JP4019747B2 - ポリエステル樹脂組成物からなる発泡性粒子および発泡粒子ならびに発泡成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃焼熱の低い梱包用緩衝材として用いられる発泡粒子および成形体に使われる発泡性粒子に関する。
【0002】
【従来の技術】
軽量性、緩衝性、成形加工性を生かしたプラスチック発泡体が包装、梱包材として多量に用いられているが、その素材はポリスチレン(PS)、ポリオレフィンといった石油を原料とする化学製品である。この為使用後の処分が困難で、焼却するにしても燃焼熱が高く、焼却炉をいためたり、埋め立てをしても分解しない上に容積が大きいために処分場のスペースを占有してしまうといった大きな社会問題となってきている。
【0003】
本発明者らは燃焼熱の小さい素材としてポリ乳酸の発泡樹脂組成物を見出し、既に発明提案(PCT/JP98/04851)を行った。該発明で得られる発泡樹脂組成物から得られる発泡粒子あるいは成形体は、通常の梱包用緩衝材として十分使用できるものであった。しかしながら、上記の発明における発泡成形体は、発泡粒子の発泡倍率が低いため、柔軟性、緩衝性等が特に必要な緩衝材においては不十分であり、用途が制限されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的とするところは、低燃焼熱であり、発泡性、成形性、柔軟性、緩衝性に優れ、緩衝材として適した発泡体用の発泡性粒子を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討の結果、ポリ乳酸系樹脂とポリメタクリル酸メチルからなる樹脂組成物に対し、ポリイソシアネート化合物を配合したポリエステル樹脂組成物を使用することで上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に使用するポリ乳酸系樹脂は、主成分がポリ乳酸であり、本発明の目的が達成される範囲で、他のグリコール、ジカルボン酸、酸無水物、ヒドロキシカルボン酸等が共重合されていてもよい。
【0007】
本発明に使用するポリ乳酸は、実質的に非晶性のポリ乳酸、即ち、DSC測定による融解熱(2nd scanΔH)が0.1J/g以下のポリ乳酸が好ましい。ポリ乳酸のL体とD体のモル比は、好ましくは95/5〜5/95、更に好ましくは92/8〜8/92である。L体とD体のモル比がこの範囲のものは結晶性が低いため発泡倍率が上がり易く、発泡が均一になるからである。
【0008】
本発明に使用するポリ乳酸は、高分子量で分岐したものが好ましい。ポリ乳酸は、例えば分岐剤としてエポキシ化大豆油やエポキシ化亜麻仁油等を用いたものが好ましく、これらはイソシアネートにより著しく増粘し発泡性が良好で好ましい。
【0009】
また、数平均分子量(Mn)は50,000以上300,000以下が好ましく、重量平均分子量(Mw)が90,000以上1,200,000以下のものが好ましい。多分散度(Mw/Mn)は、1.5以上が好ましく、更に好ましくは2.0以上である。その理由は、上記範囲のポリ乳酸は、以下に述べるポリメタクリル酸メチル、ポリイソシアネートと反応させて超高粘度樹脂を得たとき、適度な架橋密度となり、発泡に適した架橋構造になるためである。
【0010】
このような高溶融粘度のポリ乳酸を得る手段として、通常の反応釜での高真空下、攪拌効率の良好な状態での溶融重合、二軸混練反応機による溶融重合、溶融重合と固相重合との組み合わせにより高溶融粘度のポリ乳酸を得る事は可能であるが、高粘度であるため反応サイクル低下による生産性の低下、樹脂の熱分解による品質低下に十分注意する事が必要である。
【0011】
ポリメタクリル酸メチルは、通常のメタクリル酸メチルの付加重合体が使用できる。また、本発明の目的が達成される範囲で、不飽和結合を持った他の共重合成分、例えば、アクリル酸エステル、無水マレイン酸、グリシジルメタクリレイト等が共重合されていてもよい。ポリメタクリル酸メチルは、旭化成製デルペット、協和ガス化学工業製パラペット、三菱レイヨン製アクリペット、住友化学工業製スミペックス等の市販品が使用できる。ポリメタクリル酸メチルのメルトインデックス値は、0.1〜30g/分(測定方法:ASTM D−1238)であれば良い。
【0012】
ポリ乳酸とポリメタクリル酸メチルの割合は、ポリ乳酸が50重量%以上、好ましくはポリ乳酸が70重量%以上の場合、発泡性が良好であるので好ましい。
【0013】
上述のポリ乳酸とポリメタクリル酸メチルからなるポリエステル樹脂(以下、ポリ乳酸系樹脂と略称)に発泡剤を含浸、発泡させても発泡倍率を高くすることは困難であり、実用に耐え得るものではない。高発泡倍率を得るには、更に高い溶融粘度が必要であり、増粘剤としてポリイソシアネートを添加することが必要である。
【0014】
