JP4013422B2 - 酸化物超電導線材の製造方法及び酸化物超電導線材 - Google Patents

酸化物超電導線材の製造方法及び酸化物超電導線材 Download PDF

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    • Y02E40/60Superconducting electric elements or equipment; Power systems integrating superconducting elements or equipment

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に、超電導コイルや超電導ケーブルその他の用途に適した酸化物超電導線材の製造方法及び酸化物超電導線材に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化物超電導体から構成される酸化物超電導体フィラメントを、銀や銀合金からなる金属で被覆した酸化物超電導線材の開発が進められている。これまでの酸化物超電導線材は、横断面形状をテープ状に成形したものが一般的であった。これは、線材をテープ状に成形することで▲1▼酸化物超電導体の密度を向上でき、▲2▼被覆金属と酸化物超電導体との接触面積を大きくでき、更に▲3▼被覆金属と酸化物超電導体との界面を平滑にできるので、高い臨界電流密度(以下「Jc」という)を実現できるからである。
【0003】
この理由は、例えば第56回1997年春季低温工学・超電導学会講演概要集P22にあるように、超電導特性発現のための超電導化熱処理に際し、酸化物超電導線材をテープ形状に成形すると、被覆金属である銀または銀合金と酸化物超電導体との界面部分で、酸化物超電導体の結晶組織に良好な配向度が得られ、その結果、酸化物超電導線材のJcが高くなるためである。
【0004】
しかしながら、酸化物超電導線材の形状がテープ状の場合、超電導コイル等の製造上、厚さや寸法の制御が難しく、ソレノイド状コイル等の形成に難点があった。
【0005】
そこで最近、横断面形状が丸形で、且つ高Jcの酸化物超電導線材が待ち望まれていた。
【0006】
これまでにも、横断面丸形状を有する酸化物超電導線材の製造方法が提案されている。
【0007】
第一の方法として、銀などの金属管中に酸化物超電導前駆体粉末を充填し、押し出しや伸線などによって縮径加工を行い、次いで超電導化熱処理を施すか、または、金属管中に酸化物超電導前駆体粉末を充填して複合ビレットを作製し、この複合ビレットの複数本を更に別の銀などの金属管中に組み込み、これらを押し出しや伸線などによって縮径加工を行い、次いで超電導化熱処理を施す方法が提案されている。(例えば第53回1995年度春季低温工学・超電導学会講演概要集P77、第57回1997年度秋季低温工学・超電導学会講演概要集P82)。
【0008】
また、第二の製造方法として、酸化物超電導前駆体粉末を金属被覆し、テープ状に加工したものを複数本積層して金属管中に組み込み、次に、押し出しや伸線などの縮径加工を行い、その後、超電導化熱処理を施すことでJcの向上を図った方法も提案されている(特開平9−223418号公報)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来技術の第一の製造方法では、酸化物超電導体の密度が低く、酸化物超電導体における被覆金属との界面の平滑面積が小さいため、酸化物超電導線材のJcは依然として低かった。また、第二の製造方法では、酸化物超電導線材のJcはある程度確保できるものの、製造工程でテープ状に加工する工程が必須であり、酸化物超電導線材の作製に多大な時間とコストを要していた。
【0010】
そこで、本発明は上記従来技術の欠点を解消し、積極的なテープ状加工の工程を要せず安価にJcを向上させることのできる酸化物超電導線材の製造方法及び酸化物超電導線材を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、単数または複数の酸化物超電導体コアフィラメントの外周に被覆金属が設けられ且つ横断面がほぼ円形の素線2本を隣接配置して第一集合化線材とし、次に、2本の上記素線表面に接する第一仮想円と隣り合う2本の上記素線表面とで形成される第一空間内に上記素線の一部を材料流れさせるよう上記第一集合化線材を断面減少率70%以上で縮径加工して、横断面円形状の第一複合線材を作製し、次に、この第一複合線材のn本を互いに隣接配置させて第二集合化線材とし、このとき、上記第一複合線材のそれぞれにおける元の素線間の分割線の垂直2等分線が、当該第一複合線材の長手方向に亘って、これらn本の全ての第一複合線材の表面に接する第二仮想円の中心を常に通るように設定し、次に、上記第二仮想円とn本の上記第一複合線材の表面とで形成される第二空間内に上記第一複合線材の一部を材料流れさせるよう上記第二集合化線材を断面減少率70%以上で縮径加工して、横断面円形状の第二複合線材を作製し、その後、この第二複合線材に超電導化熱処理を施して酸化物超電導線材を製造することを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記第二集合化線材の形成に際し、当該第二集合化線材を構成するn本の第一複合線材のそれぞれに同一ピッチの撚りが施されている場合には、これら第一複合線材のそれぞれにおける元の素線間の分割線の垂直2等分線が、これらn本の全ての第一複合線材の表面に接する第二仮想円の中心を通るように設定して上記第一複合線材の初期位置合わせを実施し、次に、これら第一複合線材を、当該第一複合線材自身の撚りピッチと一致させたピッチで撚り合わせることにより上記第二集合化線材を形成することを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、上記第一複合線材の酸化物超電導体コアフィラメントのアスペクト比を1.5以上とし、上記第二複合線材の酸化物超電導体コアフィラメントのアスペクト比を3.0以上とすることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、上記第二集合化線材の縮径加工の後に、この縮径加工にて作製された第二複合線材に超電導化熱処理を施すことを特徴とするものである。