JP4020780B2 - 電解コンデンサの駆動用電解液 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解コンデンサの駆動用電解液(以下、電解液と称す)の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電解コンデンサの小型化に伴い、電解コンデンサの陽極箔にはエッチング倍率の高いものが使用されるようになり、電解液としては、比抵抗の低いものが要求されている。
【0003】
このような電解液として、従来は、エチレングリコールを主溶媒とし、電解質としてカルボン酸のアンモニウム塩を溶解したものが使用されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特公平7−48460号公報(第2頁、表)
【特許文献2】
特公平7−63047号公報(第3頁、表1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記電解液で低比抵抗のものを得るには、電解質の濃度を高くするか、水を多量に添加しなければならない。しかし、電解質の濃度の増加は電解質の析出、耐電圧低下を起こすという問題がある。また水を多量に添加した場合、電解コンデンサの高温無負荷時の漏れ電流を増加させるため、105℃での使用は困難であった。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、比抵抗が低く、かつ、高温条件下においても使用可能な電解コンデンサの駆動用電解液を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、電解液にトリスイソシアヌレートを溶解することで、高温下での電極箔と水との水和反応を抑制し、高温無負荷での信頼性に優れた電解液を提供するものである。
【0008】
すなわち、本発明に係る電解液では、エチレングリコールなどの多価アルコールと水とを混合した溶媒に、カルボン酸またはその塩と、以下の化学式で表されるトリスイソシアヌレートとを溶解したことを特徴とする。
【0009】
【化2】
Figure 0004020780
【0010】
本発明において、上記トリスイソシアヌレートの溶解量は、電解液全体に対して0.1〜1.0wt%であることが好ましい。0.1wt%未満では電極箔と水との水和反応の抑制効果が十分得られず、1.0wt%を超えると比抵抗が高くなる傾向にある。
【0011】
本発明において、水の混合量は電解液全体に対して、2.0〜10.0wt%であることが好ましい。2.0wt%未満では比抵抗がやや高く、10.0wt%を超えると、トリスイソシアヌレートの効果が低下する傾向にある。
【0012】
本発明において、上記カルボン酸としては、アゼライン酸、セバシン酸、1、6−デカンジカルボン酸、5、6−デカンジカルボン酸、7−ビニルヘキサデセン−1、16−ジカルボン酸等を例示することができる。
【0013】
また、カルボン酸の塩としては、アンモニウム塩の他、メチルアミン、エチルアミン、t−ブチルアミン等の一級アミン塩、ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン等の二級アミン塩、トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエチルアミン等の三級アミン塩、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩等を例示することができる。
【0014】
そして、多価アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等を例示することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明に係る電解液では、少なくともエチレングリコールなどの多価アルコールと水とを混合した溶媒に、少なくとも、カルボン酸またはその塩と、トリスイソシアヌレートとを溶解する。ここで、トリスイソシアヌレートの溶解量については、電解液全体に対して0.1〜1.0wt%とする。また、水の混合量については、電解液全体に対して2.0〜10.0wt%とする。
【0016】
本発明に係る電解液では、電解液中のトリスイソシアヌレートが電極箔表面に吸着するため、水の混合量が増加しても、105℃の高温下での水と電極箔との水和反応を抑制でき、高温無負荷時の漏れ電流増大を抑制することができる。また電解質の増量を必要としないので、耐電圧が低下することもない。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。表1、2の組成で電解液を調合し、30℃における比抵抗を測定した結果を表1、2に示す。
【0018】
【表1】
Figure 0004020780
【0019】
【表2】
Figure 0004020780
【0020】
次に、表1、2に示す各電解液を使用して、定格400V−22μF(φ16×25mmL)の電解コンデンサを各10個を作製し、tanδ、漏れ電流について初期特性測定後、高温無負荷試験(105℃、1000時間放置)を行い、表3の結果を得た。
【0021】
【表3】
Figure 0004020780
【0022】
表3に示すように、トリスイソシアヌレートを添加しなかった従来例1〜3と比較し、本発明の実施例1〜12では高温無負荷試験において漏れ電流の増大が抑制され、優れた特性を示している。また、別途行った高温負荷試験においても優れた特性を示した。
【0023】
なお、トリスイソシアヌレートの添加量は0.1〜1.0wt%の範囲が好ましく、0.1wt%未満では十分な効果が得られず、低漏れ電流用途に不向きであり、1.0wt%を超えると比抵抗が高くなり、低比抵抗用途に不向きとなる。
【0024】
また、水の添加量は2.0〜10.0wt%の範囲が好ましく、2.0wt%未満では比抵抗が高いので、低比抵抗用途に不向きであり、10.0wt%を超えると、トリスイソシアヌレートの効果が低下する傾向にある。
【0025】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、先に例示したカルボン酸またはその塩を単独または複数溶解しても、同様の効果がある。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の電解液に用いたトリスイソシアヌレートが、電極箔表面に吸着し、高温下での水と電極箔との水和反応を抑制するため、水の混合量が増加しても、電解コンデンサの高温下での電気特性改善並びに信頼性向上を図ることができる。

Claims (3)

  1. 多価アルコールと水とを混合した溶媒に、カルボン酸またはその塩と、以下の化学式で表されるトリスイソシアヌレートとを溶解したことを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液。
    Figure 0004020780
  2. 請求項1において、トリスイソシアヌレートの溶解量が、電解液全体に対して0.1〜1.0wt%であることを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液。
  3. 請求項1または請求項2において、水の混合量が、電解液全体に対して2.0〜10.0wt%であることを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液。
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