JP4015070B2 - 分離部材、シート材の給送装置及び画像形成装置 - Google Patents

分離部材、シート材の給送装置及び画像形成装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、シート材積載部材に積載されたシート材のうち最上位のシート材を1枚だけ分離して給送するための分離部材、これを備えたシート材の給送装置、これらを備えた画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
デジタル複写機等の複写機、普通紙ファクシミリ等のファクシミリ、レーザビームプリンタ、インクジェットプリンタ等のプリンタ、孔版印刷機等の印刷機等の画像形成装置は一般に、シート状の記録媒体である用紙等のシート材に対し、感光体等の像担持体等を含む等の構成の画像形成部によりトナー、インキ等による画像を形成する。
【0003】
したがって、かかる画像形成装置には一般に、複数枚のシート材を積載可能な給紙トレイ等のシート材積載部材を備え、シート材積載部材に積載されたシート材を画像形成部に向けて給送するシート材の給送装置が備えられている。このようなシート材の給送装置においては、給紙トレイに積載されたシート材を一枚ずつ画像形成部に向けて送り出すことが重要であり、そのために、シート材給送装置は、積載されたシート材のうち一番上に位置する最上位のシート材から1枚ずつ分離して画像形成部へ給送するように構成されている。
【0004】
従来、かかる構成として、シート材の給送方向の先端における幅方向の両端部を爪部材により押さえて分離させるコーナ爪分離方法、摩擦部材を押圧してシート材を分離する分離パッド方法、シート材を傾斜面を有する固定のゲート部材に突き当てて分離する土手分離方法等を用いる構成が一般に知られている。
【0005】
これらの構成のうち、部品点数が少なく低コストで、同一構成でサイズの異なる厚紙と薄紙とを含む多種多様のシート材(例えば、葉書,封筒,OHP用紙等)に適用できるシート材分離方法を用いる構成としては、周知の分離パッド方式を用いる構成、あるいは例えば〔特許文献1〕に示されているような土手分離方法を用いる構成がある。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−91612号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような分離方法を採用した従来のシート材の給送方法とその装置にあっては、前者の分離パッド方法では、特に低価格の10PPM(画像形成速度が1分間に10枚)以下の低速機の場合、給送ローラと摩擦部材とに挾持されたシート材により搬送時にスティッキングスリップに起因する異音が発生するため、給送ローラを半月形状にする対策をとる必要が生じる。
【0008】
そのため、シート材積載部材の上昇を制限するための給送ローラ径より僅かに小径の一対の円筒状のカラーを余分に給送ローラと同軸上に給送ローラの両側に設ける必要があり、部品点数が増えて生産コストが上昇する結果となる。また、最近はリサイクル紙の使用増加に伴って、葉書,封筒等のシート材の搬送方向の先端部がささくれていたり、裁断時にバリが発生していたりするものが多いため給送時の搬送負荷となり、分離パッド方法ではシート材の不送りが生じやすいという問題点もある。
【0009】
さらに、コピー紙の再利用で裏紙の使用も増えており、積載されたシート材間の摩擦係数のバラツキが多くなって重送が発生するおそれもあり、裏紙の場合は定着時及び環境によりシート材にカールがかかり、そのカール方向によってはシート材の分離部においてシート材先端に負荷が生じたり、シート材を分離部へ搬送できずに不送りとなったりすることもあり得る。
【0010】
なお、分離パッド方法の場合、パッドの平面部を給送ローラに押圧させているため、積載状態から繰り出されるシート材の搬送方向(底板等のシート材積載部材の変位角に対応する)に対して分離パッドの角度を所定の範囲内の角度としなければならず、そのためには給送ローラのローラ径が制限され、レイアウトの自由度に制約を受けて給送装置の小型化を図り得ないという点にも問題がある。
【0011】
一方、後者の土手分離方法の場合、〔特許文献1〕に示されているものは、給送ローラと接している傾斜部材の上縁部分が平坦で給送ローラとのニップ部が広く、部材のバラツキ等によりその傾斜面を所定の傾斜角度に配設することが困難になる。また、通常最上位のシート材が画像形成部で搬送されているときには給送ローラは駆動を遮断されているが、先行のシート材が給送ローラとゲート部材間でニップされている間は、そのシート材との摩擦力により給送ローラは連れ回りしており、先行のシート材の後端がニップ部を抜けると、次のシート材の先端が給送ローラの連れ回りにより傾斜部材に送られる。このとき、シート材同志の摩擦係数が高いかバラツキが大きく、先行のシート材と次のシート材との間の摩擦係数より次のシート材とその次のシート材との間の摩擦係数の方が低い場合には、次のシート材が傾斜部材を乗り越えてしまい、重送となるおそれがあった。
【0012】
上記のような問題点を解決するため、本件出願人は先に簡単な構成で多種多様のシート材の曲げ弾性係数の影響を激減させ、各種のシート材を不送りや重送を生じることなく1枚ずつ分離して確実に給送するためのシート材の給送装置を開発して出願した(特願2001−217675号等)。
【0013】
かかる先願はシート材の分離に際しシート材の先端が突き当たる傾斜面を備えた分離部材を用い、給紙ローラ等によってシート材積載部材から送り出されたシート材がニップ部に進入する前に、傾斜面において、プレ分離を行う分離方式に関するものであって、傾斜面とシート材先端の進入方向とのなす角度がプレ分離の性能に大きく寄与する方式に関するものである。
【0014】
しかしながら、先願においてシート材が積載されているシート材積載部材は、一般的に用いられているものと同様に、積載したシート材のうちの最上位のシート材が給紙ローラに当接するよう、給紙ローラに向けて付勢されているとともに一端部を中心に回動自在とされ、シート材の消費が進むにつれて傾斜するようになっているため、シート材積載部材上に積載されたシート材の枚数により、傾斜面に対するシート材先端の進入方向が変化することで、傾斜面とシート材先端の進入方向とのなす角度が変動し、その結果、プレ分離の性能が変動する。
