JP4014702B2 - 内燃エンジンの動弁機構 - Google Patents

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  • Valve Device For Special Equipments (AREA)
  • Output Control And Ontrol Of Special Type Engine (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の吸気弁又は排気弁の各々を2つのカムの何れかを選択して駆動するようにした内燃エンジンの動弁機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃エンジンにおいては、燃焼室に開口する吸気ポートと排気ポートが吸気弁と排気弁によってそれぞれ適当なタイミングで開閉されて所要のガス交換がなされるが、内燃エンジンにおいては、高速時において吸気又は排気の流れを促進し、高い充填効率を確保して高出力を実現し、且つ、低速時において高い燃焼効率を確保して高出力と低燃費及び良好な排ガス特性を得るためには、吸気弁又は排気弁のリフト量と開閉タイミングの何れか一方又は双方を高速時と低速時において変更する必要がある。
【0003】
そこで、吸・排気弁を駆動する動弁機構として、高速用カムの両側に第1低速用カムと第2低速用カムを設け、各カムに摺接するロッカアームの相互に隣接するもの同士を連結又は連結解除する連結切換手段を2つ設け、各連結切換手段を各々独立に作動せしめるようにしたものが提案されている(特公平2−50282号公報参照)。
【0004】
上記動弁機構によれば、両連結切換手段を非作動としてロッカーアームを連結解除状態に保つことによって2つの吸気弁又は排気弁を第1及び第2低速用カムで駆動し、何れか一方の連結切換手段を作動せしめて一方の低速用ロッカアームと高速用ロッカアームとを連結することによって一方の吸気弁又は排気弁を高速用カムで駆動し、他方の吸気弁又は排気弁を第1又は第2低速用カムで駆動し、両連結切換手段を作動せしめて両低速用ロッカアームと高速用ロッカアームを連結することによって2つの吸気弁又は排気弁を共に高速用カムで駆動することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記提案に係る従来の動弁機構においては、一方の連結切換手段が作動して一方の吸気弁が高速用カムによって駆動される場合には、吸気の慣性・脈動効果が高速用バルブタイミングに合致するため、中速域において十分なエンジン性能を確保することが困難であるという問題がある。
【0006】
従って、本発明の目的とする処は、中速域において十分なエンジン性能を確保しつつ、低速・低負荷域における混合気の安定燃焼を可能とする内燃エンジンの動弁機構を提供することにある。
【0007】
又、吸・排気弁を駆動する動弁機構として、低速用カム、高速用カムにそれぞれ当接する2つのロッカアームを連結又は連結解除する連結切換手段を有し、低速時には両ロッカアームを連結解除して2つの吸気弁又は排気弁を低速用カムと高速用カムでそれぞれ独立に駆動し、高速時には両ロッカアームを連結して2つの吸気弁又は排気弁を共に高速用カムで駆動するようにしたものが提案されている(特公平2−43003号公報参照)。
【0008】
しかしながら、上記提案に係る従来の動弁機構においては、高速時には1種類の高速用カムによって2つの吸気弁又は排気弁が駆動され、低速時には2つの吸気弁又は排気弁の一方が低速用カムによって駆動され、他方が高速用カムによって駆動されるため、低・中速時に十分なエンジン性能を確保することができないという問題がある。
【0009】
従って、本発明の目的とする処は、低・中速域においては混合気のシリンダ内での乱れを促進して燃焼効率と充填効率の向上を図るとともに、高速時においては十分な混合気をシリンダ内に供給して高出力を得ることができるようにした内燃エンジンの動弁機構を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための内燃エンジンの動弁機構は、2つのカムA,Bにそれぞれ当接する第1及び第2ロッカアームを有し、第1ロッカアームをロストモーション機構に、第2ロッカアームを弁にそれぞれ当接せしめるとともに、両ロッカアームを連結又は連結解除してカムA,Bの一方を選択してそのリフトを弁に伝達する切換手段を設けて構成される動弁ユニットを有することを特徴とする。
【0011】
上記内燃エンジンの動弁機構において、前記カムA,Bの少なくとも一方を低リフトカム、低速用カム又は中速用カムとし、他方をそれよりも高リフトのカムとしてもよい。
【0012】
また、上記内燃エンジンの動弁機構において、前記動弁ユニットを2つ設け、各動弁ユニットの第2ロッカアームを各気筒の中央に隣接して配置し、その両外側に各動弁ユニットの第1ロッカアームを配置してもよい。
【0013】
また、上記内燃エンジンの動弁機構において、前記動弁ユニットを2つ設け、各動弁ユニットの第1ロッカアームを各気筒の中央に隣接して配置し、その両外側に各動弁ユニットの第2ロッカアームを配置してもよい。
【0014】
また、動弁ユニットを2つ有する上記内燃エンジンの動弁機構において、一方の動弁ユニットのカムAを高速用カム、カムBを第1中速用カムとし、他方の動弁ユニットのカムAを第2中速カム、カムBを低リフトカムとしてもよい。
【0015】
また、動弁ユニットを2つ有する上記内燃エンジンの動弁機構において、一方の動弁ユニットのカムAを第1高速用カム、カムBを低速用カムとし、他方の動弁ユニットのカムAを第2高速カム、カムBを低リフトカムとしてもよい。
【0016】
また、上記内燃エンジンの動弁機構において、各動弁ユニットに含まれる前記切換手段を前記第2ロッカアームに設けてもよい。
