JP4013469B2 - 液晶マイクロカプセル及び製造方法、並びにそれを用いた液晶表示素子 - Google Patents

液晶マイクロカプセル及び製造方法、並びにそれを用いた液晶表示素子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶を内包する液晶マイクロカプセル及びその製造方法、並びに該液晶マイクロカプセルを用いた液晶表示素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、紙パルプの原料である森林資源の破壊や、ごみの廃却、焼却による環境汚染などから、オフィスを中心とする大量の紙の消費が問題になっている。しかしながら、パーソナルコンピュータの普及、インターネットを始めとする情報化社会の発達により、電子情報の一時的な閲覧を目的とする、いわゆる短寿命文書としての紙の消費は益々増加する傾向にあり、紙に代わる書き換え可能な表示媒体の実現が望まれている。
【0003】
このような要望に対し、液晶を高分子物質よりなる外殻で覆ってマイクロカプセル化し、これをフレキシブルな基板と組合せて薄型表示媒体を形成する試みが行われている。このフレキシブルな基板を従来の液晶ディスプレイの構造にそのまま適用した場合、低分子の液晶は流動性を有するために圧力等を受けると画像の劣化が発生してしまう。
したがって、液晶をマイクロカプセル化して流動を抑える手法は、紙に代わる表示媒体の実現において有効な手段となる。
【0004】
マイクロカプセル化の手法としては、界面重合法、in-situ重合法、コアセルベート法等が知られている。前記界面重合法では、互いに混ざり合わない二つの相にそれぞれ異なるモノマーを溶解させ、両相の界面においてモノマーを反応させて高分子物質(高分子シェル)を形成させる。該高分子物質としては、例えば、多価イソシアネートと多価アミン若しくは多価ヒドロキシ化合物とからなる高分子物質、あるいは水と反応させたポリウレタン、ポリウレア膜等が一般に知られている。
【0005】
前記in-situ重合法では、互いに混ざり合わない二つの相のいずれか一方にモノマーを溶解させ、触媒を用いてモノマーを反応させて高分子シェルを形成させる。この場合の高分子シェルとしては、例えば、尿素−ホルマリン樹脂やメラミン−ホルマリン樹脂の縮重合を用いたもの、スチレンやアクリル樹脂のラジカル重合を用いたもの等が一般に知られている。また、前記コアセルベート法は高分子溶液の相分離現象を利用したものであり、例えば、ゼラチン−アラビアゴムの静電気的相互作用を利用したもの等が一般に知られている。
【0006】
これらのマイクロカプセル化の手法により液晶をマイクロカプセル化する場合、油溶性である液晶を油滴(油相)として水溶液(水相)中に乳化し、上記反応のいずれかを起こさせることによって液晶の周りに高分子のシェル(外殻)、即ちマイクロカプセルが形成される。ここで、油溶性モノマーを用いてマイクロカプセル化する場合、乳化状態において液晶と油溶性モノマーとが均一に溶解されている必要があり、均一に溶解されていないと、互いに相分離して高分子シェルに包まれない液晶が存在してしまう。特に、乳化温度下で液晶との溶解度が低い油溶性モノマーを用いる場合には、これらを溶解しやすい溶剤を添加することによって、均一相の状態を維持することができる。
【0007】
ところが、マイクロカプセル化した後のカプセル内に前記溶剤が多く残留すると液晶の配向性等に影響がでるため、カプセル化後に添加した溶剤を除去する必要がある。カプセル化後に溶剤を除去した場合、カプセル内部の体積変化に対してシェルの表面積が変化しないため、シェル(外殻)に凹凸が発生する。液晶マイクロカプセルでは、液晶を内包する外殻に凹凸があると、液晶配向を乱して光散乱性(白濁性)を増加させる。
したがって、コレステリック液晶の選択反射やゲストホストなど、光散乱性が表示品質を劣化させるモードの場合には、外殻の凹凸をできるだけ小さく、かつ少なくする必要があり、従って、カプセルに内包する油滴(油相)に添加する溶剤量は極力少ないことが好ましい。
【0008】
また、例えば特公平8−2416号公報に記載の、分散相を多孔質膜を通して連続相中に圧入する膜乳化法により液晶マイクロカプセルを形成する場合、油相の粘度が低すぎると安定した乳化を行うことができず、エマルジョンの粒径バラツキが大きくなってしまう。したがって、この点からも油相に添加する溶剤の量は極力少ないことが好ましい。
【0009】
以上より、油溶性モノマーを用いて液晶マイクロカプセルを形成する場合、外殻であるカプセルの凹凸を小さく、かつカプセル径を均一にするためには、液晶と油溶性モノマーを溶解させるために油相に添加する溶剤量を少なくする必要がある。
【0010】
また、添加する溶剤としては、油滴(油相)内の油溶性モノマーを水相との界面に移動させ易く残留モノマーを少なくできることから、水への分配係数の高い溶剤が適している。しかしながら、水への分配係数の高い溶剤を添加すると、乳化中に溶剤が水相へ溶け出し易く、特に溶剤の添加量が少ない場合には、液晶と油溶性モノマーとが相分離してしまい、高分子物質で包まれずにカプセル外に液晶が漏れ出てしまうという問題もあった。漏れ出た液晶が存在すると、その流動性により表示画像が圧力等の影響を受けて表示品質を低下させる要因となる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、液晶が重合性モノマーの油水間の界面重合により形成された高分子カプセルによって内包され、該カプセルが凹凸のない略球形を有し、その粒径分布が狭く均一で、しかも液晶漏れのない液晶マイクロカプセルは、未だ提供されていないのが現状である。
