JP4021218B2 - 電子時計 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水晶時計等の電子時計に関する。
【0002】
【背景技術】
従来より、水晶発振器などを利用し、電子回路に正確な周期的電気信号を発生させ、時を刻み表示するクオーツ時計等の電子時計が知られている。
このような電子時計の腕時計では、機械式腕時計と同様、ムーブメントの薄型化、小型化が望まれている。しかし、電子時計では、ムーブメントサイズは電源寿命を満足させるため、時計の消費電流と電源容量の関係から電源サイズが決まり、ムーブメントの厚みは、電源部の厚みによって決定されているのが現状である。
【0003】
このような電子時計においては、時計を駆動させるための駆動源として電源が使用されている。この電源は、正極が時計のケース側に接地され、負極がムーブメントに設けられた電極と接触することにより電力が流れるようになる電源となっている。
ムーブメントに設けられた電極である電源マイナス端子は、一方の面が上述のように電源の負極に接触し、他方の面は文字板と対向して配置されている。文字板は、金属部材で形成されていることから、文字板と電源マイナス端子とが接触して両者の間で電気的ショートが発生する。その結果、電源の消耗が激しくなり、時計の針が止まる等の問題を起こす原因となる。そのため、電源マイナス端子と文字板との間に絶縁シートが設けられている。
【0004】
この電源マイナス端子の絶縁構造は、(1) 実開昭63−3059号公報および実開昭58−71977号公報に示されるように、時計の基枠である地板に形成された電源収納用凹部に電源を収納し、その電源収納用凹部内にさらに絶縁シート収納凹部が形成されている。この絶縁シート収納凹部の外周には、だぼ穴またはピンが設けられており、薄い絶縁シートを取付けるには、これらのだぼ穴またはピンにより絶縁シートを位置決めするとともに、絶縁シート収納凹部内の面方向にぴったりと収め、これにより、電源マイナス端子と金属部材からなる文字板または筒車押さえとの電気的ショートを防止する構造となっている。
【0005】
また、ムーブメントに設けられた時刻表示用番車である筒車に所定のアガキ(軸方向の可動ガタ)を与えるために、筒車押さえが用いられている。
この筒車押さえは、(2) 実開平04−029891号公報に示されるように、筒車をその軸方向に案内するものである。この公報によれば、筒車押さえは、ムーブメントの上面に接着またはねじ方式、あるいは圧入係合方式により固定されている。また、筒車押さえの上面に文字板が配置され、筒車押さえと文字板との間に前記絶縁シートが配置されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、(1) の絶縁構造では、絶縁シートが薄いので、その絶縁シートを位置決めさせるために行うだぼ穴またはピンへの取付けが困難であり、組込み性が悪いという問題がある。特に、絶縁シートは薄くて剛性がないため、ムーブメントへの組込み中に、だぼ穴等に取付けたとしても、軽い衝撃等により外れたり、ずれたりするおそれがあり、この状態で電源が組み込まれると、電源のマイナス電位になっている部材と電源のプラス電位になっている部材との接触により、電気的ショートが発生して運針停止が生じる等の問題が発生する。
【0007】
また、(2) において、筒車押さえを接着方式で固定する場合、塗布する接着剤の量が多すぎて周りにはみ出してしまったり、接着剤の養生時間が必要となるので、組立時間が長くなる等の問題がある。また、接着剤を塗布しての固定のため、接着剤の塗布厚さのばらつきが生じ、その結果、筒車のアガキのばらつきが大きくなることは避けられない。さらに、絶縁シートに接着剤を塗布しての固定のため、絶縁シートを摘んで所定の位置に押当てる際、はみ出したり、形状が変形したりして、ムーブメント外観を損ねてしまっている。
筒車押さえをねじ方式で固定する場合、1本では安定した固定はできないので、2本以上必要となり、そうすると、部品点数が多くなるとともに、ねじピンを地板に組立る作業も多くなって面倒となり、組立作業が複雑でコストアップの一要因となっている。
さらに、筒車押さえを圧入係合方式で固定する場合、ねじ方式に比べて部品点数の減少、組立作業性の向上は図れるものの、金属部材からなる筒車押さえにより合成樹脂部が削られ、削られた合成樹脂粉が輪列部に付着し、その結果、運針遅れや運針停止が生じてしまうという問題がある。
【0008】
また、従来では、それぞれ専用の筒車押さえと絶縁シートとの2種類の部材が使用されているので、部材点数が増えるとともに、製作や管理が面倒であり、かつコストも高くなっている。
【0009】
本発明の目的は、1種類の部材で電源側と他の導電性品との絶縁、および筒車(時刻表示用番車)の案内を行うことができ、かつ、組立作業が容易となるとともに、コストダウンを図れる電子時計を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電子時計は、合成樹脂からなる基枠と、電力で回転駆動する駆動変換部と、前記駆動変換部を制御する駆動制御回路と、この駆動制御回路に電力を供給する電源と、前記基枠に対向配置された導電性の時刻表示部材と、前記駆動変換部の回転駆動により回転しかつ前記基枠および前記時刻表示部材間に配置された時刻表示用番車と、を備えた電子時計において、前記電源の正極および負極の一方が前記駆動制御回路の電源電圧となる電源電位とされるとともに、他方が接地されて電圧の基準となる接地電位とされ、前記電源電位となる極に接触する電極と前記接地電位となる部位との電気的ショートを防止する面状の絶縁部材を備え、前記絶縁部材は、前記基枠に固定されているとともに、少なくとも前記電極と前記時刻表示用番車とを覆う広さを有し、かつ前記時刻表示用番車の軸を挿通させる穴を有し、この絶縁部材により前記時刻表示用番車の軸方向の位置決めが行われており、前記電源は、前記基枠に設けられた電源収納用凹部に対して、前記電源電位となる極が当該電源収納用凹部の底側となるように直置き状態で収納され、前記電源電位となる極に接触する電極は、ばね性を有する片持ち形状のみとされているとともに、前記電源が前記電源収納用凹部内にある状態では、当該電源収納用凹部の底側に設けられたばね用穴に収容され、かつ前記ばね性により前記電源電位となる極を先端側で付勢していることを特徴とするものである。
