JP4015394B2 - X線撮像法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はX線撮像法に係わり、物体の内部を非破壊に検査する撮像方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線が試料を透過する際、X線の振幅及び位相が変化する。一般的に位相の変化は吸収の変化に比べて顕著であるため、この変化を捉えることにより、高感度に物体内部を観測することができる。この位相変化を利用した位相コントラスト型X線撮像装置としては、特開平4−348262号公報に記載されたように、ボンゼ・ハート型干渉計(たとえば、Appl. Phys. Lett. 6,155 (1965))を利用した撮像装置が知られる。これによれば、振幅の変化を利用した従来のX線撮像装置では観察することができなかった生体軟部組織等を造影剤の付与をしないでも観察することができる。
【0003】
図1を参照して、ボンゼ・ハート型干渉計を用いた位相変化の検出を説明する。この干渉計は、等間隔で平行に配置されたスプリッタ1、ミラー2およびアナライザー3を持った結晶ブロック4から構成される。入射X線5は、スプリッタ1でラウエケースのX線回折により第1ビーム6aと第2ビーム7aに分割される。ミラー2に入射した第1ビーム6aは第3ビーム6bと第4ビーム6cに、第2ビーム7aは第5ビーム7bと第6ビーム7cに再び分割される。スプリッタ1、ミラー2およびアナライザー3の間隔は等しいので、第4ビーム6cと第5ビーム7bはアナライザー3上の同じ点に入射し、回折により結合され第1干渉ビーム8a及び第2干渉ビーム8bを形成する。
【0004】
なお、図1右上部に示すx,yおよびzは後述する説明のために参考に付した座標軸である。x軸はスプリッタ1、ミラー2およびアナライザー3の面と平行で水平方向の座標軸、y軸はスプリッタ1、ミラー2およびアナライザー3の面を垂直に貫通する方向の座標軸、z軸はスプリッタ1、ミラー2およびアナライザー3の面と平行で垂直方向の座標軸である。以下、本願の明細書に於いて座標軸に言及するときは、この座標軸によるものとする。
【0005】
上記干渉計において、分割されたビームの一方の光路、例えばビーム6cに被写体を設置すると、被写体の位相分布に応じてビームの位相がシフトし、他方のビーム(7b)と結合させると干渉により位相の変化が干渉ビーム(8a,8b)の強度変化となって現れる。したがって、この強度変化から、被写体の位相分布情報を得ることができる。
【0006】
しかし、被写体による位相変化が緩やかな場合、1枚の干渉ビームの強度変化分布像(干渉像)だけから精度の良い被写体の位相分布像を求めることは難しい。そこで、分割されたビームの一方に位相シフタを設置し、以下に示すような方法を用いて位相分布像を求めている。
【0007】
第1の方法は、図2(a)に示したようなくさび形の位相シフタを用いる方法である。このくさび形の位相シフタを分割されたビームの一方の光路に設置すると、干渉像に間隔の狭い縞が形成され、試料をビーム光路に設置しないときは図3(a)のようなモアレ縞の干渉像になり、設置したときは図3(b)のような干渉像になる。したがって、この縞の位置の変化から被写体による位相変化を求めることができる。尚、モアレ縞の間隔をa、縞の変位をf、としたとき、位相変化は2πf/aで与えられる。
【0008】
第2の方法は、J. Opt. Soc. Am., 156,72(1982) に記載されているような縞走査法を用いる方法である。この方法では、図2(a)に示したようなくさび形や図2(b)に示したような平板の位相シフタを分割されたビームの一方の光路に設置する。そして、位相シフタを平行移動或いは回転させて、分割されたビーム間の位相差を0から2π/Mづつ変化させてM枚の干渉像を測定した後、これら複数の干渉像から計算で位相分布像を求める。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、位相精度の良い位相分布像を求めるためには、位相シフタの設置により形成された縞の位置変化から位相変化を求める方法や、分割されたビーム間の位相差を変化させて測定した複数の干渉像から位相変化を求める縞走査法を用いる必要があった。しかし、上記いずれに方法においても、分割されたビームの一方の光路に位相シフタを新たに設けなければならないという問題があった。また、位相シフタの設置は、吸収による強度の減少やVisibilityの低下を招くといった問題もあった。
