JP4019695B2 - 酸素ガスバリア性フィルム及びその製造方法 - Google Patents

酸素ガスバリア性フィルム及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素ガスバリア性フィルム及びその製造方法、特に包装用、さらには食品包装用フィルムとして好適な、高湿度下でも優れた酸素ガスバリア性フィルム及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、燃焼したときに塩化水素ガスを発生せずに、高湿度下での酸素ガスバリア性、シーラント接着性に優れたフィルム及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、飲食品、医薬品、化学薬品、日用雑貨品などの種々の物品を充填包装する包装用材料として各種樹脂フィルムが用いられており、例えばポリプロピレンフィルムは加工性、透明性、耐熱性など優れた特性を有しており、汎用されている。しかしながら、食品、医薬品など酸素によってその品質が劣化する物品の包装用材料には、これら被包装物の品質を保護・保存するために高いガスバリア性(酸素遮断性)が要求されており、十分な酸素ガスバリア性を有していないポリプロピレンフィルムでは適用が難しかった。
【0003】
そこで、酸素ガスバリア性を付与する手段として、酸素ガスバリア性を有する材料をコーティングすることが行われている。その一つとして、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(以下「PVDC」と略記することがある。)フィルムにコーティングしたPVDCコートフィルムがあり、吸湿性がほとんどなく、高湿度下でも良好な酸素ガスバリア性を有することから、現在大量に使用されている。
【0004】
しかしながら、PVDCコートフィルムは塩素を含有することから、燃焼により、有毒な塩化水素ガス、ダイオキシンを発生し、地球環境を汚染する点で問題になってきた。そこで、塩素を使わない素材による酸素ガスバリア性フィルムが強く要望されており、開発検討がされている。
【0005】
そのような酸素ガスバリア性が高い素材としては、ポリビニルアルコール系樹脂(以下「PVA」と略記することがある。)、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(以下「EVOH」と略記することがある。)がよく知られている。この様な樹脂をコートしたフィルムは、低湿度下では非常に優れた酸素ガスバリア性を示すが、吸湿性が大きいため、相対湿度が上昇するにつれ酸素ガスバリア性が低下し、実用性に乏しいと考えられていた。
【0006】
また、特開平3−30944号には「PVAのコーティング液に膨潤性を有するコロイド性含水層状ケイ酸塩化合物を添加する方法」が、特許2789705号公報には「膨潤性を有するコロイド性含水層状ケイ酸塩化合物及び分子内にシリル基を有する化合物の少なくとも1種により変性されたポリビニルアルコール」が開示されている。しかしながら、これらを用いたフィルムは、いずれも高湿下での酸素ガスバリア性は優れているが、コスト高になる問題がある。
【0007】
この様に、現状では、高湿度下での酸素ガスバリア性が十分でないことや、高コストであることから、PVDCコートフィルムを代替できるフィルムはまだ得られていないのが現状である。また、これらのフィルムは、包装袋にするためにシーラントとラミネートされて使用されるが、そのシーラントとの接着性も十分でないことも問題になっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
この様な、従来の酸素ガスバリア性フィルムには、上記のような問題点があった。
【0009】
本発明は、上記従来の酸素ガスバリア性フィルムの有する問題点を踏まえ、PVDCコート二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの代替として、安価な素材としてPVAを選択し、PVAの問題点である、高湿度下での酸素ガスバリア性とシーラント接着性を改良することについて鋭意検討した結果、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを基材フィルムとし、接着剤層を介して、特定のポリビニルアルコール系樹脂とウレタン系樹脂の混合物からなる酸素ガスバリア層を積層し、かつ特定のポリビニルアルコール系樹脂とウレタン系樹脂の混合物からなる酸素ガスバリア層の結晶化度を上げることにより、高湿度下での酸素ガスバリア性とシーラント接着性を大きく改善できることを見出した。
【0010】
