JP4011749B2 - 車両用乗員拘束保護装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車両に装備される車両用乗員拘束保護装置に関し、特に、乗員を保護するためのシートベルトの巻き取り及び引き出しを行う電動リトラクタを用いた車両用乗員拘束保護装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の車両用乗員拘束保護装置では、シートベルト非装着状態において、シートベルトの引き出し後、該引き出しが停止してから巻き取りが行われるまでの時間はシートベルトの引き出し速度に無関係にほぼ同じであった。即ち、シートベルト非装着状態では、乗員がシートベルトを装着しようとして該シートベルトを引き出し、その後、バックルにタングがなかなか入らずに手間取った場合に引き出しが停止状態となるため、この手間取る時間を想定して所定時間猶予を取り、その後シートベルトの巻き取りを行うようにしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このため、例えばシートベルトを装着するつもりがなく引き出して、車外に出てドアを閉めるような場合には、所定時間巻き取りが行われないため、シートベルトがドアに挟まれてしまいシートベルトを傷つけてしまうおそれがあった。また、シートベルトを装着するときに、装着に思いのほか手間取り装着前にシートベルトが巻き取られてしまい、シートベルトを装着しにくい状態になるおそれがあった。
【0004】
ところで、シートベルトを引き出した後、車外に出てドアを閉めるまでの時間は乗員の身体能力により遅かったり早かったりする。一般的に、身体能力の高い乗員の場合には車外に出るまでの時間が早く、シートベルトを引き出してからドアを閉めるまでの時間が短い。逆に、身体能力の低い乗員の場合には車外に出るまでの時間が遅く、シートベルトを引き出してからドアを閉めるまでの時間が長い。また、一般的に身体能力の高い乗員の場合にはシートベルトの引き出し速度が速く、身体能力の低い乗員の場合にはシートベルトの引き出し速度が遅い。さらに、シートベルトの引き出し停止から装着までの時間も、一般的に身体能力により異なり、身体能力の高い乗員は短く、身体能力の低い乗員は長い。
【0005】
しかしながら、上記車両用乗員拘束保護装置では、乗員の身体能力に無関係にシートベルトの引き出し停止から巻き取りまでの時間を同一にしているため、例えば、その時間を身体能力の低い乗員に合わせて長く取った場合は、身体能力の高い乗員が使うと、シートベルト引き出し後早い時間で車外に出てドアを閉めるため、シートベルトをドアに挟んでしまうおそれがあった。また、身体能力の高い乗員に合わせて、シートベルトの引き出し停止から巻き取るまでの時間を短くした場合は、身体能力の低い乗員が使うと、シートベルトを装着しようとするときにシートベルトが巻き取られて装着の邪魔をされるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記点に着目してなされたものであり、快適なシートベルト装着環境を提供することができる車両用乗員拘束保護装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の車両用乗員拘束保護装置は、シートベルトが装着状態であるか否かを検出するシートベルト装着状態検出手段と、前記シートベルトの引き出し停止を検出する引き出し停止検出手段と、前記シートベルトが非装着状態で、乗員により前記シートベルトが引き出され、前記引き出し停止検出手段によりシートベルトの引き出し停止が検出されたときに、所定時間前記シートベルトの巻き取りを停止する停止手段とを備えた車両用乗員拘束保護装置において、前記シートベルトの引き出し速度を検出する引き出し速度検出手段と、前記所定時間を前記引き出し速度検出手段により検出されたシートベルトの引き出し速度に応じて設定する設定手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の構成によれば、シートベルトが非装着状態で、乗員によりシートベルトが引き出され、引き出し停止検出手段によりシートベルトの引き出し停止が検出されたときに、シートベルトの巻き取りを停止する所定時間が、引き出し速度検出手段により検出されたシートベルトの引き出し速度に応じて設定されるので、例えば、身体能力の高い乗員が、シートベルト引き出し後早い時間で車外に出てドアを閉めても、シートベルトをドアに挟むことはなく、また、身体能力の低い乗員が、シートベルトを装着しようとするときに、シートベルトが巻き取られてシートベルトの装着の邪魔をされることもなくなる。よって、快適なシートベルト装着環境を提供することができる。