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、上記超電導化熱処理が、温度700〜950℃且つ酸素分圧0.01〜10atmの雰囲気中で行われることを特徴とするものである。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明において、上記酸化物超電導体コアフィラメントがBi、Sr、Ca及びCuを有して成るBi−2212相あるいはBi−2223相であることを特徴とするものである。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、上記酸化物超電導体コアフィラメントの主たる酸化物超電導体がBi、Pb、Sr、Ca及びCuを有して成るBi−2212相あるいはBi−2223相であることを特徴とするものである。
【0018】
請求項8に記載の発明は、単数または複数の酸化物超電導体コアフィラメントの外周に被覆金属が設けられ且つ横断面がほぼ円形の素線が2本隣接配置されて第一集合化線材とされ、次に、2本の上記素線表面に接する第一仮想円と隣り合う2本の上記素線表面とで形成される第一空間内に上記素線の一部を材料流れさせるよう上記第一集合化線材が断面減少率70%以上で縮径加工されて、横断面円形状の第一複合線材が作製され、次に、この第一複合線材のn本が互いに隣接配置されて第二集合化線材とされ、このとき、上記第一複合線材のそれぞれにおける元の素線間の分割線の垂直2等分線が、当該第一複合線材の長手方向に亘って、これらn本の全ての第一複合線材の表面に接する第二仮想円の中心を常に通るように設定され、次に、上記第二仮想円とn本の上記第一複合線材の表面とで形成される第二空間内に上記第一複合線材の一部を材料流れさせるよう上記第二集合化線材が断面減少率70%以上で縮径加工されて、横断面円形状の第二複合線材が作製され、その後、この第二複合線材に超電導化熱処理を施して製造されたことを特徴とするものである。
【0019】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の発明において、上記第二集合化線材の形成に際し、当該第二集合化線材を構成するn本の第一複合線材のそれぞれに同一ピッチの撚りが施されている場合には、これら第一複合線材のそれぞれにおける元の素線間の分割線の垂直2等分線が、これらn本の全ての第一複合線材の表面に接する第二仮想円の中心を常に通るように設定されて上記第一複合線材の初期位置合わせが実施され、次に、これら第一複合線材を、当該第一複合線材自身の撚りピッチと一致させたピッチで撚り合わせることにより上記第二集合化線材が形成されたことを特徴とするものである。
【0020】
請求項10に記載の発明は、請求項8または9に記載の発明において、上記第一複合線材の酸化物超電導体コアフィラメントのアスペクト比を1.5以上とし、上記第二複合線材の酸化物超電導体コアフィラメントのアスペクト比を3.0以上とすることを特徴とするものである。
【0021】
請求項11に記載の発明は、請求項8乃至10のいずれかに記載の発明において、上記第二集合化線材の縮径加工の後に、この縮径加工にて作製された第二複合線材に超電導化熱処理が施されることを特徴とするものである。
【0022】
請求項12に記載の発明は、請求項8乃至11のいずれかに記載の発明において、上記超電導化熱処理が、温度700〜950℃且つ酸素分圧0.01〜10atmの雰囲気中で行われることを特徴とするものである。
【0023】
請求項13に記載の発明は、請求項8乃至12のいずれかに記載の発明において、上記酸化物超電導体コアフィラメントがBi、Sr、Ca及びCuを有して成るBi−2212相あるいはBi−2223相であることを特徴とするものである。
【0024】
請求項14に記載の発明は、請求項8乃至13のいずれかに記載の発明において、上記酸化物超電導体コアフィラメントの主たる酸化物超電導体がBi、Pb、Sr、Ca及びCuを有して成るBi−2212相あるいはBi−2223相であることを特徴とするものである。
【0025】
請求項1、4、6乃至8、11、13及び14に記載の発明には、次の作用がある。
【0026】
2本の素線表面に接する第一仮想円と隣り合う2本の素線表面とで形成される第一空間内に素線の一部を材料流れさせるよう第一集合化線材を断面減少率70%以上で縮径加工して、横断面円形状の第一複合線材を作製することから、この縮径加工に際し第一空間内へ素線の一部の材料が均一に流れるので、第一複合線材における酸化物超電導体コアフィラメントのアスペクト比を当該縮径加工前に比べ大きくできる。
【0027】
また、第一複合線材のn本を互いに隣接配置させて第二集合化線材とし、このとき、上記第一複合線材のそれぞれにおける元の素線間の分割線の垂直2等分線が、当該第一複合線材の長手方向に亘って、これらn本の全ての第一複合線材の表面に接する第二仮想円の中心を常に通るように設定し、次に、第二仮想円とn本の第一複合線材の表面とで形成される第二空間内に第一複合線材の一部を材料流れさせるよう第二集合化線材を断面減少率70%以上で縮径加工して、横断面円形状の第二複合線材を作製することから、この縮径加工に際し第二空間内へ第一複合線材の一部の材料が均一に流れるので、第二複合線材における酸化物超電導体コアフィラメントのアスペクト比を当該縮径加工前に比べ大きくできる。
【0028】