好ましいポリイソシアネートは、イソシアネート基≧2.0当量/モルのポリイソシアネートである。又、ポリイソシアネートは上記ポリ乳酸系樹脂に対して0.1〜5重量%、更には1〜3重量%を加える事が好ましい。ポリイソシアネートが0.1重量%以上で樹脂組成物の溶融粘度が上昇し易く、また5重量%以下で溶融粘度が適当であり、発泡性が良好である。上記ポリ乳酸系樹脂とポリイソシアネートを溶融状態で混合、反応、更に溶融混練後の固体状態で徐々に水分と反応し、アロハネート結合やユリア結合により架橋が進むことにより、溶融粘度がJIS K−7210(荷重211.8N)に準拠したメルトインデックス値(MI)で5以下の範囲の発泡性の良好な樹脂組成物を得ることが出来る。
【0015】
使用されるポリイソシアネートとしては芳香族、脂環族、脂肪族系のポリイソシアネートがある。例えば、芳香族ポリイソシアネートとしてはトリレン、ジフェニルメタン、ナフチレン、トリジン、キシレン、トリフェニルメタンを骨格とするポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートとしてはイソホロン、水素化ジフェニルメタンを骨格とするポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートとしてはヘキサメチレン、リジンを骨格とするポリイソシアネートがあり、いずれも使用可能であるが汎用性、取り扱い性、耐候性等からトリレン、ジフェニルメタン、特にジフェニルメタンが好ましく使用される。
【0016】
ポリ乳酸、ポリメタクリル酸メチルおよびポリイソシアネートを溶融状態で混合、反応させ超高分子量化させる方法は通常の公知の方法が可能である。例えば、ペレット化したポリ乳酸、ポリメタクリル酸メチルにポリイソシアネートを添加混合し、単軸又は二軸混練機等で溶融混合する方法、予めポリ乳酸、ポリメタクリル酸メチルを単軸又は二軸混練機等で溶融した後ポリイソシアネートを添加する方法、単軸又は二軸混練機等で溶融重合によりポリ乳酸を製造又は製造中に、ポリメタクリル酸メチル、ポリイソシアネートを添加する方法などが挙げられる。
【0017】
また、均一で微細な発泡セルを形成させるためには発泡核剤を配合することが好ましい。使用する発泡核剤としては、例えば、タルク、シリカ、カオリン、ゼオライト、マイカ、アルミナ等の無機粒子が好適である。この中でもタルクは本発明の樹脂組成物に対して好ましく使用される。
【0018】
また、その他の添加剤についても、目的に応じ、適宜添加することが出来る。例えば熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、可塑剤等がある。但し、難燃剤等は塩素等のハロゲン化物であることが多く、生分解性や焼却処分時の有害物質発生という観点から使用量は最小限に留めておくのがよい。
【0019】
こうして得られた樹脂組成物は、ペレット又はビーズ状粒子とした後、発泡剤及び発泡助剤を含浸させる。ペレット又はビーズの大きさ、形状等は必要に応じて適宜選択することができるが、通常、直径0.5〜2mmの大きさのものが好ましい。精密な成形体の場合は直径0.5〜1mmの粒子が更に好ましい。
【0020】
ここで用いる発泡剤及び発泡助剤としては、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ヘキサン等の炭化水素、塩化メチレン、塩化メチル、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル類が発泡剤として、又、炭素数1〜4のアルコール、ケトン類、エーテル、ベンゼン、トルエン等が発泡助剤として用いられる。
【0021】
発泡剤と発泡助剤の組み合わせは、使用する樹脂によって適宜選択すれば良い。本発明に使用する発泡剤として低分子量アルカンが好ましく用いられるが、これと組み合わせる発泡助剤としては例えばメタノール、エタノール等の単素数1〜4の1価のアルコールが好適である。その他の組み合わせも種々あり、目的や経済性に鑑みて選択することができる。
【0022】
発泡剤と発泡助剤の使用比率(重量比率)は、発泡剤/発泡助剤=1/2〜
20/1が可能であるが、発泡剤と発泡助剤の組み合わせによってこの比率は変わり、1/1〜10/1が一般的である。
【0023】
発泡剤及び発泡助剤の含有量(率)は目的とする発泡倍率、ペレット又はビーズ粒子の保存期間によって異なるが発泡剤として通常5〜15重量%が適用される。又、発泡剤の含有量(率)は、発泡倍率に応じて選択することができる。一般に、低発泡品は含有量(率)を低く、高発泡品は含有量(率)を高くすればよい。
【0024】
発泡剤及び発泡助剤を含有させたペレット又はビーズ粒子は、加熱によって発泡させた後、所望の金型に入れ、更に加熱して発泡を進め、セル同志を融着させて強固な成形体を成形する。ポリスチレン(PS)発泡体の成形方法と基本的には同一である。即ち、予備発泡及び発泡成形共に熱容量の大きい水蒸気が好ましく用いられる。