【0012】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、
本発明は、油溶性モノマーを用いた液晶マイクロカプセルの製造において、油滴(油相)に添加する溶剤量を低減することができ、かつ凹凸がなくカプセル径の均一な液晶内包マイクロカプセルが得られ、しかも高分子物質(カプセル)に内包されず漏れ出た液晶の存在のない液晶マイクロカプセルの製造方法を提供することを目的とする。また、
本発明は、カプセル径が均一で、液晶配向を乱す凹凸のない液晶マイクロカプセルを提供することを目的とする。更に、
本発明は、フレキシブルな基板を用いた構成が可能で、流動性が抑えられ画像品質に優れた液晶表示が可能な液晶表示素子を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、液晶を内包する液晶マイクロカプセルの製造方法に関する鋭意検討の結果、油相中の液晶と油溶性モノマーとの相溶性を維持するには両者と溶解性の溶剤の使用が不可欠であるが、凹凸がなく均一径のカプセル形成には、油相中の溶剤量が少ないこと、しかも乳化時に油相中の溶剤量が低下しないこと、即ち油相/水相間において溶剤の分配平衡が成立していることが必要であるという知見を得た。
【0014】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも液晶と油溶性モノマーと溶剤とを含む油滴を、前記溶剤を少なくとも含む水溶液中に乳化し、前記油溶性モノマーを重合させて液晶をカプセル化することを特徴とする液晶マイクロカプセルの製造方法である。
【0015】
<2> 油滴を水溶液中に乳化する乳化方法が、膜乳化法である前記<1>に記載の液晶マイクロカプセルの製造方法である。
<3> 油滴と水溶液との間で溶剤が分配平衡若しくは略分配平衡の状態にある前記<1>又は<2>に記載の液晶マイクロカプセルの製造方法である。
<4> 油溶性モノマーが多価イソシアネート化合物である前記<1>〜<3>のいずれかに記載の液晶マイクロカプセルの製造方法である。
【0016】
<5> 前記<1>〜<4>のいずれかに記載の液晶マイクロカプセルの製造方法により得られることを特徴とする液晶マイクロカプセルである。
<6> 前記<5>に記載の液晶マイクロカプセルが、互いに対向し合う側の表面に電極を備える一対の基板間に狭持されてなることを特徴とする液晶表示素子である。
<7> 基板がフレキシブルなプラスチック基板である前記<6>に記載の液晶表示素子である。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の液晶マイクロカプセルの製造方法においては、油滴(油相;以下、「油相」ということがある。)を乳化する水溶液(以下、「水相」ということがある。)中に、油相の調製に用いた溶剤と同じ溶剤を含有させる。
本発明の液晶マイクロカプセルは、上記本発明の液晶マイクロカプセルの製造方法により製造され、本発明の液晶表示素子においては、液晶を内包する上記本発明の液晶マイクロカプセルを備えてなる。
以下、本発明の液晶マイクロカプセル及びその製造方法について詳細に説明すると共に、本発明の液晶表示素子についても詳述する。
【0018】
<液晶マイクロカプセル及び製造方法>
本発明の液晶マイクロカプセルは、マイクロカプセル化できる従来公知の方法を用いて、油相として、液晶及び油溶性モノマーに水への分配係数が高い溶剤を加えて均一に溶解混合して得た油滴を、水に前記溶剤と同じ溶剤が少なくとも含有されてなる水溶液(水相)中に乳化し、水相との界面に移動した油滴中の前記油溶性モノマーを該界面で重合させ、液晶を包むように高分子物質(外殻)を形成することにより得ることができる。即ち、液晶を主成分とする芯物質と、高分子物質とを主成分とし、前記芯材の表面を被覆する外殻(以下、「カプセル」ということがある。)を有してなる。
【0019】
本発明の液晶マイクロカプセルの製造方法においては、油滴(油相)を乳化する水溶液(水相)中に、油滴中に含まれる溶剤と同じ溶剤を含有する。溶剤として、水に対する分配係数の大きい両親媒性の溶剤が好適である。即ち、水相中に溶剤を存在させることにより、油相/水相間における溶剤等の濃度変化がなくバランスのとれた状態で乳化することができる。また、重合によるカプセル化反応時には、油溶性モノマーを油相/水相界面に引き寄せることができる。
【0020】
水相中に含有する溶剤量としては、油相中の溶剤が溶出して液晶と油溶性モノマーとが分離しない範囲であればよく、油相と水相が乳化時に熱力学的に安定した状態となる範囲が好ましい。即ち、油相/水相間で溶剤の分配平衡の状態にあると、油相中の溶剤量を必要最低量まで低減でき、水相からの溶剤の流入をも抑制できる。油相においては、液晶及び油溶性モノマーを均一に溶解しうる最低量が決まるが、該量を基準に適宜分配平衡が成立し得る量とするのが好ましい。
【0021】
油相中に含有する溶剤量としては、液晶と油溶性モノマーとが均一に溶解でき、外殻に凹凸を生じない範囲であればよく、油相を均一相に溶解し得る量から該量の200質量%の範囲が好ましく、できる限り少ない量が特に好ましい。