【0011】
本発明によれば、絶縁部材により、電源マイナス端子等の電極と時刻表示用番車とが覆われ、かつ、絶縁部材の穴に時刻表示用番車、例えば筒車の軸を挿通させることにより、筒車が軸方向に案内できるようになる。従って、絶縁部材は所定の広さを有することとなり、絶縁部材の組込みに際して、筒車の軸に挿通させるだけで取付けることができるので、組込み性がよくなる。
また、絶縁部材を筒車の軸に挿通させて取付けることで固定することができるので、絶縁部材が電極周辺でずれたり、外れたりするおそれはなくなる。その結果、電源のマイナス電位になっている部材と電源のプラス電位になっている部材との接触による電気的ショートを防止することができ、確実な絶縁を行うことができる。
【0012】
さらに、絶縁部材により、絶縁と筒車の案内とを行うことができるので、部材点数が少なくなり、部品費が削減される。その結果、コストダウンが図れるとともに、組立部品数削減による組立作業が容易となり、組立ラインでのサイクルタイムの短縮が図れる。
また、絶縁部材は、少なくとも電源の接地電位となる部位と筒車とを覆う広さを有し、必要最小限の大きさとなっているので、材料費削減による部品費のコストダウン、およびプレス金型構造の簡略化が図れる。
【0013】
また、絶縁部材を合成樹脂製とすることができ、その場合は、金属材料に比べて、材料費を半分以下に抑えることができ、材料費削減による部品費のコストダウンが図れる。また、打ち抜き加工が容易であるため、金型の型耐用性が向上する。部品供給においても、従来は、金属材料を使用していたため、プレス工場でフープ材を打ち抜きして形成し、その部品を輸送していたが、絶縁部材を合成樹脂製としたので、ムーブメント組立ライン上にプレス機械を設置してのプレス抜き加工が可能となる。そのため、従来、重労働であったフープ材の運搬作業や、プレス工場および組立工場に在庫置き場を確保する等の必要がなくなり、作業環境、職場環境の向上が図れる。
【0014】
本発明において、前記絶縁部材は、前記基枠における時刻表示部材と対向する略全面を平面的に覆っていることが好ましい。
本発明によれば、基枠の時刻表示部材側の略全面が絶縁部材で覆われるため、ムーブメント全体としても同一素材で統一された見栄えのよい外観が得られる。また、基枠の略全面を絶縁部材で覆うことにより、ムーブメント内部、特に、輪列部へのごみ、けばの浸入を防止することができるので、時計の致命傷である指針の止まり、遅れをなくすことができ、時計の品質を向上させることができる。
【0015】
本発明において、前記絶縁部材の片面上には金属層が形成され、この金属層が前記時刻表示部材側に対向していることが好ましい。
本発明によれば、絶縁部材と金属層との異なる特性を最大限に活用することで、従来の絶縁シートと筒車押さえとを別個に設けた場合とほぼ同等の効果、すなわち、電源マイナス端子と、文字板等との電気的ショートの防止、および金属色を基調とした見栄えのよいムーブメント外観が得られるという効果がある。
【0016】
この際、本発明では、前記絶縁部材の前記金属層は、前記絶縁部材の片面に施した乾式メッキによって形成されていてもよく、前記絶縁部材の片面に張り合わせた金属箔によって形成されていてもよい。
金属箔としては、アルミニウム箔、金箔などを使用できる。
乾式メッキとしては、蒸着やインオンプレーティングを適用でき、金属層として、アルミニウムの他、ステンレス鋼、銅、銅合金、金、金合金、ニッケル、ニッケル合金、銀合金、クロム、クロム合金等の任意な金属を適用できる。
なお、蒸着、イオンプレーティング、金属箔の張り合わせのいずれを採用するかは、これらの金属の特性を勘案して決められてよい。
【0017】
本発明において、前記絶縁部材は前記基枠に固定されていることが好ましく、この場合、前記絶縁部材の前記基枠への固定は、複数の部位を塑性変形させて、基枠と絶縁部材とを密着させるのがよい。また、塑性変形加工は、熱かしめまたはピンかしめ加工であることが好ましい。
本発明によれば、絶縁部材が基枠に固定されているので、振動等によってずれたり、外れたりすることがなくなり、その結果、電源マイナス端子等と、文字板等との接触により発生する電気的ショートを確実に防止できる。
また、塑性加工、特に熱かしめ、またはピンかしめ加工により固定される場合は、絶縁部材の固定が確実となる。このうち、熱かしめの場合は、絶縁部材の固定が強固となり、所定位置に正確に筒車を位置決めすることができる。さらに、絶縁部材の固定が塑性変形加工により行われるので、従来のような筒車押さえの固定における不具合を解消でき、その結果、組立工程におけるサイクルタイムの短縮が図れる。また、ピンかしめ加工による場合は、ムーブメントの分解が可能となり、部品交換を行えるので、アフターサービスの向上を図れる。
【0018】
本発明において、前記絶縁部材の前記基枠への固定は、超音波を使用して行われることが好ましい。
本発明によれば、絶縁部材が超音波により固定されるので、時計体の外部からの振動等によってずれたり、外れたりすることがなくなり、電気的ショートを確実に防止できる。
