溶剤性を示し、層状剥離せず、高破断伸度で、耐衝撃性、耐熱変形性、剛性等の諸特性のバランスが優れたポリカーボネート樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネートは、耐衝撃性、耐熱変形性、剛性、寸法安定性等が優れるために、電気機器、通信機器、精密機械、自動車部品等の用途に使用されている。しかしながら耐溶剤性が劣るという欠点を有する。この欠点を克服すべくポリオレフィンとのブレンドについて種々の検討がなされている。しかしながら、ポリカーボネートとポリオレフィンは本来非相溶系であり、単にポリカーボネートにポリオレフィンを混ぜただけでは、破断伸度、耐衝撃性が低下し、成形品に層状剥離現象が生じる。
【0003】
耐衝撃性を改善するために、特開昭61−252268号、および特許第2893185号は芳香族ポリカーボネート/芳香族ポリエステル/グリシジル基含有共重合体を開示している。しかしながら、耐溶剤性、耐衝撃性、耐熱変形性、剛性が不十分である。また特許第3085990号はポリカーボネート/ポリエステル/エポキシ基含有エチレン共重合体/ポリプロピレンを開示している。しかしながらポリプロピレンの相溶性が不足し層状剥離が発生し、かつ充分な破断伸度が得られていない。ところで、ポリカーボネートは、塩基性溶剤に弱く、塩基性溶剤によりカーボネート結合が容易に切断され、著しく機械的強度が低下する。すなわち、耐溶剤性の中でも、塩基性溶剤に対する耐久性をあげることが特に必要である。しかし、上記の特許第3085990号では、アセトンに対しての耐溶剤性の向上が報告されているが、塩基性溶剤に対する耐久性の向上についての記載は全く無い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、卓越した耐溶剤性を示し、特に塩基性溶剤に対する耐久性能に優れ、層状剥離せず、高破断伸度で、耐衝撃性、耐熱変形性、剛性等の諸特性のバランスが優れたポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の芳香族ポリカーボネート、ポリエステル、エポキシ変性ポリオレフィン、特定のポリエチレンを特定量配合することにより、芳香族ポリカーボネートとポリエチレンの相溶性を改善しつつ、該問題を大幅に改善できることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、
(a)粘度平均分子量10,000〜100,000の芳香族ポリカーボネート100重量部に対し、
(b)ポリエステル 1〜30重量部、
(c)エポキシ変性ポリオレフィン 1〜50重量部、及び
(d)密度0.93g/cm3 以上のポリエチレン 3〜80重量部を配合し、
上記(d)ポリエチレンの配合量が、上記(c)エポキシ変性ポリオレフィンの配合量よりも多いことにより、塩基性溶剤に対する耐久性の向上されたことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物に存する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明を以下詳細に説明する。
(a)芳香族ポリカーボネート
本発明に用いる芳香族ポリカーボネートは、公知の方法により得ることができる。例えば、ポリカーボネート樹脂ハンドブック(日刊工業新聞社)にも詳述されているとおり、界面重合法、ピリジン法、エステル交換法をはじめとする各種製造方法がある。
具体的には、芳香族ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、一般にホスゲンとして知られている塩化カルボニル、又はジメチルカーボネートやジフェニルカーボネートに代表される炭酸ジエステル、又は一酸化炭素や二酸化炭素と言ったカルボニル系化合物とを、反応させることによって得られる、直鎖状又は分岐していてもよい、熱可塑性芳香族ポリカーボネートの重合体又は共重合体である。
【0007】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=テトラブロモビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン,2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン,1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン,2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1−トリクロロプロパン,2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパン,2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等で例示されるビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等で例示される、ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等で例示されるカルド構造含有ビスフェノール類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル等で例示されるジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等で例示されるジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等で例示されるジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等で例示されるジヒドロキシジアリールスルホン類;ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は、単独で又は二種以上混合して使用してもよい。これらの中で、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好適に用いられる。
【0008】
また、分岐した芳香族ポリカーボネートを得るには、フロログリシン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−3−ヘプテン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ヘプテン、1,3,5−トリス(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾール、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン等で例示されるポリヒドロキシ化合物、又は3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチンビスフェノール、5,7−ジクロルイサチンビスフェノール、5−ブロムイサチンビスフェノール等を用いればよい。
【0009】
界面重合法による場合、末端停止剤又は分子量調節剤を使用してもよい。末端停止剤又は分子量調節剤としては、一価のフェノール性水酸基、又は、一価のカルボン酸誘導体構造を有する化合物が挙げられる。一価のフェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、フェノール、アルキルフェノール、ハロゲン化フェノール、アルコキシフェノール、アルコキシカルボニルフェノール等の置換フェノール類が挙げられ、具体的には、フェノール、メチルフェノール、p−n−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、アリルフェノール、クミルフェノール、ナフチルフェノール、ナフトール、ブロモフェノール、トリブロモフェノール、トリフルオロフェノール、メトキシフェノール、ブトキシフェノール、メトキシカルボニルフェノール、ブトキシカルボニルフェノール、ドデシロキシカルボニルフェノール、オクタデシロキシカルボニルフェノール等が挙げられる。一価のカルボン酸誘導体構造を有する化合物としては、例えば、カルボン酸、カルボン酸クロライドが挙げられ、具体的には、酢酸、アクリル酸、ギ酸、プロピオン酸、プロピオル酸、酪酸、イソ酪酸、メタクリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピルビン酸、アセト酢酸、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、ヘキサフルオロ酢酸、安息香酸、ナフトエ酸、メチル安息香酸、ブチル安息香酸、ビニル安息香酸、ペンタフルオロ安息香酸、ペンタブロモ安息香酸、メチルナフトエ酸、エチルナフトエ酸等のカルボン酸、及び、これらカルボン酸から誘導されるカルボン酸クロライドが挙げられる。
【0010】
エステル交換法による場合、通常、原料のジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのモル比を調節したり、減圧度を調節したりする事によって、その末端のヒドロキシ末端構造の量比が調整できる。また、より積極的な方法として、反応時に別途、末端停止剤を添加する調整方法も周知である。この際の末端停止剤としては、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類が挙げられる。一価フェノール類、一価カルボン酸類としては、例えば、炭素数が9以上の一価フェノールや一価カルボン酸が好適に使用され、具体的には、p−プロピルフェノール、o−sec−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、クミルフェノール、tert−オクチルフェノール、フェニルフェノール、ナフチルフェノール、4−ヒドロキシ−p−クオーターフェニル、ブチル安息香酸、オクチル安息香酸、フェニル安息香酸、ナフタレンカルボン酸等が挙げられる。また、炭酸ジエステル類としては、例えば、上記炭素数9以上の一価フェノールから誘導される炭酸ジエステル類が好適に使用され、具体的には、フェニルブチルフェニルカーボネート、ジ(ブチルフェニル)カーボネート、フェニルクミルフェニルカーボネート、ジ(ノニルフェニル)カーボネート、メチルフェニルナフチルフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0011】
