JP4008052B2 - ナット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工具係合のための多角形体のような駆動部分と、部材に接触する接触範囲と、該接触範囲とは反対の側において駆動部分に一体成形されていて長手方向にスロットを備えたスリーブ状のクランプ範囲とを有するナットであって、周方向においてクランプ範囲のスロットの間にクランプ舌片が配置されており、スロットとクランプ舌片とを備えたクランプ範囲及び駆動部分が、冷間加圧塑性変形及び/又は熱間加圧塑性変形のような中実変形によって形成されており、ナットの雌ねじ山が駆動部分に沿って、一定の直径をもって延びている部分と、クランプ範囲の軸方向長さの少なくとも一部にわたって駆動部分からの間隔増大に連れて減少する直径をもって延びている部分とを備えている形式のものに関する。
【0002】
【従来の技術】
このように構成されたナットは、ドイツ連邦共和国特許出願公開第4307090号明細書に記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式のナットの機能を改善し、かつプレロードが完全に失われた後でも、ナットがねじ込まれた状態から自然に回動して弛緩することを、度重なる使用の後でも確実に回避することができるナットを提供することである。本発明ではさらに、わずかに可能なばらつきをもって、均一なクランプモーメントの生ぜしめられることが望まれている。
【0004】
本発明ではさらにまた、高さの差異、直径公差及び角度公差によるクランプモーメントのばらつきに対する不都合な影響を、回避すること又は少なくとも減じることが望まれている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために本発明の構成では、冒頭に述べた形式のナットにおいて、クランプ範囲の軸方向長さの少なくとも部分範囲にわたって、クランプ舌片の壁厚、つまり半径方向長さもしくは横断面が、駆動部分からの間隔増大に連れて減少するようになっている。
【0006】
【発明の効果】
これによって個々のクランプ舌片の内部において、改善された緊張分布が得られ、この改善された緊張分布によって、ナットと、該ナットと共働するボルトとの間のよりバランスされた面圧がねじ山全長にわたって得られ、これによって例えばねじ山同士の「食いつき」を回避することができる。
【0007】
このようにフレキシブルに構成されたクランプ舌片によって、プレロードがなくなった後や度重なる締付け及び弛緩の後でも、クランプモーメントの損失を小さくすることができる。さらにこの場合クランプモーメントは、側面直径誤差内における種々様々なボルト側面直径によっても、ほとんど不都合な影響を受けない。クランプ舌片の種々様々な構成によって、等しいねじ山直径内において種々様々なクランプモーメントを選択することができる。
【0008】
本発明によるナットの特に有利な構成では、クランプ舌片の壁厚が連続的に減少している。
【0009】
特定の使用例のためには、壁厚が、直線的に、軸方向長さの部分範囲にわたって減少するようになっていると有利であるが、壁厚が、非直線的に、軸方向長さの部分範囲にわたって減少するようになっていると有利なこともある。
【0010】
本発明によるナットの特に有利な構成では、クランプ舌片の内面及び/又は外面が、その軸方向長さの部分範囲にわたって湾曲部を有している。
【0011】
本発明によるナットの別の有利な構成では、クランプ舌片の内面及び/又は外面が、その軸方向長さの部分範囲にわたって、ナット軸線に対して傾斜した傾斜部を有している。
【0012】
本発明によるナットの別の構成では、クランプ舌片の内面及び外面の湾曲部及び/又は傾斜部が、互いに異なった軸方向位置において始まっている。
【0013】
本発明の別の構成ではナットが次のように、すなわちクランプ舌片の外面が、ナット軸線に対して同心的な円形とは異なった形状によって形成されているように、構成されており、この場合クランプ舌片の中央部における壁厚が、スロットに隣接する端部における壁厚よりも大きいと、又は特定の構成においては小さいと有利である。
