JP4010188B2 - 塗膜の厚さ測定方法および測定装置と塗膜形成部材の製造方法 - Google Patents

塗膜の厚さ測定方法および測定装置と塗膜形成部材の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばプラズマディスプレイパネル、カラー液晶ディスプレイ用カラーフィルタ、光学フィルタ、プリント基板、集積回路、半導体等の製造分野に使用されるものであり、詳しくはガラス基板などの被塗膜形成表面に塗膜を形成する際に、非接触で膜厚を測定する方法および測定装置、ならびにこれらの装置および方法を使用した塗膜形成部材の製造方法、ならびにプラズマディスプレイパネルの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ディスプレイはその方式において次第に多様化してきているが、現在注目されているものの一つが、従来のブラウン管よりも大型で薄型軽量化が可能なプラズマディスプレイである。これは、ガラス基板に一定ピッチでストライプ状に一方向にのびる溝をもつ隔壁をガラス基板上に構成し、さらにこの隔壁の溝にR、G、Bの蛍光体を充填し、充填した任意の部位を紫外線により発光させ、所定のカラーパターンを写し出すものである。通常、隔壁のある方が背面板、発光させる部位を決める電極がある方が前面板と呼ばれており、両者を貼りあわせてプラズマディスプレイとして構成される。
【0003】
ここで重要な背面板上の隔壁パターンの形成方法としては、隔壁ペーストを均一に塗布して塗膜を形成し、乾燥後に、所定ピッチのストライプ状の溝を、サンドブラスト法やフォトリソグラフィー法等の後加工によって彫り込み、焼成することが主流である。隔壁の塗膜の厚さは、焼成後でも100〜200μmと厚く、この膜厚に千〜数万cpsの隔壁ペーストを均一に塗布する手段としては、スクリーン印刷法、ロール法やダイコート法等が使用されている。
【0004】
ダイコート法などで大量の背面板基板に隔壁膜の形成を連続して行う時には、最初に塗膜の膜厚分布を測定して塗膜形成条件の確認をするが、通常は乾燥後に塗膜の厚さ分布を測定するために、乾燥終了まで30分程度待たねばならない。したがって、生産性を向上させるためには、塗膜形成直後のウェット状態で膜厚分布を測定できるようにして、待機時間を大幅に削減させることが必要である。特開2000-197844号公報には、待機時間を大幅に削減するために、ガラス基板の載置台上からの高さを塗膜形成前とウェット塗膜形成直後に検出し、両者の差分により膜厚を算出する手段が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の塗膜形成直後に膜厚を算出する手段を隔壁用塗膜形成工程に適用すると、隔壁塗膜形成直後では塗膜がウェットの状態であるので、隔壁塗膜が形成された背面板表面の高さの検出はレーザなどの非接触の手段で行う必要がある。
【0006】
一方、隔壁塗膜形成前に高さを検出する背面板基板の表面には誘電体の層が形成されている。この誘電体層の表面には数μmの段差の凹凸がある。このように表面が凹凸形状であるとレーザ反射光の光軸が変動して検出が不安定になり、検出誤差を生じやすい。実際にレーザ反射光方式の検出器により高さを検出すると数μmの凹凸が数10μmに拡大されてしまう。
【0007】
また、背面板基板上に形成される隔壁塗膜厚分布の測定はμm単位で高精度に行う必要があるにも関わらず、単純に既存の方法で測定すると数10μm程度の誤差が生じ、正確に膜厚分布を測定できない。
【0008】
このように基板の表面が誘電体層のように凹凸形状をしているものでも、μm単位の高精度で安定して短時間に塗膜の膜厚分布を測定できる手段が望まれていた。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題に基づいて行ったもので、その目的とするところは、基板の表面が凹凸形状をなすものであっても、塗膜形成直後のウエットの膜厚分布を非接触で安定して高精度に測定する方法および測定装置、ならびにこれらの測定方法および測定装置を使用した塗膜形成部材の製造方法ならびにプラズマディスプレイ用部材の製造方法を提供することにある。