例えば、液晶としてネマチック液晶(E7,メルク社製)を、油溶性モノマーとしてキシレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの3:1付加物を用いた場合、油相中の溶剤量としては、10〜20質量%が好ましい。
【0022】
本発明においては、以上のように、水相に油相と同じ溶剤を含有し、好ましくは油相/水相間において溶剤が分配平衡若しくは略分配平衡の状態をとるように構成されるので、油相中の溶剤が水相中に溶出することを防ぐことができ、膜乳化法のように長時間水相と油相が接触する乳化プロセスを経た場合でも、油相中の液晶と油溶性モノマーとの分離が抑えられ、カプセル化されない液晶が漏れ出すこともない。また、液晶との溶解度が低く、乳化温度下で均一に混合することができない油溶性モノマーを用いた場合でも、少ない溶剤量で液晶と油溶性モノマーとを均一相の状態に溶解でき、同様にカプセル外への液晶漏れを回避できる。
したがって、油相中に含有する溶剤量を極力少なくすることができる。
【0023】
また、油相中の溶剤量の低減が可能なため、溶剤がカプセル内に残留することによる液晶表示品質の劣化や、カプセル化後の溶剤抜けによる外殻(カプセル)の凹凸形成を小さく、また少なくすることができる。
更に、加熱重合を行う場合には、溶剤の水に対する溶解度が上がるため、油相中の溶剤が水相中に溶出してしまうが、加熱に伴って液晶と油溶性モノマーとの溶解度も上がるため、油相に含まれる溶剤の量が次第に減少しても、液晶と油溶性モノマーとが均一相として混合した状態で重合反応を進めることができる。
【0024】
前記溶剤としては、油相に対しては、液晶と油溶性モノマーとを均一相に混合可能であって、且つ水相の水に対する分配係数が高いものが好ましく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。基本的には、油相/水相間で分配平衡となる量的関係は、各溶剤により異なるが、油相/水相間において溶剤の分配平衡が成立する範囲であれば二種以上を併用することもでき、同じ複数種よりなる混合溶剤であってもよい。
【0025】
マイクロカプセル化できる従来公知の方法としては、油相を水相に乳化する公知手段の中から適宜選択でき、乳化手段として、例えば、油相と水相を混合した後、ホモジナイザ−等の機械的なせん断力で油相を微小な液滴として分散させる機械乳化法、油相を水相中に多孔質膜を通して押出し、微小な液滴として分散させる膜乳化法等が挙げられ、カプセル形成手段として、例えば、界面重合法、in-situ重合法、コアセルベート法等が挙げられる。
【0026】
前記油溶性モノマーとしては、乳化時に重合反応して高分子物質(シェル)を形成し得るものの中から適宜選択することができ、該油溶性モノマーが重合して形成された高分子物質としては、例えば、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂、及びこれらの共重合体等が挙げられる。前記高分子物質は、2種以上併用されてなるものでもよい。
中でも、ポリウレタン、ポリウレアが特に好ましい。
【0027】
例えば界面重合法による場合、油性液滴(油相)中に存在する第一の外殻形成用単量体と、該油相外の水相に存在する第二の外殻形成用単量体と、を油相/水相の界面において反応させることにより高分子物質よりなる外殻(カプセル)を形成することができる。例えば、水溶性モノマー(第二の外殻形成用単量体)を添加した水相に油相を加えて乳化し、エマルジョンの界面において前記水溶性モノマーと油相に含まれる油溶性モノマー(第一の外殻形成用単量体)とを重合反応(カプセル化反応)させることにより、液晶を含む油滴の表面に高分子の外殻を形成することができる。
前記油相は、例えば、液晶と第一の外殻形成用単量体及び/又は第二の外殻形成用単量体とを前記溶剤に溶解することにより調製することができる。前記水相は、例えば、前記第二の外殻形成用単量体と分配平衡量に相当する前記溶剤とを水に溶解することにより調製することができる。
【0028】
ここで、外殻をポリウレタン・ウレア樹脂とする場合、油溶性モノマー(第一の外殻形成用単量体)として多価イソシアネート化合物を、水溶性モノマー(第二の外殻形成用単量体)としてイソシアネート基と反応するポリオール化合物又はポリアミン化合物を用いて好適に形成することができる。また、水とイソシアネート基を反応させることもできる。
本発明においては、前記油溶性モノマーとしては、多価イソシアネート化合物が好ましい。
【0029】
前記多価イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、2,4−トリレン−ジイソシアネート、トルイレンイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、キシレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、3,3’−ジメチル−ジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチル−ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−トリイソシアネート、ナフタレン−1,5’−ジイソシアネート、ポリメチレンフェニルイソシアネート等が挙げられる。前記イソシアネート化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