【0015】
従って、大容量のシート材積載部材を用いる構成にあっては、シート材を満載したときとシート材の消費が進んだラスト時とでのシート材の進入角度の差が大きいため、安定したプレ分離性能を確保することが困難である。また、傾斜面とシート材先端の進入方向とのなす角度の大幅な変動は、シート材先端にダメージを与える恐れがある。
【0016】
本発明の目的は、シート材積載部材に積載されたシート材の量にかかわらず、傾斜面に対するシート材の進入角度を安定させた分離部材、これを有するシート材の給送装置及びこれらを有する画像形成装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、シート材を積載するシート材積載部材から送り出されたシート材の先端が係合する、シート材の送り方向に対して傾斜した傾斜面と、
上記シート材積載部材からシート材を送り出す給送手段に対向配置され、同給送手段との間で、同給送手段によってシート材積載部材から送り出されたシート材を一枚ずつ分離するための当接面とを有し、上記給送手段に対して移動可能であり、圧縮ばねによって上記当接面を上記給送手段に圧接される分離部材において、上記傾斜面が、上記送り方向における上記当接面の上流側の、同当接面に隣り合う位置に配置されているとともに、上記送り方向に応じてシート材の先端との係合位置が異なる曲面を有しており、上記曲面によって、上記シート材積載部材から送り出されたシート材のうち最上位のシート材を、他のシート材からずらすプレ分離を行い、上記曲面によってプレ分離が行われた上記最上位のシート材のみを、上記圧縮ばねに抗して上記当接面と上記給送手段との間のニップ部に進入させて、上記他のシート材から分離して上記給送手段によって送り出すことを特徴とする。
【0018】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の分離部材において、上記曲面の、上記係合位置における接線方向と、同係合位置における上記送り方向とのなす角が、所定の角度をなすことを特徴とする。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の分離部材において、上記所定の角度が50°以上70°以下の範囲内にあることを特徴とする。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載の分離部材において、上記曲面が円弧状をなすことを特徴とする。
【0022】
請求項記載の発明は、シート材を積載するシート材積載部材と、このシート材積載部材に積載されたシート材に係合し同シート材を送り出す給送手段と、この給送手段によって上記シート材積載部材から送り出されたシート材を一枚ずつ分離するための、請求項1ないしの何れか1つに記載の分離部材とを有するシート材の給送装置にある。
【0023】
請求項記載の発明は、請求項記載のシート材の給送装置において、上記シート材積載部材は、このシート材積載部材に積載されたシート材のうち最上位のシート材を上記給送手段に係合させるよう傾斜可能であり、このシート材積載部材の傾斜の変化により、このシート材積載部材から上記給送手段によって送り出されたシート材の送り方向が変化し、この送り方向の変化により、上記傾斜面に対する、同シート材の先端との係合位置が異なることを特徴とする。
【0024】
請求項記載の発明は、請求項1ないしの何れか1つに記載の分離部材、または、請求項5または6記載のシート材の給送装置を有する画像形成装置にある。
【0025】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明を適用した実施の形態に係る分離部材、これを有するシート材の給送装置及びこれらを有する画像形成装置を示しており、同図に示す画像形成装置は、デジタル複写機の構成を示している。画像形成装置としては、他の複写機、普通紙ファクシミリ等のファクシミリ、レーザビームプリンタ、インクジェットプリンタ等のプリンタ、孔版印刷機等の印刷機等であってもよい。画像形成装置30は単色画像を形成するものであるが、カラー画像を形成することが可能なものであっても良い。画像形成装置30は、シート状の記録媒体としてのシート材2として、普通紙のほか、厚紙やOHPシート等の特殊シートを用いることができる。
【0026】
画像形成装置30は、画像形成装置本体31の上方から、光学読取系としての原稿読み取り部32と、光書込み系としての書き込み装置33と、作像系としての画像形成部34と、シート材2の両面に画像形成を行う際に画像形成部34において片面にトナー像を形成されたシート材2を反転して再度画像形成部34に送る両面装置42と、シート材の給送装置としての給紙装置である給送装置100とを有している。
【0027】
画像形成部34は、ドラム状の潜像担持体である像担持体としての感光体ドラム35を備えており、感光体ドラム35は、図示しない駆動源によって図1中、時計方向に回転する。感光体ドラム35の周囲には、回転方向に沿って電子写真複写プロセスを実行するための帯電装置56、現像装置36、転写装置59およびクリーニング装置50がそれぞれ配置されている。
【0028】
画像形成装置30は、符号37で示すシート材2の搬送路において転写装置59の下流側に配設された、シート材2上のトナー像をシート材2に定着する定着装置38と、定着装置38によってトナー像を定着されたシート材2を、画像形成装置31の外に排出するか、両面装置42に送るかを選択する排紙分岐爪51と、定着装置38によってトナー像を定着されたシート材2を画像形成装置本体31の外に排出する排紙ローラ対39と、画像形成装置本体31の外部に配設され排紙ローラ対39によって排出されたシート材2を積載する排紙トレイ40とを有している。
【0029】
原稿読み取り部32では、図示を省略するが、原稿載置台上に載置された原稿を走査するための光源および光路変換用反射鏡が装備され、原稿からの反射光が読み取り光学系を介してCCDなどの光学素子に入射され、光学素子によって原稿の画像データである画像情報として図示しない制御部に出力されるようになっている。書き込み装置33は、制御部に入力された原稿の画像情報等に応じて照射を行う図示しない半導体レーザと、結像光学系をなす図示しない反射鏡および結像レンズとを介してポリゴンミラー33Aからの走査光を感光体ドラム5上に照射して静電潜像を形成するようになっている。