【0017】
また、上記内燃エンジンの動弁機構において、3つのカムA,B,Cを連設して成るカム軸と、該カム軸のカムA,B,Cにそれぞれ当接する第1、第2及び第3ロッカアームを有し、第1ロッカアームをロストモーション機構に、第2ロッカアームを第1弁に、第3ロッカアームを第2弁にそれぞれ当接せしめるとともに、第1ロッカアームと第2ロッカアームを連結又は連結解除して前記カムA又はカムBを選択してそのリフトを第1弁に伝達する切換手段を設けてもよい。
【0018】
また、3つのカムが設けられた上記内燃エンジンの動弁機構において、前記カムAを高速用カム、カムBを低リフトカム、カムCを中速用カムとしてもよい。
【0019】
また、3つのカムが設けられた上記内燃エンジンの動弁機構において、前記カムA,Cを高速用カム、カムBを低リフトカムとしてもよい。
【0020】
また、3つのカムが設けられた上記内燃エンジンの動弁機構において、前記カムA,Cを高速用カム、カムBを低速用カムとしてもよい。
【0021】
また、第1弁及び第2弁を有する上記内燃エンジンの動弁機構において、前記第1及び第2弁を吸気弁で構成するとともに、第2弁連通する吸気通路に吸気制御弁を設けてもよい。
【0022】
また、3つのカムが設けられた上記内燃エンジンの動弁機構において、前記切換手段を前記第2ロッカアームに設けてもよい。
【0023】
また、上記内燃エンジンの動弁機構において、前記第1ロッカアームと第2ロッカアームとをシムを介して当接させてもよい。
【0024】
従って、上記内燃エンジンの動弁機構によれば、例えば複数の弁が吸気弁であって、動弁ユニットが2つ設けられ、一方の動弁ユニットのカムAを高速用カム、カムBを第1中速用カムとし、他方の動弁ユニットのカムAを第2中速カム、カムBを低リフトカムとした場合、低速・低負荷域において、両切換手段を共に非作動として両動弁ユニットの第1及び第2ロッカアームを連結解除(非連結)状態に保てば、一方の吸気弁は第1中速用カムによって駆動され、他方の吸気弁は低リフトカムによって駆動されるため、混合気が主に一方の吸気弁からシリンダ内に流入する片側吸気となって混合気のシリンダ内での乱れが促進され、混合気の希薄安定燃焼が実現して燃費と排ガス特性が改善される。
【0025】
又、中速域においては、一方の動弁ユニットの切換手段を作動せしめて当該動弁ユニットの第1及び第2ロッカアームを連結すれば、吸気弁は第1及び第2中速用カムによって駆動されるため、高い充填効率が得られ、高出力を得ることができる。
【0026】
そして、高速域においては、両動弁ユニットの切換手段を共に作動せしめて各動弁ユニットの第1及び第2ロッカアームを連結すれば、一方の吸気弁は高速用カムによって駆動され、他方の吸気弁は第2中速用カムによって駆動されるが、特に一方の吸気弁が高速用カムによって駆動されるために該高速域に合致した慣性・脈動効果が得られ、エンジン出力の向上を図ることができる。
【0027】
また、3つのカムを有する上記内燃エンジンの動弁機構によれば、2つのカムA,Bのうちの一方を選択して一方の第1弁を駆動することができるため、例えば第1及び第2弁が吸気弁である場合、カムAを高速用カム、カムBを低リフト、カムCを中速用カムに設定すれば、低・中速域においては第1弁を低リフトカムで駆動し、第2弁を中速用カムで駆動して混合気のシリンダ内での乱れを促進して燃焼効率と充填効率の向上を図ることができる。又、高速域においては第1弁を高速用カムで駆動し、第2弁を中速用カムで駆動することができ、十分な量の混合気をシリンダ内に供給して高出力を得ることができる。
【0028】
第1ロッカアームと第2ロッカアームとをシムを介して当接させる上記内燃エンジンの動弁機構によれば、カムA,Bを第1ロッカアームの第2ロッカアームへの当接部に平面視でオーバーラップして軸方向に詰めて配置することができ、カムA,Bの幅を広げてその面圧を下げ、或は軸方向寸法を詰めてエンジンのコンパクト化を図ることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0030】
<実施の形態1>
図1は本発明の実施の形態1に係る動弁機構を示すエンジンの部分平面図、図2は同動弁機構の構成を示す分解平面図、図3は切換手段が非作動状態にあるときの図1のE−E線断面図、図4は切換手段が非作動状態にあるときの図1のF−F線断面図、図5は図1のG−G線断面図、図6は非作動状態にある切換機構の状態を示す断面図、図7は図6のH−H線断面図、図8は切換手段が作動状態にあるときの図1のE−E断面図、図9は作動状態にある切換機構の状態を示す断面図、図10は図9のJ−J線断面図である。
【0031】
図3及び図4において、1は4サイクル内燃エンジンのシリンダヘッドであり、該シリンダヘッド1には各気筒について2つの吸気ポート2が形成されており、これらの吸気ポート2は第1吸気弁3−1(図3参照)と第2吸気弁3−2(図4参照)によって適当なタイミングで開閉され、各吸気弁3−1,3−2は本発明に係る動弁機構によって駆動される。ここで、第1及び第2吸気弁3−1,3−2は、シリンダヘッド1に圧入されたバルブガイド4に摺動自在に挿通保持されるとともに、シリンダヘッド1とリテーナ5との間に縮装されたバルブスプリング6によって閉じ側に付勢されている。
【0032】
尚、図示しないが、シリンダヘッド1には排気ポートが形成されており、この排気ポートは排気弁によって適当なタイミングで開閉される。
【0033】
而して、本実施の形態においては、図1及び図2に示すように、動弁機構は第1動弁ユニットIと第2動弁ユニットIIによって構成されており、前記第1吸気弁3−1は第1動弁ユニットIによって駆動され、第2吸気弁3−2は第2動弁ユニットIIによって駆動される。
【0034】