前記ポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、1,6−ヘキサンジオ−ル、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、プロピレングリコール、2,3−ジヒドロキシブタン、1,2−ジヒドロキシブタン、1,3−ジヒドロキシブタン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジヒドロキシシクロヘキサン、ジエチレングリコール、1,2,6−トリヒドロキシヘキサン、
【0031】
2−フェニルプロピレングリコール、1,1,1−トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド付加物、グリセリン、1,4−ジ(2−ヒドロエトキシ)ベンゼン、レゾルシノールジヒドロキシエチルエーテル等の芳香族多価アルコールとアルキレンオキサイドとの縮合生成物、p−キシリレングリコール、p−キシレンジオール、p−キシレングリコール、m−キシレングリコール、α,α’−ジヒドロキシ−p−ジイソプロピルベンゼン、4,4−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、2−(p,p’−ジヒドロキシジフェニルメチル)ベンジルアルコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
前記ポリオール化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
前記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,2−ジメチルピペラジン、2−ヒドロキシトリメチルジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチルアミノプロピルアミン、テトラエチレンペンタミン等が挙げられる。
前記ポリアミン化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
本発明の液晶マイクロカプセルにおいて、芯物質となる液晶材料としては、低分子液晶、例えば、ネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶(カイラルネマチック液晶を含む)、あるいはこれらの液晶材料に二色性色素を添加したゲストホスト液晶等が挙げられる。
【0034】
前記コレステリック液晶を芯物質としてカプセル化する場合、コレステリック液晶としては、例えば、ステロイド系コレステロール誘導体;不斉炭素を有するシッフ塩基系、アゾ系、エステル系、ビフェニル系等のカイラル物質;これらのカイラル物質を、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、エタン系、ビフェニル系、ターフェニル系、シクロヘキシルカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、安息香酸エステル系、ピリミジン系、ジオキサン系、トラン系、シクロヘキシルシクロヘキサンエステル系、アルケニル系等のネマチック液晶又はこれらの混合物に添加した液晶材料;等が挙げられる。
【0035】
水相には、油相を安定に乳化するための界面活性剤や保護コロイドを添加することが好ましい。
前記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等のノニオン性化合物;硫酸エステル塩、スルホン酸塩等のアニオン性化合物などが挙げられる。
前記保護コロイドとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、アラビアゴム、セルロース化合物等の水溶性高分子が挙げられる。
【0036】
前述した方法の中でも、乳化液滴の粒径バラツキが小さく、粒径の均一な液晶マイクロカプセルが形成できる点、また、しきい値の急峻性が向上して、コレステリック液晶を用いた選択反射モードや二色性色素を添加したゲストホストモードに適用する場合でも、凹凸形状に伴う散乱成分を減少できる点で、特に膜乳化法が好ましい。また、既述の通り、油相に添加する溶剤量を少なくできるので、油相の粘度低下が抑えられ、前記膜乳化法による場合でも、安定した乳化を行うことができる。
【0037】
この膜乳化法の詳細については、特公平8−2416号公報、特開平11−133386号公報等に記載がある。
簡単に概説すると、前記同様に調製した油相及び水相を準備し、微細孔を有する膜や多孔膜体を油相と水相との間に介在させ、油滴とする油相側を膜の細孔を通過させて水相中に分散させ、乳化状態を形成する。ここで、重合反応(カプセル化反応)を行わせることにより、液晶を内包する液晶マイクロカプセルを得ることができる。
【0038】
以上のように、油相に用いた溶剤と同じ溶剤を水相に含有する、好ましくはその含有量を分配平衡量とすることにより、油滴(油相)に添加する溶剤量を低減することができ、溶剤量を低減しても液晶がカプセル外に漏れ出ることもなく、液晶配向を乱す凹凸がなく、粒径分布が狭くバラツキの少ない均一なカプセル径を有する液晶マイクロカプセルを得ることができる。