【0010】
また、位相シフタの設置により形成された縞の位置変化から位相変化を求める方法において、得られる被写体の位相分布像の空間分解は形成される縞の間隔によって決定される。このため、できるだけ開き角の大きなくさび型の位相シフタを使用することが望ましい。しかし、その一方で角度をあまり大きくしすぎると、モアレ縞の間隔がX線検出器の空間分解能を越えてしまい縞を検出できなくなったり、分割されたビーム間の光路差が入射X線の空間コヒーレンス長を越えて干渉縞が消えてしまうといった問題が生じる。このため、くさびの角度が調整できることが望ましいが、通常、使用するくさび型位相シフタは一体のアクリル等で構成されているために、このような調整はできなかった。このため、いろんな角度のくさび型位相シフタを用意して選択して使用する必要があるという問題があった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、位相シフタを用いることなく精度の良い位相像を取得できる位相コントラスト型X線撮像法を提供することにある。
【0012】
スプリッタ1により二つに分割された入射X線ビームをミラー2を介してアナライザー3により結合させる際に、アナライザー3をy軸回りにわずかに回転させる。その結果、アナライザー3の回折格子面をわずかに平行移動させたことになり、くさび形の位相シフタを挿入したと同様なモアレ縞を形成させる。回転角度を制御することにより、任意の間隔のモアレ縞を発生させることができる。したがって、位相シフタを設置することなく干渉像に細かい縞を発生させることができ、被写体の設置によって生じるこの縞の位置変動から、被写体の位相分布像を求めることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
アナライザー3をスプリッタ1及びミラー2に対してy軸周りに微小角だけ回転させることによってモアレ縞を発生させることができることを図4を参照して具体的に説明する。図4(a)はアナライザー3をy軸周りに回転させたときの回折格子面の移動を模式的に示す図である。初期状態では実線9の状態にあった間隔dの回折格子面がアナライザー3をy軸周りに回転させたとき、破線10で示すように回転する。図4(b)に回折格子面の移動に伴うX線の重なりの移動を説明するために、図4(a)のアナライザーの断面Dの拡大図を示す。図に示すように、平行移動dxにより、X線はアナライザー上のA点ではなく、B点で重なり合うようになり、位相は2πdx/dだけ変化する。したがって、dxの変化に伴い干渉光の強度Iは図4(c)に示すようにdを周期として正弦的に変化することになる。ところで、上記y軸周りの回転は、dxにdx(z)=zとなるようなz方向の分布を与える。この結果、図4(d)に示すように、干渉光の強度はz方向に正弦的に変化し、図4(e)に示すように、モアレ縞を形成することができる。したがって、干渉させられるX線の一方に被写体をおけば、この被写体の設置によって生じるこの縞の位置変動から、被写体の位相分布像を求めることができる。アナライザー3をz軸周りに回転させることについては、後述する。
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施例について説明する。以下に示す図において、同じ機能を有する部分には同じ符号を付し重複する説明を省略する。
【0015】
(実施例1)
図5は本発明の位相コントラスト型X線撮像装置の一実施例の構成図である。100はX線干渉計であり、図1で説明したように、等間隔で配置されたスプリッタ1、ミラー2及びアナライザー3を持った結晶ブロック4から構成されるが、結晶ブロック4のミラー2とアナライザー3とを連結している部分の大部分が切り欠かれて細い連結片で結合されたものとなっている。15はX線干渉計用の回転調整機構であり、入射X線25のX線干渉計100への入射角を調整する。18は回転調整機構15上に搭載された基板であり、X線干渉計100の支持基盤となる。16は基板18上に搭載された支持板であり、スプリッタ1及びミラー2の部分を搭載する。17はアナライザー3の部分を搭載するチルトステージであり、後述するように、ピエゾ素子17pに加える電圧を制御して、アナライザー3をスプリッタ1及びミラー2に対して相対的に図の矢印aの方向に回転させる。19は被写体を保持するためのホルダーであり、20は被写体ホルダー28を位置決めするための位置決め機構である。21はX線検出器、22は制御装置、23は画像処理機構、24は表示装置である。