ところで、シリンダヘッド1の上方にはカム軸7が図3乃至図5の紙面垂直方向に長く配されており、図2に示すように、該カム軸7には各気筒について4つのカムA,B,A’,B’が一体に連設されている。そして、前記第1動弁ユニットIは、カムA,BとこれらのカムA,Bにそれぞれ当接する第1及び第2ロッカアーム9−1,9−2及び第2ロッカアーム9−2に組み込まれた切換手段20(図3参照)を含んで構成され、第2動弁ユニットIIも同様にカムA’,B’とこれらのカムA’,B’にそれぞれ当接する第1及び第2ロッカアーム9−1’,9−2’及び第2ロッカアーム9−2’に組み込まれた切換手段20’(図4参照)を含んで構成されている。
【0035】
上記各ロッカアーム9−1,9−2,9−1’,9−2’はカム軸7の下方に該カム軸7と平行に配された中空状のロッカシャフト8に回動自在に軸支されており、各動弁ユニットI,IIの第1ロッカアーム9−1,9−1’の各中間部にはタペットねじ11,11’が、第2ロッカアーム9−2,9−2’各一端部にはタペットねじ10,10’がそれぞれ進退可能に螺着されている。そして、第1ロッカアーム9−1のタペットねじ11が設けられる側とは反対側の端部は、図5に示すように、ホルダー16を介してシリンダヘッド1側に支持されたロストモーション機構12に当接している。
【0036】
ここで、上記ロストモーション機構12は、ホルダー16に保持された下方が開口するシリンダ13内にピストン14を摺動自在に嵌装するとともに、該ピストン14をロストモーションスプリング15によって下方に付勢して構成されており、ピストン14の下端には第1ロッカアーム9−1の端部が当接している。従って、第1ロッカアーム9−1はロストモーションスプリング15によってロッカシャフト8を中心として図5の時計方向に付勢されており、その端部のカムスリッパ部9aが図示のように前記カムAに当接されている。尚、図5には第1動弁ユニットI側のロストモーション機構12のみを示すが、第2動弁ユニットII側のロストモーション機構も同様に構成されており、該第2動弁ユニットIIの第1ロッカアーム9−1’もその端部のカムスリッパ部9a’(図1及び図2参照)が前記カムA’に当接されている。
【0037】
又、第1及び第2動弁ユニットI,IIの各第2ロッカアーム9−2,9−2’の端部に螺着された前記タペットねじ10,10’は第1吸気弁3−1、第2吸気弁3−2の各弁軸の頂部にそれぞれ当接するとともに、そのカムスリッパ部9b,9b’がカムB,B’にそれぞれ当接されている。
【0038】
ところで、第1動弁ユニットIの第2ロッカアーム9−2に組み込まれた切換手段20は、第1ロッカアーム9−1と第2ロッカアーム9−2を連結又は連結解除してカムA又はカムBを選択してそのリフトを第1吸気弁3−1に伝達するものであり、第2動弁ユニットIIの第2ロッカアーム9−2’に組み込まれた切換手段20’は、第1ロッカアーム9−1’と第2ロッカアーム9−2’を連結又は連結解除してカムA’又はカムB’を選択してそのリフトを第2吸気弁3−2に伝達するものである。尚、本実施の形態においては、第1動弁ユニットIのカムAは高速用カム、カムBは第1中速用カムで構成され、又、第2動弁ユニットIIのカムA’は第2中速用カム、カムB’は低リフトカムで構成されており、第1中速用カムBと第2中速用カムA’の各プロフィールは互いに異なっている。
【0039】
ここで、第1動弁ユニットI側の切換手段20の構成の詳細を図6及び図7に基づいて説明する。尚、第2動弁ユニットII側の切換手段20’も同様であるため、これについての説明は省略する。
【0040】
図6に示すように、第2ロッカアーム9−2には大小異径の円孔21,22が互いに直交する方向に形成されており、一方の円孔21内にはピストン23が摺動自在に嵌装されている。そして、このピストン23は、これとキャップ24との間に縮装されたスプリング25によって斜め上方に付勢されて第1ロッカアーム9−1に螺着された前記タペットねじ11の下端に当接している。
【0041】
又、上記ピストン23の前記円孔22が開口する側の外周面には所定深さのガイド溝23aが該ピストン23の摺動方向に沿って形成されており、同ピストン23にはこれの摺動方向に直交する方向に円孔23bが貫設されている。そして、この円孔23b内にはリテーナ26が嵌着されるとともに、スライダ27が摺動自在に嵌合保持されており、該スライダ27は、これとリテーナ27との間に縮装されたスプリング28によって外側方(円孔22の方向)に付勢されている。
【0042】
他方、前記円孔22内にはストッパ29が嵌着されるとともに、ピン30が摺動自在に嵌装されており、同円孔22内にはストッパ29とピン30によって区画される油室Sが形成されている。そして、この油室Sには、第2ロッカアーム9−2とロッカシャフト8に形成された油孔31を介してロッカシャフト8内の油路8aが連通している。尚、ピストン23に貫設された前記円孔23bと第2ロッカアーム9−2に形成された円孔22及びスライダ27とピン30とはそれぞれ同径に形成され、且つ、同軸に配されている。
【0043】
次に、本発明に係る動弁機構の作用を説明する。
【0044】
エンジン回転数及び負荷が低い低速・低負荷時においては、両動弁ユニットI,IIの各第2ロッカーアーム9−2,9−2’に設けられた切換手段20,20’は非作動状態にあって、油圧は油室Sに供給されず、例えば切換手段20においては、図6及び図7に示すように、ピン30はスプリング28によって付勢されたスライダ27によって押圧されてストッパ29に当接しており、その一部はピストン23に形成された前記ガイド溝23aに係合している。この状態では、ピストン23は円孔21内を自由に摺動し得ることとなり、第1動弁ユニットIの第1ロッカアーム9−1と第2ロッカアーム9−2とは連結解除(非連結)状態にある。同様に、第2動弁ユニットIIの第1ロッカアーム9−1’と第2ロッカアーム9−2’も連結解除(非連結)状態にある。
【0045】
