JP4019592B2 - エチレンカーボネートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエチレンオキシドと二酸化炭素とを反応させてエチレンカーボネートを製造する方法に関するものである。特に本発明は純度のよいエチレンカーボネートを高収率で、かつ効率よく製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エチレンカーボネートは、リチウムイオン電池の電解液として需要が伸びているほか、ポリカーボネートの炭酸基の原料としても有望視されている。エチレンカーボネートの工業的製造法としては、エチレンオキシドと二酸化炭素を反応させる方法が最も一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
エチレンオキシドと二酸化炭素からのエチレンカーボネートの生成反応は液相で進行するので、大きな反応速度で反応を行わせるには、液相への二酸化炭素の溶解を促進することが必要である。また、この反応は非常に大きな発熱を伴い、暴走反応を起こし易い。暴走反応は、触媒の分解やアルデヒドなどの副生物の生成を増大させ、エチレンカーボネートの品質に著しい悪影響を与えるので、是非とも回避しなければならない。
【0004】
エチレンオキシドと二酸化炭素からエチレンカーボネートを製造する反応装置としては、複数の管型反応器と冷却器を直列に配置したもの(Springmann,“Fette seifen anstrichemittel”,vol.73,p396〜399(1971))、ループ型反応器(Peppel,Industrial and Engineering,Vol.50,p767〜770(1958))、気泡塔(特開平6−345699号公報)など、さまざまなものが提案されているが、いずれも問題が多い。
【0005】
先ず一般に用いられることの多い多管型反応器では、各反応管に均一に二酸化炭素を供給するのが困難である。また管内で二酸化炭素が反応液中に均一に分散せずに気相部と液相部が分離し易い。その結果、反応成績が安定せず、かつ除熱が良好に行われないので暴走反応が起きる危険性がある。
攪拌機を有する槽型の反応器では、多大の攪拌動力を消費しても二酸化炭素を十分に溶解させることは困難である。また、反応器の上部の攪拌軸の摺動部からのガスの漏洩や、摺動部での摩擦熱によりエチレンオキシドが爆発する可能性があり、有毒で爆発性のエチレンオキシドを取扱うには安全性の点でも問題がある。
【0006】
気泡塔はこれらの反応装置に比較すると優れているが、二酸化炭素の溶解を促進し、かつ塔内温度を均一にするには、エチレンオキシドに対して過剰量の二酸化炭素を存在させ、かつ二酸化炭素を循環させて反応液を攪拌する必要がある。エチレンオキシドと二酸化炭素からのエチレンカーボネートの生成反応は、水を添加すると飛躍的に加速される。しかし水の添加はエチレングリコールを副生させるので、水を添加せずに反応を促進する方法が求められている。また反応を高温で行っても反応は促進されるが、高温での反応は同時にアルデヒドの生成などの副反応の増大を招くので、生成するエチレンオキシドの品質を悪化させる。従って本発明は、水を添加せずとも、また高温で反応させずとも、十分に大きな反応速度で反応を行うことのできる方法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、エチレンオキシドと二酸化炭素とを、カーボネート化触媒の存在下に反応させてエチレンカーボネートを製造するに際し、反応液滞留部とその上方に気相部を有し、かつ気相部にエジエクターが設置されている反応器を用いて、
(イ)反応液滞留部の下部から反応液を抜出し、これを循環導管を介して気相部に設置されているエジエクターに送り、エジエクターにおいて気相部のガスを吸引してから気相
部に噴射すること、
(ロ)エジエクターから単位時間当り噴射される反応液の量は、反応液に常に反応を促進するに十分な量の二酸化炭素を存在させることができる量であること、
(ハ)反応液滞留部の液表面の直径に対する表面から反応液抜出口までの液深の比が2倍以上であること
の各条件を満足するようにエチレンオキシドと二酸化炭素との反応を行わせることにより、大きな反応速度で不純物の少ないエチレンカーボネートを製造することができる。
