JP2007315538A - ナット、及び同ナットの製造方法、ならびにナットのゆるみ防止構造 - Google Patents

ナット、及び同ナットの製造方法、ならびにナットのゆるみ防止構造 Download PDF

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Abstract

【課題】金属板や樹脂板に穿設された下孔にその軸部を押入し、又は樹脂成型品にあらかじめ埋設して使用する正多角筒状のナットの軸部に抜け落ちや軸心回りの回動を防止する三角錐状の複数の膨出部を備えたナット、及び同ナットの製造方法、ならびに前記膨出部によるナットのゆるみ防止構造を提供する。
【解決手段】 金属板や樹脂板の被装着物に穿設された下孔に押入するナット、又は樹脂成型品にあらかじめ埋設して使用するインサート金具としてのナットの軸部の断面外形が正多角形で、かつ軸部の各稜線部分にそれぞれ軸心回りの回動及び軸心方向への抜けを規制する三角錐状の膨出部を一体構造に形成してなるナット、及び前記ナットの軸部の稜線部分に当接する押圧部を備えたダイスに前記ナットの軸部を押入・押圧して前記軸部の各稜線部分の一部を変形・膨出させて三角錐状の膨出部を形成するナット製造方法、ならびに同製造方法によって形成されるナットゆるみ防止構造による。
【選択図】 図1

Description

本発明は、金属板や樹脂板の被装着物にあらかじめ穿設された下孔にその軸部を押入し、又は樹脂成型品にあらかじめ埋設して使用するゆるみ防止構造を備えたナット及び同ナットの製造方法、ならびにナットのゆるみ防止構造に関する。
金属や樹脂、あるいはコンクリート等の成型品に直接ネジ部材を螺入すると、前記成型品の素材の強度や靱性によってはネジ部材が抜けたり、軸回りに回動したりしてネジがゆるむ現象を完全には防止できないという問題がある。
このネジがゆるむ現象の防止策として、金属板や樹脂板ではあらかじめ穿設された下孔にその軸部を押入して使用するナットが、また樹脂やコンクリートの成型品では該成型品に埋設して使用するインサート金具がある。
前記金属板や樹脂板に穿設された下孔に押入して使用するナットとしては、図17(a)に示すような、軸部52の外周に斜めに交叉する溝を刻んで多数の小突起53を形成したものや、頭部54や頭部54の下面を歯車状に刻み込んだもの等のT型ナット50が多用されており、前記小突起53又は歯車51の歯が金属板や樹脂板に穿設された下孔の内壁に食い込むことによってT型ナット50の軸心回りの回動を防止し、また同T型ナット50の抜け落ちを防止している。
しかし、これらのT型ナット50の製造には、軸部52に溝を切ったり、頭部54に歯車状の加工を施したりする工程が含まれ、任意な大きさ、形状の小突起53や歯車51を形成するのは容易でないという問題がある。
一方、樹脂やコンクリート成型品にあらかじめ埋設して使用するインサート金具は、図18(a)(b)にその例を示すように、円筒形の軸部52に複数の突起53’を有するものであって、同突起53’が樹脂やコンクリート等の成型品に埋設されることによって、前記インサート金具50’の回動や抜け落ちを防止している。
そしてそのインサート金具50’の製造方法としては、従来主にプレス機を用いて図18(a)に示すのような外形を持つ突起53’を形成していたが、特許第3045397号公報、特開2004−290981号公報では、円柱又は円筒の軸材料をダイスに押し付けることによって前記軸部52の外周に、金属の塑性変形によって図18(b)に示すような突起53’を形成する簡便な法が開示され、使用されている。
特許第3045397号公報 特開2004−290981号公報
本発明は、上記背景技術に鑑み、金属板や樹脂板にあらかじめ穿設された下孔にその軸部を押入して使用する正多角筒状のナットの軸部に抜け落ちや軸心回りの回動を防止する三角錐状の複数の膨出部を備えたナット、及び同ナットの簡便な製造方法、ならびにナットのゆるみ防止構造を提供することを課題とするものである。
本発明者は上記課題を下記の手段により解決した。
(1)金属板や樹脂板の被装着物にあらかじめ穿設された下孔にその軸部2を押入して固定するナット、又は樹脂成型品にあらかじめ埋設して使用するインサート金具としてのナットであって、
前記軸部2の断面外形が正多角形で、かつ軸部2の各稜線部分2a…に軸心回りの回動及び軸心方向への抜けを規制する三角錐状の膨出部3…を、該稜線部分の一部を塑性変形・膨出させて一体構造に形成してなることを特徴とするナット。
