JP2011098357A - インサート金具の製造方法、及び同製造方法によって製造されるインサート金具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】被装着物である樹脂板や金属板にあらかじめ穿設された下穴に、その軸部を押入し、あるいは被装着物にあらかじめ埋設して使用するインサート金具に要求される軸心回りの回動及び軸心方向への抜け落ちを規制する軸部外周のローレット及び膨出凸部の加工が、専用の加工機を用いることなく、複数個の金型が装備されたインサート金具製造装置において、円形断面の線材の切断からねじ切り前のインサート金具形成まで一貫した鍛造工程内で実施されるインサート金具の製造方法による。
【選択図】 図1
Description
そこで、本発明者らは先に、軸部外周にローレットを専用加工機で形成する工程を省き、インサート金具に必要な軸心回りの回動と軸心方向の抜け落ちを規制する機構を具備したナットとして、軸部断面が正多角形でかつ軸部の各稜線部分に三角錘状の膨出部を一体構造に形成したナット、及び同ナットの製造方法、ならびにナットのゆるみ防止構造についての発明を行った(特開2007−315538号公報参照)。
上記発明のナットは、多角形の稜線と各稜線部分の三角錘状の膨出部とで軸心回りの回動を規制し、前記三角錘状の膨出部で軸心方向の抜け落ちを規制はするが、従来の斜めに交差した溝状の凹部と凹部間に形成された多数の山形の凸部によるアヤ目のロレットを軸部外周に設けたインサート金具に比べれば、引き抜き荷重やねじりトルクへの対応力が低いという問題が残っていた。
(1)被装着物である樹脂板や金属板にあらかじめ穿設された下穴に、その軸部を押入し、あるいは被装着物にあらかじめ埋設して使用するインサート金具の製造方法であって、
前記インサート金具に要求される軸心回りの回動及び軸心方向への抜け落ちを規制する軸部外周のローレット及び膨出凸部の加工が、専用の加工機を用いることなく、複数個の金型が装備されたインサート金具製造装置において、円形断面の線材の切断からねじ切り前のインサート金具形成まで一貫した鍛造工程内で実施されることを特徴とするインサート金具の製造方法。
円形断面の線材を切断して得た円柱形素材の一方の端面を第1のダイスにより所定の形状に矯正する第1工程、
第1工程を終えた円柱形素材を反転して他方の端面を第2のダイスにより所定の形状に矯正し、かつ、前記一方の端面に押し当てたパンチによって前記円柱形素材を有底円筒形素材に変形する第2工程、
第2工程を経た有底円筒形素材を再度反転して前記一方の端面A側を第3のダイスに押入して有底円筒形素材の軸部外周に軸心方向に沿って軸心回りに回動を抑止するローレットとしての多数の縦型凹凸溝を形成するとともに縮径させて前記他方の端面Bを軸心方向に膨出させ、又は端面B側にフランジを膨出させる第3工程、
第3工程によって軸部外周に縦型凹凸溝が形成された有底円筒形素材の底部をパンチによって貫通させ、別途ボルトを螺入する雌ねじを設ける貫通孔を形成する第4工程、
第4工程によって貫通孔が形成された素材の前記一方の端面側を、該端面の外径より小さい内径の円筒形の第5のダイスに所定の長さだけ押入し、外周面に軸心方向への抜けを規制する膨出凸部を形成する第5工程、
によって行われることを特徴とする前項(1)に記載のインサート金具の製造方法。
〈1〉インサート金具に要求される軸心回りの回動及び軸心方向への抜け落ちを規制する軸部外周のローレット及び膨出凸部の加工が、専用の加工機を用いることなく、インサート金具製造装置による、円形断面の線材の切断からねじ切り前のインサート金具形成までの一連の加工工程内で実施できるので、ローレット形成のための専用加工機に係わる設備整備費や運転経費が不要となり、また、従来行われていたインサート金具製造装置からローレット形成専用加工機へ加工途中の素材を搬送する工程も省けるので、製造時間の短縮と製品のコスト低減が図れる。
また、ローレット形成のための専用加工機の設置スペースを他用途へ転用することが可能になり、スペースファクターの向上にも寄与する。
図1は本発明のインサート金具の製造工程概念図、図2−1〜図2−3は本発明のインサート金具製造方法の具体的手段とインサート金具の形成過程を示した説明図である。
そして、図3は本発明の製造方法によって製造されたインサート金具の斜視図であり、図4は本発明の製造方法で製造したインサート金具と、従来のアヤ目ローレットが形成されたインサート金具との耐引き抜き加重に関する試験結果の一例、図5は本発明の製造方法で製造したインサート金具と、従来のアヤ目ローレットが形成されたインサート金具との耐引き抜き加重及び耐ねじりトルクに関する試験結果の一例である。