これらのことから、第二複合線材における酸化物超電導体コアフィラメントの緻密度を高めることができるとともに、この第二複合線材における酸化物超電導体コアフィラメントが被覆金属に接する面(界面)の平滑性を高め、更に、この平滑面の面積も増大させることができる。この結果、第二複合線材を超電導化熱処理した後の酸化物超電導線材における酸化物超電導体コアフィラメントの結晶組織は、特に被覆金属との界面付近でその配向度が良好となり、積極的なテープ状加工の工程を要せずして、この酸化物超電導線材のJcを向上させることができる。
【0029】
請求項2及び9に記載の発明には、次の作用がある。
【0030】
第二集合化線材を構成するn本の第一複合線材のそれぞれに同一ピッチの撚りが施されている場合には、これら第一複合線材のそれぞれにおける元の素線間の分割線の垂直2等分線が、これらn本の全ての第一複合線材の表面に接する第二仮想円の中心を常に通るように設定して第一複合線材の初期位置合わせを実施し、次に、これら第一複合線材を、当該第一複合線材自身の撚りピッチと一致させたピッチで撚り合わせることにより第二集合化線材を形成することから、上記第一複合化線材の初期位置が、各第一複合化線材の長手方向に亘って変化しない。このため、第一複合線材に撚りが施されている場合にも、これらn本の第一複合線材によって構成される第二複合線材の酸化物超電導体コアフィラメントにおけるアスペクト比を第一複合線材に比べ大きくできる。従って、この場合も、酸化物超電導線材における酸化物超電導体コアフィラメントの結晶組織の配向度を良好にでき、積極的なテープ状加工の工程を要せずして、この酸化物超電導線材のJcを向上させることができる。
【0031】
請求項3及び10に記載の発明には、次の作用がある。
【0032】
第一集合化線材及び第二集合化線材の断面減少率が70%未満では、第一または第二空間が素線または第一複合線材の一部の材料流れによっても完全に埋まらないおそれがあり、酸化物超電導体コアフィラメントのアスペクト比の向上や緻密化が不十分となって、Jcの向上が期待できなくなるが、上記断面減少率を70%以上としたので、上述の不具合を解消できる。
【0033】
請求項5及び12に記載の発明には、次の作用がある。
【0034】
超電導化熱処理が、酸化物超電導体コアフィラメントの少なくとも一部分に液相を生じさせる温度(好ましくは700〜950℃)で、かつ酸素分圧0.01〜10atmの雰囲気中で行われたことから、このような熱処理によって、酸化物超電導体材料或いはその前駆体は、液相となった後、被覆金属との接触面から核生成して沿面成長し配向度の良い結晶組織を形成して、酸化物超電導体コアフィラメントのアスペクト比を向上させ、該コアフィラメントにおける被覆金属との界面の平滑面を増加させることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
[A]第一の実施の形態(図1、図2)
図1は、本発明にかかる酸化物超電導線材の製造方法における第一の実施の形態を示す工程図である。
【0036】
(1)、まず、酸化物超電導体コアフィラメント11を被覆金属12で被覆した素線10を2本用意する。この素線10は、銀または銀合金製のパイプ15に酸化物超電導前駆体の粉末14を充填して複合ビレット13を形成し、この複合ビレット13を縮径加工して得られた単一コアフィラメントの素線か、あるいは、かかる素線10を複数本束ねたものを別の銀または銀合金製のパイプに挿入し、これらを縮径加工して得られた所謂マルチフィラメントの素線のいずれでもよい。
【0037】
(2)、次に、これらの素線10を、テープ状に加工すること無く、すなわち素線10及び酸化物超電導体コアフィラメント11のそれぞれの横断面形状をほぼ円形に保ったまま、別の銀または銀合金製のパイプ16に2本挿入し、第一集合化線材17を形成する。この際、素線10はパイプ16内に対称に隣接配置されるが、これら素線10の表面に接する第一仮想円C1とパイプ16の内面がほぼ一致するよう、素線10外径及びパイプ16の内径を選ぶことが好ましい。
【0038】
このとき、素線10の表面に接する第一仮想円C1(即ちパイプ16内面)と隣り合う2本の素線10の表面とで形成される第一空間S1は、次の縮径加工(手順(3))によって、素線10の長手方向に対しほぼ垂直な断面方向に素線10の一部を材料流れさせるに十分な広さを確保しておく。
【0039】
(3)、次に、第一集合化線材17を、伸線などの通常の方法で縮径加工して、横断面円形状の第一複合線材18を作製する。この縮径加工は、第一仮想円C1(あるいはパイプ16の内面)と隣り合う2つの素線10の表面とで形成される第一空間S1内に、素線10の長手方向に対しほぼ垂直な断面方向において素線10の一部を材料流れさせる。この材料流れは結果的に、横断面がほぼ円形の酸化物超電導体コアフィラメント11をいずれも半円状あるいは矩形状に変形させると同時に、各酸化物超電導体コアフィラメント11の周囲を被覆金属19にて被覆させる。
【0040】
この縮径加工による断面減少率、即ち減面率を適切(例えば70%以上)に選ぶことにより、第一複合線材18における素線10の酸化物超電導体コアフィラメント11のアスペクト比(当該コアフィラメント11の横断面における長軸長/短軸長)を、この減面加工によって1.5以上とすることができる。これにより、アスペクト比がほぼ1の通常の横断面円形状をなす線材に比べて、酸化物超電導体コアフィラメント11の平滑面を多く確保でき、かつ該コアフィラメント11の緻密度を高めることができる。
【0041】
(4)、次に、酸化物超電導体コアフィラメント11のアスペクト比を更に高めるために、n(n=2〜19)本(本実施の形態では3本)の第一複合線材18を、その横断面形状をほぼ円形に保ったまま、別の銀または銀合金製のパイプ20内に挿入して集合化し第二集合化線材22を形成する。このとき、第一複合線材18のそれぞれにおける元の素線10間の分割線23の垂直2等分線24が、第一複合線材18の長手方向に亘って、これらn本(3本)のすべての第一複合線材18の表面に接する第二仮想円C2の中心Oを常に通るように設定する。
【0042】