即ち、本発明は、高い酸素ガスバリア性、特に、高湿度下でも優れた酸素ガスバリア性を発揮することができ、また、シーラント接着性が良好である酸素ガスバリア性フィルム、および、容易に入手可能な素材から低コストで優れた酸素ガスバリア性を有するフィルムを製造する方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の酸素ガスバリア性フィルムは、二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、酸変性ポリオレフィンを含む接着剤層を介して、重合度200〜2600、鹸化度90〜99.7モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)と水酸基含有ポリエステル樹脂とポリイソシアネート成分を重付加反応させたポリエステルウレタン系樹脂(B)の90/10〜99.5/0.5の重量比の混合物からなる酸素ガスバリア層が積層されてなり前記酸素ガスバリア層の結晶化度パラメータ(CP(M//)⊥)が1.2以上であり、かつ、23℃、相対湿度85%の雰囲気下での酸素透過度が1000mL/m ・day・MPa以下であることを特徴とする。
ここで、結晶化度パラメータとは、赤外偏光ATR法(全反射測定法)における偏光ATRスペクトルによって得られた結晶化度パラメータ(CP(M//)⊥)であって、具体的にはこの結晶化度パラメータは、ポリビニルアルコール系樹脂の吸収帯を利用したもので、1095cm−1付近の吸収強度に対する1140cm−1付近の吸収強度の比を意味する。
【0012】
上記の構成からなる本発明の酸素ガスバリア性フィルムは、高い酸素ガスバリア性、特に、高湿度下でも優れた酸素ガスバリア性を発揮することができ、また、シーラント接着性が良好である酸素ガスバリア性フィルムである。
【0016】
この場合において、酸素ガスバリア層の厚みを1μm以下とすることができる。
【0018】
また、本発明の酸素ガスバリア性フィルムの製造方法は、少なくとも一方の面に酸変性ポリオレフィンを含む接着剤層が積層された未延伸フィルムを一方向に延伸した後、該接着剤層の表面にポリビニルアルコール系樹脂と水酸基含有ポリエステル樹脂とポリイソシアネート成分を重付加反応させたポリエステルウレタン系樹脂との混合物からなる酸素ガスバリア層を形成し、次いで前記延伸方向と直角方向に延伸することを特徴とする。
【0019】
上記の構成からなる本発明の酸素ガスバリア性フィルムの製造方法は、高い酸素ガスバリア性、特に、高湿度下でも優れた酸素ガスバリア性を示すフィルムを、容易に入手可能な樹脂から製造することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の酸素ガスバリア性フィルム及びその製造方法の実施の形態を説明する。
【0021】
本発明で用いる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムは、公知の二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムであり、その原料、混合比率などは特に限定されない。例えばポリプロピレンホモポリマー(プロピレン単独重合体)、プロピレンを主成分としてエチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセンなどのα−オレフィンから選ばれる1種又は2種以上とのランダム共童合体やブロック共重合体など、あるいはこれらの重合体を2種以上混合した混合体によるものであってもよい。また物性改質を目的として酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤など、公知の添加剤が添加されていてもよく、例えば石油樹脂やテルペン樹脂などが添加されていてもよい。
【0022】
また、本発明で用いる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムは、機械強度、透明性など、所望の目的に応じて任意の膜厚のものを使用することができる。特に限定するものではないが、通常は10〜250μmであることが推奨され、包装材料として用いる場含は15〜60μmであることが望ましい。
【0023】
また、本発明で用いる二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムは、単層フィルムであってもよく、あるいは二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムを含む複数の樹脂フィルムが積層された積層型フィルムであってもよい。積層型フィルムとする場合の積層体の種類、積層数、積層方法などは特に限定されず、目的に応じて公知の方法から任意に選択することができる。
【0024】
