本発明の第一の実施の形態を図1ないし図5に基づいて説明する。本実施の形態は、カード処理装置として決済端末を適用した一例である。図1は決済端末1を正面側から見た状態を概略的に示す外観斜視図、図2は決済端末1を背面側から見た状態を概略的に示す外観斜視図、図3はその縦断側面図である。
決済端末1は、箱型のボトムカバー2と、ボトムカバー2の上側に設けられるトップカバー3とによって構成される筐体としての本体ケーシング4を有している。本体ケーシング4の正面(図1中手前側を正面側とする。)には、水平方向に長いスリット形状を有して本体ケーシング4の内側と外側とを連通し、カードCを挿入/排出するための正面連通口5が設けられている。これが、正面開口部である。一方、図2に示すように、本体ケーシング4の背面には、水平方向に長いスリット形状を有して本体ケーシング4の内側と外側とを連通し、正面連通口5と同様にカードCを挿入/排出するための背面連通口6が設けられている。これが、背面開口部である。なお、背面連通口6は、本体ケーシング4の設置面からの高さが正面連通口5と同じ高さになるように位置付けられている。つまり、詳細については後述するが、本実施の形態の決済端末1は、正面連通口5及び背面連通口6を介した双方向からのカードCの挿入/排出が可能な構成になっている。そして、本実施の形態の決済端末1は、本体ケーシング4の正面連通口5側を顧客側に向け、本体ケーシング4の背面連通口6側をオペレータである店員側に向けて設置されるものである。
ここで、正面連通口5を介して決済端末1に対して挿入/排出されるカードCについて説明する。本実施の形態のカードCは、磁気ストライプS又はICチップTの少なくとも一方を有するクレジットカード又はデビットカード(キャッシュカード)であって、クレジットカードには、クレジット決済用のカード番号や暗証番号等の顧客データが記憶されており、デビットカードには、このカードの所有者である顧客の銀行口座番号や口座開設時に設定された暗証番号等の顧客データが記憶されている。なお、磁気ストライプS及びICチップTの位置を概略的に例示するため、図1には、磁気ストライプS及びICチップTを有するカードCを示している。例示しているICチップTは、接触型のICチップTであり、その表面は、外部接触端子となっている。また、非接触型のICチップ(図示せず)は、カードCに内蔵されている場合が多く、このICチップが有するアンテナ(図示せず)も同様にカードCに内蔵されている。
本体ケーシング4の正面連通口5の近傍には、カードCの挿入方向を案内するイラスト7が備えられている。このイラスト7は、カードCに付されている矢印等のマークが示す方向と同方向に挿入するように、カードCの挿入方向を案内するものである。また、本体ケーシング4の背面連通口6の近傍にも、同様に、カードCの挿入方向を案内するイラスト8が備えられている。イラスト8は、カードCに付されている矢印等のマークが示す方向と反対方向に挿入するようにカードCの挿入方向を案内するものである。このようなイラスト7,8の表示にしたがって、磁気ストライプS又はICチップTの少なくとも一方を有するカードCが挿入された場合には、カードCの磁気ストライプS又はICチップTが同一の位置を通過することになる。
また、本体ケーシング4の正面連通口5の近傍や背面連通口6の近傍には、LED9がそれぞれ設けられている。本実施の形態の決済端末1は、これらのLED9を点灯又は点滅させることにより、決済端末1の動作状態を顧客や店員等のオペレータに対して報知することができるようになっている。
加えて、本体ケーシング4の背面連通口6の近傍には、決済端末1の決済処理モードをクレジット決済処理モード又はデビット決済処理モードに設定するために、オペレータによる操作を受け付けるオペレータスイッチ10が設けられている。なお、オペレータスイッチ10は、本体ケーシング4の背面連通口6を挟む両端部に、二つ設けられている。このようにオペレータスイッチ10を二つ設けたのは、決済端末1の設置場所により左右どちらか一方からのオペレータの操作が困難になる場合があるので、背面連通口6の左右どちらの方向からもオペレータの操作を容易にするためである。
本体ケーシング4の上面には、顧客等のオペレータによる操作を受け付けるキーボード11が設けられている。このキーボード11には、「0」から「9」までの置数キー、エンターキー、キャンセルキー及び各種ファンクションキー等が配列されている。後述するカード決済処理に際しては、「0」から「9」までの置数キーが操作されることにより決済金額が入力される。
また、本体ケーシング4の上側のキーボード11より背面側には、LCD(Liquid Crystal Display)12を有し、フリーストッパ(図示せず)を介して本体ケーシング4に連結された支軸(図示せず)を回動中心として本体ケーシング4に対して回動自在とされているLCDユニット13が設けられている。LCDユニット13は、フリーストッパの機能によって、上面が本体ケーシング4の上面に連続する横伏位置と、本体ケーシング4に対して起立する起立位置との間で任意の位置に位置付けられる。LCDユニット13のLCD12には、後述するカード決済処理に際し、各種の操作ガイダンス等が表示される。