【0019】
本発明において、絶縁部材には、時刻表示部材の足挿入用の挿入穴があけられていることが好ましい。
本発明によれば、脚のある文字板を設ける際に、脚を挿入穴に挿入すればよいので、取付けが容易である。
【0020】
本発明において、前記絶縁部材により前記時刻表示用番車の軸方向の位置決めが行われることが好ましい。
本発明によれば、時刻表示用番車の位置決めを確実に行えるので、時刻表示用番車のアガキの最適化を図ることができる。
【0021】
本発明において、前記時刻表示部材の主表示部とは別の副表示部を備えた多機能時計であってもよい。
本発明によれば、特に副表示部に対応して別の表示用番車が設けられた場合など、この別の表示用番車をも、絶縁部材で軸方向に確実に案内できる。なお、主表示部が専ら時刻表示に用いられる場合、副表示部としてはアラーム設定時刻の表示や、クロノグラフ、気圧、水圧、温度などの表示に用いることができる。また、主表示部での指針が時針および分針である場合、副表示部を秒表示に用いてもよい。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1ないし図4には、第1実施形態の電子時計が示されている。
この電子時計1は、絶縁部材である絶縁シート12で、電源電位となる極に接触する電極、例えば電源マイナス端子14と、接地電位となる部位、例えば金属製などの導電性を有する文字板13との電気的ショートを防止するとともに、筒車11の案内を行うものである。ここで、電気的ショートの防止は、電源である電源15の負極缶15Aが駆動制御回路36の電源電圧となる電源電位とされるとともに、他方が文字板13等に接地されて電圧の基準となる接地電位とされる。また、電源15の正極缶15Bは、回路押え板19によって押圧されながら導通接続されており、駆動用IC34の正極と同電位になるように導通が取られている。
絶縁シート12としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド等の合成樹脂、あるいはアルミナ等のセラミックなどが用いられている。
【0024】
このような電子時計1は、合成樹脂部材で略楕円形状に形成された基枠である地板10を備えている。この地板10の裏面の中心には筒車収納用凹部10A(図4も参照)が形成され、さらに、地板10の裏面の複数箇所(実施形態では4箇所)には、絶縁シート12を取付けるための熱かしめ用だぼ10Bが形成されている。
地板10の形状は、本実施形態では略楕円形状であるが、その形状や大きさはその実施にあたって任意に決められてよく、本実施形態のものに限定されない。また、地板10の材質は、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイドなどが使用される。これらは機械的強度に優れているとともに、着色も自由に行え、また、成形性に優れているために複雑な立体形状が造りやすい。
【0025】
熱かしめ用だぼ10Bは、図2,3に示すように、塑性変形加工である熱かしめ加工する前は、地板10に時刻表示部材である文字板13が取付けられたときの、地板10と文字板13との隙間よりわずかに大きな寸法で地板10の表面より突出している。しかし、絶縁シート12を取付けた後、熱かしめを行った際、熱かしめ用だぼ10Bの突出部の先端がかしめられて地板10と文字板13との隙間内に収まり、このとき、熱かしめ用だぼ10Bのかしめられた先端部が、熱かしめ後の形状10Cとなり、熱かしめ後には、絶縁シート12が地板10に固定されるようになっている。
【0026】
筒車収納用凹部10Aには、図1,4に示すように、時刻表示用番車である筒車11が収容されており、この筒車11の筒部外周は時針取付け部11Aとされ、時針(図略)が取付けられるようになっている。また、この筒車11は、地板10の裏面と前記文字板13との間に設けられた絶縁シート12により案内され、これにより、軸方向に位置決めされている。
【0027】
このような絶縁シート12は、図1に示すように、略矩形状に形成されており、電源である電源15および筒車11の周辺を平面的に覆って固定されている。また、絶縁シート12の文字板13に対向した面側には、図2に示すように、金属層12Cが形成され、また、絶縁シート12には、前記複数の熱かしめ用だぼ10Bに対応する複数の熱かしめ用穴12Aがあけられている。
【0028】
金属層12Cは、本実施形態では、絶縁シート12の片面に薄いアルミ膜を蒸着して形成されているか、またはイオンプレーティング等を施した乾式メッキによって形成されている。その他、金属層12Cとしては、ステンレス鋼、銅、銅合金、金、金合金、ニッケル、ニッケル合金、銀合金、クロム、クロム合金等の任意な金属の皮膜を用いてもよく、このうち、ステンレス鋼の皮膜は、ステップモーター33に平面的に重ねると耐磁効果があり、電磁ノイズをカットして駆動用IC34(図1)が誤作動しない。
【0029】
絶縁シート12の取付けは、金属層12Cを文字板13側に向けるとともに、熱かしめ用穴12Aを熱かしめ用だぼ10Bに挿入し、この熱かしめ用だぼ10Bの先端部に、図示しない治具等を用いて熱を与え、先端部が地板10と文字板13間の隙間に収まるように、かつ、少なくとも絶縁シート12の熱かしめ用穴12Aの径より大きな熱かしめ後の形状10Cとなるように、熱かしめを行い、これにより、地板10と絶縁シート12とを固定する。
【0030】
ここで、複数の熱かしめ用だぼ10Bおよび熱かしめ用穴12Aは、絶縁シート12をバランスよく固定することができるように、筒車11の周辺に3箇所、電源15の電源電位となる極に接触する電極としての電源マイナス端子14の周辺の1箇所を含めて合計4箇所に設けられ、これらがバランスよく配置されている。