(2)金属板や樹脂板の被装着物にあらかじめ穿設された下孔にその軸部2を押入して固定するナット、又は樹脂成型品にあらかじめ埋設して使用するインサート金具としてのナットであって、
前記軸部2の断面外形が正多角形で、かつ軸部2の各稜線部分2a…に軸心回りの回動及び軸心方向への抜けを規制する三角錐状の膨出部3…を、該稜線部分の一部を塑性変形・膨出させ、また被装着物の外側に位置する軸部2の端面に軸方向への抜けを防止する環状のフランジ4を一体構造に形成してなることを特徴とするナット。
(3)金属板や樹脂板の被装着物にあらかじめ穿設された下孔にその軸部2を押入して固定するナット、又は樹脂成型品にあらかじめ埋設して使用するインサート金具としてのナットの製造方法であって、
横断面の外形が正多角形の軸部2を、該軸部2の外形の正多角形の内接円の直径よりは大きく、外接円の直径よりは小さい内径の内壁面を有する筒状ダイス20に押し当て、所定深度まで押入することによって前記軸部2の各稜線部分2a…の一部を塑性変形・膨出させ、前記各稜線部分2a…に軸心回りの回動及び軸心方向への抜けを規制する三角錐状の膨出部3…を形成することを特徴とするナット製造方法。
(4)金属板や樹脂板の被装着物にあらかじめ穿設された下孔にその軸部2を押入して固定するナット、又は樹脂成型品にあらかじめ埋設して使用するインサート金具としてのナットの製造方法であって、
横断面の外形が正多角形の軸部2を、前記軸部2外形と同一形状の内壁面を有する筒状のダイス20’に、該ダイス20’の内壁面の正多角形と前記軸部2の外形の正多角形とが前記正多角形の内角αの1/2角度ずれた状態で押し当て、所定の深度まで押入することによって前記軸部2の各稜線部分2a…の一部を塑性変形・膨出させ、前記各稜線部分2a…に軸心回りの回動及び軸心方向への抜けを規制する三角錐状の膨出部3…を形成することを特徴とするナット製造方法。
(5)請求項4、5にに記載のダイス20、20’が、前記軸部2とダイス20、20’との軸心を合致させるために、前記ダイス20、20’の軸部2の挿入側に各稜線部分2a…から膨出部3が膨出するのに必要な内径の内壁面を有する案内壁22、又は前記ダイス20、20’の軸心部に前記軸部2の雌ねじ孔に挿入できるガイドピン40を備えてなり、前記軸部2の各稜線部2a…に膨出部を形成する際、前記軸部2の環状フランジを前記案内壁に沿わせ、又は軸部2の雌ねじ孔を前記ガイドピンに沿わせてダイス20、20’に押入することを特徴とする前項(4)又は(5)に記載のナット製造方法。
(6)請求項4に記載のダイス20’が、軸部2の横断面正多角形と前記ダイス20’内壁の正多角形とを同正多角形の内角αの1/2角度ずらして当接させるため、前記ダイス20’の軸部挿入側に、前記正多角形と同形の正多角形を穿設した後2分割されて左右に開閉可能な案内板23を具備し、前記軸部2がダイス20’に挿入される際、前記案内板23を閉じることによって前記軸部2をダイス20’の内壁の正多角形に同多角形の内角αの1/2の角度ずれるようにすることを特徴とする前項(4)又は(5)に記載のナット製造方法。
(7)金属板や樹脂板の被装着物にあらかじめ穿設された下孔にその軸部2を押入して固定するナット、又は樹脂成型品にあらかじめ埋設して使用するインサート金具としてのナットの製造方法であって、
横断面の外形が4以上の偶数の角を有する正多角形の軸部を、前記軸部の角数の2倍の角数の正多角形状の内壁面を有し、かつその内壁にその中途部から上部にわたって該内壁断面の正多角形の1辺間隔ごとに溝を設けてなるダイスに、前記ダイスの溝に軸部の稜線部分を挿入して押し当て、所定深度まで押入することにより、前記溝24の底部の押圧部に当接した前記軸部2の各稜線部分の一部を塑性変形・膨出させ、前記各稜線部分に軸心回りの回動及び軸心方向への抜けを規制する三角錐状の膨出部を形成することを特徴とするナット製造方法。
(8)金属板や樹脂板の被装着物にあらかじめ穿設された下孔と、該下孔に軸部を押入して固定するナットとからなり、かつ同ナットの軸部が正多角形の横断面外形を持ち、かつ前記軸部の各稜線部分に、軸心回りの回動及び軸心方向への抜けを規制する三角錐状の膨出部を備えたことを特徴とするナットのゆるみ防止構造。
