JP4016252B2 - インクジェット式プリンタのヘッド駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット式プリンタのヘッドにてインク滴を吐出するためのノズルに対応して設けられた圧電素子のグランド側を所定のバイアス電位に保持するようにしたインクジェット式プリンタのヘッド駆動の技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、コンピュータの出力装置として、数色のインクを記録ヘッドから吐出するタイプのインクジェット式カラープリンタが普及してきており、コンピュータ等が処理した画像を多色多階調で印刷するために広く用いられている。
【0003】
例えば、インク吐出のための駆動素子として圧電素子を用いたインクジェット式プリンタでは、印刷ヘッドの複数のノズルに対応してそれぞれ設けられた複数個の圧電素子を選択的に駆動することにより、各圧電素子の動圧に基づいてノズルからインク滴を吐出させ、印刷用紙にインク滴を付着させることにより、印刷用紙にドットを形成して、印刷を行なうようにしている。
【0004】
ここで、各圧電素子は、インク滴を吐出するためのノズルに対応して設けられており、印刷ヘッド内に実装されたドライバIC(ヘッド駆動回路)から供給される駆動信号により駆動され、インク滴を吐出させるようになっている。
【0005】
ところで、このような圧電素子は、非駆動時(すなわち印刷を行なわないとき)には、充電により蓄積された電荷が、絶縁抵抗により放電して、その電圧が低下してしまうことにより、インクの吐出に影響を与えることがある。
【0006】
このため、本出願人による特許第3097155号において、圧電素子に対して、駆動タイミングとは異なるタイミングで、充電電圧を印加して、充電電圧を維持するようにしたヘッドの駆動装置及び駆動方法が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このようなインクジェット式プリンタのヘッド駆動においては、各圧電素子に印加される駆動信号は、直流信号であって、非駆動時に高い電圧に設定され、駆動時には電圧が低くなるように構成されている。このため、圧電素子に印加される電圧が比較的高くなってしまうために前述した放電による電圧降下も大きく、電力損失が大きい。
【0008】
また、印刷品質の向上のために、印刷ドットの高密度化を実現しようとすると、互いに隣接する圧電素子の電極間のギャップが狭くなるが、駆動される圧電素子と非駆動の圧電素子とが隣接している場合に、これらの圧電素子の電極間電圧が高くなると、これらの圧電素子の電極間で放電が発生することがある。
【0009】
さらに、高密度化により個々の圧電素子が小さくなって、その耐圧が低くなるため、より高密度化が進んだ場合には、駆動信号の最大電圧が圧電素子の耐圧を越えることになり、圧電素子が正常に動作しなくなるおそれがある。
【0010】
このため、圧電素子の電極間に、絶縁材料を充填する等の絶縁処理が必要になってしまう。
【0011】
これに対して、各圧電素子のグランド側を駆動信号の中間電位に保持するようにするヘッド駆動方式もある。このようなヘッド駆動方式によれば、上述した高密度化の際の圧電素子電極間の放電を防止することができるが、駆動信号の変動に対応して、電圧を変動させると共に、充電及び放電の切換えが必要であることから、双方向の可変電源が必要となる。
【0012】
さらに、このような電源は、必要なバイアス電圧を、プリンタ本体の制御部における所謂ロジック電源を利用するため、電圧が最適でなかったり、あるいは駆動電圧から生成するようになっており、回路構成が複雑となり、コストが高くなってしまう。
【0013】
他方、ヘッド駆動回路と同様の回路を用いて、D/Aコンバータによりバイアス電圧を生成し、アンプで増幅して、圧電素子のグランド側の電極に印加するようにする方法もある。
【0014】
しかしながら、この場合、ヘッド駆動回路と別に、バイアス電圧生成用のICが必要になるため、部品コストが増大し、実装スペースが倍増してしまう。さらに、バイアス電圧生成用のICに対して例えば10ビット分の信号線を接続する必要があるので、配線及び接続スペースが必要になってしまう。
【0015】
