JP4014535B2 - 光学式移動量検出装置及び電子機器及び搬送処理システム - Google Patents

光学式移動量検出装置及び電子機器及び搬送処理システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、用紙等の表面が鏡面でない物体の移動量を物体にマーキング等を施さずに非接触で測定する光学式移動量検出装置、その移動量検出装置を備える電子機器、および、その移動量検出装置を用いて物体の移動量を検出しつつ物体を搬送して処理を行う搬送処理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、被検出物である用紙を搬送しながら処理を行うプリンタや複写機等の電子機器においては、用紙の移動量を測定する装置としてローラ式の移動量測定装置が用いられている。この移動量測定装置は、挟み込みローラの回転によって被検出物を搬送するに際して、ローラの回転量と上記ローラの直径によって移動量を検出するものである。
【0003】
しかしながら、上記ローラ式の移動量測定装置では、ローラと被検出物との間に滑りは全く無いことを前提にしている。そのために、搬送中にローラと被検出物との間で滑りが生じた場合には被検出物の搬送量に誤差が生じ、上記被検出物における所定位置に対して処理を行うことができない。プリンタを例に取ると、用紙の所定の位置に印刷されずに違った位置に印刷されてしまうことなる。
【0004】
取り分け、写真等の画像を高解像度で印刷を行うプリンタにおいては、所定の位置に印刷するために、搬送される用紙の移動量を用紙の搬送を妨げずに測定して印刷処理を制御することが必要になる。そこで、被検出物の搬送手段とは独立して被検出物の移動量を測定する移動量測定装置がある。
【0005】
そのような移動量測定装置として、スペックルパターンを利用して光学的に非接触で移動量を測定するペーパー状物体の移動量測定装置がある(特開平9‐318320号公報:特許文献1参照)。このペーパー状物体の移動量測定装置では、レーザのようなコヒーレント光を物体に照射するとその物体の表面の粗さによって反射光が散乱することで干渉を起こし、図14に示すようなスペックルパターンという斑点状の模様が生じることを利用する。
【0006】
図15は、上記ペーパー状物体の移動量測定装置の構成を示す図である。少なくとも一面が粗面で且つ無透明なペーパー状物体としての紙幣9の粗面に、レーザダイオード等で成る光照射手段1によって、コヒーレント光2を照射する。そして、紙幣9の粗面からの反射光3を撮像デバイス4で受光して電気的な画像信号に変換する。そして、第1の時点における撮像デバイス4の出力を第1のメモリ5に記憶し、第1の時点から所定時間経過後の第2の時点における撮像デバイス4の出力を第2のメモリ6に記憶する。そして、画像処理部7の抽出部7aによって、第1のメモリ5の記憶画像と第2のメモリ6の記憶画像との合成画像から周波数スペクトルを抽出し、検出部7bによって、上記抽出された周波数スペクトルの周波数ピークを検出し、演算部7cによって、上記検出された周波数ピークの間隔Δdxを演算して紙幣2の移動量とする。そして、制御部8によって、演算部7cからの移動量Δdxに基づいて、紙幣9に対する処理が行われる。
【0007】
この他に、移動量を検出する方法としては、移動物体にLED(発光ダイオード)等の光源からの光を照射し、上記移動物体からの反射光から特定の空間周波数成分の信号を抽出する空間フィルタの出力波形信号に基づいて、上記移動物体の相対移動量を求める空間フィルタ法や、光マウスに利用されているイメージセンサ画像に基づくフレーム処理によって物体の移動量を検出する方法もある。
【0008】
【特許文献1】
特開平9‐318320号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来のペーパー状物体の移動量測定装置においては、以下のような問題がある。すなわち、上記スペックルパターンの画像を撮像デバイス4としてのイメージセンサで取り込み、画像処理部7によって種々の演算を行うので、情報量が膨大になると共に、演算は複雑になり、装置が大型で且つ高価なものになってしまう。また、上記ペーパー状物体として、表面が比較的滑らかなOHP(オーバーヘッドプロジェクタ)シート等の正反射が強い物体を用いた場合には、物体の検出が非常に困難であるという問題がある。