【0039】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、既述の製造方法により得られた本発明の液晶マイクロカプセルを、互いに対向し合う側の表面に電極を備える一対の基板間に狭持してなる。
一対の基板間に液晶マイクロカプセルを狭持させる態様としては、特に制限はなく適宜選択することができ、例えば、液晶マイクロカプセルを含む層(膜)として設けてもよい。
【0040】
液晶マイクロカプセルを含む層(膜)の厚みとしては、光学特性に応じて適宜選択できるが、一般には1〜100μmであり、中でも5〜30μmが好ましい。
【0041】
前記基板は、有色若しくは無色の光透過性及び光不透過性の材料、例えば、ガラス、シリコン、又はポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート等の高分子フィルムなどの公知の材料の中から適宜選択でき、画像表示する表示面側となる少なくとも一方の基板は、光透過性の基板を用いて構成される。基板として、フレキシブル性を有する材料を採用すれば、紙の代替となり得る薄型表示媒体とすることができる。
前記基板の厚みとしては、一般には0.05〜5mmであり、0.1〜1mmが好ましい。
【0042】
前記電極は、一対の基板のそれぞれの全面に形成してもよいし、各基板上に形成する電極を互いに直交する方向となるようにストライプ状に形成してもよい。後者の場合、各基板上に2次元的に配置された電極の交点を1つの表示画素とする、単純マトリックス書き込み型の液晶表示素子とすることができる。
また更に、一対の基板の一方に、その全面に共通電極を形成し、他方に、TFT、MIM等の能動素子と、該能動素子と繋がる個別電極とが2次元的に配置されてなる、アクティブマトリックス書き込み型の液晶表示素子としてもよい。
【0043】
前記電極としては、例えば、ITO膜;Al、Zn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mo等の金属膜;SiO等の金属酸化膜などが挙げられ、少なくとも表示面側となる書き込み用電極は光透過性のもので構成される。中でも、ITO膜が特に好ましい。
【0044】
本発明の液晶表示素子は、液晶マイクロカプセルと、該液晶マイクロカプセルを狭持する、電極を備える一対の基板とから基本的に構成され、その具体的な構成態様としては、特に制限はなく、例えば、下記第一の態様、第二の態様のように構成されていてもよい。
【0045】
−第一の態様−
本発明の液晶表示素子の第一の態様について、図1を参照して説明する。図1は、液晶マイクロカプセルを備える本発明の液晶表示素子の一例を示す断面図である。
本態様の液晶表示素子は、書き込み用電極4が設けられた基板2と書き込み用電極5が設けられた基板3とが、書き込み用電極4及び5が互いに対向するように一定の間隙を有して配置され、両基板の電極間には、液晶マイクロカプセルを含む層として表示層8が狭持されてなる構造を有する。表示層8は、バインダ樹脂6と液晶マイクロカプセル7を含んで構成されている。
【0046】
液晶表示素子1を構成する書き込み用電極4及び5の所望の位置に電圧を印加することにより、電極間にある液晶の分子配向を制御して所望の液晶表示を行うことができる。即ち、電圧無印加時には、前記液晶マイクロカプセルにおける液晶が、前記外殻との界面において該界面に沿って配向し、光を強く散乱するため白く表示される。一方、電圧印加時には、電圧による電界方向と平行に前記液晶が配向するため、前記電界方向と垂直な面の界面における、液晶と外殻との屈折率差は非常に小さくなるので該界面において光はほとんど散乱せず、透明な状態となる。
本態様の液晶表示素子は、電圧の印加のみにより表示の切替えを容易に行うことができ、画像情報の記録と消去とを可逆的に行うことができる。しかも、液晶がカプセル化された液晶マイクロカプセルを用いるので、フレキシブルな基板の使用が可能で、圧力等の影響を受けて画像劣化を伴うこともない。
【0047】
前記バインダー樹脂6としては、光透過性を有する材料であれば特に制限はなく、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース化合物、ゼラチン、アラビアゴム等の水溶性高分子;ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル等の熱可塑性高分子等が好適に挙げられる。
【0048】
前記バインダー樹脂を液晶マイクロカプセルと併用するほか、液晶マイクロカプセル7の外殻(カプセル)同士を融着させることによっても、液晶マイクロカプセルのみからなる層(表示層8)を形成することができ、この場合には、バインダ樹脂6を使用しなくてもよい。
【0049】
前記表示層8には、バインダ樹脂6及び液晶マイクロカプセル7のほか、必要に応じて他の成分が含有されていてもよい。
また、基板2及び3の少なくとも一方の表面には、必要に応じて、耐摩耗層や、液晶表示素子1内へのガスの混入を防止するバリア層等の公知の機能性層が設けられてもよい。尚、非表示面側となる一方の基板の表面と表示層8との間には、液晶マイクロカプセル7の表示モード(光吸収型又は光反射型)に対応して、光散乱層又は光吸収層を設けることが好ましい。
【0050】
本態様に係る液晶表示素子1は、以下のようにして製造することができる。
