ところで、最近従来のCD−Rに対して約7倍に記録容量を向上させた情報記録媒体として、いわゆるDVD−R(Digital Versatile Disc - Recordable)についての研究開発が盛んに行われている。
DVD−Rは、高密度記録するために、隣接するトラック間のピッチがCD−Rの略半分とされている。このため、光ビームを照射したグルーブトラックに隣接するグルーブトラックからの漏れ込み、いわゆるクロストークが無視できなくなる。隣接する左右のグルーブトラックからのクロストークがあると、抽出ウォブル信号は、隣接するグルーブトラックのウォブル信号成分による干渉を受けることになり、その振幅や位相が変動してしまう。特に位相の変動、すなわちジッタを伴うことにより、上記クロストークの影響を受けた抽出ウォブル信号からは、ディスクの回転に正確に同期したクロック信号を生成できなくなるという問題がある。
すなわち、クロストーク等により、回転制御信号(基準信号と抽出ウォブル信号との位相差)に変動が発生した場合、かかる回転制御信号に応答して回転制御が制定するまでに要する時間と、クロック信号を生成するPLL回路が制定するまでに要する時間とが異なる(通常はディスクの慣性により回転制御の応答はPLL回路の応答に比べてはるかに遅い)ため、クロック信号の位相とディスクの回転位相とがその間ずれてしまうのである。このようなずれが生じると、本来記録するべき位置に記録すべきデータパターンを記録形成できなくなる。
そこで、クロック信号発生装置においては、抽出ウォブル信号の位相と、ウォブル信号が本来有する位相との変動量を検出し、発生する記録用クロック信号に対してかかる変動量を相殺する様に構成することが望まれるが、そのためには上記変動量を正確に検出することができる位相比較装置が要求される。
本願発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、隣接するグルーブトラックからのクロストークの影響による、抽出ウォブル信号の、本来有する位相に対する変動量を正確に検出することが可能となる位相比較装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本願発明の情報記録装置は、所定の周波数成分を有するウォブル信号でウォブリングしたデータ記録用トラックを有すると共に、当該ウォブル信号と所定の位相関係を有するようにプリ情報が記録された情報記録媒体にデータを記録する情報記録装置であって、前記情報記録媒体から検出される検出信号を出力する検出信号出力手段と、前記出力された検出信号からウォブル信号を抽出するウォブル信号抽出手段と、前記出力された検出信号からプリ情報を検出してプリ情報検出信号を生成するプリ情報検出手段と、前記抽出されたウォブル信号に従って前記データを記録する記録手段と、前記抽出されたウォブル信号に同期したクロック信号を生成するクロック信号生成手段と、を備え、前記クロック信号生成手段は、基本クロック信号を生成する発振部と、前記基本クロック信号を位相調整して前記ウォブル信号に同期した前記クロック信号を生成する位相調整部と、を含み、前記位相調整部は、前記基本クロック信号を前記抽出されたウォブル信号に同期させると共に前記プリ情報検出信号の検出タイミングで前記抽出されたウォブル信号に同期した単調変化信号の値を抽出することにより前記ウォブル信号とプリ情報のずれ量を補正する。
上記課題を解決するために、本願発明の情報記録方法は、所定の周波数成分を有するウォブル信号でウォブリングしたデータ記録用トラックを有すると共に、当該ウォブル信号と所定の位相関係を有するようにプリ情報が記録された情報記録媒体にデータを記録する情報記録方法であって、前記情報記録媒体から検出される検出信号を出力する検出信号出力工程と、前記出力された検出信号からウォブル信号を抽出するウォブル信号抽出工程と、前記出力された検出信号からプリ情報を検出してプリ情報検出信号を生成するプリ情報検出工程と、前記抽出されたウォブル信号に従って前記データを記録する記録工程と、前記抽出されたウォブル信号に同期したクロック信号を生成するクロック信号生成工程と、を備え、前記クロック信号生成工程は、基本クロック信号を生成する発振工程と、前記基本クロック信号を位相調整して前記ウォブル信号に同期した前記クロック信号を生成する位相調整工程と、を含み、前記位相調整工程は、前記基本クロック信号を前記抽出されたウォブル信号に同期させると共に前記プリ情報検出信号の検出タイミングで前記抽出されたウォブル信号に同期した単調変化信号の値を抽出することにより前記ウォブル信号とプリ情報のずれ量を補正する。
本願発明の情報記録装置によれば、所定の周波数を有するウォブル信号でウォブリングされたデータ記録用トラックを有すると共に、当該ウォブル信号とは所定の位相関係を有するようにプリ情報が記録されている情報記録媒体においてデータが記録される。ここでは、まず前記検出信号出力手段によって、前記情報記録媒体から検出される検出信号が出力される。次いで、前記出力された検出信号からウォブル信号抽出手段によって、前記ウォブル信号が抽出される。次いで、前記プリ情報検出手段によって前記出力された検出信号からプリ情報が検出されてプリ情報検出信号が生成される。記録手段によって、抽出されたウォブル信号に従って前記データを記録される。この記録の際には、発振部によって、基本クロック信号を生成される。次いで、位相調整部によって、基本クロック信号を位相調整して前記ウォブル信号に同期したクロック信号が生成される。特に、位相調整部は、基本クロック信号を抽出されたウォブル信号に同期させると共に前記プリ情報検出信号の検出タイミングで前記抽出されたウォブル信号に同期した単調変化信号の値を抽出することによりウォブル信号とプリ情報のずれ量を補正する。
本発明の情報記録装置に係る一の態様では、前記データは、複数の情報単位を含み、前記プリ情報は、所定数の前記情報単位に対応する間隔に対応して前記情報記録媒体に記録されており、前記プリ情報検出手段は、前記情報記録媒体から、前記プリ情報を検出してプリ情報検出信号を生成する。
この態様によれば、前記記録手段によって、生成された前記プリ情報検出信号に基づいて、前記情報記録媒体に前記データを高精度な回転制御の下で記録可能である。
本発明の情報記録装置に係る他の態様では、前記データは、複数の情報単位を含み、前記プリ情報は、前記情報単位中の同期情報が記録される領域に対応する、前記情報記録媒体上の位置に記録されており、前記プリ情報検出手段は、前記情報記録媒体から、前記プリ情報を検出してプリ情報検出信号を生成する。