【0010】
また、上記空間フィルタ法の場合には、空間周波数成分の演算等が複雑であるため、装置が高価なものになってしまう。それと同時に、表面が滑らかな物体の場合には出力が小さくなるために、画像信号の処理が難しくなってしまうという問題もある。また、上記光マウスの場合には、フレーム単位で画像信号の処理を行うために、信号の処理が複雑であると同時に、表面が滑らかな物体の場合には出力波形信号が小さいために移動量の検出が難しいという問題がある。
【0011】
そこで、この発明の課題は、表面が滑らかな被検出物であっても移動量を精度よく測定できる小型で安価な光学式移動量検出装置、および、それを備えた電子機器を提供することにある。
【0012】
また、この発明の課題は、被検出物の位置を精度よく測定して、被検出物を所定の位置に搬送して所定の処理を行うことができる搬送処理システムを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の光学式移動検出装置は、発光部と、受光部と、上記発光部からの光を被検出物の移動方向に平行な線状ビームにして上記被検出物に照射する第1光学系と、上記被検出物から反射された上記線状ビームである線状反射ビームを上記受光部に入射させる第2光学系と、第1の時点において上記受光部が上記線状反射ビームを受けて出力する上記線状反射ビームの長さ方向に沿った出力分布を表す第1の出力波形信号と、第2の時点において上記受光部が上記線状反射ビームを受けて出力する上記線状反射ビームの長さ方向に沿った出力分布を表す第2の出力波形信号とを格納するメモリ部と、上記第1出力波形信号と上記第2出力波形信号との間の上記線状反射ビームの長さ方向のズレ量を検出して、このズレ量に基づいて上記被検出物の移動量を検出する移動量検出部とを備え、上記第1光学系は、コリメートレンズとシリンドリカルレンズとからなり、上記発光部からの光を、上記コリメートレンズにより平行光にし、さらに、上記シリンドリカルレンズを通過させた後に、上記被検出物の移動方向に平行な上記線状ビームにして、上記被検出物に照射し、上記受光部は、上記線状反射ビームの像に対応して線状に配列された複数の受光素子からなり、上記受光部は、この全領域の内、両端部の間に、上記受光素子を設けない部分を有することを特徴としている。
【0014】
本発明の光学式移動検出装置によれば、第1の時点において、発光部からの光を被検出物の移動方向に平行な線状ビームにして被検出物に照射し、この被検出物から反射された線状反射ビームを受光部に入射させて、このときの受光部から出力される第1の出力波形信号をメモリ部に格納する。その後、第2の時点において、同様に、発光部からの光を線状ビームにして被検出物に照射し、この被検出物から反射された線状反射ビームを受光部に入射させて、このときの受光部から出力される第2の出力波形信号をメモリ部に格納する。そして、移動量検出部により、上記第1出力波形信号と上記第2出力波形信号との間の線状反射ビームの長さ方向のズレ量を検出して、このズレ量に基づいて被検出物の移動量を検出することができる。
【0015】
このように、上記被検出物の表面状態(凸凹の状態)を表す上記受光部からの出力波形信号に基づいて上記被検出物の移動量が検出される。従って、比較的滑らかな表面を有する被検出物であってもその移動量が精度良く検出される。さらに、上記移動量検出部による信号の処理が簡単であり、部品点数も少ない。また、線状ビームにより、所定の範囲を測定することができ、照射光を移動させるための別途駆動機構を必要としない。従って、形状が小型で製造コストが安価な光学式移動量検出装置が得られる。
【0016】
また、一実施形態の光学式移動検出装置では、上記発光部は、線状に配列された複数の半導体レーザ素子からなることを特徴としている。
【0017】
この一実施形態の光学式移動検出装置によれば、半導体レーザ素子からのレーザ光が第1光学系や第2光学系を構成するレンズによって効率よく集光され、受光部によって光電変換するのに必要な光量が被検出物上からの反射光によって十分に得られる。さらに、発光部に半導体レーザ素子を用いることで一層小型化にできる。
【0018】
また、一実施形態の光学式移動検出装置では、上記第1光学系と上記被検出物との間に、上記被検出物からの上記線状反射ビームを偏向させる偏向器を備えることを特徴としている。
【0019】
