JP4010302B2 - 4−t−ブチルシクロヘキサノールの製造方法 - Google Patents

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本発明は、4−t−ブチルフェノ−ルを水素化し、シス異性体を多く含む4−t−ブチルシクロヘキサノ−ルを製造する方法に関する。
4−t−ブチルシクロヘキシルアセテ−トは、石鹸をはじめ化粧品などの香料として広く用いられており、トランス異性体よりもシス異性体の香りが好まれている。シス異性体を多く含む4−t−ブチルシクロヘキシルアセテ−トを効率良く製造するためには、その原料となる4−t−ブチルシクロヘキサノ−ルのシス異性体含有率が高い製造方法が望まれている。また、4−t−ブチルシクロヘキサノ−ルは、通常、4−t−ブチルフェノールを水素化して得られる。
特公昭42−13938号公報には、4−t−ブチルフェノ−ルを、ロジウム系触媒の存在下、接触還元する4−t−ブチルシクロヘキサノ−ルの製法が開示されている。
丸善石油技報(1971年p77)には、4−t−ブチルフェノ−ルを種々の8族〜10族の遷移金属の存在下で水素化する4−t−ブチルシクロヘキサノ−ルの製法が開示されている。
特開昭54−122253号公報には、ルテニウム−アルミナ触媒の存在下、アルキルフェノールを水素化してシス型のアルキルシクロヘキサノールを製造する方法が記載されている。
米国特許第2927127号公報には、4−t−ブチルフェノ−ルを水素化して、シス含有率の高い4−t−ブチルシクロヘキサノ−ルの製法が開示されている。
また特開平3−173842号公報には、4−t−ブチルフェノ−ルを、担体上に担持したRhと、HBF4等のフッ化ホウ素系の酸とを組み合わせた触媒の存在下に水素化する、4−t−ブチルシクロヘキサノ−ルの製法が開示されている。
特公昭42−13938号公報 特開昭54−122253号公報 米国特許第2927127号公報 特開平3−173842号公報 丸善石油技報(1971年p77)
しかしながら、これら従来技術において、例えば特公昭42−13938号公報、丸善石油技報(1971年p77)および特開昭54−122253号公報に記載の方法で得られる4−t−ブチルシクロヘキサノ−ルのシス含有率は未だ満足できるものではない。米国特許第2927127号公報の方法では、ロジウム触媒の存在下、エタノール溶媒中で高いシス含有率が達成されるが、高い水素圧力下で反応を行わなければならず、製造方法としては改良が望まれている。また、特開平3−173842号公報に記載の方法では、フッ化ホウ素系の酸を使用しており、フッ素やホウ素の回収に負荷がかかること、およびHF等の酸が発生することによる製造設備の腐食等が問題となる。
本発明の目的は、上記従来技術では達成されていない、穏和な条件でかつシス含量の多い4−t−ブチルシクロヘキサノ−ルを与える、4−t−ブチルシクロヘキサノ−ルの製造方法を提供するものである。
本発明者は、穏和な条件においても、シス選択率が高い4−t−ブチルシクロヘキサノ−ルを製造することが可能な方法について鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。すなわち本発明は、4−t−ブチルフェノ−ルをロジウム触媒および溶媒の存在下で水素化して4−t−ブチルシクロヘキサノールを製造する方法において、塩化水素または(無水)硫酸を共存させることを特徴とする4−t−ブチルシクロヘキサノ−ルの製造方法である。
本発明の方法は、4−t−ブチルフェノ−ルから香料原料として有用なシス異性体含量の多い4−t−ブチルシクロヘキサノ−ルを容易に製造できる。具体的には、4−t−ブチルシクロヘキサノ−ルを収率約90%以上でかつ、シス体のしめる割合を約80%以上で得ることができる。
本発明における水素化反応で用いられるロジウム触媒とは金属ロジウム、塩化ロジウム、酸化ロジウム等のロジウムの原子価が0〜6価の金属ロジウムまたはロジウム化合物である。また、金属ロジウムまたはロジウム化合物を活性炭、Si02、Al23等の担体上に担持した担持型触媒が好ましく用いられる。特に0価の金属ロジウムを活性炭担体上に担持したものがより好ましく用いられる。担持型触媒の場合、金属ロジウムの担体への担持率は通常1〜10重量%、好ましくは3〜5重量%である。反応終了後、反応液から濾過、傾瀉、遠心分離等により、使用したロジウム触媒を回収してもよい。回収したロジウム触媒を再使用してもよい。
ロジウム触媒の使用量は、通常、ロジウム金属に換算して、原料の4−t−ブチルフェノ−ルに対して約0.01〜1重量%である。また、担体に担持したロジウム触媒を用いる場合の使用量は、ロジウムの担持率にもよるが、担体を含んだ重量(乾燥重量)で、4−t−ブチルフェノ−ルに対して約0.1〜50重量%である。触媒の使用量が多いほどシス選択率は向上するが、反応終了後、触媒を回収する際の濾過工程の操作性とコストの点から、好ましくは、約0.5〜10重量%である。
反応溶媒は、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限はないが、常温(25℃)で液体状のものが取り扱いの点から好ましい。例えば、炭素数5〜10のアルカン類や、炭素数4〜10のエ−テル類、炭素数1〜6のアルコ−ル類等の化合物が挙げられる。具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の非環式アルカン類やシクロヘキサン等の環状アルカン類、ジエチルエーテル等の非環式エーテルやテトラハイドロフランやジオキサン等の環状エーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール等のアルコール類が挙げられる。これら化合物の中でもシクロヘキサン、イソプロパノ−ルが好ましく、イソプロパノ−ルがさらに好ましい。溶媒の使用量は4−t−ブチルフェノ−ルに対して、通常、約0.2〜20重量倍であり、好ましくは約0.4〜5重量倍である。