【0009】
前記設定手段は、前記シートベルトの引き出し速度が速いほど前記所定時間を短く設定し、前記シートベルトの引き出し速度が遅いほど前記所定時間を長く設定してもよい。
【0010】
この構成によれば、シートベルトをドアに挟むことやシートベルトの装着の邪魔をされることが確実になくなり、より快適なシートベルト装着環境を提供することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係る車両用乗員拘束保護装置が備えている電動リトラクタ100の構成を示す図である。
【0013】
電動リトラクタ100はフレーム1を備えている。このフレーム1にはシートベルトを巻き取るリールシャフト3が回転自在に設置され、車両に所定の減速度が作用したとき又はシートベルトが所定の加速度で引き出されたときにシートベルトの引き出しをロックする公知のシートベルトロック機構2が固定されている。
【0014】
次いで、リールシャフト3の中心軸3aはリールシャフト用プーリ5の中心軸に連結されており、このリールシャフト用プーリ5は動力伝達ベルト7を介して直流モータ用プーリ6に接続されている。
【0015】
リールシャフト用プーリ5及び直流モータ用プーリ6の外周にはそれぞれ所定数の外歯が形成され、また動力伝達ベルト7の内周にも所定数の内歯が形成されており、リールシャフト用プーリ5及び直流モータ用プーリ6の外歯と動力伝達ベルト7の内歯とはそれぞれ過不足なくかみ合っている。
【0016】
直流モータ用プーリ6の中心軸は直流モータ10に連結されている。従って、直流モータ10の回転は直流モータ用プーリ6を介してリールシャフト3に伝達される。
【0017】
直流モータ10は、フレーム1に少なくとも2点以上で固定されており、また直流モータ駆動部11を介してMPU(Micro Processing Unit)14に接続されている。直流モータ駆動部11はMPU14からの制御信号に基づいて直流モータ10の回転を制御する。
【0018】
図2は直流モータ駆動部11の回路図である。図2中の端子P1及び端子P2はMPU14から出力されるPWM(パルス幅変調)信号の入力端子であり、端子P1及び端子P2には、例えば、20kHzのPWM信号が入力される。端子P3及び端子P4は電流検出用の出力端子であり、端子P5及び端子P6は電圧検出用の出力端子であり、端子P1〜端子P6はそれぞれMPU14に接続されている。また、図2中の電圧Vbは直流モータ10に供給され、図2中の複数のトランジスタ及びFET等は、MPU14からのPWM信号により直流モータ10の回転を正転又は反転駆動させるためのものである。
【0019】
図2中の回路C1は、抵抗r1に流れる電流から直流モータ10に流れる電流iを検出する電流検出回路であり、PWM信号の影響による電流の変動を取り除くためのインターフェイス回路(以下、IFという)1及びIF2を備えている。MPU14は、IF1及びIF2からそれぞれ電圧信号を受信し、この電圧信号に基づいて直流モータ10に流れる電流iを検出する。
【0020】
回路C2は直流モータ10にかかる端子間電圧を測定する電圧測定回路である。MPU14は、IF3及びIF4からそれぞれ電圧信号を受信し、この電圧信号に基づいて直流モータ10にかかる端子間電圧を測定する。図3は直流モータ10にかかる脈流成分を含む端子間電圧の波形を示す図であり、(A)は乗員がシートベルトをゆっくり引き出した時に直流モータ10にかかる端子間電圧の波形を示し、(B)は乗員がシートベルトを早く引き出した時に直流モータ10にかかる端子間電圧の波形を示す。
【0021】
IF1及びIF2は、例えば抵抗r2、抵抗r2より小さい抵抗値の抵抗r3及びコンデンサc3からなるローパスフィルタ構成となっており、カットオフ周波数を、例えば、20Hzに設定している。これにより、電流検出回路C1でMPU14に出力されるPWM信号の影響は、−60dBに低減され、本来電流検出回路C1で検出しようとしている電流にほとんど影響を与えなくなる。
【0022】
図1に戻り、MPU14は、時間を計るタイマ15と、IF3及びIF4からの各電圧信号を所定時間毎にそれぞれサンプリングするA/Dコンバータ17とを備えており、シートベルトのタングがバックルに装着されたか否かを検出する及びシートベルトのタングがバックルから着脱されたか否かを検出するバックル接続有無検出部16にそれぞれ接続されている。
【0023】
バックル接続有無検出部16はシートベルトのタングがバックルに装着されたか否かを検出し又はシートベルトのタングがバックルから解除されたか否かを検出し、それに対応した制御信号をMPU14に出力する。