即ち、一例として、既述の製造方法で製造された本発明の液晶マイクロカプセル及び必要に応じてバインダー樹脂等を含んでなる塗布液を、バーコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法等の公知の塗布方法を用いて一方の基板の電極(例えば基板3の電極5)上に塗布して表示層8を形成し、該表示層8の表面に他方の基板の電極(例えば基板2の電極4)を配置、貼り合せることにより作製することができる。
前記塗布液は、既述の本発明の液晶マイクロカプセルの製造方法で製造された液晶マイクロカプセルの分散液に、必要に応じてバインダー樹脂や消泡剤等を添加して調製する方法や、液晶マイクロカプセルを分散液から分離洗浄して粉末状態とし、これを、必要に応じてバインダー樹脂や消泡剤等を添加した溶媒に添加して調製する方法、等により作製できる。
【0051】
−第二の態様−
次に、本発明の液晶表示素子の第二の態様について、図2を参照して説明する。図2は、液晶マイクロカプセルを備える本発明の液晶表示素子の一例を示す断面図である。
書き込み用電極4が設けられた基板2と書き込み用電極5が設けられた基板3とが、電極4及び5が互いに対向するように一定の間隙を有して配置され、書き込み用電極5上の全面に更に光導電層9が形成されている。書き込み用電極4と光導電層9との間には、液晶マイクロカプセルを含む層として表示層8が狭持され、表示層8は、バインダ樹脂6と液晶マイクロカプセル7を含有して構成されている。
尚、本態様においては、光導電層9と表示層8との間には、液晶マイクロカプセル7の表示モードに対応して、前記同様に光散乱層又は光吸収層を設けることが好ましい。
【0052】
本態様の液晶表示素子では、液晶表示素子1を構成する書き込み用電極4及び5にバイアス電圧を印加しておき、光を所望のパターンに照射することにより、光照射領域の液晶の分子配向が変化して所望の液晶表示を行うことができる。即ち、白表示状態にある電圧無印加時に対して、バイアス電圧として液晶配向が変化しない低電圧を印加した状態で光照射すると、光導電層のインピーダンス低下による液晶層への印加電圧の増加によって前記液晶が配向するため、第一の態様の場合と同様、光照射領域では光はほとんど散乱せず透明な状態となる。
本態様の液晶表示素子は、電圧印加と光の照射により表示を切替えることができ、画像情報の記録と消去とを可逆的に行える。しかも、液晶がカプセル化された液晶マイクロカプセルを用いるので、フレキシブルな基板の使用が可能で、圧力等の影響を受けて画像劣化を伴うこともない。
【0053】
以上のように、液晶が高分子物質(外殻)に内包され、凹凸がなく均一径の液晶マイクロカプセルを有して構成されるので、液晶配向の乱れに伴う画像の劣化がなく、高画質の液晶表示が可能である。しかも、バインダーやカプセル間の結着により、液晶の流動性が抑えられているので、フレキシブルな基板が使用可能で、薄型化が図れ、外力等による表示品質の劣化を生ずることもない。
【0054】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「%」は「質量%」を示す。
【0055】
(実施例1)
油相として、ネマチック液晶(E7,メルク社製)2.5gに、キシレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの3:1付加物(タケネートD110N,武田薬品工業(株)製)0.5g及び酢酸エチル(溶剤)0.5gを混合し、攪拌して均一溶液を得た。
【0056】
続いて、水相として、イオン交換水100gに、重合度1000のポリビニルアルコール1g及び酢酸エチル(溶剤)8gを添加して70℃で攪拌し均一溶液を得た。
【0057】
2.8μm径のセラミック多孔質膜をセットした膜乳化装置(マイクロキット,SPGテクノ社製)を用いて、窒素圧力1.5kgf/cmの条件下で前記水相中に油相を乳化した。
得られた乳化液に10%のジエチレントリアミン水溶液0.5gを滴下し、室温下で20分間攪拌して重合反応を行い、液晶マイクロカプセル分散液を得た。ここで、得られた分散液を観察したところ、液晶が漏れ出して浮いている様子は認められなかった。
【0058】
上記液晶マイクロカプセル分散液を大量の水で希釈して攪拌した後、遠心分離機を用いて液晶マイクロカプセルを沈降させ、上澄みを除去して液晶マイクロカプセルの濃厚分散液とし、この操作を2回繰り返すことにより、ポリビニルアルコールと酢酸エチルとが除去された、本発明の液晶マイクロカプセルが分散された分散液(1)を得た。
【0059】
最終的に得た分散液(1)をガラス基板にドクターブレード(001,ガードナー社製)を用いて塗布・乾燥し、顕微鏡観察を行った。その結果、透過顕微鏡による3000倍の拡大観察では、図3(A)に示すように、分散液中の液晶マイクロカプセルの平均粒径は約8μmで、バラツキが小さく、しかも球形状で外殻の凹凸も少なかった。また、透過偏光顕微鏡による3000倍のクロスニコル下での拡大観察では、図3(B)に示すように、視野中に液晶が球形状をなして白く観察され、液晶が外殻中に完全に内包され、漏れ出していないことが確認された。
【0060】
(実施例2)
まず、ネマチック液晶(E7,メルク社製)77.5%と、カイラル剤1(CB15,メルク社製)18.8%と、カイラル剤2(R1011,メルク社製)3.7%とを混合して、グリーンの色光を選択反射するコレステリック液晶を調製した。
続いて、油相として、前記コレステリック液晶2.5gに、キシレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの3:1付加物(タケネートD110N,武田薬品工業(株)製)0.5g及び酢酸エチル(溶剤)0.5gを混合し、攪拌して均一溶液を得た。
