実施するための形態について、以下に説明する。
〔第1の実施の形態〕
(X線フーリエホログラフィー法)
最初に、X線フーリエホログラフィー法について説明する。図1はX線フーリエホログラフィー装置の構造図であり、図2はX線フーリエホログラフィー装置において観察される試料の構造図である。
X線フーリエホログラフィー装置は、干渉性X線を発するX線源401と、X線コリメータ402と、CCD(Charge Coupled Device)等のイメージングデバイスからなる検出器403を有している。X線源401より発せられた干渉性X線は、X線コリメータ402によりコリメートされ、観察対象となる観察用試料部410に照射される。
図2に観察用試料部410を示す。図2(a)は、観察用試料部410の側面図であり、図2(b)は正面図、図2(c)は、図2(b)における破線2A−2Bにおいて切断した断面図である。観察用試料部410は、支持膜412にX線を吸収するX線吸収体411が積層されており、支持膜412上に、観察対象となる試料413が形成されている。X線吸収層411は、金(Au)または白金(Pt)等からなるX線を吸収する金属材料により形成されている。また、支持膜412は、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC)、有機材料等からなるX線を透過する材料により形成されている。観察対象となる試料413は、X線吸収層411が形成されている面とは反対側の面の支持膜412上に形成されている。
観察用試料部410では、試料413の形成されている領域の支持膜412の裏面には、X線透過窓となる試料測定領域414が形成されており、試料測定領域414におけるX線吸収層411は除去することにより、試料413にX線が照射される。また、観察用試料部410は、参照X線を生じさせるための参照穴415が設けられている。この参照穴415は、参照穴415となる領域のX線吸収層411と支持膜412を除去することにより形成される。これにより試料413における散乱X線と参照穴415からのX線とが干渉し、検出器403の面上にホログラムを形成し、検出器403により検出することができる。このホログラムに基づいてフーリエ変換を行うことにより、試料のイメージ画像を得ることができる。
次に、図3に示す観察用試料部410の作製方法について説明する。図3(a)は、試料膜423の測定を行う観察用試料部を示すものであり、支持膜412上に試料膜423が形成されているものである。また、図3(b)は、構造体である試料413を測定するための観察用試料部を示すものであり、支持膜412上に試料413が形成されているものである。これらの観察用試料部の製造方法は、シリコン等により形成されるフレーム420において、厚さが200nmのSiNからなる支持膜412が形成されているものを用い、フレーム420の形成されている側に、X線吸収層411を形成する。X線吸収層411は、スパッタリングにより金を1.5μm成膜することにより形成する。この後、FIB(Focused Ion Beam)により、試料測定領域414となる領域におけるX線吸収層411を除去し、試料測定領域414を形成する。また、参照穴415についても、参照穴415となる領域におけるX線吸収層411及び支持膜412をFIBにより除去することにより形成する。尚、図3(a)に示すように測定対象が試料膜423である場合には、参照穴415は試料膜423にも設けられる。このようにして形成される試料測定領域414は、一辺が約2μmの略正方形の形状のものであり、参照穴415は直径が約0.05μmの略円形の形状のものであり、参照穴415は試料測定領域414の中心より約5μmの位置に形成されている。
(X線分析装置)
次に、第1の実施の形態におけるX線分析装置について説明する。図4は、本実施の形態におけるX線分析装置の構造の概略図である。本実施の形態におけるX線分析装置は、X線フーリエホログラフィー法を利用するものであり、干渉性X線を発するX線源11と、X線コリメータ12と、2次元のCCD(Charge Coupled Device)等のイメージングデバイスからなる検出器13を有している。X線源11より発せられた干渉性X線は、X線コリメータ12によりコリメートされ、X線吸収部20及び観察対象となる観察用試料部30に照射される。
図5に示すように、本実施の形態におけるX線分析装置は、X線吸収部20と観察用試料部30とは分離して形成されている。X線吸収部20には、図6にも示されるように、X線を透過しないAu、Pt等により形成される金属層21に、一辺が約2μmの略正方形状のX線透過窓22と、直径が約0.05μmの略円形の形状の参照穴23が形成されたものであり、X線透過窓22と参照穴23との相対的な位置は、X線源11より照射されるX線可干渉距離を考慮した最適な位置に設けられている。観察用試料部30には、X線を透過するSiN、SiC、有機材料等により形成される支持膜31上に観察対象となる試料32が設けられている。
尚、X線吸収部20は、大きさや形状を異なる複数の参照穴を設けてもよい。例えば、図7に示すように、2つの参照穴23a、23bを設け、参照穴23aと23bとの大きさや形状を異なるものとすることにより、条件の異なるホログラムを同時に得ることが可能である。
本実施の形態におけるX線分析装置では、X線吸収部20と観察用試料部30とは分離しているため、観察用試料部30は、X線吸収部20に対し相対的に移動させることが可能である。従って、X線透過窓22の大きさよりも大きな試料32であっても、X線透過窓22に対し試料32の位置を相対的に移動させることにより、試料32のイメージ画像を得ることができる。尚、X線分析装置の内部雰囲気は、大気のほか、X線の吸収と散乱を避けるために、真空及びHe(ヘリウム)置換することができるものである。
図8に基づきより詳細に、本実施の形態におけるX線分析装置について説明する。本実施の形態におけるX線分析装置は、X線源11、モノクロメータ14、シャッター15、X線コリメータ12、X線吸収部20、観察用試料部30、検出器13を有している。尚、X線吸収部20及び観察用試料部30は図5に示すものである。
X線源11は、X線管球、ローター型X線光源、放射光源、軟X線レーザ、自由電子レーザ(Free Electron Laser;FEL)等のX線を発生するものである。
モノクロメータ14は、X線の波長を略均一にするためのものであり、X線源11からのX線を単色化するものである。
シャッター15は、X線を透過しない金属材料等により形成されており、開閉することにより、検出器13による計測時以外におけるX線を遮断するものである。
X線コリメータ12は、試料領域以外のX線を遮蔽するためのものである。
検出器13は、CCD等の2次元の撮像デバイスにより形成されており、試料32により生じた散乱X線と参照穴23から入射したX線との干渉により形成されるホログラム画像を検出することができるものである。尚、検出器13は2次元のイメージングデバイス以外でも、1次元の撮像デバイスを走査させるものであってもよい。
X線吸収部20は、第1ステージ29に設置されており、X線吸収部20をX軸方向、Y軸方向の2次元に移動させることが可能である。尚、第1ステージ29は、ピエゾ素子と光学式エンコーダを用いたものであり、10nm程度の位置調整を高精度に行うことが可能である。
観察用試料部30は、第2ステージ39に設置されており、観察用試料部30をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の3次元に移動させることが可能である。尚、第2ステージ39は、ピエゾ素子と光学式エンコーダを用いたものであり、10nm程度の位置調整を高精度に行うことが可能である。
