JP4019964B2 - 漏洩磁束探傷方法および装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄鋼板(以下、単に薄板とも呼ぶ。)の中でも比較的板厚の厚い自動車等に用いられる薄板(板厚:0.4 〜1.8mm 程度。)を製造するラインに設置して薄板の内部欠陥、表面欠陥を検出する漏洩磁束探傷方法および装置に関する。特に、本発明は、薄板の品種、板厚に合わせた最適の検査条件にての検査を実現するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来では、比較的に板厚の厚い薄板(板厚:0.4 〜1.8mm 程度)での疵検査には、超音波式を採用していた。しかし、薄板を水中に入れると、防錆用の設備が必要になり設備が大きくなることから設備化が困難であるため、通常、薄板を水中に入れないで探傷が可能であるタイヤ探触子超音波式が用いられていた。ただし、タイヤ探触子超音波式は、検出感度を十分に得ることができなかったことにより、近年ではあまり利用されなくなってきている。
【0003】
一方、薄板でも比較的板厚が薄い板を製造するブリキ製造ラインにおいては、漏洩磁束式の検査装置の導入が進んでいる(特許文献1参照)。
漏洩磁束探傷の原理を図3に基づいて説明する。
図3に示すように、被検査材である薄板1に直流励磁を掛けて薄板1内の内部欠陥3からの磁束7を飽和状態にし、当該欠陥による磁束7の乱れ(この乱れは、主に磁気抵抗の違いによって発生するものであることが知られている。)から漏れ出てくる磁束7を、薄板に接近させて配置した磁気電気変換素子、すなわち、磁気センサ11にて電気信号に変換して検出する(特許文献1、特許文献3等参照)。
【0004】
特許文献1に示すように、従来の漏洩磁束探傷装置は、比較的薄い板厚(板厚:0.15mm〜0.4mm 程度)の薄板製造ラインに導入されており、そのような薄い薄板の探傷の場合には、対象とする薄板の種類によって大きな漏洩磁束の差が生じることはなかった。
ただし、板厚が厚くなると徐々に板厚の影響から検出信号が小さくなることは、従来からよく知られている。例えば、特許文献2には、板厚変化に対する検査出力低下の様子が開示されている(図4参照)。また、特許文献2に開示のように、薄板の板厚を厚くして使用するには、出力の減少を補正するように励磁電流を決定することが必要になる。例えば、図5に、板厚変化に対する必要励磁電流のパターンの一例を示す。
【0005】
一方、比較的板厚の厚い薄板(板厚:0.4 〜1.8mm 程度)の製造ラインに漏洩磁束探傷を適用し、薄板の内部および表面の欠陥を検査する場合、その漏洩磁束探傷を行う検査素子である磁気センサの検出能力は、励磁電流を増すことで飽和状態となり、正比例せずに変化量が徐々に少なくなってくる。
すなわち、従来実用化されている漏洩磁束探傷装置は、薄板の板厚が厚くなると飽和状態までの励磁が困難であり、また、検出する漏洩磁束も少なくなり、磁気センサから十分な検出信号を得ることができなかった。例えば、特許文献2においても、1.0mm 以上の板厚における漏洩磁束検査は開示されていない。
【0006】
また、同じ板厚、同じ欠陥サイズであり、検査条件が同一の場合であっても、その薄板の種類(つまり、組織や成分による作り分け)に応じて探傷条件が変化し、同じ検出信号(レベル)とはならないのである。
【0007】
【特許文献1】
特開昭56-61645号公報
【特許文献2】
特開平5-60731 号公報
【特許文献3】
特開2002-195984 号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
薄板の漏洩磁束探傷は、その原理(図3)に基づき、被検査材である薄板に直流励磁して、薄板にある欠陥から漏れ出てくる漏洩磁束を、磁気センサで電気信号に変換して欠陥に対応した信号を出力する。この場合、薄板の板厚が厚くなると、同じように直流励磁しても出力される漏洩磁束が少なくなる(図4、5参照)。