【0061】
次に、水相として、イオン交換水100gに、重合度1000のポリビニルアルコール1g及び酢酸エチル(溶剤)8gを添加して70℃で攪拌し均一溶液を得た。
【0062】
2.8μm径のセラミック多孔質膜をセットした膜乳化装置(マイクロキット,SPGテクノ社製)を用いて、窒素圧力1.75kgf/cmの条件下で前記水相中に油相を乳化した。
得られた乳化液に、10%の1,4−ブタンジオール水溶液1gを滴下し、70℃下で90分間攪拌して重合反応を行い、液晶マイクロカプセル分散液を得た。ここで、得られた分散液を観察したところ、液晶が漏れ出して浮いている様子は認められなかった。
【0063】
上記液晶マイクロカプセル分散液を大量の水で希釈して攪拌した後、遠心分離機を用いて液晶マイクロカプセルを沈降させ、上澄みを除去して液晶マイクロカプセルの濃厚分散液とし、この操作を2回繰り返すことにより、ポリビニルアルコールと酢酸エチルが除去され、本発明の液晶マイクロカプセルが分散された分散液(2)を得た。
【0064】
上記より最終的に得られた分散液(2)を、実施例1と同様にして、透過顕微鏡(3000倍)及び透過偏光顕微鏡(3000倍;クロスニコル下)を用いて観察したところ、実施例1の場合と同様、カプセル径のバラツキが小さく(平均粒径:約8μm)、球形状で外殻の凹凸の少ない液晶マイクロカプセルが観察され、液晶が外殻中に完全に内包され、漏れ出していないことが確認された。
【0065】
(実施例3)
まず、ネマチック液晶(E7,メルク社製)87%と、カイラル剤(CB15,メルク社製)12.5%と、二色性色素(SI426,三井東圧(株)製)0.5%とを混合して、前記ゲストホスト液晶2.5gに、キシレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの3:1付加物(タケネートD110N,武田薬品工業(株)製)0.5g及び酢酸エチル(溶剤)0.5gを混合し、攪拌して均一溶液を得た。
【0066】
次に、水相として、イオン交換水100gに、重合度1000のポリビニルアルコール1g及び酢酸エチル(溶剤)8gを添加して70℃で攪拌し均一溶液を得た。
【0067】
2.8μm径のセラミック多孔質膜をセットした膜乳化装置(マイクロキット,SPGテクノ社製)を用いて、窒素圧力1.6kgf/cmの条件下で前記水相中に油相を乳化した。
得られた乳化液を70℃下で90分間攪拌して重合反応を行い、液晶マイクロカプセル分散液を得た。ここで、得られた分散液を観察したところ、液晶が漏れ出して浮いている様子は認められなかった。
【0068】
上記液晶マイクロカプセル分散液を大量の水で希釈して攪拌した後、遠心分離機を用いてマイクロカプセルを沈降させ、上澄みを除去して液晶マイクロカプセルの濃厚分散液とし、この操作を2回繰り返すことにより、ポリビニルアルコールと酢酸エチルが除去され、本発明の液晶マイクロカプセルが分散された分散液(3)を得た。
【0069】
上記より最終的に得られた分散液(3)を、実施例1と同様にして、透過顕微鏡(3000倍)及び透過偏光顕微鏡(3000倍;クロスニコル下)を用いて観察したところ、実施例1の場合と同様、カプセル径のバラツキが小さく(平均粒径:約8μm)、球形状で外殻の凹凸の少ない液晶マイクロカプセルが観察され、液晶が外殻中に完全に内包され、漏れ出していないことが確認された。
【0070】
(実施例4)
実施例2で得た分散液(2)を凍結乾燥機(FD−5型 EYELA,東京理化器械(株)製)を用いて乾燥させ、液晶マイクロカプセルを粉体化した。
上記より得た液晶マイクロカプセル1gを、0.5%のカルボキシメチルセルロース水溶液3gに超音波分散させ、液晶マイクロカプセル含有の塗布液を得た。この塗布液を、ドクターブレード(001,ガードナー社製)を用いて、125μm厚のITO電極付きPETフィルム(ハイビーム,東レ(株)製)のITO電極上に塗布、乾燥して、液晶表示する液晶層を形成した。
【0071】
前記液晶層の表面に、125μm厚のITO電極付きPETフィルム(ハイビーム,東レ(株)製)をそのITO電極の表面が接触するようにラミネータを用いて密着、固定した。更に、一方のPETフィルムのITO電極が設けられていない側の表面に、ブラック着色樹脂を塗布し、本発明の液晶表示素子を得た。
【0072】
上記より得た液晶表示素子は、フレキシブルなプラスチック基板により構成されるが、圧力等の外力を受けて画像表示が損なわれることなく、画像品質に優れた液晶表示が可能であった。
【0073】
(比較例1)
油相として、ネマチック液晶(E7,メルク社製)2.5gに、キシレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの3:1付加物(タケネートD110N,武田薬品工業(株)製)0.5g及び酢酸エチル(溶剤)10gを混合し、攪拌して均一溶液を得た。
続いて、水相として、イオン交換水100gに、重合度1000のポリビニルアルコール1gが添加された溶液を得た。
上記より得た油相と水相とを混合し、ホモジナイザ−(GLH型,オムニ社製)を用いて、回転数6000rpmの条件下で前記油相を水相中に乳化した。
【0074】
