JP4013889B2 - 電気光学装置用基板の製造方法、および、電気光学装置の製造方法 - Google Patents

電気光学装置用基板の製造方法、および、電気光学装置の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、反射層の表面を粗面とすることによって反射光を散乱させる技術に関する。
いわゆる反射型の液晶表示装置においては、液晶を保持する基板の板面上に光反射性を有する反射層が形成される。そして、観察側から入射した太陽光や室内照明光などの外光は反射層の表面にて反射され、この反射光が画像の表示に供される。この構成において反射層の表面が完全な平面であるとすれば、液晶表示装置に対する入射光が反射層の表面にて鏡面反射されて観察者に視認されることとなる。この場合には本来の表示画像のほかに液晶表示装置の表示面に対向する人や物の画像が視認されることとなって表示が見づらくなるという問題があった。
このような背景の映り込みを防止するために、反射層の表面には多数の微細な突起および窪み(以下「散乱構造」という)が形成される。この構成によれば反射層の表面における反射光は適度に散乱して観察側に出射するから背景の映り込みを防止することができる。特許文献1には、この散乱構造を形成するための方法が開示されている。この方法においては、第1に、多数の微細な樹脂片が基板の板面上に分散して形成され、第2に、これらの突起と基板の板面との段差を滑らかにするために各突起を覆う膜体が設けられ、第3に、この膜体を覆うように反射層が形成される。
特開2003−75987号公報(段落0073および段落0074ならびに図12)
しかしながら、この方法においては、多数の微細な樹脂片を基板上に形成する工程のほかに各突起を覆う膜体を形成する工程が必要となるため、製造工程が煩雑化するとともに製造コストが嵩むという問題が生じ得る。この問題を解消するための方策としては、膜体を形成することなく、各樹脂片を直接に覆うように反射層を形成することも考えられる。しかしながら、この方法を用いた場合には、各樹脂片間に露出する基板の板面と各樹脂片の頂上部の平坦面とを反映した平坦面が反射層の表面に現れるため、光を散乱させる効果(以下「光散乱効果」という)が充分に得られないという問題が生じ得る。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な製造工程によって良好な光散乱効果を有する反射層を得ることにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る露光用マスクは以下の構成を有する。まず、この露光用マスクは、膜体のうち表面が粗面化されるべき被加工領域の周囲(すなわち被加工領域以外の領域)に対向させられる第1領域と、被加工領域に対向させられる第2領域とを有する。このうち第2領域はさらに複数のドット領域を有する。これらの領域(すなわち、第1領域と各ドット領域と第2領域のうち各ドット領域を除く領域とを含む3種類の領域)には、光を透過させる透光部と光を遮る遮光部とに加えて、透光部よりも低い光透過率にて光を透過させる半透過部がそれぞれ設けられる。各領域に透光部と遮光部と半透過部の何れが設けられるかは、加工対象となる膜体の形成に用いられる感光性材料の種類(ポジ型またはネガ型)や最終的に作成しようとする粗面の形態に応じて適宜に選定される。
例えば、ポジ型の感光性材料からなる膜体の被加工領域のうち複数のドット領域以外の領域を除去することによって粗面(すなわち膜体のうちドット領域に対応する領域が突起とされた粗面)を形成するための露光用マスクは、被加工領域の周辺に向かう光を透過させる透光部を有する第1領域と、被加工領域に向かう光を遮る遮光部が各々に設けられた複数のドット領域を有するとともに、被加工領域に向かう光を透光部よりも低い光透過率にて透過させる半透過部が各ドット領域以外の領域に設けられた第2領域とを有する。この構成の具体例は第1実施形態として後述されている。一方、ポジ型の感光性材料からなる膜体の被加工領域のうち複数のドット領域を除去することによって粗面(すなわち膜体のうちドット領域に対応する領域が窪みとされた粗面)を形成するための露光用マスクは、被加工領域の周辺に向かう光を透過させる透光部を有する第1領域と、被加工領域に向かう光を透光部よりも低い光透過率にて透過させる半透過部が各々に設けられた複数のドット領域を有するとともに、被加工領域に向かう光を遮る遮光部が各ドット領域以外の領域に設けられた第2領域とを有する。この構成の具体例は第2実施形態として後述されている。
これらの露光用マスクの第1領域は透光部となっているから、膜体のうち被加工領域の周囲の領域に対して厚さ方向の全部にわたって光を作用させることができる。一方、露光用マスクのうち第2領域は、各ドット領域およびそれ以外の領域のうち一方の領域に遮光部が設けられるとともに他方の領域に半透過部が設けられている。この構成によれば、光源から膜体に向かう光のうち第2領域を透過する光量が制限されるから、仮に膜体のうち被加工領域の周囲の領域を厚さ方向の全部にわたって光分解させるのに充分な光量を光源から照射したとしても、膜体の被加工領域については厚さ方向の一部のみを選択的に光分解させることができる。このため、膜体を現像しても被加工領域が完全には除去されないから、膜体の設けられた基板の表面が被加工領域において露出することはない。したがって、この露光用マスクによる露光を経た膜体を現像して得られる下地層を用いた電気光学装置用基板(反射基板)は、基板の平坦面を反映した平坦面がなく良好な光散乱効果を発揮する。しかも、本発明に係る露光用マスクによれば、膜体のうち厚さ方向の全部にわたって完全に光が作用する部分と、露光が施されない部分と、厚さ方向の一部のみに光が作用する部分とを共通の工程にて得ることができる。
なお、これらの露光用マスクの他の態様においては、各ドット領域の全周縁または当該周縁の一部に接するように周辺透光部が設けられる。各周辺透光部は第1領域の透光部と略同一の光透過率にて光を透過させる部分である。この構成によれば、光源から膜体に向かう光のうち周辺透光部を透過した光が各ドット領域の周縁にて回折させられ、この回折光が膜体の表面に至って強め合う。したがって、膜体のうち半透過部を透過した光が照射される部分のほか、周辺透光部を透過した回折光が照射される部分も光分解するから、この膜体を現像して得られる下地層のうちドット領域に対応する領域には微細な窪みが形成されることとなる。このような下地層の粗面上に反射層を薄膜状に形成すれば、突起の頂上部または窪みの底部が平坦面である粗面上に反射層を形成した場合と比較して良好な光散乱効果が得られる。