図3に示すように、本体ケーシング4の内部には、カードリーダライタ部14が設けられている。カードリーダライタ部14には、カード通路15が設けられており、正面連通口5と背面連通口6とを直線的に連通する。カード通路15には、カード通路15を間にして対向する2対のローラ対16,17が設けられている。一方のローラ対16は正面連通口5側に設けられており、他方のローラ対17は背面連通口6側に設けられている。ローラ対16,17は、本体ケーシング4内に設けられるモータ18(図4参照)によって、同一方向にカードCを搬送するように回転駆動される。これが、カード搬送機構である。
また、カード通路15には、カードCの磁気ストライプSに記憶されたデータを読み取るための磁気カードリーダ19が設けられており、イラスト7,8の表示にしたがって挿入されるカードCの磁気ストライプSに対応する位置に位置付けられている。この磁気カードリーダ19は、磁気ヘッドを有し、この磁気ヘッドにより、搬送されるカードCの磁気ストライプSからデータを読み取る構造になっている。
さらに、カード通路15には、カードCが有するICチップTに接触して、ICチップTに対するデータの読み取り又は書き込みを行う接触型ICカードリーダ/ライタ20が設けられており、イラスト7,8の表示にしたがって挿入されるカードCのICチップTに対応する位置に位置付けられている。この接触型ICカードリーダ/ライタ20は、接触端子を有し、この接触端子をICチップTが有する外部接触端子に接触させて、データの読み取り又は書き込みを行う構造になっている。
そして、正面連通口の近傍には、カードCが有するICチップとの間で電波を介し、非接触でICチップに対するデータの読み取り又は書き込みを行う非接触型ICカードリーダ/ライタ21が設けられており、正面連通口5より顧客側であって、正面連通口5から挿入されるカードCに対向する位置に位置付けられている。これにより、非接触型ICカードリーダ/ライタ21が、磁気カードリーダ19及び接触型ICカードリーダ/ライタ20に比べ、最初にカードCからデータの読み取りを行うことができる。この非接触型ICカードリーダ/ライタ21は、アンテナ(図示せず)を有し、このアンテナとICチップが有するアンテナとの間で電波を送受信して、非接触でデータの読み取り又は書き込みを行う構造になっている。
また、カード通路15の正面連通口5の近傍、及び、背面連通口6の近傍には、カードCの挿入を検知するための透過型光センサである顧客側センサ22及び店員側センサ23がそれぞれ設けられている。さらに、カード通路15の正面連通口5の近傍には、カード通路15を遮断する遮断位置と、カード通路15を開放する開放位置との間で揺動自在とされた遮断部としてのシャッター24が設けられている。シャッター24は、ソレノイド25(図4参照)に連結されており、ソレノイド25のON/OFF駆動によって、遮断位置又は開放位置のいずれか一方に選択的に位置付けられる。これが、位置付け手段である。
このような決済端末1は、本体ケーシング4のボトムカバー2の内側に、決済端末1が備える各部を駆動制御する各種制御回路を搭載したメインPCB(Printed Circuit Board:プリント配線基板)26及びサブPCB27を備えている。メインPCB26とサブPCB27とは、互いに通信自在に接続されている。
次に、決済端末1が備える各部の電気的接続について図4を参照して説明する。図4は、決済端末1が備える各部の電気的接続を概略的に示すブロック図である。図4に示すように、決済端末1は、マイクロコンピュータ(Microcomputer:以下、マイコンという)28を備えており、このマイコン28によって決済端末1が備える各部を駆動制御する。マイコン28は、各部を集中的に駆動制御するCPU(Central Processing Unit)29に、アドレスバス、データバス等のバスライン30を介して、制御プログラム等の固定的データを予め格納するROM(Read Only Memory)31と、可変的なデータを書き換え自在に記憶してCPU29の作業エリアとして機能するRAM(Random Access Memory)32とが接続されて構成されている。
RAM32には、後述するカード決済処理に際し、決済端末1の決済処理モード(クレジット決済処理モード又はデビット決済処理モード)に応じたカードCの挿入方向と排出方向とを設定した挿入/排出方向設定エリア(図示せず)が確保されている。例えば、クレジット決済処理モードの場合には、カードCの挿入方向が正面連通口5側、カードCの排出方向が背面連通口6側である。一方、デビット決済処理モードの場合には、カードCの挿入方向が正面連通口5側、カードCの排出方向も正面連通口5側である。そして、マイコン28は、RAM32の挿入/排出方向設定エリアの設定に基づいて各部を駆動制御することになる。