そのため、地板10と絶縁シート12との間の隙間、および前記筒車収納用凹部10A内の筒車11とシート部材12との間の隙間が最小限となっている。
【0031】
図4に示すように、絶縁シート12において筒車11の時針取付け部11Aに対応する部位には、時針取付け部11Aを挿通させるための穴として筒車用逃げ穴12Dがあけられている。この筒車用逃げ穴12Dは、時針取付け部11Aを挿通させることのできる最小径になっており、これにより、絶縁シート12の筒車11を案内する面積をできるだけ多くし、筒車11のアガキを最小限に抑えるように構成されている。
【0032】
図1,3に示すように、地板10の裏面、かつ、絶縁シート12で覆われる所定位置には、電源マイナス端子14を取付けるための案内用だぼ10D、および電源マイナス端子14を位置決めするための位置決め穴10Eが形成されている。電源マイナス端子14は、全体が薄板の細長形状のばね材で形成され、その基端部側に形成された固定用穴14Cが案内用だぼ10Dに挿通されるとともに、折り曲げ端部が位置決め穴10Eに差し込まれ、これにより、電源マイナス端子14が案内用だぼ10Dを介して地板10に取付けられるようになっている。
【0033】
案内用だぼ10Dは中空とされ、この中空部分には金属製のねじピン16が圧入され、このねじピン16の内ねじ部には、ねじ17が螺合されている。そして、このねじ17により回路受19が固定されている。ねじ17は、熱変形防止のために、金属製であることが好ましく、さらにセルフタッピング用ねじであればなおよい。
【0034】
電源マイナス端子14の先端には、半球状のプロジェクション14Aが設けられ、電源15の負極缶15Aと接触可能となっている。
また、電源マイナス端子14における先端側の舌状の板ばね部14Bは、電源収納用凹部10Fの底面に形成された略長円形状のばね用穴10Gに収められており、上記電源収納用凹部10Fは、地板10に形成されている。従って、地板10と絶縁シート12との間に、電源マイナス端子14の分の厚みが不要となり、その結果、電源部の厚みが薄くなっている。
【0035】
電源収納用凹部10Fは、地板10の表面、かつ、絶縁シート12で一部が覆われた電源マイナス端子14のプロジェクション14A側近傍に形成され、この電源収納用凹部10F内に電源15が収容されるようになっている。
電源15は、負極缶15Aを電源マイナス端子14側に向けて収容されており、電源マイナス端子14先端のプロジェクション14Aと負極缶15Aとが接触することにより、マイナス導通が得られるようになっている。また、電源マイナス端子14の舌状の板ばね部14Bで常に電源15を上方に押し上げることにより、プロジェクション14Aと電源15の負極缶15Aとが常時接触していることになり、これにより、落下、振動等の衝撃による運針の止まり等が防止されている。
【0036】
地板10において筒車11の近傍には、水晶ユニット35および駆動用IC34を含み構成される駆動回路36が設けられ、さらに、駆動回路36からの駆動信号を受けるとともにその駆動信号を回転運動に変換する駆動変換部材(ステップモーター)33が設けられている。
【0037】
また、図1,4に示すように、地板10には、ステップモーター33からの回転運動を時刻表示用の針が取付けられた筒車11等の歯車に伝達する輪列が設けられている。この輪列は、ステップモーター33のステーター45に設けられたローター44、五番車43、四番車42、三番車41、二番車40、日の裏車18、筒車11を含んで構成されている。
【0038】
このような第1実施形態によれば、次のような効果がある。
(1) 絶縁シート12で、電源マイナス端子14周辺が覆われるとともに、筒車11の軸を筒車用逃げ穴12Dに挿通させれば軸方向の位置決めがされるので、絶縁シート12の組込みに際して、筒車11の軸に挿通させるだけで絶縁シート12を取付けることができるので、組込み性がよくなる。
【0039】
(2) 絶縁シート12は、少なくとも電源マイナス端子14周辺から筒車11にわたる大きさとされる。そして、筒車11の軸方向の位置決めがされているので、絶縁シート12が電源マイナス端子14周辺でずれたり、外れたりするおそれはなくなり、その結果、電気的ショートを防止することができ、確実な絶縁を行うことができる。
【0040】
(3) 絶縁シート12は、少なくとも電源マイナス端子14周辺から筒車11にわたる大きさとされ、必要最小限の大きさに形成されているので、材料費削減による部品費のコストダウン、およびプレス金型構造の簡略化が図れる。
(4) 絶縁シート12で、電源マイナス端子14と文字板13間のショート防止および筒車11の軸方向の位置決めを行うことができるので、絶縁と筒車11の案内とを絶縁シート12の1種類で行うことができ、従来と比べて部品点数が少なくてすみ、コストダウンが図れるとともに、部品数削減による組立作業が容易となり、組立ラインでのサイクルタイムの短縮が図れる。
【0041】
(5) 絶縁シート12は合成樹脂製となっているので、金属材料に比べ、材料費を半分以下に抑えることができ、これにより、材料費削減による部品費のコストダウンが図れる。
(6) 絶縁シート12は合成樹脂製となっているので、打ち抜き加工が容易である。そのため、金型の型耐用が向上し、部品供給においても、従来プレス工場でフープ状に形状を抜いた後に輸送していた部品を、ムーブメント組立ライン上に機械を設置してのプレス抜き加工が可能となり、重労働であったフープ材の運搬作業が不要となり、また、プレス工場および組立工場に在庫置き場を確保する等の必要がなくなり、作業環境、職場環境の向上が図れる。