【0024】
図4は、MPU14が実行する制御プログラムの一例を示す図であり、この制御プログラムはMPU14が備えているメモリ(図示せず)に格納されている。尚、本制御プログラムはMPU14が実行するメイン制御プログラムの一部を成すものである。
【0025】
まず、シートベルトのタングがバックルに装着されたことをバックル接続有無検出部16により検出されたか否かを判別し(ステップS41)、バックル接続有無検出部16によりシートベルトのタングがバックルに装着されたことが検出された場合には、本制御を終了する一方、バックル接続有無検出部16によりシートベルトのタングがバックルに装着されたことが検出されていない場合には、直流モータ10の端子間電圧によりシートベルトが引き出されているか否かを判別する(ステップS42)。
【0026】
シートベルトが引き出されていない場合には、該判別を繰り返す一方、シートベルトが引き出されている場合には、直流モータ10の端子間電圧を測定し(ステップS43)、この端子間電圧から所定時間(例えば0.5s間)のシートベルトの引き出し量を算出する。
【0027】
以下、引き出されたシートベルトの長さを算出する方法の一例を説明する。
【0028】
図5は図1のMPU14が実行する演算処理を示すブロック図である。
【0029】
MPU14は、IF3及びIF4からの電圧信号より脈流成分のみを取り出すデジタルフィルタ処理21(ハイパスフィルタ)と、デジタルフィルタ処理21で取り出された脈流成分が所定電圧V0(例えば1V)以下の電圧から所定電圧V0を超えた回数をカウントするカウンタ処理22と、カウンタ処理22でカウントされたカウント値に基づいてシートベルトの引き出し量又は巻き取り量を算出する引き出し巻き取り量演算処理23と、IF3及びIF4からの電圧信号より脈流成分のみを取り除くデジタルフィルタ処理24(ローパスフィルタ)と、デジタルフィルタ処理24で脈流成分のみを取り除かれた電圧信号の極性から直流モータ10の回転方向がシートベルトの引き出し方向であるか又は巻き取り方向であるかを検出するモータ回転方向検出処理25とを行う。
【0030】
次に、シートベルトの引き出し量を算出する際の電動リトラクタ100の各部の動作を説明する。
【0031】
乗員によるシートベルトの引き出しがあると、リールシャフト3が回転し、リールシャフト用プーリ5、直流モータ用プーリ6及び動力伝達ベルト7を介して直流モータ10の回転軸が回転し、直流モータ10は起電力を発生する。これにより、A/Dコンバータ17はIF3及びIF4から入力される各電圧信号を所定時間毎にそれぞれサンプリングする。
【0032】
デジタルフィルタ処理21では、IF3の電圧信号からIF4の電圧信号を減算し、この減算された電圧信号にハイパスフィルタ処理を施し、脈流成分のみを取り出す。該取り出された脈流成分はカウンタ処理22に出力され、カウンタ処理22では脈流成分が所定電圧V0(例えば1V)以下から所定電圧V0を超えた回数をカウントし、カウント値に対応する信号を引き出し巻き取り量演算処理23に出力する。
【0033】
一方、デジタルフィルタ処理24では、IF3の電圧信号からIF4の電圧信号を減算し、この減算された電圧信号にローパスフィルタ処理を施し、脈流成分のみを取り除き、該取り除かれた後の電圧信号をモータ回転方向検出処理25に出力する。モータ回転方向検出処理25では、デジタルフィルタ処理24より入力された電圧信号の極性から直流モータ10の回転方向がシートベルトの引き出し方向であるか又は巻き取り方向であるかを検出し(ここでは、引き出し方向)、それに対応した信号を引き出し巻き取り量演算処理23に出力する。
【0034】
引き出し巻き取り量演算処理23では、カウンタ処理22より出力されたカウント値に所定値(例えば10cm/1カウント)を乗算し、この乗算結果とモータ回転方向検出処理25より出力された直流モータ10の回転方向に対応した信号とに基づいてシートベルトの引き出し量を算出する。尚、引き出されたシートベルトの長さを算出する方法は、これ以外であってもよい。
【0035】
図4に戻り、ステップS44で、0.5s間に引き出されたシートベルトの長さが算出されたため、シートベルトの引き出し速度vを算出し(ステップS45)、この算出されたシートベルトの引き出し速度vに応じて、シートベルトの引き出し停止後のウエイト時間t1を設定する(ステップS46)。尚、ウエイト時間t1は、具体的には以下のように設定する。
【0036】
【表1】
Figure 0004011749