本発明の酸素ガスバリア性フィルムにおいては、この様な二軸延伸プロピレン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に接着剤層を介してポリビニルアルコール系樹脂(A)とウレタン系樹脂(B)との混合物からなる酸素ガスバリア層が積層されてなることが必要である。接着層がないと、二軸延伸プロピレン系樹脂フィルムの層と、ポリビニルアルコール系樹脂とウレタン系樹脂との混合物からなる酸素ガスバリア層との接着力が弱くなってしまう。
【0025】
この様な接着剤層としてはその原料などは特に限定されないが、接着剤層が酸変性ポリオレフィンを含む接着剤からなることが好ましい。例えば、ポリオレフィン系重合体を(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸などの不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィンを含むものが推奨され、特に0.01〜5モル%のマレイン酸又は無水マレイン酸をオレフィン重合体にグラフト共重合させたグラフト共重合体を含むものが接着剤層として好適に用いられる。
【0026】
また、接着剤層の厚みは特に限定されないが、接着性、コストの観点からも接着剤層の厚みは0.5〜5μmとすることが望ましい。また接着剤層には目的に応じて帯電防止剤などの添加剤が添加されていてもよい。
【0027】
この様な二軸延伸プロピレン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、接着剤層を介し、重合度200〜2600、鹸化度90〜99.7モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)とウレタン系樹脂(B)との混合物からなる酸素ガスバリア層が積層される。ポリビニルアルコール系樹脂(A)のみでは、シーラント接着性が不十分であり、ウレタン系樹脂(B)のみでは、高湿下での酸素ガスバリア性が不十分である。好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂(A)とウレタン系樹脂(B)の混合重量比は、(A)/(B)=90/10〜99.5/0.5である。
【0028】
本発明で用いられるポリビニルアルコール系樹脂(A)の重合度と鹸化度は、目的とするフィルムの特性、特に酸素ガスバリア性及びフィルム製造時のPVA水溶液の粘度及びコート後のコート層の延伸性から定められる。延伸性については、重合度の高い方が結晶化遠度が遅く、延伸性が良好である。しかし、重合度が高すぎると、水溶液粘度が高いことやゲル化しやすいことから、コーティングが困難となる。従って、重合度はコート層の延伸性の点から200以上であり、コーティングの作業性から2600以下であることが必要である。好ましくは500〜2000である。鹸化度については、90%未満では高湿度下での必要な酸素ガスバリア性が得られず、99.7%を越えると水溶液の調整が困難で、ゲル化しやすく、工業生産には向かない。従って、鹸化度は90〜99.7%が必要であり、好ましくは93〜99%である。
【0029】
一方、ウレタン系樹脂(B)は、ポリビニルアルコール系樹脂との混和性から水溶性あるいは水分散型のウレタン系樹脂が好ましく、ポリオール化合物、親水基含有ポリオール化合物、ポリイソシアネート成分を公知の方法により重付加反応させて製造される。
【0030】
ポリオール化合物としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、シリコン変性ポリエーテル、ウレタン変性ポリエーテルなどのポリエーテル、エポキシ樹脂変性ポリオール、ポリカーボネートジオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオールなどを単独で又は二種類以上を併用して使用することができる。
【0031】
また、水酸基含有ポリエステル樹脂も、ポリオール化合物として使用できる。水酸基含有ポリエステル樹脂は、ポリカルボン酸化合物とポリオール化合物の重縮合反応で得られ、ポリカルボン酸化合物に対して、ポリオール化合物を過剰にすることで得られる。ポリカルボン酸化合物としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ダイマー酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ε−カプロラクトンなどを単独で又は二種類以上を併用して使用することができ、反応性不飽和結合を含むマレイン酸、フマル酸、シタコン酸、クロロマレイン酸、アリル・コハク酸、メサコン酸及びそれらの無水物などを使用することはできない。また、ポリオール化合物としては、前記した同じポリオール化合物を使用することができる。
【0032】