(9)金属板や樹脂板の被装着物にあらかじめ穿設された下孔と、該下孔に軸部を押入して固定するナットとからなり、かつ同ナットの軸部が正多角形の横断面外形を持ち、かつ各稜線部分に、軸心回りの回動及び軸心方向への抜けを規制する三角錐状の膨出部を、また被装着物の外側に位置する軸部の端面に軸方向への抜けを防止する環状フランジを一体に備えたことを特徴とするナットのゆるみ防止構造。
(10)軸部2が正多角形の横断面外形を持ち、かつ前記軸部2の各稜線部分2a…に、軸心回りの回動及び軸心方向への抜けを規制する三角錐状の膨出部3…を備えたナットを、樹脂成型品にあらかじめ埋設しておくことを特徴とするナットのゆるみ防止構造。
(11)軸部2が正多角形の横断面外形を持ち、かつ各稜線部分2a…に、軸心回りの回動及び軸心方向への抜けを規制する三角錐状の膨出部3…を、また被装着物の外側に位置する軸部の端面に軸方向への抜けを防止する環状フランジ4を一体に備えたナットを、樹脂成型品にあらかじめ埋設しておくことを特徴とするナットのゆるみ防止構造。
本発明のナットとナットの製造方法、及びナットのゆるみ防止構造によって下記のような効果が発揮できる。
(ア)金属板や樹脂板等の被装着物にあらかじめ穿設された下孔にその軸部を押入して固定するナット、又は樹脂成型品にあらかじめ埋設して使用するインサート金具としてのナットの軸部の横断面外形が正多角形をなすので、従来の円筒形の軸部を持つT型ナットに比べて軸心回りの回動を防止しやすく、またT型ナットの軸部外周に配設されていた小膨出部や、T型ナットの頭部又頭部下面に刻まれた歯車の多数の歯を、軸部の稜線部分の膨出部のみに減少でき、製造も容易になるのでコスト低減が図れる。
(イ)前記稜線部分に形成される膨出部が三角錐状をなすので、金属板や樹脂板等の被装着物に鋭く食い込み、ナットの軸心回りの回動を効果的に防止できる
(ウ)前記三角錐状の膨出部が、該ナット軸部の稜線部分をダイスの押圧部の端面(以下押圧面と記す)に押し当てることによって膨出させるという簡単な方法で形成できるので、生産コストの削減に寄与する。
(エ)前記三角錐状の膨出部の軸部からの膨出長さが、ダイスの押し当て深度によって任意に変えられので、押入する被装着物の強度や靱性、ナットに加わる応力などに適合した膨出部を持つナットが容易に得られる。
(オ)請求項5の発明よれば、軸部とダイスの軸心が合致するので、軸部の稜線部分に均一な膨出部を形成することができ、前記(ア)〜(エ)に記載の効果を持つナットを容易に製造できる。
(カ)請求項6の発明によれば、請求項4に記載のダイスにナットの軸部を挿入する際、前記軸部がダイスの内壁面のなす正多角形と正確に角度α/2ずれていなくとも左右に開いた前記案内板を閉じることによって、前記案内板の端部が前記軸部の稜線部分に当接して押し込むので、軸部の軸心回りの回動角度を気遣うことなく作業ができ、均一な形状の膨出部を持つナットが容易に得られる。
(キ)さらに請求項7の発明によれば、横断面の外形が4以上の偶数の角を有する正多角形の軸部を、前記軸部の角数の2倍の角数の正多角形状の内壁面を有し、かつその内壁にその中途部から上部にわたって該内壁断面の正多角形の1辺間隔ごとに溝を設けてなるダイスに、前記ダイスの溝に軸部の稜線部分を挿入して押し当て、所定深度まで押入することにより、前記溝24の底部の押圧部に当接した前記軸部2の各稜線部分の一部を塑性変形・膨出させ、前記各稜線部分に軸心回りの回動及び軸心方向への抜けを規制する三角錐状の膨出部を形成するので、軸部の稜線部分をダイスの溝に挿入すれば、軸部の軸心回りの回動角度を気遣うことなく作業ができ、均一な形状の膨出部を持つナットが容易に製造できる。
まず本発明のナットと、同ナットのゆるみ防止構造の最良の実施の形態を、図1〜図8の実施例の図面に基づいて説明する。なお、図1〜図4は、後述する請求項3に記載の製造方法によるものであり、図5〜図8は、請求項4〜6に記載の製造方法によるものである。
図1は本発明のゆるみ防止構造を備えたナットの一実施例の外観斜視図、図2は図1のゆるみ防止構造を備えたナットの上面図(a)、側面図、(b)底面図(c)であり、図3は本発明のゆるみ防止構造を備えたナットのその他の実施例の外観斜視図、図4は図3のゆるみ防止構造を備えたナットの上面図(a)、側面図、(b)底面図(c)である。
そして図5は製造方法の異なる本発明のゆるみ防止構造を備えたナットの一実施例の外観斜視図、図6は図5のゆるみ防止構造を備えたナットの上面図(a)、側面図、(b)底面図(c)であり、図7はこれも製造方法の異なる本発明のゆるみ防止構造を備えたナットの他の実施例の外観斜視図、図8は図7のゆるみ防止構造を備えたナットの上面図(a)、側面図、(b)底面図(c)である。
