JP4020771B2 - 電解コンデンサの駆動用電解液 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解コンデンサの駆動用電解液（以下、電解液と称す）の改良に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
近年、電解コンデンサの小型化に伴い、電解コンデンサの陽極箔にはエッチング倍率の高いものが使用されるようになり、比抵抗の低い電解液が要求されている。このような電解液として、従来、エチレングリコールを主溶媒とし、電解質としてカルボン酸のアンモニウム塩を溶解したものが使用されている（例えば、特許文献１、２参照）。
【０００３】
【特許文献１】
特公平７−４８４６０号公報（第２頁、表）
【特許文献２】
特公平７−６３０４７号公報（第３頁、表１）
【０００４】
ここで、電解液にマンニトール、ソルビトール等の多価アルコールを添加した電解液が知られているが、マンニトール、ソルビトール等の多価アルコールは、多量に添加すると著しい比抵抗の上昇を伴うため、低損失が要求されるコンデンサには適用できない。そのため、低い比抵抗を保ちつつ、高い耐電圧性を有する電解液の開発が望まれている。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、電解液で低比抵抗のものを得るには、電解質の濃度を高くするか、水を多量に添加しなければならないが、電解質の濃度の増加は、電解質の析出、耐電圧低下を起こすという問題がある。
【０００６】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、比抵抗が低く、かつ、耐電圧の高い電解コンデンサの駆動用電解液を提供することにある。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の電解コンデンサの駆動用電解液は、電解液にイソシアン酸アルキルを溶解することで、比抵抗化とともに高耐電圧化をも実現しようとするものである。
【０００８】
すなわち、本発明に係る電解液では、多価アルコールと水とを含む溶媒に、カルボン酸またはその塩と、以下の化学式で表わされるイソシアン酸アルキルとを溶解したことを特徴とする。
【０００９】
【化２】

【００１０】
本発明において、上記イソシアン酸アルキルの配合量が、電解液全体に対して０．１〜１．０ｗｔ％であることが好ましい。０．１％未満では十分な効果を示さず、１．０ｗｔ％を超えると電解液の比抵抗が著しく上昇する。
【００１１】
本発明において、水の混合量は、電解液全体に対して２．０〜１０．０ｗｔ％であることが好ましい。２．０ｗｔ％未満では比抵抗がやや高く、１０．０ｗｔ％を超えると、高温下での水和反応を完全に防止しきれない傾向にある。
【００１２】
本発明において、上記カルボン酸としては、アゼライン酸、セバシン酸、１，６−デカンジカルボン酸、５，６−デカンジカルボン酸、７−ビニルヘキサデセン−１，１６−ジカルボン酸等を例示することができる。
【００１３】
また、カルボン酸の塩としては、アンモニウム塩の他、メチルアミン、エチルアミン、ｔ−ブチルアミン等の一級アミン塩、ジメチルアミン、エチルメチルアミン、ジエチルアミン等の二級アミン塩、トリメチルアミン、ジエチルメチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエチルアミン等の三級アミン塩、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩等を例示することができる。
【００１４】
【発明の実施の形態】
本発明に係る電解コンデンサの駆動用電解液では、多価アルコールと水とを含む溶媒に、カルボン酸またはその塩と、イソシアン酸アルキルとを溶解する。ここで、イソシアン酸アルキルの溶解量は、電解液全体に対して０．１〜１．０ｗｔ％とする。また、水の混合量については、電解液全体に対して２．０〜１０．０ｗｔ％とする。
【００１５】
このような電解液において、イソシアン酸アルキルは、電極箔表面に３次元網目構造を有する皮膜を形成するため、イオンの移動を妨げないので、電解液の比抵抗を維持でき、かつ、電極箔表面にて効率良く皮膜を形成するため、少量溶解するだけで耐電圧を向上することができる。
【００１６】
【実施例】
以下、実施例を具体的に説明する。表１、表２に示す組成で電解液を調合し、その３０℃における比抵抗及び８５℃における火花発生電圧を測定した結果を表１、表２に示す。
【００１７】
【表１】

【００１８】
【表２】

【００１９】
表１、表２からわかるように、マンニトールを添加した従来例１〜３の電解液と比較して、本発明に係る実施例１〜９の電解液はイソシアン酸アルキルを添加することにより、少量で火花発生電圧が向上しており、かつ、低い比抵抗を示している。
【００２０】
なお、イソシアン酸アルキルの電解液全体に対する添加量は０．１〜１．０ｗｔ％が好ましく、０．１ｗｔ％未満であると十分な効果を示さず、１．０ｗｔ％を超えると電解液の比抵抗が著しく上昇する。また、水の混合量が２．０ｗｔ％未満では比抵抗がやや高く、１０．０ｗｔ％を超えると、高温下でのアルミニウム電極箔との水和反応を完全に防止しきれない傾向にあるので、水の混合量は、電解液全体に対して２．０〜１０．０ｗｔ％であることが好ましい。
【００２１】
本発明は、実施例に限定されるものではなく、先に例示したカルボン酸またはその塩を単独または複数溶解してもよく、必要により耐洗浄剤としてニトロ化合物を溶解してもよい。
【００２２】
【発明の効果】
上記説明したように、本発明で用いたイソシアン酸アルキルは、エチレングリコールを主溶媒とした電解液に容易に溶解し、かつ、比抵抗を上昇させずに耐電圧の向上を図ることができる。

Claims (3)

1. 多価アルコールと水とを含む溶媒に、カルボン酸またはその塩と、以下の化学式で表されるイソシアン酸アルキルとを溶解したことを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液。
   

   
2. 請求項１において、前記イソシアン酸アルキルの溶解量が、電解液全体に対して０．１〜１．０ｗｔ％であることを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液。
3. 請求項１または請求項２において、水の混合量が、電解液全体に対して２．０〜１０．０ｗｔ％であることを特徴とする電解コンデンサの駆動用電解液。