図において1、1’はインサート金具、2は縦型凹凸溝部、3は膨出凸部、4はフランジ、5は雌ねじ部、6は貫通孔、10は円柱形素材、20は有底円筒形素材、30は軸部外周に多数の縦型凹凸溝を形成した有底円筒形素材、40は軸心に貫通孔が形成された素材、50は鍛造工程を終えた素材である。また、Dはダイス、Pはパンチ、Kはノックアウトピン、Gはガイドピンを示している。なお、D、P、Kの添付数字はそのダイス、パンチ、及びノックアウトピンで構成される金型の配列順序を表している。
なお、A、Bは素材のどちら側の端面かを示す記号であり、製造工程ごとにダイスに挿入される端面が反転変化するで、今どちら側がダイスに挿入されているのかを明確にするために付したものである。
そして、インサート金具製造装置による鍛造工程では、
a.第1の工程に供給される円形断面の線材を、逐次所定の寸法に切断して円柱形素材10を作製する。
b.前記円柱形素材10の両切断端面A、Bを第1及び第2の工程によって所定の形状に矯正する。
c.その後前記円柱形素材10の一方の端面Aに第2工程のパンチP2を押し込むことによって中心部を凹ませ、前記円柱形素材10を有底円筒形素材20に変形する。
d.上記工程を経た有底円筒形素材20を第3の工程に供給してその軸部外周に軸心回りの回動を抑止するローレットとしての多数の縦型凹凸溝2を軸心方向に沿って形成する。
e.軸部外周に多数の縦型凹凸溝2が形成された有底円筒形素材30の底部を第4の工程のパンチP4’によって貫通させ、後にボルトを螺入する雌ねじ部5となる貫通孔6を形成する。
f.次いで第5の工程として、軸心に貫通孔6が形成された素材40の一方の端面A側を、前記軸心に貫通孔が形成された素材40の端面Aの外径より小さい内径を持つ円筒形のダイスD5に所定の長さだけ押入し、軸部外周に軸心方向への抜けを規制する膨出凸部3を形成する。
以上の工程が同時並行して行われる。
このインサート金具製造装置による一連の鍛造工程を終えた素材50は、貫通孔6にボルトを螺入する雌ねじを削設するため、別途ねじ切り専用加工機に搬送される。
なお、各図面は説明に必要な素材、ダイス、パンチ、及びダイスの中央部に設けた貫通孔に挿入されて鍛造時にはダイスの一部を形成し、鍛造終了後は変形された素材をダイスから排出しするノックアウトピン、並びに工程5でインサート金具の貫通孔6に挿入されるガイドピンのみをそれぞれ断面形状で示した。またいずれも上図はそれぞれの工程操作前の状況を、下図は操作後の状況を表している。
このダイスD1に円柱形素材10を挿入してパンチP1で押圧することによって、端面Aが所定の形状に矯正される。
端面Aが所定の形状に矯正された円柱形素材10はノックアウトピンK1によってダイスD1から押し出され、図示しないチャック機構に把持されて第2工程に移される。その際チャック機構は円柱形素材10の両端面A、Bを反転させてダイスに挿入する動作も行う。このチャック機構の作用動作は工程が移るたびごとに行われるので、以後、この工程の変わり目のチャック機構の動作については記述を省略する。
図2−2(c)には、端面B側にフランジ4を膨出させる形状のダイスD3を示した。このダイスD3の内壁には有底円筒形素材20の外周側面に多数の縦型凹凸溝2を形成するための複数の突条7が設けられており、また素材挿入側の開口部付近はフランジ4を形成するために拡大した内径の部分8が備えられている。したがって、ダイスD3に端面A側を向けて有底円筒形素材を挿入し、パンチP3で押圧すれば、前記有底円筒形素材20の軸部外周に端面A側から所定長さの多数の縦型凹凸溝3が形成され、端面B側にはフランジ4が形成される。
なお、フランジ4を必要としない場合は、ダイスD3に前記内径を拡げた部分8を設けず、パンチP3の外径を小さくして押圧することにより多数の縦型凹凸溝2を形成させる。
この工程におけるダイスD4及びパンチP4の役割は、前記軸部外周に縦型凹凸溝2が形成された有底円筒形素材30を正確な位置に確実に保持し、円筒状のノックアウトピンK4の中心部から繰り出されるパンチP4’による底部の貫通を補助することにある。したがってダイスD4及びパンチP4の形状は、上記役割が達成できるものであればよい。
上部は膨出可能なように素材40の外形よりも大きな内径を持ち下部が素材40の外径より小さな内径を持つ2段形状のダイスD5が用いられ、また膨出凸部を外周側面に均等に設けるために貫通孔6に挿入されるガイドピンGが筒状のノックアウトピンK5の中心部からダイスD5の中心部にあらかじめ突出配置されるのが好ましい。