この第一複合線材18の位置合わせは、第一複合線材18に撚りが施されていない場合には、第一複合線材18における元の素線10間の分割線23の垂直2等分線24が上記第二仮想円C2の中心Oを通るように初期位置合わせを行い、この初期位置を第一複合線材18の長手方向に亘って保持させることにより実現される。
【0043】
(5)、次に、第二集合化線材22における各第一複合線材18の位置を上記手順(4)に示す位置に保持した状態で、この第二集合化線材22に伸線などの縮径加工を実施する。この縮径加工により、各第一複合線材18の一部の材料は、第二仮想円C2としてのパイプ20の内表面と各第一複合線材18の表面とにより形成される第二空間S2内へ均一に流れて、横断面円形状の第二複合線材25が作製される。
【0044】
このとき、上記縮径加工における断面減少率(即ち減面率)は70%以上に設定される。減面率が70%未満の場合には、第二集合化線材22における第二空間S2が第一複合線材18の一部によって完全に埋まらないおそれがあり、酸化物超電導体コアフィラメント11のアスペクト比の向上(例えばアスペクト比3.0以上)や酸化物超電導体コアフィラメント11の緻密度が不十分となって、Jcの向上が期待できなくなるからである。
【0045】
この縮径加工によって作製された第二複合線材25では、酸化物超電導体コアフィラメント11が楕円または矩形状に変形されるとともに、各酸化物超電導体コアフィラメント11の周囲は、被覆金属19及びパイプ20が変形されて形成された被覆金属26にて被覆される。
【0046】
(6)、最後に、手順(5)にて作製された第二複合線材25に超電導化熱処理を施して、酸化物超電導体コアフィラメント11の酸化物超電導前駆体を酸化物超電導体へ転化させ、所望の酸化物超電導線材27を得る。
【0047】
この超電導化熱処理の一例は、酸化物超電導体コアフィラメント11の少なくとも一部分に液相を生じさせる温度(好ましくは700〜950℃)で、且つ酸素分圧0.01〜10atmの雰囲気中で行うことが好ましい。これは、このような熱処理によって、酸化物超電導前駆体は、液相となった後、被覆金属26との界面から核生成して沿面成長し、配向度の良い結晶組織を形成するからであり、酸化物超電体コアフィラメント11のアスペクト比を向上させて、該コアフィラメント11における被覆金属26との界面の平滑面を増加させたことによる効果がこれにより著しく高まるからである。
【0048】
つまり、超電導化熱処理後の酸化物超電導体コアフィラメント11における結晶組織28は、図2(A)に示すように、被覆金属26と接する界面付近でその配向度が良好となり、この結果、酸化物超電導線材27のJcを向上させることができる。
【0049】
従って、上記実施の形態によれば、次の効果▲1▼〜▲3▼を奏する。
【0050】
▲1▼2本の素線10表面に接する第一仮想円C1と隣り合う2本の素線10表面とで形成される第一空間S1内に素線10の一部を材料流れさせるよう第一集合化線材17を縮径加工して、横断面円形状の第一複合線材18を作製することから、この縮径加工に際し、第一空間S1内に素線10の一部の材料が均一に流れるので、第一複合線材18における酸化物超電導体コアフィラメント11のアスペクト比を当該縮径加工前に比べ大きくできる。
【0051】
また、第一複合線材18のn本を互いに隣接配置させて第二集合化線材22とし、このとき、上記第一複合線材18のそれぞれにおける元の素線10間の分割線23の垂直2等分線24が、当該第一複合線材18の長手方向に亘って、これらn本のすべての第一複合線材18の表面に接する第二仮想円C2の中心Oを常に通るように設定し、次に、第二仮想円C2とn本の第一複合線材18の表面とで形成される第二空間S2に第一複合線材18の一部を材料流れさせるよう第二集合化線材22を縮径加工して、横断面円形状の第二複合線材25を作製することから、この縮径加工に際し、第二空間S2内へ第一複合線材18の一部の材料が均一に流れるので、第二複合線材25における酸化物超電導体コアフィラメント11のアスペクト比を当該縮径加工前に比べ大きくできる。
【0052】
これらのことから、第二複合線材25における酸化物超電導体コアフィラメント11の緻密度を高めることができるとともに、この第二複合線材25における酸化物超電導体コアフィラメント11が被覆金属26に接する面(界面)の平滑性を高め、更に、この平滑面の面積も増大させることができる。この結果、第二複合線材25を超電導化熱処理した後の酸化物超電導線材27における酸化物超電導体コアフィラメント11の結晶組織28は、特に被覆金属26との界面付近でその配向度が良好となり、積極的なテープ状加工の工程を要せず安価に、この酸化物超電導線材27のJcを向上させることができる。
【0053】
▲2▼第一集合化線材17及び第二集合化線材22の断面減少率が70%未満では、第一空間S1または第二空間S2が素線10または第一複合線材18の一部の材料流れによっても完全に埋まらないおそれがあり、酸化物超電導体コアフィラメント11のアスペクト比の向上や緻密化が不十分となって、Jcの向上が期待できなくなるが、前述のように断面減少率を70%以上としたので、上記不具合を解消できる。
【0054】
▲3▼超電導化熱処理が、酸化物超電導体コアフィラメント11の少なくとも一部分に液相を生じさせる温度(好ましくは700〜950℃)で、且つ酸素分圧0.01〜10atmの雰囲気で行われることから、このような熱処理によって、酸化物超電導前駆体は、液相となった後、被覆金属26との接触面から核生成して沿面成長し配向度の良い結晶組織28を形成して、酸化物超電導体コアフィラメント11のアスペクト比を向上させ、該酸化物超電導体コアフィラメント11における被覆金属26との界面の平滑面を増加させることができる。
【0055】
[B]第二の実施の形態(図3)
図3は、本発明にかかる酸化物超電導線材の製造方法における第二の実施の形態を示す工程図である。この第二の実施の形態において、上記第一の実施の形態と同様な部分は、同一の符号を付すことにより説明を省略する。この第二の実施の形態では、上記第一の実施の形態の製造工程における手順(2)及び(4)が、この第一の実施の形態と異なる。