【0010】
すなわち、本発明の目的は以下に述べる手段によって達成される。
本発明の塗膜の厚さ測定方法は、基板表面と平行な方向における任意の位置Xでの塗膜形成前の基板表面の高さをHa(x)、塗膜形成後の基板表面の高さをHb(x)とし、その差から塗膜の厚さを求める塗膜の厚さ測定方法であって、位置Xから一定範囲内における少なくとも2箇所以上の塗膜形成前の基板表面の高さをレーザ反射光方式により非接触で測定して、平均処理した値をHam(x)、位置Xから一定範囲内における少なくとも2箇所以上の塗膜形成後の基板表面の高さをレーザ反射光方式により非接触で測定して、平均処理した値をHbm(x)としたとき、Ha(x)としてHam(x)を、Hb(x)としてHbm(x)を用いて塗膜の厚さを求めることを特徴とする。
【0011】
ここで前記平均値Ham(x)を求める区間の長さを、前記平均値Hbm(x)を求める区間の長さよりも長くすることが好ましい。
【0012】
本発明の塗膜の厚さ測定装置は、塗膜の形成前後における基板表面の高さをレーザ反射光方式で非接触で検出する高さ検出手段と、前記基板と高さ検出手段とを基板の表面と平行な方向に相対的に移動させる手段と、基板の表面と平行な方向における任意の位置Xにおけるその基板表面の塗膜形成前の高さHa(x)および塗膜形成後の高さHb(x)として、それぞれ位置Xから一定範囲内における少なくとも2箇所以上の塗膜形成前の基板表面の高さを前記高さ検出手段を用いて測定して、平均処理した値Ham(x)、位置Xから一定範囲内における少なくとも2箇所以上の塗膜形成後の基板表面の高ささを前記高さ検出手段を用いて測定して、平均処理した値Hbm(x)を記憶する手段と、(Hbm(x)−Ham(x))を演算する手段とを設けたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明のダイコータは前記した塗膜の厚さ測定装置を有することを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明による塗膜形成部材を製造する塗膜形成部材の製造方法は前記した塗膜の厚さ測定方法を用いることを特徴とする。塗膜形成部材はプラズマディスプレイ用部材であることが好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明のダイコータ1の概略正面図である。ダイコータ1は塗膜の厚さ測定装置2と、塗布部3と、基板50を移動させる基板移動装置4とから構成されており、全体コントローラ60によってそれぞれの動作が制御される。
【0016】
基板移動装置4では、架台40の上で基板50を載置する載置台41がナット状の連結部43を介してボールネジ42に連結されており、ACサーボモータ44の駆動によって載置台41は位置Aと位置Bの間を所定の速度で往復移動できる。
【0017】
塗布部3では、スリット状の塗出口から塗液を吐出するダイである塗布器30が、塗布器支持部31により支柱45に支持されており、また塗布器30は図示しない昇降手段によって自在に上下移動できる。
【0018】
この塗布器30と基板50の間に一定のクリアランスを設け、一定速度で基板50を位置Aから位置Bへ基板移動装置4で移動させる時に、図示しない供給装置より塗液を塗布器30に供給すると、塗布器30より塗液が基板50に向かって吐出され、基板50上に塗膜が形成される。
【0019】
塗膜の厚さ測定装置2は、被塗布部材の載置台41からの高さを検出する高さ検出器10と、高さ検出器10で検出した高さデータを収集して記憶するデータ収集器11と、高さデータを平均処理する平均処理器12と、平均処理したデータから膜厚分布を算出する膜厚算出器13とからなる。高さ検出器10は高さ検出器支持部材14を介して支柱45に固定されている。