さらに、バイアス電圧生成用のICが直接に圧電素子に接続されていることから、圧電素子の放電電流がIC内に流れ込むことになり、IC内のアンプの発熱量が増大してしまう。
【0016】
また、バイアス電圧生成用のICから直接に圧電素子にバイアス電圧が印加されるようになっているので、所定のバイアス電圧を得るためには、高速で動作するアンプが必要になり、アンプのコストが高くなってしまう。
【0017】
そこで、本発明の課題は、簡単で小型の構成により、低コストで、各圧電素子の所定のバイアス電位を容易に保持し得るようにした、インクジェット式プリンタのヘッド駆動装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明では、各圧電素子のグランド側の電極に所定のバイアス電圧を印加するためのD/Aコンバータ及びアンプを備える。
【0019】
即ち、請求項記載のインクジェット式プリンタのヘッド駆動装置では、複数のノズルに対応してそれぞれ設けられたインクに圧力を加える圧電素子を、当該圧電素子の一方の電極に所定の印字タイミングで選択的に、ラッチ回路,D/Aコンバータ及びアンプから成るヘッド駆動回路からの駆動信号を供給することにより駆動し、対応するノズルからインク滴を吐出させて記録を行なう、インクジェット式プリンタのヘッド駆動装置であって、各圧電素子のグランド側の電極にバイアス電圧を印加するバイアス電源回路を備えており、このバイアス電源回路は、出力するバイアス電圧に対応するデータ信号をラッチするラッチ回路と、ラッチ回路に入力されたデータ信号をアナログ信号に変換するD/Aコンバータと、アナログ信号を増幅することにより前記バイアス電圧を出力するアンプから構成され、前記バイアス電源回路は、前記駆動信号の中間電位にほぼ等しいバイアス電圧に対応するデータ信号が前記ラッチ回路に入力されることにより、印刷時には、前記中間電位にほぼ等しいバイアス電圧を前記他方の電極に印加させることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、バイアス電源回路が、入力されるデータ信号に基づいて所定のバイアス電圧を生成して、このバイアス電圧を圧電素子のグランド側の電極に印加することにより、圧電素子のグランド側がバイアス電圧に保持されることになる。
【0021】
従って、圧電素子の双方の電極間に印加される電圧が低減されることから、消費電力が低減されると共に、圧電素子の自然放電による電圧降下が小さく、電力損失が低減される。
【0022】
また、圧電素子に印加される電圧が比較的低くなることによって、駆動される圧電素子と非駆動の圧電素子との間の電圧差による放電の発生も低減されると共に、高密度化によって圧電素子が小型化して耐圧が低くなったとしても、対応することができるので、圧電素子の電極間の絶縁処理を行なうことなく、ヘッドのより一層の高密度化が可能になる。
【0023】
この構成によれば、圧電素子の双方の電極間に印加される電圧がほぼ0になることから、圧電素子の自然放電による電圧降下がさらに小さく、電力損失がより低減される。
【0024】
請求項記載のヘッド駆動装置においては、前記ヘッド駆動回路と、前記バイアス電源回路とは、同一のIC内に構成されていることを特徴とする。
請求項記載のヘッド駆動装置においては、前記ヘッド駆動回路のラッチ回路と、前記バイアス電源回路のラッチ回路とには、共通の接続端子からデータ信号を入力可能になっていることを特徴とする。
【0025】
この場合、バイアス電源回路を構成するラッチ回路,D/Aコンバータ及びアンプが、ヘッド駆動回路を構成するIC内に一体に構成されているので、ヘッド駆動回路及びバイアス電源回路が一つのICパッケージとして構成されることになり、実装スペースが低減され得ると共に、配線及び接続スペースも低減され得る。
【0026】
請求項記載のヘッド駆動装置においては、上記バイアス電源回路から圧電素子のグランド側の電極の間に、制限抵抗が接続されており、この制限抵抗と圧電素子のグランド側の電極の間からグランドに対して大容量のコンデンサが接続されていることを特徴とする。
【0027】
この構成によれば、バイアス電源回路からのバイアス電圧が制限抵抗を介してコンデンサに充電され、コンデンサの充電電圧がバイアス電圧になる。そして、このコンデンサの充電電圧が圧電素子のグランド側の電極に印加され、圧電素子のグランド側がバイアス電圧に保持されることになる。