而して、上記状態においてカム軸7が所定の速度(不図示のクランク軸の1/2の速度)で回転駆動されると、該カム軸7に連設されたカムA,B,A’,B’に当接する第1動弁ユニットIの第1ロッカアーム9−1と第2ロッカアーム9−2及び第2動弁ユニットIIの第1ロッカアーム9−1’と第2ロッカアーム9−2’はそれぞれカムA,B,A’,B’のプロフィールに応じてロッカシャフト8を中心として揺動するが、この低速域においては、前述のように第1動弁ユニットIの第1ロッカアーム9−1と第2ロッカアーム9−2及び第2動弁ユニットIIの第1ロッカアーム9−1’と第2ロッカアーム9−2’は連結解除(非連結)状態にあるため、これらの第1ロッカアーム9−1,9−1’と第2ロッカアーム9−2,9−2’はそれぞれ独立に揺動し、第1吸気弁3−1は第1動弁ユニットIの第2ロッカアーム9−2を介して第1中速用カムBによって駆動され、第2吸気弁3−2は第2動弁ユニットIIの第2ロッカアーム9−2’を介して低リフトカムB’によって駆動される。
【0046】
従って、低速・低負荷域においては、吸気の大部分は相対的にリフト量の大きな第1中速用カムBによって駆動される第1吸気弁3−1を通ってシリンダ内に流入するため、吸気のシリンダ内への非対称流れが促進されるとともに、絞りによって吸気の流速が高められて該吸気のシリンダ内での乱れが促進され、燃焼効率と充填効率が高められる。又、吸・排気弁オーバーラップ時の既燃ガスの吸気への逆流による内部EGR量を低減せしめて安定した燃焼状態と良好な排ガス特性を得ることができる。特に、安定した燃焼が実現することによって燃料の薄い希薄燃焼領域を拡大することができ、これによって燃費の改善を図ることができる。
【0047】
尚、この低速・低負荷域においては、第1ロッカアーム9−1,9−1’の揺動は各切換手段20,20’のピストン23の摺動によって吸収され、第2ロッカアーム9−2,9−2’へは伝達されない。
【0048】
次に、エンジン回転数が増大してエンジンの運転状態が中速域に達すると、第2動弁ユニットIIの切換手段20’が作動して該第2動弁ユニットIIの第1ロッカアーム9−1’と第2ロッカアーム9−2’が連結される。
【0049】
従って、この状態では第1ロッカアーム9−1’と第2ロッカアーム9−2’が連結され、第2ロッカアーム9−2’は第1ロッカアーム9−1’に押されて該第1ロッカアーム9−1’と共に揺動し、第2中速用カムA’のリフトは第1ロッカアーム9−1’及び第2ロッカアーム9−2’を経て第2吸気弁3−2に伝達され、第2吸気弁3−2は第2中速用カムA’によって駆動される。
【0050】
一方、第1動弁ユニットIにおいては切換手段20は非作動状態を維持するため、低速時と同様に第1吸気弁3−1は第1中速用カムBによって駆動される。
【0051】
以上のように、中速域においては、第1吸気弁3−1は第1中速用カムBによって駆動され、第2吸気弁3−2は第2中速用カムA’によって駆動されるため、第1及び第2吸気弁3−1,3−2のリフト量及び開閉タイミングは中速域に最適な値に設定され、シリンダへの吸気の充填効率が高められて高出力が得られる。
【0052】
そして、エンジン回転数が所定値を超える高速域においては、第1動弁ユニットIの切換手段20も作動して該第1動弁ユニットIの第1ロッカアーム9−1と第2ロッカアーム9−2が連結される。即ち、ロッカシャフト8内の油路8aから油孔31を経て第1動弁ユニットIの切換手段20の油室S内に油圧が供給されると、図8乃至図10に示すように、ピン30が油圧によって摺動し、該ピン30がピストン23の円孔23bに嵌入してスライダ27をスプリング28の付勢力に抗して移動させるため、ピストン23の摺動がピン30によってロックされる。
【0053】
従って、第2ロッカアーム9−2は第1ロッカアーム9−1に押されて該第1ロッカアーム9−1と共に揺動し、高速用カムAのリフトは第1ロッカアーム9−1及び第2ロッカアーム9−2を経て第1吸気弁3−1に伝達され、第1吸気弁3−1は高速用カムAによって駆動される。
【0054】
従って、高速域においては、第1吸気弁3−1は高速用カムAによって駆動され、第2吸気弁3−2は第2中速用カムA’によって駆動されるが、特に一方の第1吸気弁3−1が高速用カムAによって駆動されるために該高速域に合致した慣性・脈動効果が得られ、エンジン出力の向上が図られる。
【0055】
又、本実施の形態においては、低・中速時に揺動量の小さな第2ロッカアーム9−2,9−2’に切換手段20,20’を設けたため、第1ロッカアーム9−1,9−1’に設けた場合に比して、この領域(低・中速域)におけるロッカアーム9−1,9−1’,9−2,9−2’全体に作用する慣性力(慣性力の総和)を小さく抑えることができる。
【0056】
尚、以上は特に吸気弁を開閉駆動する動弁機構について述べたが、本発明は排気弁を開閉駆動する動弁機構に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【0057】
ところで、以上説明した実施の形態では、第1及び第2動弁ユニットI,IIの第2ロッカアーム9−2,9−2’を各気筒の中央に隣接して配置し、その両外側に各動弁ユニットI,IIの第1ロッカアーム9−1,9−1’を配置したが、図11及び図12に示すように、第1及び第2動弁ユニットI,IIの第1ロッカアーム9−1,9−1’を各気筒の中央に隣接して配置し、その両外側に各動弁ユニットI,IIの第2ロッカアーム9−2,9−2’を配置しても良い。
【0058】
又、以上の実施の形態では、図5に示すようにロストモーション機構12をホルダー16に保持せしめたが、図13に示すようにロストモーション機構12をシリンダヘッド1に直接設けても良い。