図において1はゆるみ防止構造を備えたナット、2はナットの軸部、2aは稜線部分、3は膨出部、3aは膨出部の平面、4は環状フランジ又は頭部を示す。
本発明のゆるみ防止構造を備えたナットの第1の実施例は、図1の外観斜視図、及び図2(c)の底面図に見られるように、ナット1の軸部2が正多角筒状(図1、図2では正6角筒)をなし、かつその各稜線部分2a…(図1、図2では6個所)に後述する請求項3に記載した製造方法によって該各稜線部分2a…の上部の一部分が押し下げられて膨出した三角錐状の膨出部3…が軸部2と一体的に形成されている。したがって、図1の外観斜視図、及び図2(a)の上面図に見られるように本実施例のナット1の三角錐状の膨出部3…から上の横断面形状は、軸部2の押し下げられた部分が円弧状をした前記軸部2の2倍の頂点を有する正多角形状(図3、図4では12角形)を呈している。
本実施例のナット1は、金属板や樹脂板のあらかじめ穿設された下孔にその軸部2を押入し、又は樹脂成型品にあらかじめ埋設して使用するので、本実施例のナット1が金属板や樹脂板の下孔に押入された際、前記膨出部3…が軸心回りの回動を規制してゆるみを防止し、また前記ナット1の三角錐状の膨出部3…の平面が後述の製造方法によって上方に向いた平面3a…を構成しているので、本ナット1にボルトを螺入して締め付けた際、この平面3a…がナット1の上面とともに本ナット1の軸心方向への応力を支えることとなる。
本発明のゆるみ防止構造を備えたナットの第2の実施例は、図3の外観斜視図及び図4(c)の底面図にに見られるように、ナット1’の軸部2が正多角筒状(図3、図4では正6角筒)をなし、かつその各稜線部分2a…(図3、図4では6個所)に後述する請求項3に記載した製造方法によって該各稜線部分2a…の上部の一部を押し下げて形成した三角錐状の膨出部3…が、また軸部2の被装着物の外側に位置することになる端面に環状フランジ4が一体的に形成されている。
本実施例のナット1’は、軸部2の端面に環状フランジ4が一体的に形成されている以外は実施例1に示したナット1と同一形状であり、三角錐状の膨出部3…の作用及び効果は前記実施例1の作用、効果と同一である。そして、前記環状フランジ4は、被装着物の外側に配置されて本実施例のナット1’にボルトを螺入して締め付けた際の本実施例のナット1’の軸心方向の耐応力をより高め、被装着物の確実な締結を可能にするものである。
本発明のゆるみ防止構造を備えたナットの第3の実施例は、図5の外観斜視図、及び図6(c)の底面図に見られるように、ナット1の軸部2が正多角筒状(図5、図6では正6角筒)をなし、かつその各稜線部分2a…(図5、図6では6個所)に後述する請求項4〜6に記載した製造方法によって該各稜線部分2a…の上部の一部分が押し下げられて膨出した三角錐状の膨出部3…が軸部2と一体的に形成されている。したがって、図5の外観斜視図、及び図6(a)の上面図に見られるように本実施例のナット1の三角錐状の膨出部3…から上の横断面形状は、軸部2の頭部の横断面の多角形の2倍の角を有する正多角形(図5、図6では正12角形筒)を呈している。
なお、本実施例のナット1は、三角錐状の膨出部の平面3a…と軸部2との接合部が直線状であることから、実施例1に示した三角錐状の膨出部の平面3a…と軸部2との接合部が円弧状をしたナット1よりも三角錐状の膨出部の平面3a…の面積が広く、本実施例のナット1が金属板や樹脂板の下孔に押入された際、軸心回りの回動を規制してゆるみを防止し、軸心方向への応力をより強めることができる。
本発明のゆるみ防止構造を備えたナットの第4の実施例は、図7の外観斜視図に見られるように、ナット1’の軸部2が正多角筒状(図7では正6角筒)をなし、かつその各稜線部分2a…(図7では6個所)に後述する請求項4〜6に記載した製造方法によって該各稜線部分2a…の上部の一部を押し下げて形成した三角錐状の膨出部3…が、また軸部2の被装着物の外側に位置することになる端面に環状フランジ4が一体的に形成されている。
本実施例のナット1’は、軸部2の端面に環状フランジ4が一体的に形成されている以外は実施例3に示したナット1と同一形状であり、三角錐状の膨出部3…の作用及び効果は前期実施例1の作用、効果と同一である。そして、前記環状フランジ4は、被装着物の外側に配置されて本実施例のナット1’にボルトを螺入して締め付けた際の本実施例のナット1’の軸心方向の耐応力をより高め、被装着物の確実な締結を可能にするものである。