【0014】
本発明のさらに別の構成では、スロットがその半径方向長さの少なくとも一部分にわたって、半径方向内側に向かって拡大している。クランプ範囲においてスロットがこのように構成されていると、スロットによって中断されるねじ山の範囲における鋭角的な縁部を回避することができ、この結果ねじの締め込み及び弛緩時における切削作用によるチップの形成を、確実に回避することができる。ナットのクランプ舌片におけるねじ山及びボルトのねじ山における摩耗をこのように減少又は回避することによって、食いつきのおそれを十分に減少することができ、しかもクランプモーメントの損失を著しく減じることができる。大きなねじ山側面範囲への摩擦の分布及びクランプ舌片の内部におけるねじ山の大きな数によって、局部的な負荷を減じることが可能である。
【0015】
このようなナットにおいては、クランプ舌片がスロットに隣接した端部において半径方向内側に、傾斜部を有していると有利である。
【0016】
本発明の別の有利な構成では、スロットの拡大部が、スロットに隣接した端部におけるクランプ舌片の丸み部によって形成されている。
【0017】
この場合一般的には、スロットの拡大部が、ねじ山の半径方向外側において始まっている。
【0018】
本発明のさらに別の有利な構成では、スロット底部が少なくとも部分的に、ナット軸線に対して直角に延びているのではなく、ナット軸線に対して垂直な平面との間に角度を成しており、この場合スロット底部が半径方向内側に向かって傾けられて構成されていると、有利である。
【0019】
本発明の別の構成では、相応に構成されたナットにおいて、雌ねじ山の少なくとも一部分のピッチが規格のピッチから偏位している。すなわち雌ねじ山の少なくとも一部分のピッチが、該当する許容誤差領域の最大許容寸法及び最小許容寸法からの等差値として生ぜしめられる、規格ピッチの平均値とは、異なっている。この場合例えば使用例に依存して、ピッチが規格のピッチよりも小さいと有利な場合も、ピッチが規格のピッチよりも大きいと有利な場合もある。
【0020】
このようなナットの有利な構成では、規格のピッチから偏位したピッチへの移行が徐々に行われている。
【0021】
一般的には、偏位したピッチが、クランプ範囲の少なくとも部分範囲にわたって延在していると有利である。
【0022】
本発明によるナットでは使用範囲に応じて、部材に接触する範囲が平らに構成されていると有利な場合、部材に接触する範囲が半径方向内側において、半径方向外側におけるよりも駆動部分からさらに離れていると有利な場合、又は部材に接触する範囲が半径方向外側において、半径方向内側におけるよりも駆動部分からさらに離れていると有利な場合とがある。この場合本発明の有利な構成では、接触範囲が球欠状に構成されているか、接触範囲が円錐形に構成されているか、又は別の形状の構成を有している。
【0023】
本発明の有利な構成では、駆動部分の内部におけるねじ山範囲とクランプ範囲の内部におけるねじ山範囲とが、中実変形の後で例えばねじ切りのような切削加工によって形成されている。
【0024】
本発明の別の有利な構成では、すべてのねじ山範囲、つまり駆動部分の内部におけるねじ山範囲とクランプ範囲の内部におけるねじ山範囲とが、ねじ山転造、ねじ山成形、ねじ山転圧又はこれに類した加工方法によって、非切削加工で形成されている。
【0025】
本発明のように構成されたナットでは、ねじ山がNC制御式の旋盤において製造されていると有利である。ナットの接触範囲における加工と、円筒範囲及び円錐範囲におけるねじ山の加工とを緊定状態において同時に行うことによって、ねじ山全体とナットの接触範囲とを互いに正確に垂直に形成することができる。本発明によるナットの特に有利な構成では、一定の直径を有するねじ山範囲と減少する直径を有するねじ山範囲との間の移行範囲に、ほぼ周方向に延びる溝が設けられている。このような溝が設けられていると、不都合なチップ形成を回避することができるのみならず、この範囲におけるナットの弾性度を所望のように高めることができる。本発明のさらに別の有利な構成では、押圧皿が駆動部分に一体に成形されている。また別の使用例においては、押圧皿が駆動部分に嵌められていると有利な場合もあり、この場合押圧皿は、該押圧皿が駆動部分に相対回動可能に保持されるように、駆動部分に嵌められていると有利である。本発明によるナットの別の有利な構成では、押圧皿が中実変形部品である。