【0016】
X線干渉計100に入射したX線25は、図1に示したボンゼ・ハート型干渉計と同様に干渉計100内で分割・反射・結合され、第1干渉ビーム26a及び第2干渉ビーム26bを形成する。分割された一方のビームの光路に試料ホルダー位置決め機構20により位置決めされた試料ホルダー19を用いて被写体を設置すると、被写体の位相分布に応じてビームの位相分布がシフトし、干渉ビーム26a及び26bに強度変動(干渉像)となって現れる。この干渉像をX線検出器21で検出する。
【0017】
図6にX線干渉計100の詳細な図を示す。図1に示したボンゼ・ハート型干渉計は入射X線5を分割する分割素子1と、分割されたビームを結合する結合素子3が一体の結晶ブロック4で構成されていたために、分割素子と結合素子を相対的に回転させることはできなかった。そこで、本実施例では図6に示したように干渉計に切れ込みを入れ、スプリッタ1とミラー2からなる分割ブロック30と、アナライザー3からなる結合ブロック31に分割する。但し、完全に分離するのではなくて、両者は切り残された薄い連結片32で連結されているとともに、それぞれ、支持板16およびチルトステージ17上に搭載されてボンゼ・ハート型干渉計の基本の形を維持できる構造となっている。ここで、チルトステージ17について見ると、図に示すように一端面から対抗面に向かって切り込みが施されて、開口部にピエゾ素子17pが挿入されている。したがって、ピエゾ素子17pに加える電圧を制御すると、電圧の大きさに応じて開口部の開口の程度が制御される。この構造において、結合ブロック31を搭載したチルトステージ17のピエゾ素子17pに加える電圧を制御するとにより、ブロック30および31の切り残された薄い連結片32が弾性変形し、結合ブロック31が分割ブロック30に対して矢印の方向a(y軸回り)に相対的に回転する。
【0018】
この構成の干渉計において、分割ブロック30と結合ブロック31の相対的なy軸回りの回転角Δρは、干渉像にモアレ縞を生じる。モアレ縞の間隔Λは、(1)式で与えられる。
【0019】
【数1】
ここで、dは回折格子面の間隔である。
【0020】
したがって、Δρを適当量ずらすことにより位相シフタを用いることなく、任意の間隔のモアレ縞を干渉像に形成することができる。
【0021】
入射X線ビームを分割、反射、結合するX線回折には、どのような回折格子面を用いてもよいが、この実施の形態では回折角度幅が広く、回折時の強度損失の少ないSi(220)面の回折を用いている。したがって、結晶の方位は図に示したように、X軸は<1,1,0>、Y軸は<0,0,1>となる。Si(220)の格子面間隔dは0.192nmであるので、モアレ縞の間隔を100ミクロンに調整するためには、Δρを2μrad程度の精度で制御する必要がある。したがって、チルトステージにはピエゾ素子のような極めて位置決め精度の高い駆動素子を用いる。
【0022】
モアレ縞の間隔はΔρによって決定されるのでチルトステージの調整は、例えばX線検出器21で干渉像をモニターしながら被写体の位相分布像を取得するのに最適な間隔のモアレ縞となるように制御装置22からピエゾ素子17pに加える電圧を制御して行う。
【0023】
本実施例における被写体の位相分布像は、上記のように回転角Δρを適当量ずらすことによって形成されたモアレ縞を含んだ干渉像から以下の手順によって求める。
(1)被写体位置決め機構を用いて被写体をビームから退避させて背景となる干渉像を測定する。
(2)被写体位置決め機構を用いて被写体をビーム光路内に設置し、背景+被写体の干渉像を測定する。
(3)画像処理機構23において、2つの干渉像のモアレ縞の位置を比較する。モアレ縞の位置の変化がf、モアレ縞の間隔がaであるとき、位相変化Δφは(2)式から求める。
【0024】
【数2】
以上により、求められた位相変化Δφは、すでに背景位相分布を取り除いた形となっており、被写体の位相分布像そのものとなる。このようにして、求めた被写体の位相分布像を表示装置24で表示する。
【0025】
以上、本実施の形態によれば、分割素子と結合素子を相対的に回転させて干渉像に間隔の細かいモアレ縞を形成することができる。したがって、位相シフタを設置することなく干渉像に細かい縞を発生させることができ、被写体の設置によって生じるこの縞の位置変動から、被写体の位相決定精度が高い位相分布像を求めることができる。
