JP3978388B2 - シート材給送装置及びそれを備えた画像形成装置 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
この発明は、シート材積載部材に積載されたシート材を最上位のシート材から1枚ずつ分離して給送するシート材給送装置及びそれを備えたファクシミリ,プリンタ,複写機等の画像形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のシート材給送装置として、最上位のシート材に圧接してそのシート材を分離部へ繰り出す給送部材と、この給送部材に圧接し、上記シート材の繰り出し方向前端部側に位置し、シート材の繰り出し方向前端に突き当たる傾斜面を備えたゲート部材(本発明の「傾斜部材」に相当)を有する給紙装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、上記の特許文献1に示されているものは、給送部材に摺接しているゲート部材の上縁部分が平坦でニップ形成部が広く、部材のバラツキ等によりその傾斜面を所定の傾斜角度に保持することが困難であった。そして、このようなゲート部材は形状が複雑であって通常合成樹脂で形成されているが、通紙枚数が多くなると、シート材との摩擦により摩耗が生じ、その摩耗分だけ傾斜面の角度が変化して所定の角度を保つことができなくなり、予想し得ない搬送負荷が発生して搬送不良を生じるおそれがあった。
【0004】
さらに、最上位のシート材が画像形成部で搬送されているときには給送部材は駆動を遮断されているが、先行のシート材が給送部材とゲート部材間でニップされている間は、そのシート材との摩擦力により給送部材が連れ回りしており、先行のシート材の後端がニップ形成部を抜けると、次のシート材の先端が給送部材の連れ回りによりゲート部材に送られる。
このとき、シート材同志の摩擦係数が高いかバラツキが大きく、先行のシート材と次のシート材との間の摩擦係数より次のシート材とその次のシート材との間の摩擦係数の方が低い場合には、次のシート材がゲート部材を乗り越えてしまい、重送となるおそれがあった。
【0005】
このような点に鑑み、本出願人は先に給送部材との当接面を上記給送部材の軸線に沿う突条に形成することにより給送部材とのニップ形成部を可能な限り短くしたシート材給送装置を開発して出願した(特願2002−56456号)。
図8はその傾斜部材の取付構成の一例を示す分解斜視図である。この図8において、傾斜部材103はスプリング102の付勢力により、シート材の給送部材である給送ローラ101に押圧されている。この傾斜部材103は、その上支持部103a,103aがシート材積載部材構造体を構成する給紙カセット104(又は装置本体)に形成された上ガイドレール104a,104aに摺動自在に装着されて移動方向が規制される。なお、図示は省略するが傾斜部材103の下支持部は給紙カセット104(又は装置本体)に設けられた下ガイド部(図示しない)に摺接し、傾斜部材103がシート材搬送時に働く力により回動しようとする力を受け止める役をなしている。
【0006】
この図8にも示すように、一般に傾斜部材はきわめて複雑な形状をしているため、合成樹脂により一体成形するのが好ましいが、前述のように給送ローラとの当接面を幅の狹い突条に形成した場合、シート材との摩擦によりその当接面が早期に摩耗して幅が増大するという問題点があった。
図9に示す傾斜部材はこの点を解決した従来の他の実施形態を示すものであり、図8とほぼ同一形状の傾斜部材103の傾斜面103b及び当接面103cに密着する傾斜面203b及び当接面203cを折り曲げ形成した厚さの薄い弾性金属板203を傾斜部材103の傾斜面103b側から挿着したものであり、その他の構成は図8と同様である。このような構成によれば、比較的摩耗しやすい合成樹脂からなる傾斜部材を金属板により覆うようにしたので、傾斜部材の摩耗が事実上無視し得る程度となる。
【0007】
【特許文献1】
特開平8−91612号公報(第3頁,第1図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のシート材給送装置にあっては、形状複雑な傾斜部材のほかに、この傾斜部材に挿着される弾性金属板、傾斜部材を平行移動させるガイド部材、傾斜部材を給送ローラに圧接させるスプリング等を必要とし、分離部を構成する部品点数が増加すると共に、各構成部品に高精度を要求されて生産コストが上昇するという問題点があった。