【0026】
本発明のように製造されたナットの別の構成では、押圧皿の接触範囲が凹面状に構成されており、この場合有利には、押圧皿の横断面、半径方向長さ、曲率、つまり凹面状もしくは円錐状の範囲の軸方向高さ、及び材料が、ナットの引き締め時に、度重なる負荷及び負荷軽減の後でも、押圧皿の実質的な弾性変形を生ぜしめるように、選択されている。このような構成によって生ぜしめられるばね力によって、規定された使用例においては、緊定される部分のセット時にプレロードもしくは緊張を補償することができ、かつボルトとナット接触面及び固定対象物との間における、直角からの角度のずれを部分的に補償することができる。この結果、より良好な接触と面圧のより均一な分布とが得られる。さらに、有利には軸方向におけるばね弾性距離の比較的大きな範囲にわたって変わらないプレロードが存在していることによって、ねじ結合部が完全に弛緩することは、確実かつ十分に回避可能である。それというのは、比較的大きな弛緩回動距離にわたって、軸方向における緊張力によって生ぜしめられる摩擦モーメントが保たれるからである。
【0027】
本発明の別の有利な構成では、ナットの接触範囲と、押圧皿の、ナットに向けられた面とが、ナットの中心軸線から離れるように延びる脚を備えた角度を成している。この場合例えばプレロード条件に関しては、ナットの接触範囲と押圧皿との間の角度が、押圧皿の凹面状に構成された接触範囲と、押圧皿の、ナットとは反対側の軸方向制限部に接触可能な平面との間の角度よりも大きいと、特に有利である。
【0028】
【発明の実施の形態】
次に図面につき本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
図1に示されたナットは主として、軸方向において区別される3つの区分、つまり押圧皿1と駆動部分2とクランプ範囲3とから成っている。図1に示されたこの実施例では、これら3つのすべての軸方向区分は、つまりナット全体は一体に製造されている。押圧皿1はその下側における接触面4が平らに構成されているに対して、押圧皿1の、軸方向で見て接触面4とは反対側に位置する壁5は、円錐形に延びており、この場合円錐形の先端は接触面4から離れる方向に向けられている。
【0030】
駆動部分2は、半径方向外側に規則的な変形部6を有しており、これらの変形部6は多角形部を形成していて、工具の係合のために設けられている。この多角形成形部の外径は、ナットの押圧皿1の範囲における外径よりも小さい。
【0031】
多角形部6を有する駆動部分2には、軸方向において、スリーブ状のクランプ範囲3が接続しており、このクランプ範囲3はその外周部を、円錐形に延びている外周面7によって制限されていて、この外周面7の円錐形の先端は、同様に押圧皿1の接触面4とは反対の方向に延びている。さらにクランプ範囲3は、全周にわたって分配配置された複数のスロットもしくは軸方向に延びる切欠き8を有しており、これらのスロットもしくは切欠き8は、駆動部分2の半径方向の制限面9に至るまで軸方向に延びている。
【0032】
ナットはその内径部の範囲に、構成の異なった2つのねじ山領域を備えており、この2つの領域は箇所10のところを境にしている。第1のねじ山領域11は、例えばセンタリング付加部のようなねじ山のない短い領域の後ろで、軸方向において、押圧皿1の範囲から、多角形部6を有する駆動部分範囲を介して、クランプ範囲3の長さの一部にまで延びている。ねじ山領域11は、その軸方向長さの範囲全体にわたって円筒形に延びていて、箇所10のところでねじ山領域12に移行しており、この第2のねじ山領域12は、後でクランプ力を形成するために、軸線方向から傾けられているか又は曲げられており、そして次のような経過、すなわち接触面4に対する間隔が大きくなるに連れてねじ山直径が小さくなるような経過を、有している。
【0033】