【0026】
(実施例2)
実施例1では、被写体による位相の変化を縞の位置変動から直接計算し求めているため、位相分布像しか求めることができなかった。このため、被写体の吸収コントラスト像を得るためには、例えば、分割されたビームの一方の光路にX線遮蔽板を設置して像を検出するなどが必要であった。ここでは、検出した干渉像のみから位相分布像に加え吸収コントラスト像も取得可能な実施例を示す。
【0027】
モアレ縞を含んだ干渉像の強度分布I(x,y)は一般に(3)式で表される。
【0028】
【数3】
但し、c(x,y)は被写体の干渉成分分布であり、(4)式で示される。
【0029】
【数4】
ここで、α(x,y)は干渉縞とは無関係の背景強度分布、β(x,y)は干渉縞の振幅分布、φは被写体による位相変化、f0はモアレ縞のx方向の空間周波数である。また、*は複素共役を示す。(3)式を変数xについてフーリエ変換すると、x方向の空間周波数スペクトルIF(x,y)を得ることができ、(5)式となる。
【0030】
【数5】
モアレ縞の間隔に比べてα、β及びφの変化が緩やかであるならば、IFは完全に分離される。ここで、φに関する情報は数の第2項及び第3項にあるので、例えばCF成分のみを分離し、f0だけ原点方向にシフトし、逆フーリエ変換すると干渉成分cを得ることができる。したがって、被写体による位相変化φはこのようにして算出した干渉成分cの偏角を調べることで、吸収による強度変化は干渉成分cの絶対値を調べることで求められる。
【0031】
上記方法を用いて被写体の位相分布像を求めるために、本実施例では実施例1の干渉像の測定手順と同様な手順により検出した背景となる干渉像及び背景+被写体の干渉像について、以下の処理を行う。
(1)背景となる干渉像(図7(a))について、モアレ縞と垂直な方向のデータ列を順次像の端から1次元のフーリエ変換する。(図7(a)では縦方向)
(2)上記(1)により求めた各フーリエスペクトル(図7(b))のうちモアレ縞の空間周波数f0より大きな周波数のスペクトルについて、f0だけ原点方向にシフトする。この際、f0より低周波側のスペクトルは削除する。
(3)上記(2)の結果(図7(c))をフーリエ逆変換し、その結果について偏角をとることにより背景位相分布像(図7(d))を求める。
(4)背景+被写体の干渉像(図7(e))について、上記(1)〜(3)と同様の手順の処理を行い、背景+被写体の位相分布像(図7(f))を求める。
(5)上記(4)で求めた背景+被写体の位相分布像から、上記(3)で求めた背景位相分布像を減算し、被写体の位相分布像(図7(g))を求める。
【0032】
また、被写体の吸収コントラスト像は、上記(3)及び(4)の手順の処理において、偏角の代わりに絶対値をとることで求めた背景+被写体の吸収コントラスト像から背景吸収コントラスト像を減算することにより求められる。
【0033】
本実施例によれば、被写体の位相分布像と同時に、吸収コントラスト像も取得することができる。
【0034】
(実施例3)
実施例1で使用したX線干渉計は一体の結晶ブロックで構成されているために、干渉計の大きさが母材となる結晶インゴットの直径で制限されてしまい、観察視野を数cm以上確保することができなかった。ここでは、結晶ブロックを完全に分離する干渉計を用いることにより、観察視野が2cm以上確保可能な実施の形態を示す。
【0035】
本実施の形態では、観察視野を広げるために図8に示すような2枚の歯を持った第1結晶ブロック33及び第2結晶ブロック34から構成される結晶分離型X線干渉計を用いる。入射X線39は第1結晶ブロック33の第1歯35でラウエケースのX線回折により第1ビーム40aと第2ビーム41aに分割される。第1ビーム40aは第1結晶ブロック33の第2歯36で第3ビーム40bと第4ビーム40cに、第2ビーム41aは第2結晶ブロック34の第3歯37で第5ビーム41bと第6ビーム41cに再び分割される。このうち第4ビーム40cと第5ビーム41bは第2結晶ブロック34の第4歯38上の同じ点に入射し、結合され第1干渉ビーム42a及び第2干渉ビーム42bを形成する。この場合、上記第1結晶ブロック33と第2結晶ブロック34は回折格子面がそろっていることが必要である。そのため、それぞれの結晶ブロックが一つの単結晶インゴットから切り出して加工されたものとするのが良い。