【0020】
ここで、高さ検出器10による高さ検出開始、終了、データ収集器11へのデータの収集開始、終了など、厚さ測定装置2の動作は、基板移動装置4の載置台41の位置をリアルタイムで監視し、所定の位置に到着するタイミングで全体コントローラ60によって制御される。
【0021】
全体コントローラ60はまた、塗布部3の塗布器30の昇降、および塗液供給開始、終了の制御も行う。
【0022】
さて、高さ検出器10の検出方式としてはレーザ方式、静電容量方式、超音波式など非接触方式が好ましいが、特にレーザフォーカス式のものが非接触で外乱の影響を受けにくいので好ましい。レーザフォーカス式とは、レーザの反射光が通過する対物レンズを常時高速で往復動させておき、反射光をピンポイントで受光できる受光部で検知した時の対物レンズの位置より、対象物との距離を知る原理のものである。高さ検出器10からのデータの出力形式としては、デジタル信号形式、アナログ電圧信号形式、アナログ電流信号形式などがいずれでもよいが、アナログ形式が出力応答性が高く好ましい。レーザ方式による高さ検出器では、レーザを放射開始した直後はレーザの放射や検出回路が不安定であり、誤検出しやすい。誤検出を回避するために、レーザは常時放射すると共に、高さ検出データも常時出力しておき、必要な時にのみデータ収集器11で高さデータを取り込むことが好ましい。
【0023】
データ収集器11は、高さ検出器10で検出した高さデータを収集して記憶する機能があれば良いが、さらに外部からの信号により高さデータの収集開始、終了処理を行う機能と、高さデータの収集周期と回数をあらかじめ全体コントローラ60から自在に設定できる機能を備えていることが、より好ましい。
【0024】
平均処理器12はデータ収集器11に記憶された高さデータを取り出し、所定位置Xを含む前後の区間の高さデータから平均値を演算し、演算結果を所定位置Xの高さデータとして記憶する。
【0025】
平均処理する区間は、全体コントローラ60から塗布前と塗布後とで個別に平均処理器12に設定される。
【0026】
膜厚算出器13では平均処理器12で平均処理された塗布前後の高さデータを取り出し、その差を演算して膜厚を算出する。
【0027】
平均処理器12および膜厚算出器13は専用の単能機器であってもよいが、汎用性とコスト面からコンピュータで構成されることが好ましく、ノート型またはデスクトップ型のパソコンと汎用のソフトウェア言語によって作られた専用ソフトで駆動されるものであればさらに好ましい。このようにパソコンで構成した場合、データ収集器11はパソコンと簡便に接続できるものが好ましい。
【0028】
再び図1を見ると、本実施態様では、支柱45に塗布器30を含む塗布部3と塗膜の厚さ測定装置2を取り付ける構成にしているので、載置台41の移動ストロークが短くて済み、省スペース化が可能となる。また同じ載置台41に基板50を載置したまま塗布と測定を行うようにしているので、基板載置替えによる高さ変動が無く、高い精度で測定が行える。
【0029】
次に、本発明の塗膜の厚さ測定方法をダイコータ1に適用した場合について説明する。この塗膜の厚さ測定方法は(1)塗布前の基板表面高さ分布の測定、(2)塗布、(3)塗布後の基板表面高さ分布の測定、(4)塗布厚さ算出、の工程からなる。以下、順に説明する。
【0030】
(1)塗布前の基板表面高さ分布の測定
前工程で誘電体層が付与された基板50を載置台41上の所定の位置に載置し、図示しない吸着孔からの吸引力により載置台41に密着させておく。つぎにACサーボモータ44の駆動によりボールネジ42を回転させて、載置台41を図1の位置Aより所定速度で高さ検出器10の下を通過するようにして、位置Bまで移動させる。
【0031】
基板50が高さ検出器10の下を通過しているときに、高さ検出器10から出力される基板50表面の各位置における高さデータを、データ収集器11に収集記憶する。