また、X線源11、シャッター15、X線コリメータ12、第1ステージ29及び第2ステージ39はコントローラ16を介し、コンピュータ17に接続されており、コントローラ16を介し各々の制御が行われる。検出器13は、検出器コントローラ18を介しコンピュータ17に接続されており、検出器13において得られたホログラムに基づき、コンピュータ17においてフーリエ変換を行う。これにより試料32における内部構造のイメージ画像を得ることができ、コンピュータ17の表示部19において試料32における内部構造のイメージ画像を表示することができる。
次に、図9に基づき、X線吸収部20と観察用試料部30について、より詳細に説明する。前述のとおり、本実施の形態におけるX線分析装置は、X線吸収部20と観察用試料部30とは独立した構造のものである。X線吸収部20は、シリコン等からなるフレーム24に、X線を透過するSiN等により形成される支持膜25が形成されたものであって、フレーム24の形成されている側に、X線を吸収する金属層21が形成されている。X線透過窓22は、所定の領域における金属層21及び支持膜25をFIB等により除去することにより形成される。また、参照穴23は、同様に別の所定の領域における金属層21及び支持膜25をFIB等により除去することにより形成される。一方、観察用試料部30には、シリコン等からなるフレーム33にX線を透過するSiN等からなる支持膜31が形成されており、支持膜31には、観察対象となる構造物である試料32が形成されている。本実施の形態では、X線吸収部20における金属層21は、厚さが1.5μmの金の膜により形成されており、試料測定窓22は一辺が約2μmの略正方形の形状のものであり、参照穴23は約0.05μmの略円形の形状のものである。尚、X線吸収部20におけるX線の吸収効率を高めるためには、金属層21を厚く形成することが好ましい。また、観察用試料部30における支持膜31の膜厚は、約200nmである。本実施の形態におけるX線分析装置においては、第1ステージ29及び第2ステージにより、X線吸収部20及び観察用試料30を相対的に移動させ、X線透過窓22を通過したX線が、観察用試料30における試料32に照射されるように、位置合せが行われる。
尚、本実施の形態では、X線透過窓22に対し、観察用試料部30における試料32の位置を相対的に移動させて、得られた複数の再生イメージをつなぎ合わせることにより、X線透過窓22の大きさよりも大きな試料32であっても、試料32のイメージ画像を得ることが可能である。
また、図10に示すように、X線吸収部20は、シリコン等からなるフレーム24に、X線を透過するSiN等により形成される支持膜25が形成されたものであって、支持膜25の両側に、金属膜21及び金属層26を形成したものであってもよい。金属層26は金属層21と同じ材料により形成することができ、金属層26を設けることにより、より一層X線の吸収効率を高めることができる。尚、X線透過窓22及び参照穴23は、所定の領域における金属層21、支持膜25及び金属層26をFIB等により除去することにより形成する。
また、図11に示すように、X線吸収部20は、シリコン等からなるフレーム24に、金属膜21及び金属膜26が形成されたものであってもよい。これにより、膜応力が比較的大きいSiN等の支持膜を用いることなく、フレーム24以外の部分を全て金属膜21及び金属膜26により形成することができる。形成方法は、フレーム24にSiN等の支持膜の形成されているものを用いて、フレーム24が形成されている面に金属膜21をスパッタリング等により形成し、その後、支持膜を除去し、支持膜の除去された面に金属膜26を形成することにより形成する。尚、X線透過窓22及び参照穴23は、所定の領域における金属層21及び金属層26をFIB等により除去することにより形成する。
また、図12に示すように、X線吸収部20は、X線を透過しない絞りディスク27を形成したものであってもよい。具体的には、シリコン等からなるフレーム24に、SiN等の支持膜25を形成されたものに、支持膜25の両側に金属膜21及び金属層26を形成し、更に、X線を透過しない絞りディスク27を形成したものであってもよい。絞りディスク27は、Pt、Mo(モリブデン)等の厚い金属板により形成されており、X線透過窓22及び参照穴23にX線が照射されるように、直径が約10μmの開口部28を有するものである。これにより観察用試料30の周辺部におけるX線をより確実に遮ることができる。尚、X線透過窓22及び参照穴23は、所定の領域における金属層21、支持膜25及び金属層26をFIB等により除去することにより形成する。
本実施の形態におけるX線分析装置においては、図10、図11、図12に示すX線吸収部20を用いることにより、X線吸収部20において、遮るべきX線をより確実に遮ることができ、より正確で鮮明な試料32のイメージ画像を得ることが可能である。
次に、本実施の形態における他のX線分析装置について説明する。このX線分析装置は、上述したX線分析装置において、図13及び図14に示すように観察用試料部30に開口窓35を設けた構造のものである。SiN等の支持膜31は、X線を透過する材料により形成されているが、X線を完全に透過する材料ではない場合や、真空中又は大気中とは異なる屈折率を有する場合がある。更に、試料32を作製する際に、支持膜31の厚さを厚くする必要がある場合がある。このような場合において、X線吸収部20における参照穴23を通過したX線が、支持膜31を透過する際に、参照穴23を通過したX線の波面が乱れ、形成されるホログラムにも悪影響を与えるおそれがある。従って、観察用試料部30にも開口窓35を設けることにより、X線吸収部20における参照穴23を通過したX線が支持膜31において波面が乱されることなく、より鮮明で正確な試料32のイメージ画像を得ることができる。
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について説明する。本実施の形態におけるX線分析装置は、第1の実施の形態におけるX線分析装置において、複数の観察用試料部を設置することが可能なものであり、試料を交換するための試料交換部を設けることにより、複数の試料を容易に交換することができる構造のものである。
図15に基づき本実施の形態におけるX線分析装置について説明する。本実施の形態におけるX線分析装置は、筐体10内にX線源11、モノクロメータ14、シャッター15、X線コリメータ12、X線吸収部20、試料交換部40、検出器13を有している。尚、試料交換部40には、複数の観察用試料部30が設置されており、各々の観察用試料部30には、各々試料32が設けられている。
図16に示すように、試料交換部40は、複数の観察用試料部30を一列に配置したものであり、矢印Aに示す方向に移動させることにより、複数の観察用試料部30における試料32をX線透過窓22に対応する位置に、各々移動させることができる。
これにより、複数の観察用試料部30における試料32のイメージ画像を得る場合においても、X線吸収部20を複数形成する必要がなく、また、試料交換部40の移動により、次の試料のイメージ画像を得るための作業を迅速に行うことができる。即ち、試料32ごとに対応するX線吸収部を設ける必要がなく、よって、金属層及び参照穴を形成する必要がない。従って、容易に低コストで複数の試料のイメージ画像を得ることができ、また、高いスループットで複数のイメージ画像を得ることができる。尚、本実施の形態におけるX線分析装置では、試料交換部40は、不図示の移動機構により移動することができるものである。
また、図17に示すように、円盤状の試料交換部41に複数の観察用試料部30を配置し、試料交換部41を矢印Bに示す方向に回転させることにより、観察用試料部30の位置を切換えるものであってもよい。試料交換部41は、図15に示す試料交換部40の設けられている位置に試料交換部40に代えて設置する。
また、複数のX線吸収部20を複数の観察用試料部30を同様に設け、図16及び図17に示す方法と同様の方法により交換するものであってもよい。
尚、本実施の形態において、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