【0036】
このX線用の干渉計において、第1結晶ブロック33と第2結晶ブロック34のy軸回り(入射X線に垂直な面内)の相対的な回転角度のずれは、干渉像に実施例1と同じようなモアレ縞を形成する。このモアレ縞の間隔Λは(6)式で与えられることがBeckerらによって示されている(J. Appl. Cryst.,7,793(1974))。
【数6】
ここで、λは入射X線の波長、Lは入射X線の光源からX線検出器までの距離、第1歯35と第2歯36との間隔、Δρは第1結晶ブロック33と第2結晶ブロック34のy軸回りの相対的な回転のずれ、θBは回折格子面の間隔である。したがって、この干渉計においては、第1結晶ブロック33と第2結晶ブロック34のy軸回りの相対的な回転をずらすことにより、位相シフタを設置することなくモアレ縞を干渉像に形成することができる。
【0037】
本実施例における装置の一例の構成図を図9に示す。X線干渉計及び干渉計を搭載するX線干渉計用位置決め機構以外は実施例1とほぼ同様な構成となっている。本実施例では、第1結晶ブロック33はチルトステージ43に、第2結晶ブロック34はステージ44に搭載し、それぞれのステージによる二つの結晶ブロック33、34の配置は、図8の構成を満足するものとするようになされる。本実施例では、第1結晶ブロック33を搭載したチルトステージ43により、第2結晶ブロック34に対して第1結晶ブロック33を相対的にY軸回りの回転をさせることによりΔρをずらし、モアレ縞を発生させる。ここで、チルトステージ43は、後述するように、制御装置22より与えられる電圧により回転させられるモータ22mを備えたものとされており、このモータ22mの回転により可動部43mが回転させられる構造のもの、たとえば、スイベルステージが採用されている。(6)式より、モアレ縞の間隔を例えば100ミクロンに調整するためには、Si(220)(d=0.192nm)の回折を利用した場合、λ=0.07nm、L=20m、x=63mm、θB=10.5度という条件では、Δρを60μrad程度の精度で制御する必要がある。実施例1に比べて、必要となる角度決め精度は低いので、チルトステージ43として、例えば通常のスイベルステージ等を使用することができる。
【0038】
モアレ縞の間隔は実施例1と同様にΔρによって決定されるので、チルトステージ43の調整は、例えばX線検出器21で干渉像をモニターしながら被写体の位相分布像を取得するのに最適な間隔のモアレ縞となるように制御装置22を介して行う。
【0039】
本実施例における被写体の位相分布像は、上記実施例と同様にΔρを適当量ずらしてモアレ縞を干渉像に発生させた状態で測定した干渉像から求める。位相分布像の算出方法としては、上記実施例1のようにモアレ縞の位置変化からして求めても良いし、実施例2のようにフーリエ変換を用いて求めても良い。このようにして求めた結果は、表示装置24で表示する。
【0040】
ところで、結晶ブロック33,34間のZ軸回りの回転は、分割されたビーム間の位相を変化させる。位相の変化Δφと、結晶ブロック間の相対的な回転角Δθは(7)式で与えられる。
【0041】
【数7】
ここで、tは干渉計の歯の厚さである。
【0042】
この式から上記条件においてΔφ=2πに対応するΔθは約2nradであることがわかる。したがって、安定した測定を行うためには、少なくともΔθをサブnradの精度で制御する必要がある。すなわち、装置をセットした段階でΔθが適切に制御されていないと、得られた干渉像のVisibilityが低下してしまう。このため、第2結晶ブロックを搭載しているステージ44には、結晶ブロック33,34間のZ軸回りの回転をサブnradの精度で制御してすることが要求される。図9の実施例では、ステージ44に固体滑り機構を採用すると同時に、可動部に圧電素子を組み合込んだ操作装置45により操作することで、極めて位置決め精度の高いステージとしている。
【0043】
実施例3によれば、図8に示したような結晶分離型干渉計を用いることにより観察視野が2cm以上の位相像を取得することができる。
【0044】
図10は本発明の効果をスループットの面から評価するために生体試料の位相分布像を撮った図であり、(a)は本発明により、3秒×1回の露出により、(b)は従来の分割されたビーム間の位相差を変化させて測定した複数の干渉像から位相変化を求める方法により3秒×5回の露出により撮像したものである。両者を比較すると、幾分、本発明の方が分解能が低いかなと言う程度の感じはあるが、実質的にほとんど同等の画質の位相分布像の撮像が1/5の時間で得られた。