一方、ネガ型の感光性材料からなる膜体の被加工領域のうち複数のドット領域以外の領域を除去することによって粗面(すなわち膜体のうちドット領域に対応する領域が突起とされた粗面)を形成するための露光用マスクは、被加工領域の周辺に向かう光を遮る遮光部が設けられた第1領域と、被加工領域に向かう光を透過させる透光部が各々に設けられた複数のドット領域を有するとともに、被加工領域に向かう光を各透光部よりも低い光透過率にて透過させる半透過部が各ドット領域以外の領域に設けられた第2領域とを有する。なお、この構成の具体例は第3実施形態として後述されている。また、ネガ型の感光性材料からなる膜体の被加工領域のうち複数のドット領域を除去することによって粗面(すなわち膜体のうちドット領域に対応する領域が窪みとされた粗面)を形成するための露光用マスクは、被加工領域の周辺に向かう光を遮る遮光部が設けられた第1領域と、被加工領域に向かう光を透過させる半透過部が各々に設けられた複数のドット領域を有するとともに、被加工領域に向かう光を透過させる透光部が各ドット領域以外の領域に設けられた第2領域であって、半透過部の光透過率が透光部の光透過率よりも低い第2領域とを有する。この構成の具体例は第4実施形態として後述されている。これらの露光用マスクによっても、上述したポジ型の感光性材料を露光するための露光用マスクと同様にして、良好な光散乱効果を有する反射層の下地層を簡易な工程により形成することができる。
ところで、膜体のうち被加工領域の周辺を完全に除去するためには光源から充分な光量を照射する必要がある。このような露光工程に用いられる露光用マスクにおいて半透過部の光透過率が比較的高いとすれば、半透過部を透過して被加工領域に至る光量が多くなり、この領域が膜体の厚さ方向の全部にわたって光分解される可能性がある。しかしながら、上述したように被加工領域が除去されると基板の板面が露出して光散乱効果の低下の原因となり得る。この不具合を防止するために、半透過部の光透過率は透光部の光透過率よりも充分に低いことが望ましい。本願発明者による試験によれば、光源からの照射光に対する半透過部の光透過率を10%(パーセント)以上40%以下とすることによって特に良好な光散乱効果を実現し得る粗面が形成されるという知見を得るに至った。したがって、本発明に係る露光用マスクのうち半透過部の光透過率は10%以上40%以下とされることが望ましい。
なお、透光部よりも低い光透過率を有するものであれば、半透過部の具体的な構成は任意である。例えば、遮光性を有する膜体を極めて薄く形成すれば、この薄膜に照射される光の一部は吸収または反射される一方、他の一部は当該薄膜を透過する。このような遮光性を有する薄膜を半透過部として用いてもよい。あるいは、遮光性を有する複数の微小遮光部と透光性を有する複数の微小透光部とを面状に配列させたものを半透過部として用いてもよい。この構成によっても、光源から出射した光の一部が微小遮光部によって遮光される一方、他の一部を微小透光部から透過させることができる。微小遮光部と微小透光部との配置の態様は任意であるが、半透過部を透過して膜体に到達する光量を当該半透過部の面内において均一化するという観点からすると、各微小遮光部と各微小透光部とを第1の方向と第2の方向とにわたって互い違いに配置した構成(すなわち市松模様状に配置した構成)を有する半透過部を用いることが望ましい。この構成においては、微小透光部を透過した光が微小遮光部の周縁にて回折して相互に干渉し合うのを防止するために、各微小遮光部および各微小透光部の各辺の長さは2μm(マイクロメートル)以下とされることが望ましく、さらに好ましくは1.5μm以下とされる。一方、半透過部の他の態様として、それぞれ第1の方向に延在する各微小遮光部と各微小透光部とを第1の方向に直交する第2の方向に交互に配置した構成(すなわち微小遮光部と微小透光部とをストライプ状に配列した構成)も採用され得る。この構成においても、回折光の干渉を防止するために各微小遮光部および各微小透光部の幅は2μm以下されることが望ましく、さらに好ましくは1.5μm以下とされる。
本発明に係る露光用マスクの他の態様において、各ドット領域の平面形状は多角形とされる。ここで、各ドット領域の面積が余りに大きいと、膜体の粗面を構成する突起の頂上部または窪みの底部に平坦面が現れるため、その粗面上に形成された反射層の光散乱効果が損なわれることとなる。一方、各ドット領域の面積が余りに小さいと、第2領域のうち各ドット領域とそれ以外の領域との境界の近傍において回折した光源からの光が干渉し合って膜体の表面形状が所期の形状とならない可能性がある。本願発明者による試験によれば、各多角形の外接円の直径は8μm以上11μm以下であることが望ましいという知見を得るに至った。したがって、各ドット領域の多角形の外接円の直径は8μm以上11μm以下とされることが望ましく、さらに好ましくは9μm以上10μm以下とされる。
また、各ドット領域が余りに密集していたり極端に疎らである場合には、露光後の現像により得られる粗面の平坦度が増大し、このため粗面上の反射層の光散乱効果が低下しかねない。本願発明者による試験によれば、第1領域と第2領域との総面積に占める複数のドット領域の面積の割合は30%以上60%以下であることが望ましいという知見を得るに至った。
本発明は、以上に説明した露光用マスクを用いて電気光学装置用基板を製造する方法としても特定され得る。さらに詳述すると、本発明に係る電気光学装置用基板の製造方法の第1の特徴は、ポジ型の感光性材料により膜体を形成する膜体形成工程と、マスクを介して膜体を露光する工程であって、粗面の突起となるべき領域および窪みとなるべき領域の一方に向かう光源からの光を露光用マスクの遮光部によって遮るとともに、これらの領域の他方に向かう光源からの光を露光用マスクの半透過部を透過させることによって膜体の厚さ方向の一部のみに当該光を作用させる露光工程と、露光工程を経た膜体を現像して下地層を形成する現像工程と、現像工程により得られた下地層の粗面上に光反射性を有する反射層を形成する反射層形成工程とを有することにある。さらに、本発明に係る電気光学装置用基板の製造方法の第2の特徴は、ネガ型の感光性材料により膜体を形成する膜体形成工程と、露光用マスクを介して膜体を露光する工程であって、粗面の突起となるべき領域および窪みとなるべき領域の一方に向かう光源からの光を露光用マスクの透光部を透過させることによって膜体の厚さ方向の全部に当該光を作用させるとともに、これらの領域の他方に向かう光源からの光を露光用マスクの半透過部を透過させることによって膜体の厚さ方向の一部のみに当該光を作用させる露光工程と、露光工程を経た膜体を現像して下地層を形成する現像工程と、現像工程により得られた下地層の粗面上に光反射性を有する反射層を形成する反射層形成工程とを有することにある。これらの製造方法によれば、本発明に係る露光用マスクについて上述したのと同様の理由により、良好な光散乱効果を有する電気光学装置用基板が簡易な製造工程によって得られる。
これらの製造方法によって得られた電気光学装置用基板の反射層に対向するように電気光学物質を配置することによって電気光学装置が製造される。この製造方法によれば、背景の映り込みが抑制されて良好な表示品位を有する電気光学装置が簡易な工程によって製造される。なお、本発明における電気光学物質とは、電圧の印加や電流の供給といった電気的な作用を光透過率や輝度の変化といった光学的な特性の変化に変換する物質である。電気光学物質の典型的な例としては液晶が挙げられるが、本発明の適用され得る範囲はこれに限定されない。