親水基含有ポリオール化合物としては、グリセリン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、ジヒドロキシ酒石酸、2,2−ジメチロール吉草酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸プロピオン酸及びジメチロールブタン酸などが用いられ、特に、経済性の点から、2,2−ジメチロールプロピオン酸及びジメチロールブタン酸を用いるのが好ましい。
【0033】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジベンジルジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、m−もしくはp−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、又はトリフェニルメタントリイソシアネートの如き芳香族ジ−ないしトリイソシアネート化合物類や、水添トリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、又はイソホロンジイソシアネートのような脂肪族、又は脂環族ジイソシアネート類などが用いられる。また、これらの各種モノマー類に基づく3官能以上のポリイソシアネート化合物としては、ポリイソシアヌレート型ポリイソシアネート、又はビューレット型ポリイソシアネートのような各種の変性ポリイソシネート類などが挙げられる。
【0034】
本発明におけるポリビニルアルコール系樹脂(A)とウレタン系樹脂(B)との混合物からなる酸素ガスバリア層の偏向ATRスペクトルによって得られる結晶化度パラメータ(CP(M//)⊥)が0.8以上であることが好ましい。結晶化度パラメータ(CP(M//)⊥)の値が0.8以上であれば、高湿度下であっても優れた酸素ガスバリア性を発揮することができる。
【0035】
本発明において結晶化度パラメータは、酸素ガスバリア性フィルムの酸素ガスバリア層を赤外偏光ATR法(全反射測定法)によって測定した値であり、詳細には赤外偏光ATR法における偏光ATRスペクトルによって得られた結晶化度パラメータ(CP(M//)⊥)である。なお、IRスペクトルによってポリビニルアルコール系樹脂の結晶化度を評価する場合、通常1140cm-1付近の吸収強度で評価するが、赤外偏光ATR法によるスペクトル吸収強度は、試料の測定面積、厚み及び表面状態の影響を強く受けるため、他の吸収強度との相対強度によって評価することが好ましい。そこで本発明における結晶化度パラメータは、1095cm-1付近の吸収強度に対する1140cm-1付近の吸収強度の比とした。結晶化度パラメータ(CP(M//)⊥)は高いほど、より優れた酸素ガスバリア性が得られるため、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.2以上、最も好ましくは1.9以上である。
【0036】
ポリビニルアルコール系樹脂とウレタン系樹脂との混合物からなる酸素ガスバリア層の積層方法としては、特にコーティング法によるのが好ましい。コーティングの方法は限定するものではないが、使用するコーティング液の塗布量と粘度により、最適な方法を選択すればよい。リバースロールコーティング法、ロールナイフコーティング法、ダイコーティング法などを採用すればよい。
【0037】
コーティング時の乾燥、熱処理の条件は塗布厚み、装置の条件にもよるが、乾燥工程を設けずに直ちに直角方向の延伸工程に送入し、延伸工程の予熱ゾーンあるいは延伸ゾーンで乾燥させることが好ましい。この様な場合、通常80〜170℃程度で行う。なお、必要であれば、ポリビニルアルコール系樹脂とウレタン系樹脂との混合物からなる酸素ガスバリア層を形成させる前にポリプロピレン系樹脂フィルムにコロナ放電処理、その他の表面活性化処理や公知の接着剤を用いてアンカー処理を施してもよい。また、ポリビニルアルコール系樹脂とウレタン系樹脂との混合物からなる酸素ガスバリア層中に静電防止剤や滑り剤、アンチブロッキング剤などの公知の無機、有機の各種添加剤を加えることは本発明の目的を阻害しない限り任意である。
【0038】
ポリビニルアルコール系樹脂とウレタン系樹脂の混合物からなる酸素ガスバリア層の厚みは、ポリプロピレン系樹脂フィルム及び必要とする酸素ガスバリア性によって異なるが、酸素ガスバリア性を発揮させる最小限の厚みがよく、通常は乾燥厚みで1μm以下であることが、透明性、取り扱い性、経済性の点で好ましい。
【0039】
本発明の酸素ガスバリア性フィルムは、通常、ポリビニルアルコール系樹脂とウレタン系樹脂との混合物からなる酸素ガスバリア層の上にシーラントと呼ばれるヒートシール性樹脂層を積層する。ヒートシール性樹脂層の形成は、通常押出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。
【0040】