【0030】
半導体レーザは、制御部からの画像信号に基づいて発光制御されるようになっており、制御部では、原稿読み取り部32からの画像情報だけでなく、プリンタとして用いられる場合の印字信号およびファクシミリ装置として用いられる場合の送信信号に応じた画像信号によって半導体レーザの駆動制御を行う。ここに、画像形成装置30は複写機だけでなくプリンタおよびファクシミリ装置としての機能を持つデジタル複合機としての性格を持っている。
【0031】
反転装置42は、排紙分岐爪51による分岐によってシート材2が進入する経路である反転搬送路41と、反転搬送路41を経て搬送されてきたシート材2を積載する両面トレイ43と、両面トレイ43から画像形成部34に向けてシート材2を送り出す経路である両面搬送路44とを有している。
【0032】
給送装置100は、シート材2を積載するとともに積載したシート材2を画像形成部34に供給するものである。図2または図3に示すように、給送装置100は、四周に高さの低い壁面を備えた浅い筺状の装置本体10と、装置本体10の側面の開口部10bを通して着脱自在に装着されるカセット11とを有している。このカセット11内には複数のシート材2を積載可能なシート材積載部材である底板1が一端を支軸1aにより搖動自在に支持されており、カセット11との間に係着された圧縮ばね3により自由端部が図2において常時上方へ付勢されている。
【0033】
装置本体10は、圧縮ばね3により図2において反時計方向に付勢された底板1上に積載されたシート材2の最上位のシート材2aの先端部に圧接し得る給送手段であり分離手段である分離ローラとしての給送ローラ4と、給送ローラ4に対し、圧縮ばね5の付勢力により押圧された分離部材としての傾斜部材6とを有している。給送ローラ4と傾斜部材6とは、シート材2を一枚ずつ分離して画像形成部34に給送するための分離部を構成している。底板1は、支軸1aによって搖動自在に支持されていることと、圧縮ばね3によって付勢されていることにより、積載したシート材2のうち最上位のシート材2aを、給送ローラ4に圧接させて係合させるように傾斜可能となっている。
【0034】
図4に示すように、傾斜部材6は、給送ローラ4により底板1から送り出されたシート材2の先端が突き当たることにより係合する、シート材2の送り方向Sに対して傾斜した傾斜面6aと、シート材2の送り方向における傾斜面6aの下流側に位置し、圧縮ばね5の付勢力により給送ローラ4に圧接可能な当接面6bとを有している。
【0035】
傾斜面6aは、給紙ローラ4の軸方向すなわち図4に垂直な方向から見て、曲面をなしている。傾斜面6aのかかる形状は、給紙ローラ4の軸方向において同じ形状をなしており、かかる軸方向に垂直な、言い換えると図4の紙面と平行などの断面においても同じ形状となるものである。かかる断面は、シート材2の送り方向Sに平行であり、シート材2の面に垂直な面である。当接面6bは、給送ローラ4に対向配置され、給送ローラ4との間で、給送ローラ4によって底板1から送り出されたシート材2を一枚ずつ分離するためのものである。
【0036】
図3及びその一部を拡大して示す図5に示すように、傾斜部材6は、左右両側面に突設したリブ6d,6dを有しており、リブ6d,6dが装置本体10側のガイドレール8,8に摺動自在にガイドされて給送ローラ4に圧接する方向に平行移動可能に装着されている。傾斜部材6は、下部に抜け止め用の一対のフック6f,6fを延設しており、フック6f,6fが装置本体10の図示しない係止部に係合して上昇限が規制されている。
【0037】
シート材2の搬送方向における傾斜部材6の下流側には、給送ローラ4により繰り出されたシート材2を画像形成部34へ搬送する搬送ローラ対7(図3では1個だけを示している)が回転自在に軸支されている。なお、傾斜部材6のかかる平行移動手段は、傾斜部材6側にガイドレールを、装置本体10側にリブを設けても差支えない。
【0038】
ここで、図6ないし図20を参照して、底板1、底板1上に積載されたシート材2、給送ローラ4及び傾斜部材6の関係をモデル化して詳細に説明する。なお、実際の傾斜面6aは、すでに述べたように曲面をなしているが、ここではモデル化のため、傾斜面6aは平面をなしているものとして説明する。また、後述するように、底板1に積載された複数枚のシート材2の最上位のシート材2aの給送ローラ4による繰り出し方向Sは、実際には底板1に積載されているシート材2の枚数に応じて変化するものであるが、ここではモデル化のため、送り出し方向Sは、底板1にシート材2が満載されているときの送り出し方向である水平方向で一定に保たれるものとして説明する。モデル化により、傾斜部材6の傾斜面6aは、一定の繰り出し方向Sに対して常に所定の角度θで一定になっている。なお、モデル化した構成を除く部分は、本実施形態の構成として説明するものである。
【0039】
傾斜面6aに連続する給送ローラ4との当接面6bは、給送ローラ4の軸線方向に沿う突条に形成され、その幅はきわめて狹くなっている。なお、かかる突条は連続する一本からなるようにしてもよく、断続する複数本からなるようにしても差し支えない。給送ローラ4に圧接する底板1上の最上位のシート材2aの圧接部位Xと傾斜部材6の傾斜面6aと当接面6bとが交差する傾斜面終端6cと給送ローラ4との圧接部位であるニップ形成部Nとシート材繰り出し方向Sに沿う距離を可能な限り近接させるようにし、図示しない制御部からの給紙開始信号が発せられると、最上位のシート材2aの繰り出しが終るまで給送ローラ4が回転し得るようになっている。
【0040】
このように、両圧接部位X,N間の距離を小さくすることにより、曲げ弾性係数の異なる各種のシート材でも、シート材先端の曲げ範囲が狹くなるため、曲げ弾性係数が近接する結果となり、傾斜部材6の傾斜面6aで発生する分力のバラツキも抑えられ、曲げ弾性係数の大きい厚紙,葉書,封筒等の場合は言うまでもなく、曲げ弾性係数の小さい薄紙等のシート材でも分離可能となり、多種多様のシート材に対応させることができる。