【0028】
この場合、圧電素子にはコンデンサの充電電圧が印加されるので、バイアス電源回路のアンプは高速である必要はなく、低速で小容量のアンプを使用することができ、アンプのコストが低減され得る。
【0029】
また、圧電素子の充放電時には、バイアス電源回路側には制限抵抗があり、充放電電流はコンデンサに流れることになる。従って、充放電電流がバイアス電源回路のアンプには殆ど流れないので、アンプの発熱量が大幅に少なくなる。
【0030】
請求項記載のヘッド駆動装置においては、上記バイアス電源回路が、対応するラッチ回路に入力されるデータ信号及びクロックパルスにより、制限抵抗を介してコンデンサを所定のバイアス電圧に充電し、このバイアス電圧が圧電素子のグランド側の電極に印加されることを特徴とする。
【0031】
この構成によれば、所定のバイアス電圧に対応するデータ信号が、クロックパルスによりラッチ回路を介してD/Aコンバータに与えられることによって、D/Aコンバータから所定のバイアス電圧が出力され、アンプにより増幅された後、制限抵抗を介してコンデンサに印加され、コンデンサに充電されたバイアス電圧が圧電素子のグランド側の電極に印加されることになる。
【0032】
請求項記載のヘッド駆動装置においては、上記バイアス電源回路が、対応するラッチ回路に入力されるデータ信号及びクロックパルスにより、制限抵抗を介してコンデンサを放電させて、圧電素子のグランド側の電極をゼロにすることを特徴とする。
【0033】
この構成によれば、コンデンサの放電時には、電圧0に対応するデータ信号が、クロックパルスによりラッチ回路を介してD/Aコンバータに与えられることによって、D/Aコンバータから0電圧が出力され、アンプにより増幅された後、制限抵抗を介してコンデンサに印加される。これにより、コンデンサが制限抵抗を介してグランド側に放電されるので、大きな放電電流がバイアス電源回路側には流れず、バイアス電源回路のアンプの発熱が低減されることになる。
【0034】
請求項記載のヘッド駆動装置においては、バイアス電源回路に入力されるデータ信号が、ヘッド駆動回路に入力されるデータ信号と同じビット数であることを特徴とする。
【0035】
この構成によれば、ヘッド駆動回路及びバイアス電源回路には、同じビット数のデータ信号が入力されればよいので、ヘッド駆動回路及びバイアス電源回路を構成するICの共通接続端子から、データ信号が入力され得ることになる。従って、ヘッド駆動回路及びバイアス電源回路に対して、それぞれ別個にデータ信号を入力する必要がなく、配線及び接続スペースが低減され得る。
【0036】
請求項記載のヘッド駆動装置においては、バイアス電源回路に入力されるデータ信号が、ヘッド駆動回路に入力されるデータ信号より少ないビット数であることを特徴とする。
【0037】
この構成によれば、バイアス電源回路のバイアス電圧の設定精度が、ヘッド駆動回路の駆動信号に比較して、低くてもよいことから、より少ないビット数のデータ信号によりバイアス電圧が設定され得ることになる。従って、バイアス電源回路を構成するD/Cコンバータがより小型で低価格のもので済むことになる。
【0038】
【発明の実施の形態】
図面を参照して、本発明の実施の形態に係るヘッド駆動装置について説明する。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0039】
図1は、本発明によるヘッド駆動装置の一実施形態の構成を示している。図1において、ヘッド駆動装置10は、インクジェットプリンタの複数のノズルに対応してそれぞれ設けられた圧電素子11と、各圧電素子11の一方の電極11aに対して駆動信号を供給するためのヘッド駆動回路12と、このヘッド駆動回路12と各圧電素子11との間に設けられた電流増幅回路13及びスイッチ回路14と、さらに圧電素子11の他方のグランド側の電極11bに対して所定のバイアス電圧を印加するバイアス電源回路20,制限抵抗21及びコンデンサ22と、から構成されている。
【0040】
ここで、図1においては、圧電素子11は、実際にはインクジェット式プリンタ10のプリンタヘッドにて、各色毎にそれぞれ一つのノズル列が設けられており、各ノズル列に対してそれぞれ圧電素子が備えられている。