ここに示された移行範囲である箇所10、つまり円筒形のねじ山領域11と非円筒形のねじ山領域12とが衝突する移行範囲10には、溝が配置されていてもよく、この溝は、図1における線10に相応してほぼ周方向に延びていて、アンダカットのように、例えばねじ山高さよりも深く構成されている。このような溝を設けることによって、例えばチップの形成を回避することができる。さらにこれによって、この範囲におけるナットの抵抗モーメントを所望のように減じることができ、かつクランプ範囲の半径方向運動を、最適化されたばね弾性条件下で得ることができる。
【0034】
このねじ山領域12は図示されたナットでは、スロット8が形成されてクランプ範囲が構成された後では、後からの変形なしに、円筒形状から図示された円錐形状に製造されている。すなわち、ねじ山は円筒形にではなく、円筒形とは異なった形状に形成される。
【0035】
図2に示されたナットは、図1との関連において記載されたのと同じ構造上の特徴を有しており、つまり図1に示された実施例と同じ方法で製造されている。しかしながら図2に示されたナットはその特殊性として、別個に製造された押圧皿1aを有しており、この押圧皿1aは、接触面とは反対の側でその内径部の範囲において、駆動部分の範囲から軸方向に接触面に向かって延びている成形部2aによって保持されている。この変化実施例では、押圧皿を、ナットとは別の材料、例えばナットとは別のばね弾性特性を有する材料から製造することが可能である。さらに、押圧皿をその使用分野に応じて、周方向においてナットに対して堅く保持することも又はナットに対して回動可能に保持することも可能である。残りの特徴、特に例えばクランプ範囲の軸方向に延びるスロット及び雌ねじ山範囲の構成は、図1において記載されたことと同一である。
【0036】
図3には、押圧皿が一体成形されたナットが示されている。このナットの特殊性は、押圧皿がその接触範囲において凹面状に成形されていることである。凹面状に成形されているというのは、極めて一般的に、内方に向かって押圧皿内に延びる凹設部が設けられているということである。この場合この凹設部の形状つまり接触面4aの経過は、任意に選択可能である。例えばこの接触面は、その内径と外径との間の経過が直線として構成されていてもよいし、又は異なった湾曲方向並びに曲率半径及び曲率経過を有していてもよい。すなわち、ナットが引き締められて押圧皿の外径部と接触した場合に、押圧皿の接触面全体が接触するまでには、なおある程度の軸方向間隔が克服されねばならないということである。このようになっていることによって、ナットをさらに引き締めた後で押圧皿は緊張させられ、そしてこの弾性的なばね作用によって、たとえ緊定された部材の高さ変化(ずれ)が生じた場合でも、緊定力の小さな変動しか生ぜしめない。この場合押圧皿が、その横断面にわたって実質的に一定の緊張経過を有するように構成されていると、有利である。このように凹面状に構成された接触面はまた、例えば図2との関連において記載された別個の押圧皿に形成することも可能である。
【0037】
さらに、図2に概略的に示されているように、ナット本体と押圧皿1aとの間に角度13が存在していてもよい。この場合この角度13は、図3に示された押圧皿の接触面4aと対応接触平面との間の角度14に、合わせられていてもよく、この結果この角度13は規定の使用例のためにはさらに大きく構成されていてもよい。
【0038】
図4に示されたナットは、図1〜図3に示された実施例との関連において上に述べたのと同様な構造的な特徴を有しており、つまり同様な方法によって製造されている。しかしながらこのナットは押圧皿を有しておらず、この結果駆動部分2は軸方向において、下側面である接触面4にまで、つまり部材に接触する範囲にまでさらに延びている。図示の実施例ではクランプ範囲3は同様に、スロット8とクランプ舌片15とによって形成されている。この実施例ではクランプ舌片15は次のように構成されている。すなわちこの場合クランプ舌片15の壁厚はその自由端部において、駆動部分2に向けられた端部におけるよりも薄く構成されている。このことは図示の実施例では次のことによって達成されている。