【0042】
(7) 絶縁シート12には金属層12Cとが形成されているとともに、この絶縁シート12は、金属層12Cを文字板13側に向けて配置されているので、絶縁シート12と金属層12Cとの異なる特性を最大限に活用することで、従来の絶縁シートと筒車押さえとを別個に設けた場合とほぼ同等の効果、すなわち、電源マイナス端子14と文字板13間の良好な絶縁、および見栄えのよいムーブメント外観が得られるという効果がある。
【0043】
(8) 電源マイナス端子14における先端側の舌状の板ばね部14Bは、地板10の電源収納用凹部10Fの底面に形成された略長円形状のばね用穴10Gに収められているので、地板10と絶縁シート12との間に、電源マイナス端子14の分の厚みが不要となり、その結果、電源部の厚みを薄くすることができ、時計の薄型化が達成される。
【0044】
(9) 絶縁シート12に形成された筒車用逃げ穴12Dは、時針取付け部11Aを挿通させることのできる最小径になっているので、絶縁シート12で筒車11を案内する面積が多くなり、確実に位置決めをできるとともに、筒車11のアガキを最小限に抑えることができる。
【0045】
(10) 絶縁シート12は、熱かしめ加工により地板10に固定されるので、絶縁シート12の固定が確実となり、その結果、振動等によってもずれたり、外れたりすることがなくなり、確実に電源マイナス端子14と文字板13との電気的ショートを防止することができる。また、筒車の位置決めを確実に行えるので、筒車11のアガキの最適化を図ることができる。
【0046】
次に、図5に基づいて、本発明の第2実施形態を説明する。
前記第1実施形態では、絶縁シート12で電源15および筒車11の周辺を平面的に覆ったものに対し、本第2実施形態では、ムーブメント全体を覆ったものである。従って、前記第1実施形態と同一部品には同一符号を付すとともに、その説明は省略または簡略化し、異なる部位のみ説明する。
【0047】
この実施形態では、絶縁部材である絶縁シート22で、地板10における筒車11の時針取付け部11A周囲に対応する部分、文字板13の足挿入部等の組立に必要な挿入穴10H、および熱かしめ用たぼ10Bを除き、地板10の文字板13側の略全面が覆われている。そのため、地板10には、熱かしめ用だぼ10Bが、絶縁シート22の周縁近傍に4箇所、筒車11の周囲に3箇所の合計7箇所に、互いに均等に設けられている。また、絶縁シート22の文字板13側の面には、図2に示すように、金属層12Cが形成されている。
【0048】
このような第2実施形態によれば、前記(2), (3) を除く(1) 〜(10)と同様の効果の他、次のような効果がある。
(11) 絶縁シート22でムーブメント全体を覆うため、外観の良さがより向上するとともに、穴を覆うことによりムーブメント内部、特に、輪列部へのごみ、けばの浸入を防止することができ、時計の致命傷である指針の止まり、遅れをなくすことができ、時計の品質向上を図ることができる。
【0049】
次に、図6,7に基づいて、本発明の第3実施形態を説明する。
前記第1、第2実施形態では、絶縁シート12,22の固定を、熱かしめで行っていたが、本第3実施形態では、塑性変形加工の一つとしてのピンかしめで行ったものである。なお、絶縁シート22は、第2実施形態と同様にムーブメント全体を覆っている。本実施形態でも、前記各実施形態と同一部品には同一符号を付すとともに、その説明は省略または簡略化し、異なる部位のみ説明する。
【0050】
図7に示すように、ピンかしめ構造は、地板10に組込まれたねじピン23に絶縁シート22を載せた後、ねじピン23の文字板13側の面、かつ軸芯に沿って形成されたたがね用穴23Aにかしめたがねを打ち込み、たがね用穴23Aの外周を拡げて、かしめ部23Bを形成することにより絶縁シート22を地板10の裏面に固定している。このようなピンかしめ部23Bは、絶縁シート22の周囲3箇所に略均等に設けられている。
また、かしめ部23Bを形成する際に使用するかしめたがねは、例えば8角形等、できるだけ円錐に近い形状のものを使用するほうが、かしめ力を増すので好ましい。さらに、ピンかしめの場合、かしめ部を分解し、部品交換を実施後再びねじピン23の上部をタガネでかしめれば再生可能である。
【0051】
このような第3実施形態によれば、前記(2) ,(3) ,(10)を除く(1) 〜(11)と同様の効果の他、次のような効果がある。
(12) 熱かしめを行う際の熱源が不要となるので、装置の構造が簡素となる。また、ピンかしめの場合、かしめ部を分解し、部品交換を実施後再びねじピン23の上部をタガネでかしめれば再生可能となる。従って、ムーブメントの分解が可能となり、部品交換を行えるので、アフターサービスの向上を図れる。
【0052】
次に、図8に基づいて、本発明の第4実施形態を説明する。
第4実施形態は、絶縁部材である絶縁シート32の一部にエンボス加工32Aを行うものである。この実施形態の絶縁シート32は、前記第2、第3実施形態の絶縁シート22と同様にムーブメント全体を覆う場合に適用される他、第1実施形態において、絶縁シート12の一部を延ばし、水晶ユニット35やステップモーター33の一部を覆うようにしても用いることができる。
【0053】
絶縁シート32の一部には上述のようにエンボス加工32Aが施され、表面が凹凸形状とされている。この凹凸形状のエンボス加工32A部は、回路受19に支持されている水晶ユニット35の一部に対応しており、これにより、水晶振動子を含む水晶ユニット35のクッション材として使用できるため、落下等の外部からの衝撃に対して水晶振動子の破損を防ぐことができる。
なお、絶縁シート32も、図2に示すように、前記絶縁シート12,22と同様の構造となっている。