【0009】
そのため、薄い薄板と同程度の検出信号となる漏洩磁束を発生させるには、より強い直流励磁を薄板に掛ける必要がある。しかし、より強い直流励磁を掛けると、その磁束が磁気センサ自体にも加わることから、かえって検出素子の感度特性が悪くなってしまう(図6参照)。
ところで、各板厚で検出素子が飽和しない状況となるように条件設定を行い、漏洩磁束探傷を実施すれば、それぞれに応じて励磁電流を変更することで任意の励磁電流で目的の板厚の薄板に対する検査が可能となる(図7参照、特に、A1 、A2 部)。
【0010】
ただし、薄板の厚さに合わせて検出信号が一定になるように励磁電流を調整すると、薄い板厚の場合には、出力信号が高く、かつ、S/N比が良い部分を利用することができない(図8参照、特に、板厚の厚い場合のA3 部に対し、板厚の薄い場合のB部)。
一方、薄板のS/N比が良い部分で一定出力になるようにすると(図8のB部)、板厚の厚い場合において検出信号が得られなくなる(図8のA3 部)。
【0011】
また、被測定材の製造品種が変わった場合には、当然、板厚に対する最適励磁電流も変わってくる(図9:炭素成分の多少による相違)。
ところが、例えば、特許文献2に開示の従来の磁気探傷装置の磁化力制御方法に基づき、励磁電流のみを板厚に合わせて増加させる方法では、板厚の厚い薄板の最適点に合わせて励磁電流を小さくするので、板厚の薄い薄板では十分な検査出力が得られない結果となる(図8参照)。
【0012】
また、板厚の薄い場合に十分なS/N比が得られる励磁電流とすることができないので、従来の方法に比べて信号増幅に伴うノイズの増加が発生し、S/N比が悪くなるという問題がある。
一方、板厚の薄い薄板の最適点に合わせて励磁を行うと、板厚の厚い薄板の漏洩磁束探傷において磁気センサの飽和が始まり、磁気センサからの信号が得られなくなるという問題がある。
【0013】
また、同一板厚でも薄板の品種によって最適な励磁電流があるので、十分な漏洩磁束探傷条件を得ることができない。
本発明は、薄板の品種、板厚に合わせた最適の検査条件にての検査を常に実現可能とした漏洩磁束探傷方法および装置を提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、板厚を変更しても、また、品種を変更しても、同じ検査出力を得ることのできる最適な励磁方法とゲインの選定を可能とした本発明の漏洩磁束探傷方法および装置の開発に成功した。
すなわち、本発明は、薄鋼板を励磁コイルで励磁し、該薄鋼板に介在する欠陥に起因して発生する漏洩磁束を磁気センサで検出しさらに前記磁気センサから出力される検出信号をセンサアンプで所定のゲインで増幅し、検査信号として出力して探傷を行う漏洩磁束探傷方法であって、あらかじめ、前記検出信号の出力を前記磁気センサの出力特性曲線の飽和状態となる直前あるいは境界の最適出力が得られるレベルとするための記励磁コイルの励磁電流値と、前記磁気センサからの検出信号を増幅するセンサアンプのゲインを前記検査信号の出力が一定になるように補正するための最適設定値とを、前記薄鋼板の板厚と品種に対応させてそれぞれテーブル化して記憶しておき、探傷に際しては、対象とする薄鋼板の板厚と品種情報に基づき、テーブルから励磁電流値および最適設定値を選択して前記励磁コイルに流す励磁電流の設定および前記センサアンプのゲインの設定を行うことを特徴とする漏洩磁束探傷方法によって上記課題を解決した。
【0015】