この発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、機能を低下させることなく簡単な構成で生産コストの低減が可能なシート材給送装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記の目的を達成するため、シート材積載部材に圧接して回転することによりそのシート材を分離部へ繰り出す給送部材と、この給送部材に、その軸線に沿う突条からなる当接面が圧接し上記シート材の繰り出し方向の先端が突き当たる傾斜面を備えた傾斜部材とを有するシート材給送装置であって、
上記傾斜部材が、上記当接面に対して上記傾斜面と反対側にシート材進行方向に延びる平面部を有するとともに、その平面部側又は上記傾斜面側に、シート材を収納する給紙カセットの固定部に固設可能な基部を有し、上記傾斜面と当接面と平面部と基部とが、弾性金属板を曲げ加工して一体に形成されていることを特徴とする。
また、上記傾斜部材は、上記平面の裏面に振動防止部材を貼着するのが好ましく、上記基部を上記給紙カセットの固定部に固設するとよい。
【0010】
さらに、上記のシート材給送装置と、このシート材給送装置から繰り出されるシート材に画像を形成する画像形成手段とを備えた画像形成装置も提供する。
この発明によるシート材給送装置及びそれを備えた画像形成装置は上記のように構成することにより、弾性金属板を曲げ加工して形成された傾斜部材自体の弾性を利用してその突条からなる当接面を給送部材に押圧させることが可能になり、簡単な構成で部品点数も少なくてすみ、安価に供給することができ、画像形成も確実に行うことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図1はこの発明によるシート材給送装置の一実施形態の主要部を示す断面図、図2はその全体構成を模式的に示す構成図である。まず、図2を参照してこのシート材給送装置の全体構成の概略を説明する。画像形成装置の装置本体10に着脱可能な給紙カセット11には、複数のシート材12を積載可能なシート材積載部材である底板11aが一端を支軸11bにより揺動自在に支持されており、給紙カセット11との間に係着された給紙スプリング13による給紙圧P(図1参照)により自由端部が常時上方へ付勢されている。また、装置本体10には給紙カセット11の底板11aに積載されたシート材12の最上位のシート材12aの先端に圧接し得るように、シート材12の給送部材である給送ローラ1が設けられ、この給送ローラ1に後述する傾斜部材3の当接面3bが分離圧Q(図1参照)で押圧され、これらによりシート材12に対する分離部を構成している。分離部で分離された最上位のシート材12aは、傾斜部材3の両側で給紙カセット11に設けられた搬送ガイド部11c上を給送された後、搬送ローラ対4によって図示しない画像形成部へ搬送される。
【0012】
給送ローラ1に押圧される傾斜部材3は、図1に主要部を拡大して示すように、厚さの薄い弾性金属板(板ばね)を曲げ加工して各部が一体に形成されており、給送ローラ1の反時計方向の回転により図で右方へ繰り出されるシート材12の先端が突き当たる傾斜面3aと、給送ローラ1の軸線1Aに沿う突条からなる当接面3bと、その当接面3bに対して傾斜面3aと反対側にシート材進行方向に延びる平面部と、挿入状態にある図示の給紙カセット11のシート材進行方向下流側に立設した垂直壁面11dに固設可能な基部3cとを有している。この基部3cを垂直壁面11dに締結部位Yで固設する方法としては、ねじ止め,圧入,カシメ,溶着等を適宜選択することができる。
このように、傾斜部材自体を弾性金属板を曲げ加工して形成された弾性体とすることにより、この傾斜部材3の突条からなる当接面を給送ローラ1に押圧する分離圧Qを得るために別個のスプリングを設ける必要がなくなると共に、傾斜部材3の移動方向を規制するガイド部材も必要がなくなる。なお、図1において傾斜部材3の上記平面部の裏面に貼着した振動防止部材5は、給送ローラ1の回転により万一傾斜部材3が振動して異音が発生した場合、それを防止するためのものである。
【0013】
そして、給送ローラ1に圧接する最上位のシート材12aの圧接部位Xと、傾斜部材3の傾斜面3aと給送ローラ1の外周面とが接する部位であるニップ形成部Nとのシート材繰り出し方向に沿う距離を可能な限り近接させるようにし、図示しない制御部からのシート材給送開始信号が発せられると、最上位のシート材12aの繰り出しが終るまで給送ローラ1が回転し得るようにする。
このように両圧接部位X,N間の距離を小さくすることにより、シート材先端の曲げ範囲が狭くなるため、曲げ弾性係数の異なる各種のシート材でも曲げ弾性係数が近接する結果となり、傾斜部材3の傾斜面3aで発生する分力のバラツキも抑えられ、曲げ弾性係数の大きい厚紙,葉書,封筒等の場合は言うまでもなく、曲げ弾性係数の小さい薄紙等のシート材でも分離可能となり、多種多様のシート材に対応させて不送りや重送を防止することができ、給紙・搬送品質の安定化を図ることができる。