【0041】
圧電素子11は、例えばピエゾ素子であって、双方の電極11a,11b間に印加される電圧により変位するように構成されている。
【0042】
そして、圧電素子11は、非吐出時中間電位Vc付近に充電されており、ヘッド駆動回路12からの駆動信号に基づいて充放電する際に対応するノズル内のインクに圧力を加えることにより、このノズルからインク滴を吐出するように構成されている。
【0043】
ヘッド駆動回路12は、ドライバIC30として構成されており、インクジェットプリンタのヘッドへの駆動信号COMを発生させるものであり、例えばプリンタ本体内に配置されている。
【0044】
この場合、ヘッド駆動回路12は、ラッチ回路12a,D/Aコンバータ12b及びアンプ12cから構成されている。
【0045】
ラッチ回路12aは、図示の場合、インクジェット式プリンタのプリンタ本体の制御部からの10ビットのデータ信号DATA0〜9が入力されると共に、クロック端子CLK1に、クロック信号が入力されるようになっている。
【0046】
また、D/Aコンバータ12bは、ラッチ回路12aを介して入力されるデータ信号DATA0〜9に基づいて、D/A変換により駆動電圧に対応するアナログ信号を出力するようになっている。
【0047】
さらに、アンプ12cは、D/Aコンバータ12bからのアナログ信号を増幅して、所定の駆動電圧波形を生成するようになっている。
【0048】
電流増幅回路13は、二つのトランジスタ13a,13bから構成されている。
【0049】
このうち、第一のトランジスタ13aは、コレクタが定電圧電源に接続され、ベースがヘッド駆動回路12の一方の出力に接続されると共に、エミッタがスイッチ回路14の入力側に接続されている。これにより、ヘッド駆動回路12からの信号に基づいて、駆動波形の立ち上り時に、充電電流をスイッチ回路14を介して圧電素子11に供給する。
【0050】
また、第二のトランジスタ13bは、エミッタがスイッチ回路14の入力側に接続され、ベースがヘッド駆動回路12の第二の出力に接続されると共に、コレクタがグランドにアース接続されている。これにより、ヘッド駆動回路12からの信号に基づいて、駆動波形の立ち下り時に、圧電素子11をスイッチ回路14を介して放電させる。
【0051】
スイッチ回路14は、制御信号が入力されることにより、対応する圧電素子11の駆動タイミングでオンされ、駆動信号COMを圧電素子11に出力するようになっている。
【0052】
このスイッチ回路14は、実際には、各圧電素子11をそれぞれオンオフするための所謂トランスミッションゲートとして構成されている。
【0053】
上記バイアス電源回路20は、ヘッド駆動回路12と同様に、ラッチ回路23,D/Aコンバータ24及びアンプ25から構成されている。
【0054】
ラッチ回路23は、図示の場合、インクジェット式プリンタのプリンタ本体の制御部からの10ビットのデータ信号DATA0〜9が入力されると共に、クロック端子CLK2に、クロック信号が入力されるようになっている。
【0055】
また、D/Aコンバータ24は、ラッチ回路23を介して入力されるデータ信号DATA0〜9に基づいて、D/A変換によりバイアス電圧に対応するアナログ電圧を出力するようになっている。
【0056】
さらに、アンプ25は、D/Aコンバータ24からのアナログ電圧を増幅して、所定のバイアス電圧を生成するようになっている。
【0057】
尚、上記ラッチ回路23,D/Aコンバータ24及びアンプ25から成るバイアス電源回路20は、ヘッド駆動回路12を構成するドライバIC30内に収容され、一つのICパッケージとして構成されている。
【0058】
このようにして、バイアス電源回路20は、圧電素子11のグランド側の電極11bに対して、所定のバイアス電圧Vb、好ましくは図2に示すように、ヘッド駆動回路12からの駆動信号COMの中間電位Vcにほぼ等しい電圧を出力するようになっている。
【0059】
上記制限抵抗21は、所謂カップリング抵抗であって、バイアス電源回路20からのバイアス電圧Vbをコンデンサ22に充電させると共に、コンデンサ22の放電時には、コンデンサ22からの放電電流を制限するものである。
【0060】
尚、制限抵抗21は、コンデンサ22の充電を円滑に行なわせると共に、放電電電流を有効に制限し得るように、数100Ω(例えば200Ω程度)に選定されている。