なお、本実施例のナット1’は、三角錐状の膨出部の平面3a…と軸部2との接合部が直線状であることから、実施例1に示した三角錐状の膨出部の平面3a…と軸部2との接合部が円弧状をしたナット1’よりも三角錐状の膨出部の平面3a…の面積が広く、本実施例のナット1’が金属板や樹脂板の下孔に押入された際、軸心回りの回動を規制してゆるみを防止し、軸心方向への応力をより強めることができる。
次に本発明のナットの製造方法について、図9〜図13に基づいて説明する。図9は膨出部形成前のナット(a)及び押圧部の内壁面が円形のダイスの外形斜視図(b)、図10は膨出部形成前のナット(a)及び押圧部の内壁面が正多角形状のダイスの外形斜視図(b)、図11はナットの軸部と膨出部を形成するダイスの押圧面との関係を示す図[(a)は内壁断面が円形の場合、(b)は内壁断面が正多角形の場合]、図12は膨出部形成前のナットと図10に示したダイスとの間に案内板を設けた場合の斜視図、図13は案内板の作用説明図、図14は膨出部形成前のナットとその他の形状のダイスの斜視図、図15はナットの軸部と図14に示したダイスの押圧面と関係を示す図である。
また、16図は膨出部形成工程の説明図である。
図において1は本発明のゆるみ防止構造を備えたナット、10は膨出部形成前のナット、2はナットの軸部、2aは稜線部分、3は膨出部、20、20’、20”はダイス、21、21’、21”は押圧部、22は案内壁、23は案内板、24は溝、25は傾斜面、30はパンチ、40はガイドピンである。
なお、図9〜図15において、膨出部形成前のナット10を環状フランジを有しないナットで表示したが、環状フランジを有するナットの場合には各ダイス20・20’、20”の案内壁22の内径が、環状フランジの外径以上あれば以下の記述に適合できる。
本発明のゆるみ防止構造を備えたナットの製造方法は、素材から既知の製造方法で成形された正多角形の筒状体からなる膨出部形成前のナット10をダイスに押し当て、押入することによって前記正多角形の筒状体ナットの稜線部分の一部を塑性変形・膨出させ、三角錐状の膨出部を形成するものであり、前記ダイスとして、図9、図10、図14に示す3種を用い、それぞれの特色を生かして形成膨出部の均一化、膨出部形成工程の容易化を図っている。
本発明の第1のダイス20は、図9(b)に示すように、膨出部形成前のナット10の軸部2の横断面の外形の正多角形に内接する円の直径より大きく、外接円の直径よりは小さい内径の円形の内壁を有する筒状体の押圧部21と、前記押圧部21のナット挿入側に備えられた前記膨出部形成前のナット10の各稜線部分2a…から膨出部3が膨出するのに必要な内径の内壁面を有する案内壁22とで構成されている。
このダイス20は、ダイス自体の製造が容易であり、かつ、図11(a)に見られるように、ダイス20に膨出部形成前のナット10を挿入する際その軸心回りの回動(軸部2の稜線部分2a…の押圧部21の端面に当接する位置)を考慮する必要がなく、作業が容易である利点はあるが、該ダイス20によって製造したナット1の軸部2と三角錐状の膨出部3…との接合部が、図1〜図4に示したように円弧をなすことからゆるみ防止効果は、後述のダイス20’、20”によって製造されるナット1より三角錐状の膨出部の平面3a…の面積が減少することから多少劣るという難点を持つ。
本発明の第2のダイス20’は、図10(b)に示すように、内壁面が膨出部形成前のナット10の断面外形と同一形状の筒状体の押圧部21’と、前記押圧部21のナット挿入側に備えられた前記膨出部形成前のナット10の各稜線部分2a…から膨出部3が膨出するのに必要な内径の内壁面を有する案内壁22とで構成されている。
このダイス20’を使用する際には、図11(b)に示すように、該ダイス20’の押圧部21’の内壁面の正多角形と前記軸部2の横断面外形の正多角形とが互いに同正多角形の内角αの1/2の角度ずれた位置で当接するようにしなければ、正確な三角錐状の膨出部3…が得られないことから、製造時に細心の注意が必要となる。しかし、この問題も、図12に示すように、前記ダイス20’の案内壁22の端面上に左右に開閉する押圧部の内壁断面の正多角形に対して同正多角形の内角αの1/2に相当する角度回転させた正多角形を穿設した後2分割された案内板を装着することで解決できる。すなわち図13に示すように、所定の角度から多少ずれた角度でダイス20’に挿入された膨出部形成前のナット10は、案内板23を左右から閉じることによってその端部が膨出部形成前のナット10の稜線部分2a…を押し、完全に閉じた状態で膨出部形成前のナット10は正規の位置に設置されることになる。