【0014】
以下、この発明によるシート材の給送装置の作用原理を理論的に説明する。
図3は、分離部を拡大して示す説明図であり、シート材12は水平に保たれている。このようにシート材の給紙角度が水平であるときは、給送ローラ1の最下点が給紙圧Pの作用点となり、この点Xを原点としたとき、給送ローラ1と傾斜部材3の傾斜面3aとの接線がニップ形成部Nとなる。
このような構成で以下
r:給送ローラの半径
P:給紙圧
Q:分離圧
θ1:分離圧の加圧方向とシート材の繰り出し方向のなす角度(°)
θ2:傾斜部材の傾斜面とシート材の繰り出し方向となす角度(°)
θp2:給送ローラのニップ形成部の接線と傾斜部材の傾斜面とのなす角度(°)
N:ニップ形成部
μ1:給送ローラとシート材との間の摩擦係数
μ2:傾斜部材の傾斜面とシート材先端との間の摩擦係数
μp12:シート材の1枚目と2枚目の間の摩擦係数
Δμp:シート材間の摩擦係数の差
とする。
【0015】
ここで
θp2=θ1+θ2−90 (1)
点Xを原点としたとき、ニップ形成部Nの座標(Nx,Ny)は以下のとおりである。
Nx=r・cos(−θ1) (2.1)
Ny=r+r・sin(−θ1) (2.2)
となる。
いま、一例としてr=16,θ1=76°,θ2=60°とすると、N(3.871,0.475)となる。
次に、シート材12に作用する力の関係から不等式を作成するが、この発明ではシート材12の先端がニップ形成部Nに到達するまでの領域とニップ形成部Nに挾持されるニップ進入過程との2つの場合に分けて図4及び図5の(a),(b)をそれぞれ参照して説明する。
【0016】
図4を参照して、ニップ直前ではシート材12の先端は傾斜部材3の傾斜面3aから垂直抗力Rfが作用する。シート材12の先端がニップ形成部Nに到達するためには曲げ変形を必要とし、このときにシート材先端に作用する力はシート材の種類によって異なり、厚紙であれば大きくなる。
いま、シート材先端はニップ形成部Nでの給送ローラ外周の接線と同方向であり、且つ、シート材先端は、給紙圧が作用する以外の箇所ではその他の部材に接触しないものとすると、最上位のシート材12aの搬送力は(μ1−μp12)・P、重送紙の重送力はΔμp・Pで有るから、不送りNFを防止するためには、
(μ1−μp12)・P>Rf・A
∴P>Rf・A/(μ1−μp12) (3)
重送MFを防止するためには、
Δμp・P<Rf・A
∴P<Rf・A/Δμp (4)
A=sinθp2+μ2・cosθp2 (5)
【0017】
次に、シート材先端がニップ形成部に進入していく過程について図5の(a)及び(b)を参照して説明する。このとき、シート材先端は傾斜部材の傾斜面から垂直抗力Qnとその摩擦力μ2・Qnを受ける。逆に給送ローラからはシート材先端が挾持されることによる力により垂直抗力Fnと搬送方向への摩擦力μ1・Fnを受ける。したがって、分離圧Qは、
Fn+Rf・B=Q (6)
Qn・B=Q (7)
B=cosθp2−μ2・sinθp2 (8)
また、シート材の長手方向の不送りを防止する条件としては、上記数式(6),(7)から
(μ1−μp12)・P+μ1・Fn>Qn・A
∴P>{(A/B)−μ1}Q/(μ1−μp12)
+μ1・Rf・B/(μ1−μp12) (9)
【0018】
重送を防止する条件としては、
ΔμP・P+μp12・Fn<Qn・A
これに数式(6),(7)を代入すると
P<{(A/B)−μp12}Q/Δμp
+μp12・Rf・B/Δμp (10)
(9)式及び(10)式の係数をまとめて整理すると、
不送り防止の条件式としては
P>C・Q+D (11)
重送防止の条件式としては
P<G・Q+H (12)
C={(A/B)−μ1}/(μ1−μp12) (13)
D=μ1・Rf・B/(μ1−μp12) (14)
G={(A/B)−μp12}/Δμp (15)
H=μp12・Rf・B/Δμp (16)
【0019】
ここで、図6はこの発明の他の実施形態の主要部を示す断面図である。この実施形態では、傾斜部材3の基部3cを傾斜面3a側に形成し、給紙カセット11を挿入した図示の状態で上記の垂直壁面11dよりシート材給送方向上流側の水平壁面11eに基部3cを固設したものであり、傾斜面3aと当接面3bと平面部の形状及びその他の構成並びに作用・効果は、図1に示した前実施例と同様である。
【0020】
次に、図7は、上述の給紙装置を備えた画像形成装置の一例である複写機の構成図である。