本発明で使用される芳香族ポリカーボネートは、一種類でも、又は二種類以上を混合したものであってもよい。
【0012】
芳香族ポリカーボネートは、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度20℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、10,000〜100,000であることが必要である。粘度平均分子量が10,000未満では破断伸度や衝撃強度等の機械特性が低下し、100,000を超えると流動性が低下し成形加工が難しくなる。
【0013】
(b)ポリエステル
本発明に用いるポリエステルは、一般に芳香族ジカルボン酸と飽和二価アルコールとからなる熱可塑性樹脂であり、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート(ポリブチレンテレフタレート)、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサン−1,4−ジメチロールテレフタレート、ポリネオペンチルテレフタレート等が挙げられる。
【0014】
これらポリエステルの中では、固有粘度0.50〜1.50dl/gの芳香族ポリエステルが好ましい。更に好ましくは固有粘度0.80〜1.50dl/gのポリブチレンテレフタレートが、特に好ましくは固有粘度1.20〜1.50dl/gのポリブチレンテレフタレートが選択される。また、ポリブチレンテレフタレートの末端カルボキシル基濃度は10m当量/kg以上が好ましく、更に好ましくは20m当量/kg以上である。本発明のポリカーボネート樹脂組成物に、上記の特定のポリエステルを用いることにより、高い弾性率、優れた耐衝撃強度、高耐熱変形性が得られるようになる。この原因については定かではない。しかし、ポリエステルは、芳香族ポリカーボネートやエポキシ変性ポリオレフィンとの間で界面を形成すると考えられるが、ポリマーアロイとして特性を高める好適な界面形成のために、適切なポリエステルの分子量範囲と末端構造があるものと思われる。
ここで、ポリエステルの固有粘度は、フェノールとテトラクロロエタンの混合溶媒(重量比5:5)中において30℃で測定した溶液粘度より求めた。末端カルボキシル基濃度は、ポリエステルのベンジルアルコール溶液をクロロフォルムで希釈し、フェノールレッド0.1%アルコール溶液を指示薬として、0.1Nの水酸化ナトリウムベンジルアルコール溶液で測定することにより求めた。
【0015】
(c)エポキシ変性ポリオレフィン
本発明に用いるエポキシ変性ポリオレフィンは、エポキシ基を有する不飽和モノマーを共重合したポリオレフィンである。エポキシ基を有する不飽和モノマーとしては、メタクリル酸グリシジルエステル、アクリル酸グリシジルエステル等が挙げられる。また、エポキシ基を有する不飽和モノマーと共重合するオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1等のオレフィンが挙げられる。これらオレフィンは、単独で又は2種以上混合して用いることができる。エポキシ変性ポリオレフィンは、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体又は交互共重合体のいずれでもよい。
【0016】
これらの中で特に、エポキシ変性ポリオレフィン中のエポキシ基含有量が0.2〜7重量%で、重量平均分子量は20,000〜150,000のエポキシ変性ポリエチレンを用いることが好ましい。エポキシ基含有量が0.2重量%未満でも7重量%を超えても、当該ポリカーボネート樹脂組成物中のポリエチレンの相溶性が悪くなる。重量平均分子量が20,000未満では相溶性の改善効果が不十分であり、150,000を超えると溶融粘度が高くなり成形加工性が悪化する。
【0017】
(d)ポリエチレン
本発明に用いるポリエチレンは、密度が0.93g/cm3 以上のポリエチレンであることが必要であり、更には0.95g/cm3 の高密度ポリエチレンが好ましい。密度が0.93g/cm3 より低いと、剛性、耐溶剤性、耐衝撃性が低下する。この原因はまだ定かではないが、ポリエチレンの結晶化度と弾性率が高い程、耐溶剤性と耐衝撃性を高める何らかの分散構造を形成しているためと考えられる。なお、ポリエチレンは、上記密度の範囲内であれば、炭素数3以上のα−オレフィン等との共重合体であってもよい。
【0018】
また、本発明に用いるポリエチレンは、メルトフローレート(ISO 1872−2)0.1〜20g/10分のものが好ましい。メルトフローレートが小さすぎるとポリエチレンの相溶性は悪くなり、かつ成形性が悪くなる。メルトフローレートが高すぎてもポリエチレンの相溶性は悪くなり、耐衝撃性が低下する。