【0056】
つまり、本実施の形態において、前記第一の実施の形態の製造工程手順(2)に相当する手順(2a)では、素線10をテープ状に加工することなく、即ち、素線10及び酸化物超電導体コアフィラメント11のそれぞれの横断面形状をほぼ円形に保ったまま、2本の素線10を隣接配置して撚り合わせ、第一集合化線材31を形成する。
【0057】
このとき、2本の素線10の表面に接する第一仮想円C3と隣り合う2本の素線10の表面とで形成される第一空間S3には、次の縮径加工(手順(3))によって、素線10の長手方向に対しほぼ垂直な断面方向に素線10の一部が材料流れされる。
【0058】
また、本実施の形態において、前記第一の実施の形態の製造工程の手順(4)に相当する手順(4a)では、n(n=2〜19)本(本実施の形態では3本)の第一複合線材18を、その横断面形状をほぼ円形に保ったまま撚り合わせて第二集合化線材32を形成する。このとき、第一複合線材18のそれぞれにおける元の素線10間の分割線23の垂直2等分線24が、第一複合線材18の長手方向に亘って、これらn本(3本)のすべての第一複合線材18の表面に接する第二仮想円C4の中心Oaを常に通るように設定する。
【0059】
この第一複合線材18の位置合わせは、第一複合線材18に撚りが施されているので、まず、n本(3本)のそれぞれにおける元の素線10間の分割線23の垂直2等分線24が、上記第二仮想円C4の中心Oaを通るように初期位置合わせを行い、次に、これらn本(3本)の第一複合線材18を、当該第一複合線材18自身の撚り位置と一致させたピッチで撚り合わせることにより、上記初期位置が第一複合線材18の長手方向に亘って保持されて実現される。
【0060】
この場合、第二集合化線材32を縮径加工する次の手順(5)において、第二集合化線材32と隣り合うn本(3本)の素線10表面との間で形成される第二空間S4内に、素線10の一部の材料が流れて第二複合線材25が作製される。
【0061】
従って、上記実施の形態によれば、前記第一の実施の形態の効果▲2▼及び▲3▼と同様な効果を奏するほか、次の効果▲4▼を奏する。
【0062】
▲4▼第二集合化線材32を構成するn本(3本)の第一複合線材18のそれぞれに同一ピッチの撚りが施されている場合には、これら第一複合線材18のそれぞれにおける元の素線10間の分割線23の垂直2等分線24が、これらn本(3本)のすべての第一複合線材18の表面に接する第二仮想円C4の中心Oaを常に通るように設定して第一複合線材18の位置合わせを実施し、次に、これら第一複合線材18を、当該第一複合線材18自身の撚りピッチと一致させたピッチで撚り合わせることにより第二集合化線材32を形成することから、上記第一複合線材18の初期位置が、各第一複合線材18の長手方向に亘って変化しない。このため、第一複合線材18に撚りが施されている場合にも、これらn本(3本)の第一複合線材18によって構成される第二複合線材25の酸化物超電導体コアフィラメント11におけるアスペクト比を第一複合線材18に比べて大きくできる。従って、この場合も、前記第一実施の形態の効果▲1▼と同様に、酸化物超電導線材27における酸化物超電導体コアフィラメント11の結晶組織28の配向度を良好にでき、積極的なテープ状加工の工程を要せず安価に、この酸化物超電導線材27のJcを向上させることができる。
【0063】
ここで、上記第一及び第二実施の形態において、酸化物超電導体コアフィラメント11、素線10、並びに第一及び第二複合線材18、25の横断面形状を規定する「ほぼ円形」とは、円形のみならず、対称N角形(Nは6以上)も含む概念である。
【0064】
また、酸化物超電導体コアフィラメント11は、Bi、Sr、Ca及びCuを有してなるBi−2212相若しくはBi−2223相、またはBi、Sr、Pb、Ca及びCuを有してなるBi−2212相若しくはBi−2223相であることが好ましい。
【0065】
以下、本発明の実施例を、比較例とともに説明する。
【0066】
ここで、実施例1は第一実施の形態に対応し、実施例2及び3は第二の実施の形態に対応することから、実施例1の説明では図1を参照し、実施例2及び3の説明では図3を参照する。
[実施例1]
組成としてBi2Sr2CaCu2Xが得られるようにBi23、SrC 3、CaC 3、CuOの各粉末を混合し、これを大気中で820℃に加熱し、この加熱状態を20時間保持する熱処理を施した後、それを粉砕してBi−2212相の酸化物超電導前駆体の粉末14を用意した。一方、銀パイプ15として外径15mm、内径11mm、長さ1000mmのものを準備した。パイプ15中に前記粉末14をタッピング充填して複合ビレット13を形成した。その複合ビレット13を外径5.4mmになるまで引き抜き加工して素線10が得られた。
【0067】
この素線10を所定の長さに切断し、それを前記と同様な銀パイプ16に2本組み込み、更に外径4.6mmまで引き抜き加工して第一複合線材18を作製した。得られた第一複合線材18を所定の長さに切断し、それを前記と同様なパイプ20内に、元の素線10間の分割線23の垂直2等分線24が、第一複合線材18の長手方向にわたって、常にその仮想円C2の中心を通るように3本組み込んで配置させ、更に、外径2mmまで引き抜き加工して第二複合線材25を作製した。
【0068】
同様にして、得られた第一複合線材18を所定の長さに切断し、図4に示す比較例のように、その第一複合線材18を前記と同様なパイプ40に、元の素線10間の分割線23の垂直2等分線24が、3本の第一複合線材18の表面に接する仮想円41の中心を通らないように3本組み込んで配置させ、更に、外径2mmまで引き抜き加工して第二複合線材42を作製した。
【0069】