【0054】
このような第4実施形態によれば、前記(2) ,(3) を除く(1) 〜(12)と同様の効果の他、次のような効果がある。
(13) 絶縁シート32は、水晶振動子を含む水晶ユニット35の衝撃吸収材として使用できるため、落下等の外部からの衝撃に対して水晶振動子の破損を防ぐことができる。
【0055】
次に、図9,10に基づいて、本発明の第5実施形態を説明する。
本実施形態での電子時計50は、アラーム機能やクロノグラフなどの機能を備えた多機能時計である。このため、文字板13には、通常の時刻表示用の目盛51を備えた主表示部52と、アラーム設定時刻を表示するための目盛53を備えた副表示部54とが設けられており、主表示部52では、時針55、分針56、秒針57が目盛51を指示するのに対して、副表示部54では、アラーム時針58およびアラーム分針59が目盛53を指示する。なお、副表示部54では、アラーム設定時刻に限らず、クロノグラフの時、分を表示してもよいし、世界各地の時刻を表示してもよい。
【0056】
アラーム機能については詳説しないが、アラーム時針58およびアラーム分針59はそれぞれ、アラーム筒車61およびアラーム分車62に取り付けられており、アラーム分車62がアラーム中間車63を介して図示しないステップモーターで駆動され、このアラーム分車62の駆動力がアラーム日の裏車64を介してアラーム筒車61に伝達される。ただし、本実施形態では、当該ステップモーターは、時針55、分針56、秒針57を駆動するステップモーターとは別である。このため、副表示部54では主表示部52と同様に、その独立したステップモーターを用いて通常の時刻を表示させることもできる。
【0057】
このような電子時計50では、前記各実施形態と同様に、絶縁シート72が地板10と文字板13との間に配置され、この絶縁シート72には、筒車用逃げ穴72Dの他、アラーム筒車用逃げ穴72Eが設けられている。そして、この逃げ穴周縁部分により、筒車11およびアラーム筒車61が軸方向に案内されている。
【0058】
このような第5本実施形態によれば、その特有な構成により、以下の効果がある。
(14) 電子時計50では、地板10と文字板13との間にアラーム筒車61が配置されているが、このアラーム筒車61も絶縁シート12によって軸方向に案内でき、この部分における組立性の向上や、ムーブメントのコスト削減等を実現できる。
【0059】
続いて、図11,12,13に基づいて、第6実施形態を説明する。なお、本実施形態は、本発明には含まれないが、参考までに説明する。
本実施形態での電子時計80は、太陽電池で発電された電力でステップモーターを駆動するように構成したものであり、文字板13が透光性を有しているとともに、この文字板13の裏面側(図11中の上側)には、太陽電池パネル81が配置されている。これらの文字板13および太陽電池パネル81は、周縁部分が合成樹脂製の中枠80Aと金属製の見切板80Bとで挟持され、太陽電池パネル81の裏面側には、筒車11を挟むようにして、ムーブメントを構成する地板10が配置されている。太陽電池パネル81は、ムーブメントに対してテープなどで接着されていることが好ましい。
【0060】
図12、13において、太陽電池パネル81は、絶縁部材としての基板フィルム83上に電源としての4つの1/4円状の太陽電池84を備えている。各太陽電池84の境界部分では、基板フィルム83が受光面側から十字形状に視認可能とされ、この十字方向がそれぞれ12時、3時、6時、および9時の4方向を指している。このため、本実施形態では、文字板13に特に目盛を付さない場合でも、基板フィルム83による十字線に基づいて指針の位置が把握できるようになっている。
【0061】
太陽電池84は、可撓性の基板フィルム83上に形成された電極としてのマイナス電極層85と、マイナス電極層85上に形成されたアモルファスシリコンや単結晶シリコンからなる発電層86と、発電層86上の外周側に形成された第1絶縁樹脂層87と、発電層86上の中央側(太陽電池パネル81としての中央側)および前記第1絶縁樹脂層87を覆うプラス電極層88と、プラス電極層88上の外周側に形成された第2絶縁樹脂層89を含む積層構造とされている。また、太陽電池84の受光面側は、封止樹脂剤91で封止されている。この封止樹脂剤91およびプラス電極層88は、発電層86まで光を通す必要性から透光性を有する材料で形成されている。なお、封止樹脂剤91およびプラス電極層88は、図12には図示されていない。
【0062】
このような構造では、例えば、図12に示す太陽電池84Aにおいて、透明なプラス電極層88(図13参照)上には、第2絶縁樹脂層89の内周面に沿った円弧状の細長い配線電極層92が形成されているとともに、この配線電極層92の一部が第2絶縁樹脂層89上に太幅部921として引き出され、隣接する他の太陽電池84側に短く延びている。この配線電極層92は、細長い円弧状の部分でプラス電極層88(図13参照)と導通し、短く延びた先端部分がスルーホールを通って太陽電池84Bのマイナス電極層85と導通し、このようにして、隣接する太陽電池84A〜84Dが電気的に直列に接続されている。
【0063】
なお、図13中の左側の断面図は、図12中のC−C線に沿った断面図であり、配線電極層92Aは、第2絶縁樹脂層89上に引き出された太幅部921からさらに裏面側に引き出され、この裏面側でプラス端子93に導通している。この際、積層体の内部では、プラス電極層88からマイナス電極層85にかけてレーザー加工等による二条の円弧状のスルーホールが形成され、このスルーホールに第2絶縁樹脂層89形成用の樹脂が充填されている。従って、積層体内では、配線電極層92Aがスルーホール間を通ることで、マイナス電極層85とは完全に絶縁されている。