また、本発明に係る電気光学装置用基板は、各々の頂上部に窪みが形成された複数の突起を表面に有する下地層と、下地層のうち複数の突起を有する表面上に設けられた光反射性を有する反射層とを具備する。ここで、下地層の突起の表面が特許文献1に記載されているような平滑面であるとすれば、その表面上に設けられた反射層の表面には同様の平滑面が現れる。このような平滑面では光が鏡面反射するため、反射層の表面が粗面であるとは言っても必ずしも良好な光散乱効果が得られるとは限らない。これに対し、本発明に係る電気光学装置用基板の下地層は、各々の頂上部に窪みが形成された複数の突起を表面に有するから、反射層の表面における平坦面の割合は特許文献1に記載された反射層よりも少ない。したがって、本発明に係る電気光学装置用基板によれば良好な光散乱効果が得られる。なお、本発明に係る電気光学装置用基板の下地層は、例えば、ドット領域に周辺透光部が設けられた上記露光用マスクを用いて膜体を露光した後に現像することによって得られる。
また、本発明に係る電気光学装置用基板は電気光学装置の基板として用いられる。すなわち、この電気光学装置は、相互に対向して電気光学物質を挟む第1基板および第2基板と、第2基板のうち電気光学物質に対向する板面上に設けられた層であって各々の頂上部に窪みが形成された複数の突起を表面に有する下地層と、下地層のうち複数の突起を有する表面上に設けられた光反射性を有する反射層とを具備する。この電気光学装置によれば、第1基板側からの入射光を反射層によって良好に散乱させたうえで第1基板側に反射させることができるから、背景の映り込みを抑えた良好な表示品位が得られる。さらに、本発明は、この電気光学装置を表示装置として備える電子機器としても特定される。この種の電気光学装置としては、携帯電話機やパーソナルコンピュータなど種々の電気光学装置が考えられる。
以上に説明したように、本発明によれば、簡易な製造工程によって良好な光散乱効果を有する反射層が得られる。
図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。以下では電気光学物質として液晶を用いた液晶表示装置に本発明を適用した形態を例示するが、本発明が適用され得る範囲をこれに限定する趣旨ではない。また、以下に示す各図面においては、説明の便宜のために各構成要素の寸法や比率を実際のものとは異ならせてある。
<A:第1実施形態>
<A−1:液晶表示装置の構成>
図1は、本実施形態に係る液晶表示装置の構成を示す断面図であり、図2は、この液晶表示装置の一部を拡大して示す斜視図である。図2におけるI−I線からみた断面図が図1に相当する。これらの図に示されるように、液晶表示装置100は、略長方形の枠状に成形されたシール材34を介して相互に対向するように配置された第1基板10と第2基板20とを有する。これらの基板はガラスやプラスチックなどの光透過性を有する材料からなる板状またはフィルム状の部材である。両基板とシール材34とによって囲まれた空間には例えばTN(Twisted Nematic)型の液晶35が封止されている。以下では、図1および図2に示されるように、液晶35からみて第1基板10側を「観察側」と表記する。すなわち、液晶表示装置100による表示画像を視認する観察者が位置する側という意味である。これに対し、液晶35からみて第2基板20側を「背面側」と表記する。第1基板10のうち観察側の板面上には、表示画像のコントラストを改善するための位相差板311や入射光を偏光させる偏光板312が貼着されており、第2基板20のうち背面側の板面上には同様の位相差板321と偏光板322とが貼着されている(図2においては図示略)。また、第2基板20は第1基板10の周縁から張り出した部分(以下「張出部」という)20aを有する。この張出部20aには、液晶表示装置100を駆動するための回路を備えたICチップ38がCOG(Chip On Glass)技術により実装されている。
第1基板10のうち液晶35と対向する板面上には複数の画素電極11がマトリクス状に配置されている。各画素電極11は、ITO(Indium Tin Oxide)などの光透過性を有する導電性材料からなる略矩形状の電極である。X方向に隣接する画素電極11同士の間隙にはY方向に延在する走査線12が形成されている。各画素電極11はTFD(Thin Film Diode)素子13を介して走査線12に接続されている。このTFD素子13は、非線形な電流−電圧特性を有する二端子型スイッチング素子である。これらの各要素が形成された第1基板10の板面は、ラビング処理が施された配向膜14によって覆われている(図2では図示が省略されている)。
一方、第2基板20のうち液晶35と対向する板面上には、X方向に延在する複数のデータ線27が形成されている。各データ線27は、画素電極11と同様にITOなどの光透過性を有する導電性材料からなる電極であり、第1基板10上においてX方向に列をなす複数の画素電極11と対向する。これらのデータ線27が形成された第2基板20の板面は配向膜14と同様の配向膜28によって覆われている。この構成のもと、第1基板10と第2基板20とによって挟まれた液晶35は、各画素電極11とこれに対向するデータ線27との間にICチップ38から印加される電圧に応じて配向方向が変化する。図2に示されるように、この配向方向が変化する領域(以下「サブ画素」という)Gsの各々には赤色、緑色および青色のいずれかが割り当てられている。
また、第2基板20のうち液晶35と対向する板面上には、下地層21と反射層22とカラーフィルタ24と絶縁層26とが第2基板20側からこの順番に積層されている。上述したデータ線27および配向膜28は絶縁層26の表面上に形成されている。カラーフィルタ24は、各サブ画素Gsに対応して設けられた樹脂層であり、顔料や染料によって各サブ画素Gsの色に着色されている。赤色、緑色および青色の3色のカラーフィルタ24に対応するサブ画素Gsによって、表示画像の最小単位である画素が構成される。また、各色のカラーフィルタ24の間隙(すなわち隣り合うサブ画素Gs同士の間隙)には遮光層25が形成されている。この遮光層25は、カーボンブラックが分散された樹脂材料やクロムなどの遮光性を有する金属材料により形成されて各サブ画素Gsの間隙を遮光する役割を担っている。また、絶縁層26は、エポキシ系やアクリル系といった各種の樹脂材料によってカラーフィルタ24と遮光層25とを覆うように形成された膜体である。この絶縁層26は、カラーフィルタ24と遮光層25との段差を平坦化する役割と、カラーフィルタ24の顔料や染料が液晶35に染み出すのを防ぐ役割とを担っている。
一方、下地層21は、第2基板20の板面上に設けられた膜体であり、アクリル系やエポキシ系といった感光性を有する樹脂材料からなる。この下地層21は、第2基板20の表面うちシール材34によって囲まれた領域内のみに選択的に設けられており、ICチップ38が実装される張出部20aには存在しない。ここで、張出部20aを含む第2基板20の全面にわたって下地層21が形成された構成(すなわち下地層21の表面上にICチップ38が実装された構成)のもとでは、ICチップ38に外力が作用したときに下地層21がICチップ38とともに第2基板20から剥離しやすいという問題がある。これに対し、本実施形態のように張出部20aにおいて下地層21が完全に除去された構成(すなわちICチップ38が下地層21を介することなく第2基板20上に実装された構成)によれば、このような問題を回避できるという利点がある。