【0008】
このようなエジエクターを有する反応装置は、本発明者によるエチレングリコールの製造(特願平10−69983号)や、Buss社によるエトキシレートの製造(特開平3−148234号公報)などでも用いられているが、上記のような条件で反応を行うことは記載されていない。本発明者は上記の条件で反応を行えば、反応液中に二酸化炭素を微細な気泡として分散させることができ、その結果、反応が円滑に進行し、不純物の少ないエチレンカーボネートが生成することを見出したものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明では反応液滞留部とその上部に気相部を有している反応器を用いる。反応器の気相部には反応液を駆動流体とするエジエクターが設置されており、エジエクターと反応液滞留部の下部とは、途中に循環ポンプを有する循環導管で連絡されている。従って反応液は反応液滞留部の下部から循環導管に抜出され、ポンプで加圧されてエジエクターに送られ、エジエクターから気相部に噴射される。このときエジエクターの吸引部で気相部のガスを吸引させる。これにより気相部のガスの主体をなす二酸化炭素が、エジエクターを通過する反応液中に微細な気泡となって分散・溶解する。
【0010】
本発明では単位時間当り、供給されるエチレンオキシドの10重量倍以上の反応液をエジエクターに供給する。これにより反応液には常に反応を促進するに十分な量の二酸化炭素を存在させることができ、大きな反応速度でエチレンカーボネートの生成反応を行わせることができる。
反応器は、気相部に噴射された反応液が反応液滞留部の液抜出口に到達するまでに、エジエクターで反応液中に小気泡となって分散したガスが反応液に溶解するか又は反応液から分離して抜け出すように、その反応液滞留部は細長い形状であるべきである。気泡を含む反応液が循環導管に吸引されると、循環ポンプがキャビテーションを起すおそれがある。本発明では、反応液滞留部の液表面から循環導管への液抜出口までの距離、すなわち液深が、液表面の直径(ここに直径とは、液表面の面積と等しい面積の円の直径を意味する)の2倍以上となるように反応器内に反応液を存在させる。なお、液深に対する直径の比が2以上の反応器を用いても、循環液量が多過ぎると、気泡を含む反応液が循環導管に抜き出されるおそれがあるので注意を要する。
【0011】
本発明においては、エチレンカーボネートの生成反応そのものは常法に従って行われる。カーボネート化反応の触媒としては、アルカリ金属の臭化物又はヨウ化物(特公昭38−23175号公報)、アルカリ土類金属のハロゲン化物(米国特許第2,667,497号明細書)、アルキルアミン、第4級アンモニウム塩(米国特許第2,773,070号明細書)、有機スズ又はゲルマニウム若しくはテルル化合物(特開昭57−183784号公報)、ハロゲン化有機ホスホニウム塩(特開昭58−126884号公報)など公知のものを用いればよい。活性や選択性の点からは、臭化カリウムやヨウ化カリウム等のアルカリ金属ハロゲン化物、ハロゲン化有機ホスホニウム塩などを用いるのが好ましい。触媒の供給量は触媒の種類や反応条件により異なるが、例えばトリブチルメチルホスホニウムアイオダイドであれば、エチレンオキシドに対して0.001〜0.05モル倍となるように用いるのが好ましい。反応系に供給するエチレンオキシドと二酸化炭素の比率は反応条件により定まる。すなわち反応系に供給された二酸化炭素は、一部はエチレンカーボネートの生成に消費され、残部は反応液に同伴して系外に抜出されるが、その同伴量は温度や圧力などの反応条件により定まるからである。エチレンオキシドの反応率を高めるため二酸化炭素を過剰、通常はモル比で3倍程度まで、に供給するのが好ましい。エチレンオキシド及び二酸化炭素の供給位置は任意である。例えば二酸化炭素をエジエクターの吸引部に供給するのも好ましい。
【0012】
反応温度は通常70〜200℃であるが、反応を円滑に進行させ、かつ副反応を抑制するには100〜180℃で反応させるのが好ましい。また反応圧力は通常5〜50kg/cm2 Gであるが10〜30kg/cm2 Gが好ましい。反応圧力が高いほど二酸化炭素の溶解が促進されるが、圧縮器及び循環ポンプの動力費が増加する。