すなわちこの場合、外周面7と雌ねじ山12を備えた内周面とは互いに平行に延びているのではなく、外周面7と内周面との間には角度が形成されていて、この角度をもつ円錐の先端は、接触面もしくは下側面4から離れる方向に向けられている。さらに図4の上半部に示された断面図から分かるように、スロット底部16は接触面もしくは下側面4に対して平行に、つまりナット軸線に対して垂直に延びているのではなく、少なくとも部分的にナット軸線に対して角度をなして傾けられており、この場合この角度をもつ円錐の先端は下側面4に向かって方向付けられている。図示の形状とは異なり、スロット底部16は湾曲した経過を有していてもよい。さらに図4の断面図から分かるように、クランプ範囲3の傾けられた外周面7は、傾けられて構成された雌ねじ山12よりも、下側面4に対して小さな間隔をおいて始まっており、この結果円筒形の雌ねじ山11は少なくとも部分的に軸方向においてクランプ範囲3に突入している。つまり両ねじ山領域11と12との間における移行部10は、スロット底部16もしくは該スロット底部の、下側面4から最も間隔をおいた縁部よりも、下側面4に対して大きな間隔を有している。
【0039】
クランプ舌片15がこのように壁厚を減じられている、もしくは先細に構成されていることによって、クランプ範囲3の内部もしくはクランプ舌片15の内部における緊張分布に影響を与えることができる。これによって例えば、クランプ舌片15はその軸線方向に沿って、少なくともほぼ一定の緊張経過を有することができる。
【0040】
図4の下側部分に示されているように、クランプ舌片15の、周方向に向けられた端部17は、少なくとも、その全半径方向長さにわたって平行に延びているのではなく、スロット8が半径方向内側に向かって拡大している。言い換えれば、スロット8の周方向における長さは、半径方向外側において、半径方向内側におけるよりも小さい。このことは例えば次のことによって達成することができる。すなわちこの場合クランプ舌片15は、側面もしくは端部17から内面19へのなだらかな移行部を生ぜしめる傾斜部もしくは丸み部18を有している。これらの進入傾斜部もしくは丸み部18は、その都度の要求に応じて種々異なった傾斜角度及び/又は丸み半径を有しており、このような傾斜角度や丸み半径は、本願発明による中実変形法によって簡単に製作することができる。このようなクランプナットのための材料としては、例えば750〜1150N/mm2の材料強さを有する鋼が適している。スロット8及びクランプ舌片15の図示された実施例は、もちろん、図1〜図3に示されたナットに対しても使用することができる。
【0041】
図5に示されたナットは、凸面状の下側面もしくは接触面4bを備えた一体に成形された押圧皿1を示しており、この凸面状の接触範囲もしくは下側面4bは図示の実施例では球欠体として構成されている。しかしながらこの下側面4bは、その都度の使用例に合わせて、円錐形に構成されていても又はその他の形状を有していてもよい。クランプ範囲3の構成及びナット全体の製作は、図1〜図4に示された実施例にほぼ相当しており、この場合図5の下側部分から分かるように、この実施例ではクランプ舌片15の傾斜部18は、ほぼ接線方向で内面19に進入するように構成されている。この傾斜部又は丸み部18は、図示の実施例とは異なり、その全半径方向長さにわたってつまりクランプ舌片15の全壁厚にわたって延在していてもよい。クランプ舌片15の数はもちろん、図示された4つのクランプ舌片15に制限されるものではなく、例えば決定されたクランプモーメントを得るために、自由に選択可能である。
【0042】
図6に示されたナットでは、クランプ舌片15の壁厚は、周方向で見て一定ではない。図面から分かるようにこの場合クランプ舌片15の壁厚は、スロット8に隣接している範囲において、クランプ舌片15の中央部20におけるよりも幾分低下している。このことは図示の実施例では、次のことによって達成されている。すなわちこの場合クランプ舌片15の外輪郭もしくは外周面7は、ナット軸線に対して同心的に配置された円の円形に相当しないように、構成されている。このような実施例もまた、中実変形法によって問題なくかつ安価に製造することができる。
