JP4014293B2 - スエード調シート材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、スエード調の外観を有し、柔らかな感触を併せ持つシート材に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の内装材や、内装建材等には、本体部の表面を合成樹脂製シート材で覆ったものが多用されている。前記シート材は、内装材等の表面を構成し、人の目に触れるのみならず、直接手などが触れるものであるため、優れた装飾性及び柔らかな感触を有するものが好ましい。
【0003】
近年、装飾性及び感触が良好で、しかも植毛に比べて安価に製造できるスエード調外観を有するシート材が提案されるようになった(特開平10−95062号公報)。前記スエード調外観を有すシート材は、軟質塩化ビニル樹脂等からなる非発泡の樹脂基材に中間層と表層が積層されたものからなって、前記中間層と表層の少なくとも一方に熱膨張したマイクロカプセルを分散含有し、そのマイクロカプセルの膨張によって表層表面に凹凸模様が形成されている。さらに前記表層には、シート材表面の滑りを良くして、他物体との擦れによる表面の傷付きやマイクロカプセルの脱落及び損傷の防止を目的として、シリコーンオイル、シリコーンビーズ及びウレタンビーズのうち少なくとも1種が含有されている。
【0004】
しかし、前記構造からなるスエード調外観を有するシート材にあっては、他物体との接触による不具合を未だ完全に解決できず、大なる押圧力で他物体が接触した際には、表層凸部に傷が付いて外観が損なわれたり、マイクロカプセルが破損して感触が損なわれるおそれがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は前記の点に鑑みなされたもので、表面が他物体と接触した際に表面が傷付き難く、また優れた表面感触を有するスエード調シート材を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明に係るスエード調外観を有するシート材は、基層、中間層及び表層とを備える積層体からなる合成樹脂製シート材であって、前記基層が発泡体からなり、前記中間層が樹脂中に熱膨張したマイクロカプセルを分散含有したものからなり、前記表層がシリコーンオイル、シリコーンビーズ及びウレタンビーズのうち少なくとも1種類を含有していることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明に係るスエード調外観を有するシート材は、請求項1において、表層が樹脂中に熱膨張したマイクロカプセルを分散含有していることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明に係るスエード調外観を有するシート材は、請求項1または2において、基層中に熱膨張したマイクロカプセルを含有してなることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明に係るスエード調外観を有するシート材は、請求項1ないし3のいずれか1項において、基層が、JIS A 硬度20〜60であることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下この発明を図面に基づき詳細に説明する。図1は請求項1の発明に係る一実施例のシート材の断面を示す模式図、図2は請求項2の発明に係る一実施例のシート材の断面を示す模式図である。
【0011】
図1に示す請求項1の発明に係るスエード調外観を有するシート材30は、合成樹脂製のもので、基層31、中間層41及び表層51を有する積層体からなる。基層31は、発泡体からなる。発泡体としては、基層樹脂32中に高圧下で窒素ガスや炭酸ガスを封じ込めた、いわゆるガス発泡による発泡体、あるいは基層樹脂32と化学発泡剤を混合し、熱加工する際に発生する熱分解ガスにより発泡した発泡体等からなる。基層樹脂32としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル樹脂等の合成樹脂からなる。
【0012】
また、前記基層31としては、前記基層樹脂32中に熱膨張性マイクロカプセルを分散含有させて、その基層樹脂の加熱によりマイクロカプセルを膨張させて形成した発泡体で構成してもよい。
【0013】