この一実施形態の光学式移動検出装置によれば、照射側と反射側のビームの光軸を同一にしても、発光部と受光部との重なりを防止できる。このように、出力が得られやすくなるとともに小型化にできる。さらに、その光軸を、被検出物に対して略垂直にすることが可能で、さらに出力が得られやすくなって、検出精度を向上させることができる。
【0020】
また、一実施形態の光学式移動検出装置では、上記移動量検出部は、上記線状ビーム自体の長さ方向の光強度分布に応じた複数の係数を、上記第1出力波形信号と上記第2出力波形信号の各々の部分に乗算して、上記線状ビームの長さ方向の光強度分布を補正する波形補正部を備えることを特徴としている。
【0021】
この一実施形態の光学式移動検出装置によれば、照射光の強度を長さ方向に一定にしなくても、受光部側の移動量検出部で補正することができ、ズレ量の検出の精度を向上できる。また、発光部の構造を簡単にできる。
【0022】
また、一実施形態の光学式移動検出装置では、上記移動量検出部は、上記第1の時点で上記受光部における上記線状反射ビームの像の長さ方向の一部に対応する第1部分領域から出力される第1出力波形部分信号と、上記第2の時点で上記受光部における上記線状反射ビームの像の複数の部分の夫々に対応する複数の部分領域から出力される複数の第2出力波形部分信号との相関係数を求めて、最も相関係数の高い第2の時点での第2部分領域を求めて、上記第1部分領域と上記第2部分領域とのズレ量によって、上記被検出物の移動量を演算する移動量演算部を備えることを特徴としている。
【0023】
この一実施形態の光学式移動検出装置によれば、上記第1出力波形信号と第2出力波形信号との相関係数に基づいてそのズレ量が得られるので、検出誤差のために、第1と第2出力波形信号の波形が全く同一でない場合でも、精度よく上記ズレ量が検出される。
【0024】
また、一実施形態の光学式移動検出装置では、上記受光部の第1部分領域の大きさは、この第1部分領域から出力される上記第1出力波形部分信号が、上記第1の時点で上記第1部分領域以外の上記受光部の領域から出力される信号と判別できる大きさであり、上記受光部の全領域の大きさは、上記第1部分領域の大きさに、上記被検出物の予め定められた移動量に対応する上記線状反射ビームの像の移動量を加えた大きさ以上であることを特徴としている。なお、被検出物の予め定められた移動量とは、本発明の光学式移動検出装置をプリンタ等の被検出物(用紙)を搬送して処理を行う機器に用いる場合、被検出物の大きさや被検出物への処理位置に応じて、その機器の搬送部に予め設定されている被検出物の送り量である。
【0025】
この一実施形態の光学式移動検出装置によれば、相関係数算出に用いる第1出力波形部分信号を構成する出力値の数(比較データ数)は、ズレ量算出が相関係数により検出できる数としているため、相関計算に必要なデータ数が得られて、ズレ量検出精度があがる。即ち、比較データ数が少なすぎると、出力波形信号の波形の特徴を捉えきれずに、誤って検出する虞れがある。また、受光部の全領域(即ち、受光部出力を記録する範囲)が、被検出物の予め定められた移動量より大きいため、相関計算により移動量を検出することができる。しかも、受光部の大きさを最小限に設定することができる。
【0026】
また、一実施形態の光学式移動検出装置では、上記受光部の全領域の大きさは、上記第1部分領域の大きさと、上記被検出物の予め定められた移動量に対応する上記線状反射ビームの像の移動量と、この移動量からの予測されている上記被検出物の位置ズレ量とを加えた大きさに等しいことを特徴としている。なお、被検出物の予め定められた移動量とは、本発明の光学式移動検出装置をプリンタ等の被検出物(用紙)を搬送して処理を行う機器に用いる場合、被検出物の大きさや被検出物への処理位置に応じて、その機器の搬送部に予め設定されている被検出物の送り量である。また、予測されている被検出物の位置ズレ量とは、上記機器の搬送部において通常生じる送り量の誤差の最大量に対応する線状反射ビームの像の最大量をいう。
【0027】
この一実施形態の光学式移動検出装置によれば、受光部の全領域の大きさを、最小限の大きさにすることができる。そして、ズレ量検出に、受光部の両端部位の受光素子を用いることが可能で、受光部の中途部位の受光素子を省くことができ、データ数が減って、データ処理がしやすくなり、かつ、受光素子数が減って、安価にすることができる。
【0028】