また、図1および図2に示されるように、この下地層21のうち各サブ画素Gsの中央付近に相当する部分には当該下地層21を厚さ方向に貫通する開口部211が設けられている。一方、反射層22は、アルミニウムや銀などの単体金属やこれらの金属を主成分として含む合金など光反射性を有する材料により下地層21の表面上に形成された薄膜であり、下地層21の開口部211に対応するように開口した透光部221を有する。したがって、下地層21および反射層22に積層された各カラーフィルタ24の一部は、反射層22の透光部221と下地層21の開口部211を介して第2基板20の表面に至る。以上に説明した構成のもと、液晶表示装置100の背面側から第2基板20に入射したバックライトユニットからの出射光は、下地層21の開口部211と反射層22の透光部221とを通過したうえでカラーフィルタ24および液晶35を透過し、さらに第1基板10を透過して観察側に出射する。このように液晶表示装置100の背面側から観察側への透過光によって透過型表示が実現される。一方、液晶表示装置100の観察側から第1基板10に入射した室内照明光や太陽光などの外光は、液晶35とカラーフィルタ24とを透過して反射層22の表面に到達し、この表面において反射させられて第1基板10から観察側に出射する。このように反射層22による反射を経て観察側に出射する光によって反射型表示が実現される。
ここで、反射層22の表面が完全な平面であるとすれば液晶表示装置100に対する観察側からの入射光が反射層22の表面において鏡面反射することになるため、液晶表示装置100の表示面に対向する背景の画像が表示画像に映り込むといった問題が生じ得る。この問題を解消するために、本実施形態における反射層22の表面には反射光を適度に散乱させるための散乱構造が形成されている。さらに詳述すると、下地層21の表面が多数の微細な突起(凸部)または窪み(凹部)を有する粗面となっており、この粗面上に薄膜状に形成された反射層22の表面には当該下地層21の粗面を反映した微細な起伏(すなわち散乱構造)が現れているのである。図3は、本実施形態における下地層21の表面形状を拡大して示す斜視図である。同図に示されるように、下地層21の表面は多数の微細な突起213が形成された粗面となっている。あるいは、これらの突起213の頂上部を含む平面を基準とすれば、下地層21の表面は多数の微細な窪み214が形成された粗面であると捉えることもできる。また、図4は、下地層21の突起213を拡大して示す断面図である。同図に示されるように、突起213の頂上部から窪み214の底部までの距離を突起213の高さ(あるいは窪み214の深さ)Hとすると、各突起213の高さHは下地層21の厚さ(第2基板20との接触面と突起213の頂上部との距離)Tよりも小さくなっている。すなわち、下地層21表面の窪み214の深さは当該下地層21の厚さTよりも小さく、したがって各窪み214は下地層21を貫通しない。このように、下地層21表面の窪み214の深さは、その窪み214の底部において第2基板20が露出しないように選定されている。
また、図3および図4に示されるように、各突起213における頂上部の近傍には窪み(凹部)213aが形成されている。各窪み213aの深さDは突起213の高さH(あるいは窪み214の深さ)よりも小さい。本実施形態における下地層21の表面はこのような粗面とされているため、その表面上に形成された反射層22の表面には、図4に示されるように各々の頂上部に窪みを有する多数の微細な突起が形成されることとなる。ここで、反射層22の散乱構造を構成する各突起の頂上部が平坦面であるとすれば、観察側からの入射光は当該平坦面において鏡面反射することになるから、背景の映り込みを回避するために充分な光散乱効果は必ずしも得られない。これに対し、図3および図4に示した本実施形態に係る散乱構造によれば、反射層22による反射光を各突起の頂上部においても散乱させることができるから、背景の映り込みを完全に回避し得る良好な光散乱効果が得られる。
<A−2:液晶表示装置100の製造方法>
次に、第2基板20上に下地層21と反射層22とを形成する工程に特に着目しながら、本実施形態に係る液晶表示装置100の製造方法を説明する。図5は、各製造工程における第2基板20上の要素の構成を示す工程図(図1に示された断面に相当する)である。
まず、図5(a)に示されるように、下地層21となる膜体51が第2基板20上の板面上に形成される。この膜体51は、感光性を有するポジ型の樹脂材料をスピンコート法などの方法によって第2基板20上に塗布することによって得られる。次いで、この膜体51を減圧環境下において乾燥させたうえで、85℃から105℃の範囲の温度にて加熱(プリベーク)する。
この後、図5(b)に示されるように、膜体51がマスク(以下「露光用マスク」という)7aを介して露光される。より具体的には、膜体51の表面から60μm程度の間隔(プロキシミティギャップ)をあけて露光用マスク7aが配置されたうえで、膜体51に対して光源からの出射光(例えばi線)が照射される。図5(b)に示されるように、本実施形態においては、膜体51のうち下地層として残されるべき領域(以下「被加工領域」という)511の周囲にある領域(すなわちシール材34の外側に位置する領域である。以下「周辺領域」という)513と、下地層21の開口部211に相当する領域515と、被加工領域511のうち下地層21の表面において窪み214となるべき領域とが一括して露光される。ここで、図6は、この露光によって光分解する部分を示す図である。同図においては、被加工領域511と周辺領域513との境界の近傍が拡大して示されており、ハッチングが施された領域が露光により光分解した部分に相当している。図5および図6に示されるように、本実施形態においては、周辺領域513と開口部211に相当する領域515とについては膜体51が厚さ方向の全部にわたって光分解する一方、下地層21の窪み214となるべき領域517については膜体51の厚さ方向における一部分のみが光分解する。なお、この露光工程において用いられる露光用マスク7aの具体的な構成については後に詳述する。
次いで、膜体51に対して現像が施される。この現像により、図5(c)に示されるように、膜体51のうち露光により光分解した部分が選択的に除去される。続いて、120℃から130℃の範囲の温度にて膜体51が加熱(メルトベーク)される。この工程により、膜体51の表層部分のみが部分的に溶融し、現像により膜体51表面に現れた凹凸の角部分が丸められる。この後、220℃程度の温度にて膜体51が焼成(ポストベーク)される。これらの工程により、図5(d)に示されるように、膜体51全体の表面形状が確定されて下地層21が得られる。ここで、現像後における膜体51の加熱を2つの段階に分けて実行するのは、仮に現像後の膜体51を直ちに220℃程度の温度に加熱すると、その表面の凹凸が過度に溶融して平坦部の多い表面となり、その結果として光散乱効果が損なわれるからである。つまり、ポストベークに先立って120℃から130℃の範囲にて膜体51を加熱する工程は、膜体51の表面形状を所期の形状に維持および安定させるための工程であると言える。
次いで、図5(e)に示されるように、透光部221を有する反射層22が下地層21の表面上に形成される。すなわち、光反射性を有する材料からなる薄膜がスパッタリングなどの成膜方法によって下地層21の表面上に形成され、この薄膜がフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術によってパターニングされることによって反射層22が得られる。上述したように、この反射層22の表面には下地層21の粗面を反映した散乱構造が形成される。