【0041】
上記の構成の作用を随時図7〜図9を参照して説明する。図7は、最上位のシート材2aの力関係を示すものであり、積載された複数枚のシート材2を給送ローラ4により分離部へ繰り出す力として、最上位のシート材2aの先端により傾斜部材6の傾斜面6aに力Fが作用する。傾斜面6aは最上位のシート材2aの繰り出し方向Sに対して角度θとなるように設定されており、この傾斜面6aに対して垂直方向に分力F1、傾斜面6aに沿う方向に分力F2が発生する。
【0042】
また、傾斜部材6を給送ローラ4に押圧する圧縮ばね5の分離圧Qがシート材2の繰り出し方向Sに対して所定の角度θで設定されており、この分離圧Qを上記の分力F1のα成分F1αより小さく設定することにより、最上位のシート材2aは傾斜部材6の傾斜面6aを乗り越えて図1等に示す搬送ローラ対7の方向へ給送される。
【0043】
図8は、次のシート材2bの力関係を示すものであり、次のシート材2bには、その次のシート材2cとの間の摩擦負荷により力Fpが作用し、この力Fpは傾斜部材6の傾斜面6aに垂直方向の分力Fp1と傾斜面6aに沿う分力Fp2を発生する。しかし、一般にシート材間の摩擦係数は、給送ローラとシート材間の摩擦係数のほぼ50%程度であるため、上記の力Fpも図7に示した力Fのほぼ50%となり、傾斜部材6の傾斜面6aを乗り越える力は発生せず、傾斜部材6により止められて最上位のシート材2aと分離される。
【0044】
また、傾斜部材6の給送ローラ4との当接面6bがシート材との摩擦により摩耗して図9に破線で示す摩耗当接面6b′となった場合でも、傾斜部材6は圧縮ばね5の分離圧力Qの方向に平行移動するだけであるので、傾斜面6aの所定傾斜角θ(図6)は変化することなく分離条件を保つことができる。
【0045】
さらに、傾斜部材6の給送ローラ4との当接面6bを小さくすることにより、最上位のシート材2aとのニップ部が従来のニップ幅D1からニップ幅C1へと小さくなり、最上位のシート材2aの後端部がニップ部を抜けてから給送ローラ4の連れ回りにより次のシート材2bに繰り出し力を与えるニップ幅分の送り量も小さくなるため、シート材2の重送を抑えることが可能になる。
【0046】
図10は、分離部を拡大して示す説明図であり、シート材2は水平に保たれている。このようにシート材の給紙角度が水平であるときは、給送ローラ4の最下点が給紙圧Pの作用点となり、この点Xを原点としたとき、給送ローラ4と傾斜部材6の傾斜面6aとの接点がニップ形成部Nとなる。
このような構成で以下
r:給送ローラの半径
P:給紙圧
Q:分離圧
θ:分離圧の加圧方向とシート材の繰り出し方向とのなす角度(°)
θ:傾斜部材の傾斜面とシート材の繰り出し方向とのなす角度(°)
θp2:給送ローラのニップ形成部の接線と傾斜部材の傾斜面とのなす角度(°)
N:ニップ形成部
μ:給送ローラとシート材との間の摩擦係数
μ:傾斜部材の傾斜面とシート材先端との間の摩擦係数
μp12:シート材の1枚目と2枚目の間の摩擦係数
Δμ:シート材間の摩擦係数の差
とする。
【0047】
ここで
θp2=θ+θ−90° (1)
点Xを原点としたとき、ニップ形成部Nの座標(N,N)は以下のとおりである。
=r・cos(−θ) (2.1)
=r+r・sin(−θ) (2.2)
となる。いま、一例としてr=16,θ=76°,θ=60°とすると、N(3.871,0.475)となる。
【0048】
次に、シート材2に作用する力の関係から不等式を作成するが、シート材2の先端がニップ形成部Nに到達するまでの領域とニップ形成部Nに挾持されるニップ進入過程との2つの場合に分けて図11及び図12の(a),(b)をそれぞれ参照して説明する。図11を参照して、ニップ直前ではシート材2の先端は傾斜部材6の傾斜面6aから垂直抗力Rが作用する。シート材2の先端がニップ形成部Nに到達するためには曲げ変形を必要とし、このときにシート材先端に作用する力はシート材の種類によって異なり、厚紙であれば大きくなる。
【0049】
いま、シート材先端はニップ形成部Nでの給送ローラ外周の接線と同方向であり、且つ、シート材先端は、給紙圧が作用する以外の箇所ではその他の部材に接触しないものとすると、最上位のシート材2aの搬送力は(μ−μp12)・P、重送紙の重送力はΔμ・Pで有るから、不送りNFを防止するためには、
(μ−μp12)・P>R・A
∴P>R・A/(μ−μp12) (3)
重送MFを防止するためには、
Δμ・P<R・A
∴P<R・A/Δμ (4)
A=sinθp2+μ・cosθp2 (5)
【0050】
次に、シート材先端がニップ形成部に進入していく過程について図12の(a)及び(b)を参照して説明する。このとき、シート材先端は傾斜部材の傾斜面から垂直抗力Qとその摩擦力μ・Qを受ける。逆に給送ローラからはシート材先端が挾持されることによる力により垂直抗力Fと搬送方向への摩擦力μ・Fを受ける。したがって、分離圧Qは、
+R・B=Q (6)
・B=Q (7)
B=cosθp2−μ・sinθp2 (8)
また、シート材の長手方向の不送りを防止する条件としては、上記数式(6),(7)から
(μ−μp12)・P+μ・F>Q・A
∴P>{(A/B)−μ}Q/(μ−μp12
+μ・R・B/(μ−μp12) (9)
【0051】
重送を防止する条件としては、
Δμ・P+μp12・F<Q・A
これに数式(6),(7)を代入すると
P<{(A/B)−μp12}Q/Δμ+μp12・R・B/Δμ (10)
(9)式及び(10)式の係数をまとめて整理すると、
不送り防止の条件式としては
P>C・Q+D (11)
重送防止の条件式としては
P<G・Q+H (12)
C={(A/B)−μ}/(μ−μp12) (13)
D=μ・R・B/(μ−μp12) (14)
G={(A/B)−μp12}/Δμ (15)
H=μp12・R・B/Δμ (16)
【0052】
次にシート材先端に作用する力を見るに、シート材先端が曲げ変形するために傾斜部材の傾斜面から力を受けるが、その傾斜面に垂直な分力が前述の垂直抗力Rとなる。この値を簡単に求めるためには、図13に示すように一端が固定された長さLの梁の先端に集中荷重Wがかかったものと考えるのがよい。このとき、梁の先端の撓みymaxは次式で表される。
1max=W・L/3・E・I (17)