また、本発明の電子機器は、上記発明の光学式移動量検出装置を備えることを特徴としている。
【0029】
本発明の電子機器によれば、上記光学式移動量検出装置によって、本電子機器内外の物体(被検出物)の位置を精度よく測定することができる。
【0030】
また、本発明の搬送処理システムは、上記発明の光学式移動量検出装置と、上記被検出物を搬送する搬送部と、上記被検出物に所定の処理をする処理部と、上記光学式移動量検出装置により検出された上記被検出物の移動量に基づいて、上記被検出物の搬送後の位置を目標位置に合わせるように上記搬送部を制御する制御部とを備えることを特徴としている。
【0031】
本発明の搬送処理システムによれば、被検出物の位置が精度良く検出され、規定の位置になければ、被検出物の位置ズレが自動的に補正されて、被検出物の正しい位置に所定の処理を行うことができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0033】
図1は、本発明の光学式移動量検出装置の一実施形態である構成図を示している。この移動量検出装置は、被検出物10が第1の時点から第2の時点まで移動するときの移動量を検出するものであり、発光部11と、受光部17と、上記発光部11からの光を上記被検出物10の移動方向に平行な線状ビームにして上記被検出物10に照射する第1光学系31と、上記被検出物10から反射された上記線状ビームである線状反射ビームを上記受光部17に入射させる第2光学系32と、上記第1の時点における上記受光部17からの第1出力波形信号、及び、上記第2の時点における上記受光部17からの第2出力波形信号を格納するメモリ部33と、上記第1出力波形信号と上記第2出力波形信号との間の上記線状反射ビームの長さ方向のズレ量を検出して、このズレ量に基づいて上記被検出物10の移動量を検出する移動量検出部34とを備える。
【0034】
上記発光部11は、線状に配列された複数の半導体レーザ素子からなるのが好ましく、発光部11からの光を線状に形成することができる。
【0035】
上記第1光学系31は、コリメートレンズ12とシリンドリカルレンズ13とからなり、発光部11からの光を、コリメートレンズ12により平行光にし、さらに、シリンドリカルレンズ13を通過させた後に、被検出物10の移動方向に平行な線状ビームにして、被検出物10に照射する。すると、被検出物10表面に、所定の長さを有する線状ビームの像18aが、被検出物10の移動方向に沿って形成される。なお、図1では、被検出物10は、矢印αに示すように、紙面奥から手前方向に移動する。なお、コリメートレンズ12の代りにシリンドリカルレンズを用いてもよく、その場合、発光部11からの光は一方向のみ集光される。
【0036】
上記第2光学系32は、受光レンズ14からなり、被検出物10上の線状ビームの像18aからの反射光(の一部または全部)を、受光レンズ14により、線状反射ビームとして、受光部17に入射させる。
【0037】
上記線状ビームの像18aは、図2に示すように、被検出物10の矢印αにて示す移動方向に平行に形成され、長さが数mmで、かつ、幅が数十μmに設定されている。なお、線状ビーム自体の長さ方向の光強度分布は、一定であるのが望ましい。
【0038】
上記受光部(ラインセンサ)17は、図3に示すように、線状反射ビームの像に対応して線状に配列された複数の受光素子17aからなり、長さdが数mmで、かつ、幅eが数十μmに設定されている。全ての受光素子17aは、各々が出力値を発し、フォトダイオード(PD)にて形成されるのが好ましく、1次元のCCDやC−MOSにて形成されてもよい。
【0039】
線状反射ビームを受けて出力する各受光素子17aの出力値は、例えば、図4に示すように、被検出物10の表面状態(表面の凹凸)に応じたものとなる。この複数の出力値にて、線状反射ビームの長さ方向に沿った出力分布を表す第1出力波形信号及び第2出力波形信号を形成する。
【0040】
上記第1出力波形信号は、第1の時点で(静止している)被検出物10から、反射光を受光した各受光素子17aからの出力値にて形成される。上記第2出力波形信号は、第2の時点で(静止している)被検出物10から、再度反射光を受光した各受光素子17aからの出力値にて形成される。なお、被検出物10は、少なくとも第2の時点において、静止した状態で測定されるのが望ましく、被検出物10を正確な位置にセットすることができる。そして、上記第2出力波形信号は、上記第1出力波形信号が被検出物10の移動方向に沿ってズレた状態になっている。