ROM31には制御プログラムが格納されており、決済端末1の起動時、ROM31に格納された制御プログラムはRAM32に書き込まれ、これによってマイコン28による各部の駆動制御が可能な状態となる。マイコン28により駆動制御される各部を次に説明する。
オペレータスイッチ10は、スイッチ入力回路33を介してバスライン30に接続され、スイッチ入力回路33の動作によって切り換え位置に応じた信号をマイコン28に入力する。マイコン28は、オペレータスイッチ10の出力信号に応じて、決済端末1の決済処理モードをクレジット決済モード又はデビット決済モードに設定する。
LED9は、点灯制御回路34を介してバスライン30に接続され、マイコン28からの信号が点灯制御回路34に入力されると、点灯制御回路34による駆動制御にしたがって点灯/消灯を行う。
キーボード11は、キーボード入力回路35を介してバスライン30に接続され、キーボード入力回路35の動作によって、店員や顧客等のオペレータにより押下されたキーに応じた信号をマイコン28に入力する。
LCD12は、表示制御回路36を介してバスライン30に接続され、マイコン28からの表示データが表示制御回路36に入力されると、表示制御回路36に駆動されて所定事項を表示する。
磁気カードリーダ19は、磁気カードリーダ制御回路37を介してバスライン30に接続され、磁気カードリーダ制御回路37の動作によってマイコン28に対して読み取った信号を入力する。
接触型ICカードリーダ/ライタ20は、ICカードリーダ/ライタ制御回路38を介してバスライン30に接続され、ICカードリーダ/ライタ制御回路38の動作によってマイコン28との間で信号の入出力を行う。
非接触型ICカードリーダ/ライタ21は、ICカードリーダ/ライタ制御回路39を介してバスライン30に接続され、ICカードリーダ/ライタ制御回路39の動作によってマイコン28との間で信号の入出力を行う。
モータ18は、モータ駆動回路40を介してバスライン30に接続され、マイコン28からの駆動信号に応じたモータ駆動回路40の動作によって正逆回転駆動する。
顧客側センサ22及び店員側センサ23は、センサ入力回路41,42を介してそれぞれバスライン30に接続され、センサ入力回路41,42の動作によってカードCの挿入の有無を示す検出信号をマイコン28に入力する。
ソレノイド25は、バスライン30に接続されており、マイコン28からの駆動信号に応じてON/OFF駆動される。
また、決済端末1には、プリンタ43が内蔵されており、マイコン28によって駆動制御される。このプリンタ43は、プリンタ制御回路44を介してバスライン30に接続され、マイコン28からの印字データがプリンタ制御回路44に入力されると、プリンタ制御回路44に駆動されてクレジット伝票や利用明細票を発行する。
さらに、マイコン28には、中継センタであるCAFIS(Credit And Finance Information Switching System )X等との通信を司る通信I/F45がバスライン30を介して接続されている。これにより、この決済端末1は、このCAFISXを経由して通信回線によりクレジット会社Yのコンピュータや銀行Zのコンピュータに接続されている。
このような構成において、決済端末1に内蔵されたROM31に格納された制御プログラムが、マイコン28に実行させる機能について説明する。なお、本実施の形態においては、従来の決済端末1によって行なわれる処理と同様の処理についてはその説明を省略する。本実施の形態の決済端末1の有する特長的な機能であるカード決済処理の流れを以下に説明する。ここで、図5はカード決済処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
図5に示すように、カード決済処理は、まず、キーボード11の置数キーによる決済金額の入力に待機する(ステップS1のN)。なお、決済端末1がPOS端末等に接続されて使用されている場合には、決済金額はPOS端末から入力される。
キーボード11の置数キーのキー操作による決済金額の入力等があったと判断されると(S1のY)、次に、オペレータスイッチ10の操作により決済端末1の決済処理モード(クレジット決済処理モード又はデビット決済処理モード)が設定されたと判断するまで待機する(S2のN)。このとき、この設定を促すメッセージがLCD12に表示されている。そして、設定は、オペレータがオペレータスイッチ10の操作により顧客が希望する決済処理モードを選択することによって行われるが、これに限るものではなく、例えば、オペレータスイッチ10と同様の機能を有するキーをキーボード11内に設けて、顧客が自ら設定するようにしても良い。
決済端末1の決済処理モードが設定されたと判断されると(S1のY)、次に、カードCの挿入による顧客側センサ22又は店員側センサ23の出力変化に基づき、カードCがカード通路15に挿入されたか否かを判断する(S3のN)。なお、本実施の形態の決済端末1は、本体ケーシング4の正面連通口5側を顧客側に向けて設置されていることから、顧客自らが正面連通口5からカードCを挿入することになる。そして、顧客は、カードCの種類(磁気カード、接触型ICカード、非接触型ICカード等)を判断せずにカードCを挿入する。