この複写機20は、複写機本体21内に設けた光学読取系22により読み取った画像データを基にして、光書込系23が作像系24に設けた感光体25上に潜像を形成し、その潜像を作像系24の現像装置26がトナーにより可視像としている。
複写機本体21の下部には上述のシート材給送装置Pが備えてあり、このシート材給送装置Pから積載されたシート材12を給送ローラ1により1枚ずつ給紙し、搬送ローラ対4によって搬送路27を通して作像系24に搬送し、感光体25上の可視像をシート材12に転写する。
【0021】
転写が終るとシート材12は定着装置28に搬送されて可視像が定着された後、排紙ローラ対29により外部の排紙トレイ30に排出される。また、両面画像形成時には、シート材12は図示しない排紙分岐爪により反転搬送路31から両面装置32へ向けて搬送され、両面トレイ33に一旦格納された後に進行方向を逆転し、両面搬送路34から再び作像系24に送り込まれて裏面に画像が形成され、定着装置28を通って排紙トレイ30上に排出される。
【0022】
なお、図7では図面を簡略化するため、シート材給送装置Pは1個のみを示したが、必要に応じてサイズの異なる複数個を設けることも可能であり、またこのシート材給送装置を有する画像形成装置は複写機に限るものではなく、ファクシミリ,プリンタ等にも何等支障なく適用することができる。
【0023】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明によるシート材給送装置によれば、シート材繰り出し方向の先端が突き当たる傾斜面と、突条からなる給紙部材への当接面と、それに続く平面部と、給紙カセットの固定部に固設可能な基部とを備えた傾斜部材を弾性金属板を曲げ加工して一体に形成するようにしたので、従来傾斜部材の当接面を給送部材に押圧して分離圧を発生させていたスプリングや傾斜部材の移動方向を規制するガイド部材等が不要になり、最小の部品点数ときわめて簡単且つ低コストな構成により、経時においても給紙・搬送品質の安定化を図ることができる。
また、上記のシート材給送装置を備えた画像形成装置によれば、多種多様のシート材を不送りや重送なく1枚ずつ確実に分離して画像形成部へ繰り出すことができ、シート材を選ぶことのない画像形成が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態の主要部を示す断面図である。
【図2】同じくその全体構成を模式的に示す構成図である。
【図3】同じくその分離部を拡大して示す説明図である。
【図4】同じくそのニップ直前のシート材先端に作用する力関係を示す説明図である。
【図5】同じくそのニップ進入時のシート材先端に作用する力関係を示す説明図である。
【図6】この発明の他の実施形態の主要部を示す断面図である。
【図7】このシート材給送装置を備えた画像形成装置の一例を示す構成図である。
【図8】従来のシート材給送装置の一例を示す分解斜視図である。
【図9】従来のシート材給送装置の他の例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
1:給送ローラ 3:傾斜部材
4:搬送ローラ対 5:振動防止部材
10:装置本体 11:給紙カセット
12:シート材 20:複写機
Claims (4)
- シート材積載部材に積載されたシート材に圧接して回転することにより該シート材を分離部へ繰り出す給送部材と、該給送部材に、その軸線に沿う突条からなる当接面が圧接し前記シート材の繰り出し方向の先端が突き当たる傾斜面を備えた傾斜部材とを有するシート材給送装置であって、
前記傾斜部材が、前記当接面に対して前記傾斜面と反対側にシート材進行方向に延びる平面部を有するとともに、該平面部側又は前記傾斜面側に、前記シート材を収納する給紙カセットの固定部に固設可能な基部を有し、前記傾斜面と当接面と平面と基部とが、弾性金属板を曲げ加工して一体に形成されていることを特徴とするシート材給送装置。 - 前記傾斜部材は、前記平面の裏面に振動防止部材を貼着したことを特徴とする請求項1に記載のシート材給送装置。
- 前記傾斜部材は、前記基部を前記給紙カセットの固定部に固設したことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート材給送装置。
- 請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシート材給送装置と、該シート材給送装置から繰り出されたシート材に画像を形成する画像形成手段とを備えた画像形成装置。
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