この態様によれば、前記記録手段によって、生成された前記プリ情報検出信号に基づいて、前記情報記録媒体に前記データを高精度な回転制御の下で記録可能である。
本発明の情報記録装置に係る他の態様では、前記データは、複数の情報単位を含み、前記プリ情報は、前記情報単位の開始位置から所定距離だけ離れた、前記情報記録媒体上の位置に記録されており、前記プリ情報検出手段は、前記情報記録媒体から、前記プリ情報を検出してプリ情報検出信号を生成する。
この態様によれば、前記記録手段によって、生成された前記プリ情報検出信号に基づいて、前記情報記録媒体に前記データを高精度な回転制御の下で記録可能である。
本発明の情報記録装置に係る他の態様では、前記プリ情報検出信号に基づいて、最適記録パワーを設定する最適記録パワー設定手段を更に備える。
この態様によれば、前記記録手段によって、設定された最適記録パワーに基づいて、前記情報記録媒体に前記データを高精度に記録可能である。
本発明の情報記録装置に係る他の態様では、前記プリ情報検出信号に基づいて、前記情報記録媒体上のアドレス情報を取得するアドレス情報取得手段を更に備える。
この態様によれば、前記記録手段によって、取得されたアドレス情報に基づいて、前記情報記録媒体に前記データを高精度に記録可能である。
本発明の情報記録装置に係る他の態様では、前記抽出されたウォブル信号に基づいて、前記情報記録媒体の回転制御を行うサーボ手段を更に備える。
この態様によれば、前記記録手段によって、サーボ手段の高精度な回転制御の下で、前記情報記録媒体に前記データを記録可能である。
本願発明の情報記録方法によれば、所定の周波数を有するウォブル信号でウォブリングされたデータ記録用トラックを有すると共に、当該ウォブル信号とは所定の位相関係を有するようにプリ情報が記録されている情報記録媒体においてデータが記録される。
ここでは、まず前記検出信号出力工程によって、前記情報記録媒体から検出される検出信号が出力される。次いで、前記出力された検出信号からウォブル信号抽出工程によって、前記ウォブル信号が抽出される。次いで、前記プリ情報検出工程によって前記出力された検出信号からプリ情報が検出されてプリ情報検出信号が生成される。記録工程によって、抽出されたウォブル信号に従って前記データを記録される。この記録の際には、発振工程によって、基本クロック信号を生成される。次いで、位相調整工程によって、基本クロック信号を位相調整して前記ウォブル信号に同期したクロック信号が生成される。特に、位相調整工程は、基本クロック信号を抽出されたウォブル信号に同期させると共に前記プリ情報検出信号の検出タイミングで前記抽出されたウォブル信号に同期した単調変化信号の値を抽出することによりウォブル信号とプリ情報のずれ量を補正する。
本発明の情報記録方法に係る一の態様では、前記データは、複数の情報単位を含み、前記プリ情報は、所定数の前記情報単位に対応する間隔に対応して前記情報記録媒体に記録されており、前記プリ情報検出工程は、前記情報記録媒体から、前記プリ情報を検出してプリ情報検出信号を生成する。
この態様によれば、前記記録工程によって、生成された前記プリ情報検出信号に基づいて、前記情報記録媒体に前記データを高精度な回転制御の下で記録可能である。
本発明の情報記録方法に係る他の態様では、前記データは、複数の情報単位を含み、前記プリ情報は、前記情報単位中の同期情報が記録される領域に対応する、前記情報記録媒体上の位置に記録されており、前記プリ情報検出工程は、前記情報記録媒体から、前記プリ情報を検出してプリ情報検出信号を生成する。
この態様によれば、前記記録工程によって、生成された前記プリ情報検出信号に基づいて、前記情報記録媒体に前記データを高精度な回転制御の下で記録可能である。
本発明の情報記録方法に係る他の態様では、前記データは、複数の情報単位を含み、前記プリ情報は、前記情報単位の開始位置から所定距離だけ離れた、前記情報記録媒体上の位置に記録されており、前記プリ情報検出工程は、前記情報記録媒体から、前記プリ情報を検出してプリ情報検出信号を生成する。
この態様によれば、前記記録工程によって、生成された前記プリ情報検出信号に基づいて、前記情報記録媒体に前記データを高精度な回転制御の下で記録可能である。
本発明の情報記録方法に係る他の態様では、前記プリ情報検出信号に基づいて、最適記録パワーを設定する最適記録パワー設定工程を更に備える。
この態様によれば、前記記録工程によって、設定された最適記録パワーに基づいて、前記情報記録媒体に前記データを高精度に記録可能である。
本発明の情報記録方法に係る他の態様では、前記プリ情報検出信号に基づいて、前記情報記録媒体上のアドレス情報を取得するアドレス情報取得工程を更に備える。
この態様によれば、前記記録工程によって、取得されたアドレス情報に基づいて、前記情報記録媒体に前記データを高精度に記録可能である。
本発明の情報記録方法に係る他の態様では、前記抽出されたウォブル信号に基づいて、前記情報記録媒体の回転制御を行うサーボ工程を更に備える。
この態様によれば、前記記録工程によって、サーボ工程の高精度な回転制御の下で、前記情報記録媒体に前記データを記録可能である。
ここでは、まず前記ウォブル信号抽出手段によって、前記ウォブル信号が抽出される。
次いで、前記プリ情報検出手段によって前記プリ情報が検出されプリ情報検出信号が発生する。次いで、前記記録用クロック生成手段によって前記抽出されたウォブル信号及び前記プリ情報検出信号に基づいて前記記録用クロック信号が生成される。
本願発明における一態様において、前記記録用クロック生成手段は、前記プリ情報検出信号に基づいて前記ウォブル信号の位相を調整する位相調整手段を含む。
この態様によれば、前記記録用クロック生成手段に含まれる位相調整手段によって、前記プリ情報検出信号に基づいて前記ウォブル信号の位相が調整される。