〔第3の実施の形態〕
次に、第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態と異なる構造のX線吸収部を有するものである。
図18に基づき、本実施の形態におけるX線吸収部について説明する。本実施の形態におけるX線吸収部50は、SiN等のX線を透過する支持膜51に、X線を吸収するAu、Pt等の金属材料により形成されるX線吸収領域52を形成したものである。本実施の形態では、X線吸収領域52の設けられている領域では照射されるX線は遮られ、この影響により、試料32における散乱X線と干渉し、ホログラムが形成される。形成されたホログラムを検出し、フーリエ変換を行うことにより試料32における内部構造のイメージ画像を得ることができる。
本実施の形態では、X線吸収部50には不図示のシリコン等のフレームが設けられており、X線吸収領域52が形成されている支持膜51を支えている。
本実施の形態におけるX線分析装置は、図8に示すX線吸収部20をX線吸収部50と置き換えた構造のである。このような構造のX線分析装置においても、第1の実施の形態と同様に、試料32における内部構造のイメージ画像を容易に得ることができる。
本実施の形態では、X線吸収部50において形成されるX線吸収領域52を形成する金属材料は極めて微小であり、また、X線透過窓等を設ける必要がないことから、極めて低コストでX線吸収部50を作製することができる。
尚、本実施の形態において、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
〔第4の実施の形態〕
次に、第4の実施の形態について説明する。本実施の形態は、イメージ画像を得るための対象となる試料が液体、粉末等の場合におけるX線分析装置である。
図19に基づき、本実施の形態におけるX線分析装置について説明する。本実施の形態におけるX線分析装置は、X線源111、モノクロメータ114、シャッター115、X線コリメータ112、X線吸収部120、試料供給ノズル130、検出器113を有している。尚、試料132は、試料供給ノズル130より、試料132となる液滴を滴下することにより供給される。
X線源111は、X線管球、ローター型X線光源、放射光源、軟X線レーザ、自由電子レーザ(Free Electron Laser:FEL)等のX線を発生するものである。
モノクロメータ114は、X線の波長を略均一にするためのものであり、X線源111からのX線を単色化するものである。
シャッター115は、X線を透過しない金属材料等により形成されており、開閉することにより、検出器113による計測時以外におけるX線を遮断するものである。
X線コリメータ112は、試料領域以外のX線を遮蔽するためのものである。
検出器113は、CCD等の2次元の撮像デバイスにより形成されており、試料132により生じた散乱X線と参照穴123から入射したX線との干渉により形成されるホログラムを検出するものである。
X線吸収部120は、第1ステージ129に設置されており、X線吸収部120をX軸方向、Y軸方向の2次元に移動させることが可能である。X線吸収部120は、図20に示すように、X線を透過しないAu、Pt等により形成される金属層121に、一辺が約2μmの略正方形状のX線透過窓122と、直径が約0.05μmの略円形の形状の参照穴123が形成されたものである。X線透過窓122と参照穴123との相対的な位置は、X線源111より照射されるX線可干渉距離を考慮した最適な位置に設けられている。
試料供給ノズル130は、所定の位置に液体の試料132である液滴を落下させ供給するためのものであり、下方には試料受け部131が設けられている。具体的には、図20に示すように、試料供給ノズル130より、試料132となる液滴が滴下され、X線吸収部120におけるX線透過窓122を通過したX線が照射される位置を通過する。試料132となる液滴にX線透過窓122を通過したX線が照射されるように、X線源111またはシャッター115の制御を行い、試料132による散乱X線と参照穴123を透過したX線との干渉により生じたホログラムを検出器113により検出する。
また、X線源111、シャッター115、X線コリメータ112、第1ステージ129及び試料供給ノズル130はコントローラ116を介し、コンピュータ117に接続されており、コントローラ116を介し各々の制御が行われる。検出器113は、検出器コントローラ118を介しコンピュータ117に接続されており、検出器113において得られたホログラムに基づき、コンピュータ117においてフーリエ変換を行う。これにより試料132の内部構造のイメージ画像を得ることができ、コンピュータ117の表示部119において試料132における内部構造のイメージ画像を表示することができる。このように本実施の形態では、試料132が液体の場合においても、試料132における内部構造のイメージ画像を容易に得ることができる。また、位相回復法を併用することにより、得られたイメージ画像より試料132における結晶構造を特定することも可能である。
特に、試料132が有機物や有機結晶等においては、X線を長時間照射するとダメージを受けてしまう場合がある。このためX線源111の制御又はシャッター115の制御等により、パルス状のX線を供給し、試料供給ノズル130からの試料132の滴下に同期させて、パルス状のX線の照射することにより、試料132に照射されるX線を最小限にすることができる。これによりダメージを与えることなく有機物や有機結晶等の試料132における内部構造のイメージ画像を容易に得ることができる。
更に、本実施の形態では、試料132を支持するための支持膜等を設ける必要がないため、第1の実施の形態における観察用試料部を作製する必要がない。従って、低コストで試料132における内部構造のイメージ画像ができる。尚、本実施の形態における説明では、試料132が液体の場合について詳しく説明したが、粉体や固体の場合においても同様に適用することが可能である。
尚、本実施の形態において、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
〔第5の実施の形態〕
次に、第5の実施の形態について説明する。本実施の形態は、試料の3次元のイメージ画像を得るためのX線分析装置である。
図21に基づき、本実施の形態におけるX線分析装置について説明する。本実施の形態におけるX線分析装置は、X線源211、モノクロメータ214、シャッター215、X線コリメータ212、X線吸収部220、試料232を設置するための試料設置部230、検出器213を有している。
X線源211は、X線管球、ローター型X線光源、放射光源、自由電子レーザ等のX線を発生するものである。
モノクロメータ214は、X線の波長を略均一にするためのものであり、X線源211からのX線を単色化するものである。
シャッター215は、X線を透過しない金属材料等により形成されており、開閉することにより、検出器213による計測時以外におけるX線を遮断するものである。
X線コリメータ212は、試料領域以外のX線を遮蔽するためのものである。
検出器213は、CCD等の2次元の撮像デバイスにより形成されており、試料232により生じた散乱X線と参照穴222から入射したX線との干渉により形成されるホログラムを検出するものである。
X線吸収部220は、第1ステージ229に設置されており、X線吸収部220をX軸方向、Y軸方向の2次元に移動させることが可能である。X線吸収部220は、図22に示すように、X線を透過しないAu、Pt等により形成される金属層221に、一辺が約2μmの略正方形状のX線透過窓223と、直径が約0.05μmの略円形の形状の参照穴222が形成されたものである。X線透過窓223と参照穴222との相対的な位置は、X線源211より照射されるX線可干渉距離を考慮した最適な位置に設けられている。