本発明で用いるヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、シーラント接着性が十分に発現できるものであればよく、HDPE、LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂類、PP樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−αオレフィンランダム共童合体、アイオノマー樹脂などを使用できる。通常ヒートシール樹脂も塩素含有樹脂でないものが、焼却処理時の環境問題の点から好ましい。
【0041】
本発明により、安価でかつ、高湿度下での酸素ガスバリア性、シーラント接着性が優れ、さらに焼却排ガス中にダイオキシン、塩化水素ガスを含まず、近年問題とされている環境保全に対して有効であるフィルムを提供できる。
【0042】
【実施例】
次に本発明を以下の実施例、比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお液中の濃度表示は、特に断らない限り重量基準であり、特性値評価は以下の方法により行った。
【0043】
(1)酸素透過度
酸素透過度は、モダンコントロール社製「MOCON OX-TRAN 2/20」を使用し、23℃、相対湿度85%にコントロールした雰囲気下、測定時間は30分で実施した。酸素透過度の単位は、mL/m2・day・MPaで示した。
【0044】
(2)ラミネート強度
ラミネート強度は、ポリビニルアルコール系樹脂とウレタン系樹脂との混合物からなる酸素ガスバリア層表面に、ラミネート接着剤としてポリエーテル系ポリウレタン系接着剤(東洋モートン社製:商品名:アドコート)を3g/m2塗布した後、無延伸ポリプロピレンフィルム(厚み40μm、東洋紡績社製:P1128)のコロナ放電処理面と張り合わせ、40℃で72時間エージングを行い、ラミネートフィルムを得た。このラミネートフィルム(15mm幅)を常温で90゜剥離したときの強度で示した。
【0045】
(3)結晶化度パラメータ
Bio-Rad社製FT-IR(FTS-60A/896)にATR測定用付属装置(Perkin-Elmer社製)、偏光子及び対称形のエッジを有するInternal Reflection Element(Ge、入射角45度、厚さ2mm×長さ50mm×幅20mm)を取り付けたATR装置を用いて赤外偏光ATR法によって各試験片(長さ45mm×幅17mm)の結晶化度を測定した。なお、Internal Reflection Elementの中央部(幅12mm)のみに赤外光が入射するように端部の赤外光を遮断した。
【0046】
試験片は、長さ方向をフィルムの幅方向(流れ方向に対し直角方向)に取り、ポリビニルアルコール系樹脂(A)とウレタン系樹脂(B)との混合物からなる酸素ガスバリア層を該Internal Reflection Elementに密着させて、試験片の反射面に対し垂直偏光の光を照射して測定した。得られたスペクトルをSpectrum(M//)⊥とする。
【0047】
得られた偏光ATRスペクトルにおいて、1140cm-1付近の吸収と1095cm-1付近の吸収の吸光度を求める。このとき、偏光ATRスペクトルの1140cm-1付近のピークの高波数側の谷部と1095cm-1付近のピークの低波数側の谷部の二点を結んだ線をベースラインとし、ベースラインから吸収帯のピークまでの高さをポリビニルアルコール系樹脂(A)とウレタン系樹脂(B)との混合物からなる酸素ガスバリア層吸収帯の吸光度とする。1140cm-1付近のピークの吸光度をA1140、1095cm-1付近のピークの吸光度をA1095とする。明確なピークが観察されない場合は、1140cm-1、1095cm-1の位置での吸光度をA1140、A1095とした。
【0048】
Spectrum(M//)⊥のスペクトルに対し、A1095に対するA1140の比(A1140/A1095)を求めた。この値を結晶化度パラメータとし、CP(M//)⊥で示す。
【0049】
(実施例1)
コート液の調製
イソプロピルアルコール7%を含有する水溶液900gを攪拌しながら、その水溶液にポリビニルアルコール系樹脂(鹸化度98.5mol%、重合度1000)の粉末97gを徐々に投入した。約80℃に加熱し完全に溶解させた後、40℃まで冷却した。その後、水分散型ポリエステルウレタン系樹脂(a)を固形分で3g添加した。
【0050】
フィルムヘのコーティングと評価
ポリプロピレン系樹脂層としてポリプロピレン系樹脂97重量%に極性基を実質的に含まない石油樹脂(エスコレッツE5300:トーネックス社製)3重量%混合した樹脂を、接着剤層として酸変性ポリオレフィンを、ポリプロピレン系樹脂フィルム層/接着剤層=19/1(重量比)の割合で樹脂温度260℃になるように2層状態でTダイから共押出しして、温度25℃のキャスティングロールにてキャスティング後、縦方向に4倍延伸し、厚さ180μmのフィルムを得た。次に、得られた積層フィルムの接着剤層面上にリバースロールコーティング法にて前記コート液を塗布後、横方向に9倍延伸した。このコートフィルムにつき、酸素透過度、結晶化度パラメータを測定した。