以上説明したように、本願発明の情報記録装置及び方法では、所定の周波数成分を有するウォブル信号でウォブリングしたデータ記録用トラックを有すると共に、当該ウォブル信号と所定の位相関係を有するようにプリ情報が記録された情報記録媒体にデータを記録する情報記録装置及び方法であって、前記情報記録媒体から検出される検出信号を出力する検出信号出力手段及び工程と、前記出力された検出信号からウォブル信号を抽出するウォブル信号抽出手段及び工程と、前記出力された検出信号からプリ情報を検出してプリ情報検出信号を生成するプリ情報検出手段及び工程と、前記抽出されたウォブル信号に従って前記データを記録する記録手段及び工程と、前記抽出されたウォブル信号に同期したクロック信号を生成するクロック信号生成手段と、を備え、前記クロック信号生成手段は、基本クロック信号を生成する発振部と、前記基本クロック信号を位相調整して前記ウォブル信号に同期した前記クロック信号を生成する位相調整部と、を含み、前記位相調整部は、前記基本クロック信号を前記抽出されたウォブル信号に同期させると共に前記プリ情報検出信号の検出タイミングで前記抽出されたウォブル信号に同期した単調変化信号の値を抽出することにより前記ウォブル信号とプリ情報のずれ量を補正する。従って、隣接するグルーブトラックのウォブル信号によるクロストークによって、所望のグルーブトラックにおける抽出ウォブル信号の時間軸が変動した場合でも、抽出ウォブル信号の、本来有する位相に対する変動量を正確に検出することが可能となり、ひいては、ディスクの回転に正確に同期したクロック信号を生成することができる。
また本願発明の別の一態様において、前記記録用クロック生成手段は、前記ウォブル信号の位相と前記プリ情報検出信号の位相を比較して、位相調整信号を生成する位相比較手段と、前記位相調整信号に基づいて前記ウォブル信号の位相を調整する位相調整手段を含む。
この態様によれば、前記記録用クロック生成手段に含まれる位相比較手段によって、前記ウォブル信号の位相と前記プリ情報検出信号の位相とが比較されて、位相調整信号が生成し、前記記録用クロック生成手段に含まれる位相調整手段によって前記位相調整信号に基づいて前記ウォブル信号の位相が調整される。
本願発明における更に別の一態様において、前記記録用クロック生成手段は、第1クロック信号を生成する第1クロック生成手段と、前記ウォブル信号の位相と前記プリ情報検出信号の位相を比較して、位相調整信号を生成する位相比較手段と、前記位相調整信号に基づいて、前記第1クロック信号の位相を調整する位相調整手段と、を含む。
この態様によれば、前記記録用クロック生成手段に含まれる第1クロック生成手段によって第1クロック信号が生成し、前記記録用クロック生成手段に含まれる位相比較手段によって前記ウォブル信号の位相と前記プリ情報検出信号の位相とが比較されて、位相調整信号が生成する。次いで、前記記録用クロック生成手段に含まれる位相調整手段によって、前記位相調整信号に基づいて、前記第1クロック信号の位相が調整される。
またこの態様においては、前記位相調整手段は、前記第1クロック信号の位相を移相する移相手段とすることができる。
更にこの態様においては、前記第1クロック生成手段は、前記第1クロック信号と前記ウォブル信号との位相差を示す位相差信号を生成する第2位相比較手段と、当該位相差信号に基づいて前記第1クロック信号を発生する発振回路とを備えたPLL回路とすることができる。
本願発明の記録用クロック信号発生方法によれば、所定の周波数を有するウォブル信号でウォブリングされたデータ記録用トラックを有すると共に、当該ウォブル信号とは所定の位相関係を有するようにプリ情報が記録されている情報記録媒体にデータを記録する際に用いられる記録用クロック信号が生成される。
ここでは、まず前記ウォブル信号抽出工程において前記ウォブル信号が抽出される。次いで、前記プリ情報検出工程において、前記プリ情報が検出されてプリ情報検出信号が発生する。次いで、前記記録用クロック生成工程において前記抽出されたウォブル信号及び前記プリ情報検出信号に基づいて前記記録用クロック信号が生成される。
本願発明の一態様において、前記記録用クロック生成工程は、前記プリ情報検出信号に基づいて前記ウォブル信号の位相を調整する位相調整工程を含む。
この態様によれば、前記記録用クロック生成工程に含まれる位相調整工程において、前記プリ情報検出信号に基づいて前記ウォブル信号の位相が調整される。
またこの態様においては、前記位相調整工程は、前記ウォブル信号の位相を移相する移相工程とすることができる。
本願発明の一態様において、前記記録用クロック生成工程は、前記ウォブル信号の位相と前記プリ情報検出信号の位相を比較して、位相調整信号を生成する位相比較工程と、前記位相調整信号に基づいて前記ウォブル信号の位相を調整する位相調整工程を含む。
この態様によれば、前記記録用クロック生成工程に含まれる位相比較工程において、前記ウォブル信号の位相と前記プリ情報検出信号の位相とが比較されて、位相調整信号が生成し、前記記録用クロック生成工程に含まれる位相調整工程において、前記位相調整信号に基づいて前記ウォブル信号の位相が調整される。
本願発明の別の一態様において、前記記録用クロック生成工程は、第1クロック信号を生成する第1クロック生成工程と、前記ウォブル信号の位相と前記プリ情報検出信号の位相を比較して、位相調整信号を生成する位相比較工程と、前記位相調整信号に基づいて、前記第1クロック信号の位相を調整する位相調整工程と、を含む。
この態様によれば、前記記録用クロック生成工程に含まれる第1クロック生成工程において、第1クロック信号が生成し、前記記録用クロック生成工程に含まれる位相比較工程において、前記ウォブル信号の位相と前記プリ情報検出信号の位相とが比較されて、位相調整信号が生成される。次いで、前記記録用クロック生成工程に含まれる位相調整工程において、前記位相調整信号に基づいて、前記第1クロック信号の位相が調整される。
またこの態様においては、前記位相調整工程は、前記第1クロック信号の位相を移相する移相工程とすることができる。
更にこの態様においては、前記第1クロック生成工程は、前記第1クロック信号と前記ウォブル信号との位相差を示す位相差信号を生成する第2位相比較工程と、当該位相差信号に基づいて前記第1クロック信号を発生する発振工程とを備えたPLL回路においてなすことができる。
ここで、プリピット信号はウォブル信号と所定の位相関係をもって記録されている。更に、プリピット信号は、ディスク半径方向の同一直線上において隣接するランドトラック位置には存在しないため、かかるプリピット信号はクロストークの影響を受けることなく検出される。
したがって、隣接するグルーブトラックのウォブル信号によるクロストークによって、所望のグルーブトラックにおける抽出ウォブル信号の時間軸が変動した場合でも、抽出ウォブル信号の位相と、プリピット検出信号の位相を比較することで、抽出ウォブル信号の、本来有する位相に対する変動量を正確に検出することが可能となり、ひいては、ディスクの回転に正確に同期した記録用クロック信号を生成することができる。