図22及び図23に基づき試料設置部230について説明する。試料設置部230は、試料232を支持する支持棒233、支持棒233を介し、試料232を回転させる回転ステージ234、3次元に移動可能な第2ステージ235により形成されている。尚、回転ステージ234と第2ステージ235は、3次元方向に移動可能であって、かつ、回転動作を行うことが可能な単一のステージを用いてもよい。また、指示棒233は、アルミニウム(Al)、ガラス等により形成されている。X線透過窓223を通過したX線が照射される位置に、支持棒233に取り付けられた試料を設置し、支持棒233を介し回転ステージ234により試料232を回転させる。このようにして、回転させた角度ごとの試料232のホログラムを各々検出器213により検出し、これらのホログラムに基づき試料232の3次元のイメージ画像を得ることができる。
また、X線源211、シャッター215、X線コリメータ212、第1ステージ229及び試料設置部230はコントローラ216を介し、コンピュータ217に接続されており、コントローラ216を介し各々の制御が行われる。検出器213は、検出器コントローラ218を介しコンピュータ217に接続されており、検出器213において得られたホログラムに基づき、コンピュータ217においてフーリエ変換を行う。これにより試料232の内部構造のイメージ画像を得ることができ、コンピュータ217の表示部219において試料232における内部構造のイメージ画像を表示することができる。ここで、試料232における3次元のイメージ画像は、コンピュータ217において、各々の角度において検出器213により検出されたホログラムに基づき、ラドン変換することにより得ることができる。
尚、本実施の形態において、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
〔第6の実施の形態〕
次に、第6の実施の形態について説明する。本実施の形態は、試料の磁化のイメージ画像を得るためのX線分析装置である。
図24に基づき、本実施の形態におけるX線分析装置について説明する。本実施の形態におけるX線分析装置は、X線源311、モノクロメータ314、ダイアモンド位相子340、シャッター315、X線コリメータ312、X線吸収部320、観察用試料部330、検出器313を有している。尚、本実施の形態では、試料332は、観察用試料部330に設けられた支持膜上に設置されている。
X線源311は、X線管球、ローター型X線光源、放射光源、自由電子レーザ等のX線を発生するものである。
モノクロメータ314は、X線の波長を略均一にするためのものであり、X線源311からのX線を単色化するものである。
ダイアモンド位相子340は、傾斜角度によりX線源311からのX線の偏光方向を変化させるものである。
シャッター315は、X線を透過しない金属材料等により形成されており、開閉することにより、検出器313による計測時以外におけるX線を遮断するものである。
X線コリメータ312は、試料領域以外のX線を遮蔽するためのものである。
検出器313は、CCD等の2次元の撮像デバイスにより形成されており、試料332により生じた散乱X線と参照穴323から入射したX線との干渉により形成されるホログラムを検出するものである。
X線吸収部320は、第1ステージ329に設置されており、X線吸収部320をX軸方向、Y軸方向の2次元に移動させることが可能である。
観察用試料部330は、第2ステージ339に設置されており、観察用試料部330をX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の3次元に移動させることが可能である。
また、X線源311、ダイアモンド位相子340、シャッター315、X線コリメータ312、第1ステージ329及び第2ステージ339はコントローラ316を介し、コンピュータ317に接続されており、コントローラ316を介し各々の制御が行われる。また、検出器313は、検出器コントローラ318を介しコンピュータ317に接続されており、検出器313において得られたホログラムに基づき、コンピュータ317においてフーリエ変換を行う。これにより試料332における磁化のイメージ画像を得ることができ、コンピュータ317の表示部319において試料332における磁化のイメージ画像を表示することができる。
本実施の形態では、コントローラ316の制御により、ダイアモンド位相子340の角度を変えることにより、X線源311より供給されるX線の偏光方向を右円偏光、左円偏光と変化させることが可能である。右円偏光のX線を用いた場合の検出器313により得られた画像と、左円偏光のX線を用いた場合の検出器313により得られた画像との差分に基づいて、コンピュータ317においてフーリエ変換等の処理を行うことにより、試料332における磁化された状態のイメージ画像を得ることができる。
尚、本実施の形態では、ダイアモンド位相子340を用いてX線の偏光方向を変化させる場合について説明したが、X線源311に円偏光アンジュレータを用いてもよい。
また、本実施の形態において、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
〔第7の実施の形態〕
次に、第7の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1から第6におけるX線分析装置を用いたX線分析方法である。
本実施の形態におけるX線分析方法では、図25に示すX線分析装置を用いる。尚、便宜上、第1の実施の形態におけるX線分析装置を用いた場合について説明するものであり、本実施の形態は、第2から第6におけるX線分析装置を用いて行うことができるものである。
図25(a)に本実施の形態において用いられるX線分析装置を示す。本実施の形態において用いられるX線分析装置は、第1の実施の形態におけるX線分析装置であり、X線吸収部20と観察用試料部30とは分離して形成されている。X線吸収部20は、図25(b)に示されるように、X線を透過しないAu、Pt等により形成される金属層21に、一辺が約2μmの略正方形状のX線透過窓22と、直径が約0.05μmの略円形の形状の参照穴23が形成されたものであり、X線透過窓22と参照穴23との相対的な位置は、不図示のX線源より照射されるX線可干渉距離を考慮した最適な位置に設けられている。観察用試料部30は、図25(c)に示されるように、X線を透過するSiN、SiC、有機材料等により形成される支持膜31上に観察対象となる試料32が設けられている。不図示のX線源より照射されたX線は、X線吸収部20と観察用試料部30を介し、検出器13により検出される。尚、X線分析装置の詳細な構造については、第1の実施の形態に示すとおりである。
このようなX線分析装置では、X線吸収部20と観察用試料部30の位置が異なるため、即ち、観察用試料部30と検出器13とのZ軸方向における距離Z1と、X線吸収部20と検出器13とのZ軸方向における距離Z2とが異なるため、検出器13において検出される自己干渉項は、参照穴23からの参照光との干渉項に比べ、強度が非常に強いため、再生像に影響を与えてしまい、正確なイメージ画像を得ることはできない。
より具体的に説明すると、イメージu(x、y)からのX線散乱振幅T(x0、y0)は、数0に示されるフレネルキルヒホフ積分により計算できる。ここでフラウンホーファー近似を使っている。FTはフーリエ変換を示す。また、係数1/iλzは一定値なので、以下では省略する。
よって、散乱振幅の2乗である測定強度I(x0、y0)は、数2に示す式になる。
ここで、試料32の試料構造u(x、y)による検出器13上における散乱振幅をT(x0、y0)とし、参照光による検出器13上での散乱振幅をR(x0、y0)とし、C1は距離Z1における球面波の位相因子、C2は距離Z2における球面波の位相因子を使うと、
T(x0、y0)=C1(x0、y0)×A(x0、y0)
R(x0、y0)=C2(x0、y0)
となる。尚、位相因子C1、C2の積であるC1C2 *及びC1 *C2はzが異なるため1にはならない。また、Aはイメージuのフーリエ変換FTであり、A=FT(u(x、y))である。