【0064】
一方、図13中の右側の断面図は、図12中のD−D線に沿った断面図であり、孤立して残された配線電極層92Bは裏面側に引き出され、裏面側のマイナス端子94に導通している。この際、積層対の内部では、二条の円弧状のスルーホールのうち、内側のスルーホールがプラス電極層88および第1絶縁樹脂層87のみを貫通しているために、配線電極層92Bは、プラス電極層88とは完全に絶縁され、マイナス電極層85のみに接触し、よってマイナス端子94とマイナス電極層85との導通がとれるようになっている。
【0065】
以上に説明した太陽電池パネル81では、プラス端子93やマイナス端子94は、図示しない駆動回路に導通しており、発電した電力がコンデンサ等の適宜な充電手段に充電され、この充電された電力で駆動用ICおよびステップモーターが駆動される。また、各端子93,94はいずれも小さなドット状であって、筒車11およびムーブメントに対しては、基板フィルム83が最も大きな面積で対向する。そして、図11に示すように、基板フィルム83(図11では、太陽電池パネル81のみが図示されている)により、筒車11が軸方向に案内されている。すなわち、この基板フィルム83は、ムーブメントや筒車11を構成する金属製の導電性部品とマイナス電極層85との電気的ショートを防止する役目と、筒車11を軸方向に案内する役目との両方を備えており、本発明に係る絶縁部材になっている。
【0066】
この第6実施形態によれば、その特有な構成により、以下の効果がある。
(15) 電子時計80は、電源として太陽電池84を備えているが、このような場合でも、基板フィルム83で筒車11の軸方向の案内をしているため、太陽電池84側と他の導電性部品とを確実に絶縁できるうえ、筒車11の案内を他部品で行う必要がなく、組立作業を容易にでき、また、コストダウンを実現できる。
【0067】
なお、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態を適宜組み合わせてもよく、本発明の目的を達成できるものであれば、次のような変形形態でもよい。
すなわち、第1、第2実施形態では、絶縁シート12と地板10、絶縁シート22と地板10との固定を熱かしめで行い、第3実施形態では、絶縁シート22と地板10との固定をピンかしめで行っているが、これら塑性変形加工による固定に限らず、超音波を使用した固定でもよい。超音波による固定では、絶縁シート12の固定が確実となり、その結果、振動等によってずれたり、外れたりすることがなくなり、確実に電源マイナス端子14と文字板13との電気的ショートを防止することができる。
【0068】
また、第1、第2実施形態で、絶縁シート12と地板10、絶縁シート22と地板10との固定を熱かしめで行っているが、これに限らず、第1、第2実施形態の絶縁シート12,22と地板10との固定を、それぞれ、第3実施形態と同様にピンかしめで行ってもよい。
【0069】
さらに、第1、第2実施形態で、絶縁シート12,22と地板10との固定を行うための、熱かしめ用のだぼ穴10Bの数、および、第3実施形態でのピンかしめのためのねじピン23の数は、各実施形態に限定されず、バランスよく配置されていれば、各実施形態より多くてもよく、また少なくてもよい。
【0070】
また、前記各実施形態での絶縁シート12,22,32には、金属層12Cが形成されてうたが、金属層12Cは、薄いアルミ膜の蒸着、またはイオンプレーティング等を施した乾式メッキによって形成される他、絶縁シート12,22,32に張り合わされる金属箔で形成されてもよい。この際、金属箔の材質も任意であり、前記第1実施形態で記載した金属の中から適宜に選択して用いてよい。
【0071】
また、前記各実施形態の絶縁シート12,22,32としては、金属層12Cが形成されたものに限らず、図14に示すように、ポリエステルフィルムおよび合成樹脂等の単層の絶縁部材を使用してもよい。これらは、色、表面処理等、種類も多いので、金属外観を望まないユーザには、白、赤、黒等の色シートおよびスケルトンとなる透明シート、光沢および艶消し・ヘヤーライン加工等の表面加工を施した様々なサンプルの中より好みのものを選択できるので、ユーザの幅広い希望に応えることができる。
【0072】
また、絶縁シートを単層部材で形成する場合、印刷加工も可能なメタリック調で、光沢およびヘヤーライン加工による筋目模様等の表面処理も可能な素材を用いることができ、そのような加工済みの素材を用いることで、ムーブメント外観を損ねることもなく、従来の金属板と同等の見栄えのよいムーブメント外観を得ることができる他、従来にないムーブメント外観を得ることができる。
【0073】
さらに、絶縁シートを単層部材で形成する場合、ムーブメントの識別を、絶縁シート12の材料を針関係別、仕向先別に色を変えたり、または、たこ印刷、スクリーン印刷等により識別表示を行ったりすることができる。従って、今まで以上に機種の判別を付けやすくなり、これにより、同一形状または類似形状からなる部品の組込み違いを未然に防げる。
また、多機能時計の副表示部としては、アラーム設定時刻の表示に限らず、クロノグラフ、および気圧、水圧、温度等の表示用であってもよい。また、副表示部は1つに限らず、表示内容の異なる副表示部が複数設けられていてもよい。
また、電源としては、放電のみで充電できない化学反応を利用した一次電池、酸化銀電池、リチウム電池、および繰返し充放電が可能な化学反応を利用した二次電池やコンデンサ、電磁発電機構を内蔵する電池を採用することができる。
そして、これら変形の形態は、前述の各実施形態と適宜組み合わせてもよい。