【0025】
また、成形体の曲げ弾性率(JIS K−7221)は、緩衝材に用いる場合、柔軟性の点で9.80MPa以下が好ましく、更に好ましくは7.85MPa、最も好ましくは5.88MPa以下である。
【0026】
【実施例】
以下に実施例及び比較例により、本発明を更に具体的に説明する。尚、評価は下記の方法で行った。
【0027】
(測定方法)
(1)溶液粘度(ηr):テトラクロロエタン/フェノール=2/3(重量比)(KPCと称する)の溶液中20℃で測定した値。(試料調整:試料1gをKPC100mLで溶解)
【0028】
(2)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、多分散度(Mw/Mn):測定装置 HLC8120GPC(東ソー製)、カラム TSKgel S5000+3000+1000(東ソー製)、溶媒:クロロホルム/THF
【0029】
(3)混練樹脂のメルトインデックス(MI):JIS K−7210に準拠して測定。(温度:190℃、オリフイス2mm径、荷重211.8N、予熱時間6分)
【0030】
(4)発泡粒子の発泡倍率:1Lメスシリンダーを用いて、かさ密度(g/L)を測定し、下記のように算出した。
発泡倍率(倍)=1000/かさ密度(g/L)
【0031】
(5)成形体のかさ密度:300×300×30mmボードの重量、体積を測定し、下記のように算出した。
かさ密度(g/cm3)=重量(g) /体積(cm3)
【0032】
(6)物性:JISに準拠して測定した。
・曲げ応力、初期弾性率:JIS K−7221
・緩衝係数:JIS Z−0235
【0033】
(7)燃焼熱:100×100×30mmの発泡体を使用して、コーンカロリーメータIII((株)東洋精機製作所製)で測定した。
【0034】
(8)成形性:成形品の外観を目視で評価した。
【0035】
<実施例1、2>
重量平均分子量Mwが186,000、数平均分子量Mnが89,000、多分散度(Mw/Mn)が2.09、L体/D体=88.6/11.4、エポキシ化大豆油を0.35重量%含有した分岐型ポリ乳酸とMI値が6.0g/10分の旭化成製デルペット60Nを90/10、80/20(重量%)の割合で、ブレンドし、その後イソシアネート化合物「ミリオネートMR―200」(イソシアネート基2.7〜2.8当量/モル、日本ポリウレタン工業(株))2.1重量%、タルク「LMP―100」(富士タルク工業(株))3.0重量%を二軸混練機(TEM35B,東芝機械(株))にてシリンダー温度185℃で混練し、ペレット状の樹脂組成物を得た。
【0036】
<比較例1>
使用した樹脂がポリ乳酸単独である以外は実施例1と全く同様に実施した。
【0037】
この樹脂組成物のMIを測定した後、オートクレーブに各々5000重量部、発泡剤としてイソブタン2000重量部、発泡助剤としてメタノール240重量部を仕込み、密封し、昇温し、85℃に3時間保持した。その後、25℃で冷却してから樹脂を取り出し、風乾後、重量を測定し、含浸率を求めた。次いで得られた発泡剤含浸ペレツトを水蒸気(96℃、1分)で予備発泡させ、発泡倍率を評価した。
【0038】
その後、更に、1日熟成後、この発泡粒子を密閉金型に充填してスチーム成形機で水蒸気圧0.1MPa、20秒間加熱して成形を行い、各300×300×30mmの成形体を得た。この成形体より試験片を切り出し物性、燃焼熱を評価した。評価の対照として市販の発泡ポリスチレン(比較例2)を用いた。評価結果は表1の通りであった。
【0039】
【表1】
【0040】
評価結果
本発明のポリ乳酸系樹脂、ポリメタクリル酸メチルおよびポリイソシアネート化合物からなるポリエステル樹脂組成物は、発泡ポリスチレンと較べ、低燃焼熱であり、発泡性、成形性、柔軟性、緩衝性に優れ、緩衝材として適している。
【0041】
【発明の効果】
以上、本発明のポリエステル樹脂組成物は、発泡スチレンと同様な優れた発泡性、成形性を有し、かつその発泡成形体は低燃焼熱、柔軟性、緩衝性を有するため、広く梱包材として適用でき、地球環境保全に資する材料である。
Claims (4)
- ポリ乳酸70〜90重量%およびポリメタクリル酸メチル30〜10重量%からなるポリ乳酸系樹脂100重量%に対してポリイソシアネート化合物0.1〜5重量%を添加してなるポリエステル樹脂組成物に発泡剤を含浸させた発泡性粒子。
- ポリ乳酸が分岐型ポリ乳酸であることを特徴とする請求項1の発泡性粒子。
- 請求項1又は2に記載の発泡性粒子を発泡させた発泡粒子。
- 請求項3に記載の発泡粒子を用いた発泡成形体。
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