【0061】
上記コンデンサ22は、電解コンデンサであって、その充電電圧すなわちバイアス電圧Vbを各圧電素子11のグランド側の電極11bに印加するように、一端が圧電素子11のグランド側の共通電極11bに接続されていると共に、他端がグランドにアース接続されている。
【0062】
尚、コンデンサ22の容量は、各圧電素子11に対して安定したバイアス電圧Vbを供給することができるように、すべての圧電素子11の総静電容量(数μF、例えば1.4μF程度)に対して十分大きな容量、即ち数1000μF(例えば3300μF程度)に選定されている。
【0063】
本発明実施形態によるヘッド駆動装置10は、以上のように構成されており、以下のように動作する。
【0064】
先ず、インクジェット式プリンタの電源投入時の動作を、図3のフローチャートに従って説明する。
【0065】
図3のフローチャートにおいて、インクジェット式プリンタの電源がオンされると、プリンタ本体の制御部は、ステップA1にて、温度を測定して、ステップA2にて、この温度に対応した中間電圧Vc1を計算し決定する。
【0066】
その後、プリンタ本体の制御部は、ステップA3にて、プリンタヘッドのすべてのノズルをオンし、ステップA4にて、クロック端子CLK1にクロック信号を入力しながら、データ信号DATA0〜9によるデジタル値を徐々に大きくし、ヘッド駆動回路12のD/Aコンバータを制御する。
【0067】
これにより、駆動信号COMにより電流増幅回路13の第一のトランジスタ13aからスイッチ回路14を介して圧電素子11の一方の電極11aに電流が流れて充電することにより、圧電素子11の一方の電極11aは、図4(A)にて符号Aで示すように、中間電位Vc1まで上昇することになる。
【0068】
続いて、プリンタ本体の制御部は、ステップA5にて、上記中間電位Vc1のデジタル値をDATA0〜9に出力し、ステップA6にて、バイアス電源回路20のラッチ回路23のCLK2端子に一つクロックパルスを出力して、バイアス電源回路20のD/Aコンバータ24を制御する。
【0069】
これにより、バイアス電源回路20からバイアス電圧Vb(=Vc1)が制限抵抗21を介してコンデンサ22に印加され、コンデンサ22が充電され、コンデンサ20の充電電圧が制限抵抗21及びコンデンサ22の時定数に基づいて徐々に中間電位Vc1まで上昇することになり、図4(B)にて符号Bで示すように、圧電素子11のグランド側の電極11bの電位も徐々に上昇して、中間電位Vc1に達する。従って、圧電素子の双方の電極11a,11b間の電位差はほぼ0になる。以上で、電源投入時の動作が完了する。
【0070】
尚、圧電素子11のグランド側の電極11bには、コンデンサ22に充電されたバイアス電圧Vbが印加されることから、バイアス電源回路20のアンプ25は高速である必要はなく、また小電流出力のものでよい。
【0071】
次に、印刷開始時の動作について、図5のフローチャートに従って説明する。図5のフローチャートにおいて、インクジェット式プリンタの印刷開始が指示されると、プリンタ本体の制御部は、ステップB1にて、温度を測定して、ステップB2にて、この温度に対応した中間電圧Vc2を計算し決定する。
【0072】
その後、プリンタ本体の制御部は、ステップB3にて、プリンタヘッドのすべてのノズルをオンし、ステップB4にて、データ信号DATA0〜9によるデジタル値を徐々に変化させ、且つクロック端子CLK1にクロック信号を入力することにより、ヘッド駆動回路12のD/Aコンバータを制御する。
【0073】
これにより、Vc1<Vc2ならば駆動信号COMにより電流増幅回路13の第一のトランジスタ13aからスイッチ回路14を介して圧電素子11の一方の電極11aに電流が流れて充電し、圧電素子11の一方の電極11aは、図4(A)にて符号Cで示すように、中間電位Vc2に至る。Vc2<Vc1ならば電流増幅回路13の第二のトランジスタ13bを通して圧電素子11の一方の電極11aより電流を放電し、これにより、圧電素子11が駆動信号COMに基づいて作動して、インク滴を吐出する。
【0074】