【0019】
ポリカーボネート樹脂組成物
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、前記した、芳香族ポリカーボネートに、ポリエステル、エポキシ変性ポリオレフィン、ポリエチレンを配合、通常、これら各成分をドライブレンドした後に、溶融混練をすることによって得られる。溶融混練は、押出機、特に二軸押出機で行うのが好ましい。
【0020】
なお、配合量は、層状剥離せず、高破断伸度で、耐溶剤性、耐衝撃性、耐熱変形性、剛性等の諸特性のバランスの優れたポリカーボネート樹脂組成物を得るために、(a)粘度平均分子量10,000〜100,000の芳香族ポリカーボネート100重量部に対して、(b)ポリエステル1〜30重量部、(c)エポキシ変性ポリオレフィン1〜50重量部、及び(d)密度0.93g/cm3 以上のポリエチレン3〜80重量部を配合することが必要である。好ましくは、上記芳香族ポリカーボネート100重量部に対して、ポリエステル1〜20重量部、エポキシ変性ポリオレフィン1〜30重量部、上記ポリエチレン3〜60重量部である。より好ましくは、上記芳香族ポリカーボネート100重量部に対して、ポリエステル1〜15重量部、エポキシ変性ポリオレフィン1〜15重量部、上記ポリエチレン3〜40重量部である。また、上記(d)ポリエチレンの配合量が(c)エポキシ変性ポリオレフィンの配合量より多いことも必要である。
【0021】
ポリエステルが1重量部未満であると上記ポリエチレンとの相溶性が低下し、層状剥離し易くなり、耐衝撃性と伸度が低下する。ポリエステルが30重量部を超えると耐熱変形性が低下する。エポキシ変性ポリオレフィンが1重量部未満であると上記ポリエチレンとの相溶性が低下し層状剥離し易くなり、耐衝撃性と伸度が低下する。エポキシ変性ポリオレフィンが多すぎると耐溶剤性と剛性が低下する。上記ポリエチレンが3重量部より少ないと耐溶剤性が低下する。上記ポリエチレンが80重量部を超えると層状剥離しやすく、剛性が低下する。また、各成分の配合量が所定範囲内であっても、(c)エポキシ変性ポリオレフィンの配合量が上記(d)ポリエチレンの配合量以上であると、耐溶剤性の低下や剛性の低下が起きる問題がある。
【0022】
さらに、本発明組成物に対して、特開昭61−252268号公報に記載されているような、エポキシ化合物とカルボキシル基や水酸基との反応を促進する化合物を添加してもよい。これらの化合物としてはトリフェニルアミン、2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノール等の3級アミン、トリフェニルホスファイト、トリイソデシルホスファイト等の亜リン酸エステル、トリフェニルアリルホスホニウム等のホスホニウム化合物、トリフェニルホスフィン等の3級ホスフィン、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム等のカルボン酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,5−ジカルボメトキシベンゼンスルホン酸金属塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩、パラトルエンスルホン酸等の酸等が挙げられる。
【0023】
また、耐熱変形性を上げるために芳香族ポリカーボネートとポリエステルのエステル交換反応を抑制するリン系化合物等を添加することもできる。
【0024】
更に、本発明ポリカーボネート組成物に対して無機充填剤を添加することによって剛性を高めることができる。無機充填材としては繊維状、粒状、およびこれらの混合物が挙げられる。繊維状の強化剤としてはガラス繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、セラミック繊維、石こう繊維、金属繊維、等の無機質繊維および炭素繊維等が挙げられる。
また粒状の強化剤としてはワラストナイト、セリサイト、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、タルク、アルミナシリケート等のケイ酸塩、アルミナ、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩、ガラスビーズ、ガラスフレーク、窒化ホウ素、炭化ケイ素、サロヤン等、が挙げられる。
上記の無機充填剤の添加量は、芳香族ポリカーボネート100重量部に対して1〜100重量部である。
【0025】
また、本発明ポリカーボネート組成物に対して有機変性無機層状化合物を少量添加することによっても剛性と強度を高めることができる。有機変性無機層状化合物としては有機変性のモンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、マイカ、セピオライト、サポナイト等である。
【0026】