この第2のダイス20’は構造が複雑になり、ダイス20’自体の製造や操作について不利な点はあるが、このダイス20’で製造されたナット1の軸部2と三角錐状の膨出部3…との接合部は、図5〜図8に示したように直線状となり、前記第1のダイスで製作されたナット1の三角錐状の膨出部の平面3a…より面積が広がるのでゆるみ防止効果は向上する。
上記第2のダイス20’の操作面での問題を解決したのが図14に示した第3のダイス20”である。このダイス20”は図14に見られるように、横断面の外形が4以上の偶数の正多角形の軸部2を有する膨出部形成前のナット10を対象にしたものであって、前記軸部2の角数(図14では6)の2倍の角数の正多角形状(図4では正12角形)の内壁面を有し、かつその内壁にその中途部から上部にわたって該内壁断面の正多角形の1辺間隔ごとに溝24…が設けられ、前記溝24の両側に残された内壁の上端部は筒状体の内部に向かって傾斜した傾斜面25を形成している。
この第3のダイス20”の溝24…に膨出部形成前のナット10の稜線部分2a…を挿入すれば前記稜線部分2a…の下端が前記ダイス20”の押圧面に自動的に当接するので、前記膨出部形成前のナット10を所定深度まで押入することにより、前記軸部2の各稜線部分2a…に均一な三角錐状の膨出部3…を容易に形成できる。なお内壁上端部の傾斜面25は、ダイス20”に膨出部形成前のナット10を挿入しやすくするために設けられたものである。
この第3のダイス20”は形状が複雑でその製作が容易ではないが、ゆるみ防止構造を備えたナットの製造の簡易化には高い効果を発揮できる。
次いで本発明のゆるみ防止構造を備えたナット1、1’の膨出部部形成工程について図16によって説明する。図16においては第1のダイス20を使用するものとして表示し、また膨出部形成前のナット10を環状フランジ4を有するものとして表示したが、第2のダイス20’、第3のダイス20”を使用する場合も、環状フランジ4のない場合も基本的には同様である。したがって、第2のダイス20’、第3のダイス20”を使用する場合は、第1のダイス20を使用する場合と異なる点のみの記述にとどめることとする。
まず図16(a)に示すように、膨出部形成前のナット10をダイス20に挿入し、前記膨出部形成前のナット10の頭部にパンチ30を配設する。
なお、前記第2のダイス20’を使用する場合には、この際膨出部形成前のナット10の横断面外形の正多角形と前記ダイス20’の押圧部21’の内壁断面の正多角形とが、該正多角形の内角αの1/2となる角度互いにずれて当接するよう挿入することが望ましい。このため、前述したように前記ダイス20’の押圧部21’の内壁断面の正多角形に対して同正多角形の内角αの1/2に相当する角度回転させた正多角形を穿設した後2分割された一対の案内板23を前記ダイス20’の円筒部22の端面上で左右に開閉可能にに装着しておき、前記ダイス20’に膨出部形成前のナット10の軸部2を導入する際には2分割された案内板23を閉じて正規の角度からずれて挿入された膨出部形成前のナット10の稜線部分を前記案内板23の端部で押すことにより案内板23が完全に閉じた状態で前記膨出部形成前のナット10が正規の位置に配置され、膨出部形成後には前記一対の案内板23を開いて完成したゆるみ防止構造を備えたナット1を前記案内板23に妨げられなく取り出せるようにしておくことが好ましい(図13参照)。このことにより膨出部形成前のナット10をダイス20’に挿入する際、膨出部形成前のナット10の軸心回りの回動角度を気遣うことなく作業ができ、均一な形状を持つ膨出部3を備えたナットが製造できる。
また、前記第3のダイス20”を使用する場合には、前記ダイス20”の溝24に前記膨出部形成前のナット10の稜線部分2a…を挿入すればよい(図15参照)。
そしてその後パンチ30によって膨出部形成前のナット10を前記ダイス20の押圧部21の端面(押圧面)に押しつけ、前記稜線部分2a…を前記押圧面で変形・膨出させて三角錐状の膨出部3…を形成する[図16(c)参照]。