【0032】
ついで平均処理器12はデータ収集器11に記憶された高さデータを、各位置ごとに定められた区間で平均処理した値に置換し、塗布前の高さ分布S1として記憶する。以上の処理の間に、載置台41は基板50を載置したまま位置Aに移動する。
【0033】
(2)塗布
まず図示しない昇降手段により塗布器30を下降させ、塗布器30の先端と基板50表面との間に一定の隙間を設ける。
【0034】
ついで、基板50が載置された載置台41を、図1の位置Aから位置Bに向かって一定速度で移動させる。
【0035】
基板50の塗布開始位置が塗布器30の下に到達した時に、塗布器30の吐出口から塗液を吐出して、基板50上に塗布を開始する。そして基板50の塗布終了位置が塗布器30の下に来たら、塗布器30からの塗液の吐出を停止するとともに塗布器30を上昇させる。そして載置台41が位置Bに到着したら、位置Aに移動して塗布工程は完了する。
【0036】
(3)塗布後の基板表面高さ分布の測定
前記(1)塗布前の基板表面高さ分布の測定の工程と同様に、次のように塗布後の基板表面高さ分布の測定を行う。
【0037】
載置台41上の基板50を、図1の位置Aより移動開始して所定速度で高さ検出器10の下を通過させ、位置Bまで移動させる。基板50が高さ検出器10の下を通過しているときに、基板50の表面高さデータをデータ収集器11に収集記憶する。
【0038】
ついで平均処理器12はデータ収集器11に記憶された高さデータを取り出し、各位置ごとに定められた区間で平均処理した値を塗布後の高さ分布S2として記憶する。
【0039】
(4)塗布厚さ算出
前記(1)塗布前の基板表面高さ分布の測定、(3)塗布後の基板表面高さ分布の測定、の工程で得たそれぞれの高さ分布S1とS2の差を膜厚算出器13で演算して塗膜の厚さ分布を得る。算出した塗膜の厚さ分布は、必要に応じて図示しない記憶器などに、例えば各基板に対応した膜厚分布として記憶する。
【0040】
次に以上の(1)塗布前の基板表面高さ分布の測定(3)塗布後の基板表面高さ分布の測定(4)塗布厚さ算出の工程における、「高さデータの収集」、「平均処理」、「塗布膜厚の算出」の方法についてより詳しく以下に説明する。
【0041】
「高さデータ収集」
まず検出器10から出力される高さデータのデータ収集器11による収集は次のようにして行う。
図1の載置台41を位置Aを原点として位置Bに移動させるとき、ACサーボモータに備えている図示しないエンコーダでは、その移動量を検知して全体コントローラ60に逐次送る。基板50の先頭が高さ検出器10の直下にくる時のエンコーダの移動量を予め全体コントローラ60に設定しているので、全体コントローラ60は基板50の先頭が高さ検出器10の直下に来たと判断したら、データ収集器11に到着信号を送る。データ収集器11は到着信号により高さデータの収集と記憶を開始する。
【0042】
データ収集周期f1は基板表面高さを検出するピッチp1と載置台41の移動速度v1とから、f1=v1/p1より与える。移動速度v1は1〜20m/minが望ましく、この範囲より小さいと生産タクトが長くなり、逆に大きくなるとその速度に達するまでの助走距離が長くなるために装置が大きくなってしまうという不都合がある。ピッチp1は0.1〜1mm程度であることが望ましく、これより短いとデータ処理に時間がかかったり記憶容量が膨大になってしまう。逆にこれより長いと測定間隔が大きすぎて正確な基板表面高さ分布を得ることができない。以上の移動速度v1とピッチp1の望ましい範囲より、データ収集周期f1は好ましくは10Hz〜4KHz、より好ましくは50Hz〜1KHzである。
【0043】
必要なデータ収集個数nは、基板50の長さLgと検出したいピッチp1とから、n=Lg/p1より与えられる。
【0044】
データ収集器11に取り込んだn個の塗布前の高さデータは、この基板位置Pti、i=1〜nに対応する高さデータHa(Pti)、i=1〜nとして記憶される。