続いて、プリンタ本体の制御部は、ステップB5にて、上記中間電位Vc2のデジタル値をDATA0〜9に出力し、ステップB6にて、バイアス電源回路20のラッチ回路23のCLK2端子に一つクロックパルスを出力して、バイアス電源回路20のD/Aコンバータ24を制御する。
【0075】
これにより、バイアス電源回路20からバイアス電圧Vb(=Vc2)が制限抵抗21を介してコンデンサ22に印加され、コンデンサ22が充電され、コンデンサ20の充電電圧が制限抵抗21及びコンデンサ22の時定数に基づいて徐々に中間電位Vc2まで変化することになり、図4(B)にて符号Dで示すように、圧電素子11のグランド側の電極11bの電位も徐々に変化して、中間電位Vc2に達する。従って、圧電素子の双方の電極11a,11b間の電位差はほぼ0になる。以上で、印刷開始時の動作が完了する。
【0076】
この状態から印刷が行なわれると、駆動信号COMの変動に基づいて、駆動信号COMの電圧が上昇している間は、電流増幅回路13の第一のトランジスタ13aを介して圧電素子11の一方の電極11aの充電が行なわれ、また駆動信号COMの電圧が下降している間は、電流増幅回路13の第二のトランジスタ13bを介して圧電素子11の一方の電極11aの放電が行なわれる。これにより、圧電素子11が駆動信号COMに基づいて作動して、インク滴を吐出する。
【0077】
次に、電源オフ時の動作について、図6のフローチャートに従って説明する。図6のフローチャートにおいて、インクジェット式プリンタの電源オフが指示されると、プリンタ本体の制御部は、ステップC1にて、プリンタヘッドのすべてのノズルをオンし、ステップC2にて、データ信号DATA0〜9をゼロに設定して、ステップC3にて、バイアス電源回路20のラッチ回路23のクロック端子CLK2に対して一つのクロックパルスを与える。
【0078】
これにより、バイアス電源回路20のD/Aコンバータ24は、バイアス電圧Vb=0に対応するアナログ信号を出力するので、アンプ25からバイアス電圧Vb(=0)が出力される。
【0079】
従って、コンデンサ22は放電されることになるが、その際制限抵抗21を通して、コンデンサ22からの放電電流は、バイアス電源回路20からグランド側に徐々に放電される。これに伴って、圧電素子11のグランド側の電極11bも、図4(B)にて符号Eで示すように、0電位に下がることになる。
【0080】
続いて、ステップC4にて、前もって設定されたコンデンサ22の放電に必要な所定時間の経過後に、ステップC5にて、プリンタ本体の制御部は、データ信号DATA0〜9によるデジタル値を徐々に小さくし、且つクロック端子CLK1にクロック信号を入力することにより、ヘッド駆動回路12のD/Aコンバータを制御する。
【0081】
これにより、駆動信号COMにより、圧電素子11の一方の電極11aからスイッチ回路14及び電流増幅回路13の第二のトランジスタ13bを介してグランドに電流が流れることにより、圧電素子11の一方の電極11aは、図4(A)にて符号Eで示すように、0電位まで下降することになる。
【0082】
従って、圧電素子の双方の電極11a,11bが共に0電位まで下降することにより、電源オフ時の動作が完了し、その後電源がオフとなる。
【0083】
以上で、電源オフ時の動作が完了する。
【0084】
このようにして、各圧電素子11のグランド側の電極11bの電位は、バイアス電源回路20によるコンデンサ22の充電電圧により、バイアス電圧Vb、好ましくは中間電位Vcに保持されるので、圧電素子11の双方の電極11a,11b間の電位差がほぼ0に保持されると共に、駆動される圧電素子と非駆動の圧電素子が隣接する場合、これらの圧電素子11の一方の電極11a間の電圧差もほぼ0に保持されることになる。
【0085】
従って、圧電素子11の自己放電による電圧降下が小さく、電力損失が低減されることになる。
【0086】
また、駆動される圧電素子11と非駆動の圧電素子11との間の電位差が低くなるので、このような圧電素子11が隣接する場合であっても、圧電素子11間の放電の発生が低減されると共に、高密度化によって個々の圧電素子11の耐圧が低くなったとしても、圧電素子11間の絶縁処理を行なう必要がないので、ヘッドの高密度化を容易に実現することが可能になる。
【0087】