前記ゆるみ防止構造を備えたナット1、1’の膨出部3…の膨出高さは、前記パンチ30の押圧距離によって決まるので前記ダイスの20の円筒部22の内径は必要とする膨出部の最大膨出高さを考慮して決定する必要がある。
したがって、図3に示したように軸部2の稜線部分2a…から膨出する膨出部3…の先端がナット1の環状フランジ4からはみ出さない場合には環状フランジ4と同一内径を有する案内壁22を有するダイス20を用いれば、前記ダイスの案内壁22が膨出部形成前のナット10とダイス20の中心軸を合致させる。しかし、図1及び図2に示したように前記膨出部3…がナット1の頭部よりはみ出す場合には、挿入時に膨出部形成前のナット10とダイス20の中心軸とがずれ、各稜線部分2a…に形成される膨出部3…の形状が均一にならないおそれがある。したがって、この場合には膨出部形成前のナット10とダイス20の中心軸とを合致させるためのガイドピン40をダイス20に着脱自在に備えておき、前記膨出部形成前のナット10が軸部2の雌ねじ孔を前記ガイドピン40に沿wせて挿入されるようにしておくことが好ましい。
本発明のゆるみ防止構造を備えたナットの一実施例の外観斜視図 図1のゆるみ防止構造を備えたナットの上面図(a)、側面図、(b)底面図(c) 本発明のゆるみ防止構造を備えたナットの他の実施例の外観斜視図 図3のゆるみ防止構造を備えたナットの上面図(a)、側面図、(b)底面図(c) 製造方法の異なる本発明のゆるみ防止構造を備えたナットの一実施例の外観斜視図 図5のゆるみ防止構造を備えたナットの上面図(a)、側面図、(b)底面図(c) 製造方法の異なる本発明のゆるみ防止構造を備えたナットの他の実施例の外観斜視図 図7のゆるみ防止構造を備えたナットの上面図(a)、側面図、(b)底面図(c) 膨出部形成前のナット(a)及び押圧部の内壁断面が円形のダイスの外形斜視図(b) 膨出部形成前のナット(a)及び押圧部の内壁面が正多角形状のダイスの外形斜視図(b) ナットの軸部と膨出部を形成するダイスの押圧面との関係を示す図[(a)は内壁断面が円形の場合、(b)は内壁断面が正多角形の場合] 膨出部形成前のナットと図10に示したダイスとの間に案内板を設けた場合の斜視図 案内板の作用説明図 膨出部形成前のナットと他の形状のダイスの斜視図 ナットの軸部と図14に示したダイスの押圧面と関係を示す図 膨出部形成工程の説明図 T型ナットの例 インサート金具の例
符号の説明
1、1’:ゆるみ防止構造を備えたナット
2:ナットの軸部
2a:稜線部分
3:膨出部
3a:膨出部の平面
4:環状フランジ
10:膨出部形成前のナット
20、20’、20”:ダイス
21、21’、21”:押圧部
22:案内壁
23:案内板
24:溝
25傾斜面
30:パンチ
40:ガイドピン
50:T型ナット
50’:インサート金具
51:歯車
52:円筒形の軸部
53:小突起
53’:突起
54:頭部

Claims (11)

  1. 金属板や樹脂板の被装着物にあらかじめ穿設された下孔にその軸部2を押入して固定するナット、又は樹脂成型品にあらかじめ埋設して使用するインサート金具としてのナットであって、
    前記軸部2の断面外形が正多角形で、かつ軸部2の各稜線部分2a…に軸心回りの回動及び軸心方向への抜けを規制する三角錐状の膨出部3…を、該稜線部分の一部を塑性変形・膨出させて一体構造に形成してなることを特徴とするナット。
  2. 金属板や樹脂板の被装着物にあらかじめ穿設された下孔にその軸部2を押入して固定するナット、又は樹脂成型品にあらかじめ埋設して使用するインサート金具としてのナットであって、
    前記軸部2の断面外形が正多角形で、かつ軸部2の各稜線部分2a…に軸心回りの回動及び軸心方向への抜けを規制する三角錐状の膨出部3…を、該稜線部分の一部を塑性変形・膨出させ、また被装着物の外側に位置する軸部2の端面に軸方向への抜けを防止する環状のフランジ4を一体構造に形成してなることを特徴とするナット。
  3. 金属板や樹脂板の被装着物にあらかじめ穿設された下孔にその軸部2を押入して固定するナット、又は樹脂成型品にあらかじめ埋設して使用するインサート金具としてのナットの製造方法であって、
    横断面の外形が正多角形の軸部2を、該軸部2の外形の正多角形の内接円の直径よりは大きく、外接円の直径よりは小さい内径の内壁面を有する筒状ダイス20に押し当て、所定深度まで押入することによって前記軸部2の各稜線部分2a…の一部を塑性変形・膨出させ、前記各稜線部分2a…に軸心回りの回動及び軸心方向への抜けを規制する三角錐状の膨出部3…を形成することを特徴とするナット製造方法。