また、本発明は、薄鋼板を搬送する搬送ライン上に具備し、該薄鋼板を励磁する励磁コイルと、該薄鋼板に介在する欠陥に起因して発生する漏洩磁束を検出する磁気センサと、該磁気センサから出力される検出信号の出力を所定のゲインで増幅して検査信号を出力するアンプと、を有してなる漏洩磁束探傷装置であって、あらかじめ、前記検出信号の出力を前記磁気センサの出力特性曲線の飽和状態となる直前あるいは境界の最適出力が得られるレベルとするための記励磁コイルの励磁電流値と、前記磁気センサからの検出信号を増幅するセンサアンプのゲインを前記検査信号の出力が一定になるように補正するための最適設定値を、前記薄鋼板の板厚と品種に対応させてそれぞれテーブル化して記憶する記憶手段と、探傷に際し、対象とする薄鋼板の板厚と品種情報に基づき、前記記憶手段のテーブルから励磁電流値および最適設定値を選択して前記励磁コイルに流す励磁電流の設定および前記センサアンプのゲインの設定を行う自動設定手段と、を有してなることを特徴とする漏洩磁束探傷装置によって上記課題を解決した。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の漏洩磁束探傷装置を、図1に基づいて説明する。
図1において、非検査材である薄板1が、非磁性ロール2に巻回して搬送されている。
非磁性ロール2上には、励磁コイル5を具備する磁化ヨーク6が配置され、搬送されている薄板1を励磁し、漏洩磁束を発生させる。そして、この漏洩磁束を磁気センサ11で検出し、薄板の欠陥検出を行う。なお、磁気センサ11は、図1の紙面に鉛直方向に多数配置されており、薄板1の幅方向全面の探傷をカバーしている。また、励磁コイル5を具備する磁化ヨーク6と磁気センサ11を一体化して磁気センサヘッド10が構成されている。
【0017】
磁気センサ11で検出した信号の出力である検出器出力は、センサアンプ12で増幅されてさらに検査信号として出力され、その検査信号を入力として欠陥判定手段13において欠陥判定がなされる。
ここで、本発明においては、被測定材である薄板の製造品種毎に最適の欠陥判定レベルを設定し、図2に例示するように、薄い薄板であっても、また、厚い薄板であっても最適なS/N比となる励磁で検査を行えるように励磁コイル5の励磁電流を設定するものである。すなわち、被測定材である薄板の製造品種毎に最適のS/N比を得られるように、それぞれのセンサ出力特性曲線(図2)の飽和状態となる直前あるいは境界の最適出力が得られるレベル(図2中の点線より左の範囲)とするように設定することを特徴とする。なお、図2において、各センサ出力特性曲線は、例えば板厚範囲を0.4 〜1.8mm とする任意の曲線である。
【0018】
また、同時に、その結果として得られる検査出力が一定になるようにセンサアンプ12でのゲイン設定を最適となるように補正するものである。すなわち、図1に示すように、板厚・品種情報設定手段8で取得した板厚・品種情報に基づき、自動設定手段9の設定を行い、励磁コイル5の励磁電流設定とセンサアンプ12のゲイン設定を自動的に行うことで最適な漏洩磁束探傷を実現するものである。
【0019】
本発明は、S/N比の最適な励磁にて漏洩磁束探傷を行い、探傷した出力値を一定にするようにセンサアンプで補正を掛けることで各板厚や各製造品種に対応した検査を可能とする。そのため、本発明におけるセンサアンプの補正では、被測定材の板厚が薄い場合において、厚い場合の出力に整合させるため、その増幅率を下げる場合もありうる。
【0020】
従来、被測定材の板厚が厚くなるにしたがって検査出力が不足し、十分な検査感度が得られなかったのに対し、本発明によって常に十分な感度が得られるようになった。また、薄板の品種が異なっても同一欠陥サイズにおいて同じ検査出力と最適なS/N比が得られるようになった。
そして、漏洩磁束探傷における励磁電流は、従来、一定(例えば、1Aから3Aの範囲で固定値に設定していた。)であったのに対し、本発明では、1Aから6Aまでの電流を自在に設定できるようにして自動設定を行い、励磁コイルに設定通りの電流が出力できるようにした。そして、磁気センサの出力をセンサアンプで増幅する際に、その増幅率を調整し、最適なS/N比となる検査出力が得られるようにしたのである。すなわち、設定条件を検査対象材の板厚、製造品種毎に自動切り替え可能としたのである。なお、励磁電流値、増幅率の設定値は事前に板厚、製造品種毎に最適値を求めておき、それぞれテーブル化して記憶しておく。