I=b・t/12 (18)
但し、I:断面2次モーメント
E:ヤング率
b:梁の幅
t:梁の厚さ
である。
【0053】
そこで、図10における給紙圧Pの作用する点X(原点)が梁の固定点、シート材のニップ形成部Nまでシート材先端が変形すると仮定して垂直抗力Rを求めると、
W=3・E・I・N/L=R・B
∴R=3・E・I・N/B・L (19)
L=√(N +N ) (20)
次の表1は、上記の数式(19)を用いて厚さの異なる厚紙A,厚紙B,薄紙A,薄紙Bに関して算出した垂直抗力Rの値を示したものである。なお、シート材の幅bは、給送ローラの幅と同一として50mmとし、t,Eの値は実測によるものを示している。
【0054】
【表1】
Figure 0004015070
【0055】
ここで以上に示した数式の各変数に実際の値を代入して本願によるシート材分離方法と一般的な従来の分離パッドを用いたシート材分離方法とを対比する。なお、シート材間摩擦係数の差Δμの値としては裏紙使用時も考慮して3水準を用いた。以下の表2に各変数の代入値の一例を示す。
【0056】
【表2】
Figure 0004015070
【0057】
図14は、縦軸に給紙圧P、横軸に分離圧Qをとってこの発明によるシート材の給送方法での上述のNF斜面:(3)式,MF斜面:(4)式,NFニップ:(11)式,MFニップ:(12)式のそれぞれから求めた境界線を示した線図である。なお、MF境界線に関しては3水準のΔμに対応して3本示している。また、分離パッドを用いたFP分離方法に関しても3水準のΔμに対応したMF境界線を示している。さらに参考として、この発明を実施した給紙装置のP.Q設定領域も示してある。また、給紙圧及び分離圧は、バネ秤や圧力センサ等の手段により測定することができる。測定の際には、シート材の重量を考慮するとなお好ましい。
【0058】
この図14から分かるように、裏紙用紙の継ぎ足しを想定したシート材間の摩擦係数の差Δμ=0.2ではFP分離方法の重送領域はかなり狹まり、一般的なP−Q設定では対応できない。これに対し、本願のシート材分離方法ではΔμ=0.2でも重送域までかなりの余裕がある。
【0059】
次式(21)はFP分離方法でのMF境界線を示すものである。
P<(μFP−μp12)Q/Δμ (21)
これに対し、本願のシート材分離方法でのMF境界線の傾きは(15)式から
{(A/B)−μp12}/Δμ
である。これから、本分離方法におけるFP摩擦係数μFPに相当する値がA/Bであることが分かる。これは、シート材先端に作用する力の分力を決定する係数であり、表2に示す各変数の設定例では(5)式及び(8)式から
A/B=1.4 (22)
であって見かけ上μFPが1.4であることと等価となる。このことが本願シート材分離方法がFP分離方法よりもはるかに広い重層余裕度が得られる要因であると考えられる。この場合、本願とFP分離方法の重送境界線の傾きの比は次のようになる。
{(A/B)−μp12}/(μFP−μp12)≒4.1 (23)
このように、本願の重送余裕度はFP分離方法の約4倍の大きさを有している。
【0060】
さらに、シート材の1枚目と2枚目の間の摩擦係数μp12が大きな値となるラグ紙(ボンド紙)や再生紙の場合の重送余裕度を確認するため、μp12=0.77,Δμ=0.2の場合のP−Q線図を図15に示す。この図15から、給紙圧Pが充分に得られれば本願のシート材分離方法によりシート材間の摩擦係数が高い裏紙でも分離可能であることが分かる。
【0061】
次に、図16は、上記の傾斜部材6の傾斜面6aとシート材2の繰り出し方向とのなす角度(θ)を50°から70°に振った場合の重送MF領域と不送りNF領域とを実験データに基づいて縦軸に給紙圧P、横軸に分離圧Qをとって示す図14と同様の線図である。この図16から明らかなように、四角実線で示した設定領域でシート材間の摩擦係数の差Δμ=0.2まで対応可能となる。ただし、上記の角度θを70°に設定した場合には不送りNF領域が厳しくなるが、同図16で四角破線で示した設定領域θ=70°等の分離圧/給紙圧を対応させれば充分に設定可能となる。
【0062】
また、図17は、前述の条件式から求めた厚紙A不送り(NF)領域と実測値とを比較した線図であり、厚紙A不送りNF領域においては、μ=1.3,μ=0.67にて近似し、薄紙B重送MF領域ではμ′=0.15,μ=0.54,Δμ=0.048にて近似することが実測により確認されている。なお、その他の代入値及び厚紙A及び薄紙Bの傾斜面からの垂直抗力Rの値は前述の表1及び表2と同値である。このように、各条件式に別途測定した摩擦係数データを入力することにより実測値と近似することが判明し、上記各条件式の有効性を証明することができた。
【0063】
このような構成からなるシート材の給送装置において、傾斜部材6は複雑な形状をしているため、合成樹脂により一体成形するのが好ましい。その場合、図18及び図19に示すように、傾斜部材6の当接面6bの長さAが給送ローラ4の軸線方向の長さBより大きいと、図示しないシート材の搬送時に給送ローラ4の方向に押圧されてシート材に摺接している傾斜部材6の当接面6bは、その中央部に分離圧がかかっているため、シート材を介して給送ローラ4に押圧されている当接面6bの中央部だけが摩耗して陥没する。
【0064】
傾斜部材6がこのように変形すると、シート材が給送ローラ4と傾斜部材6の間に進入する際、そのシート材は傾斜部材6の変形した当接面6bにならって湾曲しながら給紙される。そのため、シート材の搬送負荷が著しく大きくなったり、剛性の強いシート材では湾曲不能となったりして不送りが発生する。よって、図5に示したように、傾斜部材6の当接面6bの長さを給送ローラ4の軸線方向の長さより小さくして、当接面6bの全長が常時給送ローラ4に当接可能としている。
【0065】
このような構成によれば、傾斜部材6の当接面6bは全長に亘ってシート材を介して給送ローラ4に押圧されているため、当接面6bに部分的な陥没部が形成されるおそれはなく、当接面6bは直線状に平均して摩耗する結果となる。そして、この傾斜部材6は給送ローラ4の方向に平行移動するため、当接面6bに摩耗が生じてもシート材の搬送方向Sに対して傾斜部材6の傾斜面6aは所定の角度を保つことが可能である。
【0066】