【0059】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2を図14及び図15に基づいて説明する。尚、図14は本実施の形態に係る動弁機構を示すエンジンの部分平面図、図15は図14のK−K線断面図であり、これらの図においては図1乃至図3において示したと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての説明は省略する。
【0060】
前記実施の形態1では、第1ロッカアーム9−1,9−1’の第2ロッカアーム9−2,9−2’への当たりの調整はタペットねじ11,11’によってなされているが、このような構成を採用すると、図1及び図2に示すように、第1ロッカアーム9−1(9−1’)のカムスリッパ部9a(9a’)と第2ロッカアーム9−2(9−2’)のカムスリッパ部9b(9b’)及びカムA(A’)とカムB(B’)をタペットねじ11(11’)を避けて軸方向に罹患させて形成する必要があり、これらの幅が狭くなってその面圧が高くなる他、エンジンの全長が長くなってしまう。
【0061】
そこで、本実施の形態では、各動弁ユニットI,II(図15では一方の動弁ユニットIのみ示す)の第1ロッカアーム9−1の第2ロッカアーム9−2への当接をタペットねじに代えて厚さ調整が可能なシム40を介して行う構成を採用した。
【0062】
而して、上述の構成を採用することによってカムA(A’)とカムB(B’)を第1ロッカアーム9−1(9−1’)の第2ロッカアーム9−2(9−2’)への当接部に平面視でオーバーラップして軸方向に詰めて配置することができ、これらのカムA(A’),B(B’)の幅を広げてその面圧を下げ、或は軸方向寸法を詰めてエンジンのコンパクト化を図ることができる。
【0063】
<実施の形態3>
次に、本発明の実施の形態3を図16乃至図24に基づいて説明する。
【0064】
図16は本発明の実施の形態3に係る動弁機構を示すエンジンの部分平面図、図17は同動弁機構の構成を示す分解平面図、図18は切換手段が非作動状態にあるとき(低・中速時)の図16のL−L線断面図、図19は非作動状態にある切換手段の状態を示す断面図、図20は図19のM−M線断面図、図21は図16のP−P線断面図、図22は切換手段が作動状態にあるとき(高速時)の図16のL−L線断面図、図23は作動状態にある切換手段の状態を示す断面図、図24は図23のQ−Q線断面図である。
【0065】
図18において、1は4サイクル内燃エンジンのシリンダヘッドであり、該シリンダヘッド1には各気筒について2つの吸気ポート2が形成されており、これらの吸気ポート2は第1吸気弁3−1と第2吸気弁3−2(不図示)によって適当なタイミングで開閉される。ここで、第1及び第2吸気弁3−1,3−2は、シリンダヘッド1に圧入されたバルブガイド4に摺動自在に挿通保持されるとともに、シリンダヘッド1とリテーナ5との間に縮装されたバルブスプリング6によって閉じ側に付勢されている。
【0066】
尚、図示しないが、シリンダヘッド1には排気ポートが形成されており、この排気ポートは排気弁によって適当なタイミングに開閉される。
【0067】
又、シリンダヘッド1の上方にはカム軸7が図3の紙面垂直方向に長く配されており、図17に示すように、該カム軸7には各気筒について3つのカムA,B,Cが一体に連設されている。尚、本実施の形態では、カムAは高速用カム、カムBは低リフトカム、カムCは中速用カムにそれぞれ設定されている。
【0068】
そして、上記カム軸7の下方には、中空状のロッカシャフト8がカム軸7と平行に配置されており、該ロッカシャフト8には、カム軸7の前記カムA,B,Cにそれぞれ当接する第1、第2及び第3ロッカアーム9−1,9−2,9−3が回動自在に軸支されている。
【0069】
而して、上記第1ロッカアーム9−1の中間部には進退自在なタペットねじ11が螺着され、第2及び第3ロッカアーム9−2,9−3の各一端部には進退自在なタペットねじ10,10’がそれぞれ螺着されている。そして、第1ロッカアーム9−1のタペットねじ11が設けられる側とは反対側の端部は、図21に示すように、ホルダー16に設けられたロストモーション機構12に当接している。
【0070】
ここで、上記ロストモーション機構12は、ホルダー16に保持された下方が開口するシリンダ13内にピストン14を摺動自在に嵌装するともに、該ピストン14をロストモーションスプリング15によって下方に付勢して構成されており、ピストン14の下端には第1ロッカアーム9−1の端部が当接している。従って、第1ロッカアーム9−1はロストモーションスプリング15によってロッカシャフト8を中心として図6の時計方向に付勢されており、その端部のカムスリッパ部9aが図示のように前記カムAに当接せしめられている。
【0071】
又、前記第2及び第3ロッカアーム9−2,9−3の各端部に螺着されたタペットねじ10,10’は第1及び第2吸気弁3−1,3−2の各弁軸の頂部に当接するとともに、その各カムスリッパ部9b,9cがカムB,Cにそれぞれ当接せしめられている。
【0072】
ところで、第2ロッカアーム9−2内には、第1ロッカアーム9−1と該第2ロッカアーム9−2を連結又は連結解除してカムA又はカムBを選択してそのリフトを第1吸気弁3−1に伝達するための切換手段20が設けられている。ここで、この切換手段20の構成の詳細を図19及び図20に基づいて説明する。
【0073】
図19に示すように、第2ロッカアーム9−2には大小異径の円孔21,22が互いに直交する方向に形成されており、一方の円孔21内にはピストン23が摺動自在に嵌装されている。そして、このピストン23は、これとキャップ24との間に縮装されたスプリング25によって斜め上方に付勢されて前記第1ロッカアーム9−1に螺着されたタペットねじ11の下端に当接している。
【0074】