【0045】
図11はスループットの高さに着目してラットの肝臓の機能を評価できる生体試料の位相分布像を撮った図である。ラットの肝臓の門脈に生理食塩水を注して、注入した生理食塩水が門脈から静脈に流れていく様子を6秒刻みで観察したものである。この例では、露光時間は5秒とした。
【0046】
【発明の効果】
位相シフタを用いることなく位相決定精度が高い位相分布像を得ることができる。このため、縞走査法による撮像と比較して高いスループッととすることができ、生体試料の動画観察と等価な撮像ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一体型X線干渉計を示す図
【図2】(a)、(b)は位相シフタの例を示す図
【図3】(a)は試料がビーム光路にないときに位相シフタにより形成されるモアレ縞の干渉像を示し、(b)は試料がビーム光路にあるときに形成されたモアレ縞の干渉像を示す図。
【図4】(a)から(e)は本発明のX線干渉計の概念を説明するための模式図。
【図5】本発明の実施例1の一体型X線干渉計を用いたX線撮像装置の構成例を示す図。
【図6】本発明の実施例1で採用する一体型X線干渉計を示す図。
【図7】(a)〜(g)はフーリエ変換を利用した方法により位相分布像を求める手順の例を示す図
【図8】本発明の実施例2で採用する結晶分離型X線干渉計を示す図。
【図9】本発明の実施例2の結晶分離型X線干渉計を用いたX線撮像装置の構成例を示す図。
【図10】本発明の効果をスループットの面から評価するために生体試料の位相分布像を撮った図であり、(a)は本発明、(b)は従来の縞走査法による位相分布像の例を示す図。
【図11】ラットの肝臓の機能を評価できる生体試料の位相分布像の例を示す図。
【符号の説明】
1:スプリッタ、2:ミラー、3:アナライザー、4:結晶ブロック、5:入射X線、6a:第1ビーム、6b:第3ビーム、6c:第4ビーム、7a:第2ビーム、7b:第5ビーム、7c:第6ビーム、8a:第1干渉ビーム、8b:第2干渉ビーム、15:X線干渉計用位置調整機構、16:支持板、17:チルトステージ、17p:ピエゾ素子、18:基板、19:試料ホルダー、20:試料ホルダー位置決め機構、21:X線検出器、22:制御装置、23:画像処理機構、24:表示装置、25:入射X線、26a:第1干渉ビーム、26b:第2干渉ビーム、30:分割ブロック、31:結合ブロック、32:連結部、33:第1結晶ブロック、34:第2結晶ブロック、35:第1歯、36:第2歯、37:第3歯、38:第4歯、39:入射X線、40a:第1ビーム43、40b:第3ビーム、40c:第4ビーム、41a:第2ビーム、41b:第5ビーム、41c:第6ビーム、42a:第1干渉ビーム、42b:第2干渉ビーム、43:チルトステージ、43m:可動部、44:ステージ、100:X線干渉計。
Claims (2)
- 入射するX線を分割素子により相互に干渉する二つのビームに分割し、上記二つのビームの一つに被写体位置決め機構を用いて被写体を挿入して得られるビームと他の一つのビームとを結合素子により結合し、結合したビームを検出器で検出して上記被写体の像を得るX線撮像法において、上記結合素子を上記分割素子に対して相対的に回転させて検出した像をフーリエ変換して得られたフーリエスペクトルについて、その一部の成分を抽出して上記の相対的な回転によって形成された縞の間隔の周波数だけ原点方向にシフトさせた後、逆フーリエ変換を行い上記被写体の位相分布像を得ることを特徴とするX線撮像法。
- 請求項1記載のX線撮像法において、上記分割素子及び上記結合素子に、それぞれ一つの単結晶インゴットから切り出して加工された二つのハーフミラーとその基部から構成された結晶ブロックを使用して被写体の像を得ることを特徴とするX線撮像法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2001284444A JP4015394B2 (ja) | 2001-09-19 | 2001-09-19 | X線撮像法 |
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Publications (2)
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