度重なる実験の結果から、この実施形態において、シート材2の良好な分離を行うための条件は、図20に示すように、給送ローラ4に押圧する底板1上のシート材2の圧接部位Xと、給送ローラ4に押圧する傾斜部材6の圧接部位Nとのシート材繰り出し方向の距離Kを2〜6mmにし、繰り出されるシート材2の繰り出し方向Sに対して傾斜部材6の傾斜面6aのなす角度θを50°〜70°にするとよいことが判った。
【0067】
このようにすれば、給送ローラ4が通常使用される大きさ、例えばφ16〜36mmの範囲にある限り、傾斜面6aにおいて、給送ローラ4によって底板1から繰り出された複数枚のシート材2のプレ分離すなわち、シート材2aとこれより下位のシート材2b等とのずらしによる分離が行われ、さらに上述の当接面6bにて分離が行われることで、常に良好な分離品質が得られることが確認された。
【0068】
以上、図6ないし図20を参照して、底板1、底板1上に積載されたシート材2、給送ローラ4及び傾斜部材6の関係をモデル化して詳細に説明した。モデル化のため、底板1に積載された複数枚のシート材2の最上位のシート材2aの給送ローラ4による繰り出し方向S、言い換えると底板1からのシート材2の放出角度は、水平方向で一定に保たれているものとした。しかし、繰り出し方向Sは、実際には底板1に積載されているシート材2の枚数に応じて変化するものである。
【0069】
すなわち、図2に沿って説明したように、底板1は、支軸1aによって一端部を搖動自在に支持されていることと、圧縮ばね3によって給送ローラ4に向けて付勢されていることにより、積載したシート材2のうち最上位のシート材2aを、給送ローラ4に圧接させて係合させるように傾斜可能となっている。
【0070】
したがって、シート材2を満載しているときには、図2において実線で示すように、底板1は水平な状態であり、最上位のシート材2の送り方向すなわち繰り出し方向Sも、上述したモデル化の場合と同様に水平であるが、シート材2の消費が進み、積載されたシート材2全体での厚みが減少するにつれて、図2において2点差線で示すように、最上位のシート材2aが給送ローラ4に当接するように、圧縮ばね3の付勢力によって、支軸1aを中心に、給送ローラ4が位置する側が上昇して傾斜していき、繰り出し方向Sも、繰り出し方向Sの下流側が上を向くように傾斜していく。
【0071】
よって、特に底板1が大容量であるときは、シート材2を満載したときとシート材2の消費が進んだラスト時とでのシート材2の傾斜面6aへの進入角度θの差が大きいため、プレ分離性能が変動し、安定したプレ分離性能を確保することが困難である。また、角度θの大幅な変動は、シート材先端にダメージを与える恐れがある。
【0072】
そこで、本発明にかかる傾斜部材6は、モデル化したときの直線状の傾斜面6aと異なり、傾斜面6aが、底板1上のシート材2の量の変化により繰り出し方向Sが変化しても、この方向Sに対し、シート材2の先端と傾斜面6aとの係合位置における傾斜面6aの接線方向がなす角は、常に所定の角度θをなす曲面となっている。すでに述べたように、傾斜面6aは、給紙ローラ4の軸方向すなわち図4に垂直な方向から見て、曲面をなしている。
【0073】
よって、傾斜面6aは、繰り出し方向Sに応じてシート材2の先端との係合位置が異なるが、角度θはプレ分離に適した所定の角度、すなわち上述の50°以上70°以下の範囲内に保たれる。本実施形態における傾斜面6aは、角度θが一定の角度をなすため、曲面が特に円弧状をなしているが、曲面の形状はこれに限らず、角度θが上述の範囲内にあれば円弧状に限らずどのような形状であっても良い。本実施形態において、角度θは、初期状態において60°とされている。
【0074】
したがって、図21に示す、シート材2が底板1に満載であり方向Sがほぼ水平方向を向くときの角度θ=θと、図22に示す、シート材2が消費され底板1に少数枚が積載されるのみとなって方向Sが水平方向に対して仰角をなす斜め方向を向くときの角度θ=θとは、等しい。すなわち、θ=θである。
【0075】
よって、底板1にシート材2が満載されているときも、シート材2が消費されて少数枚が積載されているときも、シート材2の先端にダメージを与えることなく、傾斜部6aにおいてプレ分離性能が良好に発揮され、給送ローラ4と当接面6bとで形成されるニップ部へのシート材2の進入の挙動が安定し、ニップ部において良好に分離が行われ、一枚のみのシート材2が給送され、重送が回避されて良好な分離搬送性能が実現される。
【0076】
なお、すでに述べたように、傾斜部材6は磨耗するため、磨耗によって角度θが変化するが、初期状態の角度θを60°とすることで、磨耗時においても角度θが上述の範囲内に保たれる。このように、初期状態の角度θを許容範囲の下限である50°より大きくして、角度θに経時的な磨耗に対する余裕度を持たせることが望ましい。
【0077】
傾斜面6aのプレ分離性能は、シート材2の先端が最初に突き当たり、当接するときに発揮される。したがって、上述の曲面形状は、傾斜面6aの全体に形成されていることを要せず、少なくとも、給送ローラ4によって底板1上から送られてきたシート材2の先端が最初に突き当たる位置に設けられていれば良い。
【0078】
図23に、傾斜部材6の第2の実施形態を示す。この傾斜部材6は、傾斜面6aの、シート材2の先端が最初に突き当たる部分のみが、角度θをなす曲面からなるよう、初期状態において構成されている。具体的には曲面は、角度θ=60°の円弧状をなし、シート材2の先端が最初に突き当たるS方向上流側の部分にのみ形成されており、S方向において曲面の下流側は、曲面の端部における接線方向に伸びる平面が形成されている。傾斜面6aのプレ分離性能は、シート材2の先端が最初に突き当たり、当接するときに発揮されるものであるから、傾斜部材6がこのような構成であっても、プレ分離性能は良好である。
【0079】
画像形成装置30は以上のような構成であるから、画像形成装置本体31内に設けた光学読取系32により読み取った画像データ等を基にして、書き込み装置33が画像形成部34に備えられている、帯電装置56によって帯電された感光体ドラム35上に潜像を形成し、その潜像を画像形成部34に備えられた現像装置36がトナーにより可視像とする。
【0080】