【0051】
次に、このフィルムのコート面側に、ポリエーテル系ポリウレタン系接着剤(東洋モートン社製:商品名:アドコート)を3g/m2塗布した後、無延伸ポリプロピレンフィルム(厚み40μm、東洋紡績社製:P1128)のコロナ放置処理面と張り合わせ、40℃で72時間エージングを行い、ラミネートフィルムを得た。このラミネートフィルムにつき、ラミネート強度を評価した。
【0052】
(実施例2、3、比較例4、5)
コート液のポリビニルアルコール系樹脂の重合度を表1記載の通り変更したほかは、実施例1と同様の方法で、サンプルを製造し評価を行った。
【0053】
(実施例4、5、比較例6、7)
コート液のポリビニルアルコール系樹脂の鹸化度を表1記載の通り変更したほかは、実施例1と同様の方法で、サンプルを製造し評価を行った。
【0054】
(実施例6)
コート液のウレタン系樹脂を表1記載の通り水分散型ポリエーテルウレタン系樹脂(b)に変更したほかは、実施例1と同様の方法でサンプルを製造し、評価を行った。
【0055】
(実施例7、8、比較例8)
コート液のポリビニルアルコール系樹脂とウレタン系樹脂の混合比を表1記載の通り変更したほかは、実施例1と同様の方法でサンプルを製造し、評価を行った。
【0056】
(比較例1)
接着剤層を積層しない二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムに直接コート液を塗布したほかは、実施例1と同様の方法で、サンプルを製造し、評価を行った。
【0057】
(比較例2)
コート液を、ウレタン系樹脂を混合せず、ポリビニルアルコール系樹脂(鹸化度98.5mol%、重合度1000)のみを用いたものとしたほかは、実施例1と同様の方法でサンプルを製造し、評価を行った。
【0058】
(比較例3)
コート液を、ポリビニルアルコール系樹脂を混合せず、ウレタン系樹脂のみを用いたものとしたほかは、実施例1と同様の方法でサンプルを製造し、評価を行った。
【0059】
(比較例9)
厚み20μmの二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムのコロナ放電処理面に接着剤として、イソシアネート系接着剤を乾燥後コート量で3g/m2となるようにグラビアコートした。アンカー層上に、実施例1と同じコート液をグラビアコートし、140℃で乾燥し、積層フィルムを得た。
【0060】
表1に、上記の実施例、比較例でのコート組成、評価結果を示した。
【0061】
【表1】
Figure 0004019695
【0062】
【発明の効果】
本発明の酸素ガスバリア性フィルムによれば、高い酸素ガスバリア性、特に、高湿度下でも優れた酸素ガスバリア性を発揮することができ、また、シーラント接着性が良好である。
【0063】
また、本発明の酸素ガスバリア性フィルムの製造方法によれば、容易に入手可能な素材から低コストで製造することができる。

Claims (3)

  1. 二軸延伸ポリプロピレン系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、酸変性ポリオレフィンを含む接着剤層を介して、重合度200〜2600、鹸化度90〜99.7モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)と水酸基含有ポリエステル樹脂とポリイソシアネート成分を重付加反応させたポリエステルウレタン系樹脂(B)の90/10〜99.5/0.5の重量比の混合物からなる酸素ガスバリア層が積層されてなり、前記酸素ガスバリア層の結晶化度パラメータ(CP(M//)⊥)が1.2以上であり、かつ、23℃、相対湿度85%の雰囲気下での酸素透過度が1000mL/m・day・MPa以下であることを特徴とする酸素ガスバリア性フィルム
  2. 酸素ガスバリア層の厚みが1μm以下であることを特徴とする請求項1記載の酸素ガスバリア性フィルム。
  3. 請求項1又は2記載の酸素ガスバリア性フィルムの製造方法であって、少なくとも一方の面に酸変性ポリオレフィンを含む接着剤層が積層された未延伸フィルムを一方向に延伸した後、該接着剤層の表面にポリビニルアルコール系樹脂(A)と水酸基含有ポリエステル樹脂とポリイソシアネート成分を重付加反応させたポリエステルウレタン系樹脂(B)との混合物からなる酸素ガスバリア層を形成し、次いで前記延伸方向と直角方向に延伸することを特徴とする酸素ガスバリア性フィルムの製造方法。
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