【0045】
「平均処理」
図2は、本発明の平均処理を行わない場合の塗布前の基板表面の高さ分布図である。ここで、塗布前の基板表面が誘電体層が付与された状態の基板表面高さHa(Pti)を、そのまま基板位置Ptiに対してプロットした分布S1’を線で示している。分布S1’は数10μmの大きな凹凸となっているが、実際には破線で表すような滑らから分布であり、数μm程度の微細な凹凸が拡大されて誤差が大きくなっている。これは基板上の微細な凹凸によって、レーザ反射光の光軸が変動して正しく受光できていないためである。
【0046】
そこで平均処理器12では、基板位置Ptiの前後位置の高さデータを用いて平均処理し、基板位置Ptiでの高さ平均Ham(Pti)とする。
【0047】
平均個数は、基板位置Ptiより前方向の個数をj1、後方向の個数をj2とするので、基板位置Ptiも含めると平均個数m=j1+j2+1となる。そしてこのj1、j2、mをコントローラ60よりあらかじめ設定しておく。
【0048】
具体的に、高さ平均Ham(Pti)、i=1〜nを演算する方法は基板位置Ptiによって異なり、式(1)〜式(3)に示す通りとなる。
【0049】
前方向にj1個、後方向にj2個のデータがある基板位置Ptiの場合、すなわちj1<i≦n−j2の時は、式(1)により演算する。
【0050】
【式1】
Figure 0004010188
【0051】
前方向にj1個のデータがない基板位置Ptiの場合、すなわちi≦j1の時は、式(2)により存在する個数の高さデータより演算する。
【0052】
【式2】
Figure 0004010188
【0053】
この場合に前後の平均個数が同じになるようにj1=j2=iとしてもよい。
【0054】
後ろ方向にj2個のデータがない基板位置Ptiの場合、すなわちi>n−j2の時は、式(3)により存在する個数の高さデータより演算する。
【0055】
【式3】
Figure 0004010188
【0056】
この場合に前後の平均個数が同じになるようにj1=j2=n−iとしてもよい。
【0057】
以上のようにして平均処理を行って演算した高さ平均Ham(Pti)、i=1〜nを基板位置Ptiに対してプロットした分布S1を図3に示す。この分布S1は平均化処理により、誤差の拡大化が防止されていることがわかる。
【0058】
上記で説明した前後の平均個数j1,j2は5個から200個が好ましい。この範囲内であると適正な精度と時間にて平均処理が行える。
【0059】
塗布後も塗布前と同様にして、塗布前に基板表面高さを検出した同じ基板位置Pti、i=1〜nにおける塗布後の基板表面高さデータHb(Pti)、i=1〜nをデータ収集器11で収集して記憶する。
【0060】
データ収集器11に記憶された基板位置に対する塗布後の高さデータHb(Pti)をプロットして分布S2’としたものを図4に示す。分布S2’は実際には破線で示す数μm程度の微細な凹凸であるものが拡大されて実線で示す5μm程度の大きな凹凸となり、誤差が大きくなる。
【0061】
これも塗布前の基板表面ほどではないものの、塗膜上の僅かなな凹凸によってレーザの反射光の光軸が変動して正しく受光できていないためである。
【0062】
そこで塗布前と同様に平均処理器12で基板位置Ptiの位置の前後位置の高さデータを用いて平均処理し、基板位置Ptiでの高さ平均Hbm(Pti)とする。平均個数は基板位置Ptiより前方向の個数をj1、後方向の個数をj2、トータルの平均個数m=j1+j2+1とし、これをあらかじめコントローラ60により平均処理器12に設定しておく。具体的に高さ平均Hbm(Pti)、i=1〜nを得る平均処理方法は基板位置Ptiにより異なり、式(4)〜(6)に示す通りとなる。
【0063】
前方向にj1個、後方向にj2個のデータがある基板位置Ptiの場合、すなわちj1<i≦n−j2の時は、式(4)により演算する。
【0064】
【式4】
Figure 0004010188