得られた乳化液に、10%のジエチレントリアミン水溶液0.5gを滴下し、室温下で20分間攪拌して重合反応を行い、液晶マイクロカプセル分散液を得た。ここで、得られた分散液を観察したところ、液晶が漏れ出して浮いている様子は認められなかった。
【0075】
上記液晶マイクロカプセル分散液を大量の水で希釈して攪拌した後、遠心分離機を用いて液晶マイクロカプセルを沈降させ、上澄みを除去して液晶マイクロカプセルの濃厚分散液とし、この操作を2回繰り返すことにより、ポリビニルアルコールと酢酸エチルとが除去された、液晶マイクロカプセルが分散された分散液(4)を得た。
【0076】
最終的に得た分散液(4)をガラス基板にドクターブレード(001,ガードナー社製)を用いて塗布・乾燥し、顕微鏡観察を行った。その結果、液晶は外殻中に完全に内包され漏れ出してはいなかったが、透過顕微鏡による3000倍の拡大観察では、図4(A)に示すように、分散液中の液晶マイクロカプセルは、カプセル径のバラツキが大きく、外殻の凹凸が大きかった。
【0077】
(比較例2)
油相として、ネマチック液晶(E7,メルク社製)2.5gに、キシレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの3:1付加物(タケネートD110N,武田薬品工業(株)製)0.5g及び酢酸エチル(溶剤)10gを混合し、攪拌して均一溶液を得た。続いて、水相として、イオン交換水100gに、重合度1000のポリビニルアルコール1gが添加された溶液を得た。
【0078】
2.8μm径のセラミック多孔質膜をセットした膜乳化装置(マイクロキット,SPGテクノ社製)を用いて乳化を試みたが、非常に低い窒素圧力でも油相の水相への漏れ出しが確認され、均一に乳化できなかった。したがって、液晶が内包されたマイクロカプセルを得ることはできなかった。
【0079】
(比較例3)
油相として、ネマチック液晶(E7,メルク社製)2.5gに、キシレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの3:1付加物(タケネートD110N,武田薬品工業(株)製)0.5g及び酢酸エチル(溶剤)0.5gを混合し、攪拌して均一溶液を得た。
続いて、水相として、イオン交換水100gに、重合度1000のポリビニルアルコール1gが添加された溶液を得た。
【0080】
2.8μm径のセラミック多孔質膜をセットした膜乳化装置(マイクロキット,SPGテクノ社製)を用いて、窒素圧力1.5kgf/cmの条件下で前記水相中に油相を乳化した。
得られた乳化液に10%のジエチレントリアミン水溶液0.5gを滴下し、室温下で20分間攪拌して重合反応を行い、液晶マイクロカプセル分散液を得た。ここで、得られた分散液を観察したところ、液晶が内包されたマイクロカプセルは少なく、殆どの液晶がカプセル外に漏れ出し浮遊しているのが認められた。
【0081】
【発明の効果】
本発明によれば、油溶性モノマーを用いた液晶マイクロカプセルの製造において、油滴(油相)に添加する溶剤量を低減することができ、かつ凹凸がなくカプセル径の均一な液晶内包マイクロカプセルが得られ、しかも高分子物質(カプセル)に内包されず漏れ出た液晶の存在のない液晶マイクロカプセルの製造方法を提供することができる。また、カプセル径が均一で、液晶配向を乱す凹凸のない液晶マイクロカプセルを提供することができる。更に、本発明によれば、フレキシブルな基板を用いた構成が可能で、流動性が抑えられ画像品質に優れた液晶表示が可能な液晶表示素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 液晶マイクロカプセルを備える本発明の液晶表示素子の一例を示す図である。
【図2】 液晶マイクロカプセルを備える本発明の液晶表示素子の一例を示す。図である。
【図3】 (A)は透過顕微鏡により観察された、本発明の液晶マイクロカプセルの形態を示す拡大図であり、(B)はクロスニコル下で透過偏光顕微鏡により白く観察された液晶状態を示す拡大図である。
【図4】 透過顕微鏡により観察された、比較例の液晶マイクロカプセルの形態を示す拡大図である。
【符号の説明】
1,10…液晶表示素子
4,5…電極
7…液晶マイクロカプセル
8…液晶層(表示層)
9…光導電層

Claims (7)

  1. 少なくとも液晶と油溶性モノマーと溶剤とを含む油滴を、前記溶剤を少なくとも含む水溶液中に乳化し、前記油溶性モノマーを重合させて液晶をカプセル化することを特徴とする液晶マイクロカプセルの製造方法。
  2. 油滴を水溶液中に乳化する乳化方法が、膜乳化法である請求項1に記載の液晶マイクロカプセルの製造方法。
  3. 油滴と水溶液との間で溶剤が分配平衡若しくは略分配平衡の状態にある請求項1又は2に記載の液晶マイクロカプセルの製造方法。
  4. 油溶性モノマーが多価イソシアネート化合物である請求項1から3のいずれかに記載の液晶マイクロカプセルの製造方法。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の液晶マイクロカプセルの製造方法により得られることを特徴とする液晶マイクロカプセル。
  6. 請求項5に記載の液晶マイクロカプセルが、互いに対向し合う側の表面に電極を備える一対の基板間に狭持されてなることを特徴とする液晶表示素子。
  7. 基板がフレキシブルなプラスチック基板である請求項6に記載の液晶表示素子。
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