また、本発明ポリカーボネート樹脂組成物に対して本発明の目的を損なわない範囲で、さらに酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、染料、顔料、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤等の添加剤を1種以上添加することができる。また少量の他の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、軟質熱可塑性樹脂を添加することもでき、これらの樹脂は1種のみでなく2種以上併用してもよい。
【0027】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳述する。
なお、各実施例及び比較例において特性値の測定は以下の通り行った。
(1) 引張弾性率
ISO規格のISO294−1に従って成形したISO3167の試験片を用いてISO527−1、ISO527−2に従って引張試験を実施し求めた。
(2)引張破断呼び歪み
ISO294−1に従って成形したISO3167の試験片を用いてISO527−1、ISO527−2に従って引張試験を実施し求めた。
(3)ノッチ付きシャルピー衝撃強度
ISO294−1に従って成形したISO3167の試験片を用いてISO179−1、ISO179−2に従って衝撃試験を実施し求めた。
(4) ガラス転移温度(耐熱変形性評価)
SEIKO INSTRUMENTS社製DSC 220Uを用い、300℃から20℃/minの降温時のDSC曲線より求めた。
(5) 層状剥離
ISO294−1に従って成形したISO3167の試験片を用いてISO527−1,ISO527−2に従い引っ張り試験を実施し、破断面の層状剥離の有無を目視により観察した。評価は次の基準によった。即ち、○は層状剥離無し、×は層状剥離有りを示す。
(6) 耐塩基性溶剤性
ISO294−1に従って成形したISO3167の試験片を3点曲げにより試験片中央表面に所定の歪みをかけ、その引張歪み側に約3cmにわたり所定の溶剤を塗布し、歪みの掛かった状態で48時間放置した。その後ISO527−1、ISO527−2に従って引張試験を実施し引張呼び歪みの値を求め、溶剤を塗布しないものの引張呼び歪みの値で割った。それを引張呼び歪み保持率とし、耐溶剤性の指標とした。上記記載の所定の溶剤と所定の歪み量としては次の2種類の組合せを用いた。すなわち、YUSHIRO CHEMICAL INDUSTRY CO.,LTD製のリムーバST−7(アミン系親油性溶剤)を1.0%の引張歪み部に、花王(株)のマジックリン(アルキルアミンオキサイド8%溶液)を0.5%引張歪み部に塗布した2種類の試験を実施した。
【0028】
実施例1〜実施例7、比較例1〜比較例8
芳香族ポリカーボネートは、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製品のユーピロンS−3000(溶液粘度より換算した粘度平均分子量で21,000)を用い、ポリエステルは、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製品の固有粘度1.24dl/gで末端カルボキシル基濃度が38m当量/kgのポリブチレンテレフタレートを用いた。エポキシ変性ポリオレフィンは、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体である住友化学工業(株)製、重量平均分子量73000、エポキシ基含有量3.6重量%のボンドファーストEと、エポキシ基含有量1.8重量%のボンドファースト2Cとを用いた。なお、重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC法)により測定し、ポリエチレンに換算したものである。またエポキシ基含有量は酸素元素分析値より求めたものである。
高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンは、それぞれ、日本ポリケム(株)製のノバテックHJ560(密度0.964g/cm3 、メルトフローレート7.0)、UJ960(密度0.935g/cm3 、メルトフローレート5.0)、MA3H(密度0.90〜0.91g/cm3 、メルトフローレート10)を用いた。エチレン−プロピレン共重合体は、三井化学(株)製のタフマーP−0180(密度0.87g/cm3 、メルトフローレート4.5)を用いた。また、高流動高密度ポリエチレンは、日本ポリオレフィン(株)製のジェイレクスHD、KM880A(密度0.958g/cm3 、メルトフローレート20)を用いた。ここで密度はJIS K6921法で測定した値である。
【0029】
表−1に示す量(重量部)の各成分をブレンドし、タンブラーで10分間混合した。それらを東芝機械(株)社製のTEM37BS二軸押出機で、270℃のバレル設定温度、15kg/hrの吐出量、300rpmのスクリュー回転数でコンパウンドした。得られた各組成物について各種特性値を測定した。結果を表−1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表−1から明らかなように、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、卓越した耐溶剤性を示し、層状剥離せず、高破断伸度で、高耐衝撃性、高耐熱変形性、高剛性を示す。