エチレンオキシドと二酸化炭素からのエチレンカーボネートの生成反応は大きな発熱を伴うので、反応熱の除去が必要である。反応熱の除去は反応器の反応液滞留部に除熱用コイルを設置することにより行うこともできるが、循環導管の途中に多管式熱交換器を設置するのが好ましい。
【0013】
本発明によれば反応液は反応器内で激しく撹拌されて全体がほぼ均一となっているので、連続方式で反応させる場合にはこの反応系で反応を完結させるのは困難であり、反応液には常に未反応のエチレンオキシドが含まれている。従って反応器から抜出した反応液は、ピストンフロー方式の管式反応器に導入して更に反応させ、エチレンオキシドの反応率を向上させるのが好ましい。この場合、管式反応器に導入される反応液には、エチレンオキシドに対して過剰の二酸化炭素を存在させ、もってエチレンオキシドの反応を促進するのが好ましい。通常は反応液中のエチレンオキシドの濃度が1重量%以下、好ましくは0.1〜0.5重量%となるまで反応器で反応させ、この反応液を管式反応器に導入して更に反応させるのが好ましい。管式反応器では反応液中のエチレンオキシドが10重量部ppm以下、すなわちエチレンオキシドが実質上存在しなくなるまで反応させるのが好ましい。
【0014】
【実施例】
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
内径30cm、塔高100cmの円筒状反応器を用いてエチレンオキシドと二酸化炭素とを反応させてエチレンカーボネートを製造した。反応器の頂部にはエジエクターが設置されており、反応器の底部とエジエクターとは、途中に熱交換器及び循環ポンプを介して循環導管で連絡されている。この循環導管の途中には、循環導管と管式反応器(直径5cm、長さ5m)とを連結する反応液抜出管が取付けられている。管式反応器は断熱状態で反応が進行するように断熱材で被覆されている。
【0015】
エチレンカーボネート15.4kg/Hrに、エチレンオキシド11.0kg/Hrとヨウ化カリウム2.0kg/Hrを溶解させてエジエクターの手前で循環導管に連続的に供給した。二酸化炭素は、反応器の気相部の圧力が20kg/cm2 Gとなるように気相部に供給した。反応液は270kg/Hrで循環導管を経てエジエクターに送り、エジエクターで気相部のガスを吸引させてから気相部に噴射した。反応器内の温度は180℃に制御した。反応液は反応器内の液深が90cmとなるように連続的に抜出して管式反応器に導入した。
このようにして連続的に反応を行わせた結果、定常状態において管式反応器に導入される反応液のエチレンオキシドの濃度は0.10重量%であり、炭酸ガスの濃度は1.1重量%であった。反応器でのエチレンオキシド基準のエチレンカーボネートの収率は99%以上であった。また管式反応器出口の反応液の温度は182℃であり、その中のエチレンオキシド濃度は検出限界である10重量ppm以下であった。
Claims (3)
- エチレンオキシドと二酸化炭素とを、カーボネート化触媒の存在下に反応させて、エチレンカーボネートを製造するに際し、反応液滞留部とその上方に気相部を有し、かつ気相部にエジエクターが設置されている反応器を用いて、
(イ)反応液滞留部の下部から反応液を抜出し、これを循環導管を介して気相部に設置されているエジエクターに送り、エジエクターにおいて気相部のガスを吸引して気相部に噴射すること、
(ロ)エジエクターから単位時間当り噴射される反応液の量は、反応液に常に反応を促進するに十分な量の二酸化炭素を存在させることができる量であること、
(ハ)反応液滞留部の液表面の直径に対する反応液抜出口までの液深の比が2倍以上であること
の各条件を満足するようにエチレンオキシドと二酸化炭素との反応を行うことを特徴とするエチレンカーボネートの製造方法。 - 反応を70〜200℃、5〜50kg/cm2 Gで行うことを特徴とする請求項1記載の方法。
- 反応器内の反応液のエチレンオキシド濃度が1重量%以下となるように反応を行い、かつ反応器から抜出した反応液を管式反応器に供給してエチレンオキシドの濃度が10重量ppm以下となるまで反応させることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
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