このため、測定強度Iに位相因子の積であるC1C2 *またはC1 *C2を掛けるか、または割ることにより位相因子を1に規格化し、その後、フーリエ逆変換を行うことにより実像又は虚像の再生イメージを得ることができる。例えば、数3及び数4に示すように、測定強度IをC1 *C2で割ったものをフーリエ変換することにより実像のイメージを得ることができる。
尚、数3におけるバックグラウンドBG1は、数2における第1項及び、第2項をC1 *C2で割った成分であり、数4におけるバックグラウンドBG2は、数3における第1項を逆フーリエ変換FT−1した成分である。
しかし、この位相因子は虚像項や自己干渉項の位相因子を規格化しないので、その結果、自己干渉項や虚像項の再生像はぼける。通常、イメージの自己干渉項は、参照光との干渉に比べ、強度が非常に強いため、その強度分布は、ぼけたバックグラウンドとなり広い領域に広がることから、再生されるイメージ画像に影響を与えてしまう。
本実施の形態では、上記影響を受けることのない、正確で明確なイメージ画像を得ることができるものである。
次に、図26に基づき本実施の形態におけるX線分析方法について説明する。
最初に、ステップ102(S102)において、試料32を設置しない状態、即ち、観察用試料部30を設置しない状態で、X線源よりX線を照射し、検出器13により散乱強度分布D1を検出する。
次に、ステップ104(S104)において、試料32を設置した状態、即ち、観察用試料部30を設置した状態で、X線源よりX線を照射し、検出器13により散乱強度分布D2を検出する。
次に、ステップ106(S106)において、規格化を行う。具体的には、散乱強度分布D1における0次回折光のピークの値と、散乱強度分布D2における0次回折光のピークの値とが一致するように、散乱強度分布D1を規格化し規格化された散乱強度分布D1Kを得る。
次に、ステップ108(S108)において、差分を取る。具体的には、散乱強度分布D2より、規格化された散乱強度分布D1Kを差し引いて差分データを算出する。
次に、ステップ110(S110)において、逆フーリエ変換を行う。具体的には、ステップ108において算出した差分データに位相因子を割った後、逆フーリエ変換することによりイメージ画像を得る。このようにして得られたイメージ画像は、ネガ・ポジが反転しているので、必要に応じて、強度の反転処理を行うことにより、バックグラウンドの少ない鮮明なイメージ画像を得ることができる。
〔第8の実施の形態〕
次に、第8の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1から第6におけるX線分析装置を用いたX線分析方法である。
本実施の形態におけるX線分析方法では、図25に示すX線分析装置を用いる。尚、便宜上、第1の実施の形態におけるX線分析装置を用いた場合について説明するものであり、本実施の形態は、第2から第6におけるX線分析装置を用いて行うことができるものである。
次に、図27に基づき本実施の形態におけるX線分析方法について説明する。
最初に、ステップ202(S202)において、試料32を設置しない状態、即ち、観察用試料部30を設置しない状態における散乱強度分布D3を算出する。具体的には、図28に示すように、X線吸収部20において、金属層21にx軸方向の長さがa、y軸方向の長さがbとする略長方形状のX線透過窓22が形成されている場合、回折振幅の積分は、数5に示す式となり、散乱強度分布D3は、これを二乗したものであり、回折パターンは、図29に示すようなものとなり、散乱強度分布D3は、図30に示すものとなる。尚、略正方形状のX線透過窓22の場合には、aの値とbの値を同じ値とすることにより、同様に算出することができる。図25に示すX線分析装置では、a=b=2μmとすることにより算出することができる。
次に、ステップ204(S204)において、試料32を設置した状態、即ち、観察用試料部30を設置した状態で、X線源よりX線を照射し、検出器13により散乱強度分布D4を検出する。
次に、ステップ206(S206)において、規格化を行う。具体的には、散乱強度分布D3における0次回折光のピークの値と、散乱強度分布D4における0次回折光のピークの値とが一致するように、散乱強度分布D3を規格化し規格化された散乱強度分布D3Kを得る。
次に、ステップ208(S208)において、差分を取る。具体的には、散乱強度分布D4より、規格化された散乱強度分布D3Kを差し引いて差分データを算出する。
次に、ステップ210(S210)において、逆フーリエ変換を行う。具体的には、ステップ208において算出した差分データに位相因子を割った後、逆フーリエ変換することによりイメージ画像を得る。このようにして得られたイメージ画像は、ネガ・ポジが反転しているので、必要に応じて、強度の反転処理を行うことにより、バックグラウンドの少ない鮮明なイメージ画像を得ることができる。
本実施の形態では、一回のX線の照射により鮮明なイメージ画像を低コストで、高スループットで得ることができる。
〔第9の実施の形態〕
次に、第9の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1から第6におけるX線分析装置を用いたX線分析方法であって、2以上の波長のX線を用いるものである。
本実施の形態におけるX線分析方法では、図25に示す第1の実施の形態におけるX線分析装置を用いる。尚、便宜上、第1の実施の形態におけるX線分析装置を用いた場合について説明するものであり、本実施の形態は、第2から第6におけるX線分析装置を用いて行うことができるものである。
本実施の形態は、測定対象となる元素の吸収端よりも短い波長と長い波長のX線とを照射することにより、測定対象となる元素を有する構造物等の鮮明なイメージ画像を得る方法である。
次に、図31に基づき本実施の形態におけるX線分析方法について説明する。測定対象となる試料は、例えば、図32に示すようにSiの基板351上に、Ta膜352とCu膜353が積層された構造のものであり、Taを含む領域のイメージ画像を得るためのものである。この試料は支持膜等に形成されている場合がある。
最初に、ステップ302(S302)において、第1の波長のX線として、Taの吸収端(L−吸収端)よりも短い波長のX線を照射する。具体的には、Taの吸収端である0.125nmよりも短い波長である約0.124nmのX線を照射する。照射されるX線は図4等に示すX線源11等においてモノクロメータにより波長0.124nmのX線が選別されたものであり、このX線を照射し検出器13においてホログラムを検出する。
次に、ステップ304(S304)において、第2の波長のX線として、Taの吸収端よりも長い波長のX線を照射する。具体的には、Taの吸収端である0.125nmよりも長い波長である約0.127nmのX線を照射する。照射されるX線は図4等に示すX線源11等においてモノクロメータにより波長0.127nmのX線が選別されたものであり、このX線を照射し検出器13においてホログラムを検出する。
次に、ステップ306(S306)において、逆フーリエ変換を行う。具体的には、ステップ302において検出器13により検出されたホログラムに基づき、第1の波長により形成されるイメージ画像を得るとともに、ステップ304において検出器13により検出されたホログラムに基づき、第2の波長により形成されるイメージ画像を得る。
次に、ステップ308(S308)において、ステップ306において得られた第1の波長により形成されるイメージ画像と第2の波長により形成されるイメージ画像との差分をとる。これによりTaを含む領域のイメージ画像を得ることができる。
即ち、厚さがt、複素屈折率がn=(1−δ)−iβの試料に、X線平面波A0(x、y)が入射した場合を考える。尚、δ、βは、試料のX線屈折率の1からのずれを表すものである。試料から出射するX線(出射直後におけるX線)u(x、y)は、数6に示す式となる。