又、上記ピストン23の前記円孔22が開口する側の外周面には所定深さのガイド溝23aが該ピストン23の摺動方向に沿って形成されており、同ピストン23にはこれの摺動方向と直交する方向に円孔23bが貫設されている。そして、この円孔23b内にはリテーナ26が嵌着されるとともに、スライダ27が摺動自在に嵌合保持されており、該スライダ27は、これとリテーナ26との間に縮装されたスプリング28によって外側方(円孔22の方向)に付勢されている。
【0075】
他方、前記円孔22内にはストッパ29が嵌着されるとともに、ピン30が摺動自在に嵌装されており、同円孔22内にはストッパ29とピン30によって区画される油室Sが形成されている。そして、この油室Sには、第2ロッカアーム9−2とロッカシャフト8に形成された油孔31を介してロッカシャフト8内の油路8aが連通している。尚、ピストン23に貫設された前記円孔23bと第2ロッカアーム9−2に形成された円孔22及びスライダ27とピン30とはそれぞれ同径に形成され、且つ、同軸に配されている。
【0076】
次に、本発明に係る動弁機構の作用を説明する。
【0077】
エンジン回転数が比較的低い低・中速域においては、第2ロッカアーム9−2に設けられた切換手段20は非作動状態にあって、油圧は油室Sに供給されず、図18乃至図20に示すように、ピン30はスプリング28によって付勢されたスライダ27によって押圧されてストッパ29に当接しており、その一部はピストン23に形成された前記ガイド溝23aに係合している。この状態では、ピストン23は円孔21内を自由に摺動し得ることとなり、第1ロッカアーム9−1と第2ロッカアーム9−2は連結解除(非連結)状態にある。
【0078】
而して、上記状態においてカム軸7が所定の速度(不図示のクランク軸の1/2の速度)で回転駆動されると、該カム軸7に連設されたカムA,B,Cにそれぞれ当接する第1、第2及び第3ロッカアーム9−1,9−2,9−3はカムA,B,Cのプロフィールに応じてロッカシャフト8を中心として揺動するが、この低・中速域においては、前述のように第1ロッカアーム9−1と第2ロッカアーム9−2は連結解除(非連結)状態にあるため、両者9−1,9−2及び第3ロッカアーム9−3はそれぞれ独立に揺動し、第1吸気弁3−1は第2ロッカアーム9−2を介して低リフトカムBで駆動され、第2吸気弁3−2は第3ロッカアーム9−3を介して中速用カムCで駆動される。尚、第2吸気弁3−2はエンジン回転数に拘らず、常に中速用カムCによって駆動される。
【0079】
従って、低・中速域においては、吸気の大部分は相対的にリフト量の大きな第2吸気弁3−2を通ってシリンダ内に流入するため、吸気のシリンダ内への非対称流れが促進されるとともに、絞りによって吸気の流速が高められて該吸気のシリンダ内での乱れが促進され、燃焼効率と充填効率が高められる。又、吸・排気弁オーバーラップ時の既燃ガスの吸気への逆流による内部EGR量を低減させて安定した燃焼状態と良好な排ガス特性を得ることができる。特に、安定した燃焼が実現することによって燃料の薄い希薄燃焼領域を拡大させることができ、これによって燃費の改善を図ることができる。
【0080】
尚、この低・中速域においては、第1ロッカアーム9−1の揺動は切換手段20のピストン23の摺動によって吸収され、第2ロッカアーム9−2へは伝達されない。
【0081】
次に、エンジン回転数が所定値を超える高速域においては、ロッカシャフト8内の油路8aから油孔31を経て切換手段20の油室S内に油圧が供給される。すると、切換手段20が作動し、図22乃至図24に示すように、ピン30が油圧によって摺動し、該ピン30がピストン23の円孔23bに嵌入してスライダ27をスプリング28の付勢力に抗して移動させるため、ピストン23の摺動がピン30によってロックされる。従って、この状態では第1ロッカアーム9−1と第2ロッカアーム9−2が連結され、第2ロッカアーム9−2は第1ロッカアーム9−1によって押されて該第1ロッカアーム9−1と共に揺動し、高速用カムAのリフトは第1ロッカアーム9−1及び第2ロッカアーム9−2を経て第1吸気弁3−1に伝達され、この結果、高速域においては、第1吸気弁3−1は高速用カムAによって駆動され、第2吸気弁3−2は低・中速域と同様に中速用カムCによって駆動される。ここで、油室Sをロッカシャフト8内の油路8aよりも下方に設けたため、該油室Sに気泡が滞留することがなく、切換手段20が確実に作動せしめられる。
【0082】
而して、高速域においては、上述のように第1吸気弁3−1は高速用カムAによって駆動され、第2吸気弁3−2は中速用カムCによって駆動されるため、第1及び第2吸気弁3−1,3−2には十分なリフト量が確保され、十分な量の吸気をシリンダ内に供給して高出力を得ることができる。
【0083】
又、本実施の形態においては、低・中速時において揺動量が小さな第2ロッカアーム9−2に切換手段20を設けたため、切換手段20を第1ロッカアーム9−1に設けた場合に比して、低・中速域におけるロッカアーム9−1〜9−3全体に作用する慣性力(慣性力の総和)を小さく抑えることができる。
【0084】
尚、以上は吸気弁のリフト量と開閉タイミングを低・中速時と高速時において切り換える場合について述べたが、排気弁のリフト量と開閉タイミングも同様の機構によって切り換えることができる。
【0085】
<実施の形態4>
次に、本発明の実施の形態4について説明する。
【0086】
本実施の形態は、前記実施の形態1におけるカムCをカムAと同じプロフィールを有する高速用カムで構成したものであって、他の構成は実施の形態1の構成と全く同様である。従って、以下の説明においては実施の形態1と同様の要素は図16乃至図24に示したと同一の符号を用いる。
【0087】
而して、本実施の形態によれば、低・中速域においては、第1吸気弁3−1は低リフトカムBによって駆動され、第2吸気弁3−2は高速用カムCによって駆動される。従って、実施の形態1と同様に吸気の大部分は相対的にリフト量の大きな第2吸気弁3−2を通ってシリンダ内に流入するため、吸気のシリンダ内での乱れが促進されて燃焼効率と充填効率が高められるとともに、安定した燃焼状態と良好な排ガス特性を得ることができる。