続いて、カラーフィルタ24および遮光層25が形成され、これらを覆うように絶縁層26が形成される。さらに、絶縁層26の表面上にデータ線27が形成された後、ポリイミドなどの有機薄膜によって配向膜28が形成されてラビング処理が施される。一方、第1基板10上の各要素は公知である各種の技術によって製造され得る。次いで、以上の工程を経た第1基板10と第2基板20とが互いの配向膜14および28を対向させた状態でシール材34を介して貼り合わされる。さらに、両基板とシール材34とによって囲まれた空間に液晶35が封入され、この空間が封止材(図示略)によって封止される。この後、位相差板311および321や偏光板312および322が第1基板10および第2基板20にそれぞれ貼着されるとともに第2基板20の張出部20aにICチップ38が実装されて、図1に示される液晶表示装置100が得られる。
<A−3:露光用マスク7aの構成>
次に、図5(b)の露光工程(以下では単に「露光工程」という)において用いられる露光用マスク7aの構成を説明する。図7は露光用マスク7aの構成を示す平面図である。同図に示されるように、本実施形態における露光用マスク7aは平面的にみると第1領域71と第2領域72とに区分される。このうち第1領域71は、露光工程において周辺領域513(すなわち下地層21を構成しないものとして現像により除去される領域)に対向させられる領域である。一方、第2領域72は、露光工程において膜体51の被加工領域511に対向させられる領域である。この第2領域72は、ランダムな位置に分散して配置された多数のドット状の領域(以下「ドット領域」という)721と、下地層21の開口部211に対応する領域(以下「開口形成領域」という)724とを含んでいる。本実施形態における各ドット領域721は、下地層21表面の突起213に相当する領域である。
次に、図8は露光用マスク7aの構成を示す断面図である。同図に示すように断面構造に着目すると、露光用マスク7aは、基材70と、この基材70の板面上に形成された遮光部84および半透過部86とを有する。このうち基材70は、光源からの照射光の略総てを透過させる板状の部材である。すなわち、露光処理における光源からの出射光に対する基材70自体の光透過率は約100%である。これに対し、遮光部84は、光源からの照射光の略総てを遮光(吸収または反射)する膜体であり、例えばクロムなどの遮光性を有する材料によって形成される。一方、半透過部86は、光源からの照射光を基材70よりも低い光透過率にて透過させる部分である。すなわち、半透過部86は、光源からの出射光の一部のみを透過させる一方、他の一部は遮光(吸収または反射)する。この半透過部86の具体的な形態としては、以下に示すハーフトーンおよびグレートーンの何れかが採用され得る。もっとも、本発明における半透過部は以下に示される構成に限定されない。
ハーフトーンは、酸化クロム(Cr)やモリブデンシリサイド(MoSiまたはMoSi)といった遮光性を有する材料からなる。これらの材料が基材70に薄膜状に形成されることにより、光源からの照射光の一部のみが透過して膜体51に到達する一方、他の一部は遮光される。
一方、グレートーンは、多数の微細な遮光部(以下「微小遮光部」という)と多数の微細な透光部(以下「微小透光部」という)とを基材70上に面状に配列してなる。このうち各微小遮光部は、遮光部84と共通の工程にて形成される部分であり、光源からの照射光の略総てを遮光する。これに対し、各微小透光部は、基材70上が露出した部分(すなわち遮光性を有する部材が設けられていない部分)であり、したがって光源からの照射光の略総てを透過させる。これらの各領域が面状に混在して配列されるため、光源からの照射光の一部は微小透光部を透過して膜体51に到達する一方、他の一部は微小遮光部によって遮光される。このグレートーンを採用した半透過部86においては、透過光の強度が半透過部86の面内にわたって略均一となるように、微小遮光部と微小透光部とが半透過部86の面内において分散して配置されることが望ましい。図9および図10は、各微小遮光部と各微小透光部との望ましい配列の態様を示す平面図である。
図9においては、略正方形状の微小遮光部861と、同じく略正方形状の微小透光部862とが、相互に直交するx方向およびy方向にわたって互い違いに(すなわち微小遮光部861同士または微小透光部862同士が隣接しないように)配置された態様が例示されている。ここで、各微小遮光部861および各微小透光部862の各辺の長さによっては、微小透光部862を透過した光が微小遮光部861の周縁にて回折して相互に干渉し、この結果、被加工領域511に対して所期の光量を照射することが妨げられ得る。この問題を解消するために、各微小遮光部861および各微小透光部862の各辺の長さLは1.0μm以上2.0μm以下とすることが望ましく、1.5μm以下とすることがさらに好ましい。
一方、図10においては、y方向に延在する線状の微小遮光部865と、同じくy方向に延在する線状の微小透光部866とが、y方向と直交するx方向にわたって交互に(すなわち微小遮光部865同士または微小透光部866同士が隣接しないように)配置された態様が例示されている。この態様のもとでも、回折光の干渉による不具合を防止するという観点から、各微小遮光部865および各微小透光部866の幅Wは1.0μm以上2.0μm以下とすることが望ましく、1.5μm以下とすることがさらに好ましい。
以上に説明した2種類の半透過部86のうちハーフトーンが採用された半透過部86によれば、グレートーンが採用された半透過部86と比較して、半透過部86を透過した光の回折が原理的に発生し得ないという利点がある。ただし、ハーフトーンが採用された半透過部86は、露光用マスク7aの遮光部84とは別個の工程にて形成される。これに対し、グレートーンが採用された半透過部86によれば、露光用マスク7aの遮光部84と共通の工程にて半透過部86を形成することができるという利点がある。
さて、図7においては、ハッチングが密に施された領域は遮光部84が設けられていることを示し、ハッチングが疎に施された領域は半透過部86が設けられていることを示す一方、ハッチングが施されていない領域は遮光部84および半透過部86の何れも設けられていないことを示している(以下に示す図13ないし図15においても同様である)。図7に示されるように、本実施形態に係る露光用マスク7aのうち第1領域71には遮光部84および半透過部86の何れも設けられていない。すなわち、第1領域71は基材70のみが存在する領域であり、光源から周辺領域513に向かう光を透過させる透光部81として機能する。開口形成領域724も第1領域71と同様に基材70のみの領域であって透光部81として機能する。したがって、図6に示したように、第1領域71の透過光が到達する膜体51の周辺領域513と開口形成領域724の透過光が到達する膜体51の領域515とは、その厚さ方向の全部にわたって光分解することとなる。一方、図7に示されるように、第2領域72のうち各ドット領域721と開口形成領域724とを除いた領域には半透過部86が設けられている。したがって、光源から膜体51の被加工領域511に向かう光のうち下地層21において窪み214となるべき領域に向かう光は、その一部のみが膜体51の表面に到達する。したがって、図6に示したように、膜体51のうち下地層21の窪み214となるべき領域については厚さ方向における一部分のみが光分解する。