ここで、非接触型ICカードリーダ/ライタ21が正面連通口5より顧客側に位置付けられているので、カードCが正面連通口5に挿入されるときに非接触型ICカードリーダ/ライタによりカードCに対するデータの読み取りが行われる。このとき、カードCの挿入による顧客側センサ22又は店員側センサ23の出力変化がないので、カードCがカード通路15に挿入されていないと判断され、(S3のN)、非接触型ICカードリーダ/ライタ21によってカードCのデータが読み取られたと判断するまで待機する(S4のN)。ここに、IC読取判断手段の機能が実現される。
非接触型ICカードリーダ/ライタ21によってカードCのデータが読み出されたと判断された場合には(S4のY)、カード搬送制限処理が実行され(S5)、その後、決済処理が実行される(S6)。カード搬送制限処理は、ソレノイド25をON状態としてシャッター24を遮断位置に位置付ける。ここに、カード搬送制限手段の機能が実現される。これにより、カードCの挿入ができず、カードCが決済端末1内に引き込まれないので、磁気カードリーダ19及び接触型ICカードリーダ/ライタ20によるカードCに対するデータの読み取りが行われず、カード決済処理時間を短縮することができ、さらに、ローラ対16,17によるカードCに対する傷や汚れ等の発生や磁気ストライプSの劣化を防止することができる。そして、シャッター24が、挿入されるカードCを非接触型ICカードリーダ/ライタ21に対向する位置に位置付けるので、正確にICチップに対するデータの読み取り又は書き込みを行うことができる。
次に、顧客により正面連通口5からカードCが挿入されたことによる顧客側センサ22の出力変化に基づき、カードCがカード通路15に挿入されたと判断された場合には(S3のY)、引き込み処理を実行する(S7)。引き込み処理は、RAM32の挿入/排出方向設定エリアの設定に基づき、ローラ対16,17の回転によって正面側から背面側(図3中左から右方向)へとカードCが搬送されるようにモータ18を正回転させる。カードCは、接触型ICカードリーダ/ライタ20の読取位置(接触型ICカードリーダ/ライタ20の接触端子がカードCのICチップTの外部接触端子に接触可能な位置)まで搬送される。
なお、顧客側センサ22の出力変化に基づいて、カード通路15に挿入されたカードCの後端が顧客側センサ22を通過したことを判断すると、ソレノイド25をON状態としてシャッター24を遮断位置に位置付ける。これにより、カード通路15にカードCが既に存在する状態で、別のカードCが挿入されてしまうことを防止することができる。
磁気カードリーダ19によってカードCのデータが読み取られたか否かを判断する(S8)。そして、磁気カードリーダ19によってカードCのデータが読み取られた場合には(S8のY)、カードCにICチップTが有るか否かを判断する(S9)。ここで、ICチップTが有るか否かの判断は、カードCから読み取られ、ICチップTの有無を示すデータに基づいて判断される。そして、カードCにICチップTが無い場合には(S9のN)、決済処理が実行される(S6)。
次に、磁気カードリーダ19によってカードCのデータが読み取られなかった場合(S8のN)、及び、カードCにICチップTが有る場合(S9のY)には、接触型ICカードリーダ/ライタ20の読取位置にカードCが位置付けられると、接触型ICカードリーダ/ライタ20によってカードCのデータが読み取られたか否かを判断する(S10)。そして、接触型ICカードリーダ/ライタ20によってカードCのデータが読み取られなかった場合には(S10のN)、エラーメッセージをLCD12に表示する等のエラー処理を行う(S11)。接触型ICカードリーダ/ライタ20によってカードCのデータが読み取られた場合には(S10のY)、決済処理が実行される(S6)。ここで、決済処理は、ステップS2で設定された決済処理モード(クレジット決済モード又はデビット決済処理モード)を実行する。
ステップS2で決済処理モードがクレジット決済処理モードに設定された場合には、決済処理として、カードCから読み取ったデータ(クレジット決済用のカード番号等)とステップS1で入力された決済金額とに基づいてクレジットデータを作成し、作成したクレジットデータをクレジット会社Yへ送信する。クレジット会社Yでは、送信されたクレジットデータに対して信用チェックや金額承認等の信用照会処理を行った後に、その照会結果データを決済端末1に送信する。照会結果データを受信した決済端末1は、この照会結果データにしたがってクレジット伝票を発行する(S6)。