又、ノイズ等の影響によりプリピット信号の検出を誤った場合にも、グルーブトラックから抽出した抽出ウォブル信号とプリピット検出信号の位相を比較して位相調整信号を生成する際に、平均化を行うので、プリピット信号の誤検出の影響を低減し、精度の良い位相比較が可能となる。
以上説明したように、本願発明の記録用クロック信号発生装置及び方法では、所定の周波数を有するウォブル信号でウォブリングされたデータ記録用トラックを有すると共に、当該ウォブル信号とは所定の位相関係を有するようにプリ情報が記録されている情報記録媒体にデータを記録する際に用いられる記録用クロック信号を生成するので、隣接するグルーブトラックのウォブル信号によるクロストークによって、所望のグルーブトラックにおける抽出ウォブル信号の時間軸が変動した場合でも、抽出ウォブル信号の、本来有する位相に対する変動量を正確に検出することが可能となり、ひいては、ディスクの回転に正確に同期した記録用クロック信号を生成することができる。
又、ノイズ等の影響によりプリピット信号の検出を誤った場合にも、グルーブトラックから抽出した抽出ウォブル信号とプリピット検出信号の位相を比較して位相調整信号を生成する際に、平均化を行うので、プリピット信号の誤検出の影響を低減し、精度の良い位相比較装置の提供が可能となる。
次に本願発明に好適な実施の形態について図面を用いて説明する。始めに、プリ情報に対応したプリピットを形成すると共に、後述のグルーブトラックを所定の周波数でウォブリングさせた光ディスクとしてのDVD−Rについて図1及び図2を用いて説明する。
まず、図1を用いてDVD−Rの構造について説明する。図1において、DVD−R31はデータ記録層としての色素膜35を備えた1回のみ情報データの書き込みが可能な色素型DVD−Rであり、情報記録トラックとしてのグルーブトラック32と当該グルーブトラック32に再生光又は記録光としてのレーザビーム等の光ビームBを誘導するためのガイドトラックとしてのランドトラック33が形成されている。また、それらを保護するための保護膜37及び記録されたデータを再生する際に光ビームBを反射するための金蒸着膜36を備えている。そして、このランドトラック33にプリ情報に対応するプリピット34が形成されている。このプリピット34はDVD−R31を出荷する前に予め形成されているものである。
更に、当該DVD−R31においては、グルーブトラック32をディスクの回転速度に対応する周波数でウォブリングさせている。このウォブリングされたグルーブトラック32は、上記プリピット34と同様に、DVD−R31を出荷する前に予め形成されるものである。
そして、DVD−R31に記録情報データ(プリ情報以外の本来記録するべき画像情報等の情報データをいう。以下同じ。)を記録する際には、後述の情報記録装置においてこのグルーブトラック32のウォブリング周波数を抽出することによりDVD−R31を所定の回転速度で回転制御すると共に、プリピット34を検出することにより予めプリ情報を取得し、それに基づいて記録光としての光ビームBの最適出力等が設定されると共に、記録情報データを記録すべきDVD−R31上の位置を示すアドレス情報等が取得され、このアドレス情報に基づいて記録情報データが対応する記録位置に記録される。
ここで、記録情報データの記録時には、光ビームBをその中心がグルーブトラック32の中心と一致するように照射してグルーブトラック32上に記録情報データに対応する記録情報ピットを形成することにより、記録情報データを記録する。この時、光スポットSPの大きさは、図1に示すように、その一部がグルーブトラック32だけではなくランドトラック33にも照射されるように設定される。
そして、このランドトラック33に照射された光スポットSPの一部の反射光を用いてプッシュプル法(グルーブトラック32の接線方向、すなわち、DVD−R31の回転方向に平行な分割線により分割された光検出器を用いたプッシュプル法(以下、ラジアルプッシュプル方式という。))により、プリピット34からプリ情報を検出して当該プリ情報が取得されると共にグルーブトラック32からウォブル信号を抽出してディスクの回転に同期した後述する記録用クロック信号が取得される。
次に、上記DVD−R31に予め記録されているプリ情報の記録フォーマットについて、図2を用いて説明する。なお、図2において、上段は記録情報データにおける記録フォーマットを示し、下段の波形は当該記録情報データを記録するグルーブトラック32のウォブリング状態(グルーブトラック32の平面図)を示し、記録情報データとグルーブトラック32のウォブリング状態の間の上向き矢印は、プリピット34が形成される位置を模式的に示すものである。ここで、図2においては、グルーブトラック32のウォブリング状態は、理解の容易のため実際の振幅よりも大きい振幅を用いて示している。なお、記録情報データは当該グルーブトラック32の中心線上に記録される。
図2に示すように、上記DVD−R31に記録される記録情報データは、予め情報単位としてのシンクフレーム毎に分割されている。そして、26のシンクフレームにより一のレコーディングセクタが形成され、更に、16のレコーディングセクタにより一のECC(Error Correcting Code)ブロックが形成される。なお、一のシンクフレームは、上記記録情報データを記録する際の記録フォーマットにより規定されるピット間隔に対応する単位長さ(以下、Tという。)の1488倍(1488T)の長さを有しており、更に、一のシンクフレームの先頭の32Tの長さの部分はシンクフレーム毎の同期をとるための同期情報SYとして用いられる。
一方、上記DVD−R31に記録されるプリ情報は、シンクフレーム毎に記録される。ここで、プリピット34によりDVD−R31にプリ情報が記録される場合は、記録情報における夫々のシンクフレームにおける同期情報SYが記録される領域に隣接するランドトラック33上に、プリ情報における同期信号を示すものとして必ず一のプリピット34が形成されると共に、当該同期情報SY以外の当該シンクフレーム内の前半部分に隣接するランドトラック33上に、記録すべきプリ情報の内容を示すものとして二又は一のプリピット34が形成される(なお、同期情報SY以外の当該シンクフレーム内の前半部分については、記録すべきプリ情報の内容によってはプリピット34が形成されない場合もある。)。