さらに、図7に示されるように、第2領域72の各ドット領域721は遮光部84によって覆われている。したがって、被加工領域511のうち各ドット領域721によって光の照射が妨げられた領域は、現像によって除去されることなく下地層21の突起213となる。図11は、ひとつのドット領域721を拡大して示す平面図である。同図に示されるように、本実施形態における各ドット領域721の形状は略多角形(ここでは六角形)であり、したがって各遮光部84の平面形状も略多角形となっている。ここで、図11に示される各ドット領域721の外接円Cの直径dが余りに小さいと、露光工程において実際に露光される領域を正確に制御することが困難となる場合がある。その一方、各ドット領域721の外接円Cの直径dが余りに大きいと、下地層21の突起213の頂上部が平坦な面となり、その表面上に形成された反射層22による光散乱効果が低下する。そこで、各ドット領域721の外接円Cの直径dは8.0μm以上11.0μm以下とされることが望ましく、9.0μm以上10.0μm以下とされることが更に望ましい。
ここで、露光用マスク7aの板面全体の面積(すなわち第1領域71と第2領域72とを合わせた面積)に占める複数のドット領域721の合計面積の割合は、以下のようにして選定されることが望ましい。すなわち、本実施形態におけるドット領域721は膜体51のうち下地層21において突起213となる領域に対応しているから、露光用マスク7aの板面全体に占めるドット領域721の割合が余りに小さい場合には、下地層21の表面に占める突起213の面積が小さくなって平坦部が増加し、反射層22による光散乱効果が低減されることとなる。一方、露光用マスク7aの板面全体に占めるドット領域721の割合が余りに大きい場合には、下地層21の表面に占める突起213の面積が大きくなる結果として平坦部が増加し、この場合にも反射層22による光散乱効果は低減される。したがって、反射層22による良好な光散乱効果を得るためには、露光用マスク7aの全体面積に占めるドット領域721の合計面積の割合を30%以上60%以下とすることが望ましい。
一方、図11に示されるように、各ドット領域721の周囲には、当該ドット領域721の全周縁(遮光部84の全周縁)と接するように周辺透光部88が設けられている。この周辺透光部88は、透光部81と同様に遮光部84および半透過部86の何れも設けられていない部分(すなわち基材70が露出した部分)であり、したがって、光源からの出射光は透光部81と略同一の光透過率(約100%)にて周辺透光部88を透過して膜体51に到達する。図12は、各ドット領域721の近傍における透過光の進行の様子を示す図である。同図に示されるように、ひとつのドット領域721の周囲に設けられた周辺透光部88を透過した光は、このドット領域721を覆う遮光部84の周縁において回折した後に膜体51の表面に至る。ここで、周辺透光部88を透過して膜体51の表面に至る各回折光Liの光路長は等しいから、これらの回折光Liの膜体51表面における位相差はゼロとなり、各回折光Liは膜体51表面において相互に強め合うこととなる。これにより、膜体51のうち突起213の頂上部に相当する領域518は部分的に光分解し、その後に現像されることによって図3および図4に示されるような突起213の頂上部の窪み213aとなるのである。
以上に説明したように、本実施形態に係る露光用マスク7aは、被加工領域511のうち下地層21において窪み214となるべき領域と重なるように半透過部86を有するため、この領域においては厚さ方向の一部のみが光分解する。したがって、下地層21の窪み214の底部において第2基板20の表面が露出することはないから、この下地層21の表面に設けられた反射層22によれば良好な光散乱効果が奏される。しかも、この露光用マスク7aによれば、被加工領域511の周辺を除去するための露光と、下地層21の窪み214に相当する領域の部分的な露光とを共通の工程にて実施することができるから、従来の技術と比較して製造工程の簡素化および製造コストの低減を図ることができる。
<B:第2実施形態>
上記第1実施形態においては、露光用マスク7aのドット領域721と対応するように下地層21の突起213が形成される構成を例示した。これに対し、本実施形態においては、露光用マスク7bのドット領域721と対応するように下地層21の窪み214が形成される。なお、本実施形態に係る露光用マスク7bは、上記第1実施形態と同様にポジ型の膜体51を露光するために用いられるものである。また、本実施形態のうち上記第1実施形態と共通する事項については適宜に説明を省略する。
図13は、本実施形態に係る露光用マスク7bの構成を示す平面図である。同図に示されるように、この露光用マスク7bは、第1領域71と開口形成領域724とが透光部81である点は上記実施形態に係る露光用マスク7aと共通するが、遮光部84と半透過部86との位置関係が露光用マスク7aとは逆転している。すなわち、露光用マスク7bの第2領域72のうち複数のドット領域721に対応する領域に半透過部86が設けられる一方、ドット領域721以外の領域に遮光部84が設けられている。露光用マスク7bのうちドット領域721の周縁(半透過部86の周縁)には、上記第1実施形態と同様に周辺透光部88が設けられている。
本実施形態に係る液晶表示装置100の製造方法は、図5(b)に示される露光工程において露光用マスク7bが用いられる点を除いて、上記実施形態に示した製造方法と共通する。図5(b)に示される露光工程においては、上記第1実施形態と同様に、膜体51の周辺領域513および領域515が露光用マスク7bの第1領域71を透過した光によって厚さ方向の全部にわたって光分解する。また、膜体51の被加工領域511のうち下地層21の窪み214となる領域には露光用マスク7bのドット領域721に設けられた半透過部86を透過した光が照射され、その厚さ方向の一部にわたって光分解する。一方、被加工領域511のうちドット領域721以外の領域と重なる領域に向かう光は遮光部84によって遮られるから、この領域は現像によって除去されない。したがって、露光用マスク7bを用いた露光工程を経て得られる下地層21の表面は、多数の窪み214がランダムな位置に分散して形成された粗面となる。この実施形態によっても上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
<C:第3実施形態>
上記第1および第2実施形態においては、ポジ型の感光性材料からなる膜体51を加工することによって下地層21を形成する場合を例示した。これに対し、本実施形態においては、膜体51がネガ型の感光性材料によって形成される。なお、本実施形態のうち上記第1実施形態と共通する事項については適宜に説明を省略する。