このようにして決済処理が終了すると、最後に排出処理が実行される(S12)。排出処理は、ソレノイド25をOFF状態としてシャッター24を開放位置に位置付けるとともに、RAM32の挿入/排出方向設定エリアの設定に基づきローラ対16,17を正回転させ、ICカードリーダ/ライタ20の読取位置で停止していたカードCを本体ケーシング4の外へ背面連通口6を介して排出する。これにより、店員は、背面連通口6を介して本体ケーシング4の外へと排出発行されたカードCを容易に受け取ることができる。
店員は、発行されたクレジット伝票に顧客のサインを記入させた後、クレジット伝票に記載された顧客のサインと、決済端末1から排出されたカードCに記載されているサインとを見比べて、一致していることを確認した後に、カードC及びクレジット伝票の控を顧客に渡す。
つまり、本実施の形態の決済端末1によれば、クレジット決済に際して顧客から店員にカードCを渡し、このカードCを店員が決済端末1に挿入するといった煩雑な手順を踏むことなく、クレジット決済を行うことができる。また、クレジット決済に際して、顧客側へカードCが排出されることもないので、クレジット決済完了時点で直ちにサインの見比べ作業を行うことができる。
また、ステップS2で決済処理モードがデビット決済処理モードに設定された場合には、決済処理として、LCD12に表示された案内に従い顧客によるキーボード11の置数キーのキー操作によって入力された暗証番号とカードCから読み取ったデータ(デビット決済用の銀行口座番号等)とステップS1で入力された決済金額とに基づいてデビットデータを作成し、作成したデビットデータを銀行Zへ送信する。銀行Zでは、送信されたデビットデータに基づいて該当する口座の残高から決済金額を差し引いた後、その引落とし結果データを決済端末1に送信する。引落とし結果データを受信した決済端末1は、この引落とし結果データに従って利用明細票を発行する(S6)。
このようにして決済処理が終了すると、最後に排出処理が実行される(S12)。排出処理は、ソレノイド25をOFF状態としてシャッター24を開放位置に位置付けるとともに、RAM32の挿入/排出方向設定エリアの設定に基づきローラ対16,17を逆回転させ、カード通路15内の所定位置で停止していたカードCを本体ケーシング4の外へ正面連通口5を介して排出する。これにより、顧客は、正面連通口5を介して本体ケーシング4の外へと排出発行されたカードCを容易に受け取ることができる。
つまり、本実施の形態の決済端末1によれば、デビット決済に際して店員に対してカードCを渡し、このカードCを店員が決済端末1に挿入するといった煩雑な手順を踏むことなく、デビット決済を行うことができる。また、本実施の形態の決済端末1によれば、店員が不必要に長くカードCに触れることがないので、不正防止の観点からの信頼性の向上を図ることができる。
したがって、本実施の形態の決済端末1によれば、正面連通口5又は背面連通口6から挿入される全ての種類のカードC(例えば、磁気カード、接触型ICカード及び非接触型ICカード等)に対するデータの読み出し又は書き込みが可能となるので、店員や顧客等のオペレータは、カードCの種類を意識することなくカードCを正面連通口5又は背面連通口6に挿入して、カードCに対するデータの読み取り又は書き込みを行うことができる。
なお、本実施の形態においては、図5に示すように、非接触型ICカードリーダ/ライタ21によりカードCのデータが読み取られたと判断された場合に(S4のY)、カード搬送制限処理として、シャッター24を遮断位置に位置付けているが(S5)、別の実施の形態として、例えば、ローラ対16,17が回転駆動しないように制御しても良い。これにより、カードCの挿入ができず、カードCが決済端末1内に引き込まれないので、磁気カードリーダ19及び接触型ICカードリーダ/ライタ20によるカードCに対するデータの読み取りが行われず、カード決済処理時間を短縮することができ、ローラ対16,17によるカードCに対する傷や汚れ等の発生や磁気ストライプSの劣化を防止することができ、さらに、ローラ対16,17を駆動させる電力の消費を抑えることができる。
本発明の参考例を図6に基づいて説明する。本参考例は、カード処理装置として決済端末1を適用した一例である。本参考例の基本的構成は、前記各実施の形態と同じであり、前記各実施の形態との相違点は、カード決済処理の流れである。なお、本参考例においては、従来の決済端末1によって行なわれる処理と同様の処理についてはその説明を省略する。
本参考例の決済端末1の有する特長的な機能であるカード決済処理の流れを以下に説明する。図6はカード決済処理の流れを概略的に示すフローチャートである。なお、第一の実施の形態と同一部分は同一符号で示し、説明も省略する。
図6に示すように、カード決済処理は、まず、キーボード11の置数キーによる決済金額の入力に待機する(ステップS1のN)。なお、決済端末1がPOS端末等に接続されて使用されている場合には、決済金額はPOS端末から入力される。