ここで、BGは非干渉X線や装置内における迷光等によるバックグラウンドである。数6において、δを含む指数項は位相の変化を表すものであり、βを含む指数項は吸収効果を表わしている。
一方、図33には、X線の波長と試料を構成する元素のδの値との相関関係を示し、図34には、X線の波長と試料を構成する元素のβの値との相関関係を示す。試料となる構成元素は、内核電子の結合エネルギー近傍に元素固有のX線吸収端を有している。具体的には、Taでは0.125nmにおいて吸収端(L−吸収端)を有しているため、βの値はこの前後の波長において大きく変動する。一方、SiやCuでは、βの変化量は小さい。
このため、Taの吸収端の波長である0.125nmよりも短い波長のX線(第1の波長のX線)を照射して得られたイメージ画像と0.125nmよりも長い波長のX線(第2の波長のX線)を照射して得られたイメージ画像との差分を得ることにより、数6におけるBGの項は、波長に対する依存性が少ないためキャンセルすることができ、Taを含む領域の鮮明なイメージ画像を得ることができる。この場合、第1の波長である0.124nmと第2の波長である0.127nmの間の領域において吸収端を有しない、SiとCuは、第1の波長である0.124nmと第2の波長である0.127nmとにおいては、δ及びβの値は大きく変化していないため、イメージ画像の形成に殆ど寄与することなく、Taを含む領域のみの鮮明なイメージ画像を得ることができる。
尚、本実施の形態では、ステップ306においてフーリエ変換を行い、ステップ308において差分をとる場合について説明したが、差分を取った後にフーリエ変換を行ってもよい。
また、始めに、吸収端よりも短い波長のX線を照射し、後に、吸収端よりも長い波長のX線を照射した場合について説明したが、始めに、吸収端よりも長い波長のX線を照射し、後に、吸収端よりも短い波長のX線を照射してもよい。
更に、本実施の形態において、第3の波長のX線と第4の波長のX線を照射することにより、Cuを含む領域におけるイメージ画像を得ることができる。
具体的には、上述したTaの場合と同様のプロセス(ステップ302からステップ308におけるプロセス)をCuについても行う。即ち、Cuの吸収端(K−吸収端)の波長である0.138nmよりも短い波長である0.137nmの第3の波長のX線を照射しイメージ画像を算出し、0.138nmよりも長い波長である0.139nmの第4の波長のX線を照射しイメージ画像を算出し、第3の波長のX線を照射しイメージ画像と第4の波長のX線を照射しイメージ画像との差分を取ることにより、Cuを含む領域におけるイメージ画像を得ることができる。
このようにして得られたCuを含む領域と、前述したプロセスにより得られたTaを含む領域とから、試料におけるTa及びCu元素の分布領域を把握することが可能である。
〔第10の実施の形態〕
次に、第10の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1から第6におけるX線分析装置を用いたX線分析方法であって、所定の波長領域のX線を照射することにより、試料における化学結合状態のイメージ画像を得るためのX線分析方である。
本実施の形態におけるX線分析方法では、図25に示す第1の実施の形態におけるX線分析装置を用いる。尚、便宜上、第1の実施の形態におけるX線分析装置を用いた場合について説明するものであり、本実施の形態は、第2から第6におけるX線分析装置を用いて行うことができるものである。
次に、本実施の形態について詳細に説明する。
一般に、X線吸収端において、X線屈折率δ、βのエネルギー依存性δ(E)、β(E)は、測定元素の化学結合状態により変化することが知られている。特に、線吸収係数μ=4πβ/λのX線波長(エネルギー)毎の変化を各波長で測定し、その形状から物質の結合状態を調べる分析法は、XANES(X-ray Absorption Near Edge Structure)又は、XAFS(X-ray Absorption Fine Structure)として知られている。通常、この方法を試料の微小領域の分析に適用する場合、X線をX線集光ミラーあるいはFZP(Fresnel Zone Plate)などの集光素子により最少1μm程度に集光し試料局所部分に照射し、吸収率I/I0=exp(−μt)、あるいはそれに比例する蛍光X線や光電子強度を測定し、その後、試料あるいはX線を移動し、同様な測定を繰り返し、二次元測定を行っていた。尚、I0は入射X線強度、Iは透過X線強度、μtは吸収係数を示す。)そのためデータの測定には、長時間が必要であった。
本実施の形態では、イメージ再生により、X線の試料透過後のX線複素振幅が2次元データとして得られるため、このデータを元素吸収端の付近の波長で収集することにより、吸収率に比例するβのみならず、実部δの変化まで、試料をスキャンさせることなく、数十nmという高い位置精度で迅速に測定することができる。また、試料透過後の振幅を、試料窓のみの場合の透過振幅で割ることにより、入射X線強度の規格化させることができ、計測精度を向上させることができる。
本実施の形態において測定される試料32は、図35に示すように、SiO2部材361に溝部が形成されており、この溝部にCu配線362が形成されたものである。尚、このような試料32では、Cu配線362とSiO2部材361との境界領域では、SiO2部材361が酸化物であるため、Cu配線362におけるCuが酸化され、Cu2O及びCuOが形成される。
図36に基づき本実施の形態について説明する。
最初に、ステップ402(S402)において、図4等に示すX線源11において、X線の波長をモノクロメータにより設定する。
次に、ステップ404(S404)において、X線を試料32に照射し、ホログラムを検出器13により検出を行う。
次に、ステップ406(S406)において、得られた強度データを逆フーリエ変換することで試料の複素振幅を得、その実部と虚部からδi、βiを算出する。この測定をスペクトル取得範囲において繰り返す。即ち、ステップ402からステップ406を所定の回数行う。
次に、ステップ408(S408)において、全波長範囲のδ、βを標準スペクトルと比較することにより、試料32における化学結合状態を測定する。
本実施の形態について、より詳しく説明すると、試料を所定の位置に設置した後、XANESによる測定の場合では、X線源から発せられるX線を8960eV〜9000eVのエネルギー(フォトンエネルギー)の範囲において、2eVステップでエネルギーを変化させて試料32に照射し、試料に照射されることにより生じた散乱X線によるホログラムを検出器13により検出する。この後、検出器13により検出されたホログラムに基づき、試料透過後のX線散乱振幅を算出し、そのエネルギー依存性のスペクトル形状からCuの酸化状態を測定する。
また、XAFSによる測定の場合では、上記の測定に追加して、X線源から発せられるX線を9000eV〜9050eVのエネルギー範囲において、5eVステップでエネルギーを変化させて試料32に照射し、試料32に照射されることにより生じた散乱X線によるホログラムを検出器13により検出する。
図37は、エネルギーと吸収係数(μt)との関係を示すものである。尚、X線源から発せられる波長λは、エネルギーをEとした場合、λ(Å)=12398/E(eV)である。図36において、矢印CはCuにおける吸収係数のピークであり、矢印DはCu2Oにおける吸収係数のピークであり、矢印EはCuOにおける吸収係数のピークである。これらピークにおけるエネルギー状態における検出器13により検出されるホログラムに基づき、SiO2部材361の溝部に形成されたCu配線362における化学結合状態の分析を行うことができる。
具体的には、Cu配線362の中央部362aでは酸化されておらずCuであり、SiO2部材361との境界に近い周辺部362bではCu2Oが形成されており、SiO2部材361との境界となる境界部362cではCuOが形成されていること等の認識をすることができる。