前記熱膨張性マイクロカプセルは、直径5〜50μmの球形からなり、加熱によって4〜30倍に体膨張するものである。特にこの発明では、直径が15〜25μmの球形からなって、8〜15倍に体膨張するものが緩衝性向上の点で好ましい。通常、熱膨張性マイクロカプセルは、ブタン、イソブタン等の揮発性炭化水素を内包し、外殻が塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリルニトリル等によって形成されており、この発明ではいずれのものも使用できる。また、熱膨張したマイクロカプセル33の含有量は、基層31を100重量%とした場合に、1〜30重量%が好ましい。
【0014】
また、前記基層31の硬度は、シート材30の表面感触性を良好とし、シート材30の接触や押圧によるシート材30表面の傷付き防止等の点から、JIS A の硬度が20〜60の軟質の発泡体が好ましい。
【0015】
中間層41は、中間層樹脂42中に熱膨張したマイクロカプセル43を分散含有したもので、一種の発泡体なり、弾性変形によってシート材30表面の感触を良好とすると共にシート材30表面を傷付き難くするものである。この中間層41は、あらかじめ発泡成形された基層31の表面に前記熱膨張性マイクロカプセルを含有した樹脂原料を塗布し、加熱して硬化及び熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張を行わせることによって容易に形成することができる。中間層樹脂原料としては、公知の一液型ウレタン樹脂原料に熱膨張性マイクロカプセルを含有したものが好適である。この場合の熱膨張したマイクロカプセル43の含有量は、中間層41を100重量%とした場合に2〜30重量%が好ましい。
【0016】
表層51は、非発泡の樹脂52からなるもので、その表面の滑りを向上させて傷を付き難くするため、シリコーンオイル、シリコーンビーズ及びウレタンビーズのうち少なくとも1種類53を含有させるのが好ましい。これによって、表層31表面、すなわちシート材30表面の滑りが向上して触感がさらに良好となり、摩擦によるシート材30表面の傷付き及びマイクロカプセルの脱落をより確実に防止できるようになる。シリコーンオイルやシリコーンビーズ53等は、適量とされるが、通常、表層51を100重量%とした場合に、1〜50重量%、好ましくは10〜30重量%とされる。この表層51は、前記中間層41を形成した後、その中間層41表面に表層樹脂原料を塗布して硬化させることにより形成される。表層樹脂原料としては、特に限定されないが、前記中間層41との接着性の良好なものが好ましく、公知の一液型ウレタン樹脂塗料、あるいはウレタン系熱可塑性エラストマーを含む塗料等、特には中間層41と同一または近似の組成を有するものが好適である。
【0017】
前記構成のシート材30にあっては、表層51表面に中間層41のマイクロカプセル43が露出してなく、しかも中間層41及び基層31を構成する発泡体によって緩衝性に優れるため、シート材30表面の摩擦時に中間層41のマイクロカプセル43が脱落し難く、シート材31表面の傷付きも生じ難く、さらには中間層41内の熱膨張したマイクロカプセル43の損傷も少ないため、良好な表面感触及び外観を維持できる。
【0018】
図2のシート材60は、請求項2の発明の一実施例に係るもので、基層61と中間層71と表層81とよりなる。基層61及び中間層71は、前記請求項1の実施例における基層31及び中間層41と同様のものである。勿論基層61は、熱膨張したマイクロカプセルが含有分散したものでもよい。符号62は基層樹脂、72は中間層樹脂、73は熱膨張したマイクロカプセルである。
【0019】
表層81は、表層樹脂82中に熱膨張したマイクロカプセル83を分散含有したもので、一種の発泡体からなり、好ましくはシリコーンオイル、シリコーンビーズ及びウレタンビーズのうち少なくとも1種類84が含有される。この表層81は、基層61表面に形成された中間層71の表面に、前記熱膨張性マイクロカプセルを含有した表層樹脂原料を塗布し、加熱して硬化及び熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張を行わせることによって容易に形成される。表層樹脂原料としては、前記中間層71と接着性の良好なものとされる。例えば、前記中間層71がウレタン樹脂系の場合には、公知の一液型ウレタン樹脂原料に熱膨張性マイクロカプセルを含有したものが好適である。この場合の熱膨張したマイクロカプセルの含有量は、表層81を100重量%とした場合に2〜30重量%が好ましい。
【0020】
前記構成のシート材60にあっては、基層61、中間層71及び表層81の発泡体によって、シート材60の緩衝性が高められているため、表面の感触が良好で、しかも他物体と接触した際に、前記緩衝性によってシート材60表面が傷付き難く、表層81中の熱膨張したマイクロカプセル83も脱落し難く、また、中間層71中の熱膨張したマイクロカプセル73も破損し難く、良好な装飾性を長期に渡って維持できる。