この際、一のレコーディングセクタにおいては、偶数番目のシンクフレーム(以下、EVENフレームという。)のみにプリピット34が形成されてプリ情報が記録される。すなわち、図2において、EVENフレームにプリピット34が形成された場合には(図2において実線上向き矢印で示す。)、それに隣接するODDフレームにはプリピット34は形成されない。一のEVENフレームとそれに続くODDフレームにおける上記各プリピット34(シンクフレームの先頭から夫々プリピットB2、B1及びB0とする。)の有無の関係は、当該一のEVENフレームがレコーディングセクタの先頭であるか否か、及び当該一のEVENフレームとそれに続くODDフレームに記録すべき情報の内容に対応して設定される。
より詳細には、EVENフレームにプリピットを形成する場合には、レコーディングセクタの先頭のシンクフレームにおいては、全てのプリピット34(プリピットB2、B1及びB0)が形成されており、レコーディングセクタの先頭以外のシンクフレームにおいては当該シンクフレームに記録すべきプリ情報が「1」のときにはプリピットB2及びB0が形成されており、記録すべきプリ情報が「0」のときにはプリピットB2のみが形成される。また、ODDフレームにプリピットを形成する場合には、レコーディングセクタの先頭のシンクフレームにおいては、プリピットB2及びB1が形成されており、レコーディングセクタの先頭以外のシンクフレームにおいては上記EVENフレームの場合と同様である。
なお、プリピット34をEVENフレーム/ODDフレームのいずれのシンクフレームに形成するかは、隣接するランドトラック上に先行して形成されたプリピット34の位置に依存して決められる。すなわち、プリピット34は通常EVENフレームに形成されるが、当該EVENフレームにプリピット34を形成した場合に、先行して形成された隣接するランドトラック上のプリピット34とDVD−R31のディスクの径方向において近接する時には、ODDフレームにプリピット34が形成されるのである。このように形成することにより、隣接するランドトラック位置にはプリピット34が存在しなくなるためプリピット34の検出に当たってはクロストークによる影響を低減できる。
一方、グルーブトラック32は、全てのシンクフレームに亘って140KHzの一定ウォブリング周波数f0(一のシンクフレーム内に8波分のウォブル信号が入る周波数)でウォブリングされている。そして、後述の情報記録装置において、この一定のウォブリング周波数f0を抽出することで、スピンドルモータの回転制御のための信号が検出されると共に、記録用クロック信号が生成される。
なお、プリピット34とウォブル信号との位相関係を一定にするため、プリピットB2は、シンクフレームの開始位置からの所定位置(例えば7T分離れた位置)に形成され、プリピットB2から186T(1488T/8)分づつ離れてプリピットB1及びB0が形成される(プリピットの形成方法については特願平8年第310941号に詳細に説明されている。)。
位相比較装置の第1の実施形態次に、情報記録装置に含まれる本願発明に係る位相比較装置の第1の実施の形態について、図3乃至図5に基づいて説明する。なお、以下の説明では、ホストコンピュータから送信されてくる記録情報データを上記DVD−R31に対して記録するための情報記録装置について本発明を適用した実施の形態を説明するものである。
始めに、この実施形態に係る位相比較装置を含む情報記録装置の全体構成及び動作について図3を用いて説明する。なお、以下の実施の形態では、DVD−R31において、当該DVD−R31上のアドレス情報等を含む上記プリピット34及びウォブリングするグルーブトラック32が予め形成されており、記録情報データの記録時には、当該プリピット34を予め検出することによりDVD−R31上のアドレス情報を得、これにより記録情報データを記録するDVD−R31上の記録位置を検出して記録するものとする。
図3に示すように、情報記録装置Sは、ピックアップ1と、スピンドルモータ2と、スピンドルドライバ3と、レーザ駆動回路4と、パワー制御回路5と、エンコーダ6と、再生増幅器8と、デコーダ9と、プロセッサ(CPU)10と、回転制御のための基準クロック信号を発生する基準クロック発生器11と、BPF(Band Pass Filter)12と、プリピット検出手段としてのプリピット信号検出器13と、プリピット信号デコーダ14と、ウォブル信号抽出手段としてのウォブル信号抽出器15と位相比較器16と、回転制御信号を発生する位相比較器17と、位相比較器181、LPF(Low Pass Filter)182、VCO(Voltage Controlled Oscillator)183からなるPLL(Phase Locked Loop)回路18と、移相器19とから構成されている。
これらのうち、BPF12、プリピット信号検出器13、ウォブル信号抽出器15、位相比較器16が本願発明における位相比較装置PDを構成する。さらにPLL回路18、移相器19が加わって、記録用クロック信号発生装置Gを構成する。また、当該情報記録装置には、外部のホストコンピュータから(図示せず)記録すべき情報データがインタフェース7を介して入力される。
次に、全体の動作を説明する。ピックアップ1は、図示しないレーザダイオード、偏光ビームスプリッタ、対物レンズ、光検出器等を含み、記録動作の際は、レーザ駆動回路4から供給される、記録情報データに基づいたレーザ駆動信号に応じて変化する出射パワーで光ビームBをDVD−R31の情報記録面に照射して記録情報データの記録を行うと共に、読取り動作の際は、一定の出射パワー(読取パワー)で光ビームBをDVD−R31に照射して、その反射光を光検出器で受光する様に動作する。
また、ピックアップ1は情報記録面に照射した光ビームのかかる情報記録面からの反射光を光検出器で受光し、これを電気信号に変換して、例えばラジアルプッシュプル方式に基づく演算処理を施すことにより上記プリピット34及びグルーブトラック32のウォブル信号並びに記録情報データ等を担う検出信号SDTを生成し、再生増幅器8に出力する。
再生増幅器8は、ピックアップ1から出力されたプリピット34のプリピット信号及びグルーブトラック32のウォブル信号を担う検出信号SDTを増幅し、プリピット34のプリピット信号及びグルーブトラック32のウォブル信号を含むプリ情報信号Sppを記録用クロック信号発生装置GにおけるBPF12に出力すると共に、読取り動作の際には、既に記録されている記録情報データに対応する増幅信号Spをデコーダ9に出力する。