それぞれの第二複合線材25、42を、長さ約30mmに切断し、酸素分圧1atmの雰囲気中で882℃に10分間加熱保持した後、5℃/hの冷却速度で830℃まで除冷し、更に1時間保持して炉冷して超電導化熱処理を実施した。
【0070】
第二複合線材25から製造された酸化物超電導線材27(実施例1)と、第二複合線材42から製造された酸化物超電導線材43(比較例1)を液体ヘリウム中で、外部磁場無しの状態で、臨界電流を1μV/cmの定義で測定した。その結果、前者は1600A/mm2、後者は1000A/mm2のJcであった。
【0071】
実施例1の酸化物超電導線材27では、酸化物超電導体コアフィラメント11のアスペクト比が約3.0であったのに対し、比較例1の酸化物超電導線材43では、酸化物超電導体コアフィラメント44のアスペクト比が平均すると約1.5であった。長手方向に対する横断面の形状が実施例1の酸化物超電導体コアフィラメント11では、どの部分でも、上記アスペクト比が高くなるように配置されているのに対し、比較例1の酸化物超電導体コアフィラメント11では横断面の形状が不均一で、アスペクト比が小さい部分が存在する。
【0072】
このため、超電導化熱処理後の酸化物超電導体コアフィラメントにおける結晶組織の状態を示す図2において、実施例1の酸化物超電導線材27では、上記酸化物超電導体コアフィラメント11の結晶組織28は、銀被覆との接触部近傍で配向度が良好であるのに対し、比較例1の酸化物超電導線材43では、上記酸化物超電導体コアフィラメント11の結晶組織45の配向度は場所により大きく劣っていた。この結果、実施例1の方が比較例1に比べ高Jcを得られたものと考えられる。
[実施例2]
組成としてBi2Sr2CaCu2Xが得られるように、Bi23、SrC 3CaCO 3 、CuOの各粉末を混合し、これを大気中で820℃に加熱し、この加熱状態を20時間保持する熱処理を施した後、それを粉砕してBi−2212相の酸化物超電導前駆体の粉末14を用意した。一方、銀パイプ15として外径15mm、内径11mm、長さ1000mmのものを準備した。パイプ15中に前記粉末14をタッピング充填して複合ビレット13を形成した。その複合ビレット13を外径1.3mmになるまで引き抜き加工して素線10を作製した。
【0073】
得られた素線10を2本撚り合わせ、更に外径1.7mmになるまで引き抜き加工して第一複合線材18を作製した。この第一複合線材18の撚りピッチは30mmであった。次に、この第一複合線材18を3本配置し、更に初期の撚りピッチを30mmとして撚り合わせ、更に外径2mmまで伸線して第二複合線材25を作製した。
【0074】
同様に、上記第一複合線材18を3本撚り合わせ、初期の撚りピッチを50mmとし、第一複合線材18自身の撚りピッチ30mmと異なる撚りピッチで撚り合わせ、更に外径2mmまで伸線して第二複合線材42を作製した。
【0075】
それぞれの第二複合線材25、42を長さ約30mmに切断し、実施例1と同一条件で超電導化熱処理した。
【0076】
第二複合線材25から製造された酸化物超電導線材27(実施例2)と、第二複合線材42から製造された酸化物超電導線材43(比較例2)とを液体ヘリウム中で、外部磁場無しの状態で、臨界電流を1μV/cmの定義で測定した。その結果、前者は2300A/mm2、後者は1600A/mm2のJcであった。
【0077】
このように両者のJcに差が生ずる理由は、実施例1及び比較例1の場合と同様に、実施例2では、元の素線10間の分割線23の垂直2等分線24が第一複合線材18の長手方向に亘って、第二仮想円C2の中心Oを常に通るように配置され、しかも、その第一複合線材18自身の撚り線ピッチと第二集合化線材32における第一複合線材18の撚り線ピッチが同一であるため、第二複合線材25の酸化物超電導体コアフィラメント11は、第二複合線材25の長手方向のどの位置における横断面も均一となり、この酸化物超電導体コアフィラメント11のアスペクト比を大きくできるのに対し、比較例2では、第二複合線材42の酸化物超電導体コアフィラメント11は、第二複合線材42の長手方向各位置における横断面形状が不均一であり、結果的に、平均的なアスペクト比が小さいからである。
[実施例3]
Bi1.84Pb0.34Sr1.9Ca2.2Cu3.1x組成の酸化物超電導前駆体の粉末14を用意した。一方、銀パイプ15として外径15mm、内径11mm、長さ1000mmのものを準備した。パイプ15中に前記粉末14をタッピング充填して複合ビレット13を形成した。その複合ビレット13を外径1.3mmになるまで引き抜き加工して素線10を作製した。
【0078】
得られた素線10を2本撚り合わせ、更に外径1.7mmになるまで引き抜き加工して第一複合線材18を作製した。この第一複合線材18の撚りピッチは30mmであった。この第一複合線材18を3本配置し、更に初期の撚りピッチを30mmとして撚り合わせ、更に外径2mmまで伸線して第2複合線材25を作製した。
【0079】
同様に、上記第一複合線材18を3本撚り合わせ、初期の撚りピッチを50mmとし、第一複合線材18自身の撚りピッチ30mmと異なる撚りピッチで撚り合わせ、更に外径2mmまで伸線して第二複合線材42を作製した。
【0080】
両第二複合線材25、42を空気中で845℃に加熱し、この加熱状態を50時間保持して焼成した後、これらを外径1.8mmまで伸線し、更に空気中で845℃に加熱し50時間保持して焼成する。このような超電導化熱処理を実施してBi−2223相の酸化物超電導線材27、43を作製した。前者の線材27を実施例3、後者の線材43を比較例3とする。
【0081】
これらの両酸化物超電導線材27、43を液体窒素中で、外部磁場無しの状態で、臨界電流Icを1μV/cmの定義で測定した。その結果、前者は85A/mm2、後者は60A/mm2のJcであった。このJcの違いは、実施例2及び比較例2の場合と同様な理由である。
【0082】
以上のように、本発明を前記実施の形態及び上記実施例に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0083】