図14は、本実施形態に係る露光用マスク7cの構成を示す平面図である。本実施形態においてはネガ型の感光性材料からなる膜体51を露光するため、露光用マスク7cは、同図に示されるように遮光部84と透光部81との位置関係が上記第1実施形態に示した露光用マスク7a(図7参照)とは逆転している。すなわち、露光用マスク7cのうち第1領域71と開口形成領域724とには遮光部84が形成される一方、第2領域72に含まれる各ドット領域721は透光部81となっている。第2領域72のうち各ドット領域721以外の領域に半透過部86が形成されている点は第1実施形態に係る露光用マスク7aと同様である。
本実施形態に係る液晶表示装置100の製造方法は、図5(a)に示される工程において膜体51がネガ型の感光性材料により形成される点と、図5(b)に示される工程において露光用マスク7cが用いられる点とを除いて、上記第1実施形態に示した製造方法と共通する。図5(b)に示される露光工程においては、膜体51の周辺領域513および領域515に向かう光が遮光部84によって遮られるため、これらの領域は現像により除去される。これに対し、膜体51のうち露光用マスク7cの各ドット領域721を透過した光が照射される部分はその厚さ方向の全部にわたって感光し、現像剤に対して不溶化する。したがって、膜体51の被加工領域511のうち各ドット領域721と重なる領域は下地層21表面の突起213となる。一方、露光用マスク7cのうち第2領域72の各ドット領域721以外の領域において半透過部86を透過した光は、膜体51に到達してその厚さ方向の一部のみを感光させる。したがって、この部分は現像により厚さ方向の一部のみが除去されて下地層21の窪み214となる。この実施形態によっても上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
<D:第4実施形態>
上記第3実施形態においては、露光用マスク7cのドット領域721と対応するように下地層21の突起213が形成される構成を例示した。これに対し、本実施形態においては、露光用マスク7dのドット領域721と対応するように下地層21の窪み214が形成される。本実施形態に係る下地層21は、上記第3実施形態と同様にネガ型の感光性材料によって形成される。すなわち、本実施形態は、膜体51を構成する感光性材料の種類と、これに起因した露光用マスク7dの構成とを除いて上記第2実施形態と共通する。
図15は、本実施形態に係る露光用マスク7dの構成を示す平面図である。同図に示されるように、この露光用マスク7dは、遮光部84と透光部81との位置関係が上記第2実施形態に示した露光用マスク7bとは逆転している。すなわち、露光用マスク7dのうち第1領域71と開口形成領域724とには遮光部84が形成される一方、第2領域72のうち各ドット領域721以外の領域は透光部81となっている。第2領域72のうち各ドット領域721に半透過部86が形成されている点は第2実施形態に係る露光用マスク7bと同様である。
本実施形態に係る液晶表示装置100の製造方法は、図5(a)に示される工程において膜体51がネガ型の感光性材料によって形成される点と、図5(b)に示される工程において露光用マスク7dが用いられる点を除いて、上記第1実施形態に示した製造方法と共通する。図5(b)に示される露光工程においては、膜体51の周辺領域513および領域515に向かう光が遮光部84によって遮られるため、この領域は現像により除去される。これに対し、膜体51のうち露光用マスク7dの各ドット領域721以外の領域を透過した光が照射される部分はその厚さ方向の全部にわたって感光し、現像剤に対して不溶化する。また、露光用マスク7dのうち第2領域72の各ドット領域721において半透過部86を透過した光は、膜体51に到達してその厚さ方向の一部のみを感光させる。したがって、この部分は現像により厚さ方向の一部のみが除去されて下地層21の窪み214となる。この実施形態によっても上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
<E:変形例>
以上に説明した実施形態はあくまでも例示である。この形態に対しては本発明の趣旨から逸脱しない範囲で種々の変形が加えられ得る。具体的には、以下のような変形例が考えられる。
(1)上記各実施形態においては各画素に対応するように下地層21に開口部211が設けられた構成を例示したが、図16に示されるように、下地層21に開口部211が設けられない構成も採用され得る。ただし、図16に示される構成においては、透過型表示に際して第2基板20側から第1基板10側に向かう光の一部が下地層21によって吸収されることとなる。したがって、透過型表示に供される光量の損失を抑えるという観点からすると、上記各実施形態のように下地層21に開口部211を設けた構成が望ましい。また、上記各実施形態においては反射型表示および透過型表示の双方が可能ないわゆる半透過反射型の液晶表示装置100を例示したが、反射型表示のみが可能な液晶表示装置100にも本発明は適用され得る。この場合には、反射層22の開口部211と反射層22の透光部221とが設けられない。したがって、露光用マスク7(7a、7b、7cおよび7d)には開口形成領域724が設けられない。
(2)上記各実施形態においては遮光部84を単一層により構成したが、クロムなどの遮光性を有する層とハーフトーンを採用した半透過部86とを積層したものを遮光部84として用いてもよい。この構成によれば、遮光部84による遮光性を高めることができる。
(3)上記各実施形態においては露光用マスク7(7a、7b、7cおよび7d)のドット領域721を多角形としたが、各ドット領域721の平面形状は任意であり、例えば正多角形以外の多角形や円形としてもよい。なお、ドット領域721の平面形状を多角形とした場合にはその頂角の各々が鈍角であることが望ましい。ドット領域721の頂角を鋭角とした場合にはその近傍において光の回折が生じ、所期の露光が妨げられる可能性があるからである。
(4)上記第1および第2実施形態においては各ドット領域721の全周縁と接するように周辺透光部88を設けた構成を例示したが、図17に示されるように、周辺透光部88が各ドット領域721(ここでは遮光部84)の周縁と部分的に接するように設けられた構成も採用され得る。同図においては、略六角形状であるドット領域721の各辺のうち相互に隣接しない3辺のみに沿って周辺透光部88が設けられた構成が例示されている。図11に示した構成のもとでは、ドット領域721の全周縁にわたる周辺透光部88を透過して膜体51の領域518に到達する光量が多いため、突起213の頂上部の窪み213aが深くなり過ぎる可能性がある。これに対し、本変形例に係る構成によれば、周辺透光部88を透過して膜体51の領域518に至る回折光の光量を図12の場合よりも減らすことができるから、窪み213aが深くなり過ぎるのを抑えることができる。このように、周辺透光部88の形態は、窪み213aの深さが最適となるように選定されることが望ましい。