キーボード11の置数キーのキー操作による決済金額の入力等があったと判断されると(S1のY)、次に、オペレータスイッチ10の操作により決済端末1の決済処理モード(クレジット決済処理モード又はデビット決済処理モード)が設定されたと判断するまで待機する(S2のN)。このとき、この設定を促すメッセージがLCD12に表示されている。そして、設定は、オペレータがオペレータスイッチ10の操作により顧客が希望する決済処理モードを選択することによって行われるが、これに限るものではなく、例えば、オペレータスイッチ10と同様の機能を有するキーをキーボード11内に設けて、顧客が自ら設定するようにしても良い。
決済端末1の決済処理モードが設定されたと判断されると(S1のY)、次に、カードCの挿入による顧客側センサ22又は店員側センサ23の出力変化に基づき、カードCがカード通路15に挿入されたと判断するまで待機する(S20のN)。なお、本参考例の決済端末1は、本体ケーシング4の正面連通口5側を顧客側に向けて設置されていることから、顧客自らが正面連通口5からカードCを挿入することになる。そして、顧客は、カードCの種類(磁気カード、接触型ICカード、非接触型ICカード等)を判断せずにカードCを挿入する。顧客により正面連通口5からカードCが挿入されたことによる顧客側センサ22の出力変化に基づき、カードCがカード通路15に挿入されたと判断された場合には(S20のY)、引き込み処理を実行する(S7)。
ここで、カードCが非接触カードである場合には、カードCをカード通路15内に引き込む必要はないが、顧客はカードCが引き込まれないと異常が発生したと認識してしまうので、本参考例においては、引き込み処理で、カードCを必ず読取位置(カードCを目視できない位置)まで引き込むようにしている。これにより、店員や顧客等のオペレータは、カードCを目視できなくなり、カードCのデータが読み取られていると判断するので、装置が正常に動作していると認識することができる。
引き込み処理は、RAM32の挿入/排出方向設定エリアの設定に基づき、ローラ対16,17の回転によって正面側から背面側(図3中左から右方向)へとカードCが搬送されるようにモータ18を回転駆動させる(以降、カードCを正面側から背面側へ搬送するモータ18の回転を正回転とする)。カードCは、接触型ICカードリーダ/ライタ20の読取位置(接触型ICカードリーダ/ライタ20の接触端子がカードCのICチップTの外部接触端子に接触可能な位置)まで搬送される。
なお、顧客側センサ22の出力変化に基づいて、カード通路15に挿入されたカードCの後端が顧客側センサ22を通過したことを判断すると、ソレノイド25をON状態としてシャッター24を遮断位置に位置付ける。これにより、カード通路15にカードCが既に存在する状態で、別のカードCが挿入されてしまうことを防止することができる。
そして、非接触型ICカードリーダ/ライタ21によってカードCのデータが読み取られたか否かを判断する(S21)。ここで、非接触型ICカードリーダ/ライタ21によってカードCのデータが読み取られた場合には(S21のY)、接触型ICカードリーダ/ライタ20によるデータの読み取りが行われないように制御して、決済処理が実行される(S6)。これにより、接触型ICカードリーダ/ライタ20によるカードCに対するデータの読み取りが行われないので、カード決済処理時間を短縮することができる。
非接触型ICカードリーダ/ライタ21によってカードCのデータが読み取られなかった場合には(S21のN)、磁気カードリーダ19によってカードCのデータが読み取られたか否かを判断する(S8)。そして、磁気カードリーダ19によってカードCのデータが読み取られた場合には(S8のY)、カードCにICチップTが有るか否かを判断する(S9)。ここで、ICチップTが有るか否かの判断は、カードCから読み取られ、ICチップTの有無を示すデータに基づいて判断される。そして、カードCにICチップTが無い場合には(S9のN)、決済処理が実行される(S6)。
次に、磁気カードリーダ19によってカードCのデータが読み取られなかった場合(S8のN)、及び、カードCにICチップTが有る場合(S9のY)には、接触型ICカードリーダ/ライタ20の読取位置にカードCが位置付けられると、接触型ICカードリーダ/ライタ20によってカードCのデータが読み取られたか否かを判断する(S10)。そして、接触型ICカードリーダ/ライタ20によってカードCのデータが読み取られなかった場合には(S10のN)、エラーメッセージをLCD12に表示する等のエラー処理を行う(S11)。接触型ICカードリーダ/ライタ20によってカードCのデータが読み取られた場合には(S10のY)、決済処理が実行される(S6)。ここで、決済処理は、ステップS2で設定された決済処理モード(クレジット決済モード又はデビット決済処理モード)を実行する。
ステップS2で決済処理モードがクレジット決済処理モードに設定された場合には、決済処理として、カードCから読み取ったデータ(クレジット決済用のカード番号等)とステップS1で入力された決済金額とに基づいてクレジットデータを作成し、作成したクレジットデータをクレジット会社Yへ送信する。クレジット会社Yでは、送信されたクレジットデータに対して信用チェックや金額承認等の信用照会処理を行った後に、その照会結果データを決済端末1に送信する。照会結果データを受信した決済端末1は、この照会結果データにしたがってクレジット伝票を発行する(S6)。