【0065】
前方向にj1個のデータがない基板位置Ptiの場合、すなわちi≦j1の時は、式(5)により存在する個数の高さデータより演算する。
【0066】
【式5】
Figure 0004010188
【0067】
この場合に前後の平均個数が同じになるようにj1=j2=iとしてもよい。
【0068】
後ろ方向にj2個のデータがない基板位置Ptiの場合、すなわちi>n−j2の時は、式(6)により存在する個数の高さデータより演算する。
【0069】
【式6】
Figure 0004010188
【0070】
この場合に前後の平均個数が同じになるようにj1=j2=n−iとしてもよい。
【0071】
以上のようにして平均処理を行って演算した高さ平均Hbm(Pti)、i=1〜nを基板位置Ptiに対してプロットした高さ分布S2を図5に示す。この高さ分布S2より平均化処理により、誤差の拡大化が防止されていることがわかる。
【0072】
基板表面の高さの平均値を求める区間の長さは、前方向の個数j1、後方向の個数j2を変えることによって変わる。すなわち、j1,j2が大きくなれば区間の長さは長くなりj1,j2が小さくなれば区間の長さは短くなる。また、j1,j2は基板表面の状況によって変えてもよい。誘電体層などがある基板の表面などでは凹凸があると、高さデータは検知誤差により実際の凹凸より大きくなっているので、j1,j2の値は大きくし、平均個数を多くして実凹凸形状を得るようにする。このときのj1,j2の値はともに10〜100の範囲であることが好ましい。
【0073】
塗布後のウェット表面はあまり凹凸が無いので、j1,j2の回数は少なくして高速に実際の表面高さを得る。このときのj1,j2の値はともに1〜10の範囲であることが好ましい。また、これによって平均値を求める平均個数、すなわち区間長さは塗布後よりも塗布前の方を長くすることが好ましい。
【0074】
以上のように、基板表面の状態の異なる塗布前と塗布後とで個別に平均個数、すなわち平均値を求める区間長さを設定することで、過剰な平均処理による高さ分布の変形や処理時間の増加、または過小な平均処理により誤差が縮小されないと言った問題が解消される。
【0075】
「塗布膜厚の算出」
膜厚TH(Pti)の算出は、塗布前後の基板表面の高さ平均Hbm(Pti)、Ham(Pti)を用いて(式7)にて求める。
【0076】
【式7】
Figure 0004010188
【0077】
(式7)により算出した膜厚TH(Pti)、i=1〜nから得た膜厚分布S3を図6に示す。塗布前後の基板表面の高さを適正に平均処理をしているので、変動幅が小さく精度の高い膜厚分布が得られる。本発明による平均処理を行わないで算出した場合の膜厚分布S3’を図7の実線で示す。膜厚分布S3’は数10μmの変動幅を有しており、点線で示す真の膜厚分布と大きく異なる。
【0078】
以上説明した実施形態では載置台41を移動することによって高さ分布を得たが、高さ検出器10を移動させる方式であってもよい。さらに載置台41の移動方向の基板表面の高さ分布を測定する時は載置台41を移動し、載置台41の移動方向の直行方向、すなわち基板50の幅方向の基板表面の高さ分布を測定する時は、高さ検出器10を移動させる組み合わせであってもよい。
【0079】
以上説明した実施形態は、塗膜の厚さ測定装置2をダイコータ1に適用した例であるが、塗膜の厚さ測定装置2をロールコータやスクリーン印刷機に適用し、塗膜形成前後の高さから膜厚分布を得ることもできる。また、特に2次元的な測定にとどまらず、3次元的な測定に用いることもできる。
【0080】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて説明する。
幅340mm×440mm×厚さ2.8mmのソーダガラス基板上の全面に感光性銀ペーストを5μmの厚さにスクリーン印刷した後で、フォトマスクを用いて露光し、現像および焼成の各工程を経て、ピッチ220μmでストライプ状の1920本の銀電極を形成した。その電極上にガラスとバインダーからなるガラスペーストをスクリーン印刷した後に、焼成して10μm厚さの誘電体層を形成した。