給送装置100のカセット11から底板1上に積載されたシート材2が給送ローラ4により給送され、傾斜部材6との共働によりシート材2は1枚ずつ良好に分離され、1枚のシート材2のみが搬送ローラ対7によって搬送路37を通して画像形成部34に搬送され、感光体ドラム35上の可視像が転写装置59によりそのシート材2上に転写される。転写後の感光体ドラム35はクリーニング装置50によりクリーニングされ、再度、帯電装置56による帯電に供される。
【0081】
トナー像を転写されたシート材2は定着装置38に搬送されて定着が行われ、排紙分岐爪51を経て排紙ローラ対39に搬送されたときには排紙ローラ対39により外部の排紙トレイ40に排出される。両面画像形成時には、シート材2は排紙分岐爪51により反転搬送路41から両面装置42へ向けて搬送され、両面トレイ43に一旦格納された後に進行方向を逆転し、両面搬送路44から再び画像形成部34に送り込まれて裏面に画像が形成され、定着装置38、排紙分岐爪51、排紙ローラ対39を通って排紙トレイ40上に排出される。
【0082】
以上、本実施形態を説明したが、本発明を適用可能な範囲において、実施形態は上述の態様に限らず他の態様をとることができる。たとえば、図1においては、図面を簡略化するため、給送装置100を1個のみ示したが、必要に応じてサイズの異なる複数個の給紙装置を設けることも可能である。この場合、何れのシート材の給送装置にも本発明を適用可能であり、本発明を適用した分離部材を用いることができる。給送手段は給紙ローラでなく、ベルト状の給紙ベルトであっても良い。
【0083】
【発明の効果】
本発明は、シート材を積載するシート材積載部材から送り出されたシート材の先端が係合する、シート材の送り方向に対して傾斜した傾斜面と、上記シート材積載部材からシート材を送り出す給送手段に対向配置され、同給送手段との間で、同給送手段によってシート材積載部材から送り出されたシート材を一枚ずつ分離するための当接面とを有し、上記給送手段に対して移動可能であり、圧縮ばねによって上記当接面を上記給送手段に圧接される分離部材において、上記傾斜面が、上記送り方向における上記当接面の上流側の、同当接面に隣り合う位置に配置されているとともに、上記送り方向に応じてシート材の先端との係合位置が異なる曲面を有しており、上記曲面によって、上記シート材積載部材から送り出されたシート材のうち最上位のシート材を、他のシート材からずらすプレ分離を行い、上記曲面によってプレ分離が行われた上記最上位のシート材のみを、上記圧縮ばねに抗して上記当接面と上記給送手段との間のニップ部に進入させて、上記他のシート材から分離して上記給送手段によって送り出すので、シート材積載部材に積載されたシート材の量にかかわらず、傾斜面に対するシート材の進入角度を安定させ、傾斜面における曲面によってシート材のプレ分離性能を確保しさらには当接面による分離によってシート材の分離を良好に行うこと、シート材の先端にダメージを与えることを防止すること、及び大容量のシート積載部材に対応することに寄与することができる分離部材を提供することができる。
【0084】
曲面の、係合位置における接線方向と、同係合位置における送り方向とのなす角が、所定の角度をなすこととすれば、シート材積載部材に積載されたシート材の量にかかわらず、傾斜面に対するシート材の進入角度を良好に安定させ、傾斜面におけるシート材のプレ分離性能を確保してシート材の分離を確実に良好に行うこと、シート材の先端にダメージを与えることを良好に防止すること、及び大容量のシート積載部材に良好に対応することに寄与することができる分離部材を提供することができる。
【0085】
所定の角度が50°以上70°以下の範囲内にあることとすれば、傾斜面に対するシート材の進入角度を、プレ分離に適した角度とすることで、傾斜面におけるシート材のプレ分離性能が良好であり、またシート材の先端にダメージを与えることを防止できる分離部材を提供することができる。
【0086】
曲面が円弧状をなすこととすれば、シート材積載部材に積載されたシート材の量にかかわらず、傾斜面に対するシート材の進入角度を一定に保ち、傾斜面におけるシート材のプレ分離性能を確保してシート材の分離を良好に行うこと、シート材の先端にダメージを与えることを防止すること、及び大容量のシート積載部材に対応することに寄与することができる分離部材を提供することができる。
【0088】
本発明は、シート材を積載するシート材積載部材と、このシート材積載部材に積載されたシート材に係合し同シート材を送り出す給送手段と、この給送手段によって上記シート材積載部材から送り出されたシート材を一枚ずつ分離するための、請求項1ないしの何れか1つに記載の分離部材とを有するシート材の給送装置にあるので、上述の各効果を奏する分離部材を有し、シート材積載部材に積載されたシート材の量にかかわらず、傾斜面に対するシート材の進入角度を安定させ、傾斜面におけるシート材のプレ分離性能を確保してシート材の分離を良好に行うこと、シート材の先端にダメージを与えることを防止することに寄与することができ、シート材を一枚のみ分離して給送することを容易かつ確実に実現可能であるとともに大容量化してもこのような効果を奏することができるシート材の給送装置を提供することができる。
【0089】
シート材積載部材が、このシート材積載部材に積載されたシート材のうち最上位のシート材を給送手段に係合させるよう傾斜可能であり、このシート材積載部材の傾斜の変化により、このシート材積載部材から上記給送手段によって送り出されたシート材の送り方向が変化し、この送り方向の変化により、傾斜面に対する、同シート材の先端との係合位置が異なることとすれば、シート材積載部材に積載されたシート材の量によって、シート材の送り方向が変化し、傾斜面とシート材の先端との係合位置が変化するにもかかわらず、傾斜面に対するシート材の進入角度を安定させ、傾斜面におけるシート材のプレ分離性能を確保してシート材の分離を良好に行うこと、及びシート材の先端にダメージを与えることを防止することに寄与することができ、シート材を一枚のみ分離して給送することを容易かつ確実に実現可能であるとともに大容量化してもこのような効果を奏することができるシート材の給送装置を提供することができる。
【0090】