【0021】
(1)実施例1
基層として、ポリ塩化ビニル樹脂中に熱膨張したマイクロカプセルを基層100重量%に対して5重量%分散含有させた、JIS A 硬度30、厚み2mmのものを用意し、その基層表面に、中間層樹脂原料として、熱膨張性マイクロカプセルが含有した一液型ウレタン樹脂原料をスプレーガンで塗布し、次いで表層樹脂原料としてウレタンビーズ及びシリコーンオイルを含有させた一液型ウレタン樹脂原料をスプレーガンで塗布し、100℃で加熱後、全体を150℃に加熱し、マイクロカプセルを熱膨張させて請求項1のシート材を得た。このシート材における中間層の厚みは50μm、表層の厚みは10μm、中間層における熱膨張したマイクロカプセルの含有量は、中間層100重量%に対し5重量%であり、ウレタンビーズ及びシリコーンオイルの含有量は、表層100重量%に対し20重量%である。得られたシート材の表層表面に対して、傷付き(スクラッチ)テストを行ったところ、傷付きの無い良好なものであった。
【0022】
(2)実施例2
実施例1と同様にして基層表面に中間層樹脂原料を塗布し、次いで表層樹脂原料として熱膨張性マイクロカプセルとウレタンビーズ及びシリコーンオイルを含有させた一液型ウレタン樹脂原料をスプレーガンで塗布し、100℃で乾燥後150℃に加熱することにより熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張を行って厚み50μmの表層を形成し、請求項2のシート材を得た。表層中の熱膨張したマイクロカプセルの量は表層100重量%に対して5重量%、ウレタンビーズ及びシリコーンオイルの量は20重量%となるように設定した。得られたシート材に対して、実施例2と同様にして傷付きテストを行ったところ、表面の傷付きが認められなかった。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし4の発明のスエード調外観を有するシート材は、基層が、樹脂中に熱膨張したマイクロカプセルを分散含有したものや、化学発泡したもの、あるいは物理発泡したものからなる発泡体で構成され、特にはJIS A 硬度20〜60の発泡体からなる。そのため、シート材表面が他物体と接触して擦れ合う際に、基層が変形してシート材表面と他物体との強い擦れを回避し、表面が傷付くのを防ぐことができる。しかも、前記基層の変形性(緩衝性)によって、シート材表面の感触がより良好となり、また、基層が発泡体からなるため、シート材全体が軽量となる利点もある。したがって、この発明のシート材は、スタンプ成形用シート材や、真空成形用シート材等として好ましく、自動車の内装材等の表皮材を構成するのにも好適である。
【0024】
前記効果に加え、請求項1ないし4の発明にあっては、中間層中に熱膨張したマイクロカプセルが分散しているため、シート材表面の感触が良好で、しかもシート材表面も傷つき難い効果がある。さらに、請求項2の発明においては、中間層のみならず表層中にも熱膨張したマイクロカプセルが分散しているため、シート材表面の感触性が極めて良好となるのみならず、シート材表面の傷付き防止効果も高くなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 請求項1の発明に係る一実施例のシート材の断面を示す模式図である。
【図2】 請求項2の発明の一実施例に係るシート材の断面を示す模式図である。
【符号の説明】
30,60:スエード調外観を有するシート材
31,61:基層
43,73,83:熱膨張したマイクロカプセル
51,81:表層
41,71:中間層
Claims (4)
- 基層、中間層及び表層とを備える積層体からなる合成樹脂製シート材であって、前記基層が発泡体からなり、前記中間層が樹脂中に熱膨張したマイクロカプセルを分散含有したものからなり、前記表層がシリコーンオイル、シリコーンビーズ及びウレタンビーズのうち少なくとも1種類を含有していることを特徴とするスエード調外観を有するシート材。
- 請求項1において、表層が樹脂中に熱膨張したマイクロカプセルを分散含有していることを特徴とするスエード調外観を有するシート材。
- 請求項1または2において、基層中に熱膨張したマイクロカプセルを含有してなることを特徴とするスエード調外観を有するシート材。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、基層が、JIS A 硬度20〜60であることを特徴とするスエード調外観を有するシート材。
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