【0041】
具体的に述べると、図5(a)に示すように、第1の時点において、受光部17における線状反射ビームの像に対応する全領域22により、被検出物10の所定エリア10aを受光している。そして、図5(b)に示すように、被検出物10が、第2の時点において、(仮想線にて示す)第1の時点から所定ピッチPだけ移動したとき、その所定エリア10aも、仮想線にて示す状態から実線にて示す状態に所定ピッチPだけ移動する。このとき、移動後の所定エリア10aは、受光部17の全領域22内にある。
【0042】
図6は、被検出物10の移動前後の受光部17全領域22における各受光素子17aの出力値を示した図である。即ち、図6(a)に示すように、第1の時点での上記所定エリア10aは、受光部17の第1部分領域22aにて受光されている。他方、図6(b)に示すように、第2の時点での上記所定エリア10aは、受光部17の第2部分領域22bにて受光されている。このように、上記第1部分領域22aからの出力値と略同一の出力値が、上記第2部分領域22bに現れることになり、上記第1部分領域22aと上記第2部分領域22bとのズレを受光素子17aの位置で算出することで移動量を検出する。
【0043】
次に、図7に本発明の他の実施形態を示し、第1光学系31と被検出物10との間に、被検出物10からの線状反射ビームを偏向させる偏向器16を備える。具体的に述べると、偏向器であるビームスプリッタ16をシリンドリカルレンズ13と被検出物10の間に配置することで、被検出物10への照射光の光軸と被検出物10からの反射光の光軸とを同一にしても、発光部11と受光部17とが重なることがない。このように、照射側と反射側の光軸が同一となるため、反射光の出力がえられやすくなる。なお、光軸を被検出物10の移動方向に対して略垂直にした場合、反射光の出力がより向上して検出精度を上げることができ、さらに、装置を小型化することができる。また、偏向器16としては、回折格子でもよい。
【0044】
ここで、図1と図7に示すように、移動量検出部34は、波形補正部34aを備える。この波形補正部34aは、例えば、図8に示すように、線状ビーム18自体の長さh方向の光強度分布が一様でない場合に、その光強度分布に応じた複数の係数を、第1出力波形信号と第2出力波形信号の各々の部分に乗算して、線状ビームの長さ方向の光強度分布を補正するように構成されている。これにより、被検出物10上の同じ位置に対応している移動前データ(第1出力波形信号)と移動後データ(第2出力波形信号)との差異が減り検出精度が向上する。なお、受光素子17aの増幅率を変える事で,出力の補正を行うようにしてもよい。
【0045】
また、図1と図7に示すように、移動量検出部34は、移動量演算部34bを備える。この移動量演算部34bは、第1の時点で受光部17における線状反射ビームの像の長さ方向の一部に対応する第1部分領域22aから出力される第1出力波形部分信号と、第2の時点で受光部17における線状反射ビームの像の複数の部分の夫々に対応する複数の部分領域から出力される複数の第2出力波形部分信号との相関係数を求めて、最も相関係数の高い第2の時点での第2部分領域22bを求めて、第1部分領域22aと第2部分領域22bとのズレ量によって、被検出物10の移動量を演算するように構成されている。
【0046】
この移動量演算部34bによる移動量検出方法について図9にて説明する。
【0047】
図9(a)に示すように、第1の時点で、受光部17の第1部分領域22aの出力データを第1の比較データとしてメモリ部33に格納する。この第1部分領域22aは、受光部17の所定位置Aから右端までの受光素子17aにて形成されている。なお、被検出物10は、仮想線にて示す矢印α方向に移動するものとする。
【0048】
そして、被検出物10を所定ピッチP移動した第2の時点で、図9(b)に示すように、上記第1の比較データは、受光部17の第2部分領域22bから検出される。即ち、所定位置Aのデータは、所定位置Bの受光素子から得られる。具体的に述べると、移動量検出部34によって、図9(b)における各受光素子17aの出力値と第1の比較データとの相関計算をすることで、所定位置Aのデータは、所定位置Bからのデータにて相関最大となる。要するに、第1の比較データと略同一の出力値を発する第2部分領域22bを相関係数により求めることができる。そして、所定位置A(第1部分領域22a)と所定位置B(第2部分領域22b)とのズレ量、即ち、所定ピッチPが、被検出物10の移動量となる。