例えば、両実施の形態及び各実施例において、横断面がほぼ円形状の素線10の作製方法としては、上述のようなパウダーインチューブ法は勿論のこと、ディップコート法、ドクターブレード法、塗布法、有機酸塩法、溶射法、プラズマ溶射法、スクリーン印刷法、蒸着法、CVD法、スパッタリング法、レーザーアブレーション法等によるジェリーロール法、或いはそれらの組み合わせのいずれであってもよい。
【0084】
また、酸化物超電導線材27の酸化物超電導体コアフィラメント11と被覆金属26の材料は、線材構造においてそれぞれ1種類に限定されるものではなく、複数の材料の組み合わせであってもよい。
【0085】
また、酸化物超電導体コアフィラメント11を構成する酸化物超電導体の種類としては、少なくともBiを含む2212、2223相は勿論のこと、少なくともTlを含む2212、2223、1201、1212、1234の各相、ReBa2Cu3y相(ここでRe=Y、La、Nd、Eu、Dy、Gd、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)及び少なくともHgを含む2212、2223、1201、1212、1223、1234相であってもよい。
【0086】
更に、被覆金属26の材料は、銀または銀合金が、これまでの実績も多く好適に用いられるが、酸化物超電導体と反応しない材料(例えば金、白金、パラジウムまたは銅)であれば問題なく使用できる。酸化物超電導体と反応する材料であっても、ジルコニア、酸化マグネシウムなどの反応防止材を具備していれば差し支えない。
【0087】
また、酸化物超電導線材27の応用例としては、マグネット、コイル、ケーブル、ブスバー、電流リード、磁気シールド、限流器、永久電流スイッチ等の超電導デバイスがあげられる。この場合、酸化物超電導線材27を用いた上記超電導デバイスの作製方法は、React&Wind法或いはWind&React法のいずれであってもよい。
【0088】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る酸化物超電導線材の製造方法によれば、単数または複数の酸化物超電導体コアフィラメントの外周に被覆金属が設けられ且つ横断面がほぼ円形の素線2本を隣接配置して第一集合化線材とし、次に、2本の上記素線表面に接する第一仮想円と隣り合う2本の上記素線表面とで形成される第一空間内に上記素線の一部を材料流れさせるよう上記第一集合化線材を断面減少率70%以上で縮径加工して、横断面円形状の第一複合線材を作製し、次に、この第一複合線材のn本を互いに隣接配置させて第二集合化線材とし、このとき、上記第一複合線材のそれぞれにおける元の素線間の分割線の垂直2等分線が、当該第一複合線材の長手方向に亘って、これらn本の全ての第一複合線材の表面に接する第二仮想円の中心を常に通るように設定し、次に、上記第二仮想円とn本の上記第一複合線材の表面とで形成される第二空間内に上記第一複合線材の一部を材料流れさせるよう上記第二集合化線材を断面減少率70%以上で縮径加工して、横断面円形状の第二複合線材を作製し、その後、この第二複合線材に超電導化熱処理を施して酸化物超電導線材を製造することから、積極的なテープ状加工の工程を要せず安価にJcを向上させることができる。
【0089】
また、本発明にかかる酸化物超電導線材によれば、単数または複数の酸化物超電導体コアフィラメントの外周に被覆金属が設けられ且つ横断面がほぼ円形の素線が2本隣接配置されて第一集合化線材とされ、次に、2本の上記素線表面に接する第一仮想円と隣り合う2本の上記素線表面とで形成される第一空間内に上記素線の一部を材料流れさせるよう上記第一集合化線材が断面減少率70%以上で縮径加工されて、横断面円形状の第一複合線材が作製され、次に、この第一複合線材のn本が互いに隣接配置されて第二集合化線材とされ、このとき、上記第一複合線材のそれぞれにおける元の素線間の分割線の垂直2等分線が、当該第一複合線材の長手方向に亘って、これらn本の全ての第一複合線材の表面に接する第二仮想円の中心を常に通るように設定され、次に、上記第二仮想円とn本の上記第一複合線材の表面とで形成される第二空間内に上記第一複合線材の一部を材料流れさせるよう上記第二集合化線材が断面減少率70%以上で縮径加工されて、横断面円形状の第二複合線材が作製され、その後、この第二複合線材に超電導化熱処理を施して製造されたことから、積極的なテープ状加工の工程を要せず安価にJcを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる酸化物超電導線材の製造方法における第一の実施の形態を示す工程図である。
【図2】図1と比較例の酸化物超電導線材の製造方法において製造された酸化物超電導線材の酸化物超電導体コアフィラメントの結晶組織を示す図である。
【図3】本発明にかかる酸化物超電導線材の製造方法における第二の実施の形態を示す工程図である。
【図4】酸化物超電導線材の製造方法における比較例の一部の製造工程を示す工程図である。
【符号の説明】
10 素線
11 酸化物超電導体コアフィラメント
12 被覆金属
16 パイプ
17 第一集合化線材
18 第一複合線材
20 パイプ
22 第二集合化線材
23 分割線
24 垂直2等分線
25 第二複合線材
27 酸化物超電導線材
31 第一集合化線材
32 第二集合化線材
C1 第一仮想円
C2 第二仮想円
S1 第一空間
S2 第二空間
O 中心
C4 第二仮想円
S4 第二空間
Oa 中心

Claims (14)

  1. 単数または複数の酸化物超電導体コアフィラメントの外周に被覆金属が設けられ且つ横断面がほぼ円形の素線2本を隣接配置して第一集合化線材とし、
    次に、2本の上記素線表面に接する第一仮想円と隣り合う2本の上記素線表面とで形成される第一空間内に上記素線の一部を材料流れさせるよう上記第一集合化線材を断面減少率70%以上で縮径加工して、横断面円形状の第一複合線材を作製し、