【0074】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明の電子時計によれば、1種類の部材で電源側と他の導電性部品との絶縁および時刻表示用番車の案内を行うことができ、かつ、組立作業が容易となるとともに、コストダウンを図れるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電子時計の第1実施形態を示す平面図である。
【図2】前記第1実施形態の絶縁部材の構造を示す縦断面図である。
【図3】図1におけるA−A線に沿った断面図である。
【図4】図1におけるB−B線に沿った断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示す平面図である。
【図6】本発明の第3実施形態を示す平面図である。
【図7】前記第3実施形態の要部を示す縦断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態の要部を示す縦断面図である。
【図9】本発明の第5実施形態を示す外観図である。
【図10】前記第5実施形態を示す縦断面図である。
【図11】本発明の第6実施形態を示す縦断面図である。
【図12】前記第6実施形態の構成部材を示す平面図である。
【図13】前記構成部材の縦断面図であって、図中の左側が図12におけるC−C線に沿った断面図、図中の右側が図12におけるD−D線に沿った断面図である。
【図14】本発明の変形例に係る絶縁部材の構造を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1,50,80…電子時計、10…基枠である地板、10B…熱かしめ用だぼ、11…時刻表示用番車である筒車、12,22,32,72…絶縁部材である絶縁シート、12A…熱かしめ用穴、14…電極である電源マイナス端子、15…電源、23…ピンかしめ用ねじピン、32A…エンボス加工、33…駆動変換部材であるステップモーター、34…駆動用IC、35…水晶ユニット、36…駆動制御回路、83…絶縁部材である基板フィルム、84…電源である太陽電池、85…電極であるマイナス電極層。

Claims (10)

  1. 合成樹脂からなる基枠と、電力で回転駆動する駆動変換部と、前記駆動変換部を制御する駆動制御回路と、この駆動制御回路に電力を供給する電源と、前記基枠に対向配置された導電性の時刻表示部材と、前記駆動変換部の回転駆動により回転しかつ前記基枠および前記時刻表示部材間に配置された時刻表示用番車と、を備えた電子時計において、
    前記電源の正極および負極の一方が前記駆動制御回路の電源電圧となる電源電位とされるとともに、他方が接地されて電圧の基準となる接地電位とされ、
    前記電源電位となる極に接触する電極と前記接地電位となる部位との電気的ショートを防止する面状の絶縁部材を備え、
    前記絶縁部材は、前記基枠に固定されているとともに、少なくとも前記電極と前記時刻表示用番車とを覆う広さを有し、かつ前記時刻表示用番車の軸を挿通させる穴を有し、
    この絶縁部材により前記時刻表示用番車の軸方向の位置決めが行われており、
    前記電源は、前記基枠に設けられた電源収納用凹部に対して、前記電源電位となる極が当該電源収納用凹部の底側となるように直置き状態で収納され、
    前記電源電位となる極に接触する電極は、ばね性を有する片持ち形状のみとされているとともに、前記電源が前記電源収納用凹部内にある状態では、当該電源収納用凹部の底側に設けられたばね用穴に収容され、かつ前記ばね性により前記電源電位となる極を先端側で付勢している
    ことを特徴とする電子時計。
  2. 請求項1に記載の電子時計において、前記絶縁部材は、前記基枠における時刻表示部材と対向する略全面を平面的に覆っていること特徴とする電子時計。
  3. 請求項1または請求項2に記載の電子時計において、前記絶縁部材の片面上には金属層が形成され、この金属層が前記時刻表示部材側に対向していることを特徴とする電子時計。
  4. 請求項3に記載の電子時計において、前記絶縁部材の前記金属層は、前記絶縁部材の片面に施した乾式メッキによって形成されていることを特徴とする電子時計。
  5. 請求項3に記載の電子時計において、前記絶縁部材の前記金属層は、前記絶縁部材の片面に張り合わせた金属箔によって形成されていることを特徴とする電子時計。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電子時計において、前記絶縁部材の前記基枠への固定は、複数の部位を塑性変形させて、前記基枠と絶縁部材とを密着させることを特徴とする電子時計。
  7. 請求項6に記載の電子時計において、前記塑性変形加工は、熱かしめまたはピンかしめ加工であることを特徴とする電子時計。
  8. 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電子時計において、前記絶縁部材の前記基枠への固定は、超音波を使用して行われることを特徴とする電子時計。
  9. 請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の電子時計において、前記絶縁部材には、前記時刻表示部材の足挿入用の挿入穴があけられていることを特徴とする電子時計。
  10. 請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の電子時計において、前記時刻表示部材の主表示部とは別の副表示部を備えた多機能時計であることを特徴とする電子時計。
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