【0049】
また、図9(b)に示すように、相関計算とは別に所定位置Aから右端までの第1部分領域22aのデータを第2の比較データとしてメモリ部33に格納すれば、続けて移動量を検出することができる。例えば、図9(c)に示すように、各受光素子17aの出力値と上記第2の比較データとの相関計算をすることで、所定位置Aのデータは、所定位置Cの受光素子17aから得られることがわかる。なお、図9(c)は、被検出物10が上記所定ピッチPの目標位置から位置ズレしている場合を示し、このときの実際の移動量P´は、上記所定ピッチPから位置ズレ量Sを引いた値となる。
【0050】
次に、図10にて、相関計算を説明する。
【0051】
ここで、相関係数ρ(−1≦ρ≦1)とは、ある標本群XiとYiの類似度を表す指標であり次式▲1▼で表される。
Figure 0004014535
【0052】
受光部17の全領域22における受光素子17aの出力データ列(1,2,・・・,e,f)の第1部分領域22aに相当する比較データ列(a,・・・,f)を比較データ41として第1メモリ33aに格納し、その比較データ41と、被検出物10の移動を終えた後の第2メモリ33bに入れた受光部17の全領域22の出力データ列(1',2',・・・,v,vi)との、相関係数を、相関計算部35にて求める。なお、第1メモリ33a、第2メモリ33b、第3メモリ33cは、メモリ部33に含まれ、相関計算部35は、移動量演算部34bに含まれる。
【0053】
即ち、比較データ41を、受光部17の長さ方向に、1個ずつずらしながら(k=0,1,2,・・・,n)相関係数を求めれば、最も類似性の高い所で最大となる。そして、この最大時におけるkの値(ずらした個数)に受光素子17aの大きさを乗算すると(受光素子ピッチ×k)、移動後の比較データ41の位置がわかり移動量が検出できる。
【0054】
なお、受光素子17aが大きくても受光レンズ14の像倍率を変えることで、分解能を上げることが可能となる。
【0055】
また、受光部17の第1部分領域22aの大きさは、この第1部分領域22aから出力される第1出力波形部分信号が、第1の時点で第1部分領域22a以外の受光部17の領域から出力される信号と判別できる大きさである。即ち、第1部分領域22aからの出力値の数(比較データ数)は、相関係数により第2部分領域22bを一つに確定できる数とする。
【0056】
また、被検出物10が、予め定められた移動量搬送されるものとすると、受光部17の全領域22の大きさ(出力値を記録する範囲)は、第1部分領域22aの大きさ(比較データ数)に、被検出物10の予め定められた移動量に対応する線状反射ビームの像の移動量(設定移動量)を加えた大きさ以上である{記録範囲≧(設定移動量+比較データ数)}。詳しく述べると、受光部17の全領域22の大きさは、第1部分領域22aの大きさと、上記設定移動量と、この設定移動量からの予測されている被検出物10の位置ズレ量(予測位置ズレ量)とを加えた大きさに等しい。なお、この予測位置ズレ量とは、被検出物10の予め定められた移動量からの予測されている被検出物10の位置ズレ量に対応する線状反射ビームの像の位置ズレ量をいう。
【0057】
ここで、上記設定移動量、及び、第1部分領域22aの受光素子17aの数(比較データの出力値数)、及び、上記予測位置ズレ量がわかっていれば、図11に示すように、受光部17の下流(左)側端部22cの大きさを、第1部分領域22aの大きさに、上記予測位置ズレ量を加えた大きさにすることができる。即ち、上記端部22cにおける受光素子17aの数は、第1部分領域22aの受光素子17aの数に、上記予測位置ズレ量を受光素子17aの数に換算した値を加えたものとなる。そして、全領域22の内、上記端部22cと上流(右)側端部となる第1部分領域22aとの間を、受光素子17aを設けない不要部分22dとできる。このように、受光素子17aの数を減らすことができコストダウンを図ることができる。
【0058】
上述のように構成された本発明の光学式移動量検出装置によれば、比較的滑らかな表面であっても被検出物10の移動量を精度よく検出することができる。また、部品点数が比較的少なく、信号処理が上述した各従来の移動量検出装置よりも簡単であるため、形状的に小型で且つ安価にできる。