以上より、本実施の形態におけるX線分析方法では、試料32に含まれる元素の吸収端付近において、X線波長をステップごとに変化させ散乱X線強度を測定し、その散乱X線をホログラフィー法により試料透過後のX線散乱振幅を再生し、その屈折率の実部と虚部δ、βを得、その値の変化形状からXANESあるいはXAFS分析原理により、試料中の元素の化学結合状態を、高位置精度で2次元的に分析するものである。さらに簡便に化学結合状態をイメージングするには、結合状態のスペクトル構造の特徴的な2つのエネルギー値での測定データから、たとえば図37におけるC、D、E、F点での吸収係数の差分、C−F、D−F、E−Fあるいはその比、C/F、D/F、E/Fを計算し、そのイメージから、結合状態のマッピングを得ることができる。
また、試料透過後のX線振幅を、試料32を設置しない状態で、同条件で取得したX線振幅で割ることにより、入射X線の強度むらの影響を低減することができる。尚、試料32を設置しない状態に代えて、ダミーの試料、例えば、SiO2のみからなるダミー部材を設置してもよい。
また、このX線ホログラフィー法によるXANES又はXAFSによる2次元マップを形成する方法については、X線フーリエホログラフィー法を用いて説明したが、試料からの散乱X線の振幅が得られれば、この方法に限られるものではなく、例えばインラインホログラフィー法等を用いてもよい。
〔第11の実施の形態〕
次に、第11の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1から第6におけるX線分析装置を用いたX線分析方法であり、より鮮明な画像イメージを得ることのできるX線分析方法である。
第7の実施の形態では、試料有りの散乱強度測定から得られたイメージから試料無しの測定から得られたイメージを除去し、バックグラウンドを低減するX線分析方法、第9の実施の形態では、波長(エネルギー)の異なるX線を用いた測定から得られたイメージの、差分をとることによりバックグラウンドを低減するX線分析方法、第6の実施形態では、円偏光のヘリシティが+1およびー1のX線による散乱測定からのイメージの差分をとることにより磁気情報を得るX線分析装置について説明したが、本実施の形態は、これらの実施の形態において、より鮮明なイメージ画像を得ることができるものである。
具体的には、上述したX線分析方法及びX線分析装置においては、イメージデータの差分をとった結果、フレア状の影が現れることがある。これは、散乱データの中心部に含まれている直接光や高調波といったバックグラウンドの強度分布が、2つのデータで完全に同一ではないために、差分によって、人工的に生じるものである。
本実施の形態は、このバックグラウンドを低減するものである。このようなバックグラウンドの特徴は、本来の試料構造が反映された散乱強度分布とは異なる周波数分布を持つことである。例えば、直接光強度の違いによる散乱強度の影響は低周波数、検出器のノイズは高周波数領域に現れる。本実施の形態では、この特徴を利用してバックグラウンドを低減するものである。
図38に基づき、本実施の形態を説明する。
最初に、ステップ502(S502)において、第1の状態において、X線源よりX線を照射し、検出器13により散乱強度分布を検出する。この第1の状態は、例えば、第7の実施の形態におけるステップ102、第9の実施の形態におけるステップ302等に記載されている状態に相当するものである。
次に、ステップ504(S504)において、ステップ502により得られた散乱強度分布を逆フーリエ変換することによりイメージ1を得る。
一方、ステップ506(S506)において、第2の状態において、X線源よりX線を照射し、検出器13により散乱強度分布を検出する。この第2の状態は、例えば、第7の実施の形態におけるステップ104、第9の実施の形態におけるステップ304等に記載されている状態に相当するものである。
次に、ステップ508(S508)において、ステップ506により得られた散乱強度分布を逆フーリエ変換することによりイメージ2を得る。
次に、ステップ510(S510)において、イメージ1とイメージ2との差分を算出し、差分イメージを得る。
次に、ステップ512(S512)において、ステップ510において得られた差分イメージをフーリエ変換し、差分散乱データを得る。
次に、ステップ514(S514)において、ステップ512において得られた差分散乱データをフィルタリングする。このフィルタリングは、バックグラウンドの除去を目的とするものであり、差分散乱データにおける空間周波数分布に、バックグラウンドの寄与の大きい部分に窓関数を掛け、バックグラウンドの寄与を減らす。用いられる窓関数としては、矩形、三角形、ハニング窓、ハミング窓などがある。
次に、ステップ516(S516)において、フィルタリングされた差分散乱データを逆フーリエ変換する。これにより、フレア状の影等のバックグラウンドを低減することができ、鮮明なイメージ画像を得ることができる。
尚、本実施の形態では、ステップ502からステップ510におけるプロセスは、例えば、第6の実施の形態におけるX線分析装置により行われるX線分析方法、第7の実施の形態又は第9の実施の形態におけるX線分析方法であってもよい。
以上、実施の形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
上記の説明に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
干渉性X線が発せられるX線源と、
前記X線源からのX線をコリメートするX線コリメータと、
X線を吸収又は反射する材料により形成されており、前記X線の可干渉となる位置に設けられた参照穴及びX線透過窓とを有し、前記コリメートされたX線が照射されるX線吸収部と、
前記X線透過窓を透過したX線が照射される位置に設置される試料と、
前記試料により生じる散乱X線と、前記参照穴を通過したX線との干渉により生じたホログラムを検出する検出器と、
前記検出器により得られた前記ホログラムに基づき前記試料の内部構造のイメージ画像を得るためフーリエ変換を行う処理部と、
を有し、
前記試料は、前記X線吸収部に対し相対的に移動させることができるものであることを特徴とするX線分析装置。
(付記2)
干渉性X線が発せられるX線源と、
前記X線源からのX線をコリメートするX線コリメータと、
X線を透過する膜上に、前記X線を吸収する材料により形成されたX線吸収領域を有し、前記コリメートされたX線が照射されるX線吸収部と、
前記X線吸収領域と可干渉となる位置に設置される試料と、
前記試料により生じる散乱X線と、前記X線吸収領域の周囲に照射されるX線との干渉により生じたホログラムを検出する検出器と、
前記検出器により得られた前記ホログラムに基づき前記試料の内部構造のイメージ画像を得るためフーリエ変換を行う処理部と、
を有し、
前記試料は、前記X線吸収部に対し相対的に移動させることができるものであることを特徴とするX線分析装置。
(付記3)
前記試料は観察用試料部に設けられたX線を透過する支持膜上に設置されていることを特徴とする付記1または2に記載のX線分析装置。
(付記4)
前記試料は支持棒により支持されていることを特徴とする付記1または2に記載のX線分析装置。
(付記5)
干渉性X線が発せられるX線源と、
前記X線源からのX線をコリメートするX線コリメータと、
X線を吸収又は反射する材料により形成されており、前記X線の可干渉となる位置に設けられた参照穴及びX線透過窓とを有し、前記コリメートされたX線が照射されるX線吸収部と、
前記X線透過窓に対応する位置に試料を滴下する試料供給ノズルと、
前記試料により生じる散乱X線と、前記参照穴を通過したX線との干渉により生じたホログラムを検出する検出器と、
前記検出器により得られた前記ホログラムに基づき前記試料の内部構造のイメージ画像を得るためフーリエ変換を行う処理部と、