【0032】
一方、比較例から以下のことが分かった。比較例1から、ポリカーボネート単独では耐溶剤性が悪く、エポキシ変性ポリエチレンを使用しない場合(比較例2)や、ポリエステルを使用しない場合(比較例3)は、破断伸度や耐衝撃性が低く、層状剥離が見られ、さらに、ポリエチレンを使用しない場合(比較例4)や、密度の低いポリエチレンを使用した場合(比較例5)は、剛性と耐衝撃性が低く、比較例6から、ポリエチレンの代わりにポリプロピレンを使用すると、相溶性が悪いこと、破断伸度が低いことや、層状剥離し、さらに耐塩基性溶剤性が劣ること、比較例7からはポリエステルが多すぎると、耐熱変形性が低く、比較例8からはエポキシ変性ポリエチレンの配合量がポリエチレンの配合量より多いと、塩基性溶剤に対する耐久性が劣り、剛性と耐衝撃性が低いことがわかった。
【0033】
実施例8〜14
ポリエステルとして表−2のポリエステステルを使用した以外、実施例2と同様にしてポリカーボネート樹脂組成物を製造し、得られた組成物について同様に各種特性値を測定した。結果を併せて表−2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
表−2から明らかなように、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を製造する際に配合するポリエステルは、固有粘度が高く、末端カルボキシル基濃度が高いポリブチレンテレフタレートが好ましく、それらを用いて製造されたポリカーボネート樹脂組成物は、衝撃強度が高く、かつ高いガラス転移温度を示す。
【0036】
【発明の効果】
以上の通り、本発明のポリカーボネート樹脂組成物により、卓越した耐溶剤性を示し、層状剥離せず、高破断伸度で、耐衝撃性、耐熱変形性、剛性等の諸特性のバランスが優れた成形品を得ることができる。
Claims (10)
- (a)粘度平均分子量10,000〜100,000の芳香族ポリカーボネート100重量部に対し、
(b)ポリエステル 1〜30重量部、
(c)エポキシ変性ポリオレフィン 1〜50重量部、及び
(d)密度0.93g/cm3 以上のポリエチレン 3〜80重量部を配合し、
上記(d)ポリエチレンの配合量が、上記(c)エポキシ変性ポリオレフィンの配合量よりも多いことにより、塩基性溶剤に対する耐久性の向上されたことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。 - 前記(b)ポリエステルの配合量が1〜15重量部であることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記(b)ポリエステルが、固有粘度0.50dl/g〜1.50dl/gの芳香族ポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記(b)ポリエステルが、固有粘度0.80dl/g〜1.50dl/gのポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項3に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記(b)ポリエステルが、固有粘度1.20dl/g〜1.50dl/gのポリブチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項4に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記ポリブチレンテレフタレートの末端カルボキシル基濃度が10m当量/kg以上であることを特徴とする請求項4又は5に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記ポリブチレンテレフタレートの末端カルボキシル基濃度が20m当量/kg以上であることを特徴とする請求項6に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記(c)エポキシ変性ポリオレフィンが、該エポキシ変性ポリオレフィン中のエポキシ基含有量が0.2〜7重量%で、重量平均分子量が20,000〜150,000のエポキシ変性ポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記(d)ポリエチレンが、密度0.95g/cm3 以上の高密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記(d)ポリエチレンのメルトフローレートが0.1g/10分〜20g/10分であることを特徴とする請求項1又は9に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
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