デコーダ9は、入力された増幅信号Spに対して8/16復調及びデインターリーブを施すことにより当該増幅信号Spをデコードして復調信号SDMを生成し、この復調信号SDMをCPU10に出力する。
一方、BPF12は、再生増幅器8から供給されたプリ情報信号Sppに含まれるノイズ成分を除去してウォブル信号の所定位置(例えば最大振幅位置)でプリピット信号が重畳された複合信号Spc(図5(a))をプリピット信号検出器13並びにウォブル信号抽出器15に出力する。
プリピット信号検出手段であるプリピット信号検出器13は、複合信号Spcを所定の基準値、例えば、図5(a)におけるウォブル信号の最大振幅値より大なるレベルVrpと比較する図示しないコンパレータからなり、複合信号Spcの振幅レベルが上記基準値Vrpよりも大となる期間、すなわち、プリピットの存在する期間、パルス信号であるプリピット検出信号SPDをプリピット信号デコーダ14並びに位相比較器16に出力する。
プリピット信号デコーダ14は、供給されたプリピット検出信号SPDからDVD−R31上のアドレス情報を含むプリ情報を復号してCPU10に出力する。
一方、ウォブル信号抽出手段であるウォブル信号抽出器15は、複合信号Spcを所定の基準値、例えば図5(a)におけるウォブル信号のPP(Peak to Peak)値の中間レベルVr0と比較する図示しないコンパレータを備え、複合信号Spcの振幅レベルを上記基準値Vr0よりも大となる期間H(High)レベルとなるパルス信号(図5(b))を、抽出ウォブル信号SWBとして、位相比較器16、17及び記録用クロック信号発生手段であるPLL回路18に出力する。
PLL回路18は、位相比較器181、LPF182、VCO183並びに分周器184からなり、入力された抽出ウォブル信号SWBの位相に同期したクロック信号SCKを移相器19に出力する。
一方、位相比較器16は、後述する作用によってプリピット検出信号SPDと抽出ウォブル信号SWBとの位相比較を行い、かかるプリピット検出信号SPDと抽出ウォブル信号SWBとが有する所定の位相関係からのずれ、つまり抽出ウォブル信号SWBが本来有するべき位相に対する変動量を示す位相調整信号SCNTを移相器19に出力する。
移相器19は、後述する方法で、PLL回路18から供給されるクロック信号SCKの位相を位相調整信号SCNTに基づいて位相調整し、記録用クロック信号SCRとしてエンコーダ6並びにパワー制御回路5に出力する。
一方、位相比較器17は、入力された抽出ウォブル信号SWBと基準クロック発生器11から供給されるDVD−R31の回転速度の基準周波数成分を担う基準クロック信号SREFとの位相比較を行い、その差信号を回転制御信号としてスピンドルドライバ3を介してスピンドルモータ2に供給する。これによりスピンドルサーボが構成されDVD−R31は、所定の回転数で回転せしめられる。
一方、インタフェース7は、CPU10の制御の下、図示しないホストコンピュータから送信されてくる記録情報データSRRに対して、これを情報記録装置に取り込むためのインタフェース動作を行い、当該記録情報データをエンコーダ6に送る。
エンコーダ6は、移相器19から供給される記録用クロック信号SCRをタイミング信号として、ECC処理、8/16変調処理並びにスクランブル処理を施し、変調信号SREを生成してパワー制御回路5に出力する。
パワー制御回路5は、ディスク上に形成される記録ピットの形状を良好にするべく、クロック信号発生装置Gから出力される記録用クロック信号SCRに基づいて、変調信号SREの波形変換(いわゆる、ライトストラテジ処理)を行い、記録信号SDとしてレーザ駆動回路4に出力する。
レーザ駆動回路4は、ピックアップ1における図示しないレーザダイオードを実際に駆動して、供給された記録信号SDに応じた出射パワーで光ビームBを出射せしめるためのレーザ駆動信号を出力する。
CPU10は、記録動作の際は、プリピット信号デコーダ14から供給されるプリ情報からアドレス情報を取得し、当該アドレス情報に対応するDVD−R31上の位置に記録情報データを記録する様に情報記録装置全体を制御する。また再生動作の際は、CPU10は、復調信号SDMからディスク31に記録されている記録情報データを取得し、かかる記録情報データを外部のホストコンピュータに出力する様に、情報記録装置全体を制御する。
次に、本願発明に係る位相比較器16、並びに移相器19のより具体的な構成について図4及び図5を用いて説明する。
位相比較器16は、抽出ウォブル信号SWBのHレベルの間所定の傾斜角度を有する三角波信号を発生する周期信号発生手段としての三角波発生回路163と、プリピット検出信号SPDの検出タイミングにおける当該発生された三角波信号の振幅レベルを保持する保持手段としてのサンプルホールド回路164とを含んで構成される。
三角波発生回路163は、一端が接地されたキャパシタ45と、当該キャパシタ45の他方の一端に接続され当該キャパシタ45に一定電流を供給する定電流源46と、一端が接地されると共に他方の一端が上記キャパシタ45と定電流源46との接続点aに接続されたスイッチ47とからなる。また、スイッチ47は、バッファ161を介して供給される抽出ウォブル信号SWBに応じて、当該抽出ウォブル信号SWBがHレベルの期間は開状態とされると共に、抽出ウォブル信号SWBがL(Low)レベルの期間は閉状態とされる。
以上の構成により、三角波信号の発生が行われる。すなわち、抽出ウォブル信号SWBがHレベルとなり、スイッチ47が開状態とされると、定電流源46からキャパシタ45に供給される一定の充電電流によって、キャパシタ45の静電容量に応じた傾斜角度で接続点aにおける端子電圧、つまり、キャパシタ45の充電電圧が上昇する(図5(d)のT1)。
一方、抽出ウォブル信号SWBがLレベルとなり、スイッチ47が閉状態とされると、キャパシタ45の充電電圧はスイッチ47を介して一気に放電され、接続点aは接地電圧となる(図5(d)のT2)。この間、定電流源46から供給される充電電流もスイッチ47を通じてキャパシタ45をバイパスされる。そして、再度スイッチ47が開状態とされると、キャパシタ45への充電電流の供給が再開されキャパシタ45の端子電圧は、接地電圧から時間と共に一定の傾斜で上昇する(図5(d)のT3)。このように、三角波発生回路163は、抽出ウォブル信号SWBのHレベルの期間、振幅レベルが一定の割合で変化する三角波信号を発生し、かかる三角波信号をバッファ162を介してサンプルホールド回路164に出力する。