を有することを特徴とするX線分析装置。
(付記6)
前記X線透過窓に対応する位置に前記試料が設置された際に、
前記X線吸収部の前記参照穴に対応する領域における前記支持膜には、開口窓が設けられていることを特徴とする付記3に記載のX線分析装置。
(付記7)
前記観察用試料部は、前記支持棒を軸に前記試料を回転することができるものであって、
前記検出器において、前記試料の回転させた角度ごとのホログラムを検出し、
前記処理部において、前記ホログラムに基づき前記試料における3次元の内部構造のイメージ画像を算出することを特徴とする付記4に記載のX線分析装置。
(付記8)
干渉性X線が発せられるX線源と、
前記X線を右円偏光と左円偏光に切換えることの可能な偏光子と、
前記偏光子を透過したX線をコリメートするX線コリメータと、
X線を吸収又は反射する材料により形成されており、前記X線の可干渉となる位置に設けられた参照穴及びX線透過窓とを有し、前記コリメートされたX線が照射されるX線吸収部と、
前記X線透過窓を透過したX線が照射される位置に設置される試料と、
前記試料により生じる散乱X線と、前記参照穴を通過したX線との干渉により生じたホログラムを検出する検出器と、
前記検出器により得られた前記ホログラムに基づき前記試料の内部構造のイメージ画像を得るためフーリエ変換を行う処理部と、
を有し、
前記試料は磁化しており、前記右円偏光のX線により得られるホログラムと、前記左円偏光のX線により得られるホログラムに基づき前記処理部において前記試料の磁化方向のイメージ画像を得ることができるものであって、
前記試料は、前記X線吸収部に対し相対的に移動させることができるものであることを特徴とするX線分析装置。
(付記9)
干渉性X線が発せられるX線源と、
前記X線源からのX線をコリメートするX線コリメータと、
X線を吸収又は反射する材料により形成されており、前記X線の可干渉となる位置に設けられた参照穴及びX線透過窓とを有し、前記コリメートされたX線が照射されるX線吸収部と、
前記X線透過窓を透過したX線が照射される位置に設置される試料と、
前記試料により生じる散乱X線と、前記参照穴を通過したX線との干渉により生じたホログラムを検出する検出器と、
前記検出器により得られた前記ホログラムに基づき前記試料の内部構造のイメージ画像を得るためフーリエ変換を行う処理部と、
を有するX線分析装置を用いたX線分析方法において、
前記X線透過窓を透過したX線が照射される位置に前記試料を設置しない状態で前記検出器により検出を行う第1の検出工程と、
前記X線透過窓を透過したX線が照射される位置に前記試料を設置した状態で前記検出器により検出を行う第2の検出工程と、
前記第1の検出工程において検出された0次回折光のピークの値を前記第2の検出工程において検出された0次回折光のピークの値が一致するように、第1の検出工程において検出されたホログラムを規格化する規格化工程と、
前記第2の検出工程により得られたホログラムと前記規格化されたホログラムとの差分を算出する差分算出工程と、
前記差分を逆フーリエ変換する逆フーリエ変換工程と、
を有することを特徴とするX線分析方法。
(付記10)
前記第1の検出工程は、前記検出器による検出を行うことなく、前記X線透過窓の形状に基づき、前記X線透過窓を透過したX線が照射される位置に前記試料が設置されていない状態の前記検出器に検出されるホログラムを算出するものであることを特徴とする付記9に記載のX線分析方法。
(付記11)
干渉性X線が発せられるX線源と、
前記X線源からのX線をコリメートするX線コリメータと、
X線を吸収又は反射する材料により形成されており、前記X線の可干渉となる位置に設けられた参照穴及びX線透過窓とを有し、前記コリメートされたX線が照射されるX線吸収部と、
前記X線透過窓を透過したX線が照射される位置に設置される試料と、
前記試料により生じる散乱X線と、前記参照穴を通過したX線との干渉により生じたホログラムを検出する検出器と、
前記検出器により得られた前記ホログラムに基づき前記試料の内部構造のイメージ画像を得るためフーリエ変換を行う処理部と、
を有するX線分析装置を用いたX線分析方法において、
前記試料を構成する元素のうち1の元素の吸収端よりも短い波長の第1のX線を照射しホログラムを得る第1のX線照射工程と、
前記1の元素の吸収端よりも長い波長の第2のX線を照射しホログラムを得る第2のX線照射工程と、
前記第1のX線照射工程により得られたホログラムを逆フーリエ変換することにより第1のイメージ画像を算出し、前記第2のX線照射工程により得られたホログラムを逆フーリエ変換することにより第2のイメージ画像を算出する逆フーリエ変換工程と、
前記第1のイメージ画像と前記第2のイメージ画像との差分を算出する差分算出工程と、
を有することを特徴とするX線分析方法。
(付記12)
干渉性X線が発せられるX線源と、
前記X線源からのX線をコリメートするX線コリメータと、
X線を吸収又は反射する材料により形成されており、前記X線の可干渉となる位置に設けられた参照穴及びX線透過窓とを有し、前記コリメートされたX線が照射されるX線吸収部と、
前記X線透過窓を透過したX線が照射される位置に設置される試料と、
前記試料により生じる散乱X線と、前記参照穴を通過したX線との干渉により生じたホログラムを検出する検出器と、
前記検出器により得られた前記ホログラムに基づき前記試料の内部構造のイメージ画像を得るためフーリエ変換を行う処理部と、
を有するX線分析装置を用いたX線分析方法において、
前記試料を構成する元素のうち1の元素の吸収端よりも短い波長の第1のX線を照射しホログラムを得る第1のX線照射工程と、
前記1の元素の吸収端よりも長い波長の第2のX線を照射しホログラムを得る第2のX線照射工程と、
第1のX線照射工程により得られたホログラムと第2のX線照射工程により得られたホログラムとの差分を算出する差分算出工程と、
前記差分を逆フーリエ変換する逆フーリエ変換工程と、
を有することを特徴とするX線分析方法。
(付記13)
付記9または12のX線分析方法における逆フーリエ変換工程は第1の逆フーリエ変換工程であって、
前記第1の逆フーリエ変換工程により得られたデータをフーリエ変換するフーリエ変換工程と、
前記フーリエ変換工程により得られたデータのフィルタリングを行うフィルタリング工程と、
前記フィルタリング工程により得られたデータを逆フーリエ変換する第2の逆フーリエ変換を行うことを特徴とする付記9または12に記載のX線分析方法。
(付記14)
付記11のX線分析方法における逆フーリエ変換工程は第1の逆フーリエ変換工程であって、
前記差分算出工程により得られたデータをフーリエ変換するフーリエ変換工程と、
前記フーリエ変換工程により得られたデータのフィルタリングを行うフィルタリング工程と、
前記フィルタリング工程により得られたデータを逆フーリエ変換する第2の逆フーリエ変換を行うことを特徴とする付記11に記載のX線分析方法。
(付記15)
干渉性X線が発せられるX線源と、
前記X線源からのX線をコリメートするX線コリメータと、
X線を吸収又は反射する材料により形成されており、前記X線の可干渉となる位置に設けられた参照穴及びX線透過窓とを有し、前記コリメートされたX線が照射されるX線吸収部と、
前記X線透過窓を透過したX線が照射される位置に設置される試料と、
前記試料により生じる散乱X線と、前記参照穴を通過したX線との干渉により生じたホログラムを検出する検出器と、
前記検出器により得られた前記ホログラムに基づき前記試料の内部構造のイメージ画像を得るためフーリエ変換を行う処理部と、
を有するX線分析装置を用いたX線分析方法において、
前記X線透過窓を透過したX線が照射される位置に前記試料を設置した状態で、前記X線の波長を変化させながら前記検出器により検出を行う検出工程と、
前記検出工程において検出されたホログラムに基づき、XANESまたはXAFSにより、前記試料における化学結合状態の測定を行う測定工程と、
を有することを特徴とするX線分析方法。