【0088】
又、高速域においては、第1吸気弁3−1は高速用カムAによって駆動され、第2吸気弁3−2は高速用カムAと同じプロフィールを有する高速用カムCによって駆動されるため、第1及び第2吸気弁3−1,3−2には十分なリフト量が確保され、十分な量の吸気をシリンダ内に供給して高出力を得ることができる。
【0089】
<実施の形態5>
次に、本発明の実施の形態5について説明する。
【0090】
本実施の形態では、前記実施の形態2においてカムBを低速用カムで構成するとともに、図25に模式的に示すように、第2吸気弁3−2に連通する吸気通路2−2に吸気制御弁32を設けている。尚、図25において、2−1は第1吸気弁3−1に連通する吸気通路、33はサージタンク、34はスロットル弁、34は吸気制御弁32を駆動するアクチュエータ、36はスロットル弁34の開度αとエンジン回転数Nをパラメータとしてアクチュエータ35の駆動(つまり、吸気制御弁32の開度)を制御するECU(エンジンコントロールユニット)である。
【0091】
而して、本実施の形態によれば、低・中速域においては、第1吸気弁3−1は低速用カムBによって駆動され、第2吸気弁3−2は高速用カムCによって駆動されるが、吸気制御弁32は閉じられる。
【0092】
従って、低・中速域においては、吸気は低速用カムBによって駆動される第1吸気弁3−1を通ってシリンダ内に流入するため、吸気のシリンダ内での乱れが促進されて燃焼効率と充填効率が高められるとともに、安定した燃焼状態と良好な排ガス特性を得ることができる。尚、第2吸気弁3−2と吸気制御弁32との間の吸気通路2−2内への既燃ガスの進入を防ぐために吸気制御弁32を僅かに開き、第2吸気弁3−2からシリンダへの吸気の微小流れを形成しても良い。
【0093】
そして、この低・中速域においては、エンジン回転数の増大と共に吸気制御弁32を開いてシリンダ内での吸気の流動を徐々に抑制するとともに、第2吸気弁3−2からシリンダへの吸気量を増大させて所謂中速域におけるノッキング(異常燃焼)の発生を抑え、十分な量の吸気をシリンダに供給することによって中速域におけるトルク特性を改善する。
【0094】
又、高速域においては、第1吸気弁3−1は高速用カムAによって駆動され、第2吸気弁3−2は高速用カムCによって駆動され、吸気制御弁32は全開とされる。従って、この高速域においては実施の形態2と同様に第1及び第2吸気弁3−1,3−2には十分なリフト量が確保され、吸気抵抗が低く抑えられて十分な量の吸気がシリンダ内に供給されるため、高い充填効率が確保されて高出力が得られる。
【0095】
尚、一対の排気弁を吸気弁と同様の切換態様で開閉駆動すれば、低速域での既燃ガスの吸気通路への吹き返しを更に抑制するとともに、高速域での充填効率を更に高めることができる。
【0096】
又、コスト抑制の観点から吸気制御弁32の開閉制御を所謂ON−OFF制御とし、吸気制御弁32を低・中速域において全閉とし、高速域において全開とするようにしても良い。
【0097】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、上記内燃エンジンの動弁機構によれば、2つのカムA,Bにそれぞれ当接する第1及び第2ロッカアームを有し、第1ロッカアームをロストモーション機構に、第2ロッカアームを弁にそれぞれ当接せしめるとともに、両ロッカアームを連結又は連結解除してカムA,Bの一方を選択してそのリフトを弁に伝達する切換手段を設けて構成される動弁ユニットを複数設けるとともに、各動弁ユニットに含まれる前記カムA,Bの少なくとも一方を低リフトカム、低速用カム又は中速用カムとし、他方をそれよりも高リフトのカムとしたため、中速域において十分なエンジン性能を確保しつつ、低速・低負荷域における混合気の安定燃焼を実現することができるという効果が得られる。
【0098】
又、3つのカムが設けられた上記内燃エンジンの動弁機構によれば、一対の第1及び第2弁を開閉する内燃エンジンの動弁機構を、3つのカムA,B,Cを連設して成るカム軸と、該カム軸のカムA,B,Cにそれぞれ当接する第1、第2及び第3ロッカアームを有し、第1ロッカアームをロストモーション機構に、第2ロッカアームを第1弁に、第3ロッカアームを第2弁にそれぞれ当接せしめるとともに、第1ロッカアームと第2ロッカアームを連結又は連結解除して前記カムA又はカムBを選択してそのリフトを第1弁に伝達する切換手段を設けたものとしたため、低・中速域においては混合気のシリンダ内での乱れを促進して燃焼効率と充填効率の向上を図ることができるとともに、高速時においては十分な混合気をシリンダ内に供給して高出力を得ることができるという効果が得られる。
【0099】
更に、第1ロッカアームと第2ロッカアームとをシムを介して当接させる上記内燃エンジンの動弁機構によれば、カムA,Bを第1ロッカアームの第2ロッカアームへの当接部に平面視でオーバーラップして軸方向に詰めて配置することができ、カムA,Bの幅を広げてその面圧を下げ、或は軸方向寸法を詰めてエンジンのコンパクト化を図ることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る動弁機構を示すエンジンの部分平面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る動弁機構の構成を示す分解平面図である。
【図3】切換手段が非作動状態にあるときの図1のE−E線断面図である。
【図4】切換手段が非作動状態にあるときの図1のF−F線断面図である。
【図5】図1のG−G線断面図である。
【図6】非作動状態にある切換機構の状態を示す断面図である。
【図7】図6のH−H線断面図である。