サンプルホールド回路164は、バッファ162を介して供給される三角波信号をプリピット検出信号SPDに応じてキャパシタ49に中継するスイッチ48と、中継された三角波信号の電圧レベルを保持するキャパシタ49とから構成される。
スイッチ48は、プリピット検出信号SPDがHレベルの期間、閉状態となって三角波信号をキャパシタ49に供給すると共に、プリピット検出信号SPDがLレベルの期間は開状態となって三角波信号のキャパシタ49への供給を断とする。
したがって、キャパシタ49は、プリピット検出信号SPDのHレベルの期間に供給された三角波信号の振幅レベルに応じた充電電圧を次のプリピット検出信号SPDのHレベル期間が到来するまでの間保持することになる。このキャパシタ49の保持する充電電圧が位相調整信号SCNTとしてバッファ165を介して移相器19に供給される。
以上の通り、位相比較器16は、抽出ウォブル信号SWBのHレベル/Lレベルの間の遷移状態に応じてキャパシタ45を充放電することによって所定の傾斜角度を有する三角波信号を発生し、当該三角波信号の振幅レベルをプリピット検出信号SPDの検出タイミングでサンプル/ホールドする。
DVD−R31におけるウォブル信号を担うグルーブとプリピット信号を担うプリピットは図2に示される通り所定の位相関係を持って記録されている。したがって、ウォブル信号抽出器15から出力される抽出ウォブル信号SWBとプリピット信号検出器13から出力されるプリピット検出信号SPDの位相が当該所定の位相関係にあるならば、サンプル/ホールドされた信号レベルは、常に所定の電圧レベルである(例えば、図5(d)における三角波信号の中間振幅レベルVMとなる)。
しかしながら、クロストークの影響により、隣接するグルーブトラックからのウォブル信号成分の漏れ込みがあると、かかるウォブル信号成分との干渉によって、当該グルーブトラックからの抽出ウォブル信号SWBに時間軸上での変動が生じることになる。一方、上記の通り、プリピット信号はDVD−R31の径方向には近接して形成されることはないため、隣接するランドトラックからのクロストークの影響は受けないから、複合信号SPCから検出されるプリピット検出信号SPDはクロストークに基づく時間軸上での変動を伴わない正確なタイミング信号と見なすことができる。
したがって、かかるプリピット検出信号SPDによって抽出ウォブル信号SWBから生成した三角波信号をサンプル/ホールドすることにより、上記所定の位相関係からの偏倚量、つまり、ウォブル信号の本来の位相からの変動量を知ることが可能となる。つまり、位相比較器16は、抽出ウォブル信号SWBとプリピット検出信号SPDとの位相差(クロストークによって生じた抽出ウォブル信号の時間軸エラー)に応じた電圧信号(この例では中間振幅レベルVMを中心とした振幅レベル)を出力するように動作する。かかる位相差信号が位相調整信号SCNTとして移相器19に供給されるのである。
一方、移相器19は、PLL回路18から出力されたクロック信号SCKがキャパシタ195を介してベース端子Bに供給されるトランジスタ191と、アノードが当該トランジスタ191のコレクタ端子Cに接続されると共にカソードがキャパシタ196を介して接続点bにおいて抵抗器193に接続される可変容量ダイオード192と、一端が当該トランジスタ191のエミッタ端子Eに接続されると共に他方の一端が接続点bに接続される抵抗器193とを備える。
また、位相比較器16から供給される位相調整信号SCNTは抵抗器194を介して可変容量ダイオード192のカソードに接続される。そして、接続点bから記録用クロック信号SCRがバッファ198を介して出力される構成となっている。なお、複数の抵抗器197はトランジスタ191のバイアス抵抗である。
以上の構成により、PLL回路18から供給されるクロック信号SCKが、移相器19に入力され、かかるクロック信号SCKの位相がサンプルホールド回路164から供給される位相調整信号SCNTに応じて移相される。すなわち、トランジスタ191のベース端子Bに供給されたクロック信号SCKは、コレクタ端子Cから入力クロック信号SCKに対して180度位相反転された反転信号として出力されると共に、エミッタ端子Eからは入力クロック信号とは同相信号として出力される。この際、可変容量ダイオード192並びにキャパシタ196の静電容量に基づくリアクタンス値が抵抗器193の抵抗値に比べ充分小ならば、接続点bからの出力信号、すなわち移相器19から出力される記録用クロック信号SCRは、入力クロック信号SCKに対して略180度移相されることになる。
逆に、リアクタンス値が抵抗値よりも充分大ならば、入力クロック信号SCKと記録用クロック信号SCRは、同相のままである。このように、移相量は可変容量ダイオード192、キャパシタ196並びに抵抗器193によるインピーダンスに応じて変化する。なお、180度以上の移相量を必要とする場合には、移相器19を縦続に接続し多段構成とすればよい。
この実施形態では、位相比較器16から出力される位相差信号を位相調整信号SCNTとして可変容量ダイオード192に供給し、かかる位相調整信号SCNTによって可変容量ダイオード192の端子電圧を変化せしめることにより可変容量ダイオードのリアクタンス値を変化せしめ、クロック信号SCKの移相量を変化させて記録用クロック信号SCRを得ている。つまり、位相調整信号SCNTの信号レベルが、抽出ウォブル信号とプリピット検出信号との位相関係が所定の位相関係であることを示す上記VMからどれくらい偏倚しているのかに応じて、かかる偏倚量を相殺する方向にクロック信号SCKの移相量を調整し、かかる調整の施されたクロック信号を記録用クロック信号としてエンコーダ6、並びにパワー制御回路5に出力するのである。
このように、クロストークの影響を無視できないウォブル信号に基づいて生成されるクロック信号の時間軸上の変動を、クロストークの影響を受けないプリピットを用いて補正するので、ディスクの回転に高い精度で同期した記録用クロック信号を生成することが可能となる。
位相比較装置の第2の実施形態次に、位相比較装置の他の実施形態について、図6乃至図9に基づいて説明する。図6は位相比較装置の第2の実施形態を示すブロック図である。第2の実施形態では、第1の実施形態における位相比較器16の作用をディジタル信号処理によって実現する位相比較器26を採用する。図6に示すように、位相比較器26は、三角波発生回路261と、保持回路262と、演算回路263と、D/A回路264と、タイミング発生回路265とから構成されている。