さらに、バイアス電源回路20は、ヘッド駆動回路12と共に、一つのドライバIC30として一体に構成されているので、実装スペースが少なくて済み、またバイアス電源回路20及びヘッド駆動回路12に入力されるデータ信号が共に10ビットの共通のデータ信号であることから、配線及び接続スペースも少なくて済む。
【0088】
また、バイアス電源回路20のバイアス電圧が制限抵抗21を介してコンデンサ22に印加されることにより、バイアス電源回路20のアンプ25が高速アンプである必要はなく、低コストで小容量のアンプを使用することができる。
【0089】
さらに、コンデンサ22の放電電流が制限抵抗21により制限されて、バイアス電源回路20には大きな電流が流れないことから、バイアス電源回路20のアンプ25の発熱が大幅に低減され得ることになる。
【0090】
上述した実施形態においては、圧電素子11として例えばピエゾ素子が使用されているが、これに限らず、他の圧電素子、例えば電歪素子,磁歪素子等を使用してもよい。
【0091】
また、上述した実施形態においては、バイアス電源回路20は、ヘッド駆動回路12からの駆動信号COMの中間電圧Vcに等しいバイアス電圧Vbを出力するようになっているが、これに限らず、中間電圧Vcからずれたバイアス電圧Vbを出力するようにしてもよい。
【0092】
この場合、圧電素子11の双方の電極11a,11b間の電圧はほぼ0にはならないが、バイアス電圧のない場合と比較して、電位差が小さくなるので、圧電素子における消費電力が低減されると共に、圧電素子の自然放電による電圧降下が小さくなり、電力損失が低減される。また、駆動される圧電素子と非駆動の圧電素子との間の電圧差による放電の発生も低減され、高密度化によって圧電素子が小型化して耐圧が低くなったとしても、対応することができるので、圧電素子の電極間の絶縁処理を行なうことなく、ヘッドのより一層の高密度化が可能になる。
【0093】
さらに、上述した実施形態においては、バイアス電源回路20には、ヘッド駆動回路12と同じ10ビットのデータ信号DATA0〜9が入力されるようになっているが、これに限らず、これより小さいビット数のデータ信号が使用されても良い。
【0094】
この場合、バイアス電圧は、駆動信号のほぼ中間電圧付近まででよく、また駆動信号に比較して、精度が低くてもよいので、例えば最大値を半分とし、且つ分解能を半分にすることにより、8ビットのデータ信号でもよい。従って、8ビットのラッチ回路23及びD/Aコンバータ24を使用することにより、コストが低減され得ることになる。
【0095】
また、図3のA3、図5のB3、図6のC1で全ノズルをONにしているが、全ノズルをOFFにしても良い。この場合、電流増幅回路13の二つのトランジスタ13a,13bには殆ど電流が流れずに同様の結果を得る。更に、ノズルのON/OFFを規定しなくても良い。但し、この場合、充放電過程で流れる電流が決まらないという問題がある。
【0096】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、バイアス電源回路を備えたインクジェット式プリンタのヘッド駆動装置において、バイアス電源回路を構成するラッチ回路,D/Aコンバータ及びアンプが、ヘッド駆動回路を構成するIC内に一体に構成されているので、ヘッド駆動回路及びバイアス電源回路が一つのICパッケージとして構成されることになり、実装スペースが低減され得ると共に、配線及び接続スペースも低減され得る。
【0097】
さらに、上記バイアス電源回路から圧電素子のグランド側の電極の間に、制限抵抗が接続されており、この制限抵抗と圧電素子のグランド側の電極の間からグランドに対して大容量のコンデンサが接続されている場合には、バイアス電源回路からのバイアス電圧が制限抵抗を介してコンデンサに充電され、このコンデンサの充電電圧が圧電素子のグランド側の電極に印加され、圧電素子のグランド側がバイアス電圧に保持されることになる。
【0098】
従って、圧電素子にはコンデンサの充電電圧が印加されるので、バイアス電源回路のアンプは高速である必要はなく、低速で小容量のアンプを使用することができ、アンプのコストが低減され得る。また、コンデンサの放電時には、バイアス電源回路側には制限抵抗があることから、放電電流がバイアス電源回路のアンプには殆ど流れないので、アンプの発熱量が大幅に少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるヘッド駆動装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1のヘッド駆動装置におけるヘッド駆動回路の駆動信号COMとバイアス電圧Vbとの関係を示すタイムチャートである。