  4. 金属板や樹脂板の被装着物にあらかじめ穿設された下孔にその軸部2を押入して固定するナット、又は樹脂成型品にあらかじめ埋設して使用するインサート金具としてのナットの製造方法であって、
    横断面の外形が正多角形の軸部2を、前記軸部2外形と同一形状の内壁面を有する筒状のダイス20’に、該ダイス20’の内壁面の正多角形と前記軸部2の外形の正多角形とが前記正多角形の内角αの1/2角度ずれた状態で押し当て、所定の深度まで押入することによって前記軸部2の各稜線部分2a…の一部を塑性変形・膨出させ、前記各稜線部分2a…に軸心回りの回動及び軸心方向への抜けを規制する三角錐状の膨出部3…を形成することを特徴とするナット製造方法。
  5. 請求項3、4に記載のダイス20、20’が、前記軸部2とダイス20、20’との軸心を合致させるために、前記ダイス20、20’の軸部2の挿入側に各稜線部分2a…から膨出部3が膨出するのに必要な内径の内壁面を有する案内壁22、又は前記ダイス20、20’の軸心部に前記軸部2の雌ねじ孔に挿入できるガイドピン40を備えてなり、前記軸部2の各稜線部2a…に膨出部を形成する際、前記軸部2の環状フランジを前記案内壁に沿わせ、又は軸部2の雌ねじ孔を前記ガイドピンに沿わせてダイス20、20’に押入することを特徴とする請求項3又は4に記載のナット製造方法。
  6. 請求項4に記載のダイス20’が、軸部2の横断面正多角形と前記ダイス20’内壁の正多角形とを同正多角形の内角αの1/2角度ずらして当接させるため、前記ダイス20’の軸部挿入側に、前記正多角形と同形の正多角形を穿設した後2分割されて左右に開閉可能な案内板23を具備し、前記軸部2がダイス20’に挿入される際、前記案内板23を閉じることによって前記軸部2をダイス20’の内壁の正多角形に同多角形の内角αの1/2の角度ずれるようにすることを特徴とする請求項4又は5に記載のナット製造方法。
  7. 金属板や樹脂板の被装着物にあらかじめ穿設された下孔にその軸部2を押入して固定するナット、又は樹脂成型品にあらかじめ埋設して使用するインサート金具としてのナットの製造方法であって、
    横断面の外形が4以上の偶数の角を有する正多角形の軸部2を、前記軸部2の角数の2倍の角数の正多角形状の内壁面を有し、かつその内壁にその中途部から上部にわたって該内壁断面の正多角形の1辺間隔ごとに溝24…を設けてなるダイス20”に、前記ダイス20”の溝24…に軸部2の稜線部分2a…を挿入して押し当て、所定深度まで押入することにより、前記溝24の底部の押圧部21”に当接した前記軸部2の各稜線部分2a…の一部を塑性変形・膨出させ、前記各稜線部分2a…に軸心回りの回動及び軸心方向への抜けを規制する三角錐状の膨出部3…を形成することを特徴とするナット製造方法。
  8. 金属板や樹脂板の被装着物にあらかじめ穿設された下孔と、該下孔に軸部2を押入して固定するナットとからなり、かつ同ナットの軸部2が正多角形の横断面外形を持ち、かつ前記軸部2の各稜線部分2a…に、軸心回りの回動及び軸心方向への抜けを規制する三角錐状の膨出部3…を備えたことを特徴とするナットのゆるみ防止構造。
  9. 金属板や樹脂板の被装着物にあらかじめ穿設された下孔と、該下孔に軸部2を押入して固定するナットとからなり、かつ同ナットの軸部2が正多角形の横断面外形を持ち、かつ各稜線部分2a…に、軸心回りの回動及び軸心方向への抜けを規制する三角錐状の膨出部3…を、また被装着物の外側に位置する軸部の端面に軸方向への抜けを防止する環状フランジ4を一体に備えたことを特徴とするナットのゆるみ防止構造。
  10. 軸部2が正多角形の横断面外形を持ち、かつ前記軸部2の各稜線部分2a…に、軸心回りの回動及び軸心方向への抜けを規制する三角錐状の膨出部3…を備えたナットを、樹脂成型品にあらかじめ埋設しておくことを特徴とするナットのゆるみ防止構造。
  11. 軸部2が正多角形の横断面外形を持ち、かつ各稜線部分2a…に、軸心回りの回動及び軸心方向への抜けを規制する三角錐状の膨出部3…を、また被装着物の外側に位置する軸部の端面に軸方向への抜けを防止する環状フランジ4を一体に備えたナットを、樹脂成型品にあらかじめ埋設しておくことを特徴とするナットのゆるみ防止構造。

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