【0059】
次に、上記光学式移動量検出装置を備える電子機器によれば、この光学式移動量検出装置により、電子機器内外における物体の移動量を精度良く検出することができる。また、上記電子機器を、例えばプリンタなどの機器、即ち、(用紙等の)物体に対して順次、搬送、停止、処理をするといった工程を繰り返して行う機器とした場合、本発明の光学式移動量検出装置を用いることで、上記物体(被検出物)の正しい位置に所定の処理を行うことができる搬送処理システムを提供できる。
【0060】
この搬送処理システムは、図12に示すように、上述の光学式移動量検出装置50と、被検出物10を搬送する(ローラ等から成る)搬送部51と、被検出物10に所定の処理をする処理部52と、上記光学式移動量検出装置50により検出された被検出物10の移動量に基づいて、被検出物10の搬送後の位置を目標位置に合わせるように搬送部51を制御する制御部53とを備える。
【0061】
図13は、この搬送処理システムのフローチャートを示したものである。まず、図9(a)に示したように第1部分領域22aにおける比較データを取り込み(ステップS1)、次に、規定ピッチで被検出物10を搬送する(ステップS2)。このとき、位置ズレがなければ、比較データを取った被検出物10(搬送物)上の位置は、規定ピッチだけ進んだ位置に移動しているので、その付近のデータを受光部にて取得し(ステップS3、S4)、位置ズレを検出する(ステップS5)。
【0062】
そして、位置ズレがなければ、図9(b)に示したように次回の比較データ取り込みに移るが(ステップS6)、位置ズレがあった場合は、その位置ズレ量を搬送部にフィードバックして、被検出物10を正しい位置に移動させる(ステップS8)。
【0063】
その後、再度、規定ピッチ付近のデータを取り込み(ステップS9)、規定ピッチ移動したかを検出し(ステップS5)、位置ズレがなければ、次回比較データを取り込み(ステップS6)、被検出物10へ処理を行う(ステップS7)。この処理とは、プリンタならば印刷することである。よって、プリンタ等の印刷を行う電子機器であれば所定の位置に所定の印刷処理が行えるようになり、高精細な印刷が可能になる。
【0064】
【発明の効果】
以上より明らかなように、本発明の光学式移動量検出装置は、被検出物の移動量を検出するものであって、表面が滑らかな被検出物であっても、その移動量を精度よく測定でき、しかも、小型でかつ低コストを実現することができる。
【0065】
また、本発明の電子機器は、上記光学式移動量検出装置を備えるので、被検出物の位置を精度よく測定することができる。
【0066】
また、本発明の搬送処理システムは、上記光学式移動量検出装置を用いているので、被検出物の位置を精度よく測定して、被検出物を所定の位置に搬送して所定の処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光学式移動量検出装置の第1実施形態を示す構成図である。
【図2】 被検出物上に形成された線状ビームの像を示す平面図である。
【図3】 複数の受光素子にて形成された受光部を示す平面図である。
【図4】 各受光素子からの出力データを示す説明図である。
【図5】 被検出物の移動量検出方法の説明図である。
【図6】 被検出物の移動前後の出力データを示す説明図である。
【図7】 本発明の光学式移動量検出装置の第2実施形態を示す構成図である。
【図8】 線状ビームの強度分布を示す説明図である。
【図9】 ズレ量を検出する原理を示す説明図である。
【図10】 相関計算によるズレ量の検出を示す説明図である。
【図11】 受光部の他の実施形態を示す平面図である。
【図12】 本発明の搬送処理システムの第1実施形態を示す構成図である。
【図13】 搬送処理システムの流れを示すフローチャート図である。
【図14】 スペックルパターンを示す説明図である。
【図15】 従来の移動量検出装置を示す構成図である。
【符号の説明】
10 被検出物
11 発光部
12 コリメートレンズ
13 シリンドリカルレンズ
14 受光レンズ
16 偏向器(ビームスプリッタ)
17 受光部
18 線状ビーム
22 全領域
22a 第1部分領域
22b 第2部分領域
31 第1光学系
32 第2光学系
33 メモリ部
34 移動量検出部
34a 波形補正部
34b 移動量演算部
50 光学式移動量検出装置
51 搬送部
52 処理部