【0043】
図7には、本発明によるナットの一部がクランプ舌片15と共に斜視図で示されており、このクランプ舌片15の壁厚はスロット底部16を起点として、駆動部分2から離れるに連れて、減じられている。この実施例では雌ねじ山12を備えた内面は直線的に延びているが、しかしながらナット軸線に対して角度をもって傾けられており、これに対してクランプ舌片15の外周面は湾曲部を有しており、この湾曲部は、例えば放物線状に成形されている。雌ねじ山12を備えた内面及び外周面7の湾曲部及び傾斜部を種々様々に組み合わせることによって、クランプ舌片15における種々様々な緊張分布を達成することができる。ねじ山領域11と12との間における移行部10は、図示の実施例ではスロット底部16の高さに位置しているが、この移行部10は、さらに上に向かってクランプ舌片15内にシフトされていてもよいし、さらに下に向かって駆動部分2の範囲内にシフトされていてもよい。すなわち円筒形からのねじ山領域12の偏位及び外周面7の偏位は、ナットの種々異なった軸方向高さにおいて始まることができる。さらに図7には単に例として外周面7と内周面(第2のねじ山領域)12との対応関係が示されているだけであり、外周面7及び内周面12の構成つまり湾曲部及び/又は傾斜部相互の対応関係は、単に例を示しているにすぎない。図7の下側に示された原理図では、ナット軸線が一点鎖線21で示されている。
【0044】
図8には、互いに螺合しているボルト22とナットとが断面図で示されており、この場合ナットの中心軸線はやはり符号21で示されており、ナットのクランプ舌片15と駆動部分2とが断面図で示されている。この場合ナットのねじ山ピッチは、ボルト22のねじ山ピッチよりも小さく構成されており、この結果ナットのピッチは図示の場合では、ボルト22がDINの規格に基づくピッチを有していると考えられるので、DINの規格に基づくピッチを下回っている。このことは、ボルト22の規定数のねじ山に対する距離23が、ナットのクランプ舌片15における同数のねじ山12に対する距離24よりも大きいことから明らかである。この両方の距離23及び24から距離の差25が生じ、この距離の差25をねじ山の数で割ることによって、「ピッチ誤差」の大きさが、つまり規格からのナットねじ山のピッチの偏位が分かる。図示の実施例では、ナットのピッチがボルト22のピッチよりも小さく構成されているが、しかしながら別の場合のためには、ナットねじ山のピッチをボルト22のねじ山のピッチよりも大きく選択することが有利なこともある。このような「ピッチ誤差」によって付加的なクランプ力を生ぜしめることができる。さらにまた、ねじ山のピッチを全長にわたって一定にするのではなく、徐々に変化させることも可能である。
【0045】
本発明は図示及び記載の実施例に限定されるものではなく、本発明の思想を逸脱することのない範囲において、種々様々な実施の形態が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】一体成形された押圧皿を備えたナットを示す図である。
【図2】嵌められた押圧皿を備えたナットを示す図である。
【図3】凹面状に構成された接触範囲を有する一体成形された押圧皿を備えたナットを示す図である。
【図4】本発明によるナットの別の実施例を示す図である。
【図5】本発明によるナットのさらに別の実施例を示す図である。
【図6】本発明によるナットのさらに別の実施例を示す図である。
【図7】クランプ舌片の構成を示す斜視図及び概略図である。
【図8】互いに異なったピッチを有するボルトとナットとの螺合部を示す概略図である。
【符号の説明】
1,1a 押圧皿、 2 駆動部分、 2a 成形部、 3 クランプ範囲、4,4a,4b 接触面、 5 壁、 6 多角形部、 7 外周面、 8 切欠きもしくはスロット、 9 制限面 、10 箇所(移行部)、 11 ねじ山領域、 12 ねじ山領域、 15 クランプ舌片、 16 スロット底部、 17 端部、 18 丸み部、 19 内面、 20 中央部 21 ナットの中心軸線、 22 ボルト、 23,24 距離、 25 差
Claims (36)