(5)上記各実施形態においては液晶表示装置を例示したが、本発明はこれ以外の電気光学装置にも適用され得る。すなわち、画像信号の供給という電気的な作用を輝度や光透過率の変化といった光学的な作用に変換する電気光学物質を用いて画像を表示する装置であれば本発明が適用され得る。例えば、着色された液体と当該液体に分散された白色の粒子とを含むマイクロカプセルを電気光学物質として用いた電気泳動表示装置、極性が相違する領域ごとに異なる色に塗り分けられたツイストボールを電気光学物質として用いたツイストボールディスプレイ、あるいは、黒色トナーを電気光学物質として用いたトナーディスプレイなど各種の電気光学装置に本発明が適用され得る。なお、本発明に係る電気光学装置用基板は、以上に例示したようにそれ自体が発光しない電気光学物質を利用して画像を表示する電気光学物質に対して特に好適であると言える。ただし、それ自体が発光する電気光学物質(すなわち自発光型の電気光学物質)を用いた電気光学装置にも本発明は適用され得る。例えば、自発光型の電気光学物質の背面側に本発明に係る電気光学装置用基板を設ければ、電気光学物質から背面側に発せられた光を観察側に反射させることによって明るい表示が実現される。この自発光型の電気光学物質を用いた電気光学装置としては、有機ELや発光ポリマーなどのOLED(Organic Light Emitting Diode)素子を電気光学物質として用いた表示装置や、ヘリウムやネオンなどの高圧ガスを電気光学物質として用いたプラズマディスプレイパネル(PDP)、蛍光体を電気光学物質として用いたフィールドエミッションディスプレイ(FED)などが挙げられる。
<F:電子機器>
次に、本発明に係る電気光学装置を表示装置として備えた電子機器について説明する。図18は、上記各実施形態に係る液晶表示装置100を用いた携帯電話機の構成を示す斜視図である。この図に示されるように、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202のほか、受話口1204、送話口1206とともに、上述した液晶表示装置100を備える。
図19は、上記各実施形態に係る液晶表示装置100をファインダに適用したデジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。デジタルスチルカメラ1300における本体1302の背面には、上記各実施形態に係る液晶表示装置100が設けられている。この液晶表示装置100は、撮像信号に基づいて表示を行なうので、被写体を表示するファインダとして機能することになる。また、本体1302の前面側(図19においては裏面側)には、光学レンズやCCDなどを含んだ受光ユニット1304が設けられている。撮影者が液晶表示装置100に表示された被写体像を確認して、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が回路基板1308のメモリに転送・記憶される。また、このデジタルスチルカメラ1300にあって、ケース1302の側面には、外部表示を行なうためのビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。
なお、本発明に係る電気光学装置が表示装置として利用され得る電子機器としては、図18に示される携帯電話機や、図19に示されるデジタルスチルカメラのほかにも、ノートパソコンや、液晶テレビ、ビューファインダ型(またはモニタ直視型)のビデオレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。
本発明の第1実施形態に係る液晶表示装置の構成を示す断面図である。 液晶表示装置の要部の構成を拡大して示す斜視図である。 液晶表示装置のうち下地層の表面形状を示す斜視図である。 下地層における突起を拡大して示す断面図である。 液晶表示装置のうち第2基板上の各要素の製造工程を示す断面図である。 膜体のうち露光工程において光分解する部分を示す断面図である。 露光用マスクの構成を示す平面図である。 露光用マスクの構成を示す断面図である。 グレートーンを採用した半透過部の具体的な構成を示す平面図である。 グレートーンを採用した半透過部の具体的な構成を示す平面図である。 露光用マスクのドット領域を拡大して示す平面図である。 光源から発せられてドット領域の近傍に至った光の経路を示す断面図である。 本発明の第2実施形態に係る露光用マスクの構成を示す平面図である。 本発明の第3実施形態に係る露光用マスクの構成を示す平面図である。 本発明の第4実施形態に係る露光用マスクの構成を示す平面図である。 変形例に係る液晶表示装置の構成を示す断面図である。 変形例に係る露光用マスクのドット領域を拡大して示す平面図である。 本発明に係る電子機器の一例たる携帯電話機の構成を示す斜視図である。 本発明に係る電子機器の一例たるデジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
符号の説明
100……液晶表示装置、10……第1基板、11……画素電極、12……走査線、13……TFD素子、14……配向膜、20……第2基板、21……下地層、211……開口部、213……突起、213a……突起の頂上部の窪み、214……窪み、22……反射層、221……透光部、24……カラーフィルタ、25……遮光層、26……絶縁層、27……データ線、34……シール材、35……液晶、38……ICチップ、51……膜体、511……被加工領域、513……周辺領域、515……膜体のうち下地層の開口部となる領域、517……膜体のうち下地層の窪みとなる領域、7a,7b,7c,7d……露光用マスク、71……第1領域、72……第2領域、721……ドット領域、81……透光部、84……遮光部、86……半透過部、861,865……微小遮光部、862,866……微小透光部、88……周辺透光部。

Claims (2)

  1. 表面が粗面である下地層と当該下地層の粗面上に設けられた反射層とを具備する電気光学装置用基板を製造する方法において、
    ポジ型の感光性材料により膜体を形成する膜体形成工程と、
    露光用マスクを介して前記膜体を露光する工程であって、前記粗面の突起となるべき領域および窪みとなるべき領域の一方に向かう光源からの光を前記露光用マスクの遮光部によって遮るとともに、これらの領域の他方に向かう前記光源からの光を前記露光用マスクの半透過部を透過させることによって前記膜体の厚さ方向の一部のみに当該光を作用させる露光工程と、
    前記露光工程を経た膜体を現像して前記下地層を形成する現像工程と、
    前記現像工程により得られた下地層の粗面上に光反射性を有する前記反射層を形成する反射層形成工程と
    を有し、
    前記露光工程においては、前記粗面の突起となるべき領域に向かう光を前記遮光部によって遮るとともに、当該粗面の窪みとなるべき領域に向かう光を前記半透過部によって透過させる一方、前記露光用マスクにおける遮光部の周辺に設けられた周辺透光部を透過した光を当該遮光部の周縁にて回折させ、この回折光を前記突起の頂上部となるべき部分に作用させる
    電気光学装置用基板の製造方法。
  2. 表面が粗面である下地層と当該下地層の粗面上に設けられた反射層とを具備する電気光学装置用基板を備えた電気光学装置を製造する方法において、
    請求項1に記載の方法によって電気光学装置用基板を製造する工程と、
    前記電気光学装置用基板の前記反射層と対向するように電気光学物質を配置する工程と
    を有する電気光学装置の製造方法。
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