    次に、この第一複合線材のn本を互いに隣接配置させて第二集合化線材とし、このとき、上記第一複合線材のそれぞれにおける元の素線間の分割線の垂直2等分線が、当該第一複合線材の長手方向に亘って、これらn本の全ての第一複合線材の表面に接する第二仮想円の中心を常に通るように設定し、
    次に、上記第二仮想円とn本の上記第一複合線材の表面とで形成される第二空間内に上記第一複合線材の一部を材料流れさせるよう上記第二集合化線材を断面減少率70%以上で縮径加工して、横断面円形状の第二複合線材を作製し、
    その後、この第二複合線材に超電導化熱処理を施して酸化物超電導線材を製造することを特徴とする酸化物超電導線材の製造方法。
  2. 上記第二集合化線材の形成に際し、当該第二集合化線材を構成するn本の第一複合線材のそれぞれに同一ピッチの撚りが施されている場合には、これら第一複合線材のそれぞれにおける元の素線間の分割線の垂直2等分線が、これらn本の全ての第一複合線材の表面に接する第二仮想円の中心を通るように設定して上記第一複合線材の初期位置合わせを実施し、次に、これら第一複合線材を、当該第一複合線材自身の撚りピッチと一致させたピッチで撚り合わせることにより上記第二集合化線材を形成することを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  3. 上記第一複合線材の酸化物超電導体コアフィラメントのアスペクト比を1.5以上とし、上記第二複合線材の酸化物超電導体コアフィラメントのアスペクト比を3.0以上とすることを特徴とする請求項1または2に記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  4. 上記第二集合化線材の縮径加工の後に、この縮径加工にて作製された第二複合線材に超電導化熱処理を施すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  5. 上記超電導化熱処理が、温度700〜950℃且つ酸素分圧0.01〜10atmの雰囲気中で行われることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  6. 上記酸化物超電導体コアフィラメントがBi、Sr、Ca及びCuを有して成るBi−2212相あるいはBi−2223相であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  7. 上記酸化物超電導体コアフィラメントの主たる酸化物超電導体がBi、Pb、Sr、Ca及びCuを有して成るBi−2212相あるいはBi−2223相であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の酸化物超電導線材の製造方法。
  8. 単数または複数の酸化物超電導体コアフィラメントの外周に被覆金属が設けられ且つ横断面がほぼ円形の素線が2本隣接配置されて第一集合化線材とされ、
    次に、2本の上記素線表面に接する第一仮想円と隣り合う2本の上記素線表面とで形成される第一空間内に上記素線の一部を材料流れさせるよう上記第一集合化線材が断面減少率70%以上で縮径加工されて、横断面円形状の第一複合線材が作製され、
    次に、この第一複合線材のn本が互いに隣接配置されて第二集合化線材とされ、このとき、上記第一複合線材のそれぞれにおける元の素線間の分割線の垂直2等分線が、当該第一複合線材の長手方向に亘って、これらn本の全ての第一複合線材の表面に接する第二仮想円の中心を常に通るように設定され、
    次に、上記第二仮想円とn本の上記第一複合線材の表面とで形成される第二空間内に上記第一複合線材の一部を材料流れさせるよう上記第二集合化線材が断面減少率70%以上で縮径加工されて、横断面円形状の第二複合線材が作製され、
    その後、この第二複合線材に超電導化熱処理を施して製造されたことを特徴とする酸化物超電導線材。
  9. 上記第二集合化線材の形成に際し、当該第二集合化線材を構成するn本の第一複合線材のそれぞれに同一ピッチの撚りが施されている場合には、これら第一複合線材のそれぞれにおける元の素線間の分割線の垂直2等分線が、これらn本の全ての第一複合線材の表面に接する第二仮想円の中心を常に通るように設定されて上記第一複合線材の初期位置合わせが実施され、次に、これら第一複合線材を、当該第一複合線材自身の撚りピッチと一致させたピッチで撚り合わせることにより上記第二集合化線材が形成されたことを特徴とする請求項8に記載の酸化物超電導線材。
  10. 上記第一複合線材の酸化物超電導体コアフィラメントのアスペクト比を1.5以上とし、上記第二複合線材の酸化物超電導体コアフィラメントのアスペクト比を3.0以上とすることを特徴とする請求項8または9に記載の酸化物超電導線材。
  11. 上記第二集合化線材の縮径加工の後に、この縮径加工にて作製された第二複合線材に超電導化熱処理が施されることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の酸化物超電導線材。
  12. 上記超電導化熱処理が、温度700〜950℃且つ酸素分圧0.01〜10atmの雰囲気中で行われることを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載の酸化物超電導線材。
  13. 上記酸化物超電導体コアフィラメントがBi、Sr、Ca及びCuを有して成るBi−2212相あるいはBi−2223相であることを特徴とする請求項8乃至12のいずれかに記載の酸化物超電導線材。
  14. 上記酸化物超電導体コアフィラメントの主たる酸化物超電導体がBi、Pb、Sr、Ca及びCuを有して成るBi−2212相あるいはBi−2223相であることを特徴とする請求項8乃至13のいずれかに記載の酸化物超電導線材。
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