- 工具係合のための多角形体のような駆動部分と、部材に接触する接触範囲と、該接触範囲とは反対の側において駆動部分に一体成形されていて長手方向にスロットを備えたスリーブ状のクランプ範囲とを有するナットであって、周方向においてクランプ範囲のスロットの間にクランプ舌片が配置されており、スロットとクランプ舌片とを備えたクランプ範囲及び駆動部分が、冷間加圧塑性変形及び/又は熱間加圧塑性変形のような中実変形によって形成されており、ナットの雌ねじ山が駆動部分に沿って、一定の直径をもって延びている部分と、クランプ範囲の軸方向長さの少なくとも一部にわたって駆動部分からの間隔増大に連れて減少する直径をもって延びている部分とを備えている形式のものにおいて、スロット底部が少なくとも部分的に、ナット軸線に対して直角とは異なった角度で内側に延びていることを特徴とするナット。
- 工具係合のための多角形体のような駆動部分と、部材に接触する接触範囲と、該接触範囲とは反対の側において駆動部分に一体成形されていて長手方向にスロットを備えたスリーブ状のクランプ範囲とを有するナットであって、周方向においてクランプ範囲のスロットの間にクランプ舌片が配置されており、スロットとクランプ舌片とを備えたクランプ範囲及び駆動部分が、冷間加圧塑性変形及び/又は熱間加圧塑性変形のような中実変形によって形成されており、ナットの雌ねじ山が駆動部分に沿って、一定の直径をもって延びている部分と、クランプ範囲の軸方向長さの少なくとも一部にわたって駆動部分からの間隔増大に連れて減少する直径をもって延びている部分とを備えている形式のものにおいて、スロットがその半径方向長さの少なくとも一部分にわたって、半径方向内側に向かってクランプ舌片の内面に拡大して、進入傾斜部を形成していることを特徴とするナット。
- クランプ舌片がスロットに隣接した端部において半径方向内側に、傾斜部を有している、請求項2記載のナット。
- スロットの拡大部が、スロットに隣接した端部におけるクランプ舌片の丸み部によって形成されている、請求項2又は3記載のナット。
- スロットの拡大部が、ねじ山の半径方向外側において始まっている、請求項2から4までのいずれか1項記載のナット。
- 工具係合のための多角形体のような駆動部分と、部材に接触する接触範囲と、該接触範囲とは反対の側において駆動部分に一体成形されていて長手方向にスロットを備えたスリーブ状のクランプ範囲とを有するナットであって、周方向においてクランプ範囲のスロットの間にクランプ舌片が配置されており、スロットとクランプ舌片とを備えたクランプ範囲及び駆動部分が、冷間加圧塑性変形及び/又は熱間加圧塑性変形のような中実変形によって形成されており、ナットの雌ねじ山が駆動部分に沿って、一定の直径をもって延びている部分と、クランプ範囲の軸方向長さの少なくとも一部にわたって駆動部分からの間隔増大に連れて減少する直径をもって延びている部分とを備えている形式のものにおいて、クランプ舌片がその軸方向長さの部分範囲にわたって、接触面から離れる方向に、少なくとも部分的に湾曲部を形成しながら、先細になっていることを特徴とするナット。
- 工具係合のための多角形体のような駆動部分と、部材に接触する接触範囲と、該接触範囲とは反対の側において駆動部分に一体成形されていて長手方向にスロットを備えたスリーブ状のクランプ範囲とを有するナットであって、周方向においてクランプ範囲のスロットの間にクランプ舌片が配置されており、スロットとクランプ舌片とを備えたクランプ範囲及び駆動部分が、冷間加圧塑性変形及び/又は熱間加圧塑性変形のような中実変形によって形成されており、ナットの雌ねじ山が駆動部分に沿って、一定の直径をもって延びている部分と、クランプ範囲の軸方向長さの少なくとも一部にわたって駆動部分からの間隔増大に連れて減少する直径をもって延びている部分とを備えている形式のものにおいて、クランプ舌片の内面及び外面の湾曲部及び/又は傾斜部が、互いに異なった軸方向位置において始まっていることを特徴とするナット。
- クランプ範囲の軸方向長さの少なくとも部分範囲にわたって、クランプ舌片の壁厚が、駆動部分からの間隔増大に連れて減少する、請求項1から7までのいずれか1項記載のナット。