53 制御部

Claims (9)

  1. 発光部と、
    受光部と、
    上記発光部からの光を被検出物の移動方向に平行な線状ビームにして上記被検出物に照射する第1光学系と、
    上記被検出物から反射された上記線状ビームである線状反射ビームを上記受光部に入射させる第2光学系と、
    第1の時点において上記受光部が上記線状反射ビームを受けて出力する上記線状反射ビームの長さ方向に沿った出力分布を表す第1の出力波形信号と、第2の時点において上記受光部が上記線状反射ビームを受けて出力する上記線状反射ビームの長さ方向に沿った出力分布を表す第2の出力波形信号とを格納するメモリ部と、
    上記第1出力波形信号と上記第2出力波形信号との間の上記線状反射ビームの長さ方向のズレ量を検出して、このズレ量に基づいて上記被検出物の移動量を検出する移動量検出部と
    を備え
    上記第1光学系は、コリメートレンズとシリンドリカルレンズとからなり、上記発光部からの光を、上記コリメートレンズにより平行光にし、さらに、上記シリンドリカルレンズを通過させた後に、上記被検出物の移動方向に平行な上記線状ビームにして、上記被検出物に照射し、
    上記受光部は、上記線状反射ビームの像に対応して線状に配列された複数の受光素子からなり、
    上記受光部は、この全領域の内、両端部の間に、上記受光素子を設けない部分を有することを特徴とする光学式移動量検出装置。
  2. 請求項1に記載の光学式移動量検出装置において、
    上記発光部は、線状に配列された複数の半導体レーザ素子からなることを特徴とする光学式移動量検出装置。
  3. 請求項1に記載の光学式移動量検出装置において、
    上記第1光学系と上記被検出物との間に、上記被検出物からの上記線状反射ビームを偏向させる偏向器を備えることを特徴とする光学式移動量検出装置。
  4. 請求項1に記載の光学式移動量検出装置において、
    上記移動量検出部は、上記線状ビーム自体の長さ方向の光強度分布に応じた複数の係数を、上記第1出力波形信号と上記第2出力波形信号の各々の部分に乗算して、上記線状ビームの長さ方向の光強度分布を補正する波形補正部を備えることを特徴とする光学式移動量検出装置。
  5. 請求項1に記載の光学式移動量検出装置において、
    上記移動量検出部は、上記第1の時点で上記受光部における上記線状反射ビームの像の長さ方向の一部に対応する第1部分領域から出力される第1出力波形部分信号と、上記第2の時点で上記受光部における上記線状反射ビームの像の複数の部分の夫々に対応する複数の部分領域から出力される複数の第2出力波形部分信号との相関係数を求めて、最も相関係数の高い上記第2の時点での第2部分領域を求めて、上記第1部分領域と上記第2部分領域とのズレ量によって、上記被検出物の移動量を演算する移動量演算部を備えることを特徴とする光学式移動量検出装置。
  6. 請求項5に記載の光学式移動量検出装置において、
    上記受光部の第1部分領域の大きさは、この第1部分領域から出力される上記第1出力波形部分信号が、上記第1の時点で上記第1部分領域以外の上記受光部の領域から出力される信号と判別できる大きさであり、上記受光部の全領域の大きさは、上記第1部分領域の大きさに、上記被検出物の予め定められた移動量に対応する上記線状反射ビームの像の移動量を加えた大きさ以上であることを特徴とする光学式移動量検出装置。
  7. 請求項5に記載の光学式移動量検出装置において、
    上記受光部の全領域の大きさは、上記第1部分領域の大きさと、上記被検出物の予め定められた移動量に対応する上記線状反射ビームの像の移動量と、この移動量からの予測されている上記被検出物の位置ズレ量とを加えた大きさに等しいことを特徴とする光学式移動量検出装置。
  8. 請求項1に記載の光学式移動量検出装置を備えることを特徴とする電子機器。
  9. 請求項1記載の光学式移動量検出装置と、
    上記被検出物を搬送する搬送部と、
    上記被検出物に所定の処理をする処理部と、
    上記光学式移動量検出装置により検出された上記被検出物の移動量に基づいて、上記被検出物の搬送後の位置を目標位置に合わせるように上記搬送部を制御する制御部と
    を備えることを特徴とする搬送処理システム。
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