両者はその用途に応じて使い分けられてよい。例えば、樹脂板や金属板にあらかじめ穿設された下穴に軸部を挿入して使用する場合にはフランジ4のついたインサート金具1を、樹脂製品に埋め込んで使用する場合にはフランジのないインサート金具1’をという具合にである。
比較試験に用いた2種のインサート金具の形状及び仕様を表1に示す。試験は樹脂(ポリブチレンテレフタレート/ガラス繊維30%混合)に埋め込んだインサート金具を引き抜くことで抜け落ちへの対応力を確かめ、ねじりを与えることによって軸心回りの回転に対する対応力を確かめたものである。いずれも5個の試料について試験を行った。図4、図5はそのうち最もよい成績を示した両者のデータを比較表示したものである。
これらの図からは、引き抜きに対する抑止効果、及び回転抑止効果においては、本発明の製造方法によって製造したインサート金具1の方に優位性がみられる。
5個の試料の平均値でも同等の性能を備えたものと判断でき、本発明のインサート金具製造方法が有効な結果をもたらしていることが分かる結果となっている。
2:縦型凹凸溝部
3:膨出凸部
4:フランジ
5:雌ねじ部
6:貫通孔
7:突条部
8:拡大した内径の部分
10:円柱形素材
20:有底円筒形素材
30:軸部外周に多数の縦型凹凸溝を有する有底円筒形素材
40:軸心に貫通孔が形成された素材
50:鍛造工程を終えた素材
A、B:素材の端面
D1,D2,D3、D4,D5:ダイス
P1,P2,P3、P4,P5:パンチ
K1,K2,K3、K4,K5:ノックアウトピン
G:ガイドピン
Claims (4)
- 被装着物である樹脂板や金属板にあらかじめ穿設された下穴に、その軸部を押入し、あるいは被装着物にあらかじめ埋設して使用するインサート金具の製造方法であって、
前記インサート金具に要求される軸心回りの回動及び軸心方向への抜け落ちを規制する軸部外周のローレット及び膨出凸部の加工が、専用の加工機を用いることなく、複数個の異なる金型が装備されたインサート金具製造装置によって、円形断面の線材の切断からねじ切り前のインサート金具形成まで一貫した鍛造工程内で実施することを特徴とするインサート金具の製造方法。 - 前記インサート金具の製造が、いずれもそれぞれ異なる金型による下記の鍛造工程、すなわち、
円形断面の線材を切断して得た円柱形素材(10)の一方の端面(A)を第1のダイス(D1)により所定の形状に矯正する第1工程、
第1工程を終えた円柱形素材(10)の他方の端面(B)を第2のダイス(D2)により所定の形状に矯正し、かつ、前記一方の端面(A)に押し当てたパンチ(P2)によって前記円柱形素材(10)を有底円筒形素材(20)に変形する第2工程、
第2工程を経た有底円筒形素材(20)を再度反転して前記一方の端面(A)側を第3のダイス(D3)に押入して有底円筒形素材(20)の軸部外周に軸心回りの回動を抑止するローレットとしての多数の縦形凹凸溝(2)を軸心方向に沿って形成するとともに、縮径させて前記端面(B)を軸心方向に膨出させ、又は端面(B)側にフランジを(4)膨出させる第3工程、
第3工程によって軸部外周に多数の縦型凹凸溝(2)が形成された有底円筒形素材の底部をパンチ(P4’)によって貫通させ、別途の作業工程によりボルトを螺入する雌ねじ部(5)となる貫通孔(6)を形成する第4工程、
第4工程によって貫通孔(6)が形成された素材(30)の一方の端面(A)側を、該端面(A)の外径より小さい内径の円筒形の第5のダイス(D5)に所定の長さだけ押入し、外周面に軸心方向への抜けを規制する膨出凸部(3)を形成する第5工程、
によって行われることを特徴とする請求項1に記載のインサート金具の製造方法。 - 前記インサート金具の製造が、請求項2に記載の工程順に並置された5個の金型が装備されたインサート金具製造装置により各工程の同時進行によって行われ、次工程の金型への素材の移動と反転操作がそれぞれの金型間に設けられたチャック機構によって同時に自動で行われることを特徴とする請求項1又は2に記載のインサート金具の製造方法。
- 請求項1〜3に記載のインサート金具の製造方法によって製造されたインサート金具であって、軸部外周に軸心回りの回動を規制するローレットとしての多数の縦型凹凸溝(2)と、縦型凹凸溝(2)の各凸条部に軸心方向への抜け落ちを規制する膨出凸部(3)を突設させてなることを特徴とするインサート金具。
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