三角波発生回路261は図7に示すように、抽出ウォブル信号SWBが、LOAD信号として供給され、抽出ウォブル信号SWBが例えばHighレベルの期間のみ、PLL回路18で生成されたクロック信号SCKをカウントする計数回路よりなり、カウントされたクロック信号SCKの数を、nbit(nは2以上の整数)のディジタル値Q1、・・・、Qnとして出力する。このディジタル値Q1、・・・、Qnは第1の実施形態における三角波発生回路163の三角波出力の振幅レベルに相当することになる。
保持回路262は図7に示すように、三角波発生回路261の出力Q1、・・・、Qnを入力とする3個のD型フリップフロップより成り、各入力信号は後述するタイミング発生回路265によって、プリピット検出信号SPDに基づいて生成されるタイミング信号であるタイミング1、タイミング2、タイミング3が指示するタイミングでラッチ(保持)される。
すなわち、保持回路262は、三角波発生回路261の出力Q1、・・・、Qnを、プリピット検出信号SPDより作られた、タイミング1、タイミング2、タイミング3の信号でラッチし、ディジタル値としてそれぞれ計測値1、計測値2、計測値3を出力する。
次に演算回路263は図8に示すように、加算回路と、3で除する除算回路よりなる。すなわち演算回路263は保持回路262から出力される計測値1、計測値2、計測値3を、タイミング発生回路265から供給される演算タイミング1の信号により加算して、加算結果を演算値1として出力し、さらに、同じくタイミング発生回路265から供給される演算タイミング2の信号により、3で除することによって、計測値1、計測値2、および計測値3の平均値であるところの演算値DSCNTをディジタル値として出力する。
D/A回路264は演算回路263から出力される、計測値1、計測値2、および計測値3の平均値であるディジタル化された演算値DSCNTをアナログ値としての位相調整信号SCNTに変換するためのもので
ある。
次にタイミング発生回路265について図9を用いて説明する。タイミング発生回路265は、プリピット検出信号SPDとクロック信号SCKを入力信号とする論理回路からなり、プリピット検出信号SPDに基づいて、上述した保持回路262において三角波発生回路261からの入力信号、すなわち単調増加信号を保持するタイミングを示すタイミング信号1、タイミング信号2、タイミング信号3並びに、演算回路263における演算を行うタイミングを示す演算タイミング信号1、演算タイミング信号2を出力する。また、D/A回路264に対して、変換タイミング信号を出力する。
タイミング信号1、タイミング信号2、及びタイミング信号3は、図2に示した如く、1シンクフレームの期間において、プリピットB2、B1及びB0がそれぞれ存在するべきタイミング(例えばシンクフレームの開始位置から7T、193T、379Tのタイミング)を含む所定の範囲で開く(HIレベルとなる)ゲート信号1、ゲート信号2、及びゲート信号3とプリピット検出信号SPDとの論理演算(論理積)を行うことによって生成される。
より具体的には、図9に示す如く、タイミング信号1はプリピットB2が存在するべきタイミングを含む所定の範囲で開くゲート信号1とプリピット検出信号SPDとの論理積を演算することによって生成され(図9の時刻t1)、タイミング信号2はプリピットB1が存在するべきタイミングを含む所定の範囲で開くゲート信号2とプリピット検出信号SPDとの論理積を演算することによって生成され(図9の時刻t2)、タイミング信号3はプリピットB0が存在するべきタイミングを含む所定の範囲で開くゲート信号3とプリピット検出信号SPDとの論理積を演算することによって生成される(図9の時刻t3)。従って、例えば図9の時刻t4、t5、t6、及び時刻t8に示す如くプリピットB2、B1、B0及びプリピットB1が存在するべきタイミングであっても、プリピット検出信号SPDが発生しなかった場合(各プリピットが実際に記録されていないか、あるいは記録されていてもプリピット検出器13で検出できなかった場合)には、タイミング信号1、2、3、及びタイミング信号2は発生しない。
演算タイミング信号1は、上記タイミング信号1、タイミング信号2、タイミング信号3に応じてラッチされた各計測値を加算演算するタイミングを知らしめるものであって、図9に示す如く、例えばゲート信号3が閉じる(Lレベルとなる)タイミングで発生する。演算タイミング信号2は、上記演算タイミング信号1によって加算演算された結果を除算するタイミングを知らしめるものであって、演算回路263(図8)において演算タイミング信号1の発生タイミングから加算演算するのに要する時間以上に相当する時間経過の後に発生される。そして、この演算タイミング信号2で除算演算された演算値DSCNTは、次に演算タイミング信号2が発生されて新たな除算演算が実行されるまで保持される。また、演算タイミング信号1及び演算タイミング信号2は上述した時刻t4、t5、t6においてプリピット検出信号SPDが存在しない場合にも発生するが、その場合には、計測値1、計測値2、及び計測値3は前の値が保持回路262において保持されるので、結局、演算値DSCNTも保持されることになる。
従って、例えば図9に示す時刻t12において、本来は記録されていないプリピットがノイズ等で誤検出された場合にも、時刻t10、t11で検出したプリピットに基づく計測値との平均化を行って位相調整信号SCNTを生成しているので、時刻t12における誤検出の影響がそのまま次のプリピットの検出時まで残ることがなく、ノイズ等によるプリピットの誤検出が位相調整信号SCNTに与える影響を低減することが可能となる。
上述した図3乃至図9に示す如き、抽出ウォブル信号の位相情報を担う信号とプリピット検出信号との位相比較によって得られる位相調整信号に基づいて記録用クロック信号の位相調整を行う構成であれば、ディスクの回転に高い精度で追従する記録用クロックを生成できるという効果が期待できる。
なお、図3乃至図9に示した実施形態においては、記録媒体としてウォブリングされたグルーブトラック間(ランドトラック)にプリピットを形成したDVD−Rを採用した例について説明したが、情報記録用トラックであるグルーブトラック上にプリピットが形成された記録媒体に対しても本願発明を適用することが可能である。また、上記説明では、三角波発生回路163、261は、いずれも抽出ウォブル信号がHレベルの期間、つまり、抽出ウォブル信号の1周期の半分の期間で三角波を発生する例を述べたが、抽出ウォブル信号の1周期に亘って三角波を発生するよう構成しても良い。