このようにして決済処理が終了すると、最後に排出処理が実行される(S12)。排出処理は、ソレノイド25をOFF状態としてシャッター24を開放位置に位置付けるとともに、RAM32の挿入/排出方向設定エリアの設定に基づきローラ対16,17を正回転させ、ICカードリーダ/ライタ20の読取位置で停止していたカードCを本体ケーシング4の外へ背面連通口6を介して排出する。これにより、店員は、背面連通口6を介して本体ケーシング4の外へと排出発行されたカードCを容易に受け取ることができる。
店員は、発行されたクレジット伝票に顧客のサインを記入させた後、クレジット伝票に記載された顧客のサインと、決済端末1から排出されたカードCに記載されているサインとを見比べて、一致していることを確認した後に、カードC及びクレジット伝票の控を顧客に渡す。
つまり、本参考例の決済端末1によれば、クレジット決済に際して顧客から店員にカードCを渡し、このカードCを店員が決済端末1に挿入するといった煩雑な手順を踏むことなく、クレジット決済を行うことができる。また、クレジット決済に際して、顧客側へカードCが排出されることもないので、クレジット決済完了時点で直ちにサインの見比べ作業を行うことができる。
また、ステップS2で決済処理モードがデビット決済処理モードに設定された場合には、決済処理として、LCD12に表示された案内にしたがい顧客によるキーボード11の置数キーのキー操作によって入力された暗証番号とカードCから読み取ったデータ(デビット決済用の銀行口座番号等)とステップS1で入力された決済金額とに基づいてデビットデータを作成し、作成したデビットデータを銀行Zへ送信する。銀行Zでは、送信されたデビットデータに基づいて該当する口座の残高から決済金額を差し引いた後、その引落とし結果データを決済端末1に送信する。引落とし結果データを受信した決済端末1は、この引落とし結果データにしたがって利用明細票を発行する(S6)。
このようにして決済処理が終了すると、最後に排出処理が実行される(S12)。排出処理は、ソレノイド25をOFF状態としてシャッター24を開放位置に位置付けるとともに、RAM32の挿入/排出方向設定エリアの設定に基づきローラ対16,17を逆回転させ、カード通路15内の所定位置で停止していたカードCを本体ケーシング4の外へ正面連通口5を介して排出する。これにより、顧客は、正面連通口5を介して本体ケーシング4の外へと排出発行されたカードCを容易に受け取ることができる。
つまり、本参考例の決済端末1によれば、デビット決済に際して店員に対してカードCを渡し、このカードCを店員が決済端末1に挿入するといった煩雑な手順を踏むことなく、デビット決済を行うことができる。また、本参考例の決済端末1によれば、店員が不必要に長くカードCに触れることがないので、不正防止の観点からの信頼性の向上を図ることができる。
したがって、本参考例の決済端末1によれば、正面連通口5又は背面連通口6から挿入される全ての種類のカードC(例えば、磁気カード、接触型ICカード及び非接触型ICカード等)に対するデータの読み出し又は書き込みが可能となるので、店員や顧客等のオペレータは、カードCの種類を意識することなくカードCを正面連通口5又は背面連通口6に挿入して、カードCに対するデータの読み取り又は書き込みを行うことができる。
なお、各実施の形態においては、非接触型ICカードリーダ/ライタ21を正面連通口5より顧客側であって、正面連通口5から挿入されるカードCに対向する位置に位置付けているが、これに限るものではなく、例えば、非接触型ICカードリーダ/ライタ21、磁気カードリーダ19及び接触型ICカードリーダ/ライタ20をこの順番でカード通路15に沿って位置付けても良い。また、図7に示すように、非接触型ICカードリーダ/ライタ21を本体ケーシング4の一部として着脱自在に設けられているユニット46内に設け、正面連通口5から挿入されるカードCに対向する位置に位置付けても良い。これにより、非接触型ICカードリーダ/ライタ21は、本体ケーシング4に対して着脱自在になり、非接触型ICカードリーダ/ライタ21が設けられていない決済端末1に、省スペースで、非接触型ICカードリーダ/ライタ21を後付けすることができ、非接触型ICカードリーダ/ライタ21を必要としないときには、取り外すことができる。
また、各実施の形態においては、RAM32の挿入/排出方向設定エリアの設定を、クレジット決済処理モードの場合には、カードCの挿入方向が正面連通口5側、カードCの排出方向が背面連通口6側であり、デビット決済処理モードの場合には、カードCの挿入方向が正面連通口5側、カードCの排出方向も正面連通口5側であるとしたが、これに限るものではない。例えば、RAM32の挿入/排出方向設定エリアの設定を、クレジット決済処理モードの場合、カードCの排出方向を背面連通口6とし、デビット決済処理モードの場合、カードCの排出方向を正面連通口5側としても良い。このように排出方向のみを設定することにより、操作に不慣れな顧客については、店員がカードCを一旦預かった後、店員が背面連通口6からカードCを挿入することができる。なお、この場合には、顧客側センサ22の出力変化又は店員側センサ23の出力変化に基づき、カード通路15内にカードCを引き込む方向にローラ対16,17を回転させるような引き込み処理が実行される。