本発明の方法において、ロジウム触媒および溶媒と共に塩化水素または(無水)硫酸を共存させて反応を行う。塩化水素の添加方法は、塩化水素ガスの形で吹き込んでも、塩酸水溶液として添加しても良く、更には、系内で塩酸を発生させる方法、例えばAlCl3やTiCl4等と水を仕込む方法でもよい。また、例えば塩化ロジウムのような反応中で塩化水素を発生する触媒を用いる方法でもよい。(無水)硫酸の添加方法に関しても、塩化水素の場合と同様にSO3ガスを吹き込んでもよいし、または硫酸水溶液として添加してもよい。原料、ロジウム触媒、溶媒および、塩化水素または(無水)硫酸の添加順序には特に制限はない。
塩化水素または(無水)硫酸の使用量は、ロジウム触媒中のロジウム原子1molに対して約0.01〜100mol、好ましくは約0.05〜10mol、さらに好ましくは0.1〜10molである。
本発明の製造方法は、水素気流中または水素加圧下、いずれの条件下でも実施されうるが、反応速度の観点から水素加圧下で行う方が好ましい。水素加圧下で行う場合、反応容器は耐圧性のものが用いられる。水素加圧下で実施する場合、反応時の水素分圧は通常、約1.5×105pa以上であればよいが、反応速度およびシス選択率と製造設備の耐圧性の観点から、3×105〜2×106paが好ましく、5×105〜1.5×106paがより好ましい。
反応温度は反応速度とシス選択率の観点から約20℃以上が好ましく、またシス選択率の観点から100℃以下が好ましい。反応速度とシス選択率の観点から40℃〜80℃がより好ましい。
本反応は連続プロセスまたはバッチプロセスいずれのプロセスでもよい。反応の終点は、例えば、反応液を分析し、原料である4−t−ブチルフェノールの転化率が100%となった時点を反応終点とする方法や、水素圧力が低下しなくなったときを反応終点とする等の方法で決定することができる。
以下、本発明を実施例で詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
実施例1(参考)
4−t−ブチルフェノ−ル90g(0.60mol)と、5%Rh/C(活性炭担体上にロジウム金属を5重量%担持したもの、以下同様)を乾燥重量換算で1.35gと、イソプロパノ−ル180gと、36%塩酸0.18gをオ−トクレ−ブに仕込んだ後、系内を窒素置換(窒素を5×105paに圧入/排気の操作を3回実施)した。続いて系内を水素置換(水素を5×105paに圧入/排気の操作を3回実施)した後に、水素を1.1×106paまで圧入し、内温を60℃として1.75Hr撹拌した。オ−トクレ−ブを冷却し、系内を窒素置換(上記に同じ)した後、反応液を分析した結果、4−t−ブチルシクロヘキサノ−ルの収率は93.4%、シス/トランス比は89.9/10.1であった。
実施例2〜10(実施例2〜9は参考)
反応条件を変えた以外は実施例1と同様に4−t−ブチルシクロヘキサノ−ルの製造を行った。なお、実施例10の硫酸は98%品を用いた。結果を表1に示す。上記いずれの実施例でも、4−t−ブチルフェノールの転化率は100%であった。
比較例1〜3
Rh触媒を使用して、酸の無添加、リン酸(85%)および硝酸(61%)を用いた場合について、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。
比較例4〜5
Ru触媒(5%Ru/C)を用いて、実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。なお、比較例4において4−t−ブチルフェノ−ルの転化率は42.2%であった。それ以外の比較例において、4−t−ブチルフェノ−ルの転化率は100%であった。
Figure 0004010302

Claims (8)

  1. 4−t−ブチルフェノ−ルをロジウム触媒と溶媒の存在下、(無水)硫酸を共存させて水素化する、4−t−ブチルシクロヘキサノ−ルの製造方法。
  2. (無水)硫酸の量が、ロジウム触媒中のロジウム原子1molに対して0.05〜10molである請求項1に記載の方法。
  3. ロジウム触媒が金属ロジウムまたはロジウム化合物を担体上に担持してなる触媒である請求項1または2に記載の方法。
  4. ロジウム触媒の量(乾燥重量換算)が4−t−ブチルフェノ−ルに対して0.5〜10重量%である請求項3に記載の方法。
  5. 溶媒が、炭素数5〜10のアルカン類、炭素数4〜10のエーテル類および炭素数1〜6のアルコール類の内の少なくとも1つから選ばれたものである請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 溶媒がアルコール類である請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  7. 溶媒がイソプロパノ−ルである請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  8. 水素化反応を20〜100℃の温度で行う請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
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