【0081】
次に誘電体層を形成した基板を載置台に載せて10m/minの速度で移動させ、基板の先頭から終端部までの基板表面高さ分布を200Hz周期、すなわち0.83mmピッチで検出し、これをj1=j2=10に設定し平均個数21個で平均処理した結果を塗布前の基板表面の高さ分布S1として記憶した。
【0082】
次に図1の塗布器30として吐出幅430mm、リップ間隙(シム厚さ)500μmのダイを用い、ダイの下面とガラス基板上の誘電体層との隙間が350μmになるようにダイを下降させた後に、ガラス粉末と感光性有機成分からなる粘度20000cpsの感光性ガラスペーストを塗布厚さ300μmで塗布速度1m/分にて塗布し、隔壁層を形成した。
【0083】
塗布した直後に塗布基板を載せた載置台を10m/minの速度で移動させながら塗布面の高さ分布を200Hzの周期、すなわち0.83mmピッチで検出し、これをj1=j2=1とし、トータル平均個数3個で、平均処理した結果を塗布後の高さ分布S2として記憶した。
【0084】
ついで記憶させておいた塗布前後の高さ分布S1、S2との差分をとって膜厚分布を算出したところ、300±10μmとなり目標の300±5μmを大きく上回った。初期のガラスペーストの粘度が不安定であることが原因と推定されたので、ガラスペーストを10リットルだけダイから吐出して廃棄し、再度(1)塗布前の基板表面高さ分布の測定、(2)塗布、(3)塗布後の基板表面高さ分布の測定、(4)塗布厚さ算出、を3回繰り返した。その結果、3回とも塗布厚さが許容値300μm±5μmとなった。塗布厚さ分布が許容値内にあることを確認できたので、誘電体層を形成した基板に連続してガラスペーストを塗布し、ついで輻射ヒータを用いた乾燥炉で、100℃で20分間乾燥した。乾燥後の隔壁塗膜厚さ分布を基板全面にわたって塗布方向に測定したところ、140μm±3μmの許容範囲以下となった。ついで隣にあった電極間に隔壁が形成されるように設計されたフォトマスクを用いて隔壁層を形成した基板を露光し、現像と焼成を行ってストライプ状の隔壁を形成した。隔壁の形状はピッチ220μm、線幅30μm、高さ130μmであり、隔壁本数は1921本であった。この後、R、G、Bの蛍光体ペーストを順次スクリーン印刷によって塗布して、80℃15分で乾燥後、最後に460℃15分で焼成し、欠陥のないプラズマディスプレイの背面板を作成できた。得られたプラズマディスプレイ背面板の表面品位は申し分ないものであった。つぎにこのプラズマディスプレイ背面板と前面板を合わせ、封着後、Xe5%、Ne95%の混合ガスを封入し、駆動回路を接続して、プラズマディスプレイパネルを得た。
【0085】
なお、塗布後に膜厚分布を得るまでに要した時間は10秒であった。従来は輻射ヒータで乾燥して冷却した後に測定するので30分かかっており、ほぼ30分の時間短縮が行えた。
(比較例)
任意の位置の基板表面高さをその前後の位置での基板表面高さを用いて平均化処理せずそのまま使用して、塗布前後の基板表面高さ分布S1,S2を求めた他は、全く実施例と同じようにしてプラズマディスプレイ背面板を製作した。
【0086】
その結果、塗布方向の同一塗膜の厚さ分布パターンが塗布直後と乾燥後の測定で大きく異なったために、すべて乾燥後の塗膜の厚さ分布で塗布条件を確定するようにした。
【0087】
その結果、塗布直後の塗膜厚さ分布より塗布条件を確定した場合と比べて約30分のロスとなった。
【0088】
【発明の効果】
本発明は、塗布前後の基板表面の高さの差から塗膜厚さを求める時に、任意の位置での基板表面の高さを、任意の位置を含む区間での基板表面の高さの平均値で代表させるようにしたので、基板の表面に微細な凹凸形状を有するものであっても、高い精度で基板に形成される塗膜の厚さを導出することができる。
【0089】