本発明は、請求項1ないしの何れか1つに記載の分離部材、または、請求項5または6記載のシート材の給送装置を有する画像形成装置にあるので、上述の各効果を奏する分離部材またはシート材の給送装置を有し、シート材の重送が容易かつ確実に回避され良好な画像形成を行うことが可能であるとともにシート材の容量を大容量化してもこのような効果を奏することができる、大量の連続画像形成が可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した分離部材、これを有するシート材の給送装置及びこれらを有する画像形成装置の概略構成を示す縦断面図である。
【図2】図1に示したシート材の給送装置の要部の縦断面図である。
【図3】図1に示したシート材の給送装置の分解斜視図である。
【図4】図1に示した分離部材の拡大縦断面図であるとともに図1に示したシート材の給送装置の要部の縦断面図である。
【図5】図1に示した分離部材の斜視図であるとともに図1に示したシート材の給送装置の要部の分解斜視図である。
【図6】図2に示したシート材の給送装置をモデル化したものの一部を拡大して示す説明図である。
【図7】図6に示したシート材の給送装置において最上位のシート材の力関係を示す説明図である。
【図8】図6に示したシート材の給送装置において最上位のシート材の下にあるシート材の力関係を示す説明図である。
【図9】図6に示したシート材の給送装置において傾斜部材の摩耗状態を示す説明図である。
【図10】図6に示したシート材の給送装置において分離部を拡大して示す説明図である。
【図11】図6に示したシート材の給送装置においてニップ直前のシート材先端に作用する力関係を示す説明図である。
【図12】図6に示したシート材の給送装置においてニップ進入時のシート材先端に作用する力関係を示す説明図である。
【図13】先端集中荷重による梁の撓み状態を示す説明図である。
【図14】図6に示したシート材の給送装置によるシート材の分離方法の一例を、従来のシート材の給送装置によるシート材の摩擦分離方法と比較して示す線図である。
【図15】図6に示したシート材の給送装置によるシート材の分離方法の一例を、従来のシート材の給送装置によるシート材の摩擦分離方法と比較して示す他の例の線図である。
【図16】図6に示したシート材の給送装置において傾斜面にシート材の繰り出し方向の先端が突き当たる時の角度を50°から70°に振った場合の設定領域を例示する線図である。
【図17】図16と同様の状態で厚さの異なるシート材の不送り領域と重送領域とを実測定と条件式とで比較した線図である。
【図18】給送ローラと傾斜部材との給送ローラの軸方向における長さの関係を示す比較例の分解斜視図である。
【図19】給送ローラと傾斜部材との給送ローラの軸方向における長さの関係を示す給送ローラと傾斜部材との比較例の横断面図である。
【図20】図6に示したシート材の給送装置において給送ローラと傾斜部材との関係を示す説明図である。
【図21】本発明を適用した分離部材が、シート材を満載したシート材積載部材から繰り出されたシート材の先端と係合した様子を示す模式図である。
【図22】本発明を適用した分離部材が、少数枚のシート材を積載したシート材積載部材から繰り出されたシート材の先端と係合した様子を示す模式図である。
【図23】本発明を適用した分離部材の別の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
1 シート材積載部材
2 シート材
2a 最上位のシート材
4 給送手段
6 分離部材
6a 傾斜面
6b 当接面
30 画像形成装置
S シート材の送り方向
θ、θ、θ 所定の角度

Claims (7)

  1. シート材を積載するシート材積載部材から送り出されたシート材の先端が係合する、シート材の送り方向に対して傾斜した傾斜面と、
    上記シート材積載部材からシート材を送り出す給送手段に対向配置され、同給送手段との間で、同給送手段によってシート材積載部材から送り出されたシート材を一枚ずつ分離するための当接面とを有し、
    上記給送手段に対して移動可能であり、圧縮ばねによって上記当接面を上記給送手段に圧接される分離部材において、
    上記傾斜面が、上記送り方向における上記当接面の上流側の、同当接面に隣り合う位置に配置されているとともに、上記送り方向に応じてシート材の先端との係合位置が異なる曲面を有しており、
    上記曲面によって、上記シート材積載部材から送り出されたシート材のうち最上位のシート材を、他のシート材からずらすプレ分離を行い、
    上記曲面によってプレ分離が行われた上記最上位のシート材のみを、上記圧縮ばねに抗して上記当接面と上記給送手段との間のニップ部に進入させて、上記他のシート材から分離して上記給送手段によって送り出すことを特徴とする分離部材。
  2. 請求項1記載の分離部材において、上記曲面の、上記係合位置における接線方向と、同係合位置における上記送り方向とのなす角が、所定の角度をなすことを特徴とする分離部材。
  3. 請求項2記載の分離部材において、上記所定の角度が50°以上70°以下の範囲内にあることを特徴とする分離部材。
  4. 請求項1ないし3の何れか1つに記載の分離部材において、上記曲面が円弧状をなすことを特徴とする分離部材。
  5. シート材を積載するシート材積載部材と、このシート材積載部材に積載されたシート材に係合し同シート材を送り出す給送手段と、この給送手段によって上記シート材積載部材から送り出されたシート材を一枚ずつ分離するための、請求項1ないし4の何れか1つに記載の分離部材とを有するシート材の給送装置。
  6. 請求項5記載のシート材の給送装置において、上記シート材積載部材は、このシート材積載部材に積載されたシート材のうち最上位のシート材を上記給送手段に係合させるよう傾斜可能であり、このシート材積載部材の傾斜の変化により、このシート材積載部材から上記給送手段によって送り出されたシート材の送り方向が変化し、この送り方向の変化により、上記傾斜面に対する、同シート材の先端との係合位置が異なることを特徴とするシート材の給送装置。
  7. 請求項1ないし4の何れか1つに記載の分離部材、または、請求項5または6記載のシート材の給送装置を有する画像形成装置。
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