また、各実施の形態においては、カード決済処理で(図5及び図6参照)、ICチップTの有無を判断しているが(S9)、これに限るものではなく、例えば、ICチップTの有無を判断しなくても良い。この場合には、接触型ICカードリーダ/ライタ20によってカードCのICチップTに対する読み取り動作を開始してから、タイムアウト時間と称される一定時間が経過しても応答がないときに、決済処理が実行される(S6)。
そして、各実施の形態においては、決済金額を決済端末1によって入力しているが、これに限るものではなく、例えば、決済端末1をPOS端末にケーブルを介して接続し、このPOS端末から入力しても良い。これにより、決済端末1の汎用性を向上させることができる。ここで、このPOS端末が、販売データ処理手段であり、商品の販売処理に関する決済金額データを決済端末1に送信する。そして、POS端末がプリンタを備えている場合には、決済処理に関して発行されるクレジット伝票や利用明細書等をPOS端末のプリンタから発行しても良い。さらに、POS端末のキーボード内のキーには、オペレータスイッチ10と同じ機能を持たせても良い。
上記説明の実施の形態から、非接触型ICカードリーダ/ライタ、磁気カードリーダ及び接触型ICカードリーダ/ライタは、この順番で正面開口部からカード通路に沿って位置付けられていることにより、この順番でカードからデータの読み取りを行うことができる。
また、上記説明の実施の形態から、非接触型ICカードリーダ/ライタは、正面開口部より手前側であって、正面開口部に挿入されるカードに対向する位置に位置付けられていることにより、非接触型ICカードリーダ/ライタは、磁気カードリーダ及び接触型ICカードリーダ/ライタに比べ、最初にカードからデータの読み取りを行うことができる。
また、上記説明の実施の形態から、非接触型ICカードリーダ/ライタは、筐体に対して着脱自在に設けられていることにより、非接触型ICカードリーダ/ライタが設けられていないカード処理装置に、省スペースで、非接触型ICカードリーダ/ライタを後付けすることができ、非接触型ICカードリーダ/ライタを必要としないときには、取り外すことができる。
また、上記説明の実施の形態から、筐体の背面に設けられ、カード通路に通じる背面開口部を備えることにより、背面開口部からカードを挿入/排出することが可能になり、正面及び背面のどちら側からもカードを挿入/排出することができる。
また、上記説明の実施の形態から、非接触型ICカードリーダ/ライタによりカードのICチップのデータが読み取られたか否かを判断するIC読取判断手段を備え、IC読取判断手段によって、非接触型ICカードリーダ/ライタによりカードのICチップのデータが読み取られたと判断された場合には、カード搬送機構によりカードをカード通路内に引き込めないようにするカード搬送制限手段とを備えることにより、カードがカード処理装置内に引き込まれないので、磁気カードリーダ及び接触型ICカードリーダ/ライタによるカードに対するデータの読み取りが行われず、カード決済処理時間を短縮することができ、さらに、カード搬送機構によるカードに対する傷や汚れ等の発生や磁気ストライプの劣化を防止することができる。
また、上記発明の実施の形態から、カード搬送制限手段は、カード搬送機構が駆動しないようにすることにより、カード搬送機構を駆動させる余計な電力の消費を抑えることができる。
また、上記発明の実施の形態から、カード搬送制限手段は、カード通路を遮断する遮断位置とカード通路を開放する開放位置との間で揺動自在にされている遮断部と、遮断部を遮断位置と開放位置とに選択的に位置付ける位置付け手段とを備え、IC読取判断手段によって、非接触型ICカードリーダ/ライタによりカードのICチップのデータが読み取られたと判断された場合には、位置付け手段により遮断部を遮断位置に位置付けることにより、遮断部が、正面開口部から挿入されるカードCを非接触型ICカードリーダ/ライタに対向する位置に位置付けるので、正確にICチップに対するデータの読み取り又は書き込みを行うことができる。
最後に、上記発明の実施の形態から、各実施の形態のカード処理装置と、カード処理装置に対し、商品の販売処理に関する決済金額データを送信する販売データ処理手段とを備えるカード決済システムが実現できる。したがって、カード処理装置の汎用性を向上させることができる。
15…カード通路、19…磁気カードリーダ、20…接触型ICカードリーダ/ライタ、21…非接触型ICカードリーダ/ライタ、C…カード、S…磁気ストライプ、T…ICチップ