【図8】切換手段が作動状態にあるときの図1のE−E断面図である。
【図9】作動状態にある切換機構の状態を示す断面図である。
【図10】図9のJ−J線断面図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係る動弁機構の別配置例を示すエンジンの部分平面図である。
【図12】本発明の実施の形態1に係る動弁機構の別配置例を示す分解平面図である。
【図13】ロストモーション機構の別配置例を示す断面図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係る動弁機構を示すエンジンの部分平面図である。
【図15】図14のK−K線断面図である。
【図16】本発明の実施の形態3に係る動弁機構を示すエンジンの部分平面図である。
【図17】本発明の実施の形態3に係る動弁機構の構成を示す分解平面図である。
【図18】切換手段が非作動状態にあるとき(低・中速時)の図16のL−L線断面図である。
【図19】非作動状態にある切換手段の状態を示す平面図である。
【図20】図19のM−M線断面図である。
【図21】図14のP−P線断面図である。
【図22】切換手段が作動状態にあるとき(高速時)の図16のL−L線断面図である。
【図23】作動状態にある切換手段の状態を示す断面図である。
【図24】図23のQ−Q線断面図である。
【図25】本発明の実施の形態5に係る動弁機構を示すエンジンの吸気系の模式図である。
【符号の説明】
I 第1動弁ユニット
II 第2動弁ユニット
A,B,A’,B’ カム
2,2−1,2−2 吸気通路
3−1 第1吸気弁(弁)
3−2 第2吸気弁(弁)
7 カム軸
9−1,9−1’ 第1ロッカアーム
9−2,9−2’ 第2ロッカアーム
9−3 第3ロッカアーム
12 ロストモーション機構
20,20’ 切換手段
32 吸気制御弁
40 シム

Claims (10)

  1. カムAに当接する第1ロッカアームと、前記カムAより低リフトのカムBに当接する第2ロッカアームとを有し、前記第1ロッカアームをロストモーション機構に、前記第2ロッカアームを弁にそれぞれ当接せしめるとともに、前記弁の作動状態を切り換える切換手段を前記第2ロッカアームに設けて構成される動弁ユニットを有する内燃エンジンの動弁機構であって、
    前記切換手段は、揺動している前記第1ロッカアームの下面の動きを前記弁に伝達する第1の状態と、揺動している前記第1ロッカアームの下面の動きを前記弁に非伝達とする第2の状態とを切り換え可能に設けられ、
    前記第1ロッカアームは、その下面で前記第1の状態にある前記切換手段を押圧することで、当該第1ロッカアームに当接する前記カムAのリフトを前記弁に伝達し、
    前記切換手段は、
    前記第2ロッカアームに形成された孔に沿って往復動可能に設けられるとともに、その先端面が前記第1ロッカアームの下面に当接し、揺動する前記第1ロッカアームの下面に前記先端面が押圧されることによって前記第2ロッカアームに対して相対的に後退可能なピストンと、
    前記ピストンの往復動の軌道上に進入して当該ピストンに干渉し、当該ピストンの後退を規制する第1の位置と、前記ピストンの前記軌道上から退いて、当該ピストンの後退を許容する第2の位置との間を油圧によって移動する、前記ピストンとは別体のピンとを含む、
    ことを特徴とする内燃エンジンの動弁機構。
  2. 前記動弁ユニットを2つ有し、各動弁ユニットの前記第2ロッカアームを各気筒の中央に隣接して配置し、その両外側に各動弁ユニットの前記第1ロッカアームを配置したことを特徴とする請求項1に記載の内燃エンジンの動弁機構。
  3. 前記動弁ユニットを2つ有し、各動弁ユニットの前記第1ロッカアームを各気筒の中央に隣接して配置し、その両外側に各動弁ユニットの前記第2ロッカアームを配置したことを特徴とする請求項1に記載の内燃エンジンの動弁機構。
  4. 一方の前記動弁ユニットの前記カムAを高速用カム、前記カムBを第1中速用カムとし、他方の前記動弁ユニットの前記カムAを第2中速カム、前記カムBを低リフトカムとしたことを特徴とする請求項2又は3記載の内燃エンジンの動弁機構。
  5. 一対の第1及び第2弁を開閉する機構であって、前記カムA、前記カムB、及びカムCを連設して成るカム軸と、該カム軸の前記カムAに当接する前記第1ロッカアームと、前記カムBに当接する前記第2ロッカアームと、前記カムCに当接する第3ロッカアームとを有し、前記第1ロッカアームを前記ロストモーション機構に、前記第2ロッカアームを前記第1弁に、前記第3ロッカアームを前記第2弁にそれぞれ当接せしめるとともに、前記第1ロッカアームと前記第2ロッカアームとの間にのみ前記第1弁の作動状態を切り換える前記切換手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の内燃エンジンの動弁機構。
  6. 前記カムAを高速用カム、前記カムBを低リフトカム、前記カムCを中速用カムとしたことを特徴とする請求項記載の内燃エンジンの動弁機構。
  7. 前記カムA,Cを高速用カム、前記カムBを低リフトカムとしたことを特徴とする請求項記載の内燃エンジンの動弁機構。
  8. 前記カムA,Cを高速用カム、前記カムBを低速用カムとしたことを特徴とする請求項記載の内燃エンジンの動弁機構。
  9. 前記第1及び第2弁を吸気弁で構成するとともに、前記第2弁に連通する吸気通路に吸気制御弁を設けたことを特徴とする請求項7又は8記載の内燃エンジンの動弁機構。
  10. 前記第1ロッカアームと第2ロッカアームとをシムを介して当接させたことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の内燃エンジンの動弁機構。
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