- 壁厚が連続的に減少する、請求項8記載のナット。
- 壁厚が、直線的に、軸方向長さの部分範囲にわたって減少する、請求項8又は9記載のナット。
- 壁厚が、非直線的に、軸方向長さの部分範囲にわたって減少する、請求項8又は9記載のナット。
- クランプ舌片の内面及び/又は外面が、その軸方向長さの部分範囲にわたって、ナット軸線に対して傾斜した傾斜部を有している、請求項1から11までのいずれか1項記載のナット。
- 部材に接触する範囲が平らである、請求項1から12までのいずれか1項記載のナット。
- 部材に接触する範囲が半径方向内側において、半径方向外側におけるよりも駆動部分からさらに離れている、請求項1から12までのいずれか1項記載のナット。
- 部材に接触する範囲が半径方向外側において、半径方向内側におけるよりも駆動部分からさらに離れている、請求項1から12までのいずれか1項記載のナット。
- 接触範囲が球欠状に構成されている、請求項14又は15記載のナット。
- 接触範囲が円錐形に構成されている、請求項14又は15記載のナット。
- 駆動部分の内部におけるねじ山範囲とクランプ範囲の内部におけるねじ山範囲とが、中実変形の後で切削加工によって形成される、請求項1から17までのいずれか1項記載のナット。
- ねじ山範囲がねじ切りによって形成されている、請求項18記載のナット。
- 駆動部分の内部におけるねじ山範囲とクランプ範囲の内部におけるねじ山範囲とが、ねじ山転造、ねじ山成形、ねじ山転圧又はこれに類した加工方法によって、非切削加工で形成される、請求項1から17までのいずれか1項記載のナット。
- ねじ山がNC制御式の旋盤において製造されている、請求項1から20までのいずれか1項記載のナット。
- 一定の直径を有するねじ山範囲と減少する直径を有するねじ山範囲との間に、ほぼ周方向に延びる溝が設けられている、請求項1から21までのいずれか1項記載のナット。
- 押圧皿が駆動部分に一体に成形されている、請求項1から22までのいずれか1項記載のナット。
- 押圧皿が駆動部分に嵌められている、請求項1から22までのいずれか1項記載のナット。
- 押圧皿が駆動部分に相対回動可能に保持されている、請求項24記載のナット。
- 押圧皿が中実変形部品である、請求項24又は25記載のナット。
- 押圧皿の接触範囲が凹面状に構成されている、請求項23から26までのいずれか1項記載のナット。
- 押圧皿の横断面、半径方向長さ、(凹面状もしくは円錐状の範囲の)曲率、及び材料が、ナットの引き締め時に、押圧皿の実質的な弾性変形を生ぜしめるように、選択されている、請求項27記載のナット。
- ナットの接触範囲と、押圧皿の、該接触範囲に向けられた面とが、ナットの中心軸線から離れるように延びる脚を備えた角度を成している、請求項27又は28記載のナット。
- ナットの接触範囲と押圧皿との間の角度が、押圧皿の凹面状に構成された接触範囲と、押圧皿の、駆動部分とは反対側の軸方向制限部に接触可能な平面との間の角度よりも大きい、請求項29記載のナット。
- スロット底部が少なくとも部分的に、ナット軸線に対して直角とは異なった角度で延びている、請求項2から30までのいずれか1項記載のナット。
- スロットがその半径方向長さの少なくとも一部分にわたって、半径方向内側に向かって拡大している、請求項1から31までのいずれか1項記載のナット。
- クランプ舌片の内面及び/又は外面が、その軸方向長さの部分範囲にわたって湾曲部を有している、請求項1から5及び7から32までのいずれか1項記載のナット。
- クランプ舌片の内面及び外面の湾曲部及び/又は傾斜部が、互いに異なった軸方向位置において始まっている、請求項1から6及び8から33までのいずれか1項記載のナット。
- クランプ舌片の外面が、ナット軸線に対して同心的な円形とは異なった形状によって形成されている、請求項1から34までのいずれか1項記載のナット。
- 雌ねじ山の少なくとも一部分のピッチが、規格のピッチから偏位している、請求項1から35までのいずれか1項記載のナット。
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