【0021】
【発明の効果】
本発明によって、薄板の中でも比較的板厚の厚い薄板(板厚:0.4 〜1.8mm 程度)の製造ラインに漏洩磁束探傷を適用し、薄板の品種、板厚に合わせた最適の検査条件にての検査を実現することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の漏洩磁束探傷装置の構成図である。
【図2】漏洩磁束探傷における検出器特性と、本発明における欠陥判定レベルを示すグラフである。
【図3】漏洩磁束探傷の原理説明図である。
【図4】検出対象材の板厚と検出信号レベルの関係を示すグラフである。
【図5】検出対象材の板厚と励磁コイルの励磁電流の関係を示すグラフである。
【図6】励磁コイルの励磁電流と検出信号の関係を示すグラフである。
【図7】励磁コイルの励磁電流と検出信号の関係において本発明について説明するためのグラフである。
【図8】励磁コイルの励磁電流と検出信号の関係において本発明について説明するためのグラフである。
【図9】励磁コイルの励磁電流と検出信号の関係において本発明について説明するためのグラフである。
【符号の説明】
1 薄板(ストリップ)
2 非磁性ロール
3 内部欠陥
5 励磁コイル
6 磁化ヨーク
7 漏洩磁束(磁束)
8 板厚・品種情報設定手段
9 自動設定手段
10 磁気センサヘッド
11 磁気センサ
11a 磁気感知面
12 センサアンプ(増幅器)
13 欠陥判定手段

Claims (2)

  1. 薄鋼板を励磁コイルで励磁し、該薄鋼板に介在する欠陥に起因して発生する漏洩磁束を磁気センサで検出しさらに前記磁気センサから出力される検出信号をセンサアンプで所定のゲインで増幅し、検査信号として出力して探傷を行う漏洩磁束探傷方法であって、
    あらかじめ、前記検出信号の出力を前記磁気センサの出力特性曲線の飽和状態となる直前あるいは境界の最適出力が得られるレベルとするための記励磁コイルの励磁電流値と、前記磁気センサからの検出信号を増幅するセンサアンプのゲインを前記検査信号の出力が一定になるように補正するための最適設定値とを、前記薄鋼板の板厚と品種に対応させてそれぞれテーブル化して記憶しておき、
    探傷に際しては、対象とする薄鋼板の板厚と品種情報に基づき、記憶したテーブルから励磁電流値および最適設定値を選択して前記励磁コイルに流す励磁電流の設定および前記センサアンプのゲインの設定を行うことを特徴とする漏洩磁束探傷方法。
  2. 薄鋼板を搬送する搬送ライン上に具備し、該薄鋼板を励磁する励磁コイルと、該薄鋼板に介在する欠陥に起因して発生する漏洩磁束を検出する磁気センサと、該磁気センサから出力される検出信号の出力を所定のゲインで増幅して検査信号を出力するアンプと、を有してなる漏洩磁束探傷装置であって、
    あらかじめ、前記検出信号の出力を前記磁気センサの出力特性曲線の飽和状態となる直前あるいは境界の最適出力が得られるレベルとするための記励磁コイルの励磁電流値と、前記磁気センサからの検出信号を増幅するセンサアンプのゲインを前記検査信号の出力が一定になるように補正するための最適設定値を、前記薄鋼板の板厚と品種に対応させてそれぞれテーブル化して記憶する記憶手段と、
    探傷に際し、対象とする薄鋼板の板厚と品種情報に基づき、前記記憶手段のテーブルから励磁電流値および最適設定値を選択して前記励磁コイルに流す励磁電流の設定および前記センサアンプのゲインの設定を行う自動設定手段と、を有してなることを特徴とする漏洩磁束探傷装置。
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