【図3】図1のヘッド駆動装置における電源投入時の動作を示すフローチャートである。
【図4】図1のヘッド駆動装置における(A)ヘッド駆動回路の駆動信号及び(B)バイアス電源回路のバイアス電圧を示すタイムチャートである。
【図5】図1のヘッド駆動装置における印刷開始時の動作を示すフローチャートである。
【図6】図1のヘッド駆動装置における電源オフ時の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10 ヘッド駆動装置
11 圧電素子
11a 一方の電極
11b グランド側の電極
12 ヘッド駆動回路
12a ラッチ回路
12b D/Aコンバータ
12c アンプ
13 電流増幅回路
14 スイッチ回路
20 バイアス電源回路
21 制限抵抗
22 コンデンサ
23 ラッチ回路
24 D/Aコンバータ
25 アンプ
30 ドライバIC
Claims (8)
- 複数のノズルに対応してそれぞれ設けられたインクに圧力を加える圧電素子を、当該圧電素子の一方の電極に所定の印字タイミングで選択的に、ラッチ回路,D/Aコンバータ及びアンプから成るヘッド駆動回路からの駆動信号を供給することにより駆動し、対応するノズルからインク滴を吐出させて記録を行なう、インクジェット式プリンタのヘッド駆動装置であって、
各圧電素子のグランド側の電極にバイアス電圧を印加するバイアス電源回路を備えており、
このバイアス電源回路は、出力するバイアス電圧に対応するデータ信号をラッチするラッチ回路と、ラッチ回路に入力されたデータ信号をアナログ信号に変換するD/Aコンバータと、アナログ信号を増幅することにより前記バイアス電圧を出力するアンプから構成され、
前記バイアス電源回路は、前記駆動信号の中間電位にほぼ等しいバイアス電圧に対応するデータ信号が前記ラッチ回路に入力されることにより、印刷時には、前記中間電位にほぼ等しいバイアス電圧を前記他方の電極に印加させることを特徴とする、インクジェット式プリンタのヘッド駆動装置。 - 前記ヘッド駆動回路と、前記バイアス電源回路とは、同一のIC内に構成されていることを特徴とする、請求項1に記載のインクジェット式プリンタのヘッド駆動装置。
- 前記ヘッド駆動回路のラッチ回路と、前記バイアス電源回路のラッチ回路とには、共通の接続端子からデータ信号を入力可能になっていることを特徴とする、請求項2に記載のインクジェット式プリンタのヘッド駆動装置。
- 上記バイアス電源回路から圧電素子のグランド側の電極の間に、制限抵抗が接続されており、
この制限抵抗と圧電素子のグランド側の電極の間からグランドに対して大容量のコンデンサが接続されていることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載のインクジェット式プリンタのヘッド駆動装置。 - 上記バイアス電源回路が、対応するラッチ回路に入力されるデータ信号及びクロックパルスにより、制限抵抗を介してコンデンサを所定のバイアス電圧に充電し、このバイアス電圧が圧電素子のグランド側の電極に印加されることを特徴とする、請求項4に記載のインクジェット式プリンタのヘッド駆動装置。
- 上記バイアス電源回路が、対応するラッチ回路に入力されるデータ信号及びクロックパルスにより、制限抵抗を介してコンデンサを放電させて、圧電素子のグランド側の電極をゼロにすることを特徴とする、請求項4または5に記載のインクジェット式プリンタのヘッド駆動装置。
- バイアス電源回路に入力されるデータ信号が、ヘッド駆動回路に入力されるデータ信号と同じビット数であることを特徴とする、請求項1から6の何れかに記載のインクジェット式プリンタのヘッド駆動装置。
- バイアス電源回路に入力されるデータ信号が、ヘッド駆動回路に入力されるデータ信号より少ないビット数であることを特徴とする、請求項1から7の何れかに記載のインクジェット式プリンタのヘッド駆動装置。
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