このウエイト時間t1の設定は、一般的に身体能力の高い乗員の場合には、シートベルトの引き出し速度が速く、シートベルトの引き出し停止後、シートベルトの装着にかかる時間が短かいこと及び身体能力の低い乗員の場合には、シートベルトの引き出し速度が遅く、シートベルトの引き出し停止後、シートベルトの装着にかかる時間が長いことを考慮したものである。
【0037】
次に、直流モータ10に流れる電流iよりシートベルトの引き出しが停止しているか否かを判別し(ステップS47)、シートベルトの引き出しが停止していない場合には、ステップS43に戻る一方、シートベルトの引き出しが停止した場合には、シートベルトの引き出し停止からウエイト時間t1経過したか否かを判別する(ステップS48)。
【0038】
ウエイト時間t1経過した場合には、シートベルトをドアに挟まないようにするため、シートベルト格納制御を行い(ステップS49)、本制御を終了する。尚、シートベルト格納制御は公知であるため、その説明は省略する。
【0039】
ウエイト時間t1経過していない場合には、再びシートベルトのタングがバックルに装着されたことをバックル接続有無検出部16により検出されたか否かを判別し(ステップS50)、バックル接続有無検出部16によりシートベルトのタングがバックルに装着されたことが検出されない場合には、ステップS48に戻る一方、バックル接続有無検出部16によりシートベルトのタングがバックルに装着されたことが検出された場合には、本制御を終了する。
【0040】
上述したように、本実施の形態によれば、シートベルトの引き出し速度に応じて、シートベルトの引き出し停止後のウエイト時間t1が設定されるので(ステップS45、ステップS46)、身体能力の高い乗員が、シートベルト引き出し後早い時間で車外に出てドアを閉めても、シートベルトをドアに挟むことはなく、また、身体能力の低い乗員が、シートベルトを装着しようとするときにシートベルトが巻き取られてシートベルトの装着の邪魔をされることもなくなる。よって、快適なシートベルト装着環境を提供することができる。
【0041】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、請求項1の車両用乗員拘束保護装置によれば、シートベルトが非装着状態で、乗員によりシートベルトが引き出され、引き出し停止検出手段によりシートベルトの引き出し停止が検出されたときに、シートベルトの巻き取りを停止する所定時間が、引き出し速度検出手段により検出されたシートベルトの引き出し速度に応じて設定されるので、例えば、身体能力の高い乗員が、シートベルト引き出し後早い時間で車外に出てドアを閉めても、シートベルトをドアに挟むことはなく、また、身体能力の低い乗員が、シートベルトを装着しようとするときに、シートベルトが巻き取られてシートベルトの装着の邪魔をされることもなくなる。よって、快適なシートベルト装着環境を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用乗員拘束保護装置が備えている電動リトラクタ100の構成を示す図である。
【図2】直流モータ駆動部11の回路図である。
【図3】直流モータ10にかかる脈流成分を含む端子間電圧の波形を示す図である。
【図4】MPU14が実行する制御プログラムの一例を示す図である。
【図5】図1のMPU14が実行する演算処理を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 フレーム
2 シートベルトロック機構
3 リールシャフト
5 リールシャフト用プーリ
6 直流モータ用プーリ
7 動力伝達ベルト
10 直流モータ
11 直流モータ駆動部(引き出し速度検出手段、引き出し停止検出手段)
14 MPU(引き出し速度検出手段、引き出し停止検出手段、設定手段、停止手段)
16 バックル接続有無検出部(シートベルト装着状態検出手段)
100 電動リトラクタ

Claims (1)

  1. シートベルトが装着状態であるか否かを検出するシートベルト装着状態検出手段と、前記シートベルトの引き出し停止を検出する引き出し停止検出手段と、前記シートベルトが非装着状態で、乗員により前記シートベルトが引き出され、前記引き出し停止検出手段によりシートベルトの引き出し停止が検出されたときに、所定時間前記シートベルトの巻き取りを停止する停止手段とを備えた車両用乗員拘束保護装置において、
    前記シートベルトの引き出し速度を検出する引き出し速度検出手段と、前記所定時間を前記引き出し速度検出手段により検出されたシートベルトの引き出し速度に応じて設定する設定手段とを備えることを特徴とする車両用乗員拘束保護装置。
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