また、基板表面高さの平均値を求める区間長さは、検出する対象の状況に合わせて塗布前の長さを塗布後より長くするようにしたので、より精度よくしかも効率的に膜厚を導出することができる。
【0090】
このように、本発明を用いれば、表面に凹凸形状を有する基板に塗布する場合でも、塗布直後に非接触で安定して精度良く膜厚を測定することができるので、従来のように後工程の乾燥後に膜厚を測定する方法に比べて大幅に塗布前の条件出し時間を短縮し、それにより塗布運転時間が増加することで生産性を向上させることができる。
【0091】
以上の優れた効果を有する塗膜の厚さ測定方法および装置を用いてプラズマディスプレイ用部材を製造するのであるから、高品質のプラズマディスプレイ用部材を高い生産性で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る膜厚測定装置を有するダイコータの概略正面図である。
【図2】本発明の平均処理を行わない場合の塗布前の基板表面の高さ分布図である。
【図3】本発明の平均処理を行った場合の塗布前の基板表面の高さ分布図である。
【図4】本発明の平均処理を行わない場合の塗布後の基板表面の高さ分布図である。
【図5】本発明の平均処理を行った場合の塗布後の基板表面の高さ分布図である。
【図6】本発明の平均処理を行った場合の膜厚分布図である。
【図7】本発明の平均処理を行わない場合の膜厚分布図である。
【符号の説明】
1:ダイコータ
2:塗膜の厚さ測定装置
3:塗布装置
4:基板移動装置
10:高さ検出器
11:データ収集器
12:平均処理器
13:膜厚算出器
14:高さ検出器支持部
30:塗布器
31:塗布器支持部
40:架台
41:載置台
42:ボールネジ
43:連結部
44:ACサーボモータ
45:支持台
50:基板
60:全体コントローラ

Claims (6)

  1. 基板表面と平行な方向における任意の位置Xでの塗膜形成前の基板表面の高さをHa(x)、塗膜形成後の基板表面の高さをHb(x)とし、その差から塗膜の厚さを求める塗膜の厚さ測定方法であって、位置Xから一定範囲内における少なくとも2箇所以上の塗膜形成前の基板表面の高さをレーザ反射光方式により非接触で測定して、平均処理した値をHam(x)、位置Xから一定範囲内における少なくとも2箇所以上の塗膜形成後の基板表面の高さをレーザ反射光方式により非接触で測定して、平均処理した値をHbm(x)としたとき、Ha(x)としてHam(x)を、Hb(x)としてHbm(x)を用いて塗膜の厚さを求めることを特徴とする塗膜の厚さ測定方法。
  2. Ham(x)を求める範囲を、Hbm(x)を求める区間の範囲よりも広くすることを特徴とする請求項1に記載の塗膜の厚さ測定方法。
  3. 塗膜の形成前後における基板表面の高さをレーザ反射光方式で非接触で検出する高さ検出手段と、前記基板と高さ検出手段とを基板の表面と平行な方向に相対的に移動させる手段と、基板の表面と平行な方向における任意の位置Xにおけるその基板表面の塗膜形成前の高さHa(x)および塗膜形成後の高さHb(x)として、それぞれ位置Xから一定範囲内における少なくとも2箇所以上の塗膜形成前の基板表面の高さを前記高さ検出手段を用いて測定して、平均処理した値Ham(x)、位置Xから一定範囲内における少なくとも2箇所以上の塗膜形成後の基板表面の高さを前記高さ検出手段を用いて測定して、平均処理した値Hbm(x)を記憶する手段と、(Hbm(x)−Ham(x))を演算する手段とを設けたことを特徴とする塗膜の厚さ測定装置。
  4. 請求項3に記載の装置を有することを特徴とするダイコータ。
  5. 請求項1または2の方法を用いて塗膜形成部材を製造する塗膜形成部材の製造方法。
  6. 塗膜形成部材がプラズマディスプレイ用部材であることを特徴とする請求項5に記載の塗膜形成部材の製造方法。
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